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特開2024-158928光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158928
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20241031BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241031BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B30/00
G02B7/04 D
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074566
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄太
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AJ06
2H044BD11
2H044BD16
2H044BE02
2H044BE09
(57)【要約】
【課題】レンズを保持する部材を付勢する付勢力への駆動部からの影響を抑制すること。
【解決手段】光学素子駆動装置は、光学素子を保持可能な保持部と、保持部を移動可能に支持する支持部を有する固定部と、保持部に配置されるマグネットと固定部に配置されるコイルとを有し、保持部を駆動する駆動部と、マグネットに対向して固定部に配置され、保持部を支持部に付勢する磁性部材と、を備え、コイルは、保持部を支持部に付勢する付勢方向に対して巻回軸方向が傾くよう配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持可能な保持部と、
前記保持部を移動可能に支持する支持部を有する固定部と、
前記保持部に配置されるマグネットと前記固定部に配置されるコイルとを有し、前記保持部を駆動する駆動部と、
前記マグネットに対向して前記固定部に配置され、前記保持部を前記支持部に付勢する磁性部材と、
を備え、
前記コイルは、前記保持部を前記支持部に付勢する付勢方向に対して巻回軸方向が傾くよう配置されている、
光学素子駆動装置。
【請求項2】
前記コイルは、前記付勢方向に対し、前記保持部が移動する方向に向かって前記巻回軸方向が傾くよう配置されている、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
前記保持部、前記支持部及び前記駆動部を複数組備え、
複数の前記駆動部のうち、前記保持部の可動域が大きい駆動部が有するコイルが、前記付勢方向に対して前記巻回軸方向が傾くよう配置されている、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
複数の前記駆動部のうち、前記保持部の可動域が大きい前記駆動部に前記コイルが複数配置されている、
請求項3に記載の光学素子駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子駆動装置と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、
を備える、
カメラモジュール。
【請求項6】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項5に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、
を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を駆動する光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の薄型のカメラ搭載装置に搭載されたカメラモジュールが知られている。このようなカメラモジュールとして、被写体像の拡大又は縮小を行うズーム機能を有するレンズ駆動装置(光学素子駆動装置)を備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガイドピンに移動可能に支持される複数のレンズアセンブリや複数のレンズアセンブリをそれぞれ駆動する複数の駆動部(マグネット及びコイル)等を有するカメラモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-506764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すカメラモジュールにおいて、例えば、レンズアセンブリのチルトを抑制するため、レンズアセンブリに設けられたマグネットとボディに設けられたヨークとの磁気力により、レンズアセンブリをガイドピンに付勢することが考えられる。この場合、マグネット及びヨークにより付勢する付勢方向は、レンズアセンブリの移動方向と直交関係にすることが一般的である。
【0006】
ところが、レンズアセンブリを駆動する駆動部(マグネット及びコイル)によるローレンツ力は、レンズアセンブリの移動方向以外に、上述した付勢方向にも発生する。付勢方向の成分のローレンツ力は、レンズアセンブリをガイドピンに付勢する付勢力を増減させるため、レンズアセンブリの移動が不安定になり易い。
