(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158927
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】貯蔵庫用センサホルダ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20241031BHJP
F25D 29/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01K1/14 E
F25D29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074565
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊野 真二
【テーマコード(参考)】
2F056
3L045
【Fターム(参考)】
2F056CE10
3L045AA04
3L045AA07
3L045BA01
3L045CA02
3L045MA02
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】装着可能な取付対象の厚みに幅を持たせて、汎用性に優れる貯蔵庫用センサホルダを提供する。
【解決手段】装着部16は、四角板状の主壁部20と、主壁部20の下端に設けられる前後一対の翼片21・21と、主壁部20の上端に設けられる前後一対の係止脚22・22とを備えている。各係止脚22は、主壁部20に片持ち状に設けられて、先端が前後方向に変位できるように弾性変形可能に構成されている。各係止脚22の先端には、取付孔15に係止される係止段部31が設けられており、取付孔15に係止段部31が係止された状態において、装着部16は下方向への移動が規制されている。各翼片21の先端には、装着部16を取付孔15に差し込み装着したときに取付対象Mの下面に接触する当接部25が上向きに設けられており、各翼片21が、主壁部20に片持ち状に設けられて、当接部25が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵庫に庫内空気の温度を計測する温度センサ(13)を設置する際に用いられるセンサホルダであって、
板状体からなる取付対象(M)に形成された取付孔(15)に対して、取付対象(M)の厚み方向である上下方向に差し込み装着される装着部(16)と、温度センサ(13)を支持する支持部(17)とを備え、
装着部(16)は、前後方向に厚みを有する四角板状の主壁部(20)と、主壁部(20)の下端に設けられる前後一対の翼片(21・21)と、主壁部(20)の上端に設けられる前後一対の係止脚(22・22)とを備え、
各係止脚(22)は、外側下方に傾斜する状態で主壁部(20)に片持ち状に設けられて、先端が前後方向に変位できるように弾性変形可能に構成されており、
各係止脚(22)の先端には、取付孔(15)に係止される係止段部(31)が設けられており、取付孔(15)に係止段部(31)が係止された状態において、装着部(16)は下方向への移動が規制されており、
各翼片(21)の先端には、装着部(16)を取付孔(15)に差し込み装着したときに取付対象(M)の下面に接触する当接部(25)が上向きに設けられており、
各翼片(21)が、主壁部(20)に片持ち状に設けられて、当接部(25)が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成されていることを特徴とする貯蔵庫用センサホルダ。
【請求項2】
各係止段部(31)は、係止脚(22)の先端外側に切欠き形成されて、装着部(16)の下方向への移動を規制する規制面(36)と、規制面(36)に連続する押圧面(37)とを備えており、
一対の押圧面(37・37)は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されており、
取付孔(15)に係止された状態における各係止段部(31)は、規制面(36)が取付対象(M)の上面に対面し、押圧面(37)が取付孔(15)の内周面に対面して、押圧面(37)が取付孔(15)に接触しており、
各係止脚(22)が、主壁部(20)側に弾性変形した状態で、取付孔(15)に係止段部(31)が係止されるように構成されている請求項1に記載の貯蔵庫用センサホルダ。
【請求項3】
