(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158924
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】連結コイル及びリアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241031BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F37/00 C
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074557
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 孝輔
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043AA06
5E043AB02
5E043BA03
(57)【要約】
【課題】全ターンに亘って表面が平滑な連結コイル及び当該連結コイルを備えるリアクトルを提供する
【解決手段】連結コイル1は、複数ターンの巻回体である第1コイル2及び第2コイル3、並びに第1コイル2と第2コイル3を連結する連結部6を備える。第1コイル2、第2コイル3及び連結部6は、一本の導電線10が成形されて成り、第1コイル2及び第2コイル3は、互いの巻軸4aが並走して配置される。第1コイル2は、第1コイル2と第2コイル3の横並び方向4bと直交する側面、例えば外方向側面55を有する。第1コイル2のうち、連結部6と繋がる連結側最外ターン7bは、第1コイル2の側面からはみ出しながら、当該側面に沿って延びるオフセット部21を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ターンの巻回体である第1コイル及び第2コイル、並びに前記第1コイルと前記第2コイルを連結する連結部を備え、
前記第1コイル、前記第2コイル及び前記連結部は、一本の導電線が成形されて成り、
前記第1コイル及び前記第2コイルは、互いの巻軸が並走して配置され、
前記第1コイルは、前記第1コイルと前記第2コイルの横並び方向と直交する側面を有し、
前記第1コイルのうち、前記連結部と繋がるターンは、前記第1コイルの前記側面からはみ出しながら、当該側面に沿って延びるオフセット部を有すること、
を特徴とする連結コイル。
【請求項2】
前記第1コイルと前記第2コイルを被覆する被覆体を備え、
前記第1コイル及び前記第2コイルの各々は、前記側面と直交し、前記巻軸と平行の2枚の平面を有し、
前記2枚の平面のうちの一方は、前記被覆体から露出した露出面であり、
前記露出面は、前記第1コイル及び前記第2コイルの最初のターンと最後のターンを含めて前記被覆体から露出していること、
を特徴とする請求項1記載の連結コイル。
【請求項3】
前記第1コイル及び前記第2コイルは、前記2枚の平面のうち、前記露出面とは反対に位置する押圧面を有し、
前記被覆体は、前記押圧面に被さる押圧板と、前記露出面を枠内に収める枠体と、前記第1コイル及び前記第2コイルを被覆するモールド樹脂とを有すること、
を特徴とする請求項2記載の連結コイル。
【請求項4】
前記第1コイルは、前記露出面と前記側面との間に湾曲面を有し、
前記枠体は、前記露出面に加えて前記湾曲面の一部を枠内に収めると共に、枠内に収まらなかった前記湾曲面の他部と密着する密着辺を有し、
前記枠体は、前記密着辺から前記枠体の枠内に膨らみ出して、前記オフセット部の根元の一部又は全部に被さる膨出部を更に有すること、
を特徴とする請求項3記載の連結コイル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の連結コイルと、
磁性体を含み、前記連結コイルが装着されるコアと、
を備えること、
を特徴とするリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結コイル及びこれを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルは、通電により巻数に従って磁束を発生させる。そのため、コイルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品として用いられる。コイルは、リアクトルとも呼ばれ、多種多様の用途に使用されている。リアクトルとも呼ばれるコイルの利用分野としては、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0003】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0004】
