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特開2024-158910キャビテーション処理ユニットおよびそれに使用する加圧支援装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158910
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】キャビテーション処理ユニットおよびそれに使用する加圧支援装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/22 20230101AFI20241031BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20241031BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C02F1/22 A
A47K3/28
B01D19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074535
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 文仁
(72)【発明者】
【氏名】新村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓雄
【テーマコード(参考)】
2D132
4D011
4D037
【Fターム(参考)】
2D132FA07
2D132FA17
2D132FF01
2D132FG01
2D132FJ22
2D132FK00
4D011AA18
4D011AB06
4D037AA02
4D037AB11
4D037BA23
4D037BB07
(57)【要約】
【課題】加圧前と比較してキャビテーション処理効率が確実に向上する流量値が得られるように、キャビテーショノズルに対し加圧支援することができる機能を有したキャビテーション処理ユニットを提供する。
【解決手段】キャビテーショノズルの軸断面への投影にて、ねじ部材のねじ谷のうち臨界流速以上となるものの谷点の総数を有効谷点数N、供給流量をρ、有効谷点流量密度J=N/ρとして、流量検出部による流量検出値に対応する有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、有効谷点流量密度の値が閾値を超える場合と比較して大きくなるようにブーストポンプの作動を加圧方向に制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道本管から複数分岐するとともに末端が水道水使用のための流出ポイントとされる分岐配管の一のものに対し、前記水道本管からの分岐点と前記流出ポイントとの間に設置されるキャビテーションノズルであって、流路の内面から断面半径方向内向きに、ねじ山ピッチが0.2mm以上0.4mm以下、ねじ谷深さが0.2mm以上0.4mm以下のねじ部が外周面に形成されたねじ部材が所定数突設されるとともに、水の出口側を開放として供給水圧が0.1MPaとなる標準条件にて通水したときの、前記ねじ部材が配置される前記流路の軸断面内の平均流速が9m/秒以上となるように前記流路の軸断面径が定められ、水道水の供給に伴い前記ねじ部材のねじ谷をキャビテーションポイントとして機能させるキャビテーションノズルと、
前記分岐配管上にて前記キャビテーションノズルと直列に設けられ、前記キャビテーションノズルに対する供給水圧を増圧するブーストポンプと、
前記キャビテーションノズルへの水供給流量を直接的に又は前記水供給流量を反映したパラメータとして間接的に検出する流量検出部と、
前記流量検出部が検出する水供給流量に応じて前記ブーストポンプの動作を制御するブーストポンプ制御部とを備え、
前記キャビテーションノズルの前記ねじ部材が配置される軸断面内において、ねじ部材に水が衝突する直前の断面半径方向の流速分布が断面中心位置にて最大となり流路内壁面位置にてゼロとなる放物線状であると定め、さらに前記軸断面の半径をRとして、前記軸断面の中心から0.71Rの位置における前記標準条件での流速を臨界流速と定義したとき、前記ブーストポンプ制御部は、前記軸断面への投影にて前記ねじ部材のねじ谷のうち前記臨界流速以上となるものの谷点の総数を有効谷点数N、前記供給流量をρ、有効谷点流量密度J=N/ρとして、前記流量検出部による流量検出値に対応する前記有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、前記ブーストポンプの作動を加圧方向に制御して、前記閾値を超える値に前記有効谷点流量密度を増加させることを特徴とするキャビテーション処理ユニット。
【請求項2】
前記ブーストポンプは作動停止状態において前記分岐配管の供給水流を受けて空転可能に構成されており、
前記ブーストポンプ制御部は、前記有効谷点流量密度の値が前記閾値を超える場合には前記ブーストポンプの作動を停止する一方、前記分岐配管への元圧低下に伴う流量減少により前記有効谷点流量密度の値が前記閾値未満となる場合には、該閾値を超える有効谷点流量密度となる供給流量が得られるように前記ブーストポンプの作動を制御する請求項1記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項3】
前記キャビテーションノズルは、動水圧軸と有効谷点流量密度軸とが張る直交平面座標系において前記キャビテーションノズルに対する動水圧と前記有効谷点流量密度との関係を示す有効谷点流量密度特性曲線が、予め定められた動水圧にて前記有効谷点流量密度が極大となる極大点を有し、かつ前記極大点よりも低水圧側において前記有効谷点流量密度がゼロとなる点である有効谷点流量密度ゼロ点から前記極大点に至る第一区間と、前記極大点よりも高水圧側にて前記有効谷点流量密度が動水圧の増加ととともに前記第一区間よりも緩やかに減少する第二区間とを有するものであり、
前記閾値は、前記第一区間において前記極大点よりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点に対応する有効谷点流量密度値として定められている請求項1又は請求項2に記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項4】
前記キャビテーションノズルは前記ねじ部材として、前記流路の軸断面への投影において、該軸断面の中心軸線周りに十字状に配置される4本のねじ部材の組を含み、それら4本のねじ部材の脚部先端面が正方形状の中心ギャップを形成する請求項3記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項5】
前記ブーストポンプ制御部は、前記流量検出値が前記有効谷点流量密度の前記閾値に対応する閾流量未満となっている場合は前記ブーストポンプを前記流量検出値とは無関係に予め定められた駆動電圧により定電圧駆動し、前記流量検出値が前記閾流量を超えている場合は前記ブーストポンプを作動停止させる請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項6】
前記直交平面座標系において、前記有効谷点流量密度特性曲線と前記有効谷点流量密度が前記極大点から10%低下する位置を通り前記動水圧軸に対して平行な仮想線との2つの交点のうち、前記第二区間上の交点をブースト上限点、前記第一区間上の交点をブースト下限点として、
前記閾値は、前記第一区間の前記ブースト下限点よりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点に対応する有効谷点流量密度値として定められ、
前記キャビテーションノズルの動水圧が前記有効谷点流量密度ゼロ点に対応する動水圧となるまで前記分岐配管への元圧が低下した状態にて前記ブーストポンプを作動させたとき、前記動水圧が前記ブースト下限点に対応する下限動水圧値を超える増圧代が得られるように、前記定電圧駆動時の前記ブーストポンプの揚程が選定されている請求項5記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項7】
前記定電圧駆動時の前記ブーストポンプの揚程は、前記ブースト下限点から前記ブースト上限点に至る動水圧幅よりも前記増圧代が小さくなるように選定されている請求項6記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項8】
前記ブーストポンプ制御部は、前記流量検出値が前記閾値に対応する閾流量未満となっている場合は前記ブーストポンプを、増圧後の前記キャビテーションノズルの目標流量値を前記閾流量よりも高く設定するとともに前記流量検出値を参照しつつ駆動電圧を変動させる形で定流量駆動制御する一方、前記流量検出値が前記閾流量を超えている場合は前記ブーストポンプを作動停止させる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項9】
前記直交平面座標系において、前記有効谷点流量密度特性曲線と前記有効谷点流量密度が前記極大点から10%低下する位置を通り前記動水圧軸に対して平行な仮想線との2つの交点のうち、前記第二区間上の交点をブースト上限点、前記第一区間上の交点をブースト下限点として、前記目標流量値は、前記ブースト下限点に対応する下限流量から前記ブースト上限点に対応する上限流量に至る流量区間内に設定されている請求項8記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項10】
前記ブーストポンプ制御部は、前記閾流量が変更可能に構成されている請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項11】
前記キャビテーションノズルは、通水動水圧と有効谷点流量密度との関係を示す有効谷点流量密度特性の異なる複数のものの間で交換可能に設けられ、前記ブーストポンプ制御部は、前記分岐配管に設置するキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性に応じて前記閾流量が変更可能に構成されている請求項10に記載のキャビテーション処理ユニット。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のキャビテーション処理ユニットに組み込まれて使用されるブーストポンプであって、
