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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158920
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】缶容器、及び、缶容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/04 20060101AFI20241031BHJP
   B65D 1/16 20060101ALI20241031BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20241031BHJP
   B65D 8/00 20060101ALI20241031BHJP
   B65B 53/02 20060101ALI20241031BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20241031BHJP
   B21D 51/18 20060101ALI20241031BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65D8/04 G
B65D1/16 111
B65D25/20 Q
B65D8/00 A
B65B53/02
B65D65/42 A
B21D51/18 A
B21D51/26 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074551
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由樹子
【テーマコード(参考)】
3E033
3E061
3E062
3E086
【Fターム(参考)】
3E033AA07
3E033BA08
3E033BA09
3E033BB08
3E033EA10
3E033EA20
3E033GA02
3E033GA03
3E061AA16
3E061AA20
3E061AB05
3E061AB08
3E061AB11
3E061AB18
3E061AC01
3E061BA01
3E061BA02
3E062AA04
3E062AB01
3E062AB07
3E062AB20
3E062AC03
3E062AC07
3E062AC10
3E062BB06
3E062BB09
3E062BB10
3E062DA06
3E062JA01
3E062JA04
3E062JA07
3E062JA08
3E062JB04
3E062JB05
3E062JB22
3E062JB23
3E062JB30
3E062JC02
3E062JC07
3E062JD03
3E062JD10
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD30
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB61
3E086BB62
3E086BB63
3E086BB67
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】印刷の不良を防止し、衛生性を高める。
【解決手段】本発明の第1の態様においては、縮径部20と、缶胴部40とを有し、縮径部に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下である、缶容器を提供する。第2の態様においては、金属シート及び金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム層を有するシート材、または、金属シートを有するシート材から、筒状の缶体110を成形する成形工程と、成形された缶体に潤滑剤を塗布する潤滑工程と、缶体の一部を縮径して縮径部を形成する縮径工程と、缶体の外周面に対して、インク印刷層を形成する印刷層形成工程と、を備える缶容器の製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮径部と、
缶胴部とを有し、
前記縮径部に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下である、
缶容器。
【請求項2】
筒状の缶体と、
前記缶体の外側面上に形成されたインク印刷層と、
を含む層構成を有し、
前記縮径部における前記缶体の外側面側に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下である、
請求項1に記載の缶容器。
【請求項3】
前記インク印刷層は、前記缶体上に直接形成され、インクが硬化した層である、
請求項2に記載の缶容器。
【請求項4】
前記インク印刷層は、前記缶体を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムである、
請求項2に記載の缶容器。
【請求項5】
筒状の缶本体と、
前記缶本体の少なくとも外側面を覆う樹脂フィルム層と、
を含む層構成を有し、
前記縮径部における前記樹脂フィルム層の外側面に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下である、
請求項1に記載の缶容器。
【請求項6】
前記樹脂フィルム層の外側面上に形成されたインク印刷層を備え、
前記縮径部における前記樹脂フィルム層の外側面側に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下である請求項5に記載の缶容器。
【請求項7】
前記インク印刷層は、前記樹脂フィルム層上に直接形成され、インクが硬化した層である、
請求項6に記載の缶容器。
【請求項8】
前記インク印刷層は、前記樹脂フィルム層を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムである、
請求項6に記載の缶容器。
【請求項9】
飲料又は食品が充填される飲食用の請求項1から8のいずれか1項に記載の缶容器。
【請求項10】
金属シート及び前記金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム層を有するシート材、または、金属シートを有するシート材から、筒状の缶体を成形する成形工程と、
成形された前記缶体に潤滑剤を塗布する潤滑工程と、
前記缶体の一部を縮径して縮径部を形成する縮径工程と、
前記缶体の外周面に対して、インク印刷層を形成する印刷層形成工程と、
を備える缶容器の製造方法。
【請求項11】
前記成形工程は、前記金属シート、前記樹脂フィルム層、及び、前記樹脂フィルム層の片面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体を成形する工程である、
請求項10に記載の缶容器の製造方法。
【請求項12】
前記成形工程は、前記金属シート、及び、前記金属シートの片面又は両面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体を成形する工程である、
