(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158904
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スイッチング素子駆動回路、レグ駆動回路、電力変換装置及び熱加工装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241031BHJP
H03K 17/56 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074528
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】松坂 陣
(72)【発明者】
【氏名】三溝 真史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲三
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
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5H740JB01
5H740KK03
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5J055FX19
5J055GX01
5J055GX04
5J055GX09
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつ、スイッチング素子の駆動電圧の歪みを抑制する。
【解決手段】スイッチング素子駆動回路80aに、二次コイル801の一端に接続された第1の補助コンデンサ802と、二次コイル801の他端に接続された第2の補助コンデンサ803と、第1の補助コンデンサ802から二次コイル801に電流が流れるのを規制する放電抑制ダイオード809とを設ける。第1のバイポーラトランジスタ807を、二次コイル801からベースに流入する電流を増幅した増幅電流が、第1の補助コンデンサ802及び直流電源804からスイッチング素子52aのゲートに流れるように接続し、第2のバイポーラトランジスタ808を、ベースから二次コイル801に流出する電流を増幅した増幅電流が、スイッチング素子52aのゲートから、第2の補助コンデンサ803及び直流電源804に流れるように接続する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであるスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路であって、
一次コイルとでパルストランスを構成する二次コイルと、
前記二次コイルの一端に接続された第1の補助コンデンサと、
前記二次コイルの他端に接続された第2の補助コンデンサと、
前記二次コイルの前記一端に接続された正極、及び前記二次コイルの前記他端に接続された負極を有し、前記二次コイルの最大電圧よりも低い直流電圧を、前記正極及び負極間に供給する直流電源と、
ベースが前記二次コイルの前記一端に接続され、当該ベースに流入する電流を増幅した増幅電流が、前記第1の補助コンデンサ及び前記直流電源の正極から前記スイッチング素子のゲートに流れるように接続された第1のバイポーラトランジスタと、
ベースが前記二次コイルの前記一端に接続され、当該ベースから流出する電流を増幅した増幅電流が、前記スイッチング素子のゲートから、前記第2の補助コンデンサ及び前記直流電源の負極に流れるように接続された第2のバイポーラトランジスタと、
前記第1の補助コンデンサから前記二次コイルに電流が流れるのを規制する規制部とを備えたことを特徴とするスイッチング素子駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング素子駆動回路を2つ備え、
前記2つのスイッチング素子駆動回路は、共通のレグに属する互いに異なるスイッチング素子を駆動し、
前記2つのスイッチングの素子駆動回路の二次コイルは、共通の一次コイルとでパルストランスを構成することを特徴とするレグ駆動回路。
【請求項3】
請求項2に記載の2つのレグ駆動回路と、
2つのレグとを備え、
前記2つのレグ駆動回路は、前記2つのレグのうち互いに異なるレグを駆動することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置を備えた熱加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を駆動するスイッチング素子駆動回路、レグ駆動回路、電力変換装置及び熱加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、IGBTであるスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたスイッチング素子駆動回路は、一次コイルとでパルストランスを構成する二次コイルを備え、この二次コイルの一端が、スイッチング素子のゲートに接続されている一方、この二次コイルの他端が、スイッチング素子のエミッタに接続されている。