前記分岐配管上にて前記キャビテーションノズルと直列に設けられ、前記キャビテーションノズルに対する供給水圧を増圧するブーストポンプと、
前記キャビテーションノズルへの水供給流量を直接的に又は前記水供給流量を反映したパラメータとして間接的に検出する流量検出部と、
前記流量検出部が検出する水供給流量に応じて前記ブーストポンプの動作を制御するブーストポンプ制御部とを備え、
前記キャビテーションノズルの前記ねじ部材が配置される軸断面内において、ねじ部材に水が衝突する直前の断面半径方向の流速分布が断面中心位置にて最大となり流路内壁面位置にてゼロとなる放物線状であると定め、さらに前記軸断面の半径をRとして、前記軸断面の中心から0.71Rの位置における前記標準条件での流速を臨界流速と定義したとき、前記ブーストポンプ制御部は、前記軸断面への投影にて前記ねじ部材のねじ谷のうち前記臨界流速以上となるものの谷点の総数を有効谷点数N、前記供給流量をρ、有効谷点流量密度J=N/ρとして、前記流量検出部による流量検出値に対応する前記有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、前記閾値を超える値に前記有効谷点流量密度を増加させるようにしたことを特徴とする加圧支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体を溶存させた液体をキャビテーション処理するためのキャビテーション処理ユニットと、それに使用する加圧支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高架水槽を用いない建物等においては、建物の水道本管から階床毎に分岐する分岐配管により給水される。この場合、水道本管の階床間を垂直に貫く部分での損失により、水道の水圧は上層階ほど低くなる。トイレの場合はタンク式(タンクに水を溜めてから便器を洗浄)を用いることで水圧の弱さは気にならない場合も多いが、浴室・洗面台(特にシャワー)や台所シンクなど、給水ポイントからの水流を直接使用したい場合は、水圧不足によるストレスを感じやすくなる。また、同一階床であっても水道本管から階床内各所に多数の分岐配管が設けられる場合、ある分岐配管での給水ポイントにて水を使おうとした際に、他の分岐配管の水道水の使用状況によっては同様の課題が生じうる。
【0003】
このような課題を解消するために、特許文献1には、シャワー等が末端に接続される給湯機に直流ブラシレスモータにより駆動される給水加圧ポンプを組み込み、水使用による給湯器への入水を検知するに伴い給水加圧ポンプ(ブーストポンプ)を自動始動させ、加圧支援を行う装置が提案されている。また、特許文献2には、水道本管上に加圧ポンプを組み込み、加圧ポンプの流出側における水圧に応じて流出圧を一定に制御する給水加圧装置が提案されている。
【0004】
次に、水道供給配管上にインライン設置可能であり、キャビテーションの利用により外気導入がなくとも微細気泡が発生可能な小型のノズル(以下、「キャビテーションノズル」ともいう)が、例えば特許文献3や特許文献4をはじめ種々提案されている。キャビテーションノズルはシャワーヘッドへの組み込みや、一般水道ラインへの組み込みも可能である。この場合、浴室床、排水溝、排水口あるいは浴槽等の汚れやぬめりの洗浄除去に効果が見込めるほか、シャワーを浴びた時の肌や髪の保湿、毛穴老廃物の除去、さらには保温効果など、種々の美容効果が発現することも知られており、女性を中心に支持を集めている。
【0005】
当然、分岐配管上にキャビテーションノズルを取り付ける場合においても、水道本管からの元圧が不足すれば、水量不足を生じる懸念が同様に生じる。そこで、このようなキャビテーションノズルに特許文献1あるいは特許文献2に開示された給水加圧装置を適用し、キャビテーションノズルへの水流速を補うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-11484号公報
【特許文献2】特開平5-263445号公報
【特許文献3】特開2020-189286号公報
【特許文献4】WO2016-195116号公報
【特許文献5】特開2021-19509号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】水ハンドブック(丸善、平成15年)11~13頁
【非特許文献2】NanotechJapan Bulletin Vol. 8, No. 4, 2015 企画特集「Collabo ナノテクノロジー」 <第4回> 1~6頁
【非特許文献3】2016年度日本建築学会大会(九州)学術講演会予稿集40318「駅トイレにおけるナノバブルを用いた尿石除去方法に関する研究 その1~ナノバブル発生機の性能確認と尿石除去性能の確認~」
【非特許文献4】2018年度日本建築学会大会(東北)学術講演会予稿集40323「駅トイレにおけるナノバブルを用いた尿石除去方法に関する研究 その2~ナノバブル発生ノズルの改良と尿石に対する効果の確認~」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の給水加圧装置は、水使用に伴う給湯器への入水を検知すると無条件に給水加圧ポンプが始動されるようになっているため、給水圧の不足が特に問題とならないシーンにおいてもポンプが作動してしまう問題がある。また、特許文献2の給水加圧装置は水道本管上に設けられ、加圧ポンプの流出側の水圧を検出して流出圧を制御することが前提となっている。このため、水圧が十分確保できる下層階でもポンプ作動により水道圧が増圧され、同様の問題を生じる。
【0009】
さらに、本発明者らが鋭意検討したところ、特許文献3のごとく、ねじ谷をキャビテーションポイントとして使用するキャビテーショノズルの場合、流路軸断面内の平均的な通水流速を加圧により一方的に増加させても、通水流量の設定によっては供給水に対するキャビテーション処理効率を必ずしも高めることができないことが判明した。このような問題は、特許文献1の給水加圧装置のごとく、流量が十分な状態で加圧ポンプが作動してしまう場合に生じやすい。
【0010】
本発明の課題は、加圧前と比較してキャビテーション処理効率が確実に向上する流量値が得られるように、キャビテーショノズルに対し加圧支援することができる機能を有したキャビテーション処理ユニットと、それに使用する加圧支援装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明のキャビテーション処理ユニットは、水道本管から複数分岐するとともに末端が水道水使用のための流出ポイントとされる分岐配管の一のものに対し、水道本管からの分岐点と流出ポイントとの間に設置されるキャビテーションノズルであって、流路の内面から断面半径方向内向きに、ねじ山ピッチが0.2mm以上0.4mm以下、ねじ谷深さが0.2mm以上0.4mm以下のねじ部が外周面に形成されたねじ部材が所定数突設されるとともに、水の出口側を開放として供給水圧が0.1MPaとなる標準条件にて通水したときの、ねじ部材が配置される流路の軸断面内の平均流速が9m/秒以上となるように流路の軸断面径が定められ、水道水の供給に伴いねじ部材のねじ谷をキャビテーションポイントとして機能させるキャビテーションノズルと、分岐配管上にてキャビテーションノズルと直列に設けられ、キャビテーションノズルに対する供給水圧を増圧するブーストポンプと、キャビテーションノズルへの水供給流量を直接的に又は水供給流量を反映したパラメータとして間接的に検出する流量検出部と、流量検出部が検出する水供給流量に応じてブーストポンプの動作を制御するブーストポンプ制御部とを備え、キャビテーションノズルのねじ部材が配置される軸断面内において、ねじ部材に水が衝突する直前の断面半径方向の流速分布が断面中心位置にて最大となり流路内壁面位置にてゼロとなる放物線状であると定め、さらに軸断面の半径をRとして、軸断面の中心から0.71Rの位置における標準条件での流速を臨界流速と定義したとき、ブーストポンプ制御部は、軸断面への投影にてねじ部材のねじ谷のうち臨界流速以上となるものの谷点の総数を有効谷点数N、供給流量をρ、有効谷点流量密度J=N/ρとして、流量検出部による流量検出値に対応する有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、ブーストポンプの作動を加圧方向に制御して閾値を超える値に有効谷点流量密度を増加させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の加圧支援装置は、上記本発明のキャビテーション処理ユニットに使用される加圧支援装置であって、分岐配管上にて前記キャビテーションノズルと直列に設けられ、キャビテーションノズルに対する供給水圧を増圧するブーストポンプと、キャビテーションノズルへの水供給流量を直接的に又は水供給流量を反映したパラメータとして間接的に検出する流量検出部と、流量検出部が検出する水供給流量に応じてブーストポンプの動作を制御するブーストポンプ制御部とを備え、キャビテーションノズルのねじ部材が配置される軸断面内において、ねじ部材に水が衝突する直前の断面半径方向の流速分布が断面中心位置にて最大となり流路内壁面位置にてゼロとなる放物線状であると定め、さらに軸断面の半径をRとして、軸断面の中心から0.71Rの位置における標準条件での流速を臨界流速と定義したとき、ブーストポンプ制御部は、軸断面への投影にてねじ部材のねじ谷のうち臨界流速以上となるものの谷点の総数を有効谷点数N、供給流量をρ、有効谷点流量密度J=N/ρとして、流量検出部による流量検出値に対応する有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、ブーストポンプの作動を加圧方向に制御して閾値を超える値に有効谷点流量密度を増加させるようにしたことを特徴とする。
【0013】
ブーストポンプは分岐配管上にてキャビテーションノズルと直列に設けられ、キャビテーションノズルに対する供給動水圧を増圧する役割を担う。また、分岐配管上には流量検出部が設けられ、その流量検出値に応じてブーストポンプの動作がーストポンプ制御部により制御される。これにより、給水圧の低下により分岐配管の流量が不足した場合にのみブーストポンプを作動させることができるようになり、キャビテーションノズルが設けられた分岐配管への流量を適正に保つ上で好都合となる。
