(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158933
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表示装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20241031BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241031BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/30 349Z
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074574
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】518411903
【氏名又は名称】Kepler株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100214938
【弁理士】
【氏名又は名称】樋熊 政一
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】坪井 浩尚
【テーマコード(参考)】
2H189
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H189JA10
2H189JA14
2H189LA02
2H189LA20
5C094BA27
5C094BA43
5C094ED12
5C094ED13
5C094FA04
5C094JA08
5C094JA11
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF06
5G435HH03
5G435HH04
5G435HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表示面に表示される木材や石材、紙、油彩画等の絵画、織物等のような表面に微細な凹凸形状を有する物体の画像に対して、観察者がその質感を得ることができ、意匠性を向上できる表示装置、電子機器を提供する。
【解決手段】表示装置は、最も観察者側に、光透過性を有し、かつ、観察者側に不規則な凹凸形状を有する表面層を備える。表面層は、凹凸形状の算術平均粗さRaが10μm以上3000μm以下であり、ヘイズ値が40%以上85%以下である。表示装置は、凹凸形状の最も谷底となる点から表示される画像を形成する画像形成層までの距離が0.3mm以下であり、表面層が積層される面において、この面の法線方向での輝度を基準としたときの法線方向に対して60°をなす方向での輝度の低下率が45%以下である。表示装置は、表示面に入射する外光の明るさ及び色を検知するセンサ部と、画像の明るさ及び色を調整する画像調整部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面に映像を表示する表示装置であって、
前記表示装置は、
最も観察者側に、光透過性を有し、かつ、観察者側に凹凸形状を有する表面層を備え、
前記凹凸形状の算術平均粗さRaが、10μm以上3000μm以下であり、
前記表面層のヘイズ値が、40%以上85%以下であり、
前記表示装置の厚み方向において、前記凹凸形状の最も谷底となる点から表示される画像を形成する画像形成層までの距離が、0.3mm以下であり、
前記表面層が積層される面において、前記面の法線方向での輝度を基準として、前記面の法線方向に対して60°をなす方向での輝度の低下率が45%以下であり、
さらに、前記表示面に入射する外光の明るさ及び色を検知するセンサ部と、
前記センサ部の検知した前記外光の明るさ及び色の情報に基づいて、前記表示装置が表示する画像の明るさ及び色を調整する画像調整部と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記凹凸形状は、その凹部の深さ、凸部の高さ、前記表面層の面方向での凹凸の分布が不規則である、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記凹凸形状の最表面でのヘイズ値は、前記表面層の面方向における分布が不均一である、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示装置に入射した外光の表示装置内部における正射率は、1%以下である、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の表示装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の各種表示装置は、様々な環境や用途で使用されている。また、表示装置の使用される環境と表示する画像情報とを調和させ、画像として表示される物体の質感を、観察者が視認して得られるような画像表示技術についても、提案、実用化されている。
【0003】
例えば、このような技術の1つとして、特許文献1に示すように、表示装置の使用される周辺環境と調和する木目模様等が印刷されたシートに、複数の微細な孔を形成して表示面に配置し、シートの背後から映像を投影する手法が知られている。これにより、特許文献1では、映像を表示しない状態での黒い画面が観察者に視認され、周辺環境との不調和が生じることを抑制し、意匠性の向上を図っている。
また、表示装置の周囲の外光の明るさや色等をセンサ等で検知して、その情報に合わせて表示面に表示する映像の色調等を調整する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前者の方法では映像の解像度が低下してしまい、鮮明な映像の表示が困難であった。また、いずれの手法においても、外光が表示装置の表示面で反射した場合等に、観察者に表示面の平滑な表面形状が認識されてしまい、物体の質感表現が困難であった。特に、表面に微細な凹凸形状を有する石材や木材、紙、織物、油彩画等の物体を画像として表示面に表示した場合には、表示される画像と観察者に視認される表示面の表面形状との間に不調和が生じてしまい、質感の表現が困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、表示面に表示される木材や石材、紙、油彩画等の絵画、織物等のような表面に微細な凹凸形状を有する物体の画像に対して、観察者がその質感を得ることができ、意匠性を向上できる表示装置、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)表示装置は、表示面に映像を表示し、最も観察者側に、光透過性を有し、かつ、観察者側に凹凸形状を有する表面層を備え、前記凹凸形状の算術平均粗さRaが、10μm以上3000μm以下であり、前記表面層のヘイズ値が、40%以上85%以下であり、前記表示装置の厚み方向において、前記凹凸形状の最も谷底となる点から表示される画像を形成する画像形成層までの距離が、0.3mm以下であり、前記表面層が積層される面において、前記面の法線方向での輝度を基準として、前記面の法線方向に対して60°をなす方向での輝度の低下率が45%以下であり、さらに、前記表示面に入射する外光の明るさ及び色を検知するセンサ部と、前記センサ部の検知した前記外光の明るさ及び色の情報に基づいて、前記表示装置が表示する画像の明るさ及び色を調整する画像調整部とを備える。
【0008】