コイルの一態様として連結コイルがある。連結コイルは、2個のコイルを並列状に形成し、双方のコイルを流れる電流の方向が互いに逆向きになるように連結している。これにより、連結コイルは、大電流領域において高いインダクタンス値を得る。この連結コイルは、1本の導電線から成形される場合がある。即ち、1本の導電線の片側領域を用いて1個目のコイルを成形し、同じ導電線の他方側領域を用いて2個目のコイルを成形する。2個のコイルの成形に用いた範囲に挟まれた残りの導電線部分が2個のコイルを連結する連結部になる。
【0005】
連結コイルは環状のコアに装着される。コアは、磁性体であり、真空よりも高い透磁率を有して磁場を強化し、磁束の閉磁路となることでインダクタンス値を増大させる。従って、コアに連結コイルを装着するため、連結コイルが備える両コイルの間隔や向き等の配置精度が問題となる。そこで、2つのコイルを連結する連結部を、導電線を成形するための導電線送り誤差を吸収するためのオフセット部として用いる案が提案されている(例えば特許文献1参照。)。2つのコイルの配置を整えるために必要な導電線の長さを、連結部から供給する。
【0006】
連結コイルの連結部をオフセット部として用いる場合、2つのコイルの配置を整えるために必要な導電線が足らなくならないように、連結部は長めに設定される。そのため、2つのコイルの配置を整えるために用いられなかった余長部分は連結部に残る。そうすると、連結コイルの成形完了後、連結部は2つのコイルを接続するのに必要な長さ以上を有し、2つのコイルの胴体から突き出して配置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コイルは、巻軸に沿って1ターンごとに巻き位置をずらしながら導電線を螺旋状に巻回して筒状に作成され、4枚の平坦面と4枚の湾曲面とが交互に配された外形形状を有する。製造精度上の理由から、コイルの表面には凹凸が存在し、必ずしも表面が平滑面にはなっていない。そのため、コイルの個体間で寸法バラツキが生じる虞がある。また、放熱性の観点から、コイルの平坦面の少なくとも1面を露出面に設定し、露出面を冷却シート等の放熱経路と密着させることがあるが、コイルの表面の凹凸に露出面と放熱経路との密着性が低下し、放熱性が低下する虞がある。
【0009】
そこで、金型をコイルの表面に強く押し付けたり、金型とコイルの間に樹脂板を配置し、樹脂板を介して金型をコイルの表面に強く押し付けたりすることがある。金型をコイルの表面に強く押し付けることで、コイルの表面の凹凸を是正し、コイルの表面を平滑にすることができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の連結コイルの場合、金型を押し付けるコイルの表面と、オフセット部を突出させるコイルの表面とが一致してしまう。そのため、オフセット部を金型で押圧することはできない。そうすると、特許文献1の連結コイルの場合、コイルの表面を全ターンに亘って金型で押圧することができなくなる。従って、コイルの表面を全ターンに亘って平滑にすることができず、コイルの個体間の寸法バラツキが残ったり、放熱性の低下抑制効果が限定的であったりする虞がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全ターンに亘って表面が平滑な連結コイル及び当該連結コイルを備えるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、本実施形態に係る連結コイルは、複数ターンの巻回体である第1コイル及び第2コイル、並びに前記第1コイルと前記第2コイルを連結する連結部を備え、前記第1コイル、前記第2コイル及び前記連結部は、一本の導電線が成形されて成り、前記第1コイル及び前記第2コイルは、互いの巻軸が並走して配置され、前記第1コイルは、前記第1コイルと前記第2コイルの横並び方向と直交する側面を有し、前記第1コイルのうち、前記連結部と繋がるターンは、前記第1コイルの前記側面からはみ出しながら、当該側面に沿って延びるオフセット部を有する。
【0013】
前記第1コイルと前記第2コイルを被覆する被覆体を備え、前記第1コイル及び前記第2コイルの各々は、前記側面と直交し、前記巻軸と平行の2枚の平面を有し、前記2枚の平面のうちの一方は、前記被覆体から露出した露出面であり、前記露出面は、前記第1コイル及び前記第2コイルの最初のターンと最後のターンを含めて前記被覆体から露出しているようにしてもよい。
【0014】
前記第1コイル及び前記第2コイルは、前記2枚の平面のうち、前記露出面とは反対に位置する押圧面を有し、前記被覆体は、前記押圧面に被さる押圧板と、前記露出面を枠内に収める枠体と、前記第1コイル及び前記第2コイルを被覆するモールド樹脂とを有するようにしてもよい。
【0015】