【0014】
そして、本発明においてブーストポンプ制御部は、流量検出部による流量検出値に対応する有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、有効谷点流量密度の値が閾値を超えるよう、ブーストポンプの作動を加圧方向に制御する。追って詳述する通り、水の浸透性向上などキャビテーション処理により享受できる種々の効果の発現は、一般的な計測手段により検出が容易な100nm以上の成長した気泡ではなく、キャビテーションポイントにて減圧析出する、数nmレベルの計測のより困難な気泡核であると考えられる。ねじ部材を用いたノズルの場合、ねじ谷領域のうち、局所的に流速が高まり気泡核の発生が顕著となる底位置(谷点)がキャビテーションポイントとして活用できることになる。
【0015】
しかし、そうした谷点であっても、分子レベルでの水の流動挙動が明らかに変化するほどの気泡核が生成できるようにするためには、谷点での局所的な負圧がほぼ真空に近づくレベルに到達している必要がある。換言すれば、軸断面内のねじ谷の谷点うち局所的な流速が十分なレベルに到達しているもののみがキャビテーションポイントとして有効に機能するのである。本発明に採用するキャビテーションノズルは、水の出口側を開放として供給水圧が0.1MPaとなる標準条件にて通水したときの、ねじ部材が配置される流路の軸断面内の平均流速が9m/秒以上となるように流路の軸断面径が定められる。また、ねじ部材に形成されるねじ部は、ねじ山ピッチが0.2mm以上0.4mm以下、ねじ谷深さが0.2mm以上0.4mm以下に定められる。このように構成されたキャビテーションノズルの、ねじ部材に衝突する直前の流路の軸断面半径方向の流速分布を前記の放物線状であると考え、これに標準条件で通水したとき、軸断面半径Rの71%(√2/2)の位置での流速を臨界流速として定める。流路内のねじ部のねじ谷のうち、この臨界流速以上にて水流が供給されるものの谷点位置では水流がさらに絞られて高速化し、谷点での局所的な負圧はほぼ真空に近づくと考えられる。本発明では、任意の水圧にて水を供給したときのノズル内のねじ谷のうち、臨界流速以上となるねじ谷の谷点のみを、気泡核生成が顕著となる有効谷点として考慮する。
【0016】
キャビテーションノズルに水を供給するとき、ブーストポンプによる加圧により水の流量を増加させれば軸断面内の平均流速も上昇し、臨界流速以上となる谷点すなわち有効谷点は軸断面半径方向外側にその数を増加させる。処理水中の気泡核は有効谷点の数が増えるほど多くなると考えられるが、後述のごとく、気泡核を直接検出可能な分析手段は、超高圧顕微鏡観察など極めて限られている。他方、気泡核の構成物質は水道水中の溶存空気であり、通常の溶存酸素濃度(例えば3~8ppm)濃度を有した水道水であれば、流速が十分確保された状態でねじ谷を通過することにより、気泡核が十分発生できることは容易に推定できるから、有効谷点数は気泡核発生数の代替パラメータとなりうる。この場合、ブーストポンプによる加圧支援に伴い有効谷点数とともに水の流量も増加するから、処理水への気泡核の発生密度すなわちキャビテーション処理効率の度合いを反映したパラメータとして、有効谷点数Nを水の流量ρで除した有効谷点流量密度Jの値を採用することは、技術的に妥当と本発明者らは考える。
【0017】
ねじ部材のねじ谷の深さやねじ山ピッチが0.2mm未満になると、谷点に向けて水流が絞られる効果が不足し、キャビテーションポイントしての機能(溶存気体の減圧による気泡核析出機能)が十分に発揮されにくくなる。また、ねじ山ピッチが0.4mm以上に増大した場合もキャビテーションポイントとしての機能が不十分になりやすいことに加え、ねじ脚部の単位長当たりのねじ谷数が減じるので、キャビテーションノズルに組み込み可能なねじ谷(キャビテーションポイント)の総数が不十分となりやすい。よって、本発明においては、ねじ山ピッチ及びねじ谷深さを0.2mm以上0.4mm以下に設定する。なお、ねじ部材の強度確保と、流路断面がねじ部材により過度に占有されないようにすること、ひいては水道圧程度の通常の送液圧でも液体流通量を十分確保できるようにする観点から、ねじ部材の公称ねじ径は1.0mm以上2.0mm以下に設定するのがよい。この公称ねじ径の値の範囲は、上記のねじ山ピッチ及びねじ谷深さをカバーするJIS並目ピッチねじの公称ねじ径の範囲とほぼ一致する。以上は、特許文献3あるいは特許文献4の開示内容からも示唆されている。
【0018】
そして、本発明においては、流量検出部による流量検出値に対応する有効谷点流量密度の値が予め定められた閾値未満となっている場合に、ブーストポンプ制御部により、有効谷点流量密度の値が閾値を超える場合と比較して大きくなるよう、ブーストポンプの作動が増圧方向に制御される。よって、キャビテーション処理効率が確実に向上する流量値が得られるように、キャビテーショノズルに対し加圧支援することが可能となる。
【0019】
以下、本発明に付加可能な種々の要件についてさらに説明する。
ブーストポンプは作動停止状態において分岐配管の供給水流を受けて空転可能に構成することができる。この場合、ブーストポンプ制御部は、有効谷点流量密度の値が閾値を超える場合にはブーストポンプの作動を停止する一方、分岐配管への元圧低下に伴う流量減少により有効谷点流量密度の値が閾値未満となる場合には、該閾値を超える有効谷点流量密度となる供給流量が得られるようにブーストポンプの作動を制御するよう、構成することができる。この構成によると、有効谷点流量密度の値が閾値を超え、ブーストポンプによる加圧支援が不要となる状況においてはブーストポンプが停止するように制御されるので、余分な電力消費を防止できる。その際、ブーストポンプは分岐配管の供給水流を受け空転するので、ブーストポンプ停止に伴う圧損増加も生じにくい。このようなブーストポンプとして、例えばDCブラシレスモータを駆動源とするポンプを例示できる。
【0020】
ねじ部材を使用するキャビテーションノズルとして、本発明においては、動水圧軸と有効谷点流量密度軸とが張る直交平面座標系においてキャビテーションノズルに対する動水圧と有効谷点流量密度との関係を示す有効谷点流量密度特性曲線が、予め定められた動水圧にて有効谷点流量密度が極大となる極大点を有し、かつ極大点よりも低水圧側において有効谷点流量密度がゼロとなる点である有効谷点流量密度ゼロ点から極大点に至る第一区間と、極大点よりも高水圧側にて有効谷点流量密度が動水圧の増加ととともに第一区間よりも緩やかに減少する第二区間とを有するものを採用できる。特にねじ部材として、流路の軸断面への投影において該軸断面の中心軸線周りに十字状に配置される4本のねじ部材の組を含み、それら4本のねじ部材の脚部先端面が正方形状の中心ギャップを形成するキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線は、第一区間において動水圧低下時の有効谷点流量密度の減少が急激であり、わずかな動水圧低下でもキャビテーション効率の大幅な低下につながる懸念がある。この場合、前述の閾値は、第一区間において極大点よりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点に対応する有効谷点流量密度値として定めておくことで、ブーストポンプによる動水圧の上昇代が多少小さい場合でも、有効谷点流量密度の増加代を大きく確保することができる。
【0021】
上記のようなキャビテーションノズルは、どのように流量制御を行おうとも、有効谷点流量密度特性曲線上の極大点を超えて有効谷点流量密度を増加させることは物理的に不可能である。この場合、ブーストポンプによる加圧支援により有効谷点流量密度の増加代を顕著に確保するには、上記の直交平面座標系において、有効谷点流量密度特性曲線と有効谷点流量密度が極大点から10%低下する位置を通り動水圧軸に対して平行な仮想線との2つの交点のうち、第二区間上の交点をブースト上限点、第一区間上の交点をブースト下限点として、前述の閾値は、第一区間のブースト下限点よりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点に対応する有効谷点流量密度値として定めておくことが望ましい。
【0022】
ブーストポンプ制御部は、流量検出値が閾値に対応する閾流量未満となっている場合はブーストポンプを流量検出値とは無関係に予め定められた駆動電圧により定電圧駆動し、流量検出値が閾流量を超えている場合はブーストポンプを作動停止させるものとして構成できる。この構成によれば、ブーストポンプの作動制御を単純なオンオフ制御とすることができ、回路構成や制御ロジックの大幅な簡略化を図ることができる。
【0023】
この場合、キャビテーションノズルの動水圧が有効谷点流量密度ゼロ点に対応する動水圧となるまで分岐配管への元圧が低下した状態にてブーストポンプを作動させたとき、動水圧がブースト下限点に対応する下限動水圧値を超える増圧代が得られるように、定電圧駆動時のブーストポンプの揚程を選定することができる。これにより、加圧後のブーストポンプの動作点がブースト下限点よりも大流量位置となるように加圧支援でき、例えば加圧後の動作点が第一区間に収まっている場合、有効谷点流量密度を極大点から10%以内の高い値に維持することができる。一方、加圧による動水圧の増加代が多少過剰となり、加圧後の動作点が第二区間に移行した場合にあっても、該第二区間は有効谷点流量密度が動水圧の増加ととともに第一区間よりも緩やかに減少するので、加圧後の有効谷点流量密度を良好な値に維持することは比較的容易である。この場合、定電圧駆動時のブーストポンプの揚程を、ブースト下限点からブースト上限点に至る動水圧幅よりも増圧代が小さくなるように選定しておけば、加圧後の動作点が第二区間に移行した場合でも、有効谷点流量密度を極大点から10%以内の高い値に維持することができる。
【0024】
