(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158916
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】移相回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/20 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H03H7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074545
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】502251061
【氏名又は名称】株式会社ベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 廣道
(72)【発明者】
【氏名】森泉 康裕
(57)【要約】
【課題】入力される信号の位相をシフトすることで、発振回路やフィルタ回路における特性を変更することが可能な移相回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る移相回路1は、入力端子Vinと出力端子Voutとの間に抵抗群R
xとリアクタンス素子とが設けられ、前記入力端子Vinには信号が入力され、前記抵抗群R
xに、アナログスイッチSと、前記アナログスイッチSに対し前記アナログスイッチSを所定のデューティー比でオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路10とが含まれており、前記抵抗群の抵抗値R
xが、所定のデューティー比で変化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に抵抗群とリアクタンス素子とが設けられ、
前記入力端子には信号が入力され、
前記抵抗群に、アナログスイッチと、前記アナログスイッチに対し前記アナログスイッチを所定のデューティー比でオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路とが含まれており、前記抵抗群の抵抗値が、所定のデューティー比で変化する移相回路。
【請求項2】
前記リアクタンス素子がコンデンサである請求項1に記載の移相回路。
【請求項3】
前記リアクタンス素子がコイルである請求項1に記載の移相回路。
【請求項4】
前記抵抗群を複数有し、全ての前記抵抗群におけるPWM信号の周期が等しい請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の移相回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路やフィルタ回路内に設けられ、入力される正弦波信号の位相をシフトすることで、発振回路やフィルタ回路における特性を変更する移相回路に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗と、コンデンサやコイルとからなり、発振回路やフィルタ回路内に設けられ、入力される正弦波信号の位相をシフトする移相回路が知られている。例えば、特許文献1(特開昭58-170111号公報)には、その
図1に関連して、抵抗RとコンデンサCを含むローパスフィルタにおけるカットオフ周波数を変更するために、抵抗Rを可変とすることが記載されている。同文献には、抵抗Rを可変する方法として、ボリウム等を手動で操作すること、ディジタル値や直流電圧で抵抗値を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術では、抵抗RやコンデンサCを可変とすることによる問題点を回避するために、アッティネータを採用し、このアッティネータによる調整を行うことが記載されている。しかしながら、回路を構成する部品としてアッティネータは高価であり、かつ体積も大きいため、移相回路が含まれる発振回路やフィルタ回路のコストが増大すると共に、回路基板における専有面積が大きくなってしまう、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明の一態様に係る移相回路は、例えば、入力端子と出力端子との間に抵抗群とリアクタンス素子とが設けられ、前記入力端子には信号が入力され、前記抵抗群に、アナログスイッチと、前記アナログスイッチに対し前記アナログスイッチを所定のデューティー比でオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路とが含まれており、前記抵抗群の抵抗値が、所定のデューティー比で変化する。
また、本発明の一態様に係る移相回路は、例えば、前記リアクタンス素子がコンデンサである。
また、本発明の一態様に係る移相回路は、例えば、前記リアクタンス素子がコイルである。