(2)前記凹凸形状は、その凹部の深さ、凸部の高さ、前記表面層の面方向での凹凸の分布が不規則であることが好ましい。
【0009】
(3)前記凹凸形状の最表面でのヘイズ値は、前記表面層の面方向における分布が不均一であることが好ましい。
【0010】
(4)前記表示装置に入射した外光の表示装置内部における正反射率は、1%以下であることが好ましい。
【0011】
(5)電子機器は、上記(1)又は(4)のいずれかの表示装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示装置の表示面に表示される木材や石材、紙、油彩画等の絵画、織物等のような表面に微細な凹凸形状を有する物体の画像に対して、観察者がその質感を得ることができ、意匠性を向上できる表示装置、電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態の電子機器1の使用例の1つを示す図である。
【
図3】実施形態の表示装置10の層構成を説明する図である。
【
図4】実施形態の表示装置10の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態の表面層15の断面の一部を拡大した図である。
【
図8】測定例1,2の表示装置の表示パネル12の出光面12aでの輝度分布を示すグラフである。
【
図9】任意の測定例の表示装置における距離Sを説明する図である。
【
図10】測定例3~28の表示装置での画像の質感の評価結果を示す表である。
【
図11】測定例29~38の表示装置の画像の質感の評価結果を示す表である。
【
図12】凹凸形状の算術平均粗さRa、ヘイズ値、距離Sが好ましい範囲を満たす表面層15を出光面12aの一部に備える表示装置10及び電子機器1の例を示す写真である。
【
図13】他の実施形態1の表面層35の断面の一部を拡大した図である。
【
図14】積層体40の表面の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
また、本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
【0015】
(実施形態)
図1は、本実施形態の電子機器1を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の電子機器1の使用例の1つを示す図である。
本実施形態の電子機器1は、
図1に示すように、映像を表示する表示面10a(画面)を有する表示装置10と、表示装置10を保持する筐体部50と、不図示の入出力部や通信部、電子機器1を制御する不図示の制御部等を備えるタブレット端末である。
入力部は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスであり、受け付けた操作情報を電子機器1の制御部へ出力する。通信部は、通信に関する処理を行うためのモジュールである。電子機器1の制御部は、通信部により、不図示のネットワークを介して、情報の送受信が可能であり、例えば、電子機器1の外部のパーソナルコンピュータ等と通信可能である。
【0016】
電子機器1は、上述したタブレット端末に限らず、スマートフォンや、電子書籍リーダー、デジタルフォトフレーム、絵画やNFT(ノンファンジブルトークン)アートを表示する表示装置、電子教科書等としてもよい。なお、本発明の実施形態としての電子機器1は、これらの例示に限定されない。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の電子機器1は、例えば、木製の板材により形成された壁面60等に埋め込まれ、表示面10aの周囲が木製の板材に囲まれるように配置されている。そのため、観察者には、表示面10aの周囲に壁面60の木材の木目模様が視認されている。
本実施形態では、一例として、電子機器1及び表示装置10は、
図2に示すように、木目模様の上に文字等が描かれた画像を表示する例を挙げて説明する。この画像の木目模様は、表示装置の周囲の壁面の木材の木目模様と調和するものとする。このような表示装置10は、例えば、店舗内の販促広告やメニュー用の表示等に使用され、容易に表示する文字情報等を変えることが可能であるという利点を有している。
また、本実施形態の電子機器1及び表示装置10は、表示面10a(画面)が、矩形形状である例を挙げて説明するが、表示面10aの形状は、これに限定されない。
【0018】
従来の一般的な表示装置や電子機器では、木材の木目模様の上に文字等が描かれた画像を表示しても、観察者には、表示面に表示された平坦な画像として認識されてしまい、周囲の壁面60の木材との調和が得られにくい。
これに対して、本実施形態の表示装置10及び電子機器1は、観察者が表示面10aに表示された画像を視認した場合に、文字等が木材の木目模様の表面に描かれているという質感を得ることができ、周囲の環境とも調和した画像表示を行うことを可能とするものである。
なお、表示装置10及び電子機器1は、木材表面の木目の質感に限らず、石材や紙、油彩画等の絵画、織物等といった表面に凹凸形状を有する物体を表示面10aに表示した際に、観察者がその物体の質感を得ることができる。
【0019】
図3は、本実施形態の表示装置10の層構成を説明する図である。
図4は、本実施形態の表示装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態の表示装置10は、バックライト11と、表示パネル12と、表面層15と、表示制御部20と、記憶部24と、センサ部25とを備える透過型の液晶表示装置(液晶ディスプレイ)である。
図3及び後述する各図において、理解を容易にするために、適宜、表示装置10の厚み方向に平行な方向を矢印d方向として示している。このd方向において、表示装置10の背面側を-d側とし、観察者側を+d側とする。
【0020】
表示装置10は、表示パネル12を背面側からバックライト11で照明し、表示パネル12に形成される映像情報を表示面10aに表示する。
一般的な表示装置では、表示装置の使用用途等にもよるが、画面左右方向については視野角が広く、画面上下方向については視野角が狭いものが多い傾向にある。
これに対して、本実施形態の表示装置10は、画面内における方向によらず視野角が等しく広く、もしくは、視野角の変化が小さく、どの方向から観察しても明るさの変化がない、もしくは、明るさの変化の小さい画像を表示する。
【0021】
バックライト11は、表示パネル12を背面側(-d側)から照明する面光源装置である。本実施形態において、バックライト11は、導光板等を備えるエッジライト型の面光源装置としてもよいし、直下型の面光源装置としてもよい。バックライト11は、汎用のものを使用できる。
【0022】
エッジライト型のバックライトとしては、光源となる複数のLED(light-emitting diode)等と、光源からの光を導光する導光板及び反射膜、導光板からの出射光を拡散する光拡散シート、光の射出方向を制御するプリズムシート、所定の偏光の利用効率を向上する反射型偏光シート等の各種光学シート等を適宜備えるものが知られている。また、直下型のバックライトとしては、光源として出光面に対向する背面側に配列された複数のLED等と、反射膜と、上述のような光拡散シートやプリズムシート、反射型偏光シート等の各種光学シート等を適宜備えるものが知られている。
【0023】
