(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158911
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】方法、情報処理装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 11/06 20060101AFI20241031BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01S11/06
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074536
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パビセティ グルサントシュ
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC18
5J062EE01
(57)【要約】
【課題】 送信機および受信機間で無線信号を送受信することによって測定される受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換した際に生じ得る誤差を低減すること。
【解決手段】 一実施形態に係る方法は、既知の位置に取り付けられた第1無線機と、第1無線機と無線通信可能な情報処理装置との間の距離を求める方法であって、第1無線機から送信される第1無線信号を受信することと、第1無線機とは異なる既知の位置に取り付けられた少なくとも1つの第2無線機から送信される第2無線信号を受信することと、第1無線信号の受信時の強度と、第2無線信号の受信時の強度と、第1無線機および2無線機間の距離とに基づいて、第1無線機および情報処理装置間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定することと、を含む。伝搬損失指数は、第1無線信号の受信時の強度を、第1無線機および情報処理装置間の距離に変換するために用いられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の位置に取り付けられた第1無線機と、前記第1無線機と無線通信可能な情報処理装置との間の距離を求める方法であって、
前記第1無線機から送信される第1無線信号を受信することと、
前記第1無線機とは異なる既知の位置に取り付けられた少なくとも1つの第2無線機から送信される第2無線信号を受信することと、
前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度と、前記第1無線機および前記2無線機間の距離とに基づいて、前記第1無線機および前記情報処理装置間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定することと、
を具備し、
前記伝搬損失指数は、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離に変換するために用いられる、
方法。
【請求項2】
前記伝搬損失指数の範囲は、(1)式および(2)式に基づき推定され、
【数1】
前記d
1xは、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離を示し、
前記d
2xは、前記第2無線機および前記情報処理装置間の距離を示し、
前記D
12は、前記第1無線機および前記第2無線機間の距離を示す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記伝搬損失指数の範囲を用いて、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離の範囲に変換することをさらに具備する、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記伝搬損失指数の範囲の中央値を前記伝搬損失指数として算出することと、
前記伝搬損失指数を用いて、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離に変換することと、
をさらに具備する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離の範囲を用いて、前記情報処理装置の位置を特定することをさらに具備する、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記伝搬損失指数の範囲は、前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度とが予め設定された閾値以上の場合に推定され、前記閾値未満の場合に推定されない、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
既知の位置に取り付けられた第1無線機と無線通信可能な情報処理装置であって、
前記第1無線機から送信される第1無線信号と、前記第1無線機とは異なる既知の位置に取り付けられた少なくとも1つの第2無線機から送信される第2無線信号とを受信する受信部と、
前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度とを測定する測定部と、
前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度と、前記第1無線機および前記2無線機間の距離とに基づいて、前記第1無線機および前記情報処理装置間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定する推定部と、
を具備し、
前記伝搬損失指数は、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離に変換するために用いられる、
情報処理装置。
【請求項8】
