(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158895
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発泡性コーヒー飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 5/14 20060101AFI20241031BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20241031BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241031BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20241031BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
A23F5/14
A23F5/24
A23L2/00 U
A23L2/54
A23L2/38 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074516
(22)【出願日】2023-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.試飲イベント「ガッサータ黒泡イベント」における発泡性コーヒー飲料の提供 場所:大手町サンケイプラザ 提供日:令和5年3月28日 2.TULLY’S COFFEEブランドの飲料公式Twitterにおける発泡性コーヒー飲料の配布(プレゼント) URL:https://twitter.com/Tullys_cup/status/1646319096752148480?cxt=HHwWgMDUzd6f89gtAAAA 配布開始日:令和5年3月30日 3.TBSテレビ 「THE TIME,」での放送 放送日:令和5年3月31日 4.読売テレビ 「あさパラS」での放送 放送日:令和5年4月15日 5.メディア発表 場所:大手町サンケイプラザ ホール&カンファレンス 発表日:令和5年4月27日 6.テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」での放送 放送日:令和5年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 有理
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛弥
(72)【発明者】
【氏名】山上 修平
(72)【発明者】
【氏名】今枝 友昭
(72)【発明者】
【氏名】西谷 栄盛
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC10
4B027FE08
4B027FK01
4B027FQ19
4B117LC08
4B117LE10
4B117LG17
4B117LK01
(57)【要約】
【課題】容器からグラスに注いだ際にビールのように細かい泡が立ちやすい容器詰発泡性コーヒー飲料を提供する。
【解決手段】発泡性コーヒー飲料であって、マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、40≦[Mg/Na]≦500となるように含有し、飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)が0.1μm~10μmである発泡性コーヒー飲料、その製造方法、泡立ち向上方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性コーヒー飲料であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように含有し、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)が0.1~10μmである発泡性コーヒー飲料。
【請求項2】
ナトリウム含有量が0.1~1.0mg/100gである請求項1に記載の発泡性コーヒー飲料。
【請求項3】
水不溶性微粒子の粒度分布の標準偏差が0.5以下である請求項1に記載の発泡性コーヒー飲料。
【請求項4】
飲料に含まれる水不溶性微粒子の[モード径/メディアン径]が0.5~1.1である請求項1に記載の発泡性コーヒー飲料。
【請求項5】
発泡性コーヒー飲料の製造方法であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように調整する工程と、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)を0.1~10μmに調整する工程を含む発泡性コーヒー飲料の製造方法。
【請求項6】
発泡性コーヒー飲料の泡立ち向上方法であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように調整する工程と、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)を0.1~10μmに調整する工程を含む発泡性コーヒー飲料の泡立ち向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性コーヒー飲料に関し、より詳細には、容器からグラスに注いだ際にビールのように泡立ちが良好な発泡性コーヒー飲料に関する。さらに本発明は、発泡性コーヒー飲料の製造方法、発泡性コーヒー飲料における泡立ち向上方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは茶と同様に古くから多くの人々に愛飲されている嗜好性飲料であり、コーヒーが消費者に提供される形態は多岐に亘る。例えば家庭や飲食店等で抽出して飲用する他、小売店や自動販売機で容器詰コーヒー飲料の形態でも提供されている。すぐに飲用可能な、所謂RTD(READY TO DRINK)タイプの容器詰コーヒー飲料は、いつでも手軽にコーヒーを楽しむことができるという利便性により消費者の支持を受けているが、夏場の消費量が落ち込むことが問題となっていた。