表示パネル12は、透明性の高いガラス板を基板とした板状の部材であり、表示装置10の表示面10aに映像情報を表示する透過型表示部である。なお、表示パネル12は、透明性の高いポリイミドフィルムを基板としたフィルム状の部材としてもよい。
本実施形態の表示パネル12は、不図示の電極層や偏光層や液晶層等を備える透過型の液晶パネルである。この表示パネル12は、液晶層の駆動方式について、VA方式や、IPS方式、FFS方式等、視野角範囲の広い駆動方式を採用することが好ましい。
【0024】
本実施形態の表示装置10では、表示パネル12の出光面12aに表面層15が積層されている。本実施形態の表示装置10は、この出光面12aでの輝度分布が緩やかであり、斜め方向から観察した場合にも正面方向から観察した場合に比べて輝度の低下が小さい、もしくは、輝度低下のない広い視野角特性を有するものが好ましい。表示装置10及び電子機器1の表示面10aにおいて、画面上下方向及び画面左右方向のいずれにおいても、輝度分布が緩やかなランバーシアン分布であることが理想的である。
本実施形態の表示装置10は、出光面12aにおいて、表示面10aの中心となる点A(
図1参照)に相当する点Bでの出光面12aの法線方向の輝度(正面輝度、観察角度0°での輝度)を基準としたときの、点Bにおいて出光面12aの法線方向に対して60°をなす方向での輝度(観察角度60°での輝度)の低下率が、45%以下であるものが好ましい。
【0025】
表面層15は、表示パネル12の出光面12aに積層され、この表示装置10において最も観察者側(+d側)に位置する。表面層15は、出光面12aに一体に積層されてもよいし、透明性が高い不図示の接合層により出光面12aに接合されていてもよい。なお、この接合層は、光拡散性を有するものであってもよい。
表面層15は、フィルム状又はシート状の部材であり、光透過性を有し、観察者側の表面に微細かつ不規則な凹凸形状を有している。この表面層15は、表示装置10の表示面に表示される画像の物体の質感を向上させる機能を有する。
表面層15は、本実施形態のような木材の質感に限らず、石材や紙、油彩画等の絵画、布や編み物、織物等といった、表面に微細かつ不規則な凹凸形状を有する物体の画像に対して、出光面12aに配置することにより、その質感を向上できる。
【0026】
図5は、本実施形態の表面層15の断面の一部を拡大した図である。
本実施形態の表面層15は、基材層151と、凹凸形状層152とを有する。表面層15は、表示パネル12の出光面12aから出射される光を、その凹凸形状等で拡散する。その拡散作用は、指向性を有しない。
【0027】
基材層151は、光透過性を有するシート状又はフィルム状の樹脂製の部材である。この基材層151を形成する樹脂としては、例えば、PC(ポリカーボネート)、MBS(メタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体)、MS(メタクリレート・スチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)、TAC(トリアセチルセルロース)等の熱可塑性樹脂が好適であるが、これに限定されず、他の樹脂を用いてもよい。
基材層151は、厚さが20~100μmのものが好ましく、30~50μmのものがより好ましい。
【0028】
凹凸形状層152は、厚み方向(d方向)において、基材層151の観察者側(+d側)の面に形成され、観察者側の面に微細かつ不規則な凹凸形状を有する層である。この凹凸形状層152は、基材層151の片面に一体に形成されている。
この凹凸形状層152は、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により形成される。また、凹凸形状層152は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0029】
凹凸形状層152の凹凸形状は、その凹凸の大きさ(凸部の高さ、凹部の深さ)や凹凸の位置の分布が不規則であるものが好ましいが、表示画像の物体に応じて、周期性等を有する凹凸形状としてもよい。
また、凹凸形状は、基材層151の片面に紫外線硬化型樹脂等を塗布し、凹凸形状を賦形する成形型を塗膜上に押圧して凹凸形状を賦形(転写)し、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる等により、形成することができる。なお、凹凸形状層152の形成方法は、上記の方法に限らず、適宜選択してよい。また、凹凸形状を形成する成形型は、画像として表示した際に、その質感を向上させたい物体の表面(本実施形態では、木製の板材の表面)から型取りして凹凸形状の逆型を形成してもよい。
【0030】
また、表面層15の凹凸形状は、表示面10aに表示される画像の物体に応じて、好ましい凹凸の断面形状を設定してよく、凹凸の角度や凸部の頂部の鋭角さ等を適宜設定可能である。
凹凸形状は、画像として表示された物体の質感を高める観点から、算術平均粗さRa(JIS B 0601:2001)が、10μm以上3000μm以下であることが好ましい。凹凸形状の算術平均粗さRaが10μm未満である場合、凹凸形状の凹凸が小さく、表面層15の表面が平坦に近くなり、十分に映像光を拡散できず、質感を向上させることができない。また、凹凸形状の算術平均粗さRaが3000μmより大きい場合、凹凸形状の凹凸が大きすぎて画像のぼけが大きくなり、質感を向上させることができない。したがって、凹凸形状の算術平均粗さRaは、上記範囲とすることが好ましい。
この凹凸形状の算術平均粗さRaは、レーザ顕微鏡(キーエンス社製 VK-9710)等を用いて測定可能である。
【0031】
なお、凹凸形状の算術平均粗さRaが上記の好ましい範囲を満たすことにより、表面層15は、画像として表示した物体(木材や石材、紙、織物、絵画等)の質感を向上させることができる。なお、質感を高めたい物体によって、算術平均粗さRaの最適範囲は、異なっている。
【0032】
また、表面層15は、そのヘイズ値が、40%以上85%以下であることが、質感を表現する観点から好ましい。表面層15のヘイズ値は、40%より小さいと、画像として表示される物体の質感が低下する。また、表面層15のヘイズ値は、85%より大きいと、映像のぼけが大きくなり、画像の解像度が低下する。したがって、表面層15のヘイズ値は、上記範囲とすることが好ましい。
このヘイズ値は、JIS K 7136:2000に準拠し、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製 HM-150)を用いて測定可能である。測定の際、平行光は、表面層15の凹凸形状を有しない面側(基材層151側)から入射角度0°で入射させる。
【0033】
なお、表面層15は、上記の例に限らず、以下のような形態としてもよい。
表面層15の凹凸形状層152又は基材層151、もしくはこれらの双方が、光を拡散する拡散材となる粒子を含有していてもよい。
また、表面層15は、基材層151を有しない単層構造としてもよい。
また、表面層15は、その最表面に、微細な凹凸形状に沿って形成された反射抑制層を備えていてもよい。また、表面層15は、紫外線吸収機能、帯電防止機能、防汚機能、ハードコート機能等の少なくとも1つの機能を有する層を備えていてもよい。
【0034】
また、表示パネル12の厚み方向(d方向)において、表面層15の凹凸形状の最も背面側の谷底となる点から表示パネル12内の画像を形成する画像形成層の最も観察者側の面までの距離Sが、0.3mm以下であることが、画像の質感を向上させる観点から好ましい。
