(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158938
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用吸気構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20241031BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20241031BHJP
B60K 13/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F02M35/10 301W
F02M35/16 S
B60K13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074583
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 弘記
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038BA03
3D038BB03
3D038BC05
3D038BC15
(57)【要約】
【課題】吸気ダクトの空気取り込み口内の水が動力源等の車両の機器の側へ吸引されることを抑制できるようにした車両用吸気構造を提供する。
【解決手段】車両の吸気ダクト3を介して前記車両の部品へ空気を供給する車両用吸気構造において、吸気ダクト3は、外部の空気を取り込む空気取込部33と、空気取込部から下方に延びる吸気ダクト本体とを備え、空気取込部33は、車両の側面側または前後面側に開口した開口部と、開口部から吸引した空気が通過する際に当該空気に含まれた液体を下方へ分離する気液分離部と、気液分離部を通過した空気が吸気ダクト本体へ流れる下流側に位置する空気出口部33dとを備え、気液分離部を挟んで開口部と対向する空気取込部33の内側面に、空気出口部33dに向かって下方に傾斜した段状部38が形成されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の吸気ダクトを介して前記車両の機器へ空気を供給する車両用吸気構造において、
前記吸気ダクトは、外部の空気を取り込む空気取込部と、前記空気取込部から下方に延びる吸気ダクト本体とを備え、
前記空気取込部は、前記車両の側面側または前後面側に開口した開口部と、前記開口部から吸引した空気が通過する際に当該空気に含まれた液体を下方へ分離する気液分離部と、前記気液分離部を通過した空気が前記吸気ダクト本体へ流れる下流側で前記空気取込部の内部空間の上部に位置する空気出口部と、を備え、
前記気液分離部を挟んで前記開口部と対向する前記空気取込部の内側面に、前記空気出口部よりも下方に向かって傾斜した段状部が形成されている
ことを特徴とする車両用吸気構造。
【請求項2】
前記段状部は、前記空気出口部に向かうにつれて下方への傾斜が緩やかになっている
ことを特徴とする請求項1に記載された車両用吸気構造。
【請求項3】
前記段状部の上流側の最上部が前記空気出口部の最下部と略同一の高さ位置にある
ことを特徴とする請求項2に記載された車両用吸気構造。
【請求項4】
前記空気取込部の外側面に、前記空気出口部の方向に向かって下方に傾斜した外部段状部が形成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載された車両用吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の吸気ダクトを介して車両の機器へ空気を供給する車両用吸気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラックなどの車両において、内燃機関をはじめとした動力源や動力源に係る装置へ空気を送り込む吸気ダクトの空気取込部(以下、ルーフダクトともいう)をキャブのルーフの上に備えることがある。例えば特許文献1には、キャブのルーフ上にルーフダクトが配置された車両に関する発明が開示されている。
【0003】
このように、ルーフ上という地上から高い位置にルーフダクトを設けることにより、地上付近の塵などを吸気することを抑制でき、より清浄な空気を取り込むことができる。また、例えば内燃機関などの熱源となる機器に空気を送り込むルーフダクトの場合、動力源等は通常キャブの下方に備えられるので、地上から高い位置にルーフダクトを設けることにより、空気の取り込みに関して熱源の影響を受け難くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、雨天時などにおいてルーフダクトが雨などの水を吸い込んでしまうことがある。そこで、ルーフダクトの下面などに、吸い込んだ水を排出するための排水口が設けられているが、吸引力によっては、吸い込んだ水がこの排水口に流れず内燃機関側へ吸引されてしまう虞がある。
【0006】
本件は、このような課題に着目して創案されたもので、吸気ダクトの空気取込部内の雨水等が動力源等の車両の機器の側へ吸引されることを抑制できるようにした車両用吸気構造を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る車両用吸気構造は、車両の吸気ダクトを介して前記車両の機器へ空気を供給する車両用吸気構造において、前記吸気ダクトは、外部の空気を取り込む空気取込部と、前記空気取込部から下方に延びる吸気ダクト本体とを備え、前記空気取込部は、前記車両の側面側または前後面側に開口した開口部と、前記開口部から吸引した空気が通過する際に当該空気に含まれた液体を下方へ分離する気液分離部と、前記気液分離部を通過した空気が前記吸気ダクト本体へ流れる下流側で前記空気取込部の内部空間の上部に位置する空気出口部と、を備え、前記気液分離部を挟んで前記開口部と対向する前記空気取込部の内側面に、前記空気出口部よりも下方に向かって傾斜した段状部が形成されている。
