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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158925
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K37/14 535C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074560
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】下山 武
(57)【要約】
【課題】ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成される極歯を有するステッピングモータにおいて、極歯を立ち上げる前にロータの径方向における極歯の内側面が曲面状に形成されても、極歯の立上角度のばらつきを抑制することが可能なステッピングモータを提供する。
【解決手段】このステッピングモータでは、ロータの径方向における第1極歯17bの内側面17cは、第1極歯17bの根本からZ1方向側に向かって形成される平面からなる平面部17eと、第1極歯17bの先端からZ2方向側に向かって形成される円弧状の曲面からなる曲面部17fとによって構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用磁石を有するロータと、前記駆動用磁石の外周面に対向する複数の極歯を有するステータとを備え、
前記ロータの軸方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記ステータは、筒状に巻回され複数の前記極歯の外周側に配置される駆動用コイルと、前記駆動用コイルの第1方向側に配置される第1端板部と前記第1端板部から第2方向側に伸びる複数の前記極歯としての複数の第1極歯とを有する第1ステータコアと、前記駆動用コイルの第2方向側に配置される第2端板部と前記第2端板部から第1方向側に伸びる複数の前記極歯としての複数の第2極歯とを有する第2ステータコアとを備え、
複数の前記第1極歯は、前記第1端板部から前記ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成され、
前記第1端板部の、前記ロータの径方向における前記第1極歯の外側部分には、前記第1極歯が切り起されることで形成される開口部が形成され、
前記ロータの径方向における前記第1極歯の内側面は、前記第1極歯の根本から第2方向側に向かって形成される平面からなる平面部と、前記第1極歯の先端から第1方向側に向かって形成される円弧状の曲面からなる曲面部とによって構成され、前記駆動用磁石の外周面に対向していることを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記ロータの軸方向における前記曲面部の長さは、前記ロータの軸方向における前記第1極歯の長さの75%以上となっていることを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記ロータの軸方向における前記曲面部の長さは、前記ロータの軸方向における前記第1極歯の長さの80%以上となっていることを特徴とする請求項2記載のステッピングモータ。
【請求項4】
前記平面部は、前記駆動用磁石よりも第1方向側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のステッピングモータ。
【請求項5】
前記第1ステータコアは、前記駆動用コイルと前記第2ステータコアとが収容されるケース体と一体で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動用磁石を有するロータと駆動用コイルを有するステータとを備えるステッピングモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のステッピングモータでは、ステータは、駆動用磁石の外周面に対向する複数の極歯を備えている。また、ステータは、駆動用コイル等が収容されるケース体を備えている。ケース体は、有底円筒状に形成されている。ケース体の底部の中心には、ロータの回転中心となる固定軸の端部が固定されている。複数の極歯のうちのいくつかの極歯は、ケース体と一体で形成されている。ケース体と一体で形成される極歯は、ケース体の底部からロータの軸方向の一方側に向かって伸びている。
【0003】