また、本発明の一態様に係る移相回路は、例えば、前記抵抗群を複数有し、全ての前記抵抗群におけるPWM信号の周期が等しい
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る移相回路は、入力端子と出力端子との間に抵抗群とリアクタンス素子とが設けられ、前記抵抗群には、アナログスイッチと、前記アナログスイッチに対し、前記アナログスイッチを所定のデューティー比でオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路とが含まれることで、前記抵抗群の抵抗値が、所定のデューティー比で変化する。このような本発明に係る移相回路によれば、発振回路やフィルタ回路の特性を変更するためのアッティネータ等が不用となり、発振回路やフィルタ回路のコストや回路規模を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る移相回路1の概要を説明する図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る移相回路1の回路図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る移相回路1の回路図である。
【
図4】本発明の第9実施形態に係る移相回路1における抵抗群の構成例を示す回路図である。
【
図5】抵抗群R
x1、抵抗群R
x2、抵抗群R
x3それぞれのPWM信号によるアナログスイッチS
1乃至S
3のオンオフのタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。本発明の第1実施形態に係る移相回路1の概要を説明する図であり、
図1(A)は第1実施形態に係る移相回路1の回路図であり、
図1(B)は移相回路1における抵抗群R
xの構成例を示す回路図であり、
図1(C)はアナログスイッチ制御回路10からのPWM(Pulse Width Modulation)信号によるアナログスイッチSのオンオフタイミングチャートの一例ある。
【0009】
本発明に係る移相回路1は、発振回路やフィルタ回路内に設けられ、入力される信号の位相をシフトすることで、発振回路やフィルタ回路における特性を変更する回路として利用されることが想定されるものである。ここで、本明細書では移相回路1への入力を「正弦波信号」などと称するが、本発明が、一般の信号レベルの比較的小電力の正弦波を扱うことに限定されるものではない。本発明において「正弦波信号」で搬送し得る電力の大小が関係するものではない。また、本明細書では、正弦波信号の角周波数をω、周波数をfとして説明する。
【0010】
本発明に係る移相回路1は、例えば、L型回路を基本構成とすることができる。このL型回路は、図示する移相回路1は、端部として入力端子Vinと、出力端子Voutと、グランド電位端子Gとを有するものである。本明細書では、入力端子Vin、出力端子Vout、グランド電位端子Gそれぞれからのラインが交わるNを中点と称する。
【0011】
本明細書では、Vinは入力端子の名称であると共に入力電圧の値を示すものである。この場合、Vinは複素数表示による電圧値である。同様に、Voutは出力端子の名称であると共に出力電圧の値を示すものである。この場合、Voutは複素数表示による電圧値である。
【0012】
L型回路においては、入力端子Vinと中点Nとの間には抵抗群Rxが設けられ、グランド電位端子と中点Nの間にはリアクタンス素子として、コンデンサCが設けられている。なお、本明細書では、Cはコンデンサ素子それ自体のことを示すし、また、Cはコンデンサ素子の容量値も示している。本明細書においては、リアクタンス素子は、コンデンサCとコイルLとを包含する用語として用いる。
【0013】
入力端子Vinと中点Nとの間の抵抗群R
xは、例えば
図1(B)に示すように、抵抗としてR、Rp、Ri、Rs(それぞれ抵抗素子としての名称、及び、抵抗値の概念も含む)と、アナログスイッチSと、アナログスイッチSに対する入力信号を生成するアナログスイッチ制御回路10とからから構成することができる。R、Rp、Ri、Rsの各抵抗は、以下の通りのものである。
【0014】
R:抵抗群Rxの主抵抗となり得る抵抗であり、抵抗値は0<R≦∞をとり得るものである。R=∞の場合は、実質的にRが存在しないことに相当する。
Ri:アナログスイッチSの内部抵抗であり、抵抗値は0≦Ri<∞をとり得る。Ri<<Rsの時は無視することができる。
Rp:アナログスイッチSに対して並列に接続される抵抗を示している。この抵抗群Rxとしての動作範囲を制限するために用いることができる。Rpは、省略することもできる。Rpの抵抗値は、0<Rp≦∞をとり得る。Rp=∞の場合は、実質的にRpが存在しないことに相当する。
Rs:アナログスイッチSに対して直列に接続される抵抗を示している。抵抗群Rxを構成する抵抗として、省略することができない抵抗であり、抵抗値は0<Rs<∞をとり得る。
