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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158913
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20241031BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241031BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20241031BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241031BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/652
H01M10/6568
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074540
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大石 将人
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
(72)【発明者】
【氏名】相川 史壮
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールの部品点数を増加させずに、バッテリを効率よく冷却することのできるバッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】バッテリBを冷却するバッテリ冷却装置Aであって、並設されてバッテリBを構成する複数のセル1と、隣り合うセル1の間に配置されセル1を冷却するプレート部材2と、複数のセル1及びプレート部材2を拘束し、バッテリモジュールMを形成する拘束部材Rと、を備え、拘束部材Rは、冷却液Cが流通する流通路32,42を有し、プレート部材2は、流通路32,42と連通する冷却流路23を有するバッテリ冷却装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、
並設されて前記バッテリを構成する複数のセルと、
隣り合う前記セルの間に配置され前記セルを冷却するプレート部材と、
前記複数のセル及び前記プレート部材を拘束し、バッテリモジュールを形成する拘束部材と、を備え、
前記拘束部材は、冷却液が流通する流通路を有し、
前記プレート部材は、前記流通路と連通する冷却流路を有するバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記プレート部材は、前記バッテリの上面に配置される前記拘束部材と接触しており、前記流通路に接続され、前記冷却液が流入する流入口と、前記冷却液が流出する流出口と、を有する請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記流入口は、前記冷却液の流れる方向に向かって内径が小さくなるように構成されたテーパー部を有する請求項2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記拘束部材は、前記バッテリの上面に配置される上部部材と、前記バッテリの下面に配置される下部部材と、を含んでいる請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるためのバッテリを搭載している。
【0003】
通常、電動車に搭載されるバッテリは、複数のセルが併設されたバッテリモジュールを容器に収容したバッテリパックとして構成されている。そのため、バッテリを使用すると、発熱により容器の内部に熱がこもって高温になる。バッテリが高温になると劣化が進みやすくなるので、バッテリを冷却しながら使用して温度上昇を防いでいる。バッテリを確実に冷却するためには、容器内のバッテリのセルを冷却液に接触させることが効果的である。
【0004】
特許文献1に記載のバッテリ冷却装置は、バッテリのセル間に固定部材を配置し、固定部材に形成される流路を流通する冷却液がセルと接触することにより、バッテリを冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第111384465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリをバッテリケースへ搭載する際には、複数のセルとその間に配置される固定部材を拘束し、モジュール化する必要がある。特許文献1に記載のバッテリ冷却装置においては、拘束用の部品を新たに配置する必要があるため、部品点数の増加によるコストアップにつながる。また、拘束用の部品を配置するためのスペースが必要となるのでバッテリ冷却装置が大きくなり、配置用のスペースが限られる場合にはバッテリを小型化する必要があるため、エネルギー密度が低下するといった課題が生じる。