【0007】
本発明の目的は、レンズを保持する部材を付勢する付勢力への駆動部からの影響を抑制可能な光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光学素子駆動装置は、
光学素子を保持可能な保持部と、
前記保持部を移動可能に支持する支持部を有する固定部と、
前記保持部に配置されるマグネットと前記固定部に配置されるコイルとを有し、前記保持部を駆動する駆動部と、
前記マグネットに対向して前記固定部に配置され、前記保持部を前記支持部に付勢する磁性部材と、
を備え、
前記コイルは、前記保持部を前記支持部に付勢する付勢方向に対して巻回軸方向が傾くよう配置されている。
【0009】
本発明に係るカメラモジュールは、
前記光学素子駆動装置と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0010】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
前記カメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズを保持する部材を付勢する付勢力への駆動部からの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るカメラモジュールの概略を示す平面図である。
図2図1に示したカメラモジュールの側面図である。
図3図1に示したカメラモジュール本体の平面図である。
図4図1に示したカメラモジュール本体の斜視図である。
図5図1に示したカメラモジュール本体を分解した分解斜視図である。
図6A】カメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す正面図である。
図6B図6Aに示すスマートフォンの背面図である。
図7A】車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す正面図である。
図7B図7Aに示す自動車を斜め後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[カメラモジュール]
図1は、本実施の形態に係るカメラモジュール1の概略を示す平面図である。図2は、図1に示したカメラモジュール1の側面図である。図3は、図1に示したカメラモジュール本体10の平面図である。図4は、図1に示したカメラモジュール本体10の斜視図である。図5は、図1に示したカメラモジュール本体10を分解した分解斜視図である。
【0015】
カメラモジュール1は、例えば、スマートフォンM(後述の図6A図6Bを参照)、携帯電話機、デジタルカメラ、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、車載カメラなどの薄型のカメラ搭載装置に搭載される。
【0016】
本実施の形態のカメラモジュール1の構造を説明するにあたり、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。カメラモジュール1は、カメラ搭載装置で実際に撮影が行われる場合に、例えば、X方向が左右方向、Y方向が上下方向、Z方向が前後方向となるように搭載される。被写体からの光は、Z方向+側(プラス側)から入射し、屈曲してY方向+側(プラス側)へと導光される。カメラモジュール1のZ方向の厚さを薄くすることにより、カメラ搭載装置の薄型化を図ることができる。
【0017】
図1図4に示すように、カメラモジュール1は、カメラモジュール本体(以降、本体)10、反射駆動部20、レンズ部30、撮像部40、支持部50、レンズ駆動部61、62、付勢部71、72、制御部100等を備える。
【0018】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働してレンズ駆動部61、62を制御する。これにより、制御部100は、本体10に収容されるレンズ部30の後述するレンズユニット32及びレンズユニット33をY方向(光軸の方向)に駆動する。その結果、カメラモジュール1は、無段階光学ズーム及びオートフォーカスを行う。本体10、支持部50、レンズ駆動部61、62、付勢部71、72及び制御部100は、本発明における光学素子駆動装置に対応する。
【0019】
[反射駆動部]
反射駆動部20は、反射筐体21、ミラー22及び反射駆動制御部23を有する。カメラモジュール1では、図2に示すように、このような構成を有する反射駆動部20を介して、入射光L1が本体10に入射される。図1及び図2に示す例では、反射筐体21は、本体10のY方向の-側の端部と隣接して配置されている。ミラー22は、反射筐体21内に設けられ、入射光L1を反射光L2として本体10に向けて反射する。反射駆動制御部23は、CPU、ROM、RAM等を備えており、ミラー22の向きを制御する。
【0020】
ミラー22は、X方向及びZ方向に延びる2つの回転軸(図示省略)を有している。反射駆動部20では、反射駆動制御部23の制御の下、当該回転軸を中心にミラー22が回転する。これにより、カメラモジュール1は、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(OIS(Optical Image Stabilization)機能)を有する。