【0015】
アナログスイッチSは、PWM信号の入力により、オンオフされるスイッチである。このPWM信号はデューティー(d)を可変することでアナログスイッチSのオンオフの度合いを制御する。PWM信号の周波数をFとすると、正弦波信号の周波数fに対して、f<<Fである。実際的な数値で言えば、例えば周波数Fは周波数fの10倍以上とすることができる。アナログスイッチ制御回路10は、アナログスイッチSを上記のように所定のデューティー比でオンオフさせるPWM信号を生成し、これをアナログスイッチSに入力するものである。
【0016】
上記のアナログスイッチSがオフ(オープン)のとき、抵抗群Rxとして抵抗値R0は、
R0=R×(Rp+Rs)/(R+Rp+Rs)
である。また、アナログスイッチSがオン(クローズ)のとき、抵抗群Rxとして抵抗値R1は、
R1=R×{Ri・Rp/(Ri+Rp)+Rs}/{R+Ri・Rp/(Ri+Rp)+Rs}
である。
【0017】
アナログスイッチSのオンオフ制御を、PWM信号で行った場合、そのデューティー比をdとすると、抵抗群Rxの等価抵抗値Rwは、
1/Rw=D1・d+D0・(1-d)=d(D1-D0)+D0
の関係で表すことができる。
【0018】
ただし、
D1=1/R1={R+Ri・Rp/(Ri+Rp)+Rs}/[R×{Ri・Rp/(Ri+Rp)+Rs}]
であり、
D0=1/R0=(R+Rp+Rs)/{R×(Rp+Rs)}
である。
【0019】
図1(C)において、PWM信号の1周期をt、デューティー比をd、1周期中のオンとなる時間をt
1、1周期中のオンとなる時間をt
2とすると、
t=t
1+t
2
t
1/t=d
t
2/t=1-d
の関係がある。
【0020】
アナログスイッチ制御回路10からのPWM信号に基づいて、デューティー比dでアナログスイッチSのオンオフ制御がされ、これにより、抵抗群Rxの抵抗値が、デューティー比dで変化する。ここで、抵抗群Rxの抵抗値は、等価的に上記の抵抗値Rwとみなすことができる。本発明に係る移相回路1においては、上記のようにデューティー比dを変更することで、抵抗群Rxの抵抗値(等価抵抗値Rw)を変更することが可能となる。すなわち、本発明に係る移相回路1に入力される正弦波信号の位相は、デューティー比dを変更することで、シフトすることが可能となり、移相回路1が含まれる発振回路やフィルタ回路における特性を、前記デューティー比によって変更することが可能となる。
【0021】
図1(A)から、出力電圧Voutは、入力電圧Vinと下式のような関係にある。
Vout=Vin×(1/jωC)/(Rx+1/jωC)
=Vin×1/(1+jωCR
x)
=Vin×(1-jωCR
x)/(1+ω
2C
2R
x
2)
また、出力電圧Voutと入力電圧Vinと間の位相差θは、
θ=arctan(-ωCR
x)
で表すことができる。これに示されるように、本発明に係る移相回路1においては、デューティー比で抵抗群R
xの抵抗値(等価抵抗値Rw)を変更することで、抵抗群R
xに依存する位相差θを変更することができ、移相回路1に入力される正弦波信号の位相をシフトすることが可能となる。
【0022】
以上のように、本発明に係る移相回路1は、入力端子Vinと出力端子Voutとの間に抵抗群Rxとリアクタンス素子(コンデンサC)とが設けられ、前記抵抗群Rxには、アナログスイッチSと、前記アナログスイッチSに対し、前記アナログスイッチSを所定のデューティー比dでオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路10とが含まれることで、前記抵抗群Rxの抵抗値が、所定のデューティー比dで変化する。そして、このような本発明に係る移相回路1によれば、発振回路やフィルタ回路の特性を変更するためのアッティネータ等が不用となり、発振回路やフィルタ回路のコストや回路規模を抑制することが可能となる。
【0023】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図2は本発明の他の実施形態に係る移相回路1の回路図である。以下において説明する他の実施形態で、第1実施形態と同様の参照番号や記号が用いられた構成については同様のものを示すので、説明を省略する。
【0024】
図2(A)は本発明の第2実施形態に係る移相回路1の回路図である。第2実施形態に係る移相回路1のL型回路においては、入力端子Vinと中点Nとの間にはリアクタンス素子として、コンデンサCが設けられ、グランド電位端子と中点Nの間には抵抗群R
xが設けられている。
図2(A)から、出力電圧Voutは、入力電圧Vinと下式のような関係にある。
Vout=Vin×R
x/(R
x+1/jωC)
=Vin×jωCR
x/(1+jωCR
x)
=Vin×jωCR
x(1-jωCR
x)/(1+ω
2C