特許文献1に記載のステッピングモータでは、ケース体と一体で形成される極歯は、ケース体の底部の一部が、ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成される。ケース体の底部の、ロータの径方向における極歯の外側部分には、極歯が切り起されることで形成される開口部が形成されている。ケース体と一体で形成される複数の極歯の、ロータの径方向における内側面の全体は、円弧状の曲面となっている。そのため、特許文献1に記載のステッピングモータでは、ケース体と一体で形成される複数の極歯の径方向の内側面と駆動用磁石の外周面との距離を近づけることが可能になっており、その結果、ステッピングモータのトルクを高めることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国実用新案公告第216851509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のステッピングモータでは、ケース体の底部の中心に固定軸の端部が固定されていて、ケース体と一体で形成される極歯は、ケース体の底部からロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成されるため、この極歯の径方向の内側面は、一般に、極歯が切り起される前に曲面状に形成される。また、このステッピングモータでは、たとえば、極歯の径方向の内側面の根本部分となる部分に金型を突き当てた状態で極歯を立ち上げることで極歯が形成される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のステッピングモータでは、極歯の径方向の内側面の全体が曲面となっているため、極歯が切り起される前に極歯の径方向の内側面が曲面状に形成されると、極歯を立ち上げる際に、極歯の径方向の内側面の根本部分となる部分への金型の突き当て状態が不安定になるおそれがある。また、極歯を立ち上げる際に、極歯の径方向の内側面の根本部分となる部分への金型の突き当て状態が不安定になると、立ち上げた後の極歯の立上角度(曲げ角度)がばらついて、ステッピングモータの性能が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成される極歯を有するステッピングモータにおいて、極歯を立ち上げる前にロータの径方向における極歯の内側面が曲面状に形成されても、極歯の立上角度のばらつきを抑制することが可能なステッピングモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のステッピングモータは、駆動用磁石を有するロータと、駆動用磁石の外周面に対向する複数の極歯を有するステータとを備え、ロータの軸方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、ステータは、筒状に巻回され複数の極歯の外周側に配置される駆動用コイルと、駆動用コイルの第1方向側に配置される第1端板部と第1端板部から第2方向側に伸びる複数の極歯としての複数の第1極歯とを有する第1ステータコアと、駆動用コイルの第2方向側に配置される第2端板部と第2端板部から第1方向側に伸びる複数の極歯としての複数の第2極歯とを有する第2ステータコアとを備え、複数の第1極歯は、第1端板部からロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成され、第1端板部の、ロータの径方向における第1極歯の外側部分には、第1極歯が切り起されることで形成される開口部が形成され、ロータの径方向における第1極歯の内側面は、第1極歯の根本から第2方向側に向かって形成される平面からなる平面部と、第1極歯の先端から第1方向側に向かって形成される円弧状の曲面からなる曲面部とによって構成され、駆動用磁石の外周面に対向していることを特徴とする。
【0009】
本発明のステッピングモータでは、ロータの径方向における第1極歯の内側面に、第1極歯の根本から第2方向側に向かって形成される平面からなる平面部が形成されている。そのため、本発明では、第1端板部から第1極歯を立ち上げる前にロータの径方向における第1極歯の内側面に曲面部が形成されても、第1極歯を立ち上げるときに、ロータの径方向における第1極歯の内側面の根本部分となる部分への金型の突き当て状態を安定させることが可能になる。したがって、本発明では、第1極歯を立ち上げる前にロータの径方向における第1極歯の内側面が曲面状に形成されても、立ち上げた後の第1極歯の立上角度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0010】