【0007】
そこで、バッテリモジュールの部品点数を増加させずに、バッテリを効率よく冷却することのできるバッテリ冷却装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバッテリ冷却装置の特徴構成は、バッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、並設されて前記バッテリを構成する複数のセルと、隣り合う前記セルの間に配置され前記セルを冷却するプレート部材と、前記複数のセル及び前記プレート部材を拘束し、バッテリモジュールを形成する拘束部材と、を備え、前記拘束部材は、冷却液が流通する流通路を有し、前記プレート部材は、前記流通路と連通する冷却流路を有する点にある。
【0009】
本構成では、複数のセルと、複数のセルの間に配置されるプレート部材とを、拘束部材が拘束することによりバッテリモジュールを形成している。拘束部材は冷却液を流通する流通路を有しており、プレート部材は流通路と連通する冷却流路を有している。つまり、バッテリモジュール自体が冷却構造(拘束部材の流通路)を有するので、バッテリモジュールに冷却液の給排用配管等を設置する必要がなく、部品点数や給排用配管等の設置用スペースの削減が可能となる。その結果、バッテリのエネルギー密度を向上させることができ、電動車の航続距離の上昇につながる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態に係るバッテリ冷却装置の斜視図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3図1のIII-III線矢視断面図である。
図4】第二実施形態に係るバッテリ冷却装置の断面図である。
図5】第三実施形態に係るバッテリ冷却装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るバッテリ冷却装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0012】
〔第一実施形態〕
図1図3に示されるように、本実施形態に係るバッテリ冷却装置Aは、バッテリBを構成する並設された複数(本実施形態においては5つ)のセル1と、隣り合うセル1,1の間、及びセル1と拘束部材Rとの間に配置された複数(本実施形態においては6つ)のプレート部材2と、拘束部材Rと、を備える。拘束部材Rは、上部部材3と、下部部材4と、エンドプレート5,6とを有する。バッテリモジュールMは、複数のセル1と複数のプレート部材2とを、拘束部材Rが拘束することにより構成される。本実施形態においては、プレート部材2と拘束部材Rの内部に冷却液Cが流れることによりバッテリBが冷却されるので、バッテリモジュールM自体がバッテリ冷却装置Aを構成している。冷却液Cは、例えばロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油等である。バッテリ冷却装置Aは、例えば電動車のバッテリに用いられる。
【0013】
バッテリ冷却装置Aの構成部材の配置を説明する際に、X方向と、Y方向と、Z方向とを用いる。X方向は、セル1が並行に設置される方向であり、セル1の厚さ方向と一致する。Y方向は、X方向に対して直交する方向であり、セル1の長手方向と一致する。図2は、Y方向に沿ってバッテリ冷却装置Aの断面をみたものであり、紙面左側を一方、紙面右側を他方とする。Z方向は、X方向及びY方向に対して直交する方向であり、セル1の高さ方向と一致する。図中において、紙面上側を上方、下側を下方とする。
【0014】
バッテリBを構成するセル1は、例えばリチウムイオン電池が用いられる。複数のセル1を直列に接続することにより、バッテリBとして高電圧を発生させている。本実施形態において、セル1は直方体形状を有し、最も面積の大きい側面1bが、X方向に沿って積層されている。
【0015】
隣り合うセル1,1の間に配置されるプレート部材2には、樹脂やゴム等の絶縁物からなる弾性のある材料を用いることができる。プレート部材2は、一方の側面2bと,他方の側面2cが隣り合うセル1の側面1b,1bと夫々接触するように、X方向に沿って積層されている。プレート部材2の側面2b,2c以外の面は、セル1とX方向に沿って面一となるように配置される。つまり、プレート部材2の上面2aとセル1の上面1aの高さ、及び、プレート部材2の下面2dとセル1の下面1dの高さは夫々等しい。プレート部材2の側面には、シリコーン等の熱伝導率の高い材料から構成される伝熱シート等が貼られていてもよい。
【0016】