【0021】
本体10内に入射した反射光L2は、本体10内に収容されるレンズ部30を介して撮像部40に出力される。
【0022】
[撮像部]
撮像部40は、本体10のY方向の+側の外側面(後述する側面部114)に配置されており、レンズ部30を介して反射光L2が入射するように構成されている。撮像部40は、撮像素子及び基板等(図示省略)を有する。
【0023】
撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。撮像素子は、基板に実装され、ボンディングワイヤーを介して基板上の配線に電気的に接続される。撮像素子は、レンズ部30により結像された被写体像を撮像し、被写体像に対応する電気信号を出力する。
【0024】
また、撮像部40の基板には、プリント配線基板(図示省略)が電気的に接続され、このプリント配線基板を介して撮像素子への給電及び撮像素子で撮像された被写体像の電気信号の出力が行われる。当該電気信号は、カメラ搭載装置に設けられる撮像制御部200に出力される。撮像制御部200は、CPU、ROM、RAM等を備えており、カメラモジュール1で得られた画像情報を処理する。撮像制御部200は、カメラ搭載装置に搭載されても、カメラモジュール1に内蔵されていてもよい。
【0025】
[本体部]
本体10は、筐体11(本発明における固定部)、支持部50、レンズ駆動部61、62、付勢部71、72等を有する。
【0026】
[筐体]
筐体11は、図3図4に示すように、底部111と、側面部112~114とを有し、底部111及び側面部112~114で囲う領域に、レンズ部30、支持部50及びレンズ駆動部61、62を収容している。筐体11は、ここでは、一例として、略直方体形状を有する。
【0027】
底部111は、筐体11の基部であり、ここでは、一例として、金属製の矩形状の板材である。底部111の四辺に側面部112~114がそれぞれ立設される。底部111は、例えば、インサート成形等により、樹脂製の側面部112~114と一体に形成されてもよい。
【0028】
側面部112~114は、底部111の周囲を略囲うように、底部111の四辺のうちの三辺にそれぞれ立設される壁部であり、ここでは、一例として、樹脂製の矩形状の板材である。
【0029】
側面部112及び側面部113は、底部111のX方向における両端側にそれぞれ立設され、Y方向に沿ってそれぞれ延在する。詳細は後述するが、側面部112は、外面側にヨーク711を有し、内面側にコイル612を有する。側面部113は、外面側にヨーク721を有し、内面側にコイル622、623を有する。
【0030】
側面部114は、底部111のY方向の+側の端部に立設され、X方向に沿って延在し、側面部112及び側面部113の端部と接続する。側面部114は、貫通部114a(図1図2を参照)を有し、また、外面側に撮像部40を有する。Y方向において、側面部114に対向する部分は、開口されており、反射駆動部20が配置される。反射駆動部20で反射し、本体10内に入射した反射光L2は、レンズ部30、貫通部114aを介して、撮像部40に入射される。
【0031】
[レンズ部]
レンズ部30は、複数のレンズユニット31~34を有する。レンズユニット31~34は、本体10内に置いて、反射光L2の光路に沿って配置されている。
【0032】
レンズユニット31は、レンズ311(光学素子)と、レンズ311を保持する保持部312と、を有する。レンズユニット31は、反射光L2の入射方向(Y方向の+側に向かう方向)の最上流側に配置される。保持部312は、Y方向において、側面部114に対向する底部111の端部に立設されて固定される。また、保持部312は、後述する保持部342との間において、支持部50の支持軸51、52を支持する。
【0033】
レンズユニット32は、レンズ321(光学素子)と、レンズ321を保持する保持部322と、を有する。レンズユニット32は、反射光L2の入射方向において、レンズユニット31の下流側であって、レンズユニット33の上流側に配置される。保持部322は、支持部50の支持軸52に移動可能に支持される。
【0034】
レンズユニット33は、レンズ331(光学素子)と、レンズ331を保持する保持部332と、を有する。レンズユニット33は、反射光L2の入射方向において、レンズユニット32の下流側であって、レンズユニット34の上流側に配置される。保持部332は、支持部50の支持軸51に移動可能に支持される。
【0035】
レンズユニット34は、レンズ341(光学素子)と、レンズ341を保持する保持部342と、を有する。レンズユニット34は、反射光L2の入射方向において、最下流側に配置される。保持部342は、Y方向において、側面部114側の底部111の端部に立設されて固定される。また、保持部342は、保持部312との間において、支持部50の支持軸51、52を支持する。
【0036】
レンズ311、321、331、341は、レンズ駆動装置の製造時に本体10に組み付けられてもよいし、レンズ駆動装置からカメラモジュール1を製造する際に本体10に組み付けられてもよい。
【0037】