本発明において、ロータの軸方向における曲面部の長さは、ロータの軸方向における第1極歯の長さの75%以上となっていることが好ましい。このように構成すると、ロータの径方向における第1極歯の内側面に平面部が形成されていても、ステッピングモータのトルクの低下を抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、ロータの軸方向における曲面部の長さは、ロータの軸方向における第1極歯の長さの80%以上となっていることがより好ましい。このように構成すると、ロータの径方向における第1極歯の内側面に平面部が形成されていても、ステッピングモータのトルクの低下を効果的に抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、平面部は、駆動用磁石よりも第1方向側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、ロータの径方向における第1極歯の内側面の、駆動用磁石の外周面と対向する部分の全体が曲面部となっているため、ロータの径方向における第1極歯の内側面に平面部が形成されていて、第1極歯の立上角度のばらつきを抑制することが可能になっていても、ステッピングモータのトルクを高めることが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、第1ステータコアは、駆動用コイルと第2ステータコアとが収容されるケース体と一体で形成されている。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成される極歯を有するステッピングモータにおいて、極歯を立ち上げる前にロータの径方向における極歯の内側面が曲面状に形成されても、極歯の立上角度のばらつきを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態にかかるステッピングモータが組み込まれるギヤードモータの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態にかかるステッピングモータの断面図である。
図3図2に示すステータの構成を説明するための断面図である。
図4図2に示す第1ステータコアおよびケース体の斜視図である。
図5図2に示す駆動用磁石、第1ステータコアおよびケース体の平面図である。
図6】(A)は、図2に示す第1極歯の側面図であり、(B)は、(A)のE-E断面の断面図であり、(C)は、(A)のF-F断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(ギヤードモータの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるステッピングモータ1が組み込まれるギヤードモータ2の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態にかかるステッピングモータ1の断面図である。
【0018】
本形態のステッピングモータ1(以下、「モータ1」とする。)は、ギヤードモータ2に組み込まれて使用される。ギヤードモータ2は、モータ1と、ギヤードモータ2の出力軸となる回転軸3と、モータ1と回転軸3とを連結する減速歯車列とを備えている。モータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。また、モータ1は、2相ステッピングモータである。モータ1は、駆動用磁石6を有するロータ7と、駆動用磁石6の外周側に配置されるステータ8とを備えている。以下、モータ1の構成を説明する。
【0019】
なお、以下の説明では、便宜上、ロータ7の軸方向である図1等のZ方向を「上下方向」とし、上下方向の一方側である図1等のZ1方向側を「上」側とし、上側の反対側である図1等のZ2方向側を「下」側とする。本形態の下側(Z2方向側)は、ロータ7の軸方向の一方側である第1方向側となっており、上側(Z1方向側)は、第1方向側の反対側である第2方向側となっている。また、本形態では、上側がモータ1の出力側となっており、下側がモータ1の反出力側となっている。減速歯車列は、ステータ8の上側に配置されている。
【0020】
(ステッピングモータの構成)
図3は、図2に示すステータ8の構成を説明するための断面図である。図4は、図2に示す外ステータコア17およびケース体23の斜視図である。図5は、図2に示す駆動用磁石6、外ステータコア17およびケース体23の平面図である。図6(A)は、図2に示す極歯17bの側面図であり、図6(B)は、図6(A)のE-E断面の断面図であり、図6(C)は、図6(A)のF-F断面の断面図である。
【0021】
上述のように、モータ1は、ロータ7とステータ8とを備えている。ロータ7は、駆動用磁石6が固定されるロータサポート10を備えている。図2に示すように、ロータサポート10の内周側には、固定軸9が挿通されている。ロータサポート10は、上下方向を回転の軸方向として回転する。また、ロータサポート10は、固定軸9を回転中心にして回転する。ロータサポート10の上側部分は、ステータ8から上側に突出する出力軸10aとなっている。減速歯車列は、出力軸10aに連結されている。
【0022】