【0008】
本適用例によれば、空気取込部に取り込まれた外部の空気に含まれた液体(雨水等)は、段状部に沿う方向に、つまり、空気出口部よりも下方に案内されて、下方へ分離されるようになり、空気出口部から車両の機器への液体の吸い込みが抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、空気取込部に取り込まれた外部の空気に含まれた液体(雨水等)の車両の機器への吸い込みが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る車両用吸気構造を備えた車両のルーフ部の吸気ダクト配設側(車両右側)の側面図である。
【
図2】
図1に示す車両のルーフ部を吸気ダクト配設側(車両右側)で前側上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示す車両のルーフ部を吸気ダクト配設側(車両右側)で後側上方から見た要部斜視図であり、(a)は吸気ダクトを取り外した状態を示し、(b)は吸気ダクトを取り付けた状態を示す。
【
図4】一実施形態に係る車両用吸気構造の吸気ダクトの空気取込部の分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す空気取込部の外観を示す斜視図である。
【
図6】
図1,
図2に示す車両のルーフ部の要部(吸気ダクト配設側)の断面図(
図2のA-A矢視断面図)である。
【
図7】
図4に示す空気取込部に備えられる吸気ガイド部材(気液分離部)を外側から見た斜視図である。
【
図8】
図7に示す吸気ガイド部材の端面図(
図7のB方向矢視図)であり、
図8中の太線は断面を示す。
【
図9】
図7に示す吸気ガイド部材の上面図(
図7のC方向矢視図)である。
【
図10】
図7に示す吸気ガイド部材の下面図(
図7のD方向矢視図)である。
【
図11】
図7に示す吸気ガイド部材を内側斜め後方から見た斜視図である。
【
図12】
図7に示す吸気ガイド部材を内側斜め前方から見た斜視図である。
【
図13】
図4に示す空気取込部に形成される段状部を示す概略図であり、空気取込部を車両の内方から外方へ見た状態を示すもので、(a)は本実施形態のものを示し、(b)はその変形例のものを示している。
【
図14】
図4に示す空気取込部に形成される段状部を示す図であり、空気取込部を車両の内方から外方へ見た状態を示す。
【
図15】
図14に示す空気取込部の断面図であり、(a)は
図14のA-A矢視断面図、(b)はは
図14のB-B矢視断面図である。
【
図18】
図4に示す空気取込部における走行中の吸気の流速分布のシミュレーション結果の一例を示す空気取込部の水平断面図である。
【
図19】
図4に示す空気取込部における走行中の吸気の流速分布のシミュレーション結果の一例を示す空気取込部の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.装置構成]
本実施形態では、車両としてトラックを例示して説明する。
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方FRとし、その反対方向(車両の後退方向)を後方RRとし、車両が前方FRを向いた状態を基準にして左右(左方LH及び右方RH)を定める。また、前後方向を車長方向ともいい、左右方向を車幅方向ともいう。さらに、車長方向と車幅方向とのいずれにも直交する方向を上下方向(上方UP及び下方DW)という。車両は、水平な路面上にあり、上下方向が鉛直方向と一致する(下方向が重力の作用方向と一致する)姿勢であるものとする。この姿勢で、鉛直上方を高さ方向とする。
【0013】
[1-1.キャブ]
図1,
図2に示すように、車両1はいわゆるキャブオーバー型であって、車両1の前部にキャブ2が設けられており、キャブ2の下方DWには図示しないエンジンが搭載されている。本実施形態の車両1は右ハンドル車であって、キャブ2内の右側に図示しない運転席が設けられている。キャブ2の左右両側面部(以下、キャブ側面とも言う)2Sにはそれぞれ、乗降用のドア21が設けられている。なお、本実施形態では、車両の右側に、動力源(動力装置)としてのエンジン(内燃機関)へ空気を送り込む吸気ダクト3が備えられている。
図1,
図2では、吸気ダクト3が備えられた車両右側の側面部2S及びドア21のみを示す。吸気ダクト3の右方RHは車両の外側に相当し、吸気ダクト3の左方LHは車両の内側に相当する。
【0014】
また、車両1は、キャブ2の上面のルーフ部22が一般的なルーフ(以下、「通常ルーフ」ともいう)よりも高い所謂ハイルーフに比べてさらに高いハイルーフ車(以下、スーパハイルーフ車と言う)として形成されている。スーパハイルーフ車は、キャブ2の内部に高い車室内空間を確保できるため、車室内の居住性が高まり、大型トラックなどでは長距離移動時にドライバ等が車室で仮眠など休息する場合があり、この際の快適性を向上させることができる。
【0015】
ルーフ部22は、ルーフの前部及びルーフ頂部を構成する中央パネル22aと、ルーフの右側部を構成する側部パネル22bと,ルーフの左側部を構成する側部パネル22cとを備え、中央パネル22aの右側縁に側部パネル22bが、中央パネル22aの左側縁に側部パネル22cがそれぞれ溶接され形成されている。なお、ルーフ部22の内側には、図示しない骨格部材が装備され、ルーフ部22を支持している。
【0016】