当接部(25)は、部分円筒面からなる接触面(26)を備えており、
装着部(16)を取付孔(15)に差し込み装着したとき、接触面(26)が、取付対象(M)の下面に線接触状に接触する請求項1に記載の貯蔵庫用センサホルダ。
【請求項4】
一対の係止段部(31・31)の規制面(36・36)は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されて、各係止段部(31)に規制面(36)と押圧面(37)との接続部分で構成される鈍角状の入隅部(38)が形成されており、
取付孔(15)の上側の縁角部(15a)に入隅部(38)が接触する状態で、取付孔(15)に係止段部(31)が係止されている請求項2に記載の貯蔵庫用センサホルダ。
【請求項5】
支持部(17)は、装着部(16)の下面から下方に伸びる前後一対の挟持腕(41・41)を備え、断面円形に形成されるセンサ筒部(13a)の前後の周面部分に接触して温度センサ(13)を挟持支持しており、
各挟持腕(41)は、装着部(16)に片持ち状に設けられて、両挟持腕(41・41)の相対距離が拡開できるように弾性変形可能に構成されており、
一対の挟持腕(41・41)が、挟持腕(41)と接触するセンサ筒部(13a)の前後の周面部分の周方向に連続する上下の周面部分に接触しない状態で、温度センサ(13)を挟持支持している請求項1から4のいずれかひとつに記載の貯蔵庫用センサホルダ。
【請求項6】
主壁部(20)の上側先端に設けられた差込先端部(33)が、上方に行くに従って前後幅寸法が小さくなる尖形状に形成されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の貯蔵庫用センサホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に庫内空気の温度を計測する温度センサを設置する際に用いられるセンサホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵室などの貯蔵庫において、温度センサ(以下、単に「センサ」という。)をホルダ等で保持して設置することは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1のセンサホルダ(取付け具)は合成樹脂であり、取付対象への装着を担う装着部と、センサの支持を担う支持部とを備える。装着部は、平板状の基部と、該基部の一方へ延出された弾性変形可能な脚部とで構成される。支持部は、基部の他方へ延出した弾性変形可能な一対の挟持部で構成される。脚部は基部に直交する平板部と、平板部の先端から基部側に向かってく字状に形成された一対の弾性脚とで構成される。以上のような構成からなるセンサホルダでは、弾性脚を弾性変形させながら、取付対象に形成された取付孔(透孔)に脚部を差し込むことで、センサホルダを取付対象へ装着することができる。以上のような装着状態においては、基部と、取付孔を通過後に弾性変形が解消された弾性脚とが取付対象を挟持しており、これによりセンサホルダは取付孔から抜け外れることなく、さらにがたつくことなく取付対象に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭53-119402号(実開昭55-35476号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のセンサホルダにおいては、取付孔に脚部を差し込むだけの簡単な操作で、取付対象にセンサホルダをワンタッチで装着することができる。しかし、特許文献1のセンサホルダは、常態における基部と弾性脚の先端との対向隙間の寸法を超える厚みを有する取付対象に対しては装着することは不可能であり、また、この対向隙間の寸法未満の厚みを有する取付対象に対しては不安定な装着状態となる。
【0005】