ブーストポンプの作動を定電圧駆動のオンオフ制御とする上記の構成では、ブーストポンプによる動水圧の増加代が常に一定となるため、キャビテーションノズルへの元圧変動により有効谷点流量密度特性曲線における加圧前の動作点位置が変動すれば、加圧後の動作点位置も変動することになり、水流に脈動が生じることにつながる。そこで、ブーストポンプ制御部は、流量検出値が有効谷点流量密度の閾値に対応する閾流量未満となっている場合はブーストポンプを、増圧後のキャビテーションノズルの目標流量値を閾流量よりも高く設定するとともに、流量検出値を参照しつつ駆動電圧を変動させる形で定流量駆動制御する一方、流量検出値が閾流量を超えている場合はブーストポンプを作動停止させるように構成できる。このようにすると、キャビテーションノズルの加圧後の水流の脈動を防止できるほか有効谷点流量密度を一定に保つことができ、キャビテーション処理に伴う前述の特有の効果をより安定に享受することができる。この場合も、目標流量値を、前述のブースト下限点からブースト上限点に至る動水圧幅よりも許容変動幅が小さくなるように設定しておけば、加圧後の有効谷点流量密度を極大点から10%以内の高い値に維持することができる。
【0025】
ブーストポンプ制御部は閾流量を変更可能に構成することができる。これにより、キャビテーション処理ユニットの使用形態に応じて閾流量を最適な値に容易に調整することができる。閾流量は、例えば分岐配管に接続される負荷の種別に応じて変更可能とすることができる。また、キャビテーションノズルは、有効谷点流量密度特性の異なる複数のものの間で交換可能に設けることができる。この場合、ブーストポンプ制御部は、分岐配管に設置するキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性に応じて閾流量を変更可能に構成することができる。これにより、キャビテーションノズルが有効谷点流量密度特性の異なるものに変更された場合においても、閾流量を最適な値に容易に調整することができ、ひいてはキャビテーションノズルの種別によらず加圧後の有効谷点流量密度を常に適正な値に確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
上記本発明の構成によると、キャビテーショノズルに対し加圧支援した場合に、加圧前と比較してキャビテーション処理効率が確実に向上できる流量値が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のキャビテーション処理ユニットの使用形態の一例を示す図。
図2】給水ポイントにシャワーヘッドを取り付けて使用する場合について、図1のキャビテーション処理ユニットの分岐配管への接続形態を示す図。
図3】キャビテーションノズルの一例を示す横断面図。
図4】キャビテーションノズルの有効谷点密度の概念を説明する図。
図5】本発明のキャビテーション処理ユニットの電気的構成の例を示すブロック図。
図6図5のキャビテーション処理ユニットの制御プログラムの処理流れを示すフローチャート。
図7】第一のキャビテーションノズルの特性数値表を動水圧-流量特性線図とともに示す図。
図8】第一のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線を、加圧制御シーケンスとともに示す図。
図9】第二のキャビテーションノズルの特性数値表を動水圧-流量特性線図とともに示す図。
図10】第二のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線を、加圧制御シーケンスの例とともに示す図。
図11図2の加圧制御シーケンスを実現可能なキャビテーション処理ユニットの電気的構成の例を示すブロック図。
図12図11のキャビテーション処理ユニットの制御プログラムの処理流れを示すフローチャート。
図13】第二のキャビテーションノズルを図11のキャビテーション処理ユニットに適用した場合の加圧制御シーケンスを有効谷点流量密度特性曲線上にて説明する図。
図14】給水ポイントを開放として使用する場合について、図1のキャビテーション処理ユニットの分岐配管への接続形態を示す図。
図15図14の接続形態について流量センサを圧力センサに置き換え可能であることを説明する図。
図16】第三のキャビテーションノズルの特性数値表を動水圧-流量特性線図とともに示す図。
図17】第三のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線を、図14の接続形態における加圧制御シーケンスとともに示す図。
図18】給水ポイントに負荷としてシャワーヘッドを接続した場合について、流量検知部を圧力センサにて代替実現可能であることを説明する図。
図19】第一のキャビテーションノズルを用いて閾流量を変更可能に設定する場合の具体例を示すグラフ。
図20】閾流量を変更可能に構成したブーストポンプ制御部の電気的構成の一例を示すブロック図。
図21】閾流量を変更するための入力部及び表示部の一例を示す図。
図22】閾流量設定プログラムの流れを示す図。
図23図20の入力部及び表示部を用いて閾流量をカスタム入力する方法を説明する図。
図24】ノズル種別に関する図。
図25】50nmの気泡が水の浸透性に影響しにくいことを説明する図。
図26】非特許文献2から引用した、気泡核の観察例を示していると推定される超高圧電子顕微鏡観察画像をナノバブル計測結果とともに示す図。
図27】使用する水道水の溶存酸素濃度の低下に伴い、気泡核析出源となる過飽和酸素濃度が減少することを説明する図。
図28】使用する水道水の溶存酸素濃度の低下に伴い、CVP流量密度の閾値を変更設定する概念を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づき説明する。
図1は本発明のキャビテーション処理ユニットの使用形態の一例を示すものであり、高架水槽を用いない高層建築物1000(例えばマンション)への適用例を示している。高層建築物1000においては、水道本管1003から階床毎に分岐する分岐配管1005により給水される。この場合、水道の水圧は、水道本管1003の階床間を垂直に貫く本管部分1003Vでの損失により上層階ほど低くなる。水道供給元圧では上層階層への給水圧が極度に不足するため、水道本管1003の地上区間には元ブーストポンプ1002が配設されている。そして。キャビテーション処理ユニット1は分岐配管1005の一のものに対し、水道本管1003からの分岐点1006と流出ポイント1007との間に設置されている。本図では最上階の分岐配管1005にキャビテーション処理ユニット1を配設しているが、他の階床の分岐配管1005上にももちろん配設可能である。
【0029】
図2は、分岐配管1005の給水ポイントにシャワーヘッド1015を取り付けて使用する場合の接続形態を示すものである。分岐配管1005の給水ポイントは、例えば浴室内のシャワーホース取り付け継手部であり、ユーザが手動操作するシャワー給水バルブ1010が設けられている。キャビテーション処理ユニット1の流入側継手20はジョイント配管1011を介してシャワー給水バルブ1010に接続されている。また、流出側継手21にはキャビテーションノズル100が直結され、このキャビテーションノズル100にシャワーホース1012が接続されるとともに、その末端のシャワー接続金具1013にシャワーヘッド1015が着脱可能に取り付けられている。なお、キャビテーション処理ユニット1はシャワー給水バルブ1010の上流側に設けてもよい。
【0030】
図3はキャビテーションノズル100の一例を示す横断面図である。キャビテーションノズル100はノズルケーシング150を備える。キャビテーションノズル100の液体の流通方向において、ノズルケーシング150の液体入口と液体出口との一方の位置する側を第一側(図3では図面左側)とし、他方の位置する側を第二側(図3では図面右側)として、ノズルケーシング150は、第一側を構成するケーシング本体150Bと第二側を構成するコア押え部150Aとからなり、いずれも金属(例えば真鍮等の銅合金(クロムあるいはニッケル等のメッキ層で覆われていてもよい)、ステンレス鋼等の鉄系材料)により構成されている。
【0031】
ケーシング本体150Bは第二側端面にコア挿入口150pを開口する形で収容通路部156が形成されており、収容通路部156に挿入されたキャビテーションコア101の第二側端面よりもケーシング本体150の第二側端部が延出するとともに、該第二側端部の内周面に組立用雌ねじ部150gが形成されている。また、ケーシング本体150Bの第一側端部には、軸線方向の一端が第一側開口部154として開口し他端が収容通路部156に連通する形で、液体流路103の一部をなす第一側流路部150uが貫通形成されている。
【0032】
他方、コア押え部150Aの第一側端部の外周面には、ケーシング本体150Bの組立用雌ねじ部150gと螺合する組立用雄ねじ部150dが形成されており、その基端位置にはオーリング150eがはめ込まれている。また、コア押え部150Aを軸線方向に貫通する形で液体流路103の一部をなす第二側流路部150vが形成され、コア押え部150Aの第二側端面に第二側開口部155を形成している。組立用雄ねじ部150dを組立用雄ねじ部150dに螺合締結することによりコア押え部150Aは、第一側端面(本実施形態では、座繰り50nの底面)をキャビテーションコア101の第二側端面の外周縁部に当接させる形でこれを抜止め保持する。他方、キャビテーションコア1の第一側端面は収容通路部156の底面外周縁部に当て止めされている。また、ケーシング本体150Bの第一側端部には、配管系の第一ねじ継手と螺合するノズル側ねじ継手部151が刻設されている。他方、コア押え部150Aの第二側端部には、配管系の雄ねじ継手と螺合する袋ナット150Cが回転自在に嵌着されている。袋ナット150Cの外周面は六角状の工具係合面153とされている。
【0033】
キャビテーションコア101のコア本体101Mの液体流路103は、該液体流路103の中心軸線の中点Gを含む区間が円筒面形態の絞り部109Aとされ、液体流路103の絞り部109Aの前後区間をなす部分が各々絞り部109Aよりも径大の一対の拡径部109Bとされている。ねじ装着孔119はねじ部材110とともに絞り部109Aに配設され、拡径部109Bのそれぞれの内側に整流部材163がコア本体101Mと一体化した形態で配置されている。
【0034】