また、通常ルーフのトラックでは、荷箱がルーフ部よりも高いため、荷箱前面のルーフ部よりも高い部分は、走行風をまともに受けて空気抵抗が大きくなる。このため、キャブの上部にドラッグフォイラー(エアデフレクター)を装着することにより、空気抵抗を減らして燃費の悪化を抑制していた。一方、スーパハイルーフ車の場合、キャブでは荷箱などの架装(バンなど)の高さと同程度までルーフ部が高くなるため、ルーフ部を利用して、空気抵抗を軽減することができる。
【0017】
[1-2.吸気ダクト及びルーフ構造]
このような車両1は、動力源(動力装置)としてのエンジン(内燃機関)へ空気を送り込む吸気ダクト3をルーフ部22の上側に備えている。吸気ダクト3は、キャブ2のルーフ部22に設置された空気取込部(又は、吸気取入部、以下、シュノーケルとも言う)31と、キャブ2の後面2Bに沿って配設されたダクト部(吸気ダクト本体)32とを備えている。
【0018】
シュノーケル31は、大気中から空気を取り込むための取り入れ口であり、中空形状であって、ダクト部32と連通し車両1の側方に向いた吸気開口部34(
図4,
図6参照、以下、単に、「開口部34」とも言う)を備えたヘッド部(以下、シュノーケル本体とも言う)33と、
図5に示すように、シュノーケル本体33を覆うように装着され、ルーフ部22の外面の一部を形成するカバー部(以下、シュノーケルカバーとも言う)35とを備えている。
【0019】
シュノーケル本体33は、本実施形態では樹脂製の箱体で形成されており、車両1の側方を向いた面(右側面)に向いた開口部34が設けられている。
シュノーケルカバー35は、本実施形態では横断面がL字形状に形成された樹脂製のパネルからなるカバー部材であり、シュノーケル本体33の右側面に装着される側面カバー部35a(
図4,
図6参照)と、シュノーケル本体33の上面の一部及び後面に装着される上面カバー部35bとを有している。
【0020】
側面カバー部35aには、シュノーケル本体33の開口部34(
図4,
図6参照)に対応する位置にルーバ36が設けられている。ルーバ36は、複数の羽板37を有しており、隣接する羽板37の隙間から空気を取り入れるとともに羽板37で雨水等の水(雨水,雪など)の浸入を抑制している。ルーバ36及び開口部34を介してシュノーケル31に空気が取り込まれる。
【0021】
そして、シュノーケル本体33の内部には、
図4に示すように、吸入した外気(吸気)から雨水等の水分を分離すると共に、吸気流を下流側のダクト部32に案内する吸気ガイド部材40(気液分離部、セパレータ(仕切板)とも言い、以下、単に、「吸気ガイド40」とも言う)が設けられる。
この吸気ガイド40については、詳細を後述するが、ルーバ36及び開口部34を通過した外気が、この吸気ガイド40によって流れを案内されるとともに、吸気ガイド40のガイド部41~43(
図7参照)に外気が当たることで、外気中の雨水等の水分が捕捉され、シュノーケル本体33の底面に滴下するように案内されて空気と分離される。
【0022】
なお、シュノーケル本体33の車両前側の底面には、分離された雨水等を排出する図示しないドレーンが設けられている。このドレーンには、図示しないエンジンの吸気脈動により開閉する図示しないバルブが設けられている。これにより、例えば、停車時はバルブが閉じることでドレーンからの排出が抑制され、走行時にエンジンの吸気脈動によりバルブが開くことで雨水等がドレーンから排出される。
【0023】
ダクト部32は、シュノーケル31とエンジンとの間で空気の通路となる部位であり、本実施形態では、シュノーケル31の後端部から下方DWへ延びる筒状に形成されている。シュノーケル31の内部とダクト部32の内部とは、互いに連通しており、シュノーケル31で取り込まれた空気は、ダクト部32を通じてエンジンの吸気部へと送られる。
【0024】
シュノーケル31は、通常ルーフの車両の場合、ルーフの上に配置されるが、本実施形態に係る車両1はスーパハイルーフ車であり、キャブ2のルーフ部22の一部を凹ませた凹み部23(
図3(a)参照)を設け、この凹み部23内にシュノーケル本体33を配置している。シュノーケル31は、キャブ2の右側後部に配置されるので、これに合わせて、ルーフ部22の右側(運転席側)後部に凹み部23が形成されている。
【0025】
図3(a),(b)は、車両1のルーフ部22を吸気ダクト配設側(車両右側)で後側上方から見た要部斜視図であり、
図3(a),(b)では、輪郭線及びある程度急角度で屈曲したエッジ状の屈曲部を太線で示し、曲面形状を説明するための説明線を細線で示している。なお、
図3(a)は吸気ダクトを取り外した状態を示し、
図3(b)は吸気ダクトを取り付けた状態を示す。
図3(a)に示すように、本実施形態では、凹み部23は、ルーフ部22の右側の側部パネル22bの後部において、ルーフ部22のルーフ面よりも下方DWに凹むように形成されている。
【0026】
凹み部23は、車両前方FR側の側面部23aと、車両中心側の側面部23bと、底面部23cとを備え、側面部23aと側面部23bとの間、側面部23aと底面部23cとの間、及び、側面部23bと底面部23cとの間は、滑らかな曲面で連続するように形成されている。底面部23cは、車幅方向外側に向けて下がる右下がりに傾斜すると共に、車両前後方向の前方FRに向けて下がる前下がりに傾斜するように形成されている。
【0027】
本実施形態では、
図3(a),
図6に示すように、底面部23cは、車両中心側が僅かに上に凸の曲面状に形成され、キャブ側面2S側が僅かに下に凸の曲面状に形成され、これらの曲面が滑らかにつながれた曲面形状となっている。ただし、底面部23cの形状は一例であり、少なくともキャブ側面2Sの側に向けて下り傾斜していればよい。
【0028】
吸気ダクト3のシュノーケル31は、
図3(b)に示すように、この凹み部23内に収められ、シュノーケル本体33の車幅方向内側の側面部と底面部は、凹み部23の側面部23a,23b及び底面部23cと対応する曲面状に形成され、シュノーケル本体33は、