前記伝搬損失指数の範囲は、(3)式および(4)式に基づき推定され、
【数2】
前記d
1xは、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離を示し、
前記d
2xは、前記第2無線機および前記情報処理装置間の距離を示し、
前記D
12は、前記第1無線機および前記第2無線機間の距離を示す、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記伝搬損失指数の範囲を用いて、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離の範囲に変換する変換部をさらに具備する、
請求項7または請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記推定部は、前記伝搬損失指数の範囲の中央値を前記伝搬損失指数として算出し、
前記変換部は、前記伝搬損失指数を用いて、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離に変換する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離の範囲を用いて、前記情報処理装置の位置を特定する特定部をさらに具備する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記推定部は、前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度とが予め設定された閾値以上の場合に前記伝搬損失指数の範囲の推定を開始し、前記閾値未満の場合に前記伝搬損失指数の範囲の推定を終了する、
請求項7または請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項13】
請求項11に記載の情報処理装置と、
前記第1無線機と、
前記少なくとも1つの第2無線機と、
前記情報処理装置と無線通信可能な制御装置と、
を具備し、
前記第1無線機および前記第2無線機は、電子機器に搭載または外的に取り付けられ、あるいは、前記電子機器とは別の位置に取り付けられ、
前記制御装置は、前記特定された情報処理装置の位置に基づき、前記情報処理装置近辺の電子機器の動作を制御するための制御信号を送信する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、方法、情報処理装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調機や照明器具等の電気機器の制御は高度化しており、例えば多数の電気機器が取り付けられている部屋(屋内)においては、ゾーン毎に電気機器の動作を制御するようなことが可能である。これによれば、多数の電気機器が取り付けられている部屋にいる人物近辺の電気機器の動作のみを制御することも可能である。
【0003】
ところで、部屋にいる人物近辺の電気機器の動作のみを制御するにあたっては、当該人物の位置(ゾーン)を特定する必要がある。屋内での位置測位の技術には、無線通信機能を有した2つの機器(送信機および受信機)間で無線信号を送受信することによって測定される受信電力(受信信号の強度)に着目した技術がある。この技術によれば、受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換することが可能であり、当該変換された距離に基づく三点測位等により当該受信機の位置を特定することが可能である。
【0004】
上記したような、部屋にいる人物の特定にも、このような技術を利用することが考えられるが、屋内においては強いマルチパスによる強いフェージングが発生するため、受信信号の強度にばらつきが発生し、受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換したとしても、実際の距離との間に大きな誤差が生じてしまう。このため、このような誤差を低減することが可能な技術の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0148431号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、送信機および受信機間で無線信号を送受信することによって測定される受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換した際に生じ得る誤差を低減することが可能な方法、情報処理装置およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る方法は、既知の位置に取り付けられた第1無線機と、前記第1無線機と無線通信可能な情報処理装置との間の距離を求める方法であって、前記第1無線機から送信される第1無線信号を受信することと、前記第1無線機とは異なる既知の位置に取り付けられた少なくとも1つの第2無線機から送信される第2無線信号を受信することと、前記第1無線信号の受信時の強度と、前記第2無線信号の受信時の強度と、前記第1無線機および前記2無線機間の距離とに基づいて、前記第1無線機および前記情報処理装置間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定することと、を具備する。前記伝搬損失指数は、前記第1無線信号の受信時の強度を、前記第1無線機および前記情報処理装置間の距離に変換するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る空調制御システムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る伝搬損失指数を算出する方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る空調制御システムの概略構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る無線機の概略構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る情報処理装置の概略構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る空調制御装置の概略構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る位置特定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る伝搬損失指数を算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る空調制御システムの概略構成例を示す図である。なお、