ねじ部材110は、ねじ山ピッチが0.25mm以上0.35mm以下、ねじ谷深さが0.25mm以上0.35mm以下のものが使用されている。本実施形態にてねじ部材110は、JISに定められた0番1種なべ小ねじが使用されている。ねじ部材110は、図3の下に示すように、流路の軸断面への投影において、該軸断面の中心軸線Oの周りに十字状に配置される4本のねじ部材110を一組として配設されており、それら4本のねじ部材110の脚部先端面が正方形状の中心ギャップ110gを形成している。図3においては、中心軸線Oに関して互いに45°の角度をなす配列Aのねじ組と配列Bのねじ組とが交互に5組配設されている。ただし、ねじ組の数は1つでもよいし、複数組設ける場合でも軸断面への投影において配列Aのねじ組のみを互いに重なるように配置することもできる(例えば、図3から2つの配列Bのねじ組を取り除いた構成)。
【0035】
次に、キャビテーションノズル100の有効谷点密度の概念を、図4を用いて説明する。キャビテーションノズルのねじ部材110が配置される軸断面(図4上)内において、ねじ部材110に衝突する直前の流路の軸断面半径方向の流速分布を、断面中心Oの位置にて最大となり、流路内壁面109Aの位置にてゼロとなる放物線状であると定める。さらに軸断面の半径をRとし、キャビテーションノズル100の出口側を開放として該キャビテーションノズル100への供給水圧が0.1MPaとなる標準条件のときに、軸断面の中心から0.71Rの位置(R70)に存するねじ谷点位置における流速を臨界流速と定義する。なお、軸断面の半径Rは、標準条件にて通水したときの、ねじ部材が配置される流路の軸断面内の平均流速が9m/秒以上となるように定められている。
【0036】
円管内の流速分布が放物線状となることは水力学的に周知であり、ねじ部材110に衝突する直前のキャビテーションノズル100内の軸断面の流速分布を上記のごとく放物線状と想定することは技術的に合理的と考えられる。また、家庭用水道の分岐配管末端での使用水圧として0.1MPa(1kg/cm)は標準的な値であると思料される。そこで、キャビテーションノズル100の出口側を開放として該キャビテーションノズル100への供給水圧が0.1MPaとなる使用条件を標準条件として定める。キャビテーションノズル100の、ねじ部材110が配置される軸断面の中心Oにおける標準条件での流速をν(以下、「標準中心流速」という)として、ねじ谷での流速が0.5νとなる位置R70は、放物線状の流速分布を前提とする場合、軸断面の中心から0.71R((√2/2)R)の位置であり、本発明においては、標準条件においてこれよりも半径方向外側に位置するねじ谷(図4にて黒丸で表示)は、気泡核発生能力(キャビテーション処理能力)に乏しいものとして除外する。また、0.5νに相当するねじ谷での流速は、そのねじ谷がキャビテーション処理効果に貢献するか否かを判断する上での臨界値を意味するので、上記のごとく「臨界流速」と称する。
【0037】
本発明では、標準条件で水道水を流通したとき、キャビテーションノズル100内のねじ谷のうち、放物線状の流速分布を仮定したときに流速が0.5ν以上、すなわち臨界流速以上の流速が得られる円C70の内側領域に存する谷点のみ(図4の白丸)が、気泡核発生に有効に寄与する谷点、すなわちキャビテーション処理効果に貢献する「有効谷点」とみなす。水道圧の低下によりキャビテーションノズル100の流量が標準条件よりも減少すると、その時の軸断面中心の流速は標準中心流速νよりも低下する。その結果、臨界流速以上の流速が得られる領域の軸断面半径は標準条件よりも縮小し、その軸断面半径R70eqの円C70eq(以下、「臨界流速円」という)の内側に存する谷点数、すなわち有効谷点数は標準条件よりも減少する。他方、水道圧の上昇によりキャビテーションノズル100の流量が標準条件よりも増加すると、その時の軸断面中心の流速は標準中心流速νよりも上昇する。その結果、臨界流速が得られる軸断面半径位置は標準条件よりも拡大し、臨界流速円の内側に存する谷点数、すなわち有効谷点数は標準条件よりも増加する。
【0038】
キャビテーションノズル100の動水圧の変動に由来して有効谷点数が変化する場合、処理される水への気泡核の発生密度は、有効谷点数を供給される水道水の流量で除した値が大きいほど高くなると考えられる。そこで、任意の動水圧においてキャビテーションノズル100の軸断面内にて臨界流速以上となるねじ部材110の谷点数を有効谷点数N、供給流量をρとしたとき、有効谷点流量密度JをJ=N/ρとして定義する。有効谷点数Nは、図4の上に示す如くキャビテーションノズル100の流路の軸断面投影に表れるねじ部材110の全谷点の位置を特定しておき、与えられた動水圧におけるキャビテーションノズル100の臨界流速円C70eqの半径R70eq(以下、「標準等価半径」という)を算出し、軸断面投影に臨界流速円C70eqを標準等価半径R70eqにて描いた時、その円C70eqの内側に表れるねじ部の谷点を計数することにより求めることができる。ベルヌーイの定理に従い、軸断面内の平均流速が動水圧の平方根に比例して変化すると考えれば、標準条件における流量をρ0、与えられた動水圧における流量をρとして、標準等価半径R70eqは、キャビテーションノズル100の軸断面半径Rに対する比率にて、
70eq=(1-0.5/(ρ/ρ0))0.5×100 (%)
として算出することができる。
【0039】
以下、さらに補足説明を行う。
キャビテーションノズル100を通過する水道水には空気が溶存している。空気溶存量の上限は水道水に付加される大気圧に依存するが、常圧では酸素濃度レベルにて5~8ppm程度である。このように空気が溶存した水道水を図3のようなキャビテーションノズル100に供給すると、水流はねじ部110に衝突しながら通過する。水流がねじ部110の外周面を通過する際、流れはねじ谷部に高速領域を、ねじ山部に低速領域をそれぞれ形成する。谷部の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、常圧と負圧での空気溶存量の差に基づいて、溶けきれなくなった溶存空気が減圧析出し、気泡核が発生する(キャビテーション)。気泡核を析出する減圧域はねじ部周囲の谷底付近に限られており、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡の多くは気泡核の状態で成長が停止すると考えられる。
【0040】
キャビテーションノズル100で処理した水については、排水管に強固に密着した尿石層の浸透剥離(非特許文献3、4)、毛髪や肌の保湿性向上(特許文献4)、植物や魚などの水生動物の成長促進(特許文献5)、などの特有の効果が顕著であることが判明している。また、例えばレーザー回折式粒度計などにより測定すれば、平均径が100nm~300nm程度のナノ域の微小気泡を多量に含んだ水になっていることを確認できる。しかしながら、上記のよう測定可能なUFBは、サイズは小さいとはいえ分子サイズレベルから見れば「マクロ」としか言いようのないものであって、髪の毛や植物根の組織隙間や、叩いても落ちない程度に凝着した尿石層の隙間に直接浸透するような現象は起きるはずがない。キャビテーション処理水の浸透性向上のメカニズムについては、界面活性剤を添加した水のように、分子レベルにて水の浸透性そのものが向上している前提で考察する必要があると考えられる。
【0041】
水分子は電気的に分極しており、液体状態の水は好都合な配向をもつ一部の水分子同士に水素結合が形成され、互いに集団化しようとする性質を有する。このような構造は固定的なものではなく常に変化しており、水分子同士は結合したり離れたりを繰り返し、集団化する相手を次々と変えながら移ろいゆく「動的挙動」としてとらえられるべきものであり、静止した図面で表現することは本来できない。こうした動的に把握されるべき水分子の集合体については、「クラスター」の名のもとに種々議論されてきたが、「固定的構造」との混同によって種々の誤解を招来している傾向がある。この点に注意しながら非特許文献1を参照しつつ、水分子の動的挙動に反映される集合体の概念をまとめると以下のようになる。
・液体の水の分子間距離は結晶中の値とあまり変わらない286pm程度である。
・1つの水分子の最近傍配位数は結晶中の4個よりも10%多い4.4個である。
・最近傍配位関係にある分子同士の結合の滞在時間は4.6×10-12秒と極めて短い(結合したり離れたりを高速で繰り返している)。
・最近傍配位関係にある分子同士は短時間ではあっても水素結合により比較的強く束縛され、その集団同士には単独の水分子よりも大きな分子間力が作用する。このような分子間力による緩い結合を考慮できる集団数を数個レベルと考えれば、動的挙動として把握される統計的集団の分子数は20~30を超えることはないと思われる。
【0042】
図25は既存の方法で計測可能とされる最小の気泡(50nm)気泡と、上記の動的挙動に反映される水分子集団(例えば30分子)とのサイズを比較して示すものである。計測可能なサイズの気泡が水分子集団の大きさを変えるほどの影響を発現していると考えるには大きな難があることが理解できる。
【0043】
一方、図26は、市販の旋回流式ウルトラファインバブル(UFB)発生装置で処理した水を瞬間凍結し、超高圧電子顕微鏡により観察した論文報告(非特許文献2)の内容を抜粋したものである。電子顕微鏡写真の右が通常水、左がUFB処理水の画像であり、UFB処理水のみ平均径7nm程度の微細な斑点が大量に観察される。画像から見積もられる斑点の数密度は8.1×1017個/ccであり、UFB発生機構を搭載した市販のシャワーヘッド等にて実現しているUFB数密度(10億個/cc)の10億倍もの値を示す。文献中では論じられていないが、図26の電子顕微鏡写真に表れている斑点は、サイズ及び数密度から気泡核を示すものである可能性は十分にあると考えられる。数nmサイズの気泡核は前述の水分子集団のサイズと桁的には近いものとなる。気泡核の領域には空間的には水分子が存在せず、また、気泡核表面はラジカル形成等により負に帯電していると考えられている。分子集団と同程度のサイズの気泡核であれば、集団に含まれる水分子が結合相手を変えようとするとき、あるいはその集団同士が分子間力により緩く連携しようとするときの障害物として作用し、動的挙動に反映される水分子集団のサイズが縮小して浸透性改善の要因となりうる、と本発明者らは考えている。
【0044】