請求項10に記載の缶容器の製造方法。
【請求項13】
前記成形工程及び前記潤滑工程の間に、前記潤滑層の少なくとも一部を除去する除去工程を更に含む、
請求項11に記載の缶容器の製造方法。
【請求項14】
金属シート、前記金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材、若しくは、金属シート及び前記金属シートの片面又は両面に形成された潤滑層からなるシート材から、筒状の缶体を成形する成形工程と、
成形された前記缶体に潤滑剤を塗布することなく、前記缶体の一部を縮径して縮径部を形成する縮径工程と、
前記缶体の外周面に対して、インク印刷層を形成する印刷層形成工程と、
を備える缶容器の製造方法。
【請求項15】
前記縮径工程及び前記印刷層形成工程の間に、前記潤滑工程で塗布された前記潤滑剤、又は、前記潤滑層の少なくとも一部を除去する除去工程を更に含む、
請求項10から14のいずれか1項記載の缶容器の製造方法。
【請求項16】
筒状の缶本体と前記缶本体の少なくとも外側面を覆う樹脂フィルム層とからなる缶体、又は、筒状の缶本体からなる缶体に、潤滑剤を塗布する潤滑工程と、
前記缶体の一部を縮径して縮径部を形成する縮径工程と、
前記缶体を、印刷が施されない無地の状態で保管する保管工程と、
を備える缶容器の製造方法。
【請求項17】
金属シート、前記金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム、及び、前記樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材から、筒状の缶体を成形する成形工程と、
前記缶体の一部を、前記缶体に潤滑剤を塗布することなく、縮径して縮径部を形成する縮径工程と、
前記缶体を、印刷が施されない無地の状態で保管する保管工程と、
を備える缶容器の製造方法。
【請求項18】
前記縮径工程と、前記保管工程の間に、
前記缶体の潤滑剤の一部を除去する除去工程、
を更に備える請求項16に記載の缶容器の製造方法。
【請求項19】
前記保管工程は、前記缶体に紫外線が照射されないように遮光状態で行われる、
請求項16又は17に記載の缶容器の製造方法。
【請求項20】
前記保管工程は、前記缶体を1カ月以上遮光状態で保管することを含む、
請求項19に記載の缶容器の製造方法。
【請求項21】
前記印刷層形成工程は、インクジェット印刷又は刷版による印刷のいずれか1つ以上による印刷を、前記缶体の外側面に対して行うことを含む、
請求項10又は14に記載の缶容器の製造方法。
【請求項22】
前記印刷層形成工程は、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムで、前記缶体の外側面を覆うことを含む、
請求項10又は14に記載の缶容器の製造方法。
【請求項23】
前記除去工程は、熱エネルギー、プラズマ処理、又は、フレーム処理を用いる、
請求項13に記載の缶容器の製造方法。
【請求項24】
前記除去工程は、熱エネルギー、プラズマ処理、又は、フレーム処理を用いる、
請求項15に記載の缶容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶容器、及び、缶容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用缶などの缶容器において、縮径の際に缶体の表面に保護層を形成して缶体を保護することが知られている。例えば、特許文献1には「ネッカー・フランジャー(SDN)よりも前に、ベースコーター(BC)やオーバーバーニッシュ(OV)が設けられ、さらに、インサイドスプレー(INS)が設けられている。これにより、本実施形態では、缶体の外面および内面に保護層が形成された後に、ネック処理が行われるようになり、缶体に傷が生じにくくなる。(段落0025)」と記載されている。また、特許文献2にはラミネートの手法として「連続的に供給される長尺帯状の金属板上に加熱溶融した有機樹脂をTダイからフィルム状にして直接押し出して当接し、両者を対のラミネートロールで挟み付けて圧着する有機樹脂被覆金属板の製造方法において、金属板の継ぎ目(以下、「ステッチャー」という)がラミネートロール部を通過する際にはラミネートロールを開放しておき、ラミネートロールに替えて対の補助ラミネートロール(以下、「補助ロール」という)で挟み付けて圧着し、ステッチャー通過後は補助ロールを開放し、ラミネートロールで挟み付けて圧着することを特徴とする有機樹脂被覆金属板の製造方法。(請求項1)」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2019-025521号公報
[特許文献2] 特開2004-25640号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、縮径部と、缶胴部とを有する缶容器を提供する。縮径部に存在する潤滑剤の量は2mg/缶以下であってよい。
【0004】
上記において、缶容器は、筒状の缶本体と、缶本体の外側面上に形成されたインク印刷層と、を含む層構成を有してよい。縮径部における缶本体の外側面側に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下であってよい。
【0005】
上記において、インク印刷層は、缶本体上に直接形成され、インクが硬化した層であってよい。
【0006】
上記において、インク印刷層は、缶本体を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムであってよい。
【0007】
上記において、缶容器は、筒状の缶本体と、缶本体の少なくとも外側面を覆う樹脂フィルム層と、を含む層構成を有してよい。縮径部における樹脂フィルム層の外側面に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下であってよい。
【0008】
上記において、缶容器は、樹脂フィルム層の外側面上に形成されたインク印刷層を備えてよい。縮径部における樹脂フィルム層の外側面側に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下であってよい。
【0009】
上記において、インク印刷層は、樹脂フィルム層上に直接形成され、インクが硬化した層であってよい。
【0010】
上記において、インク印刷層は、樹脂フィルム層を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムであってよい。
【0011】
上記において、缶容器は、飲料又は食品が充填される飲食用であってよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、成形工程、潤滑工程、縮径工程、及び、印刷層形成工程を備える缶容器の製造方法を提供する。成形工程においては、金属シート 及び金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム層を有するシート材、または、金属シートを有するシート材から、筒状の缶体を成形してよい。潤滑工程においては、成形された缶体に潤滑剤を塗布してよい。縮径工程においては、缶体の一部を縮径して縮径部を形成してよい。印刷層形成工程においては、缶体の外周面に対して、インク印刷層を形成してよい。
