(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158940
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】自吸式ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 9/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F04D9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074591
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紳祐
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB25
3H130AB46
3H130AC23
3H130BA51A
3H130BA51F
3H130CA02
3H130DC06X
3H130DD02Z
3H130DG02X
3H130EA02A
3H130EC17A
(57)【要約】
【課題】自吸式ポンプ装置の自吸性能を極力低下させることなく、装置を小型化する。
【解決手段】液体が充填される空間であるポンプ室と、前記ポンプ室内に突き出し、液体を前記ポンプ室内に送り出す筒状部である室内筒部と、前記ポンプ室内に設けられた、インペラが配置される空間であるインペラ室と、前記室内筒部から前記インペラ室への管状の流路を形成する流路部材と、前記室内筒部の外周面に装着され、前記流路部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐシール部材と、を備える自吸式ポンプ装置によりこれを解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される空間であるポンプ室と、
前記ポンプ室内に突き出し、液体を前記ポンプ室内に送り出す筒状部である室内筒部と、
前記ポンプ室内に設けられた、インペラが配置される空間であるインペラ室と、
前記室内筒部から前記インペラ室への管状の流路を形成する流路部材と、
前記室内筒部の外周面に装着され、前記流路部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐシール部材と、を備える、
自吸式ポンプ装置。
【請求項2】
前記シール部材は、
環形状の本体部と、
前記室内筒部の外周面と前記本体部との間に挟まれるOリングと、
前記流路部材の入口部分と前記本体部との間に挟まれるOリングと、を有する、
請求項1に記載の自吸式ポンプ装置。
【請求項3】
前記流路部材は、
前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を内部に保持する弁保持部材と、
前記インペラ室を区画するケース体の一部を構成するケース部材と、を有し、
前記シール部材は、前記弁保持部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐ、
請求項1に記載の自吸式ポンプ装置。
【請求項4】
前記室内筒部は、前記ポンプ室を内部に有する容器体と一体に成形され、
前記容器体および前記弁保持部材は樹脂製の部材である、
請求項3に記載の自吸式ポンプ装置。
【請求項5】
前記流路部材は、前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を有しており、
本装置の設置後において、
前記室内筒部は前記ポンプ室内に水平方向に突き出すよう配置され、
前記室内筒部は、その上側よりも下側の方が長く突き出すよう、その先端の開口が斜めに形成されており、
前記逆止弁は、重力によって前記室内筒部の開口に被さることでこれを塞ぎ、
前記シール部材の、前記室内筒部の突出方向に沿う方向の寸法を該シール部材の厚みというときに、前記シール部材は、前記室内筒部の先端の形状に沿って、その上側よりも下側の方が肉厚に形成されている、
請求項1に記載の自吸式ポンプ装置。
【請求項6】
本装置の設置後において、
前記インペラ室は前記ポンプ室の底部に設けられ、
前記インペラはその軸線方向が水平になるように配置され、
前記インペラ室を区画するケース体の下端部には、該インペラ室から流出した液体が該インペラ室に再流入するための貫通穴である循環口が形成されている、
請求項1に記載の自吸式ポンプ装置。
【請求項7】
前記ケース体のうち、前記インペラをその周方向に取り囲む壁を該ケース体の側壁というときに、
前記循環口は前記側壁に形成され、
前記循環口は、前記インペラの軸線方向において、前記インペラの羽根の位置とは重ならない位置に設けられている、
請求項6に記載の自吸式ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自吸式ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、インペラの回転軸が水平に配置された自吸式ポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自吸式ポンプ装置は、一般に、気体と液体とを分離する気液分離室の容積が減少すると、その自吸性能が低下する。そのため、自吸式ポンプを小型化するにあたっては、自吸性能の維持が課題となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自吸式ポンプ装置の自吸性能を極力低下させることなく、装置を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の自吸式ポンプ装置は、液体が充填される空間であるポンプ室と、前記ポンプ室内に突き出し、液体を前記ポンプ室内に送り出す筒状部である室内筒部と、前記ポンプ室内に設けられた、インペラが配置される空間であるインペラ室と、前記室内筒部から前記インペラ室への管状の流路を形成する流路部材と、前記室内筒部の外周面に装着され、前記流路部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐシール部材と、を備えることを要旨とする。