詳しくは、前記対向隙間の寸法より取付対象の厚みが大きいと、取付孔に脚部を差し込んでも、弾性脚が取付孔を通過することができず、基部と脚部とによる取付対象の挟持状態を確立することができないため、取付孔からセンサホルダが抜け外れてしまう。また、前記対向隙間の寸法より取付対象の厚みが小さいと、弾性脚は取付孔を通過することができるが、弾性脚の先端が取付対象に接触せず、基部と脚部とによる取付対象の挟持状態を適正に確立することができないため、センサホルダにがたつきが生じてしまう。このように、特許文献1のセンサホルダは、予め設定された厚みの取付対象に対してのみ装着が可能となっている。しかし、貯蔵庫においてセンサの設置場所における取付対象の厚みは様々であり、また取付対象及びセンサホルダには寸法誤差もあるため、特許文献1のセンサホルダは汎用性に欠ける点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、装着可能な取付対象の厚み幅が大きく、汎用性に優れる貯蔵庫用センサホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板状体からなる取付対象Mに形成された取付孔15に対して、取付対象Mの厚み方向である上下方向に差し込み装着される装着部16と、温度センサ13を支持する支持部17とを備え、貯蔵庫に庫内空気の温度を計測する温度センサ13を設置する際に用いられるセンサホルダを対象とする。装着部16は、前後方向に厚みを有する四角板状の主壁部20と、主壁部20の下端に設けられる前後一対の翼片21・21と、主壁部20の上端に設けられる前後一対の係止脚22・22とを備えている。各係止脚22は、外側下方に傾斜する状態で主壁部20に片持ち状に設けられて、先端が前後方向に変位できるように弾性変形可能に構成されている。各係止脚22の先端には、取付孔15に係止される係止段部31が設けられており、取付孔15に係止段部31が係止された状態において、装着部16は下方向への移動が規制されている。各翼片21の先端には、装着部16を取付孔15に差し込み装着したときに取付対象Mの下面に接触する当接部25が上向きに設けられている。そして、各翼片21が、主壁部20に片持ち状に設けられて、当接部25が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
各係止段部31は、係止脚22の先端外側に切欠き形成されて、装着部16の下方向への移動を規制する規制面36と、規制面36に連続する押圧面37とを備えている。一対の押圧面37・37は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されている。取付孔15に係止された状態における各係止段部31は、規制面36が取付対象Mの上面に対面し、押圧面37が取付孔15の内周面に対面して、押圧面37が取付孔15に接触している。各係止脚22が、主壁部20側に弾性変形した状態で、取付孔15に係止段部31が係止されるように構成されている。
【0009】
当接部25は、部分円筒面からなる接触面26を備えており、装着部16を取付孔15に差し込み装着したとき、接触面26が、取付対象Mの下面に線接触状に接触する。
【0010】
一対の係止段部31・31の規制面36・36は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されて、各係止段部31に規制面36と押圧面37との接続部分で構成される鈍角状の入隅部38が形成されている。取付孔15の上側の縁角部15aに入隅部38が接触する状態で、取付孔15に係止段部31が係止されている。
【0011】
支持部17は、装着部16の下面から下方に伸びる前後一対の挟持腕41・41を備え、断面円形に形成されるセンサ筒部13aの前後の周面部分に接触して温度センサ13を挟持支持している。各挟持腕41は、装着部16に片持ち状に設けられて、両挟持腕41・41の相対距離が拡開できるように弾性変形可能に構成されている。一対の挟持腕41・41が、挟持腕41と接触するセンサ筒部13aの前後の周面部分の周方向に連続する上下の周面部分に接触しない状態で、温度センサ13を挟持支持している。
【0012】
主壁部20の上側先端に設けられた差込先端部33が、上方に行くに従って前後幅寸法が小さくなる尖形状に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のように、装着部16を取付孔15に差し込み装着したときに取付対象Mの下面に接触する当接部25を備える各翼片21が、主壁部20に片持ち状に設けられて、当接部25が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成されていると、各翼片21が弾性変形することによる当接部25の上下方向の変位によって、係止段部31と当接部25との上下方向の相対位置を可変させることができる。このように、当接部25と係止段部31との相対位置が可変できるようになっていると、両者25・31の相対位置を取付対象Mの厚みの大小に合わせて対応させて、取付対象Mの厚みの違いを吸収することができるので、異なる厚みの取付対象Mに対して、係止脚22と翼片21とによる取付対象Mの挟持状態を適正に確立することができる。以上より、本発明によれば、装着可能な取付対象Mの厚みに幅を持たせて、汎用性に優れた貯蔵庫用センサホルダを得ることができる。