図6に示すように、底面部23cに対して1点以上の取付部材61を介して隙間Sを開けて固定されている。この隙間Sにより、シュノーケル本体33と底面部23cとの間を雨水等が流通できるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、
図3(b)に示すように、シュノーケル31の上部及び幅方向外側の側部の外面は、ルーフ部22の曲面に滑らかに連続する曲面形状に形成される。また、シュノーケル31の開口部34の下方DWには、所望形状に屈曲した曲面状の車両外面を形成するために、曲面プレート6が固定されている。
【0030】
[1-3.吸気ガイド部材の詳細構成]
以下、
図7~
図12を参照して、シュノーケル(空気取込部)31のシュノーケル本体33内に装備される吸気ガイド40の構成を説明する。なお、本実施形態では、吸気ガイド40は樹脂で形成される。
なお、シュノーケル本体33は、
図9に二点鎖線で示すように、吸気上流側において開口部34からシュノーケル本体33の奥部(車幅方向内側、
図9中上方)に向けて延在する側面壁部33aと、この側面壁部33aからコーナ壁部33cを介して滑らかに連続し吸気下流側(
図9中左側)の空気出口部33dに向けて延在する正面壁部33bとを備えている。なお、空気出口部33dは、開口部34から取り込んだ外部の空気が吸気ダクト本体32へ流れるシュノーケル本体33の内部空間の上部に位置する。
【0031】
吸気ガイド40は、開口部34に固定されるフレーム部44と、第1ガイド部41と、第2ガイド部42と、第3ガイド部43と、を備え、第1ガイド部41、第2ガイド部42及び第3ガイド部43は、フレーム部44に支持されて、開口部34からシュノーケル本体33内の奥部に向けて突出するように形成されている。
【0032】
フレーム部44は、シュノーケル本体33の開口部34の形状に合わせた枠型に形成され、開口部34の縁部の車幅方向外側の側部の外面形状に沿った基面部44aと、開口部34の縁部の上縁部の外面形状に沿った上面部44bと、開口部34の縁部に沿って車幅方向外側に突出し横長で略長方形状に延在する環状リブ部44cと、環状リブ部44cの基部内側の四隅から内方に突出形成された取付用片部44dとを備えている。取付用片部44dには、ナット等の締結具によりルーバ36が取り付けられる。
【0033】
第1ガイド部41は、シュノーケル本体33内の吸気上流側(本実施形態では、車両1の前方FR側)に配置され、開口部34からシュノーケル本体33内の奥部(車両1の幅方向内方)に向けて突出し互いに連続する第1上面部41a及び第1側面部41bと、シュノーケル本体33内の奥部に配置され第1上面部41a及び第1側面部41bと滑らかに連続する第1正面部41cとを有している。
【0034】
第1上面部41aは、環状リブ部44cの上部下縁からシュノーケル本体33内の奥部に突出している。第1側面部41bは、環状リブ部44cの上部下縁と下部上縁との間にかけ渡された肉厚部41dをベースにシュノーケル本体33内の奥部に突出している。
【0035】
第1正面部41cは、第1上面部41a及び第1側面部41bと滑らかに連続して形成されており、第1上面部41aの直下に位置し開口部34側を向く正面主部41eと、正面主部41eの直下に連続し基端を環状リブ部44cの下部に接近させ斜め上方を向くと共に吸気下流側を一部切り欠かれた正面下部41fとを備えている。
【0036】
また、第1ガイド部41は、第1側面部41bと第1正面部41cとを滑らかに連続させる第1コーナ部41gを備えている。この第1コーナ部41gは所定の曲率C1に形成されている。
【0037】
第2ガイド部42は、シュノーケル本体33内の第1ガイド部41よりも吸気下流側(本実施形態では、車両1の後方RR側)に隣接して配置され、開口部34からシュノーケル本体33内の奥部(車両1の幅方向内方)に向けて突出し互いに連続する第2上面部42a及び第2側面部42bと、シュノーケル本体33内の奥部に配置され第2上面部42a及び第2側面部42bと滑らかに連続する第2正面部42cとを有している。
【0038】
第2上面部42aは、環状リブ部44cの上部下縁からシュノーケル本体33内の奥部に突出している。第2側面部42bは、環状リブ部44cの上部下縁と下部上縁との間にかけ渡された肉厚部42dをベースにシュノーケル本体33内の奥部に突出している。
【0039】
第2正面部42cは、第2上面部42a及び第2側面部42bと滑らかに連続して形成されており、第2上面部42aの直下に位置し開口部34側を向く正面主部42eと、正面主部42eの直下に連続し基端を環状リブ部44cの下部に接近させ吸気下流側を一部切り欠かれた正面下部42fとを備えている。
【0040】
また、第2ガイド部42は、第2側面部42bと第2正面部42cとを滑らかに連続させる第2コーナ部42gを備えている。この第2コーナ部42gは所定の曲率C2に形成されている。
【0041】
第3ガイド部43は、シュノーケル本体33内の第2ガイド部42よりも吸気下流側(本実施形態では、車両1の後方RR側)に隣接して配置され、開口部34からシュノーケル本体33内の奥部(車両1の幅方向内方)に向けて突出し互いに連続する第3上面部43a及び第3側面部43bと、シュノーケル本体33内の奥部に配置され第3上面部43a及び第3側面部43bと滑らかに連続する第3正面部43cとを有している。
【0042】
第3上面部43aは、環状リブ部44cの上部下縁からシュノーケル本体33内の奥部に突出している。第3側面部43bは、環状リブ部44cの上部下縁と下部上縁との間にかけ渡された肉厚部43dをベースにシュノーケル本体33内の奥部に突出している。
【0043】