【0004】
特許文献2に開示されたスイッチング素子駆動回路は、絶縁回路からベースに流入する電流を増幅した増幅電流を、直流電源の正極からスイッチング素子のゲートに流す第1のバイポーラトランジスタと、ベースから絶縁回路に流出する電流を増幅した増幅電流を、前記スイッチング素子のゲートから直流電源の負極に流す第2のバイポーラトランジスタとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-055101号公報
【特許文献2】特開2012-213294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、二次コイルとスイッチング素子のゲートが直接接続されているので、スイッチング素子が、ゲートチャージ電荷量の大きい大電力用のIGBTである場合、二次コイルに流すピーク電流を大きくする必要がある。二次コイルに流すピーク電流を大きくすると、二次コイルの電圧、すなわちスイッチング素子のゲートに印可される駆動電圧が、パルストランスの漏れインダクタンスによって大きく歪み、スイッチング素子のスイッチング損失の増大や、意図せぬ短絡を招く虞がある。
【0007】
また、特許文献2では、直流電源からスイッチング素子のゲートに増幅電流を流すので、スイッチング素子のゲートチャージ電荷量が大きい場合に、出力容量の大きい直流電源が必要となり、コストが増大する。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コストを抑えつつ、スイッチング素子の駆動電圧の歪みを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであるスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路であって、一次コイルとでパルストランスを構成する二次コイルと、前記二次コイルの一端に接続された第1の補助コンデンサと、前記二次コイルの他端に接続された第2の補助コンデンサと、前記二次コイルの前記一端に接続された正極、及び前記二次コイルの前記他端に接続された負極を有し、前記二次コイルの最大電圧よりも低い直流電圧を、前記正極及び負極間に供給する直流電源と、ベースが前記二次コイルの前記一端に接続され、当該ベースに流入する電流を増幅した増幅電流が、前記第1の補助コンデンサ及び前記直流電源の正極から前記スイッチング素子のゲートに流れるように接続された第1のバイポーラトランジスタと、ベースが前記二次コイルの前記一端に接続され、当該ベースから流出する電流を増幅した増幅電流が、前記スイッチング素子のゲートから、前記第2の補助コンデンサ及び前記直流電源の負極に流れるように接続された第2のバイポーラトランジスタと、前記第1の補助コンデンサから前記二次コイルに電流が流れるのを規制する規制部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
これにより、スイッチング素子の駆動電圧の立ち上がり時に、二次コイルを流れる電流を増幅した増幅電流を、スイッチング素子のゲートに流入させることができる。また、スイッチング素子の駆動電圧の立ち下がり時に、二次コイルを流れる電流を増幅した増幅電流を、スイッチング素子のゲートから流出させることができる。したがって、引用文献1のように、二次コイルからスイッチング素子のゲートに直接電流を流す場合に比べ、二次コイルに流すピーク電流を小さくし、パルストランスの漏れインダクタンスに起因するスイッチング素子の駆動電圧の歪みを抑制できる。
【0011】
さらに、スイッチング素子の駆動電圧の立ち上がり時に、スイッチング素子のゲートに流入する増幅電流を、直流電源及び第1の補助コンデンサの両方から供給できるので、直流電源だけから供給する場合に比べ、直流電源の出力容量を小さくできる。また、スイッチング素子の駆動電圧の立ち下がり時に、スイッチング素子のゲートから流出する増幅電流を、直流電源及び第2の補助コンデンサの両方に流せるので、直流電源だけに流す場合に比べ、直流電源の出力容量を小さくできる。したがって、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コストを抑えつつ、スイッチング素子の駆動電圧の歪みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る熱加工装置としてのレーザ加工装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1のレグ駆動回路の回路図である。