画像形成層は、本実施形態のように、表示パネル12が液晶表示パネルである場合には、液晶層である。したがって、本実施形態では、この距離Sは、表示パネル12の液晶層と表面層15との間に位置する部材(すなわち、不図示のCF基板や偏光層等)の厚みを変化させることにより調整可能である。
【0035】
距離Sが、0.3mmより大きいと、画像が表示面となる表示装置10の最表面ではなく、表示パネル12の内部側に位置しているように視認され、所謂、画像の奥行き感が生じてしまい、画像の質感が低下してしまう。したがって、距離Sは、0.3mm以下であることが好ましい。
【0036】
図4を参照しながら、表示制御部20等について説明する。
センサ部25は、電子機器1及び表示装置10の使用環境の光の明るさや色、すなわち、表示面10aに入射する外光の明るさや色を検知し、画像調整部21へ出力する。本実施形態では、センサ部25が、表示装置10の表示面10aの画面中心となる点Aに入射する太陽光や照明光等の外光の明るさや色を検知し、表示制御部20の画像調整部21へ出力する例を挙げて説明する。
このセンサ部25は、例えば、表示装置10の外部に配置された汎用の分光照射光度計等としてもよいし、より小型であってCIE XYZ表色系の三刺激色XYZにより色情報(色度)を出力する環境光センサ等としてもよいし、表示パネル12内に配置された受光素子等としてもよい。
【0037】
なお、センサ部25は、上述の例に限らず、表示面10aの複数の点での外光の明るさや色を検知する形態としてもよい。このとき、表示面10aを複数の領域に区画化し、各領域の中心となる点での外光の明るさや色をセンサ部25が検する形態としてもよい。このとき、例えば、表示面10aを複数の領域に区画化し、表示パネル12内において、各領域の中心となる位置にセンサ部25となる受光素子を配置する形態としてもよい。
また、センサ部25として受光素子を表示パネル12内に配置する場合、例えば、1つの画素回路において、画素電極の近傍に受光素子を配置する形態としてもよい。このとき、表示面10aとなる領域の画素回路すべてに設けてもよいし、選択された複数個所にのみ配置する形態としてもよい。受光素子としては、フォトダイオード等を用いることができる。
【0038】
表示制御部20は、バックライト11及び表示パネル12の駆動等を制御する。表示制御部20は、画像調整部21、電極制御部22、光源制御部23等を有している。この表示制御部20は、CPU(Central Processing Unit)等を用いることができる。
画像調整部21は、センサ部25が検知した外光の明るさや色に基づいて、表示装置10の表示面10aに表示する画像の明るさや色調を調整する。
センサ部25が、表示面10a上の1か所での外光の明るさや色を検知する場合には、画像調整部21は、検知された外光の明るさや色の情報に基づいて、画面に表示する画像全体の明るさや色調を調整する。また、センサ部25が、表示面10a上の複数の点での外光の明るさや色を検知する場合には、画像調整部21は、表示面10a上での外光の明るさ及び色の二次元分布に基づいて、表示する画像の明るさや色を調整してもよい。特に、センサ部25が、各画素に配置される場合には、画像調整部21は、各画素領域における画像の明るさや色を調整してもよい。
【0039】
電極制御部22は、画像調整部21の指示により、表示パネル12の不図示の液晶層を駆動する電極に係る電圧を制御する。
光源制御部23は、画像調整部21の指示により、バックライト11の不図示の光源の明るさ等を制御する。
【0040】
記憶部24は、画像調整部21が、表示面10aに表示する画像の明るさや色調を調整するための処理手順等を定めたコンピュータプログラム又はデータを記憶している。また、記憶部24は、画像調整部21等が処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
記憶部24は、ROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)等のメモリ素子を用いることができる。
本実施形態の表示制御部20は、電子機器1の入力部や通信部を介して、情報等を入力可能である。なお、この例に限らず、表示装置10が、入力部や通信部を備える形態としてもよい。
【0041】
図4等を参照しながら、本実施形態の電子機器1及び表示装置10による画像表示について説明する。
まず、電子機器1の入力部や通信部により、表示面10aに表示する画像が表示制御部20へ出力され、表示装置10の表示制御部20に画像の表示を指示する。例えば、本実施形態では、
図2に示すように、木目模様を有する木材の表面に文字が描かれた画像を選択する。
【0042】
次に、画像調整部21がセンサ部25へ外光の明るさ等を検知するように指示を出す。センサ部25は、表示面10aに入射する外光の明るさと色を検知する。本実施形態では、センサ部25は、表示面10aの幾何学的中心となる点Aに入射する外光の明るさや色を検知する。センサ部25は、検知結果を画像調整部21へ出力する。
画像調整部21は、センサ部25が検知した外光の明るさや色に応じて、表示する画像の明るさや色を調整する。具体的には、画像調整部21は、記憶部24から画像処理に係るプログラムを呼び出し、センサ部25が検知した外光環境下に相当する木材及び文字の明るさや色を、そのプログラムに基づいて算出する。そして、画像調整部21は、算出結果に応じて、明るさや色を調整した画像(以下、調整済み画像という)を生成する。
【0043】
次に、画像調整部21は、調整済み画像に基づいて、表示パネル12の電極制御部22と、バックライト11の光源制御部23へ、表示パネル12の電極の駆動やバックライト11の光源の駆動に必要な情報を出力する。
これにより、表示装置10は、表示面10aに、調整済み画像を表示する。
【0044】
このとき、本実施形態の表面層15は、前述のように、画面に表示される木材や石材、紙、絵画、織物等の画像に対して、観察者がその質感を得ることができ、かつ、その質感を高める効果を有している。さらに、センサ部25及び表示制御部20の画像調整部21等により、表示装置10が置かれた環境の外光の明るさや色に応じた画像を表示装置10が表示でき、画像と周囲の環境との調和をより高めることができる。これらにより、表示装置10及び電子機器1は、周囲の環境と調和し、質感が向上した画像を表示でき、意匠性を高めることができる。
【0045】
(測定例1~38の表示装置による画像の質感の評価)
本実施形態の表示装置10の実施例や比較例に相当する測定例1~38の表示装置を用意し、表示面に表示される質感等を評価した。この測定例1~38の表示装置は、表示パネル12の出光面12aでの輝度分布や、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRa、表面層15の凹凸形状の谷底から画像形成層となる液晶層までの距離S、表面層15のヘイズ値等が異なる。
【0046】
(表示パネルの出光面での輝度分布について)
まず、表示パネル12の出光面12aでの出射光の輝度分布が異なる測定例1,2の表示装置を用意し、その映像の見えについて評価した。
表示パネル12の出光面12aでの出射光の輝度分布とは、出光面12aの中心となる点Bにおける輝度分布である。測定例1,2の表示装置では、一例として、出光面12aに沿って、表示装置の使用状態における画面左右方向に相当する方向(例えば、