図1では、1つの部屋1に4つの空調機2が取り付けられている場合を示すが、部屋1に取り付けられる空調機2の数は、少なくとも2つ以上であれば、任意の数であって構わない。
【0011】
本実施形態に係る空調制御システムは、部屋1にいるユーザの位置に応じて、当該部屋1の既知の位置に取り付けられた複数の空調機2の動作を制御するシステムである。
【0012】
図1に示す複数の空調機2の各々には、無線機2a(無線機2a
1,2a
2,2a
3,2a
4)が搭載されている。無線機2aは、無線通信機能を有する他の機器と無線通信を実行する。具体的には、無線機2aは、他の無線機2aや、ユーザによって所持される情報処理装置3、空調制御装置4と無線通信を実行する。
【0013】
無線機2aは、無線通信を実行するものであればよいが、本実施形態においては、無線機2aが、ブルートゥース(登録商標)に基づく近距離無線通信を実行するBLE(Bluetooth Low Energy)無線機である場合を想定する。BLEは、安価であるために種々のシステムに導入されており、比較的利用しやすい無線通信規格である。BLEは2.4~2.48GHz内に40チャネルを規定しており、そのうちの3チャネルがアドバタイズチャネルであり、ビーコンの送出等に使用されている。アドバタイズチャネルは、コネクションを張らずにブロードキャストで使用可能なチャネルである。アドバタイズチャネルは、帯域の両端の2チャネルとその中間の1チャネルとから構成される。
【0014】
情報処理装置3は、無線機2aおよび空調制御装置4と無線通信を実行する機器であり、例えば、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末等である。
【0015】
空調制御装置4は、複数の空調機2の各々に搭載されている無線機2aに制御信号を送信することによって、当該空調機2の動作を制御する。空調機2の動作を制御することは、例えば、空調機2のオン・オフを制御すること、空調機2の運転モード(例えば、冷房モード、暖房モード、送風モード等)を制御すること、空調機2の温度を制御すること、等を含む。
【0016】
空調制御装置4は、複数の空調機2に各々搭載されている無線機2aに予め割り当てられた無線機IDを指定することによって、所望の空調機2に搭載された無線機2aにのみ制御信号を送信し、所望の空調機2の動作のみを制御することができる。
【0017】
ここで、例えば部屋1の既知の位置に取り付けられた複数の空調機2のうち、ユーザ近辺の空調機2の動作のみを制御したい場合、複数の空調機2のうちのどの空調機2が当該ユーザ近辺の空調機2であるかを特定する必要がある。このためには、まず、部屋1にいるユーザの位置を特定する必要がある。
【0018】
ところで、無線通信機能を有する2つの機器(送信機および受信機)間で無線信号を送受信することによって測定される受信電力は、2つの機器間の距離と相関関係を有している。このため、複数の空調機2の各々に搭載された無線機2a(送信機)と、部屋1にいるユーザによって所持される情報処理装置3(受信機)との間で無線信号を送受信することによって測定される受信電力を、無線機2aおよび情報処理装置3間の距離に変換し、当該ユーザの位置を特定することが考えられる。なお、本実施形態における受信電力とは、無線機2aから送信された無線信号が情報処理装置3によって受信された際の当該無線信号(受信信号)の強度に相当する。
【0019】
しかしながら、空調機2が取り付けられた部屋1(屋内)には壁、床、天井および什器(例えば、家具等)が存在するため、壁、床、天井および什器で無線信号が反射し、強いマルチパスが発生する。この場合、周波数選択性フェージングが発生し、受信信号の強度(受信電力)が大きくばらつく可能性がある。上記した無線信号を送受信するための通信帯域がこのようなばらつきを抑制することができる程度に十分に広帯域であればよいが、上記したBLEのような狭帯域通信では、多くの場合で受信信号の強度は大きくばらつく。受信信号の強度が大きくばらついてしまうと、当該受信信号の強度を、無線機2aおよび情報処理装置3間の距離に変換したとしても、当該変換された距離と実際の距離との間には大きな誤差が生じてしまう。
【0020】
このため、受信信号の強度と、無線機2aおよび情報処理装置3間の距離との間の関係をフェージングによるばらつきまで考慮してモデル化しておくようなことも考えられるが、当該モデル化には、アンテナゲインを事前に測定することや伝搬損失指数を事前に設定すること等、多くの事前設定を要し、手間がかかる。また、部屋1における人物の往来や、部屋1における家具の配置転換等、部屋1の環境が頻繁に変化する可能性を考慮すると、上記したモデル化により得られるメリットは少ない。
【0021】
そこで、本実施形態においては、受信信号の強度を、無線機2aおよび情報処理装置3間の距離に変換した際に生じ得る上記した誤差を低減することが可能な方法であって、上記したモデル化とは異なる方法(上記したモデル化より手間のかからない方法)について説明する。
【0022】
以下では、まず、受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換する既知の方法について説明する。