【
図4】
図4は、駆動信号源により出力される駆動信号の電圧を示すグラフある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
図1は、熱加工装置としてのレーザ加工装置100の構成を示す。このレーザ加工装置100は、ワークWの切断や溶接加工等を行うのに使用される。レーザ加工装置100は、レーザ加工ヘッド10と、マニピュレータ20と、コントローラ30と、レーザ発振器40と、光ファイバ90とを備えている。
【0016】
レーザ加工ヘッド10は、光ファイバ90からのレーザ光LBをワークWに照射する。マニピュレータ20は、先端にレーザ加工ヘッド10が取り付けられ、レーザ加工ヘッド10を移動させる。コントローラ30は、レーザ加工ヘッド10の動作とマニピュレータ20の動作と、レーザ発振器40のレーザ発振を制御する。レーザ発振器40は、発振によりレーザ光LBを光ファイバ90に出射する。光ファイバ90は、レーザ発振器40により出射されたレーザ光LBを通過させてレーザ加工ヘッド10に導く。レーザ加工ヘッド10は、光ファイバ90を通過したレーザ光LBを出射する。このような構成により、レーザ加工装置100は、レーザ発振器40から出射されたレーザ光LBを、レーザ加工ヘッド10及びマニピュレータ20を動作させてワークWに所望の軌跡で照射させる。
【0017】
レーザ発振器40は、
図2に示すように、複数のレーザダイオード(LD)41と、電流源50とを備えている。
【0018】
複数のレーザダイオード41は、第1及び第2のノードN1,N2間に互いに直列に接続され、発光回路42を構成している。複数のレーザダイオード41は、そのカソード側を第2のノード側N2に向けている。発光回路42により出射されたレーザ光LBは、光ファイバ90を通過し、レーザ加工ヘッド10によりワークWに照射される。
【0019】
電流源50は、交流電源200により供給される交流を用いて、発光回路42に電流を供給する。具体的には、電流源50は、第1整流回路51と、電力変換装置としてのインバータ装置52と、DC(Direct Current))リンクコンデンサ53と、絶縁トランス54と、第2整流回路55と、リアクトル56とを有している。
【0020】
第1整流回路51は、交流電源200から出力される電源電圧を直流電圧に変換して1対の出力ノードON1,ON2から出力する。第1整流回路51は、例えばダイオードブリッジで構成される。
【0021】
インバータ装置52は、第1整流回路51の出力ノードON1,ON2の電圧に応じて第1交流電圧を生成する。具体的には、インバータ装置52は、第1及び第2のレグ521,522と、第1及び第2のレグ駆動回路70a,70bとを有している。
【0022】
第1のレグ521は、第1整流回路51の出力ノードON1,ON2間に互いに直列に接続された第1の上アームスイッチング素子52a、及び第1の下アームスイッチング素子52bを有している。
【0023】
第2のレグ522は、第1整流回路51の出力ノードON1,ON2間に互いに直列に接続された第2の上アームスイッチング素子52c、及び第2の下アームスイッチング素子52dを有している。
【0024】
各スイッチング素子52a~52dは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。各スイッチング素子52a~52dには、還流ダイオード52eが並列に接続されている。
【0025】
第1のレグ駆動回路70aは、第1のレグ521を駆動する。第1のレグ駆動回路70aは、
図3に示すように、駆動信号源71と、第1の一次コイル72と、本開示の実施形態に係る第1及び第2のスイッチング素子駆動回路80a,80bを有している。
【0026】
駆動信号源71は、第1の一次コイル72の両端に、
図4に示す波形の駆動電圧を印加する。駆動電圧の振幅をAmとしたとき、駆動電圧は、+Amと-Amとに所定タイミング毎に切り替わる。切り替え時は、駆動電圧が0の値となるデッドタイムが設けられる。
【0027】
第1のスイッチング素子駆動回路80aは、第1の上アームスイッチング素子52aを駆動する。具体的には、第1のスイッチング素子駆動回路80aは、第1の二次コイル801と、第1の補助コンデンサ802と、第2の補助コンデンサ803と、直流電源804と、正極側ダイオード805と、負極側ダイオード806と、第1及び第2のバイポーラトランジスタ807,808と、規制部としての放電抑制ダイオード809と、第1~第3の抵抗810~812とを有している。