【0013】
上記において、成形工程は、金属シート、樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体を成形する工程であってよい。
【0014】
上記において、成形工程は、金属シート、及び、金属シートの片面又は両面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体を成形する工程であってよい。
【0015】
上記において、缶容器の製造方法は、成形工程及び潤滑工程の間に、潤滑層の少なくとも一部を除去する除去工程を更に含んでよい。
【0016】
本発明の第3の態様においては、成形工程と、縮径工程と、印刷層形成工程と、を備える缶容器の製造方法を提供する。成形工程においては、金属シート、金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材、若しくは、金属シート及び金属シートの片面又は両面に形成された潤滑層からなるシート材から、筒状の缶体を成形してよい。縮径工程においては、成形された缶体に潤滑剤を塗布することなく、缶体の一部を縮径して縮径部を形成してよい。印刷層形成工程においては、缶体の外周面に対して、インク印刷層を形成してよい。
【0017】
除去工程において、縮径工程及び印刷層形成工程の間に、潤滑工程で塗布された潤滑剤、又は、潤滑層の少なくとも一部を除去してよい。
【0018】
本発明の第4の態様においては、潤滑工程と、縮径工程と、保管工程とを備える缶容器の製造方法を提供する。潤滑工程においては、筒状の缶本体と缶本体の少なくとも外側面を覆う樹脂フィルム層とからなる缶体、又は、筒状の缶本体からなる缶体に、潤滑剤を塗布してよい。縮径工程においては、缶体の一部を縮径して縮径部を形成してよい。缶体を、印刷が施されない無地の状態で保管してよい。
【0019】
本発明の第5の態様においては、成形工程と、縮径工程と、保管工程とを備える缶容器の製造方法を提供する。成形工程において、金属シート、金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材から、筒状の缶体を成形してよい。縮径工程において、缶体の一部を、缶体に潤滑剤を塗布することなく、縮径して縮径部を形成してよい。保管工程において、缶体を、印刷が施されない無地の状態で保管してよい。
【0020】
上記において、製造方法は、縮径工程と、保管工程の間に、缶体の潤滑剤の一部を除去する除去工程を更に備えてよい。
【0021】
上記において、保管工程は、缶体に紫外線が照射されないように遮光状態で行われてよい。
【0022】
上記において、保管工程は、缶体を1カ月以上遮光状態で保管することを含んでよい。
【0023】
上記において、印刷層形成工程は、インクジェット印刷又は刷版による印刷のいずれか1つ以上による印刷を、缶体の外側面に対して行うことを含んでよい。
【0024】
上記において、印刷層形成工程は、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムで、缶体の外側面を覆うことを含んでよい。
【0025】
上記において、除去工程は、熱エネルギー(ヒートセットオーブン)、プラズマ処理、又は、フレーム処理を用いてよい。
【0026】
上記において、印刷層形成工程は、インク画像が印刷された粘着剤付きラベル(タックラベル)で、缶体の外側面を覆うことを含んでよい。
【0027】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態における缶容器10の全体図の一例を示す。
図2】本実施形態における缶容器10の断面の一例を示す。
図3】本実施形態における缶容器10の断面の別の一例を示す。
図4】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの一例を示す。
図5図4のS100のサブフロー(ウェット成形)の一例を示す。
図6図4のS100のサブフロー(ドライ成形)の別の一例を示す。
図7】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。
図8】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。
図9】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。
図10】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。
図11】本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0030】
図1は、本実施形態における缶容器10の全体図の一例を示す。本願発明に係る缶容器10は、縮径部に存在する潤滑剤の量を2mg/缶以下にすることにより、缶体及び/又は缶体表面に形成された印刷の不良を防止し、衛生性を高めることができる。
【0031】
缶容器10は、飲料又は食品が充填される飲食用に用いられてよい。缶容器10は、薬品、化学製品、ガス、液体及び/又は固形物等の飲食物以外の内容物を充填してもよい。
【0032】
缶容器10は、一端側に設けられた縮径部20、他端側に設けられた底部30、および、缶胴部40を備える。
【0033】
縮径部20は、缶容器10の一端が縮径された部分である。縮径部20は、缶容器10の開口部に設けられてよい。縮径部20は、缶容器10の一端に近づくにつれ、外径が次第に小さくなるように形成されてよい。
【0034】
縮径部20は、縮径前の缶容器10の端部に対して、ネック加工を行うことにより、形成されてよい。縮径部20は、ネック加工において、同時に形成されたフランジを有してよい。形成されたフランジにより、缶蓋を取り付けることができる。缶容器10に縮径部20を設けることで、缶容器10の開口部に取り付ける缶蓋の使用量を減少させることができる。缶容器10は、缶蓋を取り付けたものであってもよい。
【0035】
底部30は、缶容器10の他端に形成された底である。底部30を有することにより飲料等の充填物を保持することができる。底部30は、缶容器10の他端に近づくにつれ、外径が次第に小さくなるように形成されていてよい。底部30の底面は上に凸となるドーム状に形成されていてよい。
【0036】
缶胴部40は、缶容器10の縮径部20と底部30の間の領域である。缶胴部40は、缶容器10の長手方向(図1の上下方向)において、外径がほぼ一定の円筒形状であってよい。缶胴部40は、縮径部20及び底部30に比べて外周面の表面積が大きく、外径がほぼ一定であるため、表面に印刷を行うのに適した領域である。
【0037】
缶胴部40は、全体的に一様で平坦な表面を有してよい。これに代えて、缶胴部40は、エンボス加工などの凹凸加工や屈曲部等が形成されていてもよい。
【0038】