【0014】
各係止段部31は、係止脚22の先端外側に切欠き形成されて、装着部16の下方向への移動を規制する規制面36と、規制面36に連続する押圧面37とを備え、一対の押圧面37・37は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されており、取付孔15に係止された状態における各係止段部31は、規制面36が取付対象Mの上面に対面し、押圧面37が取付孔15の内周面に対面して、押圧面37が取付孔15に接触しており、各係止脚22が、主壁部20側に弾性変形した状態で、取付孔15に係止段部31が係止されるように構成されている。
【0015】
上記のような構成によれば、各係止脚22の弾性復元力により押圧面37を取付孔15に押しつけて、係止脚22に弾性復元力に由来する反力を作用させることができる。この反力は、押圧面37に対して直交する方向に作用するので、下窄まりのテーパー状からなる一対の押圧面37・37では、取付孔15と各押圧面37との接触部分において、主壁部20側に向かう方向の分力と、上側に向かう方向の分力とに反力を分解できる。これら分力のうち、主壁部20側に向かう方向の分力は、前後の係止脚22・22で相殺されるので、上側に向かう方向の分力のみが装着部16に作用し、装着部16は一対の係止脚22・22で上方向に付勢される。したがって、装着部16は、各翼片21の弾性復元力によって取付対象Mを挟持することに加え、装着部16を上方向に付勢する前記分力によっても各翼片21を取付対象Mに押付けることができるので、翼片21と係止脚22とによる取付対象Mの挟持状態をより適正に確立することができる。
【0016】
当接部25は、部分円筒面からなる接触面26を備えており、装着部16を取付孔15に差し込み装着したとき、接触面26が、取付対象Mの下面に線接触状に接触するようになっていると、各翼片21・21と取付対象Mとの接触面積を可及的に小さくすることができるので、取付対象Mと貯蔵庫用センサホルダ14との間で熱が伝導し、当該熱伝導による貯蔵庫用センサホルダ14の温度変化により温度センサ13の計測値に誤差が生じることを抑えることができる。
【0017】
一対の係止段部31・31の規制面36・36は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されて、各係止段部31に規制面36と押圧面37との接続部分で構成される鈍角状の入隅部38が形成されており、取付孔15の上側の縁角部15aに入隅部38が接触する状態で、取付孔15に係止段部31が係止されていると、各係止脚22・22と取付対象Mとの接触面積を可及的に小さくすることができるので、取付対象Mと貯蔵庫用センサホルダ14との間で熱が伝導し、当該熱伝導による貯蔵庫用センサホルダ14の温度変化により温度センサ13の計測値に誤差が生じることを抑えることができる。
【0018】
支持部17は、装着部16の下面から下方に伸びる前後一対の挟持腕41・41を備え、断面円形に形成されるセンサ筒部13aの前後の周面部分に接触して温度センサ13を挟持支持しており、各挟持腕41が、装着部16に片持ち状に設けられて、両挟持腕41・41の相対距離が拡開できるように弾性変形可能に構成されていると、温度センサ13のセンサ筒部13aを下側から一対の挟持腕41・41の間に差し込むだけの簡単な操作で、温度センサ13を支持部17で支持することができる。加えて、一対の挟持腕41・41が、挟持腕41と接触するセンサ筒部13aの前後の周面部分の周方向に連続する上下の周面部分に接触しない状態で、温度センサ13を挟持支持していると、支持部17と温度センサ13とが重畳する部分において、センサ筒部13aの上下の周面を庫内空気に接触させることができるので、庫内空気が接触する温度センサ13の表面の面積を拡大して、庫内空気の温度を温度センサ13で適正に計測することができる。
【0019】