第3正面部43cは、第3上面部43a及び第3側面部43bと滑らかに連続して形成されており、開口部34側を向いている。第3正面部43cの上縁及び下縁は吸気下流側を一部切り欠かれている。
【0044】
また、第3ガイド部43は、第3側面部43bと第3正面部43cとを滑らかに連続させる第3コーナ部43gを備えている。この第3コーナ部43gは所定の曲率C3に形成されている。
さらに、シュノーケル本体33の吸気上流側(本実施形態では、車両1の前方FR側)のコーナ壁部33cの内面も所定の曲率C0で滑らかに湾曲するように形成されている。
なお、
図9では、曲率C0~C3に代えて、これに相関する(逆数である)曲率半径R0~R3を図示している。
【0045】
そして、
図9に示すように、第1ガイド部41の第1コーナ部41gの曲面の曲率C1は、第2ガイド部42の第2コーナ部42gの曲面の曲率C2よりも小さく設定されている。また、シュノーケル本体33のコーナ壁部33cの内面の曲率C0は、第1ガイド部41の第1コーナ部41gの曲面の曲率C1よりも小さく設定されている。さらに、第2ガイド部42の第2コーナ部42gの曲面の曲率C2は、第3ガイド部43の第3コーナ部43gの曲面の曲率C3よりも小さく設定されている。
【0046】
つまり、走行風によって開口部34の外側から流入する外気の流れ(吸気流)は、シュノーケル本体33の奥に進みつつダクト部32が位置する吸気下流側(
図9中左側)に湾曲する。この湾曲する流れは、シュノーケル本体33の内壁面,第1ガイド部41,第2ガイド部42及び第3ガイド部43によりそれぞれ案内される。最も外側を通る流れ(
図9中、第1正面部41cの上側)は、シュノーケル本体33の吸気上流側の側面壁部33a,コーナ壁部33c及び正面壁部33b(
図9中に二点鎖線で示す)の内面で案内される。その次に外側を通る流れ(
図9中、第1正面部41cよりも下側)は、第1ガイド部41の内面(第1側面部41b、第1コーナ部41g及び第1正面部41c)で案内される。その内側を通る流れ(
図9中、第2正面部42cよりも下側)は、第2ガイド部42の内面(第2側面部42b、第2コーナ部42g及び第2正面部42c)で案内される。最も内側を通る流れ(
図9中、第3正面部43cよりも下側)は、第3ガイド部43の内面(第3側面部43b、第3コーナ部43g及び第3正面部43c)で案内される。
【0047】
外側を通る吸気流の案内面ほど曲率が小さく設定されているので、シュノーケル本体33の内面、第1ガイド部41の内面、第2ガイド部42の内面、第3ガイド部43の内面のそれぞれで案内される吸気流は、互いに干渉しにくくなって、吸気流の乱流の発生を抑制させることができるようになっている。
【0048】
また、第1ガイド部41の各面部(第1上面部41a、第1側面部41b及び第1正面部41c)、第2ガイド部42の各面部(第2上面部42a、第2側面部42b及び第2正面部42c)、および、第3ガイド部43の各面部(第3上面部43a、第3側面部43b及び第3正面部43c)は、何れも多くの部分を平面状に形成されており、特に、各正面部41c~43cは、開口部34に正対しているので、外気が雨水等の水分を含んだ場合、その水分が各正面部41c~43cを中心に捕捉しやすくなっている。
【0049】
さらに、第1ガイド部41の第1側面部41bの平面部と第1正面部41cの平面部とがなす角の角度は、直角よりも大きく設定され、第2ガイド部42の第2側面部42bの平面部と第2正面部42cの平面部とがなす角の角度は、直角あるいはほぼ直角に設定され、第3ガイド部43の第3側面部43bの平面部と第3正面部43cの平面部とがなす角の角度は、直角よりも小さく設定されている。この角度設定も、各ガイド部41,42,43の内面で案内される吸気流の相互干渉を抑制している。
【0050】
ところで、
図9に示すように、各ガイド部41,42,43のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P1,P2,P3は、第1ガイド部41の突出量P1が最も大きく、次に、第2ガイド部42の突出量P2が大きく、第3ガイド部43の突出量P2は最も小さい。さらに、第1ガイド部41のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P1と第2ガイド部42のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P2との差d1(=P1-P2)と、第2ガイド部42のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P2と第3ガイド部43のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P3との差d2(=P2-P3)とが、同一又は略同一に設定されてもよい。
【0051】
この設定により、吸気のガイドの主題となる第1ガイド部41及び第2ガイド部42でそれぞれ案内される吸気の量がバランスよくなり、いずれかのガイド部に負担が偏ることが抑制されるようになっている。
【0052】
さらに、
図10に示すように、第1ガイド部41は、第1上面部41aと対向する下方位置に、第1側面部41b及び第1正面部41cに付着した水分を落下させる第1水分落下用開口部41hを備える。また、第2ガイド部42は、第2上面部42aと対向する下方位置に、第2側面部42b及び第2正面部42cに付着した水分を落下させる第2水分落下用開口部42hを備える。また、第3ガイド部43は、第3上面部43aと対向する下方位置に、第3側面部43b及び第3正面部43cに付着した水分を落下させる第3水分落下用開口部43hを備える。
【0053】
そして、
図8にハッチングを付して示すように、第1ガイド部41の下流の流路断面積S1は、第2ガイド部42の下流の流路断面積S2と同一又は略同一に設定されている。