図1において説明したように、缶容器10は、縮径部20、底部30及び缶胴部40の3つの領域を含んでよい。これに代えて、缶容器10は、縮径部20を有しなくてもよい。例えば、缶容器10がストレート缶又はカップの場合、縮径部20を有しなくてよい。
【0039】
図2は、本実施形態における缶容器10の断面の一例を示す。缶容器10は、缶体110、及び、インク印刷層120を備える。缶体110側(図の左側)が缶容器10の内側であり、インク印刷層120側(図の右側)が缶容器10の外側である。
【0040】
缶体110は、筒状の形状を有し、缶容器10の構造を形成する。缶体110は、2ピース缶等のシームレス缶または3ピース缶等の溶接缶であってよい。缶体110は、金属蓋が形成されないカップでもよい。缶体110は、飲料缶及び食品缶に使用可能な金属単体で形成されてよい。例えば、缶体110はアルミニウム又はスチール等で形成されてよい。
【0041】
インク印刷層120は、記号、文字、デザイン及び/又は絵柄などを表現するインク画像の層である。インク印刷層120は、缶体110の外周面上に形成される。インク印刷層120は、縮径部20及び缶胴部40の少なくとも一方に形成される。これに代えてインク印刷層120が存在しなくてもよい。
【0042】
インク印刷層120は、缶体110に直接形成され、インクが硬化した層であってよい。インク印刷層120は、顔料又は染料等の色材、バインダー樹脂及びその他のインク組成物の固形分を含んでよい。インク組成物は、水性インク、溶剤インク、紫外線硬化インクまたは電子線硬化インクであってよいが、これらに限らない。
【0043】
上記に代えて、インク印刷層120は、缶体110を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムであってもよい。例えば、シュリンクフィルムの片面又は両面にインク組成物を印刷及び硬化したものを、缶体110に貼り付けてインク印刷層120としてよい。
【0044】
インク印刷層120は、単色のモノクロ画像又は複数色を含むカラー画像であってよい。インク印刷層120は、領域ごとにモノクロ及びカラーが混在していてもよい。
【0045】
缶体110とインク印刷層120との間には、潤滑剤の層である潤滑層117が設けられていてよい。少なくとも縮径部20において潤滑層117が設けられてよい。底部30及び/又は缶胴部40に潤滑層117が更に設けられてもよい。少なくとも縮径部20に潤滑層117が存在することで、縮径時のダメージから缶体110を保護する。
【0046】
縮径部20に存在する潤滑剤の量は2mg/缶以下である。特に縮径部20における缶体110の外側面側に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下であってよい。「mg/缶」とは1つの缶容器10に存在する潤滑層117の潤滑剤の量を示すものである。潤滑剤の量を2mg/缶以下とすることで、インク印刷層120を形成する際にインク等のはじきが生じることを防ぐことができる。縮径部20等の人の口が直接触れる可能性のある場所において、潤滑剤の量を2mg/缶以下とすることで、缶容器10の衛生性を高めることができる。
【0047】
更にインク印刷層120がシュリンクフィルムを含む場合、潤滑剤の量が多すぎる場合(例えば、縮径部20の潤滑剤が2mg/缶を超える場合)、シュリンクフィルムを缶体110に挿入する際に挿入不良を生じやすい。この観点からも、縮径部20に存在する潤滑剤の量は2mg/缶以下とすることが望ましい。
【0048】
潤滑剤の量は0.01mg/缶以上であってよい。特に縮径部20における缶体110の外側面側に存在する潤滑剤の量が0.01mg/缶以上であってよい。潤滑剤の量を0.01mg以上とすることで、インクはじきの発生や衛生性を損なうことなく縮径時の潤滑性を維持することができる。更に潤滑剤を一定量含むことにより、シュリンクフィルムでインク印刷層20を形成する場合に、シュリンクフィルムの外挿性を高めることができ、延いては缶容器10の不良を低減することができる。
【0049】
潤滑剤は、例えば、動植物由来のワックス、石油ワックス、ワセリン、固形パラフィン、流動パラフィン、ラノリン、ポリエチレングリコール、食用油、食品用潤滑油、鉱物油、食品用グリース、及び、ニスから選択される1つ又は1つ以上の組み合わせであってよい。
【0050】
特にインク印刷層120がシュリンクフィルムを含む場合、潤滑剤は固形であることが望ましい。例えば、この場合、潤滑剤は、ワックス、石油ワックス、又は、固形パラフィンであることが望ましい。
【0051】
本実施形態において、缶容器10の全体又は一部(例えば、縮径部20)を有機溶媒(例えば、アルカン、ケトン等の親油性溶媒)に浸して、有機溶媒に潤滑剤を抽出した上で、有機溶媒に溶けだした潤滑剤を乾燥させて、計測した乾燥重量を潤滑剤の量としてよい。この方法により、缶容器10から潤滑剤以外の成分が溶け出す可能性もあるが、主な抽出物は潤滑剤なので、この方法で特定した量を潤滑剤の量としてよい。一方で、ガスクロマトグラフィー質量分析等で化学分析することにより、抽出した成分及びその含有量比を特定できる場合は、潤滑剤成分の重量の合計を潤滑剤の量としてもよい。
【0052】
一例として、以下の方法により、潤滑剤の量を測定してよい。300mLガラスビーカーにアセトン-ヘキサン混液(1:9)10mLを入れ、そこに倒立保持した缶容器の縮径部及び縮径部の先端のフランジ部分を浸漬して潤滑剤を抽出し、抽出液を得る。缶容器5缶から得た抽出液をナスフラスコに移して減圧乾固した後、アセトン-ヘキサン混液(1:9)1mLに再溶解する。これをアルミニウム皿に移し、75℃の恒温乾燥機にて30分保管し、室温冷却後、電子天秤にて重量を測定する。乾燥物の重量を5で割ることで1缶あたりの縮径部20に存在する潤滑剤を測定できる。
【0053】
本実施形態では、縮径部20及び缶胴部40の双方にインク印刷層120が形成された。これに代えて、縮径部20には、インク印刷層120が形成されなくてもよい。
【0054】
底部30には、インク印刷層120が形成されなくてよい。これに代えて、インク印刷層120を底部30に形成してもよい。
【0055】
缶容器10は、図示しない他の層を有していてもよい。例えば、缶体110の内側(図の左側)に内面保護層、及び/又は、缶体110と潤滑層117との間にベースコート又はニス等の外面保護層が形成されていてもよい。また、例えば、インク印刷層120の外側面に保護層が更に形成されてよい。
【0056】
図3は、本実施形態における缶容器10の断面の変形例を示す。本例において缶体110は、金属単体ではなく、コアとなる缶本体112と、缶本体112の内側面及び/又は外側面を覆う樹脂フィルム層114及び樹脂フィルム層116とを含む層構成を有するものである。また、例えば、インク印刷層120の外側面に保護層が更に形成されてよい。
【0057】
缶本体112は、アルミニウム又はスチール等の飲料缶及び食品缶に使用可能な金属層であってよい。樹脂フィルム層114及び樹脂フィルム層116は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってよい。例えば、缶体110は、PETフィルムを金属板の内外面にラミネートすることで形成されてよい。