【0028】
第1の二次コイル801は、第1の一次コイル72とでパルストランスを構成する。第1の二次コイル801の電圧Voの絶対値(振幅)(Am(
図4参照))は、直流電源804の正極804a及び負極804b間の電圧よりも高く設定される。第1の二次コイル801の電圧Voの絶対値は、18V以上に設定される。
【0029】
第1の補助コンデンサ802の一端は、第1の二次コイル801の一端に放電抑制ダイオード809及び第1の抵抗810を介して接続されている。
【0030】
第2の補助コンデンサ803の一端は、第1の補助コンデンサ802の他端に接続されているとともに、第1の基準電位点GND1及び第1の上アームスイッチング素子52aのエミッタに接続されている。第2の補助コンデンサ803の他端は、第1の二次コイル801の他端に接続されている。
【0031】
第1及び第2の補助コンデンサ802,803の各容量は、各スイッチング素子52a~52dのゲート入力容量(ゲートソース間容量とゲートドレイン間容量の和)の10倍以上に設定することが好ましい。
【0032】
また、第1及び第2の補助コンデンサ802,803には、電圧の制限のため、図示しないツェナーダイオードをそれぞれ並列に接続してもよい。
【0033】
直流電源804は、正極804a及び負極804bを有し、第1の二次コイル801の最大電圧よりも低い直流電圧を、前記正極804a及び負極804b間に供給する。直流電源804の正極804aは、第1の二次コイル801の前記一端、及び第1の補助コンデンサ802の前記一端に接続されている。直流電源804の負極804bは、第1の二次コイル801の前記他端、及び第2の補助コンデンサ803の前記他端に接続されている。直流電源804は、第1の基準電位点GND1に接続されている。直流電源804の正極804aの出力電圧VDD1は15V、直流電源804の負極804bの出力電圧VSS1は-3Vに設定されている。
【0034】
正極側ダイオード805は、第1の二次コイル801及び第1の補助コンデンサ802から直流電源804の正極804aに電流が流入するのを規制するように、直流電源804の正極804aに接続されている。正極側ダイオード805は、直流電源804の正極804aにそのアノードを向けている。
【0035】
負極側ダイオード806は、第1の二次コイル801及び第2の補助コンデンサ803から直流電源804の基準電圧端子(GND1に接続された端子)に電流が流入するのを規制するように、直流電源804の負極804bに接続されている。負極側ダイオード806は、直流電源804の負極804bにそのカソードを向けている。
【0036】
第1のバイポーラトランジスタ807は、NPNトランジスタである。第1のバイポーラトランジスタ807のベースは、第1の二次コイル801の前記一端に接続されている。第1のバイポーラトランジスタ807のコレクタは、第1の二次コイル801の一端に放電抑制ダイオード809及び第1の抵抗810を介して接続されるとともに、第1の補助コンデンサ802の前記一端に接続されている。第1のバイポーラトランジスタ807のエミッタは、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに第3の抵抗812を介して接続されている。つまり、第1のバイポーラトランジスタ807は、そのベースに流入する電流を増幅した増幅電流が、第1の補助コンデンサ802及び直流電源804の正極804aから第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに流れるように接続されている。
【0037】
第2のバイポーラトランジスタ808は、PNPトランジスタである。第2のバイポーラトランジスタ808のベースは、第1の二次コイル801の前記一端に接続されている。第2のバイポーラトランジスタ808のコレクタは、第1の二次コイル801の前記他端に接続されるとともに、第2の補助コンデンサ803の前記他端に接続されている。第2のバイポーラトランジスタ808のエミッタは、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに第3の抵抗812を介して接続されている。つまり、第2のバイポーラトランジスタ808は、そのベースから流出する電流を増幅した増幅電流が、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートから、第2の補助コンデンサ803及び直流電源804の負極804bに流れるように接続されている。
【0038】