一般に、自由空間における受信電力は、送信電力およびアンテナゲインに比例し、送信機および受信機間の距離の二乗および波長の逆二乗に反比例するため、(1)式のように表すことができる。
【0023】
【0024】
なお、(1)式のPrは受信電力を示し、(1)式のPtは送信電力を示す。
また、(1)式のGrは受信アンテナゲイン(受信アンテナ利得)を示し、(1)式のGtは送信アンテナゲイン(送信アンテナ利得)を示す。
さらに、(1)式のLは、挿入損失や整合損失(マッチング損失)等を含むシステム損失(伝搬損失)を示す。
また、(1)式のdは、送信機および受信機間の距離を示す。
さらに、(1)式のλは波長を示し、(1)式のnは伝搬損失指数を示す。
【0025】
(1)式をデシベル表記にすると、当該(1)式は(2)式のように変形することができる。
【0026】
【0027】
なお、(2)式のPr_dbはデシベル表記の受信電力、つまり、受信信号の強度を示す。(2)式のPt_dbはデシベル表記の送信電力、つまり、送信時の無線信号(送信信号)の強度を示す。
また、(2)式のGr_dbはデシベル表記の受信アンテナゲインを示し、(2)式のGt_dbはデシベル表記の送信アンテナゲインを示す。
さらに、(2)式のLdbはデシベル表記のシステム損失を示す。
【0028】
ここで、送信機および受信機に設けられるアンテナがともに無指向性アンテナ(オムニアンテナ)であると仮定すると、(2)式の受信アンテナゲインGr_dbおよび送信アンテナゲインGt_dbはともにゼロとなる。また、(2)式のシステム損失Ldbをゼロと仮定すると、(2)式は(3)式のように変形することができる。
【0029】
【0030】
(3)式を変形すると、距離dは(4)式のように表すことができる。
【0031】
【0032】
(4)式によれば、受信信号の強度Pr_dbと、送信信号の強度Pt_dbと、伝搬損失指数nとに基づき、送信機および受信機間の距離dを算出することができる。送信信号の強度Pt_dbは送信機の性能に依存する既知の値であり、伝搬損失指数nは例えば事前に設定される。つまり、受信機において受信信号の強度Pr_dbを測定さえすれば、当該受信信号の強度Pr_dbを、送信機および受信機間の距離dに変換することができる。
【0033】
しかしながら、上記したように部屋等の屋内では強いマルチパスによる強いフェージングが発生するため、受信信号の強度Pr_dbにばらつきが発生し、上記した(4)式を利用して、受信信号の強度Pr_dbを、送信機および受信機間の距離dに変換したとしても、送信機および受信機間の実際の距離との間に大きな誤差が生じてしまう。
【0034】
そこで、本実施形態においては、上記した(4)式を利用して受信信号の強度Pr_dbを距離dに変換する際に、事前に設定された伝搬損失指数nを用いるのではなく、送信機および受信機間の空間に対応した伝搬損失指数を算出(推定)し、当該算出された伝搬損失指数を用いて、受信信号の強度Pr_dbを距離dに変換する。
【0035】
以下では、送信機および受信機間の空間に対応した伝搬損失指数を算出(推定)する方法について説明する。
送信機および受信機間の空間に対応した伝搬損失指数は、当該送信機(以下、特定の送信機と表記する)と、当該受信機と、当該特定の送信機とは異なる送信機であって当該受信機と無線通信可能な他の送信機とに関する情報を利用して算出される。より詳しくは、特定の送信機および受信機間の空間に対応する伝搬損失指数は、特定の送信機および受信機間で無線信号が送受信されることによって測定される受信信号の強度と、他の送信機および受信機間で無線信号が送受信されることによって測定される受信信号の強度と、特定の送信機および他の送信機間の距離と、に基づき算出される。以下、
図2を参照して、特定の送信機および受信機間の空間に対応した伝搬損失指数を算出する方法について具体的に説明する。
【0036】
図2は、本実施形態に係る空調制御システムに含まれる無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数を算出する方法を説明するための図である。本ケースにおいては、無線機2a
1が特定の送信機に相当し、情報処理装置3が受信機に相当し、無線機2a
2が他の送信機に相当する。
【0037】
なお、
図2のP1は無線機2a
1の位置を示し、P2は無線機2a
2の位置を示し、Pxは情報処理装置3の位置を示している。また、
図2のd
1xは、無線機2a
1および情報処理装置3間の距離(つまり、位置P1-Px間の距離)を示している。
図2のd
2xは、無線機2a
2および情報処理装置3間の距離(つまり、位置P2-Px間の距離)を示している。さらに、
図2のD
12は、無線機2a
1および無線機2a
2間の距離(つまり、位置P1-P2間の距離)を示している。
【0038】
まず、無線機2a1および情報処理装置3間の距離d1xは、上記した(4)式に基づき、(5)式のように表すことができる。
【0039】
【0040】
同様に、無線機2a2および情報処理装置3間の距離d2xは、上記した(4)式に基づき、(6)式のように表すことができる。
【0041】
【0042】
なお、(5)式のP1x_dbは、無線機2a1から送信された無線信号が情報処理装置3によって受信された際の当該無線信号(受信信号)の強度を示す。また、(6)式のP2x_dbは、無線機2a2から送信された無線信号が情報処理装置3によって受信された際の当該無線信号(受信信号)の強度を示す。さらに、(5)式および(6)式のn1x2は、無線機2a1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数であって、他の送信機として無線機2a2を利用して算出される伝搬損失指数を示す。
【0043】
なお、以下では、(5)式および(6)式の両方に共通する項を、(7)式のように表す。
【0044】
【0045】