【0058】
このように樹脂フィルムにより被覆された缶体110を用いることにより、充填物により缶体110が腐食することを予防できる。また、缶体110の成形時に潤滑剤及び水の使用を低減することができる。
【0059】
本実施形態において、潤滑層117及びインク印刷層120については、特に説明されない限り従前の説明と同様の構成が採用されてよい。例えば、インク印刷層120は、樹脂フィルム層116上に直接形成され、インクが硬化した層であってよい。また、例えば、インク印刷層120は、樹脂フィルム層116を更に外側から覆い、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムであってよい。例えば、縮径部20における樹脂フィルム層116の外側面に存在する潤滑層117の潤滑剤の量が2mg/缶以下であってよい。上記に代えて、インク印刷層120が存在しなくてもよい。
【0060】
図4は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの一例を示す。本実施形態の缶容器10は、図4のS100~S800の処理により製造できる。なお、説明の便宜上、S100~S800の処理を順番に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各処理を入れ替えてよく、及び/又は、処理の一部を省略してもよい。
【0061】
まずS100において缶容器10の底部30及び缶胴部40を形成し、これにより筒状の缶体110を成形する成形工程を行う。成形には、冷却用の潤滑剤であるクーラントを使用するウェット成形とクーラントを使用しないドライ成形の2通りがある。
【0062】
成形工程において、シート材から筒状の缶体を成形してよい。例えば、ウェット成形の場合、シート材は、金属シートを有してよい。ここで、金属シートの片面又は両面には潤滑層が形成されてよい。この場合、成形工程は、金属シート、及び、金属シートの片面又は両面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体110を成形する工程であってよい。
【0063】
例えば、ドライ成形の場合、シート材は、金属シート及び金属シートの少なくとも片面を覆う樹脂フィルム層を有してよい。ここで、樹脂フィルム層の片面には潤滑層が形成されてよい。この場合、成形工程は、金属シート、樹脂フィルム層、及び、樹脂フィルム層の片面に形成された潤滑層を有するシート材から缶体110を成形する工程であってよい。
【0064】
図5は、図4のS100のサブフロー(ウェット成形)の一例を示す。図5のS105~S140を実行することでS100(ウェット成形)を実行してよい。
【0065】
S105において、コイル状に巻かれた金属の板材である金属シートを巻きほどいて延ばす処理(アンコイラー)を行う。金属シートは、アルミニウム板またはスチール板であってよいが、これに限られない。金属シートは成形後に缶体110となる。
【0066】
S110において、延ばされた金属シートに潤滑剤(ルブリカント)を塗布する処理(ルブリケーター)を行う。潤滑剤は、既知のものを用いてよい。潤滑剤は、ワックス等の固形物、及び、油脂等の液体を含む。例えば、潤滑剤は、動植物由来のワックス、石油ワックス、ワセリン、固形パラフィン、流動パラフィン、ラノリン、ポリエチレングリコール、食用油、食品用潤滑油、鉱物油、食品用グリース、及び、これらのエマルジョンから選択される1つ又は1つ以上の組み合わせであってよい。
【0067】
特にS110における潤滑剤は、ワックスを含むことが好ましい。ワックスに加えて、クーラントとして機能する液体の油脂を更に含んでよい。これにより、金属シートの片面又は両面に潤滑剤による潤滑層が形成されたシート材が得られる。
【0068】
アンコイラー後の金属シートに潤滑層を形成することに代えて、予め潤滑層が片面又は両面に予め形成された金属シートをコイル状に巻いたシート材を巻きほどいてもよい。潤滑層が予め形成された金属シートに更に潤滑剤を塗布してもよい。
【0069】
S120において、シート材をカップ状に打ち抜く処理(カッピングプレス)を行う。
【0070】
S130において、カップ状の部材に対して、絞り加工及びしごき加工を行って、カップの側面を薄く引き伸ばす。更にドーム状の底も同時に成形することで、缶胴部40及び底部30の形成処理(ボディメーカ)を行う。S130において、S110で説明したものと同様の潤滑剤(クーラント)を冷却用に追加で用いてもよい。
【0071】
S140において、成形した部材の不要な部分を取り除く処理(トリマー)を行う。これにより缶体110を成形する。
【0072】
図6は、図4のS100のサブフロー(ドライ成形)の一例を示す。図6のS105~S140を実行することでS100(ドライ成形)を実行してよい。
【0073】
S105の処理(アンコイラー)については、図5のS105と同様の処理を行ってよい。
【0074】
S115において、金属シートの両面又は片面に樹脂フィルムをラミネートする。これにより、金属シートと樹脂フィルム層とを有するシート材を得る。ラミネートは既知の方法により行ってよく例えば特開2004-25640号に記載の方法を用いてよい。成形後に金属シートは缶本体112となり、樹脂フィルムは樹脂フィルム層114及び樹脂フィルム層116となる。
【0075】
樹脂フィルムにはポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂を用いてよい。熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性エポキシ系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂または熱硬化性ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。樹脂フィルムを用いることで、図5のS110及びS130で用いた潤滑剤と同様の効果を、潤滑剤なしで実現できる。
【0076】
樹脂フィルムの厚さは、0.5μm以上30μm以下であってよい。樹脂フィルムの厚さが0.5μm未満の場合、樹脂フィルムの表面がすべりにくくなるため、縮径部20を形成する際に、缶体110に傷がついたり、工具に金属の粉末が付着したりするおそれがある。樹脂フィルムの厚さが30μm超過の場合、縮径加工後およびフランジ加工後の樹脂密着性が劣るおそれがある。
【0077】
樹脂フィルムをラミネートする前に、金属シートのラミネート面にプライマー組成物を塗布してもよい。例えば、ポリエステル樹脂、硬化剤及び/又は溶媒を含むプライマー組成物を金属シートにロールコートし、焼成してプライマー層を形成した上で、プライマー層上に樹脂フィルムをラミネートしてもよい。硬化剤は、例えばm-クレゾールから誘導されたレゾール型フェノール樹脂であってよい。
【0078】