なお、
図8は
図7のB方向矢視図であり、
図8中の太線は第1ガイド部41,第2ガイド部42及び第3ガイド部43の各断面を示す。第1ガイド部41の下流の流路断面積S1は、第1ガイド部41と第2ガイド部42とで区画された流路を、その流れ方向(ダクト部32の入口に向かう方向、即ち、後方RR)に対して直角に切った断面である。
【0054】
なお、
図18,
図19は、シュノーケル本体33(空気取込部)における走行中の吸気の流速分布のコンピュータによるシミュレーション解析結果の一例を示す空気取込部の水平断面図及び鉛直断面図であり、
図18の水平断面図は車両上方から下方を見た図であり、
図19の鉛直断面図は車両内方から外方を見た図である。図示するように、本シュノーケル本体33の構成によれば、シュノーケル本体33への入口時点での流速を低下させつつ、シュノーケルの出口時点での流速を高めることができ、流速を低下させて水分を確実に分離させたうえで必要量の吸気量を確保することができるようになることがわかる。
【0055】
[1-4.吸気ガイド本体の段状部]
ところで、
図13(a),(b)に示すように、シュノーケル本体33の側面壁部33a,コーナ壁部33c及び正面壁部33bのうち、主として正面壁部33bの内壁面33w(すなわち、吸気ガイド部材40(気液分離部)を挟んで開口部34と対向するシュノーケル本体33の内側面)には、空気出口部33dのある下流方向で、空気出口部33dよりも下方に向かって傾斜した段状部38,138が複数形成されている。
【0056】
なお、
図13(a),(b)は、車両の内方から外方を見た状態を示す図であり、
図18に対応している。したがって、車両の外方を向いた開口部34と対向するシュノーケル本体33の内側面33w及びこの内側面33wに形成された段状部38は、直接見えるわけではないが、便宜上、実線で示している。後述の
図14についても同様である。
また、
図13(a)は本実施形態の構造を誇張して示すもので、
図13(b)は本実施形態の変形例の構造を示すものである。
【0057】
図13(a)及び
図13(b)に概略的に示す段状部38,138は、いずれも、空気出口部33dのある下流方向で、空気出口部33dよりも下方に向かって傾斜して延びている。このうち、
図13(a)に示す本実施形態の段状部38は、それぞれ空気出口部33dに向かうにつれて下方への傾斜が緩やかになっており、下に凸の湾曲した形状になっている。ただし、
図13(a)では、湾曲形状を誇張して描いている。一方、
図13(b)に示す変形例の段状部138は、それぞれ傾斜は一定であり、直線状になっている。また、上方に位置する段状部38ほど傾斜が急になっている。
【0058】
図14,
図15は本実施形態の段状部38をより詳細に示す図である。
図14,
図15に示すように、各段状部38は、正面壁部33bの一部を、断面が鋸刃状に凹ませたもので、車両外側且つ鉛直下方に向かうガイド面38aを有している。複数の段状部38は上下に並んで配設され、各段状部38は、それぞれ空気出口部33dに向かうにつれて下方への傾斜が僅かに緩やかになっている。なお、段状部38は、
図14に示すように、シュノーケル本体33の取付用座面33e等を除いて設けられている。
【0059】
各段状部38が空気出口部33dよりも下方に向かって傾斜して延びているのは、各段状部38の下流側端部はより鉛直下方に配置して水分をより下方に案内しながら、各段状部38の上流側領域をより高位置に配置することで、より多くの雨水を案内できるようにするためである。
また、各段状部38が、それぞれ空気出口部33dに向かうにつれて下方への傾斜が僅かに緩やかになっているのは、ガイド面38aで空気中に含まれる雨水を円滑に捕捉して案内するためである。
【0060】
ただし、最も上に位置する段状部38tの上流側(
図14中、左側)の鉛直方向最上部38ttが空気出口部33dの最下部と略同一の高さ位置に設定されている。
これは、空気出口部33dでの雨水等の吸い込みを抑制しつつ、吸気効率を確保するためである。空気出口部33dでの雨水等の吸い込みを抑制するには、最も上に位置する段状部38tを高く設定する方がよいが、一方で、段状部38tを高い位置まで形成すると吸気の流れに悪影響する懸念があり、これらを両立させた位置として、このように設定される。
【0061】
また、本実施形態では、シュノーケル本体33の側面壁部33a,コーナ壁部33c及び正面壁部33bは何れも厚さが一定に形成されており、段状部38の反対側(シュノーケル本体33の正面壁部33bの外側)にも、段状部(以下、外部段状部という)39が形成される。この外部段状部39には、ガイド面38aの裏側に位置するガイド面39aを有している。このガイド面39aは、車両内側且つ鉛直上方を向いている。
【0062】
[2.作用及び効果]
本実施形態に係る車両は、上述のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
まず、段状部38,138による作用効果を説明する。
【0063】
図16に示すように、開口部34から取り込んだ外部の空気は、概略的には、シュノーケル本体33の内部空間の上部に位置する空気出口部33dに向かって矢印A1で示す方向に流れる。このため、外部の空気に含まれた雨水等の液体も、空気とともに、空気出口部33dに向かって矢印A1で示すよう方向に流れて、空気出口部33dから吸気ダクト本体323内に進入しようとする。
【0064】
特に、空気よりも質量のある液体は、シュノーケル本体33の側面壁部33a,コーナ壁部33c及び正面壁部33bの内壁面に付着しつつこの内壁面に沿って空気出口部33dへ向かう。本構造では、空気出口部33dに近い正面壁部33bの内壁面33wを主体に、空気出口部33dのある下流方向で、空気出口部33dよりも下方に向かって傾斜した段状部38が複数形成されているので、内壁面33wに付着しつつこの内壁面33wに沿って流れる液体は、これらの段状部38のガイド面38aに案内されて、矢印A2で示すように、空気出口部33dよりも鉛直下方に流下して、空気と分離される。