プレート部材2の上面2aの中央部には、プレート部材2の上面2aよりもZ方向上方へ延出し、プレート部材2の一方の側面2bよりもX方向の一方へ、他方の側面2cよりもX方向の他方へ向かって延出する延出部21が設けられている。図2図3に示すように、延出部21は、プレート部材2の一方の側面2bからX方向の一方へ、及び、他方の側面2cからX方向の他方へ向かって、夫々セル1の半分の厚みよりも短い長さだけ延出している。つまり、延出部21は、X方向において隣り合う延出部21とは接続していない。延出部21のY方向の長さは、後述する上部部材3のY方向の長さと略同一である。延出部21の上面21aは、後述するエンドプレート5の上面5aと同じ高さ、もしくは上面5aよりもZ方向上方に設けられてもよい。延出部21の上面21aがエンドプレート5の上面5aよりもZ方向上方に設けられると、バッテリモジュールMが形成された際に上部部材3が延出部21を圧縮するので、プレート部材2は、セル1又は上部部材3と密着することができる。
【0017】
また、プレート部材2の下面2dの中央部には、プレート部材2の下面2dよりもZ方向下方へ延出し、プレート部材2の一方の側面2b及び他方の側面2cよりもX方向の一方及び他方へ向かって延出する延出部24が設けられている。延出部21と同様に、延出部24も、プレート部材2の一方の側面2bから並列方向の一方へ、及び、他方の側面2cから並列方向の他方へ向かって、夫々セル1の半分の厚みよりも短い長さだけ延出している。延出部24のY方向の長さは、後述する下部部材4のY方向の長さと略同一である。延出部24の下面24dは、後述するエンドプレート5の下面5dと同じ高さか、もしくは下面5dよりもZ方向下方に設けられてもよい。延出部24の下面24dがエンドプレート5の下面5dよりもZ方向下方に設けられると、バッテリモジュールMが形成された際に下部部材4が延出部24を圧縮するので、プレート部材2は、セル1又は下部部材4と密着することができる。延出部21,24は、プレート部材2に一体的に形成されてもよいし、組み立てによりプレート部材2に取り付けられてもよい。
【0018】
プレート部材2の延出部21には、冷却液Cをプレート部材2の内部へ流入する流入口22が、延出部24には、冷却液Cをプレート部材2の外部へ流出する流出口25が夫々形成されている。図3に示すように、X方向に沿ってプレート部材2を見たときに、流入口22は、プレート部材2のY方向の中心からY方向の一方又は他方へ向かって同じ距離だけ離間した位置に2つ設けられている。流出口25は、X方向に沿ってプレート部材2を見たときに、プレート部材2のY方向の中心に1つ設けられている。Z方向に垂直な面に沿った流入口22及び流出口25の断面形状は円形である。
【0019】
プレート部材2の側面2b,2cは、四隅の角が切り取られた矩形状の開口20を有する。図3に示すように、開口20は、2つの流入口22,22と、流出口25と連通している。すなわち、流入口22は、延出部21の上面21aから開口20へ向かってプレート部材2を貫通するように設けられている。また、流入口22,22は、延出部21の上面21aから開口20へ向かって内径が小さくなるように形成されたテーパー部Tを有するので、Z方向に沿った断面視において、流入口22,22は逆三角形の形状を示す。流出口25も同様に、延出部24の下面24dから開口20へ向かってプレート部材2を貫通するように設けられる。本実施形態において、流出口25の内径の大きさは、延出部24の下面24dから開口20へ向かって一定であるが、開口20から延出部24の下面24dに向かって内径が小さくなるように構成してもよい。
【0020】
プレート部材2が隣り合うセル1,1の間に配置されると、開口20は隣り合うセル1,1により閉じられた空間を形成する。流入口22,22から流入した冷却液Cは、この空間を通り、流出口25から流出するので、開口20は冷却流路23として機能する。すなわち、セル1は、X方向に沿ってみたときに、セル1の側面1b,1bのうち開口20と重なる部分が冷却液Cと接触することにより冷却される。セル1の側面1b,1bにおいて、プレート部材2と接触する部分には冷却液Cが流れないので、流入口22,22から流入した冷却液Cは、冷却流路23においてセル1の側面1b,1bを冷却したあと、流出口25から流出する。このように、冷却液Cをプレート部材2の内部にのみ流通させ、セル1の最も大きい側面1b,1bを冷却することができるので、バッテリBを液浸させて冷却を行うのと同等の効果を得ながらも、液浸に必要な容器が不要となる。よって、バッテリ冷却装置Aの小型化が可能となるので、車載スペースの削減や、エネルギー密度の向上につながる。
【0021】
図1図3に示されるように、拘束部材Rは、バッテリBの上面に配置される上部部材3と、バッテリBの下面に配置される下部部材4と、バッテリBの両端に位置するプレート部材2の一方の側面2bに接触するエンドプレート5と、プレート部材2の他方の側面2cに接触するエンドプレート6とから構成される。上部部材3と、下部部材4と、エンドプレート5,6は、夫々樹脂等で形成されてもよく、金属等で形成されてもよい。拘束部材Rは、上部部材3と、下部部材4と、エンドプレート5,6とをボルト等で締結することにより、セル1とプレート部材2とを密着させ、バッテリモジュールMを構成する。このように、拘束部材Rがセル1とプレート部材2を密着させるので、プレート部材2の内部を流通する冷却液CはバッテリモジュールMの外部へ漏れることがない。また、拘束部材Rは、複数の部品から構成されるので、バッテリモジュールMの組み立てが容易である。