駆動用磁石6は、永久磁石であり、円筒状に形成されている。駆動用磁石6は、ロータサポート10の下側部分の外周面に固定されている。駆動用磁石6の外周面には、N極とS極とがロータ7の周方向に沿って交互に形成されている。ロータ7は、板バネ19によって上側に付勢されている。板バネ19は、ロータ7とステータ8との間に配置されている。具体的には、板バネ19は、ステータ8の一部を構成する後述の外ステータコア17の端板部17aとロータサポート10との間に配置されている。
【0023】
ステータ8は、上下方向(すなわち、ロータ7の軸方向)で重なるA相のステータ部11とB相のステータ部12とを備えている。本形態のステータ8は、ステータ部11とステータ部12とから構成されている。ステータ部11は、ステータ部12の上側に配置されている。ロータ7の径方向において、ステータ部11は、駆動用磁石6の上側部分の外側に配置され、ステータ部12は、駆動用磁石6の下側部分の外側に配置されている。
【0024】
ステータ部11は、A相の駆動用コイル13と、A相の外ステータコア14と、A相の内ステータコア15とを備えている。ステータ部12は、B相の駆動用コイル16と、B相の外ステータコア17と、B相の内ステータコア18とを備えている。外ステータコア14、17および内ステータコア15、18は、磁性材料で形成されている。具体的には、外ステータコア14、17および内ステータコア15、18は、磁性を有する鋼板によって形成されている。また、外ステータコア14、17および内ステータコア15、18は、金型を用いたプレス加工によって鋼板を加工することで形成されている。
【0025】
駆動用コイル13は、筒状に巻回されている。駆動用コイル13は、駆動用磁石6の上側部分の外周側に配置されている。外ステータコア14は、駆動用コイル13の上側に配置される端板部14aと、端板部14aから下側に伸びる複数の極歯14bとを備えている。内ステータコア15は、駆動用コイル13の下側に配置される端板部15aと、端板部15aから上側に伸びる複数の極歯15bとを備えている。
【0026】
端板部14a、15aは、平板状に形成されている。端板部14a、15aは、端板部14a、15aの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。端板部14a、15aは、環状に形成されている。複数の極歯14bは、端板部14aからロータ7の径方向の外側かつ下側に向かって切り起されることで形成されており、端板部14aの内周端から下側に向かって直角に立ち上がっている。複数の極歯15bは、端板部15aからロータ7の径方向の外側かつ上側に向かって切り起されることで形成されており、端板部15aの内周端から上側に向かって直角に立ち上がっている。
【0027】
複数の極歯14bは、ロータ7の周方向において一定のピッチで配置され、複数の極歯15bは、ロータ7の周方向において一定のピッチで配置されている。極歯14bと極歯15bとは、ロータ7の周方向において交互に配置されている。すなわち、複数の極歯14bの間のそれぞれに、下側から極歯15bが入り込み、複数の極歯15bの間のそれぞれに、上側から極歯14bが入り込むように、極歯14bと極歯15bとが配置されている。
【0028】
極歯14b、15bは、駆動用磁石6の外周面に対向している。具体的には、ロータ7の径方向における極歯14b、15bの内側面14c、15c(図3参照)が、駆動用磁石6の上側部分の外周面に所定の隙間を介して対向している。ロータ7の径方向における極歯14bの内側面14cおよびロータ7の径方向における極歯15bの内側面15cは、円弧状の曲面となっている。具体的には、内側面14c、15cの全体が円弧状の曲面となっている。上下方向から見たときの内側面14c、15cの形状は、ロータ7の軸心(駆動用磁石6の軸心)を曲率中心とする円弧となっている。
【0029】
駆動用コイル13は、鍔付きの円筒状に形成されるボビン21に巻回されている。駆動用コイル13およびボビン21は、ロータ7の径方向において、複数の極歯14b、15bの外側に配置されている。すなわち、駆動用コイル13は、複数の極歯14b、15bの外周側に配置されている。また、駆動用コイル13およびボビン21は、上下方向において、端板部14aと端板部15aとの間に配置されている。
【0030】
駆動用コイル16は、筒状に巻回されている。駆動用コイル16は、駆動用磁石6の下側部分の外周側に配置されている。外ステータコア17は、駆動用コイル16の下側に配置される端板部17aと、端板部17aから上側に伸びる複数の極歯17bとを備えている。内ステータコア18は、駆動用コイル16の上側に配置される端板部18aと、端板部18aから下側に伸びる複数の極歯18bとを備えている。本形態の外ステータコア17は第1ステータコアであり、内ステータコア18は第2ステータコアである。また、本形態の端板部17aは第1端板部であり、端板部18aは第2端板部であり、極歯17bは第1極歯であり、極歯18bは第2極歯である。
【0031】