ここで、無線機2a1の位置P1(特定の送信機の位置)と、情報処理装置3の位置Px(受信機の位置)と、無線機2a2の位置P2(他の送信機の位置)とを結ぶことで形成される三角形の各辺の長さ(距離)は、三角形の辺の性質により、(8)式に示す関係を有する。
【0046】
【0047】
(8)式に対して、(5)式~(7)式を代入すると、当該(8)式は(9)式のように変形することができる。
【0048】
【0049】
また、無線機2a1の位置P1(特定の送信機の位置)と、情報処理装置3の位置Px(受信機の位置)と、無線機2a2の位置P2(他の送信機の位置)とを結ぶことで形成される三角形の各辺の長さ(距離)は、三角形の辺の性質により、(8)式に示した関係とは異なる関係として、(10)式に示す関係を有する。
【0050】
【0051】
(10)式に対して、(5)式~(7)式を代入すると、当該(10)式は(11)式のように変形することができる。
【0052】
【0053】
受信信号の強度P1x_db,P2x_dbは、受信機に相当する情報処理装置3によって測定される。また、上記したように、本実施形態に係る空調機2は既知の位置に取り付けられているため、距離D12は、空調機2の位置を示す座標を利用して、例えば情報処理装置3によって算出される。さらに、本実施形態においては、空調機2の各々に搭載された無線機2aの送信信号の強度Pt_dbは、無線機によらず同一の値である(つまり、固定されている)場合を想定する。
【0054】
これによれば、上記した(9)式および(11)式を利用して、伝搬損失指数n1x2の最大値および最小値を算出(推定)することができる。つまり、伝搬損失指数n1x2の最大値および最小値によって規定される伝搬損失指数n1x2の範囲を算出(推定)することができる。また、例えば、算出された伝搬損失指数n1x2の範囲の中央値を、特定の送信機に相当する無線機2a1と、受信機に相当する情報処理装置3との間の空間に対応した伝搬損失指数n1xとして、一意に算出することも可能である。
【0055】
以上説明した方法によれば、無線機2a1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数n1x2の範囲(および伝搬損失指数n1x)を算出することが可能である。伝搬損失指数n1x2の範囲(および伝搬損失指数n1x)は、受信信号の強度P1x_dbを距離d1xの範囲(および距離d1x)に変換する際に利用される。これによれば、事前に設定された伝搬損失指数nを利用して、受信信号の強度P1x_dbを距離d1xに変換する場合に比べて、実際の距離との間に生じ得る誤差を低減することが可能である。
【0056】
なお、ここでは一例として、情報処理装置3が、無線機2a
1および当該情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数n
1x2の範囲を算出する場合について説明するが、例えば、空調制御装置4が受信信号の強度P
1x_db,P
2x_dbを示す情報を情報処理装置3から取得して、伝搬損失指数n
1x2の範囲を算出してもよい。あるいは、
図3に示すように、情報処理装置3および空調制御装置4と無線通信可能なサーバ装置5がさらに設けられ、当該サーバ装置5が受信信号の強度P
1x_db,P
2x_dbを示す情報を情報処理装置3から取得して、伝搬損失指数n
1x2の範囲を算出してもよい。
【0057】
図4は、無線機2aの概略構成例を示す図である。
図4に示すように、無線機2aは、送信部21、受信部22、処理部23およびメモリ24を備えている。
【0058】
送信部21は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、他の無線機2a、空調制御装置3、情報処理装置4等)に対して無線信号を送信する。例えば、送信部21は、自機に割り当てられた無線機IDを含む無線信号(ビーコン)を、情報処理装置3に送信する。
【0059】
受信部22は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、他の無線機2a、空調制御装置3、情報処理装置4等)からの無線信号を受信する。例えば、受信部22は、空調制御装置4から送信された無線信号であって、空調機2の動作を制御するためのコマンドを含む無線信号(制御信号)を受信する。
【0060】
処理部23は、いわゆるCPUであり、無線機2a内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。メモリ24は、受信部22によって受信されたコマンド等を一時的に格納するバッファとして機能する。
【0061】
図5は、情報処理装置3の概略構成例を示す図である。
図5に示すように、情報処理装置3は、受信部31、測定部32、推定部33、送信部34、処理部35およびメモリ36を備えている。
【0062】
受信部31は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、無線機2a、空調制御装置4等)からの無線信号を受信する。例えば、受信部31は、空調機2の各々に搭載されている無線機2aから送信された無線機IDを含む無線信号を受信する。
測定部32は、受信部31によって受信された無線信号(受信信号)の強度を測定する。
【0063】
推定部33は、
図5に示すように、伝搬損失指数推定部331、距離推定部332(変換部)および位置推定部333(特定部)を含む。
伝搬損失指数推定部331は、上記した(5)式~(11)式に基づく一連の処理を実行し、特定の送信機に相当する無線機2aと情報処理装置3との間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定(算出)する。また、伝搬損失指数推定部331は、推定された伝搬損失指数の範囲の中央値を、特定の送信機に相当する無線機2aと情報処理装置3との間の空間に対応する伝搬損失指数として算出する。
【0064】