プライマー組成物は、顔料及び/又は食用色素等の色材を更に含んでもよい。これにより、缶容器10のうちインク印刷層120が設けられない部分(例えば、底部30等)においても、加飾性を高めることができる。
【0079】
ラミネートの後に、更に樹脂シートの片面に潤滑剤を塗布して潤滑層を形成してよい。この場合、金属シート、樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの片面に形成された潤滑層を有するシート材が得られる。
【0080】
上記S105~S115に代えて、金属シート、樹脂フィルム、及び、必要に応じて樹脂フィルムの片面又は片面に形成された潤滑層を有するシート材が予め巻かれたコイル状の部材を、巻きほどいてもよい。例えば、S115のラミネートの後に、シート材をコイラーに巻き取ったコイル状シート材を保管し、その後、必要に応じて保管したシート材を再度巻きほどいて以降の処理を行ってよい。また、例えば、コイル状シート材を入手して、これを巻きほどいて以降の処理を行ってもよい。
【0081】
S120~S140の処理については、図5において説明したものと同様の処理を行ってよい。これにより缶体110を成形する。
【0082】
S200において、缶体110の潤滑層の少なくとも一部を除去する除去工程を行う。除去工程は、水洗処理、加熱処理(すなわち熱エネルギー)、プラズマ処理、又は、フレーム処理を用いてよい。
【0083】
特にシート材が樹脂フィルム層を含む場合、加熱処理により、成形により生じた樹脂フィルムの歪みも同時に取り除くことができる。例えば、加熱処理として、180~220℃で20~90秒で、成形後の部材を加熱してよい。加熱処理の方法として温風加熱機器、誘導加熱(IH)機器及び/又は赤外線(IR)加熱機器等を用いてよい。
【0084】
水洗処理は、冷水又は温水によるものであってよい。潤滑剤の残量を増やす必要がある場合には水温を下げ、潤滑剤の残量を減らす必要がある場合には水温を上げてよい。
【0085】
プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理であってよい。大気圧プラズマ処理に用いるガスの種類は、窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、および酸素の少なくとも1つであってよい。ガスの流量は、1分あたり1~200Lであってよい。大気圧プラズマ処理の処理速度は、1分あたり1~100mであってよい。プラズマの照射時間は、0.5~10秒であってよい。
【0086】
大気圧プラズマ処理において、缶体110とプラズマ電極との距離の最小値は、50mm以下であってよい。好ましくは、缶体110とプラズマ電極との距離の最小値は、2mm以下であってよい。電極は1台でもよく、複数台でもよい。複数台にすることで処理能力を高めることができ、処理時間の短縮ができる。
【0087】
フレーム処理は、メタン又はプロパン等の燃焼性ガスと空気又は酸素とを混合・燃焼させた還元炎を対象物に当てる処理であり、既知の方法で行うことができる。例えば、火力が35~40μAのバーナーを用い、バーナー先端と容器表面との間隔を25~75mm程度とし、0.5~2.0秒間かけて容器表面を均一に加熱処理し、その後、室温になるまで放冷することで行ってよい。
【0088】
除去工程において、複数の処理を組み合わせてもよい。例えば、除去工程において、水洗と、加熱処理、プラズマ処理、及び、フレーム処理のうちの1つ又は複数とを順次行ってもよい。
【0089】
シート材が樹脂フィルム及び潤滑層のいずれも含まない場合、S200の除去工程を省略してもよい。
【0090】
S300において、成形された缶体110に潤滑剤を塗布する潤滑工程を行う。潤滑剤は、S110で用いたものと同様のものであってよい。潤滑剤は、特に揮発性の高い溶剤を用いてよい。例えば、ヘキサンを用いてよい。これにより潤滑層117が形成される。
【0091】
S300の後、S400の前に、缶体110の内周面に内面保護層を形成してもよい。例えば、内周面に塗料を塗布及び焼成することにより、内面保護層を形成してよい。これにより、内周面に傷がつくことを防ぐことができる。図7以降の実施形態の例においてもS400の縮径工程の前に内面保護層を形成してよい。
【0092】
S400において、成形後の缶体110に対してネック加工を行うことで、缶体110の一部を縮径して縮径部20を形成する縮径工程を行う。ネック加工は、公知のダイネッキング工具により行ってよい。ネック加工と同時に、又は後で、缶体110に対してフランジ加工を行って、缶蓋を取り付けるためのフランジを形成してもよい。
【0093】
ネック加工の後で潤滑層を除去する処理を行ってもよい。一例として、S200と同様に水洗や加熱により潤滑層の少なくとも一部を除去してもよい。加熱の方法として温風加熱機器、誘導加熱(IH)機器及び/又は赤外線(IR)加熱機器等を用いてよい。特にS200の後にS500の印刷層形成工程を行う場合にはインクのはじき等を防ぐために潤滑層の除去を行うことが好ましい。
【0094】
S500において、缶体110の外周面に、インク印刷層120を形成する印刷層形成工程を行う。缶体110に対してインクジェット印刷及び/又は刷版による印刷のいずれか1つ以上による印刷を、缶体110の外側面に行うことでインク印刷層120が形成されてよい。
【0095】
インクジェット印刷は、インクジェット印刷装置のインクジェットヘッド(IJH)から缶体110に対してインク組成物を直接吐出する方式、又は、IJHからブランケット(すなわち転写版)に吐出されたインク組成物を缶体110に転写するオフセット方式であってもよい。
【0096】
刷版による印刷は、有版印刷装置を用いた印刷であってよい。例えば、刷版による印刷は、凸版等の版によりインク組成物を缶体110に転写する方式であってよい。凸版により直接缶体110にインク組成物を転写してもよく、ブランケット(すなわち転写版)に転写されたインク組成物を缶体110に更に転写するオフセット方式であってもよい。
【0097】
インク組成物は、水性インク、溶剤インク、紫外線硬化インクまたは電子線硬化インクであってよい。インク組成物は、顔料及び染料等から選択される色材、樹脂バインダー、モノマー/オリゴマー、開始剤、溶媒、及び/又は、必要に応じて分散剤等の添加剤を含んでよい。
【0098】
印刷後にインク組成物の乾燥・硬化処理を行ってよい。例えば、インク組成物の種類に応じて、風乾燥、加熱処理、紫外線照射、電子線照射、又は、これらの組み合わせの処理を行ってよい。
【0099】
特に紫外線硬化インクまたは電子線硬化インクを採用することで、加熱処理の回数を減らし、缶体110に熱負荷を与える機会を減らし、徐冷時間を削減することができる。一例として、紫外線硬化インクまたは電子線硬化インクでインクジェット印刷を行ってよい。
【0100】
缶体110にインクを印刷することに加えて/代えて、インク画像が印刷されたシュリンクフィルムで、缶体110の外側面を覆うことにより印刷層形成工程を行ってもよい。例えば、上記と同様の方法でシュリンクフィルムにインク画像を印刷し、これを缶体110に巻き付けて収縮させることで、画像が印刷されたシュリンクフィルムをインク印刷層120としてよい。シュリンクフィルムの代わりにタックラベルを用いて缶体110の外側面に貼り付けてもよい。タックラベルは、プラスチック製又は紙製であってよい。