端板部17a、18aは、平板状に形成されている。端板部17a、18aは、端板部17a、18aの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。端板部17aは、モータ1の底面(下面)を構成している。端板部17aの中心には、固定軸9の下端部が固定されている。本形態の外ステータコア17は、ステータ部11が収容されるとともに駆動用コイル16と内ステータコア18とが収容されるモータ1のケース体23と一体で形成されている。ケース体23は、円筒状に形成されている。端板部17aの外周端(ロータ7の径方向の外側端)は、ケース体23の下端の内周面に繋がっている。ケース体23は、モータ1の外周面を構成している。また、ケース体23は、ギヤードモータ2の外周面を構成している。
【0032】
複数の極歯17bは、端板部17aからロータ7の径方向の内側かつ上側に向かって切り起されることで形成されており、端板部17aから上側に向かって直角に立ち上がっている。端板部17aの、ロータ7の径方向における極歯17bの外側部分には、極歯17bが切り起されることで形成される開口部17dが形成されている。端板部18aは、環状に形成されている。複数の極歯18bは、端板部18aからロータ7の径方向の外側かつ下側に向かって切り起されることで形成されており、端板部18aの内周端から下側に向かって直角に立ち上がっている。
【0033】
複数の極歯17bは、ロータ7の周方向において一定のピッチで配置され、複数の極歯18bは、ロータ7の周方向において一定のピッチで配置されている。極歯17bと極歯18bとは、ロータ7の周方向において交互に配置されている。すなわち、複数の極歯17bの間のそれぞれに、上側から極歯18bが入り込み、複数の極歯18bの間のそれぞれに、下側から極歯17bが入り込むように、極歯17bと極歯18bとが配置されている。
【0034】
極歯17b、18bは、駆動用磁石6の外周面に対向している。具体的には、ロータ7の径方向における極歯17b、18bの内側面17c、18c(図3参照)が、駆動用磁石6の下側部分の外周面に所定の隙間を介して対向している。ロータ7の径方向における極歯18bの内側面18cは、円弧状の曲面となっている。具体的には、内側面18cの全体が円弧状の曲面となっている。上下方向から見たときの内側面18cの形状は、ロータ7の軸心を曲率中心とする円弧となっている。
【0035】
ロータ7の径方向における極歯17bの内側面17cは、極歯17bの根本(下端)から上側に向かって形成される平面からなる平面部17eと、極歯17bの先端(上端)から下側に向かって形成される円弧状の曲面からなる曲面部17fとによって構成されている。すなわち、内側面17cは、極歯17bの根本から極歯17bの先端側に向かって形成される平面部17eと、極歯17bの先端から極歯17bの根本側に向かって形成される曲面部17fとによって構成されており、平面部17eの上端は、曲面部17fの下端に繋がっている。
【0036】
上下方向から見たときの曲面部17fの形状は、ロータ7の軸心を曲率中心とする円弧となっている(図6(B)参照)。平面部17eは、ロータ7の径方向に直交する平面となっており、上下方向から見たときの平面部17eの形状は、ロータ7の径方向に直交する直線となっている(図6(C)参照)。外ステータコア17を製造するときには、複数の極歯17bを端板部17aから立ち上げる前に極歯17bに曲面部17fを形成する。
【0037】
曲面部17fの上下方向の長さL2(図6(A)参照)は、極歯17bの上下方向の長さL1(図6(A)参照)の75%以上となっている。すなわち、極歯17bの長さ方向における曲面部17fの長さL2は、極歯17bの長さL1の75%以上となっている。本形態では、長さL2は、長さL1の80%以上となっている。平面部17eは、駆動用磁石6よりも下側に配置されている。すなわち、平面部17eの上端および曲面部17fの下端は、駆動用磁石6の下端面よりも下側に配置されている。
【0038】
駆動用コイル16は、鍔付きの円筒状に形成されたボビン24に巻回されている。駆動用コイル16およびボビン24は、ロータ7の径方向において、極歯17b、18bの外側に配置されている。すなわち、駆動用コイル16は、複数の極歯17b、18bの外周側に配置されている。また、駆動用コイル16およびボビン24は、上下方向において、端板部17aと端板部18aとの間に配置されている。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、極歯17bの内側面17cに、極歯17bの根本から上側に向かって平面部17eが形成されている。そのため、本形態では、端板部17aから極歯17bを立ち上げる前に内側面17cに曲面部17fが形成されても、極歯17bを立ち上げるときに、極歯17bの内側面17cの根本部分となる部分への金型の突き当て状態を安定させることが可能になる。したがって、本形態では、端板部17aから極歯17bを立ち上げる前に曲面部17fが形成されても、立ち上げた後の極歯17bの立上角度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0040】