主壁部20の上側先端に設けられた差込先端部33が、上方に行くに従って前後幅寸法が小さくなる尖形状に形成されていると、取付孔15の奥側に貯蔵庫の断熱壁を構成する発泡体がある場合でも、発泡体を尖形状に形成された主壁部20の上側先端で押し広げながら装着部16を差し込むことができるので、差し込み時の抵抗を低減して、装着部16を容易に差し込み装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る貯蔵庫用センサホルダの縦断側面図である。
【
図2】同センサホルダが適用された縦型の冷蔵庫の縦断側面図である。
【
図3】同センサホルダと装着対象との関係を示す側面図である。
【
図4】同センサホルダ、装着対象、及び温度センサを示す斜視図である。
【
図5】同センサホルダが適用された横型の冷蔵庫の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
図1から
図5に、本発明に係る貯蔵庫用センサホルダを冷蔵庫(貯蔵庫)に適用した実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1及び
図4に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。
図2において冷蔵室は、前面に開口を有する断熱箱体からなる冷蔵庫本体1と、冷蔵庫本体1の開口を開閉するドア2とを備えており、これら冷蔵庫本体1とドア2とで冷蔵室3が区画されている。冷蔵庫本体1の上方には機械室4が設けられており、機械室4には冷凍機構を構成する圧縮機5及び凝縮器6と、これら各機器5・6を冷却する冷却ファン7などが設置されている。この冷蔵庫は、冷蔵室3と機械室4とが上下に配される縦型の冷蔵庫として構成されている。
【0022】
冷蔵室3の天井壁には、圧縮機5及び凝縮器6とともに冷凍機構を構成する蒸発器8が設置されている。蒸発器8の下方には、板状体からなるダクト体9が設けられており、冷蔵室3の天井壁とダクト体9との間に熱交換室が形成される。ダクト体9の前側に形成された熱交換室の吸込口には循環ファン10が設けられており、循環ファン10の駆動により、冷蔵室3の空気が吸込口から熱交換室へ吸い込まれる。熱交換室で蒸発器8と熱交換され冷却された空気は、熱交換室の後部の吹出口から冷蔵室3へ吹き出される。
【0023】
ダクト体9の下面には、冷蔵室3の庫内温度(熱交換室に吸い込まれる空気の温度)を計測する温度センサ(以下、センサと記す。)13が設置されている。センサ13は、循環ファン10が設けられる吸込口の後側に設けられており、取付対象Mに装着された貯蔵庫用センサホルダ(以下、センサホルダと記す。)14で保持される。本実施形態では、取付対象Mはダクト体9であり、ダクト体9に対して装着されたセンサホルダ14にセンサ13が保持される。センサホルダ14は、ダクト体9に形成された四角孔からなる取付孔15に対して、ダクト体9の厚み方向である上下方向に差し込み装着される装着部16と、センサ13を支持する支持部17とを備えており、前後線対称かつ左右方向に同一の断面形状を有するプラスチック成形品からなる。
【0024】
図3に示すように装着部16は、上下方向に伸びる主壁部20と、主壁部20の下端に設けられる前後一対の翼片21・21と、主壁部20の上端に設けられる前後一対の係止脚22・22とを備える。主壁部20は、前後方向に厚みを有する四角板状に形成されている。各翼片21は、先端に向かって徐々に曲率が大きくなるように上向きに湾曲する、上下方向に短軸を持つ四分楕円弧状の板体からなり、主壁部20の下端の前後面に片持ち状に設けられている。各翼片21の先端には、装着部16を取付孔15に差し込み装着したときにダクト体9の下面に接触する当接部25が設けられており、この当接部25は、部分円筒面からなる接触面26を備えている(
図1参照)。片持ち状に設けられる各翼片21は、当接部25が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成されている。
【0025】
図3に示すように各係止脚22は、外側下方に伸びる板体からなり、傾斜する傾斜脚部29と、この傾斜脚部29の先端(下端)に連続して下方向に伸びる垂直脚部30とでへ字状に形成されており、主壁部20の上端の前後面に片持ち状に設けられている。各係止脚22の先端外側には、取付孔15に係止される係止段部31が切欠き形成されている。片持ち状に設けられる各係止脚22は、その先端が前後方向に変位できるように弾性変形可能に構成されている。一対の傾斜脚部29・29の外側面は、取付孔15に装着部16を差し込み装着するとき、取付孔15の開口縁に接触して係止脚22を内向きに弾性変形させる作用面32を構成している。