【0022】
エンドプレート5は直方体形状を有し、エンドプレート5の上面5aが上部部材3の下面3dに、エンドプレート5の下面5dが下部部材4の上面4aに、エンドプレート5の他方の側面5cがプレート部材2の一方の側面2bに、夫々接触している。エンドプレート5の上面5aと下面5dの夫々には、上部部材3及び下部部材4と接合されるためのボルト孔が複数(本実施形態においては2つ)形成されており、ボルトによって上部部材3及び下部部材4と接合されている。エンドプレート5のY方向中央には、上面5a及び下面5dから側面5cへ向かって角の切り欠かれた凹部50,50が形成されている。凹部50,50は、プレート部材2の延出部21,24のX方向の一方へ延出する部位が嵌められるように形成される。すなわち、エンドプレート5の上部に位置する凹部50のZ方向に垂直な面は、プレート部材2の上面2aと同じ高さに設けられ、エンドプレート5の下部に位置する凹部50のZ方向に垂直な面は、プレート部材2の下面2dと同じ高さに設けられる。凹部50,50のX方向の長さは、延出部21,24のX方向の一方へ延出した部分の長さと同等であるか、又は長くても短くてもよい。凹部50のX方向の長さが延出部21,24のX方向の一方へ向かって延出した長さよりも長いと、エンドプレート5に対するプレート部材2の位置調整が容易である。凹部50,50のX方向の長さが延出部21,24のX方向の一方へ向かって延出した長さよりも短いと、バッテリモジュールMが形成された際にエンドプレート5がプレート部材2を圧縮するので、拘束部材Rとプレート部材2とをより密着させることができる。凹部50,50のY方向の長さは、延出部21,24のY方向の長さと同一、又は長くてもよい。このように、エンドプレート5をバッテリBに設置した場合には、延出部21,24のX方向の一方へ向かって延出した部分は、凹部50,50と接触するように配置される。
【0023】
エンドプレート5には、外部から冷却液Cを導入する導入口51と、冷却液Cを流通する流通路52と、上部部材3へ冷却液Cを導出する導出口53とが、例えば、押し出し成形により形成されている。導入口51にはエンドプレート5の外部に配置される冷却配管(不図示)から冷却液Cが供給される。導入口51に導入された冷却液Cは、流通路52を通り、導出口53から、後述する上部部材3に形成された流通路32へ流れる。
【0024】
上部部材3は直方体形状を有し、下面3dがエンドプレート5の上面5aと、プレート部材2の延出部21の上面21aと、エンドプレート6の上面6aと接触するように、バッテリBの上部であって、Y方向中央に配置されている。上部部材3のX方向の長さは、複数のセル1と、複数のプレート部材2と、エンドプレート5,6の夫々の厚みの合計と同等である。上部部材3のY方向の長さは、セル1のY方向の長さよりも短くすることができる。上部部材3のY方向の長さがセル1のY方向の長さよりも短いと、上部部材3の周囲に別部品等を配置することも可能であるので好適である。なお、上部部材3のY方向の長さは、セル1のY方向の長さと同一でもよい。上部部材3のX方向の両端の夫々には、エンドプレート5,6と接合するための複数(本実施形態においては2つ)のボルト孔が設けられており、ボルトによってエンドプレート5,6と接合されている。
【0025】
上部部材3には、エンドプレート5の導出口53から冷却液Cを導入する導入口31と、流通路32と、複数のプレート部材2に設けられた流入口22へ冷却液Cを供給する複数(本実施形態においては12つ)の供給口33とが、例えば、押し出し成形により形成されている。エンドプレート5の導出口53と、上部部材3の導入口31の内径の大きさは略同一である。上部部材3がエンドプレート5,6に固定された状態において、導出口53と導入口31は、Z方向の中心がほぼ一致するように接続されている。また、上部部材3の供給口33と、プレート部材2の流入口22は接続するように配置される。すなわち、上部部材3の流通路32とプレート部材2の冷却流路23は、供給口33及び流入口22を介して連通するので、上部部材3の導入口31に導入された冷却液Cは、流通路32を通り供給口33からプレート部材2の流入口22へと供給され、冷却流路23を流れる。この場合において、上部部材3の供給口33の内径は、プレート部材2の延出部21の上面21aにおける流入口22の内径よりも小さく形成されている。このように、供給口33は流入口22よりも小さな内径を有するので、バッテリモジュールMの組付け誤差等やプレート部材2の熱膨張又は熱収縮により、プレート部材2と上部部材3との位置関係にずれが生じたとしても、上部部材3とプレート部材2の接続面から冷却液Cが漏れることがなく、冷却流路23に冷却液Cを供給することができる。
【0026】