[支持部]
支持部50は、複数組の支持軸51、52を有し、複数組の支持軸51、52は、例えば、ステンレス等で構成されている。支持軸51は、上述したレンズユニット33を移動可能に支持する2本の軸であり、Y方向に延在すると共に、Z方向において互いに平行に配置される。2本の支持軸51の両端部は、上述した保持部312及び保持部342にそれぞれ固定されて支持される。
【0038】
また、支持軸52は、上述したレンズユニット32を移動可能に支持する2本の軸であり、Y方向に延在すると共に、Z方向において互いに平行に配置される。2本の支持軸52の両端部も、上述した保持部312及び保持部342にそれぞれ固定されて支持される。
【0039】
このように、支持軸51、52はY方向に延在する軸であるので、複数組の支持軸51、52は、支持するレンズユニット32、33をY方向に移動可能に案内し、Y方向以外の方向への移動を規制することになる。このような支持軸51、52により、レンズ駆動部61、62によるローレンツ力の向きにかかわらず、レンズユニット32、33の移動方向は、支持軸51、52に沿うY方向となる。
【0040】
[レンズ駆動部]
レンズ駆動部61は、筐体11に対して、レンズユニット33をY方向に駆動するアクチュエーターであり、レンズ駆動部62は、筐体11に対して、レンズユニット32をY方向に駆動するアクチュエーターである。
【0041】
レンズ駆動部61は、レンズユニット33の保持部332に設けられたマグネット611と、側面部112の内面側に設けられたコイル612とを有する。このような構成を有するレンズ駆動部61は、ムービングマグネット方式のボイスコイルモーター(VCM:Voice Coil Motor)として機能する。
【0042】
マグネット611は、レンズユニット33の可動域(ストローク)に応じた長さを有し、Y方向に延在する。保持部332の側面部112側には、Y方向に延在する取付部332aが設けられており、上述したマグネット611が取付部332aに取り付けられて固定されている。マグネット611は、コイル612を径方向に横切る磁界が形成されるように、例えば、コイル612側がN極、レンズ331側がS極になるように、着磁される。
【0043】
コイル612は、マグネット611に対向するよう配置される。コイル612は、基板613上に設けられ、X方向がコイル612の巻回軸となるよう、基板613と共に側面部112の内面に取り付けられて固定されている。基板613には、例えば、インサート成形等により側面部112に設けられた配線(図示省略)が接続されており、配線を介して、制御部100からの信号がコイル612に入力されて、レンズユニット33が駆動される。このとき、レンズユニット33は、後述するように、付勢部71により支持軸51に付勢され、支持軸51に沿ってY方向に移動する。
【0044】
以上の構成において、コイル612へ電力が供給されていないとき(無通電時)には、保持部332は、付勢部71により支持軸51に付勢されて支持されている。コイル612へ電力が供給されると(通電時)、コイル612に流れる電流とマグネット611の磁界との相互作用により、コイル612にローレンツ力が生じる。コイル612は、筐体11側である側面部112に固定されているので、生じたローレンツ力により、マグネット611、即ち、レンズユニット33は、Y方向に移動することになる。コイル612に流れる電流の向きや大きさを制御することにより、マグネット611を有するレンズユニット33を所望の位置に移動させて、ズームやオートフォーカスを行うことになる。
【0045】
なお、図示は省略しているが、基板613には、レンズユニット33のY方向の位置を検出する位置検出部が設けられている。制御部100は、位置検出部で検出されたレンズユニット33のY方向の位置に基づいて、コイル612に流れる電流の向きや大きさを制御する。位置検出部としては、例えば、位置の検出用のマグネット及び当該マグネットによる磁界を検出するホールセンサー等が用いられる。
【0046】
レンズ駆動部62は、レンズユニット32の保持部322に設けられたマグネット621と、側面部113の内面側に設けられたコイル622、623とを有する。このような構成を有するレンズ駆動部62も、ムービングマグネット方式のVCMとして機能する。
【0047】
マグネット621は、レンズユニット32の可動域に応じた長さを有し、Y方向に延在する。ここでは、一例として、レンズユニット32の可動域がレンズユニット33の可動域より大きいので、マグネット621のY方向の長さは、マグネット611のY方向の長さより長い。
【0048】
そして、保持部322の側面部113側には、Y方向に延在する取付部322aが設けられており、上述したマグネット621が取付部322aに取り付けられて固定されている。マグネット621は、コイル622、623を径方向に横切る磁界が形成されるように、例えば、コイル622、623側がN極、レンズ321側がS極になるように、着磁される。
【0049】
コイル622、623は、基板624上に設けられ、基板624と共に側面部113の内面に取り付けられて固定されている。基板624には、例えば、インサート成形等により側面部113に設けられた配線(図示省略)が接続されており、配線を介して、制御部100からの信号がコイル622、623に入力されて、レンズユニット32が駆動される。このとき、レンズユニット32は、後述するように、付勢部72により支持軸52に付勢され、支持軸52に沿ってY方向に移動する。