前記第1コイルは、前記露出面と前記側面との間に湾曲面を有し、前記枠体は、前記露出面に加えて前記湾曲面の一部を枠内に収めると共に、枠内に収まらなかった前記湾曲面の他部と密着する密着辺を有し、前記枠体は、前記密着辺から前記枠体の枠内に膨らみ出して、前記オフセット部の根元の一部又は全部に被さる膨出部を更に有するようにしてもよい。
【0016】
また、上記のような課題を解決するため、本実施形態に係るリアクトルは、このような連結コイルと、磁性体を含み、前記連結コイルが装着されるコアと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、連結コイルの表面が全ターンに亘って平滑になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】連結コイルを他の方向から見た斜視図である。
【
図3】樹脂でモールドした連結コイルの斜視図である。
【
図4】連結コイルを被覆する被覆体の分解図である。
【
図5】被覆体で被覆された連結コイルの斜視図である。
【
図6】樹脂でモールドした連結コイルの露出面の平面図である。
【
図7】樹脂でモールドした連結コイルの断面図である。
【
図8】連結コイルに取り付けた枠体の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る連結コイル及びリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0020】
図1は、連結コイル1を一方向から見た斜視図であり、
図2は、連結コイル1を他の方向から見た斜視図である。
図1及び
図2に示すように、連結コイル1は、第1コイル2と第2コイル3を備えている。第1コイル2及び第2コイル3は、エナメル被覆された銅線等の導電線10による筒状の巻回体である。第1コイル2及び第2コイル3において、導電線10は各巻軸4aに沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回されている。第1コイル2と第2コイル3は、導電線10の連結部6で繋がっている。
【0021】
第1コイル2及び第2コイル3は、例えば、螺旋状のエッジワイズコイルである。螺旋状のエッジワイズコイルは、平角状の導電線10の幅広面が各巻軸4aとの直交方向に拡がるように、導電線10が巻回されて成る。もっとも、導電線10の種類に限定はなく、丸線等の他種線でもよい。また、第1コイル2及び第2コイル3の巻回態様に限定はなく、導電線の幅広面が巻軸4aに沿って拡がるようにフラットワイズコイルであってもよい。
【0022】
第1コイル2及び第2コイル3は、互いの巻軸4aを並走させ、両巻軸4aを横切る並び方向4bに沿って隣り合って並設される。互いの巻軸4aは平行又は略平行が好ましく、並び方向4bは平行な両巻軸4aと直交が好ましい。即ち、第1コイル2及び第2コイル3は一定距離を保って並設されている。第1コイル2及び第2コイル3が並設されたとき、第1コイル2及び第2コイル3の巻回方向は同一になっている。
【0023】
第1コイル2及び第2コイル3の各々は、同一方向の引出側端面52から引出線11が引き出されている。連結コイル1は、引出線11を通して通電される。ここで、引出側端面52は、導電線10の引出側最外ターン7aで形成され、並び方向4bと平行に拡がり、巻軸4aと直交して拡がり、環形状を有する端面である。引出側端面52とは反対の面は、連結側端面51であり、第1コイル2及び第2コイル3は、連結側端面51で連結部6を介して繋がっている。この連結側端面51は、導電線10の連結側最外ターン7bで形成され、並び方向4bと平行に拡がり、巻軸4aと直交して拡がり、環形状を有する端面である。
【0024】
第1コイル2及び第2コイル3は、連結側端面51と引出側端面52との間に、巻軸4aと平行な4枚の湾曲面と4枚の平坦面を交互につなぎ合わせた外形形状を有する。4枚の平坦面は、押圧面53、露出面54、外方向側面55及び対向側面56である。第1コイル2及び第2コイル3の押圧面53は、樹脂モールドの際に金型によって押圧される上方の平坦面であり、並び方向4b及び巻軸4aと平行で、同一平面上に並ぶ。第1コイル2及び第2コイル3の露出面54は、放熱のために、一部領域又は全面が樹脂モールド後も露出される下方の平坦面であり、並び方向4b及び巻軸4aと平行で、押圧面53とは反対に位置して同一平面に並ぶ。
【0025】
第1コイル2及び第2コイル3の対向側面56は、互いに向かい合う連結コイル1の内側に配される平坦面であり、第1コイル2と第2コイル3の並び方向4bと直交し、第1コイル2と第2コイル3の巻軸4aと平行であり、押圧面53及び露出面54と直交して拡がる。第1コイル2及び第2コイル3の外方向側面55は、互いに反対方向を向く連結コイル1の外側に配される平坦面であり、第1コイル2と第2コイル3の並び方向4bと直交し、第1コイル2と第2コイル3の巻軸4aと平行であり、押圧面53及び露出面54と直交して拡がり、対向側面56とは反対に位置する。