キャビテーション処理水においてレーザー回折式粒度計等で計測されるのは、大量に析出した気泡核のほんの一部(10億分の1程度)が計測にかかる程度まで成長し、かつ合体浮上により消滅せずに残留したものが観測されているにすぎない。本発明者らは再検討の結果、水の浸透性改善等に貢献しているのは、一般的な計測手法により容易に確認できるこうした100nm近傍の気泡ではなく、超高圧電子顕微鏡等を用いなければ検出不能な数nm前後の気泡核である、と考えている。本発明者らが実験により確認した限り、レーザー回折式粒度計によって確認できる該サイズの微小気泡は、キャビテーション処理後タンクなどに貯留して数分放置すれば大部分が消失し、通常の感度のレーザー回折式粒度計では検出できなくなるが、前述の特有の効果はおおむね保持されていることがわかっている。よって、気泡核は一部が計測にかかる程度まで成長し、その後消滅したとしても、残余の大半は水中に残留して水の浸透性改善に寄与し続けていると考えられるのである。
【0045】
以上の考察より、キャビテーションノズル100において処理された水道水に前述の特有な効果を十分付与するためには、空気が溶存した水をねじ部材110の個々のねじ谷に対し十分な流速で供給するとともに、十分な流速の水道水と接触している単位流量当たりの谷点数、すなわち有効谷点流量密度を向上することが、気泡核の発生数を高める上で重要であると結論付けることができる。
【0046】
図5は、キャビテーション処理ユニット1のより詳細な構成例を、その電気的構成とともに示すものである(キャビテーション処理ユニット1からキャビテーションノズル100を取り除いた部分は加圧支援装置の概念を構成する)。該構成においてキャビテーション処理ユニット1は樹脂製の筐体4を有し、その内側に図1の分岐配管1005に直接接続される配管セグメント3が組み込まれている。該配管セグメント3上にはDCブラシレスモータを駆動源とするブーストポンプ2と配管セグメント3内の水供給流量、すなわちキャビテーションノズル100への水供給流量を検出する流量センサ10(流量検出部)が設けられ、電源回路7、ブーストポンプ制御部50及びポンプ駆動回路30とともに筐体4内に封入されている。
【0047】
筐体4は本体4Bと蓋4Aからなり、本体4Bの開口に対し蓋4Aの周縁をパッキン5を介して重ね合わせ、ねじ6にて液密に締結した構造となっている。本体4Bの壁部にはハーメチック端子21が設けられ、電源回路7に給電するための電源コード42が着脱可能に接続される。また、配管セグメント3の両端は、シール付きの貫通継手で構成された流入側継手20及び流出側継手21とされており、流入側継手21に分岐配管1005(シャワー給水バルブ1010)が、流出側継手20にキャビテーションノズル100がそれぞれ接続される。なお、キャビテーションノズル100は流入側継手21に接続するようにしてもよい。
【0048】
図5の構成では、ハーメチック端子21上にDC充電ソケット21が設けられ、該充電ソケット21には電源回路7の構成要素である充電回路23、二次電池(ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等)及び定電圧回路(レギュレータ回路)25がこの順序でつながっている。充電回路23には充電コネクタ41、ACアダプタ43及びコンセントプラグ44が設けられた電源コード43により図示しない商用交流コンセントから充電電力が給電される。二次電池24が十分充電されれば充電コネクタ41をDC充電ソケット21から取り外すようにする。
【0049】
二次電池24の出力電圧は電池残量や電池使用履歴により変動するため、充電回路23により定電圧化し、DC/DC変換回路を26~38介して、必要な電圧に変換(昇圧ないし降圧)されたのち、各回路ブロックに分配される。二次電池24の容量には限りがあり、長時間の連続使用には向かないが、このようにバッテリー電源化することで外部電源から遮断しての使用が可能となり、浴室などへ設置が容易となる。特に、シャワーなどによる断続使用には好適である。なお、電池を用いず外部交流のみ利用するより単純な電源構成を採用してもよく、例えばAC電源コードと直結されるAC/DC変換回路にて電源回路7を置き換えた構成を例示することができる。
【0050】
次に、ブーストポンプ制御部50はマイコン回路として構成され、CPU51、制御プログラム53aが格納されたROM53、制御プログラム53aの実行領域となるRAM52、入出力部54及びそれらを相互に接続するバス55等からなる。流量センサ10の流量検出値の信号FDSは入出力部54に入力される。ブーストポンプ2は前述のごとく、DCブラシレスモータにより駆動されるポンプであり、作動停止状態において分岐配管1005の供給水流を受けて空転可能である。ブーストポンプ制御部50は制御プログラム53aに伴い、前述の有効谷点流量密度の値が閾値Kcを超える場合にはブーストポンプ2の作動を停止する一方、分岐配管1005への元圧低下に伴う流量減少により有効谷点流量密度の値が閾値Kc未満となる場合には、該閾値Kcを超える有効谷点流量密度となる供給流量が得られるようにブーストポンプ2の作動を制御する。
【0051】
具体的には、ブーストポンプ制御部50は、流量センサ10による流量検出値FDSが閾値Kcに対応する閾流量λc未満となっている場合はブーストポンプ2を流量検出値とは無関係に予め定められた駆動電圧(DC/DC変換回路27の出力電圧)により定電圧駆動し、流量検出値が閾流量λcを超えている場合はブーストポンプ2を作動停止させる。DC/DC変換回路27からブーストポンプ2に至る給電経路上には、ポンプ駆動回路30を構成するリレー31が設けられ、ブーストポンプ2への給電は該リレー31によりオンオフ制御される。リレー31の開閉駆動は、DC/DC変換回路28より給電されるリレー駆動回路32が担う。リレー駆動回路32はブーストポンプ制御部50の入出力部54から出力される駆動信号RDSの入力を受け、リレー31のコイルを励磁通電制御する。
【0052】
図6はこの場合の制御プログラムの処理流れを示すものであり、S101で流量センサ10の流量検出値λdをリードする。S102ではROM53に記憶されている閾流量λcをリードする。S103でλdとλcとを比較し、λd<λcであればS104に進んでブーストポンプ2をオンとする。他方、S103でλd>λcであればS105に進んでブーストポンプ2をオフとする。この構成によれば、ブーストポンプ2の作動制御を単純なオンオフ制御とすることができ、回路構成や制御ロジックの大幅な簡略化を図ることができる。
【0053】
なお、作動停止状態において空転可能となるブーストポンプ2の構成はDCブラシレスモータを駆動源とするポンプに限らず、例えばポンプ停止時に電磁クラッチ等によりポンプヘッドをモータ駆動軸から切り離し可能な構成とすることで、ポンプ駆動源をDCブラシレスモータから交流誘導モータに置き換えることも可能である。また、分岐配管1005(図1)への流量変動を検出し、閾流量未満となった状態においてブーストポンプ2を検出流量に合わせて追従駆動するように制御するなど、閾流量未満となる条件下においてもブーストポンプ2を停止させない構成とすることも可能である。
【0054】
図2におけるシャワーヘッド1015を接続する使用形態にて、キャビテーションノズル100は、以下に説明する第一のキャビテーションノズルが採用されている。図7は、第一のキャビテーションノズルの特性数値表を、シャワーヘッド1015を装着した状態の動水圧-流量特性線図とともに示すものである。シャワーヘッド1015は一般的なものであり、使用時の適正流量範囲は例えば8~12L/分である。第一のキャビテーションノズルは動水圧0.1MPaの標準条件にてこの適正流量範囲に入る流量値(ここでは、9.6L/分)にて、キャビテーション効率が適正化される平均流速(9m/秒以上:ここでは11.9m/秒)が得られるよう、図3の絞り部109Aの内径d(ここでは、5.5mm)が調整されている。標準条件での平均流速の値は、キャビテーション処理水の用途に応じて適宜設定されることとなる。
【0055】
使用されているねじ部はM1.4の0番1種なべ小ねじであり、ねじ山ピッチ及びねじ谷深さはいずれも0.3mmである。また、表中には、各動水圧での流量、平均流速のほか、前述の方法に従い計算された標準等価半径の値、有効谷点数(有効CVP数)及び有効谷点流量密度(CVP流量密度)の値も表示している。なお、第一のキャビテーションノズルは、図3の構成から2組の配列Bのねじ組を取り除いた構成(すなわち、配列Aのねじ組のみ3組)を採用している。
【0056】
図8は、図7の特性数値表に基づく第一のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線CC(垂直軸が有効谷点流量密度、右は水平軸が動水圧、左は水平軸が流量)を直交平面座標系にて示すものである。図7に示すようにキャビテーションノズルの流量は動水圧の平方根に比例する関数であるから、水平軸を動水圧とした有効谷点流量密度特性曲線CCと、水平軸を流量とした有効谷点流量密度特性曲線CC’とは数学的には写像の関係にある。よって、(有効谷点流量密度の)閾値に基づいてキャビテーションノズルの有効谷点流量密度を動的に制御することは、(流量の)閾値と流量検出部(流量センサ10:図2)の検出値に基づいてキャビテーションノズルの流量を制御すること、もしくは(動水圧の)閾値と圧力検出部(後述する圧力センサ110(図15)、あるいは圧力センサ110A/110B)(図18)の検出値に基づいてキャビテーションノズルの動水圧を制御することと技術的には等価である。
【0057】
有効谷点流量密度特性曲線CCは、予め定められた動水圧(0.09MPa付近)にて有効谷点流量密度が極大(9.3個・分/L)となる極大点DPsupを有し、極大点DPsupよりも低水圧側において有効谷点流量密度がゼロとなる点である有効谷点流量密度ゼロ点DP0から極大点DPsupに至る第一区間SPと、極大点DPsupよりも高水圧側にて有効谷点流量密度が動水圧の増加ととともに第一区間SPよりも緩やかに減少する第二区間SSとを有する。第一区間SPにおいては、動水圧低下時の有効谷点流量密度の減少が急激であり、わずかな動水圧低下でも有効谷点流量密度(キャビテーション効率)が大幅に低下する可能性があることがわかる。
【0058】