放電抑制ダイオード809は、第1の二次コイル801の前記一端と、第1の補助コンデンサ802の前記一端及び正極側ダイオード805のカソードとの間に、そのアノードを第1の二次コイル801側に向けた状態で接続されている。したがって、放電抑制ダイオード809は、第1の補助コンデンサ802及び直流電源804から第1の二次コイル801に電流が流れるのを規制する。
【0039】
第2のスイッチング素子駆動回路80bは、第1の下アームスイッチング素子52bを駆動する。第2のスイッチング素子駆動回路80bでは、第2の補助コンデンサ803の一端が、第1の基準電位点GND1に代えて、第1の基準電位点GND1とは異なる第2の基準電位点GND2に接続されている。また、直流電源804が、第1の基準電位点GND1に代えて、第2の基準電位点GND2に接続されている。直流電源804の正極804aの出力電圧VDD2は15V、直流電源804の負極804bの出力電圧VSS2は-3Vに設定されている。その他の点において、第2のスイッチング素子駆動回路80bは、第1のスイッチング素子駆動回路80aと同じ構成を有している。第1及び第2のスイッチング素子駆動回路80a,80bは、共通のレグ521に属する互いに異なるスイッチング素子52a,52bを駆動する。第1及び第2のスイッチング素子駆動回路80a,80bの第1の二次コイル801は、共通の第1の一次コイル72とでパルストランスを構成している。第1及び第2のスイッチング素子駆動回路80a,80bの第1の二次コイル801は、第1の上アームスイッチング素子52a及び第1の下アームスイッチング素子52bのオンオフが、互いに逆になるように接続されている。
【0040】
第2のレグ駆動回路70bは、第2のレグ522を駆動する。第2のレグ駆動回路70bは、
図3に示す第1のレグ駆動回路70aと同様の構成を有している。第1及び第2のレグ駆動回路70a,70bは、第1及び第2のレグ521,522のうち互いに異なるレグを駆動する。
【0041】
DCリンクコンデンサ53は、第1整流回路51とインバータ装置52の第1及び第2のレグ521,522との間に、これら第1整流回路51と第1及び第2のレグ521,522と並列に接続されている。DCリンクコンデンサ53は、第1整流回路51の1対の出力ノードON1,ON2間に接続されている。
【0042】
絶縁トランス54は、インバータ装置52により出力される第1交流電圧を第2交流電圧に変換する。絶縁トランス54は、第2の一次コイル54aと、第2の二次コイル54bとを有している。第2の一次コイル54aの電圧が、第1交流電圧となり、第2の二次コイル54bの電圧が、第2交流電圧となる。第2の一次コイル54aは、第1の上アームスイッチング素子52a、及び第1の下アームスイッチング素子52bの接続点と、第2の上アームスイッチング素子52c、及び第2の下アームスイッチング素子52dの接続点との間に接続されている。
【0043】
第2整流回路55は、第1交流電圧に基づく第2交流電圧に基づいて、直流の供給電流を生成する。具体的には、第2整流回路55は、第1及び第2のダイオード55a,55bを有している。第1のダイオード55aのアノードは、第2の二次コイル54bの一端部に接続され、第2のダイオード55bのアノードは、第2の二次コイル54bの他端部に接続されている。第1及び第2のダイオード55a,55bのカソードは、第1のノードN1に接続されている。
【0044】
リアクトル56は、第2の二次コイル54bの中途部と第2のノードN2との間に接続されている。
【0045】
上述のように構成された第1のスイッチング素子駆動回路80aでは、第1の二次コイル801の電圧Voがローレベルからハイレベルに立ち上がると、第1の二次コイル801から第1の抵抗810及び放電抑制ダイオード809を介して第1の補助コンデンサ802に電流が流れ込み、第1の補助コンデンサ802が充電される。また、第1の二次コイル801から電流が第2の抵抗811を介して第1のバイポーラトランジスタ807のベースに流入し、第1のバイポーラトランジスタ807のエミッタに流れる。これにより、第1のバイポーラトランジスタ807のベースに流入する電流を増幅した増幅電流が、第1の補助コンデンサ802及び直流電源804の正極804aから第1のバイポーラトランジスタ807のエミッタに流れる。そして、第1の二次コイル801からの電流と、第1の補助コンデンサ802及び直流電源804の正極804aからの増幅電流とが、第1のバイポーラトランジスタ807のエミッタから第3の抵抗812を介して第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに流れる。これにより、第1の上アームスイッチング素子52aの寄生容量が充電される。第1の上アームスイッチング素子52aのゲートの電圧が閾値を超えると、第1の上アームスイッチング素子52aがオンする。