一方で夏場に消費が拡大するのは炭酸飲料であり、近年の健康志向の高まりと共に炭酸水に爽快感やリフレッシュを求める消費者が増大し、炭酸飲料の消費が近年特に拡大している。夏場の容器詰コーヒー飲料の消費拡大や普段容器詰コーヒー飲料を飲まない消費者層への飲用機会提供のために、コーヒーと炭酸飲料を融合することが一案と考えられた。
炭酸コーヒー飲料については、風味改善や充填時の吹きこぼれ防止などの観点で従来から開発が試みられているが(例えば特許文献1及び2)、容器からグラスに注いだ際の泡立ちに着目し、それを楽しむという観点の研究開発は今までに行われてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-023482号公報
【特許文献2】特開2014-117238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、容器からグラスに注いだ際に泡立ちが良好な発泡性コーヒー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく本発明者等が鋭意検討したところ、ナトリウムおよびマグネシウムの含有量、微粒子の粒子径を所定範囲に調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0006】
〔1〕発泡性コーヒー飲料であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように含有し、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)が0.1~10μmである発泡性コーヒー飲料。
〔2〕ナトリウム含有量が0.1~1.0mg/100gである〔1〕に記載の発泡性コーヒー飲料。
〔3〕水不溶性微粒子の粒度分布の標準偏差が0.5以下である〔1〕または〔2〕に記載の発泡性コーヒー飲料。
〔4〕飲料に含まれる水不溶性微粒子の[モード径/メディアン径]が0.5~0.9である〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の発泡性コーヒー飲料。
〔5〕発泡性コーヒー飲料の製造方法であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように調整する工程と、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)を0.1~10μmに調整する工程を含む発泡性コーヒー飲料の製造方法。
〔6〕発泡性コーヒー飲料の泡立ち向上方法であって、
マグネシウム(Mg)及びナトリウム(Na)を、
40≦[Mg/Na]≦500となるように調整する工程と、
飲料に含まれる水不溶性微粒子の累積90%径(D90)を0.1~10μmに調整する工程を含む発泡性コーヒー飲料の泡立ち向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡性コーヒー飲料は、容器からグラスに注いだ際に泡立ちが良好なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る発泡性コーヒー飲料は、ナトリウムおよびマグネシウムの含有量、微粒子の粒子径が特定比率の範囲内にあるものである。
【0009】
(容器詰発泡性コーヒー飲料)
また、本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料とは、前記のコーヒー豆由来の抽出液を原料の一つとする飲料である。
【0010】
(原料豆)
前記抽出工程に用いるコーヒー豆の産地としては、ブラジル、コロンビア、タンザニア、エチオピア、インドネシア等が挙げられるが、特に限定されない。また、コーヒー豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。コーヒー豆は、1種を用いても、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0011】
(焙煎度)
焙煎豆の粉砕L値を小さくする、すなわち深煎りすることでコーヒー豆の組織を脆くし、焙煎豆の粉砕時に、粒子径が小さい水不溶性微粒子量の発生量を増やすことができる。好ましい粉砕L値は14~20であり、更に好ましくは15~19であり、最も好ましくは15.5~18である。
粉砕L値を15~19、いわゆる中深煎りから深煎り(アメリカ式でシティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト)と呼ばれている範囲にすることで、好ましい苦みとコーヒー特有の香りを持たせつつ、粒子径が小さい水不溶性微粒子を増やすことができ、更に粉砕L値をフルシティロースト、フレンチローストと呼ばれる15.5~18とすることで、粒子径が小さい水不溶性微粒子をさらに増やすことができる。
なお、本発明では容器詰コーヒー飲料の製造に用いる全ての焙煎豆が上記粉砕L値を満たすようにしてもよいし、上記粉砕L値の焙煎豆と上記粉砕L値以外の焙煎豆(例えば浅煎り(ライトロースト、シナモンロースト)、中煎り(ミディアムロースト、ハイロースト))を併用してもよい。
焙煎方式は一般的な手法を用いればよく、直火式、熱風式、又は半熱風式などの手法によって行うことができる。焙煎方法、温度、及び時間は、所望の焙煎度を達成するため、またコーヒー豆の特性に応じて適宜選択してよい。また、粉砕L値は、一般的な測色色差計を用いて計測し、ハンター式測色値におけるL値(明度)として求めることができる。
【0012】