下部部材4は直方体形状を有し、上面4aがエンドプレート5の下面5dと、プレート部材2の延出部24の下面24dと、エンドプレート6の下面6dと接触するように、バッテリBの下部であって、Y方向中央に配置されている。下部部材4のX方向の長さは、上部部材3のX方向の長さと略同一である。また、下部部材4のY方向の長さは、セル1のY方向の長さよりも短くすることができる。下部部材4のX方向の両端の夫々には、エンドプレート5,6と接合するための複数(本実施形態においては2つ)のボルト孔が設けられており、ボルトによってエンドプレート5,6と接合されている。
【0027】
下部部材4には、複数のプレート部材2に設けられた流出口25から冷却液Cが流入する複数(本実施形態においては6つ)の導入口41と、流通路42と、エンドプレート6へ冷却液Cを排出する排出口43とが、例えば、押し出し成形により形成されている。下部部材4が、エンドプレート5,6に固定された状態において、プレート部材2の流出口25と、下部部材4の導入口41は接続する。すなわち、プレート部材2の冷却流路23と下部部材4の流通路42は、流出口25及び導入口41を介して連通している。したがって、冷却流路23にてセル1を冷却した冷却液Cは、プレート部材2の流出口25から下部部材4の導入口41へと流れ、流通路42を通って排出口43からエンドプレート6へ排出される。この場合において、下部部材4の導入口41の内径は、プレート部材2の流出口25の内径よりも大きく形成されている。このように、流出口25に対して導入口41の内径が大きいので、バッテリモジュールMの組付け誤差等やプレート部材2の熱膨張又は熱収縮により、プレート部材2と下部部材4との位置関係にずれが生じたとしても、プレート部材2と下部部材4の接続面から冷却液Cが漏れることなく、流通路42に冷却液Cを流通させることができる。なお、下部部材4は、上部部材3と点対称に形成されてもよい。これにより、同じ部品を上部部材3又は下部部材4として使用できるので、製造コストを低下させることができる。この場合には、プレート部材2の流出口25の内径を、下部部材4の導入口41の内径よりも小さくすることで、位置関係のずれに起因する冷却液Cの漏出を抑制することができる。
【0028】
エンドプレート6は直方体形状を有し、エンドプレート6の上面6aが上部部材3の下面3dに、エンドプレート6の下面6dが下部部材4の上面4aに、エンドプレート6の一方の側面6bがプレート部材2の他方の側面2cに、夫々接触している。エンドプレート6の上面6aと下面6dの夫々には、上部部材3及び下部部材4と接合されるためのボルト孔が複数(本実施形態においては2つ)形成されており、ボルトによって上部部材3及び下部部材4と接合されている。エンドプレート6のY方向中央には、エンドプレート5と同様に、上面6a及び下面6dから一方の側面6bへ向かって角の切り欠かれた凹部60,60が形成されており、凹部60,60には延出部21,24のうち、X方向の他方へ延出した部分が凹部60,60と接触するように配置される。凹部60,60の形状は、エンドプレート5に形成された凹部50,50の形状と同様である。
【0029】
エンドプレート6には、下部部材4の排出口43から排出される冷却液Cを導入する導入口61と、冷却液Cを流通する流通路62と、外部へ冷却液Cを排出する排出口63とが、例えば、押し出し成形により形成されている。下部部材4の排出口43と、エンドプレート6の導入口61の内径は等しく、下部部材4がエンドプレート5,6に固定された状態において、排出口43と導入口61のZ方向の中心はほぼ一致するように接続されている。したがって、セル1を冷却した冷却液Cは、下部部材4から導入口61を通ってエンドプレート6内の流通路62を流れ、排出口63から排出される。すなわち、セル1から熱を奪い温かくなった冷却液Cは、排出口63から排出された後、エンドプレート6の外部に配置される不図示の冷却配管を流通し、ラジエータを含む冷却回路(不図示)で冷却された後、冷たい冷却液Cとして再度エンドプレート5内を流通し、セル1とプレート部材2との間に形成される空間へ流入する。つまり、冷却液Cは冷却器で冷却されることにより循環利用されている。また、エンドプレート6は、エンドプレート5と点対称に構成されることが好ましい。これにより、同じ部品をエンドプレート5又はエンドプレート6として使用できるので、製造コストを低下させることができる。
【0030】
以上より、冷却液Cは、エンドプレート5の流通路52へ流入し、上部部材3の流通路32を通り、プレート部材2の冷却流路23を流れてセル1を冷却した後、下部部材4の流通路42を流れて、エンドプレート6の流通路62を通って排出される。このように、冷却液Cの流通する流通路52,32,42,62を有する拘束部材RがバッテリBを拘束し、バッテリ冷却装置AとしてバッテリモジュールMを構成するので、バッテリモジュールMに冷却配管等を設置する必要がなく、部品点数や設置スペースの削減が可能となる。また、プレート部材2が上部部材3及び下部部材4と密着することにより、プレート部材2とセル1,上部部材3,下部部材4との接続部位がシールされるので、バッテリモジュールM外への液漏れを抑制することができる。