【0101】
予め印刷が施されたシュリンクラベルやタックラベルを用いる場合、缶体110の表面の潤滑剤により印刷がはじかれる問題が生じない点で利点がある。更に缶体110全体又は縮径部20において0.01mg/缶以上の潤滑剤を含むことにより、シュリンクフィルムの外挿性を高められる。
【0102】
シュリンクフィルムとしては既知の材料を用いることができる。例えば、シュリンクフィルムとして、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、及び、ポリエチレンテレフタレート等から選択されたものを用いることができる。
【0103】
インク印刷層120の形成は、缶体110の外周面の全体または一部の領域に行われてもよい。例えば、インク印刷層120の形成は、缶胴部40の全体又は一部のみに行われてもよい。例えば、インク印刷層120の形成は、縮径部20の全体又は一部及び缶胴部40の全体又は一部のみに行われてもよい。
【0104】
インク印刷層120の形成は並列に実行されてもよい。例えば、複数のインクジェット印刷装置及び/又は複数の有版印刷装置により同時にS500の処理を実行してよい。詳細は後述する。
【0105】
インク印刷層120を複数回に分けて形成してもよい。例えば、共通デザイン、共通絵柄及び/又は共通文字を刷版による印刷やインクジェット印刷で予め形成しておき、後に製品またはロット等ごとに異なる個別デザイン、個別絵柄及び/又は個別文字をインクジェット印刷によりオンデマンドで形成してもよい。後に印刷を設けるための無地缶又は白地缶を製造する場合等、インク印刷層120を形成しない場合にはS500の処理を省略してよい。
【0106】
S500の後、S600の前に、インク印刷層120の外側面に、更に保護層を形成してもよい。例えば、UV硬化樹脂等を含む層を保護層としてインク印刷層120の外側面に形成することにより、インク印刷層120を保護することができる。
【0107】
S600において、各層を形成した缶容器10に対して検査を行う。缶容器10の外周面または内周面に、凹み、孔及び/又は傷等がないか検査してよい。インク印刷層120の印刷画像に欠け、ズレ及び/又は不鮮明箇所等がないか検査してよい。
【0108】
S700において、缶容器10に内容物を充填する。例えば、缶容器10に飲料、食品、薬品、化学製品、ガス、液体及び/又は固形物等を充填してよい。
【0109】
S800において、缶容器10に缶蓋を取り付ける。例えば、缶容器10のフランジ部分に、蓋巻締機により蓋を被せて巻き締めることで、缶蓋を取り付けてよい。
【0110】
図4図6により、缶容器10を製造するための基本的な処理の流れを示したが、後述するように処理の順序を入れ替えたり、並列化してよい。これにより製缶工程の効率化を図ることができる。また、缶容器10がカップの場合は、S700~S800の処理を省略してよい。
【0111】
S100~S800は、単一の主体/拠点、又は、複数の異なる主体/拠点で行われてよい。例えばS100~S600を製缶工場で実行し、S700以降を充填工場(パッカー又はボトラーとも言う)で実行してよい。
【0112】
また例えばS100~S400を製缶工場で実行し、S500以降を充填工場で実行してよい。これにより、充填工場において印刷装置を設置し、任意の画像を有する缶容器10を充填に必要な数だけ迅速に製造、出荷することができる。
【0113】
図7は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。本実施形態においては、S200の除去工程をS400の縮径工程とS500の印刷層形成工程の間に行う。すなわち、S200をS400の後に行う。
【0114】
本実施形態においては、S200の除去工程で、S110、S115及びS300で塗布された潤滑剤、及び/又は、形成された潤滑層の一部を除去する。これにより、缶容器10に残存する潤滑剤を大幅に低減することができる。除去工程において潤滑層117を完全に除去してもよく、又は、一部を残存させてもよい。例えば、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下としてよい。これによりS500の印刷層形成工程を行う場合に印刷のはじきを予防することができる。
【0115】
また、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量を0.01mg/缶以上とするように除去工程を行ってよい。これにより、シュリンクフィルムでインク印刷層120を形成する場合に、シュリンクフィルムの外挿性を高めることができる。
【0116】
好ましくは、除去工程において水洗及び/又は加熱処理を行ってよい。加熱処理により、潤滑層の除去と樹脂フィルムの歪みの除去を同時に行うことができる。例えば、加熱処理として、180~220℃で20~90秒で、成形後の部材を加熱することで、潤滑剤の量を0.01mg以上2mg/缶以下とすることができる。
【0117】
図8は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。本実施形態においては、S200の除去工程をS100の成形工程とS300の潤滑工程との間、及び、S400の縮径工程とS500の印刷層形成工程の間に行う。すなわち、潤滑工程を2回行う。
【0118】
本実施形態においては、1回目の除去工程(S200A)で、S110及びS115で塗布された潤滑剤、及び/又は、形成された潤滑層の一部を除去する。2回目の除去工程(S200B)においてS300で塗布された潤滑剤、及び/又は、形成された潤滑層の一部を除去する。これにより、缶容器10に残存する潤滑剤をさらに大幅に低減することができる。除去工程において潤滑層117を完全に除去してもよく、又は、一部を残存させてもよい。例えば、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下としてよい。これによりS500の印刷層形成工程を行う場合に印刷のはじきを予防することができる。S300で塗布された潤滑剤、及び/又は、形成された潤滑層が十分に少なければ、2回目のS200の除去工程は行わなくてもよい。
【0119】
これにより、缶容器10に残存する潤滑剤をさらに大幅に低減することができる。除去工程において潤滑層117を完全に除去してもよく、又は、一部を残存させてもよい。例えば、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量が2mg/缶以下としてよい。これによりS500の印刷層形成工程を行う場合に印刷のはじきを予防することができる。S300で塗布された潤滑剤、及び/又は、形成された潤滑層が十分に少なければ、2回目のS200の除去工程は行わなくてもよい。
【0120】
S100において、図5(ウェット成形)の処理を行った場合、1回目の除去工程(S200A)において潤滑剤を十分に除去するために水洗を実施することが好ましく、2回目の除去工程(S200B)において、缶体110の表面改質効果の期待できるフレーム処理及び/又はプラズマ処理をすることが望ましい。