【0026】
押圧面53と外方向側面55、押圧面53と対向側面56の各間には、上側湾曲面58が配置される。露出面54と外方向側面55、露出面54と対向側面56の各間に、下側湾曲面57が配置される。
【0027】
尚、平坦面とは、湾曲面との相対的な比較において平坦な面であり、導電線10の巻き膨らみによって緩やかな曲率で大きな弧を描いた面も平坦面に含まれる。上下は、モールド成型によって連結コイル1を樹脂被覆する際に、連結コイル1を収容する上型と下型に倣ったものであり、連結コイル1が設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。
【0028】
このような連結コイル1において、第1コイル2及び第2コイル3並びに連結部6は、同一の一本の導電線10を成形することで形成されている。一本の導電線10の一方側範囲を巻回して第1コイル2を成形していく。また、一本の導電線10の他方側範囲を巻回して第2コイル3を成形していく。また、一本の導電線10のうち、第1コイル2及び第2コイル3間が連結部6に形作られる。
【0029】
連結部6は、第1コイル2と第2コイル3の連結側端面51にある各下方内側端部26間を接続している。下方内側端部26は、螺旋状の巻回軌跡に沿った巻回の端部であり、露出面54と対向側面56の間にある下側湾曲面57に位置する。第1コイル2の連結側最外ターン7bは、巻軸4aを中心に一周して下方内側端部26に至る。第1コイル2の連結側最外ターン7bには、連結コイル1のオフセット部21が設けられている。即ち、第1コイル2の連結側最外ターン7bは、巻回軌跡の一部範囲が他のターンよりも外側に膨らんで巻き回され、第1コイル2からはみ出している。
【0030】
このオフセット部21は、第1コイル2の外方向側面55からはみ出している。具体的には、オフセット部21は、第1コイル2の下方外側端部22から下側湾曲面57の軌跡に従わずに真っ直ぐ延び、連結側端面51に沿って外方向側面55と直交する方向に延出する。下方外側端部22は、連結側端面51のうち、螺旋状の巻回軌跡に沿った巻回の端部であり、露出面54と外方向側面55の間にある下側湾曲面57に位置する。
【0031】
下方外側端部22から延出したオフセット部21は、外方向側面55に沿って延びるように屈曲する。外方向側面55に沿って屈曲したオフセット部21は、外方向側面55からはみ出したまま、外方向側面55に沿って平行に延びる。オフセット部21は、上方外側端部23と同じ高さに至るまで、外方向側面55からはみ出したまま、外方向側面55に沿って延びる。
【0032】
上方外側端部23と同じ高さに至ったオフセット部21は、上方外側端部23に向かって屈曲する。そして、オフセット部21は、上方外側端部23まで延びて、外方向側面55に収まる。上方外側端部23は、連結側端面51のうち、螺旋状の巻回軌跡に沿った巻回の端部であり、外方向側面55と押圧面53の間にある上側湾曲面58に位置する。
【0033】
オフセット部21において、下方外側端部22から外方向側面55に沿うように屈曲するまでの区間、及び上方外側端部23から外方向側面55に沿うように屈曲するまでの区間は、余長部24である。導電線10は、第1コイル2と第2コイル3の成形中の線材送り誤差を吸収するために予め長めに取られており、第1コイル2と第2コイル3の並設位置は余長部24の長さを用いて調整される。つまり、余長部24は、第1コイル2と第2コイル3の成形中の線材送り誤差を吸収した後の余りである。
【0034】
この余長部24が第1コイル2の連結側最外ターン7b内に残され、且つ外方向側面55から突き出すように残されることで、オフセット部21のストレート部25は、外方向側面55からはみ出しつつ、外方向側面55に沿って延びる。換言すれば、オフセット部21は、押圧面53及び露出面54から突き出していない。押圧面53と露出面54は、ターンごとの製造バラツキを除いて、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bまで全ターンに亘ってオフセット部21が突き出しておらず、平坦である。
【0035】
尚、第1コイル2の連結側最外ターン7bのうち、オフセット部21が上方外側端部23と繋がった後の範囲については、押圧面53及び対向側面56に沿って巻き回され、下方内側端部26に達して連結部6と繋がっている。
【0036】
図3は、樹脂で被覆された連結コイル1を示す斜視図である。
図3に示すように、このような連結コイル1は、被覆体8で一部又は全部が被覆されることがある。被覆体8は、絶縁部材であり、連結コイル1を環状のコアに装着して、連結コイル1と磁性体を含むコア(不図示)を備えるリアクトル(不図示)を形成する際、連結コイル1とコアとを電気的に絶縁する。被覆体8は、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合であり、熱伝導性のフィラーが混入されていてもよい。