【0065】
シュノーケル本体33の車両前側の底面には、分離された雨水等を排出する図示しないドレーンが設けられており、ガイド面38aに案内されて、空気出口部33dよりも鉛直下方に流下した雨水等は、シュノーケル本体33の底面に沿って流下する方向(空気の流れA1と逆方向)に流れ、このドレーンから適宜排出される。
【0066】
(1)このように、空気出口部33dよりも下方に向かって傾斜して延びている段状部38によって、各段状部38の下流側端部はより鉛直下方に配置して水分をより下方に案内しながら、各段状部38の上流側領域をより高位置に配置することができ、空気に含まれた雨水を空気出口部33dよりも下方へより多く案内することができ、空気出口部33dでの水の吸い込みを効果的に抑制することができる。
【0067】
(2)段状部38が空気出口部33dに向かうにつれて下方への傾斜が緩やかになっているので、段状部38のガイド面38aで空気中に含まれる雨水を円滑に捕捉して案内することができる。
【0068】
(3)さらに、最上位の段状部38tの上流側の最上部38ttが空気出口部33dの最下部と略同一の高さ位置にあるので、空気出口部33dでの雨水等の吸い込みを抑制しつつ、吸気効率を確保することができる。
【0069】
(4)また、シュノーケル本体33(空気取込部)の外側面に、空気出口部方向に向かって下方に傾斜した外部段状部39が形成されているので、シュノーケル本体33の外側面に付着した雨水を、車両の後方へ案内することができる。シュノーケル本体33の下方には、乗降用のドア21の後端があり、乗降時にドライバが位置する。このため、シュノーケル本体33の外側面に付着した雨水がそのまま下方に落下すると、ドライバの衣服等を濡らすおそれがある。この点、シュノーケル本体33の外側面に付着した雨水は、外部段状部39のガイド面39a状を伝って、
図17に矢印A3で示すように車両後方に案内されるので、ドライバの衣服等を濡らすおそれが軽減される。
さらに、上方に位置する段状部38ほど傾斜が急になっているので、空気出口部33d近傍の空気流に影響を与えることなく、シュノーケル本体33の正面壁部33bのより広い範囲で雨水等を案内することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、以下のような作用効果もある。
第1ガイド部41の第1コーナ部41gの曲面の曲率C1は、第2ガイド部42の第2コーナ部42gの曲面の曲率C1よりも小さく設定されているので、第1ガイド部41及び第2ガイド部42で案内される吸気流は、互いに干渉しにくくなって、吸気流の乱流の発生を抑制させることができるようになる。この結果、水分離性能を向上させることができる。
【0071】
シュノーケル本体33のコーナ壁部33cの曲率C0は、第1コーナ部41gの曲面の曲率C1よりも小さく設定されているので、コーナ壁部33c及び第1ガイド部41で案内される吸気流は、互いに干渉しにくくなって、吸気流の乱流の発生を抑制させることができるようになる。この結果、水分離性能を向上させることができる。
【0072】
また、第1ガイド部41の各面部(第1上面部41a、第1側面部41b及び第1正面部41c)、第2ガイド部42の各面部(第2上面部42a、第2側面部42b及び第2正面部42c)、および、第3ガイド部43の各面部(第3上面部43a、第3側面部43b及び第3正面部43c)は、何れも多くの部分を平面状に形成されているので、外気が雨水等の水分を含んだ場合、その水分が各正面部41c~43cを中心に捕捉しやすくなり、水分離性能を向上させることができる。
【0073】
さらに、第2ガイド部42の第2側面部42bの平面部と第2正面部42cの平面部とがなす角の角度を直角あるいはほぼ直角に設定し、第1ガイド部41の第1側面部41bの平面部と第1正面部41cの平面部とがなす角の角度を直角よりも大きく設定し、第3ガイド部43の第3側面部43bの平面部と第3正面部43cの平面部とがなす角の角度は、直角よりも小さく設定することで、各ガイド部41,42,43の内面で案内される吸気流の相互干渉を抑制することができる。
【0074】
開口部34は、車両1の車体側面に沿って設けられ、シュノーケル31は、吸気下流部である車両1の後方RRでダクト部32と連通接続されるので、機関の負圧だけでなく走行風を利用して効率よく吸気を行うことができる。
【0075】
第1ガイド部41の第1水分落下用開口部41hと第2ガイド部42の第2水分落下用開口部42hとが設けられているので、第1ガイド部41及び第2ガイド部42での吸気ガイド機能や水分離機能を分担させることができ、吸気ガイド性能や水分離性能を向上させることができる。
【0076】
本実施形態では、第3ガイド部43を備え、第3ガイド部43の第3コーナ部43gの曲面の曲率C3は、第2ガイド部42の第2コーナ部42gの曲面の曲率C2以上に設定されているので、第2ガイド部42及び第3ガイド部43で案内される吸気流は、互いに干渉しにくくなって、吸気流の乱流の発生を抑制させることができるようになる。この結果、水分離性能を向上させることができる。
【0077】