【0031】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態に係るバッテリ冷却装置Aについて図4を用いて説明する。本実施形態においては、プレート部材2の延出部21の上面21aからZ方向上方へ延出する封止部210と、延出部24の下面24dからZ方向下方へ延出する封止部240が設けられる。封止部210,240は、上部部材3又は下部部材4とZ方向に垂直な面で接触するように、プレート部材2に設けられた流入口22又は流出口25に沿って設置される。封止部210,240は、プレート部材2と一体的に形成されてもよいし、プレート部材2に部品として接続されてもよい。その他の構成は第一実施形態と同じであるので、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0032】
複数のセル1と複数のプレート部材2とが、拘束部材Rによって拘束されると、プレート部材2と上部部材3及び下部部材4が密着することになる。本実施形態において、封止部210,240は、プレート部材2と上部部材3及び下部部材4との間において拘束部材Rによる圧力を受ける範囲で圧縮されることにより、上部部材3及び下部部材4と密着し、プレート部材2と上部部材3及び下部部材4の接続部位をシールする。したがって、より確実にバッテリモジュールM外への液漏れを抑制することができる。
【0033】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態に係るバッテリ冷却装置Aについて図5を用いて説明する。本実施形態においては、上部部材3の複数の供給口33及び、下部部材4の複数の導入口41は設けられない。これに代えて、上部部材3の下面3dには、流通路32が溝として設けられ、下部部材4の上面4aには、流通路42が溝として設けられる。流通路32,42のY方向の長さは、第1実施形態における流通路32,42のY方向の長さよりも短くすることができる。そして、プレート部材2の延出部21,24は、X方向の一方又は他方に向かってセル1の約半分の厚みだけ延出する。つまり、隣り合う延出部21,24のX方向の一方へ延出する部分と、他方へ延出する部分が接続する。すなわち、Y方向に沿ってバッテリモジュールMの中心断面を見たときに、セル1の上面1aは、延出部21で覆われた状態となる。セル1の下面1dについても同様に、延出部24で覆われた状態となる。この状態において、流通路32,42はプレート部材2の流入口22及び流出口25と連通している。また、エンドプレート5及び6に設けられる凹部50,60のZ方向に垂直な面におけるX方向の長さは、延出部21,24のX方向の一方又は他方へ延出する部分の長さ以下である。したがって、プレート部材2の延出部21,24は凹部50,60に密着して配置されるので、上部部材3の流通路32及び下部部材4の流通路42は、流入口22及び流出口25以外の場所においてプレート部材2によりシールされている。その他の構成は第一実施形態と同じであるので、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態において、上部部材3の流通路32において、プレート部材2の流入口22と接続する部分以外は、プレート部材2の延出部21によってシールされるので、流通路32を上部部材3の内部に形成する必要がない。同様に、下部部材4の流通路42において、プレート部材2の流出口25と接続する部分以外は、プレート部材2の延出部24によってシールされるので、流通路42を下部部材4の内部に形成する必要がない。したがって、上部部材3及び下部部材4の加工が容易となり、製造コストを低下させることができる。
【0035】
上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
(1)バッテリBを冷却するバッテリ冷却装置Aであって、並設されて前記バッテリBを構成する複数のセル1と、隣り合う前記セル1の間に配置され前記セル1を冷却するプレート部材2と、前記複数のセル1及び前記プレート部材2を拘束し、バッテリモジュールMを形成する拘束部材Rと、を備え、前記拘束部材Rは、冷却液Cが流通する流通路32,42を有し、前記プレート部材2は、前記流通路32,42と連通する冷却流路23を有するバッテリ冷却装置A。
【0036】
本構成では、複数のセル1と、複数のセル1の間に配置されるプレート部材2とを、拘束部材Rが拘束することによりバッテリモジュールMを形成している。拘束部材Rは冷却液Cを流通する流通路32,42を有しており、プレート部材2は流通路32,42と連通する冷却流路23を有している。したがって、バッテリモジュールM自体が冷却構造を有するので、バッテリモジュールMに給排用配管等を設置する必要がなく、部品点数や配管等の設置用スペースの削減が可能となる。その結果、バッテリBのエネルギー密度を向上させることができ、電動車の航続距離の上昇につながる。