【0050】
以上の構成において、コイル622、623へ電力が供給されていないとき(無通電時)には、保持部322は、付勢部72により支持軸52に付勢されて支持されている。コイル622、623へ電力が供給されると(通電時)、コイル622、623に流れる電流とマグネット621の磁界との相互作用により、コイル622、623にローレンツ力が生じる。コイル622、623は、筐体11側である側面部113に固定されているので、生じたローレンツ力により、マグネット621、即ち、レンズユニット32は、Y方向に移動することになる。コイル622、623に流れる電流の向きや大きさを制御することにより、マグネット621を有するレンズユニット32を所望の位置に移動させて、ズームやオートフォーカスを行うことになる。
【0051】
なお、図示は省略しているが、基板624にも、レンズユニット32のY方向の位置を検出する位置検出部が設けられている。制御部100は、位置検出部で検出されたレンズユニット32のY方向の位置に基づいて、コイル622、623に流れる電流の向きや大きさを制御する。位置検出部としては、例えば、位置の検出用のマグネット及び当該マグネットによる磁界を検出するホールセンサー等が用いられる。
【0052】
本実施の形態においては、付勢部72による付勢力への影響を抑制するため、コイル622は、付勢部72による付勢力F2の方向であるX方向に対して、コイル622の巻回軸が傾くよう、基板624と共に側面部113の内面に取り付けられている。同様に、コイル623も、付勢部72による付勢力F2の方向であるX方向に対して、コイル623の巻回軸が傾くよう、基板624と共に側面部113の内面に取り付けられている。つまり、上述したレンズ駆動部61では、マグネット611とコイル612とは、互いの対向する面同士が平行に配置されているが、レンズ駆動部62では、マグネット621とコイル622、623とは、互いの対向する面同士は平行に配置されていない。
【0053】
このように、コイル622の巻回軸が傾くよう、側面部113の内面にコイル622を取り付けるため、側面部113の内面には、平面視で、X方向に対して傾斜する傾斜面113aが形成されている。同様に、コイル623の巻回軸が傾くよう、側面部113の内面にコイル623を取り付けるため、側面部113の内面には、平面視で、X方向に対して傾斜する傾斜面113bが形成されている。このような傾斜面113a、113bに、コイル622、623は、基板624と共に取り付けられている。このような傾斜面113a、113bに取り付ける基板624としては、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit;フレキシブルプリント基板)等を使用可能である。
【0054】
また、ここでは、コイル622及びコイル623は、平面視において、V字状に配置されている。具体的には、平面視において、付勢力F2の方向に沿う方向であって、コイル622とコイル623との間の中心線CLに対して、コイル622及びコイル623の巻回軸が互いに線対称に傾くよう配置されている。そして、コイル622及びコイル623の配置に対応して、傾斜面113a及び傾斜面113bも、中心線CLに対して、互いに線対称になるように(V字状に)形成されている。
【0055】
また、ここでは、コイル622及びコイル623は、平面視において、付勢力F2の方向に対して、レンズユニット32(保持部322)が移動する方向に向かって、コイル622及びコイル623の巻回軸方向が傾くよう配置されている。なお、コイル622及びコイル623は、少なくとも、コイル622及びコイル623によるローレンツ力の方向が、付勢力F2の方向と一致しないよう配置できればよい。
【0056】
また、ここでは、2つのコイル622及びコイル623を設けているが、平面視において、付勢力F2の方向に対して傾くよう配置されていれば、コイルは1つでもよい。
【0057】
また、図示は省略しているが、支持軸52には、レンズユニット32(保持部322)の移動範囲を規制するストッパが設けられている。ストッパは、例えば、取付部322aがコイル622及びコイル623の中央の空洞部分に挿入可能であるが、コイル622及びコイル623や傾斜面113a及び傾斜面113bに接触しないように設置されている。
【0058】
[付勢部]
付勢部71は、レンズユニット33を支持軸51へ付勢し、付勢部72は、レンズユニット32を支持軸52へ付勢する。
【0059】
付勢部71は、レンズユニット33の保持部332の取付部332aに取り付けられたマグネット611と、側面部112の外面側に設けられたヨーク711とを有する。マグネット611は、レンズ駆動部61と付勢部71とで、兼用されている。ヨーク711は、磁性材料からなる部材(本発明における磁性部材)であり、Y方向に延在し、側面部112の外面に取り付けられて固定されている。
【0060】