2R
x
2)
=Vin×(ω
2C
2R
x
2+jωCR
x)/(1+ω
2C
2R
x
2)
【0025】
また、出力電圧Voutと入力電圧Vinと間の位相差θは、
θ=arctan(1/ωCRx)
で表すことができる。第2実施形態に係る移相回路1においても、デューティー比で抵抗群Rxの抵抗値(等価抵抗値Rw)を変更することで、抵抗群Rxに依存する位相差θを変更することができ、移相回路1に入力される正弦波信号の位相をシフトすることが可能となる。そして、このような第2実施形態に係る移相回路1によって、第1実施形態による効果と同様の効果を享受することができる。
【0026】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図2(B)は本発明の第3実施形態に係る移相回路1の回路図である。第3実施形態に係る移相回路1のL型回路においては、入力端子Vinと中点Nとの間には抵抗群R
xが設けられ、グランド電位端子と中点Nの間にはリアクタンス素子として、コイルLが設けられている。なお、本明細書では、Lはコイル素子それ自体のことを示すし、また、Lはコイル素子のインダクタンス値も示している。
図2(B)から、出力電圧Voutは、入力電圧Vinと下式のような関係にある。
Vout=Vin×jωL/(R
x+jωL)
=Vin×(ω
2L
2+jωLR
x)/(R
x
2+ω
2L
2)
【0027】
また、出力電圧Voutと入力電圧Vinと間の位相差θは、
θ=arctan(Rx/ωL)
で表すことができる。第3施形態に係る移相回路1においても、デューティー比で抵抗群Rxの抵抗値(等価抵抗値Rw)を変更することで、抵抗群Rxに依存する位相差θを変更することができ、移相回路1に入力される正弦波信号の位相をシフトすることが可能となる。そして、このような第3施形態に係る移相回路1によって、第1実施形態による効果と同様の効果を享受することができる。
【0028】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図2(C)は本発明の第4実施形態に係る移相回路1の回路図である。第4実施形態に係る移相回路1のL型回路においては、入力端子Vinと中点Nとの間にはリアクタンス素子として、コイルLが設けられ、グランド電位端子と中点Nの間には抵抗群R
xが設けられている。
図2(C)から、出力電圧Voutは、入力電圧Vinと下式のような関係にある。
Vout=Vin×R
x/(R
x+jωL)
=Vin×(R
x
2-jωLR
x)/(R
x
2+ω
2L
2)
【0029】
また、出力電圧Voutと入力電圧Vinと間の位相差θは、
θ=arctan(-ωL/Rx)
で表すことができる。第4実施形態に係る移相回路1においても、デューティー比で抵抗群Rxの抵抗値(等価抵抗値Rw)を変更することで、抵抗群Rxに依存する位相差θを変更することができ、移相回路1に入力される正弦波信号の位相をシフトすることが可能となる。そして、このような第4実施形態に係る移相回路1によって、第1実施形態による効果と同様の効果を享受することができる。
【0030】
これまで説明した第1乃至第4実施形態に係る移相回路1では、抵抗群Rxとリアクタンス素子(コンデンサC又はコイルL)とがL型回路中に設けられた例を挙げて説明した。しかしながら、本発明に係る移相回路1は、抵抗群Rxとリアクタンス素子(コンデンサC又はコイルL)とがL型回路中に設けられる例に限定される分けではない。
【0031】
本発明に係る移相回路1は、抵抗群Rxとリアクタンス素子(コンデンサC又はコイルL)との組み合わせを含む回路であり、入力端子Vinには信号が入力され、入力端子Vinと出力端子Voutとの間で位相が異なる(入力端子Vinから出力端子Voutで移相する)回路であるものも含まれる。このような移相回路1においても、抵抗群Rxは、ナログスイッチSと、アナログスイッチSに対しアナログスイッチSを所定のデューティー比dでオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路10とが含まれ、抵抗群Rxの抵抗値が所定のデューティー比dで変化する構成とされる。
【0032】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図3は本発明の他の実施形態に係る移相回路1の回路図である。本発明に係る移相回路1は、
図3(A)に示すように、抵抗群R
xとコンデンサCとの直列接続(第5実施形態)であってもよいし、
図3(B)に示すように、抵抗群R
xとコイルLとの直列接続(第6実施形態)であってもよいし、
図3(C)に示すように、抵抗群R
xとコンデンサCとの並列接続(第7実施形態)であってもよいし、
図3(D)に示すように、抵抗群R
xとコイルLとの並列接続(第8実施形態)であってもよい。
【0033】