有効谷点流量密度の閾値Kcは、第一区間SPにおいて極大点DPsupよりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点CPに対応する有効谷点流量密度値として定められている。図8においては、有効谷点流量密度特性曲線CCと有効谷点流量密度が極大点Dpsupから10%低下する位置を通り動水圧軸に対して平行な仮想線JWとの2つの交点のうち、第二区間SS上の交点をブースト上限点QL、第一区間SP上の交点をブースト下限点QUとして、前述の閾値Kcは、第一区間SPのブースト下限点QUよりも低動水圧側に位置する予め定められた閾曲線点CPに対応する有効谷点流量密度値として定められている。
【0059】
電圧駆動時のブーストポンプ2の揚程は、キャビテーションノズル100の動水圧が有効谷点流量密度ゼロ点に対応する動水圧pC0となるまで分岐配管1005への元圧が低下した状態にてブーストポンプ2を作動させたとき、動水圧がブースト下限点QUに対応する下限動水圧値pU1を超える増圧代Δp(図8では約0.06MPa)が得られるように選定されている。より具体的には、定電圧駆動時のブーストポンプ2の揚程は、ブースト下限点QUからブースト上限点QLに至る動水圧幅LU1よりも増圧代Δpが小さくなるように選定されている。
【0060】
図8の左側の線図において、流量センサ10からの流量検出値が閾動作点CP(有効谷点流量密度値は7.0)に対応する閾流量λC(6.4L/分)を下回る、動作点DPBに対応する流量値λB(5.7L/分)まで下がった場合、キャビテーションノズルの動水圧値は、図8の右側の線図において、動作点DPBに対応する動水圧値pB(0.035MPa)まで低下している。この状態で上記条件にてブーストポンプ2をオンにすると動水圧値は増圧代Δp(図8では0.06MPa)だけ上昇しpA(=pB+Δp:0.095MPa)となる。これにより図8の右側の線図において、動作点は極大値DPsupに近いDPAに移動する(有効谷点流量密度値は9.2個・分/L付近)。左側の曲線CC’にて、この時の流量値はλA(9.1L/分)まで増加する。
【0061】
このように、加圧後のブーストポンプ2の動作点はブースト下限点QUよりも大流量位置となるように加圧支援され、有効谷点流量密度も極大点DPsupから10%以内の高い値に維持されている。図8の例示では、有効谷点流量密度は加圧前の約2.5倍に上昇し、十分顕著なキャビテーション処理効果が得られるとともに、水量もほぼストレスのないレベルにまで改善されていることがわかる。
【0062】
次に、図2におけるシャワーヘッド1015が、散水板面積が減じられ散水孔内径も縮小した節水型シャワーヘッドである場合についての例を説明する。このような節水型シャワーヘッドは小さい散水孔から高圧で水が噴射されるため、少ない流量でも肌当たりが強く、潤沢にシャワーを浴びている体感が得られる。しかし、図7のような特性の第一のキャビテーションノズルの適正流量である9~10L/分の流量値となるように加圧すると、節水型シャワーヘッドの場合は水流が過剰となり、肌への刺激が強くなりすぎて不快に感じられるようになる。
【0063】
この場合は、キャビテーションノズル100は、以下のような第二のキャビテーションノズルが採用される。図9は、第二のキャビテーションノズルの特性数値表を、節水型シャワーヘッドを装着した状態での動水圧-流量特性線図とともに示すものである。節水型シャワーヘッドの使用時の適正流量範囲は例えば5~7L/分である。第二のキャビテーションノズルは動水圧0.1MPaの標準条件にてこの適正流量範囲に入る流量値(図9では5.6L/分)にて、キャビテーション効率が適正化される平均流速(9m/秒以上:ここでは11.9m/秒)が得られるよう、図3の絞り部109Aの内径d(ここでは、4.5mm)が調整されている。その余の構成は第一のキャビテーションノズルと同じである。
【0064】
図10は、図9の特性数値表に基づく第一のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線CCを直交平面座標系にて示すものである。この場合の有効谷点流量密度特性曲線CCは、予め定められた動水圧(0.09MPa付近)にて有効谷点流量密度が極大(13.2個・分/L)となる極大点DPsupを有し、図8と同様の第一区間SPと第二区間SSとを有する。ここでも有効谷点流量密度特性曲線CCは、第一区間SPにおいて動水圧低下時の有効谷点流量密度の減少が急激である。
【0065】
有効谷点流量密度の閾値Kc及び定電圧駆動時のブーストポンプ2の揚程も図8と同様に定められている。図10においてはブーストポンプ2による増圧代Δp0.08MPa程度に選定されている。図10の左側の線図において、流量センサ10からの流量検出値が閾動作点CP(有効谷点流量密度値は8.6)に対応する閾流量λC(3.6L/分)を下回る、動作点DPBに対応する流量値λB(3.3L/分)まで下がった場合、キャビテーションノズルの動水圧値は、図8の右側の線図において、動作点DPBに対応する動水圧値pB(0.04MPa)まで低下している。この状態で上記条件にてブーストポンプ2をオンにすると動水圧値は増圧代Δp(0.06MPa)だけ上昇してpA(=pB+Δp:0.10MPa)となる。これにより図10の右側の曲線CCにおいて、動作点はDPAに移動する(有効谷点流量密度値は13.2付近)。左側の曲線CC’にてこの時の流量値はλA(6.0L/分)まで増加する。
【0066】
以下、本発明の種々の変形実施態様について説明する。
前述の構成では、ブーストポンプ2をリレーによるオンオフ制御としていた関係上、図8及び図10に示すように、ブーストポンプ2による動水圧の増加代Δpが常に一定となる。この場合、キャビテーションノズル100への元圧変動により有効谷点流量密度特性曲線CCにおける加圧前の動作点位置が変動すれば、加圧後の動作点位置も変動することになり、水流に脈動が生じる。これを防止するためには、ブーストポンプ制御部50を次のように構成するとよい。すなわち、流量検出値が閾値Kcに対応する閾流量λc未満となっている場合はブーストポンプ2を、増圧後のキャビテーションノズル100の目標流量値を閾流量λcよりも高く設定するとともに、流量検出値を参照しつつ駆動電圧を変動させる形で定流量駆動制御する。他方、流量検出値が閾流量λcを超えている場合はブーストポンプ2を作動停止させるようにする。
【0067】
この場合、ポンプ駆動部は図11に示すようにサーボ駆動部35により置き換える必要がある。サーボ駆動部35は、流量センサ10からの流量検出値とブーストポンプ制御部50からの目標流量値とを取得し、流量検出値が目標流量値に近づくようにブーストポンプ2への駆動出力を調整することによりフィードバック制御を行う。駆動出力の制御はブーストポンプ2への出力電圧レベルを変化させる電圧制御方式や、定電圧パルス入力のパルス幅デューティ比を変化させるPWM制御方式など、既知の方式から適宜選択して採用できる。
【0068】
図12はこの場合の制御プログラムの処理流れを示すものであり、S101で流量センサ10の流量検出値λdをリードする。S102ではROM53に記憶されている閾流量λcをリードする。S103でλdとλcとを比較し、λd<λcであればS104に進んでブーストポンプ2をオンとし、S105で上記した定流量のフィードバック制御。他方、S103でλd>λcであればS105に進んでブーストポンプ2をオフとして、S105をスキップする。
【0069】
このようにすると、図13に示すように、加圧前の動作点(DPB,DPB’)が第一区間のどこに存在していても、加圧後の流量値が一定になるように加圧代が調整される(Δp、Δp’)ので、水流の脈動を防止できるほか有効谷点流量密度を一定に保つこができ、キャビテーション処理に伴う前述の特有の効果をより安定に享受することができる。この場合も、目標流量値を、前述のブースト下限点QUからブースト上限点QLに至る動水圧区間内にて該動水圧区間の幅よりも許容変動幅が小さくなるように設定しておけば、加圧後の有効谷点流量密度を極大点Dpsupから10%以内の高い値に維持することができる。
【0070】
次に、図14に示すように、分岐配管1011の末端には負荷を接続せず開放として使用することもできる。例えば、図2の使用形態においてシャワーホース1012に接続されているシャワーヘッド1015を取り外し、図14に示すように、シャワーホース1012からの水流を浴槽1014に注水する形態を例示できる。
【0071】
この場合は、キャビテーションノズル100は、以下のような第三のキャビテーションノズルが採用される。図16は、第三のキャビテーションノズルの特性数値表を、出口側を開放したときの動水圧-流量特性線図とともに示すものである。開放時の適正流量範囲は例えば22~26L/分である。第三のキャビテーションノズルは動水圧0.1MPaの標準条件にてこの適正流量範囲に入る流量値(図16では24.6L/分)にて、キャビテーション効率が適正化される平均流速(9m/秒以上:ここでは11.9m/秒)が得られるよう、図3の絞り部109Aの内径d(ここでは、8mm)が調整されている。その余の構成は第一のキャビテーションノズルと同じである。
【0072】
図17は、図16の特性数値表に基づく第三のキャビテーションノズルの有効谷点流量密度特性曲線CCを直交平面座標系にて示すものである。この場合の有効谷点流量密度特性曲線CCは、予め定められた動水圧(0.07MPa付近)にて有効谷点流量密度が極大(11.2個・分/L)となる極大点DPsupを有し、図8と同様の第一区間SPと第二区間SSとを有する。ここでも有効谷点流量密度特性曲線CCは、第一区間SPにおいて動水圧低下時の有効谷点流量密度の減少が急激である。
【0073】
有効谷点流量密度の閾値Kc及び定電圧駆動時のブーストポンプ2の揚程も図8と同様に定められている。図16においてはブーストポンプ2による増圧代Δpが0.06MPa程度に選定されている。図16の左側の曲線CCにおいて、流量センサ10からの流量検出値が閾動作点CP(有効谷点流量密度値は7.3)に対応する閾流量λC(15.0L/分)を下回る、動作点DPBに対応する流量値λB(13.8L/分)まで下がった場合、キャビテーションノズルの動水圧値は、図17の右側の曲線CCにおいて、動作点DPBに対応する動水圧値pB(0.035MPa)まで低下している。この状態で上記条件にてブーストポンプ2をオンにすると動水圧値は増圧代Δp(0.065MPa)だけ上昇してpA(=pB+Δp:0.10MPa)となる。これにより図17の右側の曲線CCにおいて、動作点はDPAに移動する(有効谷点流量密度値は13.2付近)。左側の曲線CC’にてこの時の流量値はλA(24.0L/分)まで増加する。