【0037】
被覆体8は、一部にモールド樹脂87を備えている。モールド樹脂87は、連結コイル1を金型内に収容してから樹脂を射出することにより、連結コイル1の一部を覆うように成型される。モールド樹脂87は、連結コイル1を被覆するだけでなく、端子台13等の各種機能部も備え、また連結コイル1の他にバスバー12もインサート成型される。バスバー12は、引出線11と溶接され、連結コイル1と外部端子とを電気的に繋ぐ。端子台13は、バスバー12の一端が配置され、外部端子を接続する。
【0038】
図4は、連結コイル1を被覆する被覆体8の分解図であり、
図5は、被覆体8で被覆された連結コイル1の斜視図である。
図4及び
図5に示すように、被覆体8は、モールド樹脂87の他、押圧板81、引出側端面カバー82、連結側端面カバー83及び内周カバー84を有する。これら押圧板81、引出側端面カバー82、連結側端面カバー83及び内周カバー84は、連結コイル1を被覆する前に形状が定まった成形済み品である。
【0039】
押圧板81、引出側端面カバー82、連結側端面カバー83及び内周カバー84は、モールド樹脂87を成型するための金型に連結コイル1を収容する際に、連結コイル1に予め設置される。そして、これら押圧板81、引出側端面カバー82、連結側端面カバー83及び内周カバー84は、金型と連結コイル1との緩衝材になったり、樹脂が露出面54上に流れ込むことを阻止する障壁となったりする。
【0040】
押圧板81は、第1コイル2と第2コイル3の押圧面53に配置される。第1コイル2と第2コイル3の両押圧板81は、一体成型品であり、継ぎ目無く一続きに繋がっている。押圧板81は、モールド樹脂87の金型で押圧面53を押して、押圧面53の凹凸を是正する際、金型と押圧面53との間に介在して、押圧面53を保護する。
【0041】
引出側端面カバー82は、引出側端面52を覆う。この引出側端面カバー82は、露出面54に沿って直線部86を有する。直線部86は、引出側端面カバー82の下端に拡がる壁であり、引出側最外ターン7aに引出側端面52側から密着しながら、少なくとも露出面54の端から端まで延在する。直線部86は、露出面54よりも低い位置まで拡がる。
【0042】
連結側端面カバー83は、連結側端面51を覆う。この連結側端面カバー83はオフセット被覆部83aを有し、オフセット部21を含めて連結側端面51を覆う。また、連結側端面カバー83は、コの字状枠85を有する。コの字状枠85は、連結側端面カバー83の下端に拡がるコの字状の壁である。コの字状枠85は、直線部86が臨む辺を除く3方向から露出面54を囲む。尚、第1コイル2のコの字状枠85と第2コイル3のコの字状枠85は、対向側面56に沿って延びる辺を共有しており、両コの字状枠85は全体としてE字状になっている。
【0043】
コの字状枠85の1辺は、連結側最外ターン7bに連結側端面51側から密着しながら、少なくとも露出面54の端から端まで延在する。コの字状枠85の他の2辺は、密着辺91であり、連結側端面カバー83から直交して突き出し、外方向側面55と露出面54との間の下側湾曲面57と、対向側面56と露出面54との間の下側湾曲面57に密着しながら、第1コイル2及び第2コイル3の全ターンに亘って延びている。密着辺91は、オフセット被覆部83aに対応して外側に膨らみ、オフセット部21とも外側から密着する。
【0044】
コの字状枠85は、露出面54よりも低い位置まで拡がる。密着辺91は、密着下端を基点に第1コイル2から離れて延び、露出面54よりも低い位置まで拡がる。コの字状枠85と直線部86の壁の高さは同一である。コの字状枠85と直線部86は、露出面54を四方から囲み、モールド樹脂87の流動樹脂が露出面54内に流れこまないように障壁となる。また、コの字状枠85は、下側湾曲面57を支え、押圧板81を介した押圧力に対する抗力によって、第1コイル2及び第2コイル3の露出面54の凹凸を是正する。露出面54の凹凸は、下側湾曲面57の矯正効果が波及して是正される。
【0045】
内周カバー84は、第1コイル2と第2コイル3に差し込まれ、第1コイル2と第2コイル3の内周を被覆する。第1コイル2と第2コイル3の内周カバー84は、一体成型品であり、継ぎ目無く一続きに繋がっている。
【0046】
モールド成型のための金型内では、連結コイル1は、引出側端面カバー82の直線部86と連結側端面カバー83のコの字状枠85で下型に着き、押圧板81を介して上型から押さえ付けられる。ここで、オフセット部21は、外方向側面55からはみ出しており、押圧面53には、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに亘って、突き出るような突起物は存在しない。そのため、上型は、押圧面53の引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに及ぶ。