付勢部71において、マグネット611がヨーク711を磁気吸引することにより、レンズユニット33の保持部332の保持溝332bを支持軸51に付勢力F1で付勢する。これにより、保持部332は、支持軸51に支持され、レンズユニット33の移動時には、レンズユニット33の傾き(チルト)を抑制しつつ、レンズユニット33の安定した動作が可能となる。
【0061】
なお、ここでは、一例として、側面部112のY方向長さの全長に渡って、ヨーク711を延在しているが、ヨーク711は、レンズユニット33の可動域(マグネット611の可動域)に応じた長さに延在するようにしてもよい。
【0062】
付勢部72は、レンズユニット32の保持部322の取付部322aに取り付けられたマグネット621と、側面部113の外面側に設けられたヨーク721とを有する。マグネット621は、レンズ駆動部62と付勢部72とで、兼用されている。ヨーク721は、磁性材料からなる部材(本発明における磁性部材)であり、Y方向に延在し、側面部113の外面に取り付けられて固定されている。
【0063】
付勢部72において、マグネット621がヨーク721を磁気吸引することにより、レンズユニット32の保持部322の保持溝322bを支持軸52に付勢力F2で付勢する。これにより、保持部322は、支持軸52に支持され、レンズユニット32の移動時には、レンズユニット32の傾き(チルト)を抑制しつつ、レンズユニット32の安定した動作が可能となる。
【0064】
このように、付勢部72は、マグネット621及びヨーク721により、レンズユニット32を支持軸52に付勢力F2で付勢する。しかしながら、レンズ駆動部62の駆動時には、レンズ駆動部62によるローレンツ力が、レンズユニット32の移動方向(Y方向)以外に、付勢力F2の付勢方向(X方向)にも発生する。付勢方向の成分のローレンツ力は、レンズユニット32を支持軸52に付勢する付勢力F2を増減させるため、レンズユニット32の移動が不安定になり易い。
【0065】
レンズユニット32は可動域が比較的大きいため、レンズ駆動部62は、レンズユニット32を駆動するため、比較的大きいローレンツ力が必要である。特に、このような場合、付勢方向の成分のローレンツ力が付勢力F2を増減させて、レンズユニット32の移動が不安定になり易い。
【0066】
そのため、本実施の形態では、可動域が比較的大きいレンズ駆動部62において、上述したように、付勢部72による付勢力F2の方向に対して、コイル622、623の巻回軸が傾くよう、コイル622、623を配置している。
【0067】
このように、付勢力F2の方向に対して、コイル622、623の巻回軸が傾くよう、コイル622、623を配置すると、コイル622によるローレンツ力FL2、コイル623によるローレンツ力FL3は、付勢力F2の方向に対して傾く。そのため、ローレンツ力FL2において、付勢力F2の方向の成分の力は、傾けない場合より小さくなり、また、ローレンツ力FL3において、付勢力F2の方向の成分の力も、傾けない場合より小さくなる。その結果、付勢力F2へのレンズ駆動部62によるローレンツ力FL2、FL3からの影響を抑制することができ、レンズユニット32を安定して移動させることができる。
【0068】
一方、本実施の形態では、可動域が比較的小さいレンズ駆動部61においては、付勢力F1に対するローレンツ力FL1の影響が小さい。そのため、上述したように、コイル612の巻回軸が付勢部71による付勢力F1の方向に沿うよう、コイル612を配置している。なお、レンズ駆動部61でも、レンズ駆動部62と同様に、付勢力F1の方向に対して、コイル612の巻回軸が傾くよう、コイル612を配置してもよい。
【0069】
なお、ここでは、一例として、側面部113のY方向長さの全長に渡って、ヨーク721を延在しているが、ヨーク721は、レンズユニット32の可動域(マグネット621の可動域)に応じた長さに延在するようにしてもよい。
【0070】
また、ここでは、保持部322、332側にマグネットを設け、筐体11側にコイルを設けているが、配置を逆にして、保持部322、332側にコイルを設け、筐体11側にマグネットを設けてもよい。この場合、ヨークは、保持部322、332側に配置される。
【0071】
また、ここでは、レンズ駆動部61、62のマグネット611、621を利用してヨーク711、721を磁気吸引しているが、ヨーク711、721を磁気吸引するためのマグネットを別途設けてもよい。その場合、保持部322、332において、当該マグネットをマグネット611、621と異なる位置に配置し、この位置に対応して、ヨーク711、721を配置すればよい。
【0072】
また、ここでは、磁性部材として、ヨークを例示しているが、マグネットに磁気吸引される部材であれば、ヨークに限らない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態のカメラモジュール1は、付勢部72による付勢力F2の方向に対して、レンズ駆動部62のコイル622、623の巻回軸が傾くよう、コイル622、623を配置している。
【0074】
以上のように構成された本実施の形態によれば、コイル622、623によるローレンツ力FL2、FL3が、付勢力F2の方向に対して傾くので、ローレンツ力FL2、FL3の付勢力F2の方向の成分の力も、傾けない場合より小さくなる。その結果、付勢力F2へのレンズ駆動部62によるローレンツ力FL2、FL3からの影響を抑制することができ、レンズユニット32を安定して移動させることができる。