図2では表示面10aの長辺に平行な方向)において測定を行った。この点Bは、表示装置の厚み方向から見て、表示面10aの点Aに一致する点である。なお、測定例1,2の表示装置は、いずれも、出光面12aの点Bを通り画面上下方向に平行な方向における輝度分布が、点Bを通り画面左右方向に平行な方向における輝度分布と等しい、もしくは等しいとみなせる程度に差異が小さい。
【0047】
図6は、測定例1の表示装置の構成を示す図である。
図7は、測定例2の表示装置の構成を示す図である。
測定例1の表示装置は、
図6に示すように、表面層15、表示パネル12、バックライト11Bを備えている。測定例2の表示装置は、
図7に示すように、表面層15、表示パネル12、バックライト11を備えている。
測定例1の表示装置と測定例2の表示装置は、バックライト構成する光学部材が一部異なるが、その他は同様の形態である。この測定例1の表示装置は、市販の表示装置(Kingtech社製 PV10109LZR40G)の最表面に表面層15を積層したものに相当する。
【0048】
測定例1,2の表示装置は、いずれも画面サイズが10.1インチである。
測定例1,2の表示装置に用いられる表示パネル12は、厚み方向の背面側(バックライト側)から順に、偏光層121、TFT基板122、液晶層123、CF基板124、光学フィルム(位相差フィルム)125、偏光層126を備えている。この表示パネル12は、IPS方式の液晶表示パネルである。
【0049】
測定例1の表示装置のバックライト11Bは、光源部111、導光板112、反射板113、光拡散シート114、第1プリズムシート115、第2プリズムシート116を備えている。
測定例2の表示装置のバックライト11は、光源部111、導光板112、反射板113、光拡散シート114、ランバート光拡散板117を備えている。
【0050】
光源部111は、光を発する部材であり、導光板112の側面(入光面112a)に沿って等間隔にLEDが複数配置されている。
導光板112は、光源部111の光を入光面112aの反対側の側面112bへ向けて導光する部材である。反射板113は、導光板112から背面側へ出射した光を導光板112側へ反射して戻す部材である。
光拡散シート114は、導光板112から出射した光を拡散して広げる作用を有する光学部材であり、無指向性の拡散作用を有している。
【0051】
測定例1のバックライト11Bに用いられる第1プリズムシート115及び第2プリズムシート116は、観察者側(+d側)の面に、単位プリズムが複数配列された光学シートであり、光拡散シート114を出射した光を単位プリズムによって正面方向へ向ける機能を有している。単位プリズムは、シート面に沿って一方向に延在し、断面形状が二等辺三角形形状であり、長手方向に交差する方向に配列されている。
第1プリズムシート115と第2プリズムシート116とは、表示装置の厚み方向から見て、単位プリズムの配列方向が直交している。本実施形態では、第1プリズムシート115は、単位プリズムの配列方向が画面上下方向であり、第2プリズムシート116は、単位プリズムの配列方向が画面左右方向である。
【0052】
測定例2のバックライト11に用いられるランバート光拡散板117は、入射した平行光を拡散して出射する光学シートであり、出射光の輝度分布がランバーシアン分布となるような拡散シートである。ここでは、ランバート光拡散板117として、拡散透過シート(SphereOptics社製 Zenith Polymer ランバート拡散透過シート SG3201)を用いた。
【0053】
なお、各測定例の表示装置の輝度分布の測定は、各測定例の表示装置において白色画面を表示させ、オートロニック社製のコノスコープを用いて、出光面12aの点Bおいて画面左右方向に-80°から80°まで行った。
【0054】
図8は、測定例1,2の表示装置の表示パネル12の出光面12aでの輝度分布を示すグラフである。
図8に示すグラフでは、縦軸は規格化輝度であり、横軸は観察角度(画面の法線方向に対してなす角度)である。
図8に示すグラフでは、測定例1,2の表示装置において、正面輝度を基準となる1とし、各観察角度での輝度を規格化している。
図8に示すように、測定例1の表示装置では、観察角度が大きくなるにつれて輝度が低下しており、1/2角が25度前後となっている。これに対して、測定例2の表示装置では、観察角度が大きくなっても輝度の低下が小さい。
【0055】
測定例1の表示装置では、観察角度0°での輝度(正面輝度)に対する観察角度60°での輝度の低下率が約83.3%である。一方、測定例2の表示装置では、観察角度0°での輝度(正面輝度)に対する観察角度60°での輝度の低下率が約43.6%である。この輝度低下率は、観察角度+60°での低下率と観察角度-60°低下率との平均値である。
【0056】
この測定例1,2の表示装置において、表示パネル12の出光面12aに表面層15を配置した状態で、実際に画面に同じ木材表面の木目模様の画像を表示して、その見えの質感等を評価した。
測定例1,2の表示装置に用いた表面層15は、凹凸形状の算術平均粗さRaが100μmであり、ヘイズ値が60%である。
測定例1,2の表示装置は、センサ部25として、コニカミノルタ株式会社製の分光放射照度計CL-500Aを用いて、表示面10aの中心となる点Aでの外光の明るさや色を測定し、表示制御部20により画像の明るさや色を調整し、調整済み画像を表示面10aに表示した。
【0057】
表示画像に対する質感の評価において、表示面10aの点Aに入射する外光は、明るさが100lxであり、その色は、CIE色度図におけるxy座標が、x=0.303826、y=0.329804であった。これは、センサ部25(コニカミノルタ社製 分光放射照度計 CL-500A)により測定した。
【0058】
表示画像に対する質感の評価は、明室環境下において、観察者が画面中心となる点Aに対して、表示面10aの法線方向に対して60度をなす方向(観察角度60度)に30cm離れた位置から観察して行った。
【0059】
測定例1,2の表示装置の表示面10aに表示された画像の質感の評価は、以下の通りである。
測定例1の表示装置では、観察角度が大きくなると、画像の明るさが大きく低下し、観察角度による画像の明るさの変化が急激であった。そのため、測定例1の表示装置では、観察者は、視認した表示画像に対して木材の表面の質感を得られにくかった。
【0060】
一方、測定例2の表示装置では、観察角度による画像の明るさの変化が小さく、観察角度に依らず画像を観察することができた。また、観察者は、視認した表示画像に対して木材の表面の質感を十分に得ることができ、文字についても板材に描かれたものとして認識できた。
【0061】
なお、測定例2の表示装置において、一部の表面層15を除去した状態で観察したところ、表面層15のない部分は、外光等の反射が視認され、表示面の平坦な面が視認され、木目としての質感の認識は得られにくかった。
【0062】
(凹凸形状の算術平均粗さRa、距離Sに関して)
次に、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRa、及び、凹凸形状の最も谷底となる点(凹凸形状の最も背面側(-d側)となる点)と液晶層123の最も観察者側(+d側)となる点との距離Sが異なる測定例3~28の表示装置を用意し、これらの表示面10aに表示される画像の質感に関して評価した。
【0063】
測定例3~28の表示装置は、測定例2と同様の表示パネル12、バックライト11を備えるが、距離S、算術平均粗さRaが異なる。