なお、受信部31によって複数の無線機2aから各々送信された無線信号が受信され、測定部32によって各無線信号(受信信号)の強度が測定された場合、伝搬損失指数推定部331は、測定された複数の受信信号の強度のうち、最も大きい受信信号の強度に対応する無線信号を送信した無線機2aを特定の送信機として認識し、その他の受信信号の強度に対応する無線信号を送信した無線機2aを他の送信機として認識する。あるいは、伝搬損失指数推定部331は、複数の無線機2aのうち予め決められた1つの無線機2aを特定の送信機として認識し、その他の無線機2aを他の送信機として認識してもよい。
【0065】
また、伝搬損失指数推定部331は、測定部32によって測定された複数の受信信号の強度のうち、少なくとも2つ以上の受信信号の強度が予め設定された閾値(例えば、70dBm)以上である場合に、上記した伝搬損失指数の範囲の推定を開始し、当該閾値以上である受信信号の強度が2つ未満になった場合に、上記した伝搬損失指数の範囲の推定を終了する。
【0066】
距離推定部332は、伝搬損失指数推定部331によって推定(算出)された特定の送信機に相当する無線機2aと情報処理装置3との間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を、上記した(4)式に適用し、当該無線機2aからの無線信号の強度(受信信号の強度)を、当該無線機2aおよび情報処理装置3間の距離の範囲に変換する。より詳しくは、距離推定部332は、伝搬損失指数推定部331によって推定された伝搬損失指数の範囲と、測定部32によって測定された特定の送信機に相当する無線機2aからの無線信号の強度(受信信号の強度)と、当該無線機2aから送信される無線信号の強度(送信信号の強度)と、当該無線信号の周波数に基づき算出される波長とを、上記した(4)式に適用し、当該受信信号の強度を、当該無線機2aおよび情報処理装置3間の距離の範囲に変換する。
【0067】
あるいは、距離推定部332は、伝搬損失指数推定部331によって算出された特定の送信機に相当する無線機2aと情報処理装置3との間の空間に対応する伝搬損失指数を、上記した(4)式に適用し、当該無線機2aからの無線信号の強度(受信信号の強度)を、当該無線機2aおよび情報処理装置3間の距離に変換する。より詳しくは、距離推定部332は、伝搬損失指数推定部331によって算出された伝搬損失指数と、測定部32によって測定された特定の送信機に相当する無線機2aからの無線信号の強度(受信信号の強度)と、当該無線機2aから送信される無線信号の強度(送信信号の強度)と、当該無線信号の周波数に基づき算出される波長とを、上記した(4)式に適用し、当該受信信号の強度を、当該無線機2aおよび情報処理装置3間の距離に変換する。
【0068】
位置推定部333は、伝搬損失指数推定部331および距離推定部332によって算出された少なくとも3つの無線機2aおよび情報処理装置3間の距離(例えば、
図1に示した無線機2a
1および情報処理装置3間の距離、無線機2a
2および情報処理装置3間の距離、無線機2a
3および情報処理装置3間の距離、等)に基づく三点測位を実行し、部屋1における情報処理装置3の位置(つまり、ユーザの位置)を特定(推定)する。
【0069】
送信部34は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、無線機2a、空調制御装置4等)に対して無線信号を送信する。例えば、送信部34は、位置推定部333によって特定されたユーザの位置を示す位置情報を、空調制御装置4に送信する。
【0070】
処理部35は、いわゆるCPUであり、情報処理装置3内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。メモリ36は、処理部35によって実行される様々なプログラムを格納する。
【0071】
図6は、空調制御装置4の概略構成例を示す図である。
図6に示すように、空調制御装置4は、受信部41、送信部42、処理部43およびメモリ44を備えている。
【0072】
受信部41は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、無線機2a、情報処理装置3等)からの無線信号を受信する。例えば、受信部41は、情報処理装置3から送信されるユーザの位置を示す位置情報を受信する。
【0073】
送信部42は、無線通信機能を有する他の機器(例えば、無線機2a、情報処理装置3等)に対して無線信号を送信する。例えば、送信部42は、受信部41によって受信された位置情報により示されるユーザの位置近辺の空調機2の動作を制御するためのコマンドを含む制御信号を、当該空調機2に搭載されている無線機2aの無線機IDを指定して送信する。
【0074】
処理部43は、いわゆるCPUであり、空調制御装置4内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。なお、処理部43は、
図5に示した推定部33と同様な機能を有していてもよい。これによれば、情報処理装置3だけでなく空調制御装置4においても、特定の送信機に相当する無線機2aと情報処理装置3との間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定すること、当該無線機2aからの無線信号の強度(受信信号の強度)を当該無線機2aおよび情報処理装置3間の距離の範囲に変換すること、当該情報処理装置3の位置を特定すること、等を行うことが可能となる。メモリ44は、処理部43によって実行される様々なプログラムを格納する。
【0075】
ここで、
図7のフローチャートを参照して、情報処理装置3を所持するユーザの位置を特定する位置特定処理の手順の一例について説明する。
【0076】
まず、情報処理装置3の受信部31は、少なくとも2以上の空調機2に各々搭載された無線機2aから送信される無線信号を受信する(ステップS1)。
【0077】