【0075】
[スマートフォン]
カメラモジュール1を備えるカメラ搭載装置として、スマートフォンを例示する。図6A及び図6Bは、本実施の形態に係るカメラモジュール1を搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図6AはスマートフォンMの正面図であり、図6BはスマートフォンMの背面図である。
【0076】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュール1が適用されている。スマートフォンMは、カメラモジュール1が適用された背面カメラOC1、OC2を用いて、無段階光学ズーム及びオートフォーカスを行うことができる。
【0077】
このように、本実施の形態では、カメラモジュール1を備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンMを挙げて説明した。本発明は、スマートフォンMも限らず、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部を有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、ドローン、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器は、例えば、自動車やドローンを含む。
【0078】
[自動車]
カメラモジュール1を備えるカメラ搭載装置として、自動車を例示する。図7A図7Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。図7Aは自動車Vの正面図であり、図7Bは自動車Vの後方斜視図である。
【0079】
自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、本実施の形態に係るカメラモジュール1を搭載する。図7A及び図7Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば、前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用などとして使用される。
【0080】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記実施の形態で説明した各部の形状、サイズ、個数及び材料はあくまで一例であり、適宜変更して実施することができる。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、筐体11において、底部111と側面部112~114とがインサート成形されたものであったが、本発明は、これに限定されず、底部111と側面部112~114とを接着固定するようなものであってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、レンズユニット32及びレンズユニット33で構成される2つの可動レンズを有する構成であったが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の可動レンズを有する構成であってもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、4つのレンズユニットを有する構成であったが、本発明はこれに限定されず、可動レンズを少なくとも2つ有する構成である限り、レンズユニットが何個設けられていてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、駆動制御部、反射駆動制御部及び撮像制御部が別々に設けられていたが、本発明はこれに限定されず、駆動制御部、反射駆動制御部及び撮像制御部の少なくとも2つが1つの制御部で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る光学素子駆動装置及びカメラモジュールは、例えば、スマートフォン、携帯電話機、デジタルカメラ、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、車載カメラ、ドローン等のカメラ搭載装置に搭載して、有用なものである。
【符号の説明】
【0086】
1 カメラモジュール
10 カメラモジュール本体
11 筐体
20 反射駆動部
21 反射筐体
22 ミラー
23 反射駆動制御部
30 レンズ部
31、32、33、34 レンズユニット
40 撮像部
50 支持部
51、52 支持軸
61、62 レンズ駆動部
71、72 付勢部
100 制御部
111 底部
112、113、114 側面部
113a、113b 傾斜面
114a 貫通部
200 撮像制御部
311、321、331、341 レンズ
312、322、332、342 保持部
322a、332a 取付部
322b、332b 保持溝
611、621 マグネット
612、622、623 コイル
613、624 基板
711、721 ヨーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B