この評価においても、センサ部25により、各測定例の表示装置は、表示面10aの点Aでの外光の明るさや色を検知し、表示制御部20により明るさや色の調整を行った画像を表示した。また、各測定例の表示装置の表示画像に対する観察位置や外光の条件等は、前述の通りである。
【0064】
図9は、任意の測定例の表示装置における距離Sを説明する図である。
図9では、任意の測定例の表示装置の厚み方向(d方向)に平行な断面の一部を拡大して示している。
距離Sは、測定例3~28の表示装置では、
図9に示すように、表面層15の凹凸形状の最も背面側の谷底となる点から液晶層123の最も観察者側の面までの距離である。この距離Sは、液晶層123と表面層15との間の部材、すなわち、CF基板124と光学シート125と偏光層126の厚み等を変化させることにより調整可能である。
【0065】
また、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaは、5μm、8μm、10μm、3000μm、7000μmの5例を用意した。また、距離Sは、0.15mm、0.20mm、0.25mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmの6例を用意した。
また、この測定例3~28の表示装置では、表面層15の凹凸形状層152が光を拡散する拡散材(積水化学工業株式会社製 ミクロパール 平均粒径10μm)を含有しており、凹凸形状の算術平均粗さRaによらず、どの表面層15もヘイズ値が略60%となるように調整している。
【0066】
図10は、測定例3~28の表示装置での画像の質感の評価結果を示す表である。
図10に示す表の「質感の評価」において、画像を目視した観察者が質感を得られたものを良として〇で示し、質感が得られにくかったものを不可として×で示している。
図10の表に示すように、凹凸形状の算術平均粗さRaが大きくなるほど、映像のぼけが大きくなり、物体としての質感が得られなかった。また、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaが10μ未満となる5μmや8μmである場合には、凹凸形状が小さすぎ、画像に表示される物体の表面のざらつき感が視認されず、観察者が画像に対して質感を得られなかった。
【0067】
また、距離Sが大きくなるほど、画像の奥行感(画像が表示面よりも表示パネル12の内側に、すなわち、画面の奥に表示されているように感じられる状態)が大きくなり、物体の質感が得られにくかった。
例えば、距離Sを0.3mmや、それより小さい0.25mm、0.20mm、0.15mmとした場合、凹凸形状の算術平均粗さRaが10μm,3000μmであるときは、奥行感が抑制され、画像の質感が得られた。しかし、算術平均粗さRaが7000μmであるときは、距離Sの値に依らず、画像のぼけが大きくなり、画像の質感が得られにくかった。
【0068】
以上のことから、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaが10μm以上3000μm以下であることにより、画像中の物体の質感を向上させることができる。また、距離Sを0.3mm以下とすることにより、画像の奥行感を抑制し、画像中の物体の質感を向上させることができる。
【0069】
(表面層15のヘイズ値に関して)
次に、表面層15のヘイズ値と凹凸形状の算術平均粗さが異なる測定例29~38の表示装置を用意し、同様に、画像の質感を評価した。
測定例29~38の表示装置は、測定例2と同様の表示パネル12、バックライト11を備えるが、表面層15のヘイズ値と凹凸形状の算術平均粗さRaが異なる。また、測定例29~38の表示装置は、距離Sが0.25mmである点が共通している。
【0070】
測定例29~33の表示装置は、凹凸形状の算術平均粗さRaが10μmである点は共通するが、ヘイズ値がそれぞれ90%、85%、60%、40%、25%であり、異なっている。測定例34~38の表示装置は、算術平均粗さRaが3000μmである点は共通するが、ヘイズ値がそれぞれ90%、85%、60%、40%、25%であり、異なっている。
測定例29~38の表示装置では、表面層15の凹凸形状層152が光を拡散する拡散材(積水化学工業株式会社製 ミクロパール 平均粒径10μm)を含有しており、その含有量を調整することにより、表面層15のヘイズ値を調整している。
【0071】
この評価においても、センサ部25により、各測定例の表示装置は、表示面10aの点Aでの外光の明るさや色を検知し、表示制御部20により明るさや色の調整を行った画像を表示した。また、各測定例の表示装置の表示画像に対する観察位置や外光の条件等は、前述の通りである。
【0072】
図11は、測定例29~38の表示装置の画像の質感の評価結果を示す表である。
図11に示す表の「質感の評価」において、画像を目視した観察者が十分な質感を得られたものを優として◎で示し、質感が得られたが優にくらべて質感が低下しているものを良として〇で示した。なお、評価時における表示面10aに対する観察者の観察位置や、周囲の環境光等は、前述の通りである。
図11の表に示すように、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaが大きくなるほど、物体の質感を得るためには、高いヘイズ値が必要となることが分かった。
例えば、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaが3000μmである場合、表面層15のヘイズ値が40~85%であれば、表示された画像中の物体に対して質感が得られ、特に、表面層15のヘイズ値が85%である場合に、より高い質感が得られた。これに対して、表面層15の凹凸形状の算術平均粗さRaが10μmである場合には、ヘイズ値が40%であっても高い質感が得られた。
【0073】
表面層15のヘイズ値が40%未満である場合、表面層15の透明性が高くなるため、画像の奥行感が大きくなり、表面層15のヘイズ値が40~85%である場合よりも、画像の質感が低下した。また、表面層15のヘイズ値が85%よりも大きい場合、画像の奥行感は低減されるが、表面層15のヘイズ値が40~85%である場合に比べて、画像のぼけが大きくなりすぎ、観察者にとって画像としての認識が強くなり、物体の質感が低下した。
よって、表面層15のヘイズ値は、40%以上85%以下とすることが好ましい。
【0074】
以上のことから、表示面10aに表示された画像に対して観察者が質感を得るためには、以下の条件を満たす表示装置10、及び、これを備える電子機器1とすることが好ましい。
表示装置10は、最も観察者側(+d側)となる位置に、観察者側に不規則な凹凸形状を有する表面層15を備え、その凹凸形状の算術平均粗さRaが10μm以上3000μm以下であり、表面層15のヘイズ値が40%以上85%以下であり、表示装置10の厚み方向において、凹凸形状の最も背面側の谷底となる点から画像形成層(本実施形態では、液晶層)の最も観察者側の面までの距離Sが、0.3mm以下であり、表面層15が積層される面(本実施形態では、表示パネル12の出光面)において、観察角度0°の輝度(正面輝度)に対する観察角度60°での輝度の低下率が45%以下であることが好ましい。また、この表示装置10は、さらに、表示面10aに入射する外光の明るさ及び色を検知するセンサ部25と、センサ部25の検知した外光の明るさ及び色の情報に基づいて、表示装置10が表示する画像の明るさ及び色を調整する画像調整部21と、を備えることが好ましい。