【0121】
S100において、図6(ドライ成形)の処理を行った場合、1回目の除去工程(S200A)において樹脂フィルムの歪み除去もできる加熱処理を実施することが好ましく、2回目の除去工程(S200B)において、缶体110の表面改質効果も期待できるフレーム処理及び/又はプラズマ処理をすることが望ましい。
【0122】
その他の点については図7で説明した実施形態と同様であってよい。S200Bの除去工程の後は、図7と同様に印刷層形成工程(S500)~缶蓋取付(S800)を実行してよい。これに代えて、後述する図10及び図11と同様に検査工程(S600)及び/又は保管工程(S900)を実行してもよい。
【0123】
図9は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。本実施形態においては、S300の潤滑工程を行わず、S400の縮径工程の後にS200の除去工程を行う。
【0124】
これにより、成形された缶体110にS300の潤滑工程で潤滑剤を塗布することなく、缶体110の一部を縮径して縮径部20を形成する縮径工程を行う。なお、本実施形態においては、成形される前のシート材にS110又はS115で潤滑層を形成しておくか、金属シート又は樹脂フィルムに予め潤滑層が形成されたシート材を用いてS100の成形工程を行う。
【0125】
S200の除去工程は、図7の形態と同様の方法に実行してよい。図9の実施形態においては、S300の潤滑工程が存在しないので、図7と比較して除去工程を簡易的に実行してよい。例えば、本実施形態において、加熱処理の適用時間を20~40秒、プラズマ処理の照射時間を0.5~5秒、フレーム処理の加熱時間を0.5~1秒としてよい。
【0126】
本実施形態によれば、S100の成形工程のために塗布されたシート材の潤滑層により成形工程及び縮径工程を行うので、潤滑工程を行う必要がない。従って、潤滑工程のための潤滑剤等の資源や時間を削減することができる。これにより、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量を2mg/缶以下に低減することができる。シート材の潤滑層が十分に少なければ、S200の除去工程は行わなくてもよい。
【0127】
図10は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。本実施形態においては、S100の成形工程、S300の潤滑工程、S400の縮径工程、S200の除去工程を図7の実施形態と同様に行ってよい。S200の次には、印刷層形成工程を行わず、S600の検査工程を行ってよい。
【0128】
本実施形態においては、S400の縮径工程と、S900の保管工程の間に、S200の除去工程を行う。S100~S600の処理は、上記したものと同様の方法により実行されてよい。
【0129】
S600の検査工程の次にS900の保管工程を行ってよい。保管工程では、缶体110を、印刷が施されない無地の状態で保管する。保管工程は、缶体に紫外線が照射されないように遮光状態で行われてよい。特に保管工程は、缶体を1カ月以上遮光状態で保管することが好ましい。インク印刷層120を紫外線から保護し、退色等の劣化を防ぐことができる。缶体を1カ月以上保管することで缶体110の表面に存在する潤滑剤(特に揮発性を有する潤滑剤)を更に低減することができる。
【0130】
S900の保管工程の後、必要に応じて缶体110を出荷してよい。例えば、充填工場に缶体110を出荷し、充填工場でS500の印刷層形成工程、S600の缶容器の検査、S700の充填工程、及び、S800の缶蓋の取付工程の1つ以上を実行してよい。
【0131】
本実施形態においては、除去工程により缶体110の表面に存在する潤滑剤の量を低減することができる。例えば、縮径部20に存在する潤滑剤の量を2mg/缶以下に低減してよい。これにより、後に充填工場でS500の印刷層形成工程を行う場合に印刷のはじきを予防することができる。
【0132】
更に本実施形態においては、除去工程により缶体110の洗浄効果も併せて期待できる。従って、S900の保管工程において潤滑剤が変質したり、吸湿したりすることを予防できる。特に除去工程でプラズマ処理、又は、フレーム処理を用いた場合には高い効果を期待できる。
【0133】
また、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量が0.01mg/缶以上としてよい。これにより、後に充填工場でシュリンクフィルムを用いてインク印刷層120を形成する場合に、シュリンクフィルムの外挿性を高めることができる。
【0134】
一方で、S200の除去工程を省略してもよい。例えば、後に充填工場においてシュリンクフィルムを用いてインク印刷層120を形成する場合等、印刷のはじきの懸念が少ない場合には、除去工程を省略することが望ましい。
【0135】
図11は、本実施形態における缶容器10の製造方法のフローの別の一例を示す。図11の実施形態は、S300の潤滑工程とS200の除去工程がない点で図10の実施形態と異なる。本実施形態においては、缶体110の一部を、缶体110に潤滑剤を塗布することなく、縮径工程を行う。本実施形態のS100においては、図4図5の実施形態で説明したように、S120のカップリングプレスを行う前にシート材の表面に潤滑層を形成する。
【0136】
本実施形態によれば、S100の成形工程のために塗布されたシート材の潤滑層によりS100の成形工程及びS400の縮径工程を行うので、潤滑工程を行う必要がない。従って、潤滑工程のための潤滑剤等の資源や時間を削減することができる。これにより、縮径部20(特に縮径部20における缶体110の外側面側)に存在する潤滑剤の量を2mg缶以下に低減することができる。S400の縮径工程後にS200の除去工程を追加してもよい。
【0137】
本実施形態によれば、S900の保管工程により、インク印刷層120を紫外線から保護し、退色等の劣化を防ぐことができる。缶体を1カ月以上保管することで、除去工程を経なくても缶体110の表面に存在する潤滑剤(特に揮発性を有する潤滑剤)を低減することができる。
【0138】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0139】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した缶体、缶容器および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の缶体または缶容器を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0140】
10 缶容器
20 縮径部
30 底部
40 缶胴部
110 缶体
112 缶本体
114 樹脂フィルム層
116 樹脂フィルム層
117 潤滑層
120 インク印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11