【0026】
図3に示すように、主壁部20の上側先端には、差込先端部33が設けられている。差込先端部33は、上方に行くに従って前後幅寸法が小さくなる尖形状に形成されており、その前後面は上窄まりテーパー状に形成されている。差込先端部33の前面は、前側の係止脚22の作用面32に連続しており、差込先端部33の後面は、後側の係止脚22の作用面32に連続している。
【0027】
各係止段部31は、各係止脚22の先端外側に切欠き形成されており、上側に配される規制面36と、規制面36の下側に連続する押圧面37とを備えており、両面36・37の接続部分には鈍角状の入隅部38が形成されている。一対の係止段部31・31の規制面36・36は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されている。同様に、一対の係止段部31・31の押圧面37・37は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されている。一対の押圧面37・37がなすテーパー角度は、一対の規制面36・36がなすテーパー角度よりも小さく設定されている。
図1に示すように、取付孔15に係止段部31が係止されたとき、規制面36はダクト体9の上面に対面し、押圧面37は取付孔15の内周面に対面する状態で、取付孔15の上側の縁角部15aに入隅部38が接触する。各係止脚22において、規制面36は作用面32に連続しており、両面36・32の接続部分は丸められている。
【0028】
一対の係止段部31は、一対の当接部25・25よりも前後方向における内方側に配されている。四角孔状の取付孔15における上側前後の縁角部15a・15aどうしの対向間隔(前後方向の開口寸法)をL1と規定し、センサホルダ14の常態(ダクト体9(取付対象M)への装着前)における一対の係止段部31・31の入隅部38・38どうしの対向間隔をL2と規定したとき、対向間隔L2は、対向間隔L1よりも大きく形成されている(L1<L2)。このような寸法関係により、取付孔15に係止段部31が係止されたとき、各係止脚22は内向き(基部側)に弾性変形する。
【0029】
ダクト体9(取付対象M)の厚みをTと規定し、センサホルダ14の常態における接触面26と入隅部38との上下方向の隙間寸法をGと規定したとき、隙間寸法Gは、厚みTよりも小さく形成されている(T>G)。このような寸法関係により、取付孔15に係止段部31が係止されたとき、各翼片21は下向きに弾性変形する。本実施形態のセンサホルダ14では、翼片21が弾性変形することにより、隙間寸法Gが可変できるため、センサホルダ14が装着できるダクト体9は、隙間寸法Gを僅かに超える寸法から、翼片21の先端が下方に弾性変形したとき、接触面26を除く翼片21の上面がダクト体9の下面に接触するまでの範囲の厚みTに対応できる。
【0030】
上記のように構成された装着部16によれば、各係止脚22の弾性復元力により押圧面37を取付孔15に押しつけて、係止脚22に弾性復元力に由来する反力を作用させることができる。この反力は、押圧面37に対して直交する方向に作用するので、下窄まりのテーパー状からなる一対の押圧面37・37では、取付孔15と各押圧面37との接触部分において、主壁部20側に向かう方向の分力と、上側に向かう方向の分力とに反力を分解できる。これら分力のうち、主壁部20側に向かう方向の分力は、前後の係止脚22・22で相殺されるので、上側に向かう方向の分力のみが装着部16に作用し、装着部16は一対の係止脚22・22で上方向に付勢される。
【0031】
図3に示すように、支持部17は、装着部16の下面から下方に伸びる前後一対の挟持腕41・41を備えており、センサ13に形成された断面円形のセンサ筒部13aを挟持支持する。本実施形態のセンサ13は、一端部が半球状に丸められた円柱状に形成されており、センサ13の全体がセンサ筒部13aを構成している。各挟持腕41は、翼片21の基端部分に片持ち状に設けられており、翼片21から下向きに伸びる垂直腕部42と、垂直腕部42の下端に連続する外突湾曲状の湾曲腕部43と、湾曲腕部43の下端に連続するガイド腕部44とを備えている。