これにより、表示装置10は、周囲の外光の明るさや色に応じた画像の明るさ及び色であり、かつ、画像に表示される物体の質感が得られる画像を表示できる。
【0075】
図12は、凹凸形状の算術平均粗さRa、ヘイズ値、距離Sが好ましい範囲を満たす表面層15を出光面12aの一部に備える表示装置10及び電子機器1の実施例を示す写真である。
この
図12に示す実施例の表示装置10及び電子機器1は、測定例2の表示装置で用いたバックライト11及び表示パネル12を用いており、
図12では、その出光面12aの一部に表面層15を配置した状態を示している。また、このとき、センサ部25や画像調整部21等により、表示画像の明るさや色の調整が行われている。実施例の表示装置10の表示面に表示される画像は、茶系色の木材の木目模様の上に「Kepler」という文字が白茶色の塗料で書かれた画像であり、ちょうど文字が表示される領域に表面層15を配置している。また、
図12に示す写真は、室内の白色光の照明環境下(100lx)で、出光面12aの法線方向に対して60°方向から撮影している。
【0076】
この
図12に示す表面層15は、そのヘイズ値が50%であり、凹凸形状の算術平均粗さが100μmである。また、この
図12に示す実施例の表示装置10は、距離Sが0.3mmであり、観察角度0°方向での輝度を基準とした場合の観察角度60°方向での輝度の低下率が43.65%である。
【0077】
図12に示すように、表面層15を配置していない箇所では、照明光の反射等により、表示面となる出光面12aの平滑さが観察者に視認され、木材の質感が得られなかった。しかし、表面層15を配置した領域は、木材としての質感が大きく向上しており、木材の木目模様の上に文字が描かれているように観察された。
【0078】
(他の実施形態1)
表面層15の凹凸形状は、質感を向上させたい物体(木目、紙、織物、石材等)の表面の凹凸形状に合わせて、その凹凸の傾斜面の角度や凹凸の分布等を調整するととともに、凹凸形状の最表面におけるヘイズ値の分布を調整することにより、質感をさらに向上させることができる。すなわち、表面層を平面視した場合に、ヘイズ値の二次元分布を、凹凸形状に合わせて調整することが、質感のさらなる向上の観点から好ましい。
【0079】
図13は、他の実施形態1の表面層35の断面の一部を拡大した図である。
図13では、表面層35の厚み方向に平行な断面の一部を拡大して示している。
この他の実施形態1の表面層35は、前述の実施形態の表面層15と同様に、表示パネル12の出光面12a上に配置される。表面層35は、基材層151と凹凸形状層352とを備える。基材層151は、前述の実施形態の表面層15の基材層151と同様である。凹凸形状層352は、前述の実施形態の凹凸形状層152と同様であるが、その凹凸形状の最表面でのヘイズ値の分布等が異なっている。
【0080】
表面層35は、その面方向におけるヘイズ値の分布が不均一である。具体的には、表面層35の凹凸形状の最表面におけるヘイズ値は、表面層35の面方向における二次分布が不均一である。この不均一なヘイズ値の分布は、不規則な凹凸形状の凹凸に追従している。また、凹凸形状の最表面において、凸部352aのヘイズ値は、凹部352bよりもヘイズ値よりも小さい。また、表面層35の凹凸形状は、凸部352a及び凹部352bを複数備えているが、各凸部352aと各凹部352bにおいて、その表面でのヘイズ値が異なっている。したがって、表面層35を平面視した場合、表面層35としてのヘイズ値は、表面層35の面方向において、凹凸形状の分布に対応した二次元分布を有し、かつ、その値が不均一な分布となっている。
この他の実施形態1の表面層35は、凹凸形状層352が木目を模した凹凸形状を有しており、さらに、凸部352aの表面でのヘイズ値は、凹部352bの表面でのヘイズ値よりも小さく形成されている。
【0081】
このような形態の表面層35とすることにより、太陽光や照明光等の外光が表面層35に照射された時に、凹凸形状の凸部352aとなる領域の正反射率が高く、凹部352bとなる領域の正反射率が低くなる。
これにより、観察者が表示装置の表示面を外光の正反射方向となる方向から観察した場合に、凸部352aに相当する領域が、凹部352bに相当する領域よりも明るく視認され、観察者がより鮮明に凹凸形状を視認することができる。これにより、観察者は、表示面に表示された物体に対して、その質感をより強く得ることができる。
【0082】
凹凸形状の最表面でのヘイズ値は、凹凸形状よりも小さい粒径の粒子353を含んだ樹脂354を凹凸形状の表面に塗布する等により、付与できる。また、凹凸形状に合わせて、塗布する粒子353の量を制御することで、表面層35の面方向におけるヘイズ値の二次元分布を制御できる。
【0083】
このような粒子353としては、プラスチックビーズが好適であり、スチレンビーズ、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。また、粒子353及びこれを含有する樹脂354は、光透過性を有していることが好ましい。また、粒子353として使用されるプラスチックビーズとしては、表面に疎水性基を有したものが好ましい。
粒子353と樹脂354との屈折率比(粒子353の屈折率/樹脂354の屈折率)は、1.0~1.1とすることが好ましい。
【0084】
図13に示すように、粒子353は、樹脂354に被覆されている形態としてもよいし、粒子353は、その一部が樹脂354の層から突出した形態としてもよい。
また、粒子353は、2種類以上の粒子を用いてもよい。例えば、2種類の粒子を用いる場合、その平均粒径や、形状、材料、樹脂354との屈折率比等のうち1つ以上が異なるものを使用することが好ましい。
なお、このような形態においても、表面層35の総ヘイズ値は、40%以上85%以下の範囲内であることが好ましい。
【0085】
(ヘイズ値の分布の有無に関する評価)
凹凸形状の凸部352aの表面と凹部352bの表面のヘイズ値が異なる表面層35の実施例となるサンプルAと、そのようなヘイズ値の差異がない表面層15の実施例となるサンプルBとを用意し、実際に見えの質感を評価した。
サンプルBは、表面に凹凸形状を有しているが、凹凸形状に応じたヘイズ値の分布を有していない。サンプルAは、サンプルBと同様の凹凸形状を有し、さらに、凹凸形状の最表面に粒子353を含有する樹脂354が塗布され、凹凸形状の凸部352aの表面のヘイズ値が、凹部352bの表面のヘイズ値よりも小さい。
サンプルA,Bは、いずれも、木目模様を模した凹凸形状を有しており、木目の画像に対してその木目の質感を向上させる作用を有する。
【0086】
質感の評価は、以下のような条件で行った。
透明なガラス板の上に、2枚の直線偏光板を、その偏光方向が直交するように積層し、さらにその上に、サンプルA,Bを隣接させて載置した積層体40を作成した。この積層体40に対して、外光となる照明光を照射し、観察者がサンプルA,Bが設けられた領域の質感を観察して評価した。照明光照射時において、積層体40の表面の中心における照度は、100lxである。
【0087】
図14は、積層体40の表面の様子を示す写真である。
図14において、主たる外光となる照明光は、積層体40の表面に対して入射角度40度で入射しており、
図14では、その照明光の正反射方向から観察した様子を示している。