【0037】
(2)(1)に記載のバッテリ冷却装置Aとして、プレート部材2は、バッテリBの上面に配置される上部部材3と接触しており、流通路32に接続され、冷却液Cが流入する流入口22と、冷却液Cが流出する流出口25と、を有すると好適である。
【0038】
本構成のように、プレート部材2が、バッテリBの上面に配置される上部部材3と接触していると、プレート部材2と上部部材3との間に冷却配管等を設置する必要がなく、部品点数を削減することができる。さらに、プレート部材2が上部部材3と密着することにより、プレート部材2と上部部材3との接続部位がシールされるので、バッテリモジュールM外への液漏れを抑制できる。
【0039】
(3)(2)に記載のバッテリ冷却装置Aとして、流入口22は、冷却液Cの流れる方向に向かって内径が小さくなるように構成されたテーパー部Tを有すると好適である。
【0040】
本構成のように、上部部材3とプレート部材2との接続部位に拡径したテーパー部Tを設けることにより、バッテリモジュールMの組付け誤差等やプレート部材2の熱膨張又は熱収縮により、プレート部材2と上部部材3との位置関係にずれが生じたとしても、冷却液Cを流通路32から冷却流路23へ流すことができる。
【0041】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のバッテリ冷却装置Aとして、拘束部材Rは、バッテリBの上面に配置される上部部材3と、バッテリBの下面に配置される下部部材4と、を含んでいると好適である。
【0042】
本構成のように、拘束部材Rが上部部材3と下部部材4を含むことにより、組み立てが容易となり、冷却配管を設置する場合に必要とされるケースを大幅に省略してバッテリモジュールMをコンパクト化することができる。
【0043】
〔その他の実施形態〕
(1)上述した実施形態において、エンドプレート5の導出口53と上部部材3の導入口31の接続部位をシールするシール材を設けてもよい。同様に、下部部材4の排出口43と、エンドプレート6の導入口61の接続部位をシールするシール材を設けてもよい。これにより、バッテリモジュールM外への液漏れを抑制することができる。
【0044】
(2)上述した実施形態において、上部部材3と、エンドプレート5とを一体的に形成してもよい。一体形成することにより、接続部位での液漏れを確実に抑制することができると共に、部品点数を減らすことができる。また、一体的に形成した上部部材3とエンドプレート5を上下左右に反転させることにより、下部部材4及びエンドプレート6として使用することができるので、部品点数を削減すると共に、組み立てを容易にすることができる。
【0045】
(3)上述した実施形態において、プレート部材2に設けられる流入口22の数は1つ又は3つ以上であってもよい。流出口25も2つ以上設けられてもよい。さらに、プレート部材2の延出部21,24のY方向の長さをセル1の幅と同等まで大きくしてもよい。プレート部材2の流入口22及び流出口25の数を増加させることにより、冷却液Cの流通がしやすくなる。
【0046】
(4)上述した実施形態において、バッテリモジュールMは、バッテリケースの中に格納されて液浸により冷却されていてもよい。この場合において、上部部材3の供給口33と、プレート部材2の流入口22は接続されずに連通していてもよい。すなわち、上部部材3の供給口33から供給された冷却液Cは、冷却流路23及びプレート部材2の外部を流れてもよい。バッテリBを液浸することにより、より効率的にバッテリBを冷却することができる。
【0047】
(5)上述した実施形態において、プレート部材2の流入口22の内径が、上部部材3の供給口33の内径よりも大きい場合には、流入口22にはテーパー部Tを設けなくてもよい。また、下部部材4の導入口41にテーパー部を設けてもよい。なお、プレート部材2の流入口22の内径と上部部材3の供給口33の内径は同じであってもよく、プレート部材2の流出口25の内径と下部部材4の導入口41の内径は同じであってもよい。
【0048】
(6)上述した実施形態において、上部部材3又は下部部材4の一方に流通路32,42が形成されていてもよい。流通路32,42が設けられない場合には、別部材である配管等を設置してもよい。さらに、エンドプレート5,6は拘束部材Rとして機能しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、バッテリを冷却するバッテリ冷却装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:セル、2:プレート部材、3:上部部材、4:下部部材、5:エンドプレート、6:エンドプレート、22:流入口、23:冷却流路、24:流出口、32:流通路、42:流通路、B:バッテリ、M:バッテリモジュール、A:バッテリ冷却装置、R:拘束部材、T:テーパー部
図1
図2
図3
図4
図5