本発明に係る移相回路1が、抵抗群RxとコンデンサCとからなるものであり、発振回路に含まれている場合には、発振周波数はデューティー比dに比例する。一方、本発明に係る移相回路1が、抵抗群RxとコイルLとからなるものであり、発振回路に含まれている場合には、発振周波数はデューティー比dに反比例する。
【0034】
また、本発明に係る移相回路1が、抵抗群RxとコンデンサCとからなるものであり、フィルタ回路に含まれている場合には、周波数特性はデューティー比dに比例する。一方、本発明に係る移相回路1が、抵抗群RxとコイルLとからなるものであり、フィルタ回路に含まれている場合には、周波数特性はデューティー比dに反比例する。
【0035】
さらに、本発明に係る移相回路1は、抵抗群Rxとリアクタンス素子とからなるもののみならず、抵抗群Rxとリアクタンス素子とに加えて、オペアンプなどのアクティブな素子を含むものであってもよい。
【0036】
これまで説明した実施形態では、入力端子Vinに入力される信号として正弦波信号を例に挙げていたが、本発明に係る移相回路1の入力端子Vinに入力される信号は、正弦波信号に限定されるものではく、どのような信号であっても構わない。
【0037】
本発明においては、発振回路やフィルタ回路の特性を変更するために、発振回路やフィルタ回路の中に少なくとも一つの移相回路1が設けられればよい。すなわち、本発明に係る移相回路1は、発振回路やフィルタ回路に2つ以上設けられていてもよい。本発明に係る移相回路1が、発振回路やフィルタ回路に2つ以上設けられる場合も、本発明の範疇として扱われる。
【0038】
次に本発明の他の実施形態について説明する。これまでの実施形態においては、移相回路1中に一つの抵抗群Rxが用いられる例を説明したが、移相回路1中には複数の抵抗群Rxを用いるようにしてもよい。
【0039】
図4は本発明の第9実施形態に係る移相回路1における抵抗群の構成例を示す回路図である。
図4に示す第9実施形態では、抵抗群R
x1、抵抗群R
x2、抵抗群R
x3の並列接続による抵抗群が全体として一つの抵抗群(R
x)を構成するものである。抵抗群R
x1、抵抗群R
x2、抵抗群R
x3は、
図4に示した一般化した抵抗群R
xにおいてRsのみによって構成された抵抗群である。それぞれの違いを示すために、サフィックスとして1、2、3が用いられている。
【0040】
図5は、この第9実施形態の抵抗群R
x1乃至R
x3それぞれのPWM信号によるアナログスイッチS
1乃至S
3のオンオフのタイミングチャートを示す図である。
図4に示す複数の抵抗群(抵抗群R
x1、R
x2、R
x3の並列接続)を含む移相回路1においては、それぞれデューティー比d
1、d
2、d
3が異なるようにPWM信号を設定することができる。一方、全ての抵抗群R
x1、R
x2、R
x3のPWM信号の周期tは等しくなるように設定される必要がある。このような設定によれば、複数の抵抗群(抵抗群R
x1、R
x2、R
x3)を全体として一つの抵抗群としてみたときに、この等価抵抗値を一定とみなすことができる。本実施形態においても、PWM信号の周波数をF(=1/t)は、移相回路1に入力される正弦波信号の周波数fより十分高い必要がある。
【0041】
図4の例では、全体としての一つの抵抗群の抵抗値は、
R
x=1/R
x1+1/R
x2+1/R
x3
である。
ここで D
x=1/R
x、D
x1=1/R
x1、D
x2=1/R
x2、D
x3=1/R
x3とすると、
D
x=D
x1+D
x2+D
x3
と表すこともできる。
【0042】
以上、本発明に係る移相回路1は、入力端子Vinと出力端子Voutとの間に抵抗群Rxとリアクタンス素子(コンデンサC又はコイルL)とが設けられ、前記抵抗群Rxには、アナログスイッチSと、前記アナログスイッチSに対し、前記アナログスイッチSを所定のデューティー比dでオンオフさせるPWM信号を入力するアナログスイッチ制御回路10とが含まれることで、前記抵抗群Rxの抵抗値が、所定のデューティー比dで変化する。そして、このような本発明に係る移相回路1によれば、発振回路やフィルタ回路の特性を変更するためのアッティネータ等が不用となり、発振回路やフィルタ回路のコストや回路規模を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・移相回路
10・・・アナログスイッチ制御回路
Vin・・・入力端子(又は入力電圧(入力端子の複素数表示による電圧))
Vout・・・出力端子(又は出力電圧(出力端子の複素数表示による電圧))
G・・・グランド電位端子(又は電圧0)
N・・・中点
C・・・コンデンサ(又はコンデンサの容量値)
L・・・コイル(又はコイルのインダクタンス値)
Rx・・・抵抗群
R・・・抵抗
Ri・・・(アナログスイッチSの)内部抵抗
Rp・・・(アナログスイッチSに対する)並列接続抵抗
Rs・・・(アナログスイッチSに対する)直接接続抵抗
S・・・アナログスイッチ