【0047】
押圧面53の引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに及ぶ上型は、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bまでの全ターンを押圧する。従って、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに亘って、押圧面53の凹凸は是正され、押圧面53は平滑になる。
【0048】
更に、第1コイル2及び第2コイル3の下方は、コの字状枠85の密着辺91によって引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンが支えられている。上型による押圧力は、第1コイル2及び第2コイル3とコの字状枠85との間に抗力を生む。従って、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに亘って、コの字状枠85の密着辺91が第1コイル2及び第2コイル3を押圧する。そして、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに亘って、露出面54の凹凸は是正される。
【0049】
図6は、樹脂でモールドした連結コイル1の露出面54の平面図であり、
図7は、樹脂でモールドした連結コイル1の断面図である。
図6及び
図7に示すように、連結コイル1に引出側端面カバー82と連結側端面カバー83が配置されると、引出側端面カバー82の直線部86と連結側端面カバー83のコの字状枠85は組み合わされ、枠体9が画成される。コの字状枠85の開口に直線部86が入り込み、矩形の枠体9が画成されるものである。
【0050】
モールド樹脂87を成型する金型内では、連結コイル1は、引出側端面カバー82の直線部86と連結側端面カバー83のコの字状枠85で下型に着く。上型の押圧によって直線部86とコの字状枠85の密着辺91と下型とは強く密着する。そのため、枠体9は、枠体9が囲む領域へのモールド樹脂87の浸入を阻止する。枠体9は、露出面54を囲む。従って、露出面54は、モールド樹脂87で被覆されず、被覆体8から露出する。
【0051】
枠体9の直線部86は、露出面54側の壁面が垂直か、又は露出面54から離れる方向に傾斜する。また、コの字状枠85のうち、連結側最外ターン7bと密着する1辺は、露出面54側の壁面が垂直か、又は露出面54から離れる方向に傾斜する。即ち、枠体9は、引出側最外ターン7a及び連結側最外ターン7bに被さることなく、引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bを含む全ターンに亘って、露出面54の全長7cを露出させている。換言すれば、枠体9は、露出面54の全長7cと同長の内縁長92を有する。
【0052】
ここで、連結側最外ターン7bが膨らんで巻回されており、例えばヒートシンク等の他の金属部材に接近してしまうと、ショートの虞がある。そこで、枠体9で連結側最外ターン7bを被覆して絶縁を図るようにしてもよい。
【0053】
もっとも、この連結コイル1では、オフセット部21が外方向側面55からはみ出しているため、連結側最外ターン7bは、モールド樹脂87を成型するための金型の上型によって押圧可能となっている。従って、連結側最外ターン7bの膨らみは是正されている。即ち、露出面54において、連結側最外ターン7bとヒートシンク等の他の金属部材との離間距離は確保されている。
【0054】
そのため、枠体9は、連結側最外ターン7bに被さることなく、連結側最外ターン7bが露出させている。このため、枠体9の内縁長92は、第1コイル2の全長7cと同長に拡がり、第1コイル2の全長7c全てが露出面54となる。この連結コイル1は、露出面54が引出側最外ターン7aから連結側最外ターン7bに至る全ターンに亘るため、放熱性が向上している。
【0055】
図8は、連結コイル1に取り付けた枠体9の部分拡大図である。枠体9は、連結側最外ターン7bのオフセット部21についても、密着辺91によって下方から支持し、上型の押圧力を受け止める。即ち、コの字状枠85の密着辺91はオフセット部21も覆う。この枠体9は、第1コイル2の露出面積を拡げるため、露出面54のみならず、下側湾曲面57の一部を枠内に収めるようにしてもよい。即ち、枠体9は下側湾曲面57のうちの上方領域のみを支持して、上型の押圧圧力を受け止め、また枠体9と下側湾曲面57との間からモールド樹脂87の樹脂が入り込むことを阻止する。