(コーヒー抽出液の調製)
本実施形態において、飲料液は、原料となるコーヒー豆を所定時間焙煎した後に粉砕し、これを熱水により抽出する抽出工程及びその他の各種工程を経て得られる抽出液や濃縮エキスを、単体若しくは複数種混合して得られる。また、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒーを溶解して供しても構わない。
容器詰コーヒー飲料に含まれる水不溶性微粒子の含有量や粒子径は、コーヒーの品種、焙煎度、焙煎方法、遠心分離条件、フィルター制御、均質化前の温度と圧力条件、ならびに殺菌方法などによって調整できる。
【0013】
(水不溶性微粒子)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、水不溶性微粒子を一定量含有する。水不溶性微粒子とはコーヒー豆等の原料由来の微細な粒子であって水不溶性のものを言う。水不溶性微粒子は粒子径200μm未満であることが好ましい。一方で、粒子径200μm以上の水不溶性微粒子が一定量以上存在すると泡立ちが逆に阻害されてしまうため、ろ過等の公知の手段により、200μm以上の水不溶性微粒子を除去し、200μm以上の水不溶性微粒子が存在しない粒子径200μm未満の水不溶性微粒子を含む飲料とすることが好ましい。
【0014】
(水不溶性微粒子の含有量)
本実施形態において、飲料液中の粒子径200μm未満の水不溶性微粒子の含有量は、測定対象とする飲料液を一定量採取して4,300×gで10分間遠心分離を行い、得られた沈殿物を1/3容量の純水に懸濁し(すなわち3倍濃縮)、波長660nm、光路長1cmにて測定した透過度(T%)として測定することができる。測定方法の詳細は後述する実施例にて示す。
なお、当該測定においては、必要に応じ、遠心分離の前に200μmのフィルターでろ過してもよいが、コーヒー抽出液の製法などにより、飲料液において200μm以上の水不溶性微粒子を含有しないことが明らかである場合は、この限りでない。
飲料液中の粒子径200μm未満の水不溶性微粒子の含有量は、3倍濃縮して測定した660nm透過度(T%)として80%以下であることが好ましく、さらには35%以上70%以下であることが好ましく、特に40%以上60%以下であることが好ましい。なお、水不溶性微粒子は、粒子径が0.1μm以上であることが好ましい。粒子径200μm未満の水不溶性微粒子が一定量飲料液中に存在することにより、泡立ちが良好になる。
【0015】
(水不溶性微粒子の累積90%径(D90))
本実施形態の発泡性コーヒー飲料においては、水不溶性微粒子の累積90%径(D90)が10.000μm以下であることが好ましく、更には9.000μm以下が好ましく、特に8.000μm以下が好ましい。このような水不溶性微粒子を多く含むことで、グラスに注いだ際に発生した泡を保持することができる。一方、累積90%径(D90)の下限値は特に限定されないが、例えば0.100μm以上とすることができ、さらには0.500μm以上、1.000μm以上とすることができる。
なお、累積90%径(D90)は、一般的なレーザー回析散乱光式粒度分布装置、例えば島津製作所製SALD-2100を用いて求めることができる。
【0016】
(水不溶性微粒子のモード径)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料においては、水不溶性微粒子のモード径(最頻度径;分布密度(確率密度分布)の密度が最大値を示す粒子径)が6.000μm以下であることが好ましく、更には5.000μm以下が好ましく、特に3.000μm以下が好ましい。このような水不溶性微粒子を多く含むことで、均一でキメ細かな泡を発生させることができる。
なお、モード径は、一般的なレーザー回析散乱光式粒度分布装置、例えば島津製作所製SALD-2100を用いて求めることができる。
【0017】
(水不溶性微粒子のメディアン径)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料においては、水不溶性微粒子のメディアン径(粒度分布の50%となる粒径(D50))が5.000μm以下であることが好ましく、更には4.000μm以下が好ましく、特に3.000μm以下が好ましい。このような水不溶性微粒子を多く含むことで、均一でキメ細かな泡を発生させることができる。
なお、メディアン径は、一般的なレーザー回析散乱光式粒度分布装置、例えば島津製作所製SALD-2100を用いて求めることができる。
【0018】
(水不溶性微粒子の[モード径/メディアン径])
本実施形態の発泡性コーヒー飲料において、水不溶性微粒子のメディアン径(μm)に対するモード径(μm)の比[モード径/メディアン径]は、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。また、[モード径/メディアン径]は、好ましくは1.2以下であり、より好ましくは1.1以下であり、さらに好ましくは1.0以下であり、最も好ましくは0.9以下である。[モード径/メディアン径]が上記範囲内にあることにより、発泡した泡の大きさが小さくなり、キメ細かな泡が発生する発泡性コーヒー飲料となる。
【0019】
(水不溶性微粒子の粒度分布の標準偏差)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料において、水不溶性微粒子の粒度分布の標準偏差は、0.5以下であることが好ましく、更には0.4以下であることが好ましく、特に0.3以下であることが好ましい。この範囲に調整することにより、キメ細かな泡を良好に発生することが可能となる。
【0020】
(遠心分離)