第1ガイド部41のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P1と第2ガイド部42のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P2との差d1(=P1-P2)と、第2ガイド部42のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P2と第3ガイド部43のシュノーケル本体33内の奥部への突出量P3との差d2(=P2-P3)とが、同一又は略同一に設定されているので、吸気のガイドの主体となる第1ガイド部41及び第2ガイド部42でそれぞれ案内される吸気の量がバランスよくなり、いずれかのガイド部に負担が偏ることが抑制される。これにより、吸気効率を向上させることができる。
【0078】
そして、第1ガイド部41の下流の流路断面積S1は、第2ガイド部42の下流の流路断面積S2と同一又は略同一に設定されているので、第1ガイド部41及び第2ガイド部42でガイドされて外気が効率よく吸入されるようになり、吸気入量を確保することができ、第1ガイド部及び第2ガイド部が分担して外気中の水分を分離するので、水分離性能を向上させることができる。
また、本実施形態において、吸気ダクト内の吸気流の乱流の発生を抑制させることで吸気騒音の発生を抑制することも期待できる。
【0079】
[3.その他]
上記の実施形態では、各ガイド部41~43によって気液分離部を構成したが、気液分離部の構成はこれに限定されない。
【0080】
また、上記実施形態では、開口部34は、車両1の車体側面に沿って設けられ、車両1の車体側面側に向いて開口しているが、これも必須ではない。開口部34は、例えば車両1の前後面側に向いて開口していてもよい。また、開口部34は、車両1の車体側面に沿って設けられている場合、吸気上流側は車両前方FRとなるが、開口部34の位置が違えばこの限りではない。
【0081】
また、上記実施形態では、吸気ダクト3を動力源(動力装置)としてのエンジン(内燃機関)へ空気を送り込むものとしているが、吸気ダクトはこれに限定されるものではない。吸気ダクトは、空気を必要とする車両の機器であればよく、例えば、水素燃料車(燃料電池車,水素エンジン車など)の空気取り込みのための吸入口へ動力用空気(発電用空気)を供給するものであってもよい。
さらに、上記実施形態では、車両としてトラックを例示して説明したが、本件に係るルーフ構造は、トラックに限らず種々の車両に適用しうる。
【0082】
[4.付記]
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
車両の吸気ダクトを介して前記車両の機器へ空気を供給する車両用吸気構造において、
前記吸気ダクトは、外部の空気を取り込む空気取込部と、前記空気取込部から下方に延びる吸気ダクト本体とを備え、
前記空気取込部は、前記車両の側面側または前後面側に開口した開口部と、前記開口部から吸引した空気が通過する際に当該空気に含まれた液体を下方へ分離する気液分離部と、前記気液分離部を通過した空気が前記吸気ダクト本体へ流れる下流側で前記空気取込部の内部空間の上部に位置する空気出口部と、を備え、
前記気液分離部を挟んで前記開口部と対向する前記空気取込部の内側面に、前記空気出口部よりも下方に向かって傾斜した段状部が形成されている
ことを特徴とする車両用吸気構造。
【0083】
(付記2)
前記段状部は、前記空気出口部に向かうにつれて下方への傾斜が緩やかになっている
ことを特徴とする付記1に記載された車両用吸気構造。
【0084】
(付記3)
前記段状部の上流側の最上部が前記空気出口部の最下部と略同一の高さ位置にある
ことを特徴とする付記1又は付記2に記載された車両用吸気構造。
【0085】
(付記4)
前記空気取込部の外側面に、前記空気出口部の方向に向かって下方に傾斜した外部段状部が形成されている
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一項に記載された車両用吸気構造。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2 キャブ
2S キャブ2の側面部(キャブ側面)
21 ドア
22 ルーフ部
22a ルーフ部22の中央パネル
22b,22c ルーフ部22の側部パネル
23 凹み部
23a,23b 凹み部23の側面部
23c 凹み部23の底面部
24 導水部
25a~25e 線状突起
26a~26e 溝
3 吸気ダクト
31 空気取込部(シュノーケル)
32 ダクト部(吸気ダクト本体)
33 ヘッド部(シュノーケル本体)
33a 側面壁部
33b 正面壁部
33c コーナ壁部
33d 空気出口部
34 開口部
35 シュノーケルカバー(カバー部)
35a 側面カバー部
35b 上面カバー部
36 ルーバ
37 羽板
38,138 段状部
38a 段状部38のガイド面
39 外部段状部
39a 外部段状部39のガイド面
40 吸気ガイド(吸気ガイド部材)
41 第1ガイド部
41a 第1上面部
41b 第1側面部
41c 第1正面部
41d 肉厚部
41e 正面主部
41f 正面下部
41g 第1コーナ部
41h 第1水分落下用開口部
42 第2ガイド部
42a 第2上面部
42b 第2側面部
42c 第2正面部
42d 肉厚部
42e 正面主部
42f 正面下部
42g 第2コーナ部
42h 第2水分落下用開口部
43 第3ガイド部
43a 第3上面部
43b 第3側面部
43c 第3正面部
43d 肉厚部
43g 第3コーナ部
43h 第3水分落下用開口部
44 フレーム部
44a フレーム部44の基面部
44b フレーム部44の上面部
44c フレーム部44の環状リブ部
44d フレーム部44の取付用片部
6 曲面プレート
61 取付部材
S 隙間
C0 シュノーケル本体33の吸気上流側の内面の曲率
C1 第1コーナ部41gの曲率
C2 第2コーナ部42gの曲率
C3 第3コーナ部43gの曲率
S1 第1ガイド部41の下流の流路断面積
S2 第2ガイド部42の下流の流路断面積
FR 前方
RR 後方
LH 左方
RH 右方
UP 上方
DW 下方