【0056】
但し、密着辺91は、連結側最外ターン7bのオフセット部21についても下方から支持して上型の押圧力を受け止め、オフセット部21と下側湾曲面57との間からモールド樹脂87の樹脂が入り込むことを阻止している。そして、オフセット部21のはみ出し長さは個体に応じて不定である。そのため、密着辺91がオフセット部21と密着する面積が減り、上側に枠体9とオフセット部21の隙間が生じ得る。
【0057】
そこで、枠体9の一角に、密着辺91から枠体9の枠内に膨らみ出す膨出部93を設けておいてもよい。膨出部93は、オフセット部21の根元を覆う。オフセット部21の根元は多くの個体で存在する可能性が高く、枠体9とオフセット部21との密着面積をより確実に確保し、上側に枠体9とオフセット部21の隙間が生じても膨出部93が樹脂の流入を阻止する。
【0058】
尚、膨出部93は、オフセット部21の余長部24を支持するため、オフセット部21に対して真下から真上に向けた抗力を与え、小面積であってもオフセット部21の膨らみを是正する。そのため、膨出部93は、オフセット部21の基端を含めて根元全部を覆うようにしてもよいが、オフセット部21の基端は露出させ、オフセット部21の根元の一部を覆うようにしてもよい。
【0059】
このように、連結コイル1は、磁性体を含むコアに装着されてリアクトルに搭載される電磁気部品である。この連結コイル1は、複数ターンの巻回体である第1コイル2及び第2コイル3、並びに第1コイル2と第2コイル3を連結する連結部6を備えるようにした。第1コイル2、第2コイル3及び連結部6は、一本の導電線10が成形されて成り、第1コイル2及び第2コイル3は、互いの巻軸4aが並走して配置される。第1コイル2は、第1コイル2と第2コイル3の横並び方向4bと直交する側面、例えば外方向側面55を有する。
【0060】
このような連結コイル1において、第1コイル2のうち、連結部6と繋がる連結側最外ターン7bは、第1コイル2の側面からはみ出しながら、当該側面に沿って延びるオフセット部21を有するようにした。これにより、オフセット部21が障害とならず、押圧面53の全ターンを押圧することができ、連結コイル1の個体間の寸法バラツキを抑制できる。
【0061】
また、第1コイル2と第2コイル3を被覆する被覆体8を備えるようにした。第1コイル2及び第2コイル3の各々は、側面と直交し、巻軸4aと平行の2枚の平面を有する。2枚の平面のうちの一方は、被覆体8から露出した露出面54である。
【0062】
この露出面54は、第1コイル2及び第2コイル3の最初のターンと最後のターン、即ち引出側最外ターン7aと連結側最外ターン7bを含めて被覆体8から露出しているようにした。オフセット部21が側面からはみ出すことにより、この態様への道程に載り得たものであり、これにより、より安全に、連結コイル1の放熱性が向上する。
【0063】
また、第1コイル2は、下側湾曲面57を有し、枠体9は、露出面54に加えて下側湾曲面57の一部を枠内に収めると共に、枠内に収まらなかった下側湾曲面57の他部と密着する密着辺91を有するようにした。そして、枠体9は、密着辺91から枠体9の枠内に膨らみ出して、オフセット部21の根元の一部又は全部に被さる膨出部93を更に有するようにした。これにより、多くの個体で露出面54にモールド樹脂87のバリが生じることを抑制でき、連結コイル1の歩留まりが向上する。
【0064】
以上、本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【0065】
例えば、連結コイル1から被覆体8を排除してもよい。被覆体8が無い連結コイル1であっても、オフセット部21を外方向側面55からはみ出させることで、全ターンに亘る押圧工程を製造工程中に含めることができ、全ターンに亘って平滑になり、個体間の寸法バラツキが抑制される。また、被覆体8は全てモールド樹脂87であってもよい。被覆体8の全てがモールド樹脂87である場合、モールド樹脂87の成型とは別の工程で全ターンに亘る押圧を行えばよい。
【符号の説明】
【0066】
1 連結コイル
10 導電線
11 引出線
12 バスバー
13 端子台
2 第1コイル
21 オフセット部
22 下方外側端部
23 上方外側端部
24 余長部
25 ストレート部
26 下方内側端部
3 第2コイル
4a,4b 巻軸
4b 並び方向
51 連結側端面
52 引出側端面
53 押圧面
54 露出面
55 外方向側面
56 対向側面
57 下側湾曲面
58 上側湾曲面
6 連結部
7a 引出側最外ターン
7b 連結側最外ターン
7c 全長
8 被覆体
81 押圧板
82 引出側端面カバー
83 連結側端面カバー
83a オフセット被覆部
84 内周カバー
85 コの字状枠
86 直線部
87 モールド樹脂
9 枠体
91 密着辺
92 内縁長
93 膨出部