ガラス板に2枚の直線偏光板が積層されている領域上であって表面層を設けていない領域403は、2枚の偏光板が直交配置されているので、黒色を呈しているが、
図14に示すように、照明光の反射により、白っぽく視認されている。
【0088】
ガラス板に2枚の直線偏光板が積層されている領域上であって表面層15の実施例に相当するサンプルBが設けられた領域402は、表面層を設けていない領域403に比べて、照明光の反射が抑制されており、暗く視認された。また、サンプルBが設けられた領域402は、凹凸形状による木目模様が視認され、木目の質感が得られているが、外光の一部が凹凸形状の表面で一様に正反射しており、後述する領域401よりもやや明るく観察された。
【0089】
これに対して、ガラス板に2枚の直線偏光板が積層されている領域上であって表面層35の実施例に相当するサンプルAが設けられた領域401では、凹凸形状の最表面に設けられた粒子353の光拡散作用により、木材の表面らしいマットな質感がより高くなった。また、この領域401では、凸部352aが明るく、凹部352bが暗く視認され、木目模様に沿ってその明るさが変化している様子が視認され、木目の質感がより高く再現されていた。したがって、サンプルAが設けられた領域Aでは、サンプルBが設けられた領域402よりも、木目の質感が高かった。
【0090】
以上のことから、表面層35の凹凸形状の最表面でのヘイズ値は、表面層35の面方向における分布が不均一であることが好ましい。また、表面層35は、その凹凸形状の最表面において、凸部352aのヘイズ値が凹部352bよりもヘイズ値よりも小さいことが好ましい。
【0091】
(他の実施形態2)
さらに、本実施形態の表示装置10のような液晶表示装置では、画像表示に用いる表示パネル12に外光が入射すると、表示パネル12の最表面だけでなく、表示パネル12の内部においても一部の外光が反射する。そして、この反射光が観察者に届くと、ぎらつきとして認識されてしまい、表示面10aに表示した物体の質感が低下する。したがって、表示装置10内部での外光の反射率、本実施形態の表示装置10では、特に、表示パネル12内部での外光の正反射率が、1%以下であることが望ましい。
【0092】
このような表示パネル12は、一例として、液晶層の観察者側に設けられる従来の偏光板に替わって、円偏光板を液晶層の観察者側に用いることにより、実現可能である。
上述のような他の実施形態2に示した表示装置とすることにより、表示面に表示された物体の画像を観察する観察者が、物体の質感をより強く得ることができる。
【0093】
(表示装置内部での外光の反射率に関する評価)
以下のような積層体70を用意し、表示装置内部での外光の反射率による、表面層による質感向上効果を評価した。
図15は、積層体70の層構成を説明する図である。
図15では、理解を容易にするために、外光Lの拡散や屈折等は省略して示している。
積層体70は、鏡71の上に、2枚の直線偏光板72,73を積層し、さらにその上に表面層15を載置したものである。この表面層15は、木目模様の再現に適した凹凸形状を有しており、木目模様の質感を向上させる機能を有する。また、2枚の直線偏光板72,73は、偏光方向の交差角度を調整でき、これにより、積層体70内での外光の正反射率を調整できる。
外光L(照明光)は、この積層体70の表面層15の面方向に対して、入射角度60度で入射するように照射される。表面層15の表面の中心において、その照度は100lxである。
【0094】
外光の正反射率については、積層体70から表面層15を外した状態で、分光放射計(トプコンテクノハウス社製 SR-UL1)を用いて行った。具体的には、測定用の光を直線偏光板73の表面に入射角度5度で入射させ、反射角度5度で正反射した反射光を分光放射計が測定し、正反射率を算出した。また、観察者は、表面層15の面方向の法線方向に対して60度をなす方向から質感を観察して評価した。
【0095】
積層体70において外光の正反射率が1%の場合、鏡71での反射光が低減され、表面層15による木目模様の質感が十分に得られた。
積層体70において正反射率が1.5%の場合、鏡71での反射光が視認され、表面層15による木目模様の質感は得られたが、正反射率1%の場合よりも低下した。
積層体70において正反射率が2%の場合、鏡71での反射光が非常に強く視認され、表面層15による木目模様の質感が得られなかった。
【0096】
以上のことから、表示装置10内部での外光の反射率、本実施形態の表示装置10では、特に表示パネル12内部での外光の正反射率が、1%以下であることが望ましい。
【0097】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0098】
(1)表示装置10は、液晶表示装置である例を挙げたが、これに限らず、プラズマディスプレイや、有機ELディスプレイ等としてもよい。
プラズマディスプレイとする場合、距離Sは、表面層15の凹凸形状の谷底となる点からディスプレイ内部の蛍光体の観察者側の面までの距離である。また、有機ELディスプレイとする場合、距離Sは、表面層15の凹凸形状の谷底となる点からディスプレイ内部の有機EL材料層の観察者側の面までの距離である。
また、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイの場合においても、表示装置内部での外光の正反射率が1%以下であることが好ましい。
【0099】
(2)表示装置10は、例えば、自動車のインストルメントパネルや、車両や船舶等の内装等に配置してもよい。
【0100】
上記実施形態及び変形例に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
表示面に映像を表示する表示装置であって、前記表示装置は、最も観察者側に、光透過性を有し、かつ、観察者側に凹凸形状を有する表面層を備え、前記凹凸形状の算術平均粗さRaが、10μm以上3000μm以下であり、前記表面層のヘイズ値が、40%以上85%以下であり、前記表示装置の厚み方向において、前記凹凸形状の最も谷底となる点から表示される画像を形成する画像形成層までの距離が、0.3mm以下であり、前記表面層が積層される面において、前記面の法線方向での輝度を基準として、前記面の法線方向に対して60°をなす方向での輝度の低下率が45%以下である。
【0101】
(付記2)
表示装置は、前記表示面に入射する外光の明るさ及び色を検知するセンサ部と、前記センサ部の検知した前記外光の明るさ及び色の情報に基づいて、表示する画像の明るさ及び色を調整する画像調整部と、を備える、付記1に記載の表示装置。
【0102】
(付記3)
前記凹凸形状は、その凹部の深さ、凸部の高さ、前記表面層の面方向での凹凸の分布が不規則である、付記1に記載の表示装置。
【0103】
(付記4)
前記凹凸形状の最表面でのヘイズ値は、前記表面層の面方向における分布が不均一である、付記1に記載の表示装置。
【0104】
(付記5)
前記表示装置に入射した外光の表示装置内部における正反射率が1%以下である、付記1に記載の表示装置。
【0105】
(付記6)
付記1から付記5までのいずれかの表示装置を備える電子機器。
【0106】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0107】
1 電子機器
10 表示装置
11 バックライト
12 表示パネル
15 表面層
151 基材層
152 凹凸形状層
20 表示制御部
21 画像調整部
22 電極制御部
23 光源制御部
24 記憶部
25 センサ部