【0032】
湾曲腕部43の内面はセンサ筒部13aの周面と接触する挟持面45を構成しており、挟持面45は、センサ筒部13aの周面に合致する部分円筒面で形成されている。一対のガイド腕部44・44は、ハ字状に形成されており、支持部17にセンサ13を支持させるとき、その内面側にセンサ筒部13aが接触することにより、両挟持腕41・41が前後に拡開変形される。
【0033】
ダクト体9に対するセンサホルダ14の装着は、まず支持部17を掴み持って、
図4に示すように取付孔15に対して装着部16を位置合わせしたうえで、センサホルダ14を上方に移動させて、取付孔15に主壁部20及び一対の係止脚22・22の先端を進入させる。この状態からセンサホルダ14を上方に移動させると、各係止脚22の作用面32が取付孔15に接触し、一対の係止脚22・22は内向きに弾性変形しながら取付孔15へ進入し、やがて一対の翼片21・21の接触面26・26がダクト体9の下面に当接する。
【0034】
この状態から一対の翼片21・21を弾性変形させながら、作用面32と規制面36との接続部分が取付孔15を乗り越えるまでセンサホルダ14をさらに上方に移動させる。両面32・36の接続部分が取付孔15を乗り越えた時点で、両係止脚22が弾性復元力により拡開して、取付孔15に係止段部31が係止され、規制面36がダクト体9に引っ掛かることにより、装着部16の下方向への移動が規制される。以上より、翼片21と係止脚22とでダクト体9が挟持され、センサホルダ14は、ダクト体9に対して抜け止め状に、かつがたつくことなく装着される。
【0035】
ダクト体9に対してセンサホルダ14を装着した状態では、各翼片21は接触面26がダクト体9の下面に接触しており、各係止脚22は係止段部31の入隅部38が取付孔15の上側の縁角部15aに接触する。これら接触面26とダクト体9、及び入隅部38と取付孔15の接触部分は線接触状に接触している。
【0036】
ダクト体9に装着されたセンサホルダ14に対してセンサ13は、
図4に示すようにセンサ13を左右方向に沿う姿勢にしたのち、一対の挟持腕41・41の間にセンサ筒部13aを位置合わせしたうえで、センサ13を上方に移動させて一対のガイド腕部44・44にセンサ筒部13aをあてがう。この状態からガイド腕部44・44の内面で両挟持腕41・41を前後方向に拡開させながら、一対の湾曲腕部43・43の位置までセンサ13を上方に移動させる。一対の湾曲腕部43・43の位置までセンサ13が移動されると、両挟持腕41・41は互いに内向きに復元し、一対の挟持面45・45でセンサ筒部13aが左右方向から挟持され、センサ13は支持部17で支持される。以上より、センサ13はセンサホルダ14で保持される。
【0037】
センサ13をセンサホルダ14で保持した状態では、一対の挟持腕41・41は、挟持腕41と接触するセンサ筒部13aの前後の周面部分の周方向に連続する上下の周面部分に接触しない状態で、温度センサ13を挟持支持している。これにより、温度センサ13と支持部17が重畳する部分においては、センサ筒部13aの上下の周面に一対の挟持腕41・41が接触しない非接触領域46が形成される。この非接触領域46は庫内空気と接触することができる。
【0038】
図5は、センサホルダ14を冷蔵室3と機械室4とが左右に配された横型の冷蔵庫(貯蔵庫)に適用した場合を示している。横型の冷蔵庫におけるセンサホルダ14の取付対象Mは、冷蔵庫本体1を構成する内箱1aであり、取付孔15は、内箱1aの側壁を左右に貫通する状態で形成されている。この場合のセンサホルダ14は、取付孔15に対して左右方向に差し込み装着される。内箱1aの外側には発泡体からなる断熱材1bが設けられており、内箱1aにセンサホルダ14を装着するときには、尖形状に形成された差込先端部33で断熱材1bを押し広げながら装着部16が差し込まれる。
【0039】
以上のように、本実施形態の貯蔵庫用センサホルダ14においては、各翼片21を、主壁部20に片持ち状に設けて、当接部25が上下方向に変位できるように弾性変形可能に構成したので、各翼片21が弾性変形することによる当接部25の上下方向の変位によって、係止段部31と当接部25との上下方向の相対位置を可変させることができる。このように、当接部25と係止段部31との相対位置が可変できるようになっていると、両者25・31の相対位置を取付対象Mの厚みの大小に合わせて対応させて、取付対象Mの厚みの違いを吸収することができるので、異なる厚みの取付対象Mに対して、係止脚22と翼片21とによる取付対象Mの挟持状態を適正に確立することができる。以上より、本発明によれば、装着可能な取付対象Mの厚みに幅を持たせて、汎用性に優れた貯蔵庫用センサホルダ14を得ることができる。