粉砕後の焙煎豆を熱水で抽出して得られた抽出液を遠心分離することで、粒子径の大きい水不溶性分子を選択的に取り除くことができる。そのため、抽出液中の水不溶性微粒子の粒子径にバラつきがある場合や、粒子径の大きい水不溶性微粒子が粒子径の小さい水不溶性微粒子よりも比較的多い場合であっても、遠心分離により粒子径の大きい水不溶性分子を取り除くことで、容器詰めコーヒー飲料の粒子径が大きい水不溶性微粒子と粒子径が小さい水不溶性微粒子の含有比の調整が行える。
遠心分離は一般的な手法により行うことができる。
【0021】
(フィルター制御)
一般的なフィルター制御手法を用いて任意の粒子径の水不溶性微粒子の含有量を調整することができる。例えば、粉砕後の焙煎豆を熱水で抽出して得られた抽出液、若しくは上記遠心分離後の抽出液を孔径10μmのフィルターでろ過することで、粒子径10μm以上の水不溶性微粒子の含有量に比して粒子径10μm未満の水不溶性微粒子の含有量を多く含む抽出液を得ることができる。
【0022】
(均質化)
一般的な均質化手法を用いることで、抽出液中の水不溶性微粒子を砕き、粒子径の小さい水不溶性微粒子の含有量を増やすことができる。均質化の条件は、均質化前の抽出液に含まれる粒子量や粒子径により適宜条件が異なるが、例えば、上記遠心分離やフィルターでのろ過を経て得られた抽出液を、ホモゲナイザーで処理する場合、抽出液を30℃以上に加温し、圧力10MPa以上で処理することが好ましく、特に抽出液を40~60℃に加温し、圧力12~20MPaで処理することが好ましい。
【0023】
(マグネシウム)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、マグネシウムの含有量が2mg/100g以上500mg/100g以下であることが好ましい。本実施形態においてマグネシウムは、コーヒーエキスなどの原料由来や飲食品に用いることができる塩の形態、或いはマグネシウムを含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるマグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてマグネシウムは、これらのマグネシウム塩に由来することができる。マグネシウムの含有量が上記下限値以上であると泡の保持力が強まって泡が消えにくくなり、マグネシウムの含有量が上記上限値以下であると、グラスに注いだ際に泡立ちやすくなる。所定範囲で存在することにより、泡の発生及びその後の保持に影響を与えることになる。本実施形態の容器詰発泡性コーヒー飲料中のマグネシウムの含有量は、好ましくは3mg/100g以上420mg/100g以下、更に好ましくは4mg/100g以上300mg/100g以下である。
【0024】
(ナトリウム)
本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料は、ナトリウムを所定量含有する。本実施形態においてナトリウムは、コーヒーエキスなどの原料由来や飲食品に用いることができる塩の形態、或いはナトリウムを豊富に含む海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるナトリウムの塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてナトリウムは、これらのナトリウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含有する。本実施形態においてナトリウムは、好ましくは炭酸水素ナトリウム由来である。ナトリウムの含有量は、好ましくは0.1mg/100g以上、より好ましくは0.2mg/100g以上である。ナトリウムの含有量が上記下限値以上であることで、グラスに注いだ際に泡立ちが特に良好になる。また、本実施形態の容器詰発泡性コーヒー飲料は、ナトリウムの含有量が1.1mg/100g以下であることが好ましく、1.0mg/100g以下であることが好ましく、0.9mg/100g以下であることがより好ましく、0.8mg/100g以下であることがさらに好ましく、0.6mg/100g以下であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記上限値以下であることで、泡立ちが良好でありながら、容器詰飲料製造時の充填適性が阻害されることを防止することが可能となる。
【0025】
([マグネシウム(Mg)/ナトリウム(Na))
本実施形態の発泡性コーヒー飲料において、ナトリウム(Na)に対するマグネシウム(Mg)の比[Mg/Na]は、40以上であり、好ましくは50以上であり、より好ましくは60以上である。[Mg/Na]が上記下限値以上であることで、発泡した泡の保持時間が長くなり、比較的長時間にわたり泡を楽しむことができる飲料となる。また、[Mg/Na]は500以下であり、好ましくは470以下であり、より好ましくは420以下である。[Mg/Na]が上記上限値以下であることで、グラスに注いだ際に泡立ちが良好になり、泡の発生を楽しめる飲料となる。
【0026】
(ガスボリューム)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、ガスボリュームが1.5以上であり、1.8以上であることが好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記下限値以上であることで、発泡性のコーヒー飲料とすることができる。本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、ガスボリュームが4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがさらに好ましく、3.2以下であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記上限値以下であることで、充填適性を阻害することなく、飲用時に程よい泡が発生することになる。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、発泡性飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を発泡性飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0027】