続いて、情報処理装置3の測定部32は、ステップS1の処理において受信された複数の無線信号の強度(受信信号の強度)を各々測定する(ステップS2)。
【0078】
情報処理装置3の伝搬損失指数推定部331は、ステップS2の処理において測定された複数の受信信号の強度のうち、最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aを、特定の送信機として認識する(ステップS3)。
【0079】
また、伝搬損失指数推定部331は、ステップS2の処理において測定された複数の受信信号の強度のうち、特定の送信機に対応する受信信号の強度を除いた受信信号の強度の中で最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aを、他の送信機として認識する(ステップS4)。なお、詳細については後述するが、伝搬損失指数推定部331は、特定の送信機に対応する受信信号の強度を除いた受信信号の強度の中で最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aのみを、他の送信機として認識するのではなく、特定の送信機として認識された無線機2a以外の全ての無線機2aを、他の送信機として認識してもよい。
【0080】
次に、伝搬損失指数推定部331は、上記した(5)式~(11)式に基づき、ステップS3の処理において認識された特定の送信機との間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲(最大値および最小値)を推定する(ステップS5)。
【0081】
より詳しくは、伝搬損失指数推定部331は、ステップS3の処理において特定の送信機として認識された無線機2aから送信された無線信号を受信した際の当該無線信号の強度(受信信号の強度)と、ステップS4の処理において他の送信機として認識された無線機2aから送信された無線信号を受信した際の当該無線信号の強度(受信信号の強度)と、当該特定の送信機として認識された無線機2aおよび当該他の送信機として認識された無線機2a間の距離とに基づき、当該特定の送信機との間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を推定する。
【0082】
なお、ステップS5の処理において、伝搬損失指数推定部331は、推定された伝搬損失指数の範囲の中央値を、ステップS3の処理において認識された特定の送信機との間の空間に対応する伝搬損失指数としてさらに算出してもよい。
【0083】
その後、情報処理装置3の距離推定部332は、ステップS5の処理において推定された伝搬損失指数の範囲に基づき、ステップS3の処理において認識された特定の送信機との間の距離の範囲(最大値および最小値)を推定する(ステップS6)。
【0084】
なお、ステップS6の処理において、距離推定部332は、ステップS5の処理において算出された伝搬損失指数に基づき、ステップS3の処理において認識された特定の送信機との間の距離をさらに算出してもよい。
【0085】
情報処理装置3は、上記したステップS3~ステップS6の処理を少なくとも3回以上繰り返し実行する。但し、2回目のステップS3の処理においては、最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aではなく、2番目に大きい受信信号の強度に対応する無線機2aを特定の送信機として認識し、2回目のステップS4の処理においては、1番目の強度に対応する無線機2a(最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2a)を他の送信機として認識するものとする。さらに、3回目のステップS3の処理においては、最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aではなく、3番目に大きい受信信号の強度に対応する無線機2aを特定の送信機として認識、3回目のステップS4の処理においては、1番目の強度に対応する無線機2a(最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2a)を他の送信機として認識するものとする。これによれば、最も大きい受信信号の強度に対応する無線機2aと情報処理装置3との間の距離の範囲と、2番目に大きい受信信号の強度に対応する無線機2aと情報処理装置3との間の距離の範囲と、3番目に大きい受信信号の強度に対応する無線機2aと情報処理装置3との間の距離の範囲と、を少なくとも推定することができる。
【0086】
情報処理装置3の位置推定部333は、少なくとも3つの無線機2aと情報処理装置3との間の距離の範囲に基づき三点測位を実行し、当該情報処理装置3の位置(つまり、ユーザの位置)を特定(推定)する(ステップS7)。
【0087】
しかる後、情報処理装置3の送信部34は、ステップS7の処理において推定されたユーザの位置を示す位置情報を空調制御装置4に送信し(ステップS8)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0088】
空調制御装置4は、情報処理装置3から送信された位置情報を受信すると、当該位置情報により示されるユーザの位置近辺の空調機2の動作を制御するためのコマンドを含む制御信号を、当該空調機2に搭載されている無線機2aの無線機IDを指定して送信する。これによれば、ユーザ近辺の空調機2の動作のみを制御することが可能となる。
【0089】
以上説明した本実施形態においては、特定の送信機および受信機間の空間に対応する伝搬損失指数が、当該特定の送信機と、当該受信機と、1つの他の送信機とに関する情報に基づき算出される場合を説明したが、当該伝搬損失指数は、当該特定の送信機と、当該受信機と、2つ以上の他の送信機とに関する情報に基づき算出されてもよい。以下、
図8を参照して、特定の送信機および受信機間の空間に対応する伝搬損失指数を、2つ以上の他の送信機に関する情報を用いて算出するケースについて説明する。