【0040】
一対の押圧面37・37を、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成し、各係止脚22が、主壁部20側に弾性変形した状態で、取付孔15に係止段部31が係止されるように構成したので、各係止脚22の弾性復元力により押圧面37を取付孔15に押しつけて、係止脚22に弾性復元力に由来する反力を作用させることができる。先に説明したように、この反力は、取付孔15と各押圧面37との接触部分において、主壁部20側に向かう方向の分力と、上側に向かう方向の分力とに分解でき、これら分力のうち、主壁部20側に向かう方向の分力は、前後の係止脚22・22で相殺されるので、上側に向かう方向の分力のみが装着部16に作用し、装着部16は一対の係止脚22・22で上方向に付勢される。したがって、装着部16は、各翼片21の弾性復元力によって取付対象Mを挟持することに加え、装着部16を上方向に付勢する前記分力によっても各翼片21を取付対象Mに押付けることができるので、翼片21と係止脚22とによる取付対象Mの挟持状態をより適正に確立することができる。
【0041】
装着部16を取付孔15に差し込み装着したとき、部分円筒面からなる接触面26を、取付対象Mの下面に線接触状に接触するように構成したので、各翼片21・21と取付対象Mとの接触面積を可及的に小さくして、取付対象Mと貯蔵庫用センサホルダ14との間で熱が伝導し、当該熱伝導による貯蔵庫用センサホルダ14の温度変化により温度センサ13の計測値に誤差が生じることを抑えることができる。
【0042】
一対の係止段部31・31の規制面36・36は、下方に行くに従って漸次対向寸法が小さくなる下窄まりのテーパー状に形成されて、各係止段部31に規制面36と押圧面37との接続部分で構成される鈍角状の入隅部38が形成されており、取付孔15の上側の縁角部15aに、規制面36と押圧面37との接続部分で構成される鈍角状の入隅部38が接触する状態で、取付孔15に係止段部31が係止されるように構成したので、各係止脚22・22と取付対象Mとの接触面積を可及的に小さくして、取付対象Mと貯蔵庫用センサホルダ14との間で熱が伝導し、当該熱伝導による貯蔵庫用センサホルダ14の温度変化により温度センサ13の計測値に誤差が生じることを抑えることができる。
【0043】
各挟持腕41を、装着部16に片持ち状に設けて、両挟持腕41・41の相対距離が拡開できるように弾性変形可能に構成したので、温度センサ13のセンサ筒部13aを下側から一対の挟持腕41・41の間に差し込むだけの簡単な操作で、温度センサ13を支持部17で支持することができる。加えて、一対の挟持腕41・41が、挟持腕41と接触するセンサ筒部13aの前後の周面部分の周方向に連続する上下の周面部分に接触しない状態で、温度センサ13を挟持支持するようにしたので、支持部17と温度センサ13とが重畳する部分において、センサ筒部13aの上下の周面を庫内空気に接触させることができる。これにより、庫内空気が接触する温度センサ13の表面の面積を拡大して、庫内空気の温度を温度センサ13で適正に計測することができる。
【0044】
主壁部20の上側先端に設けられた差込先端部33を、上方に行くに従って前後幅寸法が小さくなる尖形状に形成したので、取付孔15の奥側に貯蔵庫の断熱壁を構成する発泡体からなる断熱材1bがある場合でも、断熱材1bを尖形状に形成された主壁部20の上側先端で押し広げながら装着部16を差し込むことができる。これにより、差し込み時の抵抗を低減して、装着部16を容易に差し込み装着することができる。
【0045】
その他、貯蔵庫用センサホルダ14を構成する翼片21、係止脚22、及び挟持腕41の具体的な形状は、上記の実施形態に示したものに限られない。
【符号の説明】
【0046】
13 温度センサ
13a センサ筒部
15 取付孔
15a 取付孔の上側の縁角部
16 装着部
17 支持部
20 主壁部
21 翼片
22 係止脚
25 当接部
26 接触面
31 係止段部
33 差込先端部
36 規制面
37 押圧面
38 入隅部
41 挟持腕
M 取付対象