(その他の成分)
本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料には、処方上添加して良い成分として、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の甘味付与剤;酸化防止剤、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、香料、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤、消泡剤、酵素等の添加物;などがあげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。
【0028】
(たんぱく質,脂質)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、たんぱく質および脂質を、いずれも実質的に含有しないことが好ましい。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、たんぱく質および脂質のいずれも、飲料100mlあたり0.5g未満であれば、栄養成分表示において「0g」と表示することができる。本明細書においても当該表示基準と同様に、たんぱく質の含有量が飲料100mLあたり0.5g未満である発泡性飲料を、たんぱく質を実質的に含有しない発泡性飲料とし、脂質についても同様とする。たんぱく質および脂質の含有量は、それぞれ独立に、飲料100mLあたり0.1g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。
【0029】
(製造方法)
本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料は、ナトリウム、マグネシウム及び微粒子の大きさを調整する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、コーヒー抽出液に、ナトリウムおよびマグネシウムを添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌・溶解し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。また、殺菌など微生物制御の方法は飲料の配合内容や容器により適宜選択可能であり、容器充填前の飲料原液のフィルターによるろ過滅菌や加熱殺菌、容器充填後の加熱殺菌などを、単一で或いは組み合わせて採用できる。
【0030】
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
【0031】
(容器)
本実施形態の発泡性コーヒー飲料は、容器に充填して容器詰発泡性コーヒー飲料として提供される。ここで、本実施形態における容器詰飲料とは、飲料を容器に詰めて密封するとともに、除菌や殺菌などの微生物制御処理を施すことで長期の保存性を与えた飲料をいう。本実施形態において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0032】
(殺菌)
また、本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料の殺菌処理は、食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。殺菌方法としては、UHT殺菌、レトルト殺菌等が挙げられ、例えばUHT殺菌の場合、105℃、30秒で行える。
【0033】
(泡立ち向上方法)
本実施形態に係る発泡性コーヒー飲料は、ナトリウムおよびマグネシウムの含有量、微粒子の粒子径を所定範囲に調整することにより、容器からグラスに注いだ際に、ビールのように泡立ちが良好なものとのなる(本発明に係る泡立ち向上方法に該当)。
【0034】
<用語の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意味を包含する。
【0035】
以上の発泡性コーヒー飲料は、例えば乳成分を含有せず、ガスボリュームが低い発泡性コーヒー飲料であっても、容器からグラスに注いだ際にビールのように泡立ちが良好なものとなる。
【0036】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0037】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0038】
<発泡性コーヒー飲料の調製、製造方法>
[試料1~15]下記の各原料を表1に示す配合で混合、溶解し、調合液を得た。
得られた調合液を、ホモゲナイザー「H20-H2」(三和エンジニアリング社製)を用い、表1に示す圧力にて均質化処理を行った(表1中の圧力0.0Mpaは、加温のみで均質化処理を行わなかったことを表す)。
その後、遠心分離機「OSD2-02-107」(ウェストファリアセパレータ社製)を用いて、流量480L/h、表1に示す回転数にて、遠心分離処理を行った。
これらの処理を経た調合液を、加温して95℃で45秒間保持し、その後に5℃まで急冷し、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、カーボネーターで二酸化炭素を混合した後、洗浄殺菌済みの400mL容PETボトルに370±1mLとなるように充填し、発泡性コーヒー飲料を得た。なお、試料6に関しては、正常な容器充填が出来なかった為、充填直前の液を分析に用いた。
【0039】