本形態では、極歯17bの長さ方向における曲面部17fの長さL2は、極歯17bの長さL1の75%以上となっている。そのため、本形態では、極歯17bの内側面17cに平面部17eが形成されていても、モータ1のトルクの低下を抑制することが可能になる。特に本形態では、長さL2が長さL1の80%以上となっているため、極歯17bのサイズを変更することなく、曲面部17fと駆動用磁石6との対向面積を確保することが可能になる。したがって、本形態では、内側面17cに平面部17eが形成されていても、モータ1のトルクの低下を効果的に抑制することが可能になる。
【0041】
また、本形態では、ロータ7と外ステータコア17との間に配置される板バネ19によってロータ7が上側に付勢されるとともに、平面部17eは、駆動用磁石6よりも下側に配置されていて、極歯17bの内側面17cの、駆動用磁石6の外周面と対向する部分の全体が曲面部17fとなっているため、内側面17cに平面部17eが形成されていて、極歯17bの立上角度のばらつきを抑制することが可能になっていても、モータ1のトルクを高めることが可能になる。
【0042】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0043】
上述した形態において、平面部17eの上端および曲面部17fの下端は、駆動用磁石6の下端面より上側に配置されていても良い。また、上述した形態において、曲面部17fの上下方向の長さL2は、極歯17bの上下方向の長さL1の75%未満であっても良い。また、上述した形態において、外ステータコア17は、ケース体23と別体で形成されていても良い。
【0044】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成を取ることが可能である。
(1)駆動用磁石を有するロータと、前記駆動用磁石の外周面に対向する複数の極歯を有するステータとを備え、
前記ロータの軸方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、
前記ステータは、筒状に巻回され複数の前記極歯の外周側に配置される駆動用コイルと、前記駆動用コイルの第1方向側に配置される第1端板部と前記第1端板部から第2方向側に伸びる複数の前記極歯としての複数の第1極歯とを有する第1ステータコアと、前記駆動用コイルの第2方向側に配置される第2端板部と前記第2端板部から第1方向側に伸びる複数の前記極歯としての複数の第2極歯とを有する第2ステータコアとを備え、
複数の前記第1極歯は、前記第1端板部から前記ロータの径方向の内側に向かって切り起されることで形成され、
前記第1端板部の、前記ロータの径方向における前記第1極歯の外側部分には、前記第1極歯が切り起されることで形成される開口部が形成され、
前記ロータの径方向における前記第1極歯の内側面は、前記第1極歯の根本から第2方向側に向かって形成される平面からなる平面部と、前記第1極歯の先端から第1方向側に向かって形成される円弧状の曲面からなる曲面部とによって構成され、前記駆動用磁石の外周面に対向していることを特徴とするステッピングモータ。
(2)前記ロータの軸方向における前記曲面部の長さは、前記ロータの軸方向における前記第1極歯の長さの75%以上となっていることを特徴とする(1)記載のステッピングモータ。
(3)前記ロータの軸方向における前記曲面部の長さは、前記ロータの軸方向における前記第1極歯の長さの80%以上となっていることを特徴とする(2)記載のステッピングモータ。
(4)前記平面部は、前記駆動用磁石よりも第1方向側に配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のステッピングモータ。
(5)前記第1ステータコアは、前記駆動用コイルと前記第2ステータコアとが収容されるケース体と一体で形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のステッピングモータ。
【符号の説明】
【0045】
1 モータ(ステッピングモータ)
6 駆動用磁石
7 ロータ
8 ステータ
16 駆動用コイル
17 外ステータコア(第1ステータコア)
17a 端板部(第1端板部)
17b 極歯(第1極歯)
17c 内側面
17d 開口部
17e 平面部
17f 曲面部
18 内ステータコア(第2ステータコア)
18a 端板部(第2端板部)
18b 極歯(第2極歯)
23 ケース体
L1 ロータの軸方向における第1極歯の長さ
L2 ロータの軸方向における曲面部の長さ
Z ロータの軸方向
Z1 第2方向側
Z2 第1方向側
図1
図2
図3
図4
図5
図6