【0074】
なお、上記のごとく分岐配管の末端に負荷を接続せず開放として使用する場合、図15に示すように、流量センサ10を圧力センサ110に置き換えることができる。シャワーホース1012の先端に設けられているシャワー接続金具1013の圧損はシャワーヘッド1015の圧損と比較すれば無視できる程度に小さいため、圧力センサ110の検出値はキャビテーションノズル100の動水圧を示すものとなる。よって、圧力センサ110の動水圧検出値は、キャビテーションノズル100への水供給流量に一義的に対応するものとなる(すなわち、圧力センサ110は該動水圧検出値を、キャビテーションノズル100の水供給流量を反映したパラメータとして間接的に検出する、流量検出部として機能することとなる)。
【0075】
また、図18に示す如く、分岐配管1005の末端にシャワーヘッド1015等の負荷が接続される場合においても、キャビテーションノズル100の上流側と下流側にそれぞれ圧力センサ110A及び圧力センサ110Bを設けておけば、これら圧力センサ110A,110Bの圧力検出値の差分によりキャビテーションノズル100の動水圧を検出できる。よって、この場合も該圧力検出値の差分をキャビテーションノズル100の水供給流量を反映したパラメータとして使用することができる。
【0076】
次に、図5及び図11のキャビテーション処理ユニット1の構成において、ブーストポンプ制御部50は、分岐配管に接続される負荷の種別に応じて閾流量を変更可能とすることができる。図19は、第一のキャビテーションノズルを用いて閾流量を変更可能に設定する場合の具体例を示すグラフである。第一のキャビテーションノズルの有効谷点密度-流量特性曲線CC’上において、流出ポイント開放時(図14参照)の加圧前の動作点を黒の四角、同じく加圧後の動作点を白の四角で示している。また、通常シャワーヘッド接続時の加圧前の動作点を黒の丸、同じく加圧後の動作点を白の丸で示している。さらに、節水シャワーヘッド接続時の加圧前の動作点を黒の三角、同じく加圧後の動作点を白の三角で示している。
【0077】
ブーストポンプ作動時の各負荷状態における流量増加代(流出ポイント開放時はΔλ1、通常シャワーヘッド接続時はΔλ2、節水シャワーヘッド接続時はΔλ3)は全て異なるが、ブーストポンプ2による加圧代はいずれも0.06MPa程度であり、同じ種別のブーストポンプ2を用いて加圧支援制御が可能である。また、加圧支援後の動有効谷点流量密度の値は、流出ポイント開放時は9.0個・分/L(白の四角)、通常シャワーヘッド接続時も9.0個・分/L(白の丸)、節水シャワーヘッド接続時は7.2個・分/L(白の三角)であり、例えばこれらの有効谷点流量密度の値を各負荷状態における目標有効谷点流量密度として、それぞれ該目標有効谷点流量密度から一定割合(例えば10%)減じた目標有効谷点流量密度を、有効谷点流量密度の個別の閾値として用いることができる。図5の構成にてブーストポンプ2を定電圧にてオンオフ駆動する場合は、各負荷状態に対応する有効谷点流量密度の個別の閾値に対応する閾流量を選択可能にしておけばよいし、図11の構成にてブーストポンプ2を加圧後にて目標流量値にサーボ制御する場合は、閾流量とともに目標流量値についても負荷状態に応じて選択可能にしておけばよい。
【0078】
この場合、ブーストポンプ制御部50のROM53のプログラム記憶内容は図20のようになり、制御プログラム53aとともに各負荷状態(通常シャワーヘッド、節水シャワーヘッド、シャワーヘッドなし(開放))の閾流量(さらには目標流量値)の候補値53bと、選択された候補値を制御実行のために設定するための設定プログラム53cとが格納されている。また、入出力部54には、候補値の設定支援を行うための入力部56及びディスプレイ57が接続される。
【0079】
図21は入力部56とディスプレイ57を一体化したユニットの構成例であり、例えば図5ないし図11における筐体4に設けることができる。この例では、選択可能な負荷状態がディスプレイ57上にて個別のウィンドウに表示され、選択中のものがカーソルCSRにより非選択のものと区別可能に表示(例えば反転表示)されるようになっている。カーソルCSRは入力部56のボタン56Aの操作により移動でき、確定ボタン56Bの操作により選択確定される。また、ウィンドウの一つは「カスタム設定」と表示されているが、これを選択した場合は閾流量あるいは目標流量値を所望の値にカスタム入力設定できるようになっている。図22は、候補値として閾流量を設定する場合の入力画面の一例を示すものであり、入力部56のボタン56Aの操作(左の上向き三角ボタンにより流量増加、右の下向き三角ボタンにより流量減少)により所望の候補値を設定し、確定ボタン56Bの操作により選択確定する。
【0080】
図23は設定プログラム53cの処理流れの一例を示すものであり、S201で用意されている候補値が選択された場合はS202に進み、選択された候補値が設定される。一方、S201で用意された候補値が選択されなかった場合はS203に進み、候補値のカスタム入力がなされたかどうかを確認する。入力された場合はS204に進み、入力された候補値を設定する。上記のいずれの入力もなされなかった場合は、前の候補値設定が維持され処理は終了する。
【0081】
次に、キャビテーションノズル100は、有効谷点流量密度特性の異なる複数のものの間で交換可能に設けることができる。この場合、ブーストポンプ制御部50は、分岐配管1005に設置するキャビテーションノズル100の有効谷点流量密度特性に応じて閾流量λc(及び目標流量値)を変更可能に構成することができる。これにより、キャビテーションノズル100が有効谷点流量密度特性の異なるものに変更された場合においても、閾流量λcを最適な値に容易に調整することができ、ひいてはキャビテーションノズル100の種別によらず加圧後の有効谷点流量密度を常に適正な値に確保することが可能となる。
【0082】
例えば、キャビテーションノズル100として前述の第一のキャビテーションノズル(通常シャワーヘッド用)、第二のキャビテーションノズル(節水シャワーヘッド用)及び第三のキャビテーションノズル(開放用)を使用する場合、選択可能な候補値の組として、図24に示すように、ノズル種別(例えば、第一のノズル、第二のノズル、第三のノズル)と負荷状態(例えば開放、通常シャワーヘッド接続、節水シャワーヘッド接続)の組み合わせごとに、閾流量ρ(及び目標流量値ρc)の候補値を用意し、図20のROM53に記憶しておけばよい。候補値の選択・設定のための処理については、図21図23により説明した内容に準ずる同様の方式にて実現可能であり、詳細については説明を略する。
【0083】
次に、河川水や湖沼水を原水とする水道水は、季節変動や水温等により溶存酸素濃度が変動することがある。キャビテーションノズルを水道水が通過するときに、有効谷点で発生する気泡核の発生密度は、次のように考えることができる。すなわち、水道水の溶存酸素濃度をCO1、水道水の常圧での飽和酸素濃度をCOS0、ベルヌーイの定理に従い減圧された状態での有効谷点における水道水の飽和酸素濃度をCOSVとしたとき、有効谷点に生ずる過飽和酸素濃度ΔC01は、
ΔC01=C01-COSV ・・・・(1)
にて表すことできる。熱力学的には気泡析出核密度ρNCは過飽和酸素濃度ΔC01に比例して増加すると考えられる。すなわち、
ρNC=KΔC01=K(C01-COSV ・・・・(2)
である(ただし、Kは定数)。図27に示す如く、水道水の溶存酸素濃度がC01からC01'に減少すれば、過飽和酸素濃度もΔC01からΔC01'へと減じ、気泡析出核密度ρNCも減ずることが自明である。
【0084】
そこで、図11に示すように、供給される水道水中の溶存酸素濃度を検出する酸素濃度センサ11を設け、検出される酸素濃度が低いほど有効谷点流量密度を増加させるものとしてブーストポンプ制御部50を構成することができる。使用する水道水の溶存酸素濃度が減じたとき、有効谷点流量密度が増加するように流量調整がなされることで気泡析出核密度の不足を効果的に抑制することができる。
【0085】
簡易な制御形態として以下を例示できるが、これに限定されるものではない。有効谷点において流速が十分に確保されている状態では、COSVはゼロに近づく。故、(2)式は、
ρNC≒KC01 ・・・・(3)
と表される。すなわち、有効谷点流量密度に変化がなければ、水道水の溶存酸素濃度C01に比例して気泡析出核密度ρNCは減少する。他方、溶存酸素濃度が基準値C01(例えば6ppm)の場合の有効谷点流量密度(CVP流量密度)の閾値をkC0とする。水道水の溶存酸素濃度が一定の時、有効谷点流量密度に比例して気泡析出核密度ρNCが増加する、と考えることができれば、溶存酸素濃度C01がC01’に減じた場合、図28に示すように、有効谷点流量密度を
C0’=kC0×C01/C01’・・・・(3)
と変更設定することにより、溶存酸素濃度が基準値C01の場合とほぼ同等の気泡析出核密度ρNCを担保することが可能となる。この場合、ブーストポンプ制御部50は、変更されたCVP流量密度閾値kC0’に従い、前記した実施形態と同様にポンプ出力制御(流量制御)を行う。
【符号の説明】
【0086】
1 キャビテーション処理ユニット
2 ブーストポンプ
3 内部配管
4 筐体
4A 蓋
4B 筐体本体
4h 配管取出孔
5 シール部材
6 締結ねじ
10 流量センサ(流量検出部)
20 シール付き貫通継手
21 ハーメチック端子
22 充電ソケット
23 充電回路
24 二次電池
25 定電圧回路
26~28 DC/DC変換回路
30 ポンプ通電制御回路
31 リレー
32 リレー駆動回路
41 電源コネクタ
42 コード
43 AC/DCアダプタ
44 電源プラグ
50 ブーストポンプ制御部
100 キャビテーションノズル
110 ねじ部材
1003 水道本管
1005 分岐配管
1006 分岐点
1007 給水ポイント

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28