【0046】
その後、第1の二次コイル801の電圧Voがハイレベルからローレベルに立ち下がると、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートから第3の抵抗812、第2のバイポーラトランジスタ808のエミッタ及びベース、及び第2の抵抗811を介して第1の二次コイル801に電流が流れる。これにより、第2のバイポーラトランジスタ808のベースから流出する電流を増幅した増幅電流が、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートから第2のバイポーラトランジスタ808のエミッタ及びコレクタを介して第2の補助コンデンサ803及び直流電源804の負極804bに流れる。これにより、第1の上アームスイッチング素子52aの寄生容量に蓄えられた電荷が放電される。第1の上アームスイッチング素子52aのゲートの電圧が閾値以下になると、第1の上アームスイッチング素子52aがオフする。一方、第1の補助コンデンサ802から第1の二次コイル801への放電は、放電抑制ダイオード809により抑制される。
【0047】
第1の下アームスイッチング素子52bの駆動電圧の立ち上がり時、及び立ち下がり時には、第2のスイッチング素子駆動回路80bが同様に動作する。
【0048】
このように、第1の上アームスイッチング素子52aの駆動電圧(ゲート電圧)の立ち上がり時には、第1の二次コイル801を流れる電流を増幅した増幅電流を、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに流入させることができる。また、第1の上アームスイッチング素子52aの駆動電圧の立ち下がり時には、第1の二次コイル801を流れる電流を増幅した増幅電流を、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートから流出させることができる。したがって、引用文献1のように、二次コイルからスイッチング素子のゲートに直接電流を流すようにした場合に比べ、第1の二次コイル801に流すピーク電流を小さくし、パルストランスの漏れインダクタンスに起因する第1の上アームスイッチング素子52aの駆動電圧の歪みを抑制できる。
【0049】
さらに、第1の上アームスイッチング素子52aの駆動電圧の立ち上がり時に、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートに流入する増幅電流を、直流電源804及び第1の補助コンデンサ802の両方から供給できるので、直流電源804だけから供給する場合に比べ、直流電源804の出力容量を小さくできる。また、第1の上アームスイッチング素子52aの駆動電圧の立ち下がり時に、第1の上アームスイッチング素子52aのゲートから流出する増幅電流を、直流電源804及び第2の補助コンデンサ803の両方に流せるので、直流電源804だけに流す場合に比べ、直流電源804の出力容量を小さくできる。したがって、コストを削減できる。
【0050】
なお、上記実施形態では、本発明をレーザ加工装置100に適用したが、アーク溶接機等、レーザ加工装置100以外の熱加工装置に適用してもよい。また、太陽電池パネルにより得られた電力を変換するパワーコンディショナ等、熱加工装置以外で用いられる電力変換装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示のスイッチング素子駆動回路、レグ駆動回路、電力変換装置及び熱加工装置は、コストを抑えつつ、スイッチング素子の駆動電圧の歪みを抑制でき、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを駆動するスイッチング素子駆動回路、レグ駆動回路、電力変換装置及び熱加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0052】
100 レーザ加工装置(熱加工装置)
52 インバータ装置(電力変換装置)
521 第1のレグ
522 第2のレグ
52a 第1の上アームスイッチング素子
52b 第1の下アームスイッチング素子
52c 第2の上アームスイッチング素子
52d 第2の下アームスイッチング素子
70a 第1のレグ駆動回路
70b 第2のレグ駆動回路
72 第1の一次コイル
80a 第1のスイッチング素子駆動回路
80b 第2のスイッチング素子駆動回路
801 第1の二次コイル
802 第1の補助コンデンサ
803 第2の補助コンデンサ
804 直流電源
804a 正極
804b 負極
807 第1のバイポーラトランジスタ
808 第2のバイポーラトランジスタ
809 放電抑制ダイオード(規制部)