【0090】
図8は、本実施形態に係る空調制御システムに含まれる無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数を算出する方法を説明するための図である。本ケースにおいては、無線機2a
1が特定の送信機に相当し、情報処理装置3が受信機に相当し、無線機2a
2,2a
3,2a
4が他の送信機に相当する。
【0091】
なお、
図8(b)のP3は無線機2a
3の位置を示し、
図8(c)のP4は無線機2a
4の位置を示している。また、
図8(b)のd
3xは、無線機2a
3および情報処理装置3間の距離(つまり、位置P3-Px間の距離)を示し、
図8(c)のd
4xは、無線機2a
4および情報処理装置3間の距離(つまり、位置P4-Px間の距離)を示している。さらに、
図8(b)のD
13は、無線機2a
1および無線機2a
3間の距離(つまり、位置P1-P3間の距離)を示し、
図8(c)のD
14は、無線機2a
1および無線機2a
4間の距離(つまり、位置P1-P4間の距離)を示している。
【0092】
図8(a)は、
図2と同一のケースであり、無線機2a
1が特定の送信機に相当し、情報処理装置3が受信機に相当し、無線機2a
2が他の送信機に相当するケースである。この場合、上記した(5)式~(11)式に基づく一連の処理が実行されることにより、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数として、伝搬損失指数n
1x2の範囲(最大値および最小値)が算出される。なお、ここでは、
図8(a)に示すように、伝搬損失指数n
1x2の最大値が2.2であり、最小値が1.8であった場合を想定する。
【0093】
図8(b)は、無線機2a
1が特定の送信機に相当し、情報処理装置3が受信機に相当し、無線機2a
3が他の送信機に相当するケースである。この場合、上記した(5)式~(11)式に基づく一連の処理が実行されることにより、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数として、伝搬損失指数n
1x3の範囲(最大値および最小値)が算出される。伝搬損失指数n
1x3は、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数であって、他の送信機として無線機2a
3を利用して算出される伝搬損失指数である。なお、ここでは、
図8(b)に示すように、伝搬損失指数n
1x3の最大値が2.5であり、最小値が1.8であった場合を想定する。
【0094】
図8(c)は、無線機2a
1が特定の送信機に相当し、情報処理装置3が受信機に相当し、無線機2a
4が他の送信機に相当するケースである。この場合、上記した(5)式~(11)式に基づく一連の処理が実行されることにより、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数として、伝搬損失指数n
1x4の範囲(最大値および最小値)が算出される。伝搬損失指数n
1x4は、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数であって、他の送信機として無線機2a
4を利用して算出される伝搬損失指数である。なお、ここでは、
図8(c)に示すように、伝搬損失指数n
1x4の最大値が2.6であり、最小値が1.4であった場合を想定する。
【0095】
図8(a)~(c)に示すように、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数として、複数の伝搬損失指数n
1x2,n
1x3,n
1x4の範囲が算出される場合、
図8(d)に示すように、複数の伝搬損失指数n
1x2,n
1x3,n
1x4の範囲が互いに重なる範囲を、無線機2a
1および情報処理装置3間の空間に対応した伝搬損失指数n
1xの範囲として算出してもよい。この場合、
図8(d)に示すように、伝搬損失指数n
1xの範囲の最大値は2.2であり、最小値は1.8となる。
【0096】
このように、2つ以上の他の送信機に関する情報を用いて、特定の送信機および受信機間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を算出することは、1つの他の送信機に関する情報を用いて、特定の送信機および受信機間の空間に対応する伝搬損失指数の範囲を算出する場合よりも信頼性の高い伝搬損失指数の範囲を算出することができる。
【0097】
以上説明した本実施形態においては、無線機2aが空調機2に搭載されている場合を想定したが、無線機2aは空調機2に外的に取り付けられてもよい。また、無線機2aの一部は、空調機2とは別の位置に取り付けられるスタンドアロン型であってもよい。スタンドアロン型の無線機2aは、空調制御装置4から送信される制御信号を受信せずに、伝搬損失指数を推定するためだけに用いられる点で、空調機2に搭載される無線機2aや、空調機2に外的に取り付けられる無線機2aとは異なっている。
【0098】
また、以上説明した本実施形態においては、無線機2aが空調機2に搭載されている場合を想定したが、無線機2aは、例えば照明器具等、他の電気機器に搭載されてもよい。これによれば、部屋にいるユーザの位置に応じて、当該部屋の既知の位置に取り付けられた複数の電気機器の動作を制御する機器制御システムを実現することが可能である。
【0099】
以上説明した一実施形態によれば、送信機および受信機間で無線信号を送受信することによって測定される受信信号の強度を、送信機および受信機間の距離に変換した際に生じる誤差を低減することが可能な方法、情報処理装置およびシステムを提供することが可能となる。
【0100】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…部屋、2…空調機、2a…無線機、3…情報処理装置、4…空調制御装置。