コーヒーエキスA: コロンビア産のアラビカ種コーヒー豆をL18~19に焙煎し、0.5~2mm程度に粉砕した粉砕豆を、熱水による加圧抽出を行い、100μmのメッシュで濾過後、遠心分離を行い、得られた抽出液をBx47~49に減圧濃縮し、100μmのメッシュで濾過することで得られたコーヒー抽出液。
D90:15.415μm、メディアン径:4.649μm、モード径:7.343μm、標準偏差:0.461、Na0.39mg/100g、Mg33.33mg/100g
コーヒーエキスB: インドネシア産アラビカ種コーヒー豆をL14~15に焙煎し、0.5~2mm度に粉砕した粉砕豆を、熱水による加圧抽出を行い、遠心分離を行い、150μmで濾過して得られたBx15~16のコーヒー抽出液。
D90:11.148μm、メディアン径:3.802μm、モード径:3.596μm、標準偏差:0.362、Na0.10mg/100g、Mg35.48mg/100g
【0040】
炭酸水素ナトリウム:重炭酸ナトリウム(トクヤマ社製)
塩化マグネシウム:クリスタリン(赤穂化成社製、六水和物)
【0041】
<試験例1>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1~14の各発泡性コーヒー飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、FREE SHAKE V-CARBO(ビクスル社製,型式:DGV-1)を用いてガスボリュームを測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<試験例2>ナトリウム、マグネシウム含有量の測定
(ナトリウム)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性コーヒー飲料を脱気して、原子吸光分光光度計「A A240FS」(Agilent Technologies社製)にて、ナトリウム(Na)の含有量を測定した。
(マグネシウム)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性コーヒー飲料を脱気して、ICP発光分光分析装置(ICP-OES)「Vista-PRO」(Agilent Technologies社製)にて、マグネシウム(Mg)の含有量を測定した。
【0043】
<試験例3>不溶性粒子の粒度分布の測定
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性コーヒー飲料を脱気して、レーザー回析散乱光式粒度分布装置「SALD-2100」(島津製作所製)にて、回分セルを使用して測定した。測定結果は解析ソフトウェア「WingSALDII-2300」(島津製作所製)を用いて解析し、D90、メディアン径、モード径を求めた。なお、これらの粒度分布はすべて個数基準である。
【0044】
<試験例4>水不溶性微粒子の含有量の測定
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性コーヒー飲料を脱気して、下記方法によって水不溶性微粒子の含有量の測定を行った。
=分析方法=
ステップ1:サンプル45mLを遠沈管へ入れ、環境温度10℃の遠心分離機で5,000rpm(4,300×g)、10分間遠心分離を行う。
ステップ2:上澄みを取り除いて純水15mLを添加し、環境温度10℃の遠心分離機で5,000rpm、30分間遠心分離を行う。
ステップ3:沈殿物のみを残し、純水15mLを添加して撹拌し、波長660nm、光路長1cmの透過度(T%)を測定した。
【0045】
<試験例5>泡の評価
試料1~15の各発泡性コーヒー飲料(サンプル)について、泡の評価試験を行った。(a)グラスに注いだ直後の泡量、(b)発生した泡のキメ細かさ、(c)グラスに注いでから120秒後の泡量の3項目に関し、それぞれの評価基準にて、4段階にて評価した。結果を表1に示す。
【0046】
=(a)グラスに注いだ直後の泡量=
測定方法:5℃で保管しておいた容器詰発泡性コーヒー飲料を、開栓後すぐに1000mL容積のビーカーの淵から5cmの高さから容器詰飲料1本分を垂直にして注ぎ、直後の液面からの泡の高さ量を測定した。
評価基準:
3点:泡の高さが5cm以上
2点:泡の量が3cm以上5cm未満。
1点:泡の量が1cm以上3cm未満。
0点:泡が発生しなかった/泡の量が1cm未満。
【0047】
=(b)泡のきめ細かさ=
測定方法:5℃で保管しておいた容器詰発泡性コーヒー飲料を、開栓直後に1000mL容積のビーカーの淵から5cmの高さから容器詰飲料1本分を垂直にして注ぎ、発生した泡のきめ細かさを目視で判断した。
評価基準:
3点:直径1mm以下の泡が主体。
2点:直径1mm超の泡が主体。
1点:直径2mm超の泡が主体。
0点:泡がほとんどなく、評価不可。
【0048】
=(c)グラスに注いでから120秒後の泡量=
測定方法:5℃で保管しておいた容器詰発泡性コーヒー飲料を、開栓後すぐに1000mL容積のビーカーの淵から5cmの高さから容器詰飲料1本分を垂直にして注ぎ、120秒後の液面からの泡の量をグラスに注いだ直後の泡量と比較した。
評価基準:
3点:泡の量が(a)の20%以上
2点:泡の量が(a)の10%以上20%未満。
1点:泡の量が(a)の5%以上10%未満。
0点:泡が発生しなかった/泡の量が(a)の5%未満。
【0049】
=総合評価=
総合評点:
(a)~(c)の評価点の合計値を総合評価点とした。ただし、0点の項目がある試験例の総合評点は0点とした。
評価基準:
◎:総合評点が9点である。
〇:総合評点が6~8点である。
△:総合評点が3~5点である。
×:総合評点が0点である。
【0050】
【0051】
試料6は泡立ちが多すぎて充填できず、評価することができなかったが、表1に示すようにマグネシウム及びナトリウムを特定量含有し、水不溶性微粒子が特定の大きさ・量である発泡性コーヒー飲料は、泡立ちが良好であり、良好な飲料となった。