【0007】
筒状部からインペラ室への流路をポンプ室内の他の空間から隔絶するにあたり、これをポンプ室内の形状や構造により実現しようとする場合、ポンプ室の容積やスペース効率がその影響を受けることとなる。本発明のように、流路部材が、筒状部に装着されるシール部材を別途備えることにより、流路部材の形状やその配置、ポンプ室内の構造、及びこれらの成形方法について、その自由度を高めることができる。これにより、ポンプ室の容積を極力低下させることなく、つまり、自吸式ポンプ装置の自吸性能を極力低下させることなく、装置を小型化することが可能となる。
【0008】
このとき、前記シール部材は、環形状の本体部と、前記室内筒部の外周面と前記本体部との間に挟まれるOリングと、前記流路部材の入口部分と前記本体部との間に挟まれるOリングと、を有することが好ましい。これにより、簡易かつ低コストでありながらも高い信頼性で隙間を密封することができる。
【0009】
また、前記流路部材は、前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を内部に保持する弁保持部材と、前記インペラ室を区画するケース体の一部を構成するケース部材と、を有し、前記シール部材は、前記弁保持部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐことが好ましい。自吸式ポンプ装置に必要となる種々の構成を流路部材が兼ねることにより、装置全体としての部品点数や組立工数が抑えられる。
【0010】
またこのとき、前記室内筒部は、前記ポンプ室を内部に有する容器体と一体に成形され、前記容器体および前記弁保持部材は樹脂製の部材であることが好ましい。流路部材を複数の部材に分割することにより、各部材やその成形金型の構造を簡潔にすることができる。
【0011】
また、前記流路部材は、前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を有し、本装置の設置後において、前記室内筒部は前記ポンプ室内に水平方向に突き出すよう配置され、前記室内筒部は、その上側よりも下側の方が長く突き出すよう、その先端の開口が斜めに形成されており、前記逆止弁は、重力によって前記室内筒部の開口に被さることでこれを塞ぎ、前記シール部材の、前記室内筒部の突出方向に沿う方向の寸法を該シール部材の厚みというときに、前記シール部材は、前記室内筒部の先端の形状に沿って、その上側よりも下側の方が肉厚に形成されていてもよい。シール部材は、逆止弁による筒状部の開閉を妨げないように装着される必要がある。シール部材の肉厚をその上側と下側とで変えることにより、筒状部に十分な長さがない場合でも、シール部材を筒状部上に安定させやすくなる。
【0012】
また、本装置の設置後において、前記インペラ室は前記ポンプ室の底部に設けられ、前記インペラはその軸線方向が水平になるように配置され、前記インペラ室を区画するケース体の下端部には、該インペラ室から流出した液体が該インペラ室に再流入するための貫通穴である循環口が形成されていることが好ましい。自吸運転中に空気から分離された液体は、ポンプ室の底部に溜まる。よって、ポンプ室内の最も低い位置に循環口を設けることで、インペラ室に液体を効率的に再流入させることができる。
【0013】
またこのとき、前記ケース体のうち、前記インペラをその周方向に取り囲む壁を該ケース体の側壁というときに、前記循環口は前記側壁に形成され、前記循環口は、前記インペラの軸線方向において、前記インペラの羽根の位置と重ならない位置に設けられていることが好ましい。インペラはその羽根を回転させることで液体に遠心力を与え、これを径方向外側に押し出す。その範囲を避けた位置に循環口を設けることで、液体をより効率よくインペラ内に再流入させることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の自吸式ポンプ装置によれば、自吸性能を極力低下させることなく、装置を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る自吸式ポンプ装置のケース内の構造を示す透視斜視図である。
【
図2】実施形態に係るポンプ装置の側面視断面図である。
【
図4】実施形態に係る流路部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】実施形態に係るシール部材の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。
【
図6】実施形態に係るインペラケースの循環口の構造を示す斜視断面図(a)及び下面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の自吸式ポンプ装置は、取り込んだ液体をインペラ室に送る流路部材が、その入口部分に生じる隙間を塞ぐシール部材を備え、さらに、このシール部材を装着する筒状部がポンプ室内に突き出していることをその特徴としている。以下、この特徴とその付随的な特徴について実施形態に基づいて説明する。
【0017】
<全体構成>
図1は、実施形態に係る自吸式ポンプ装置P(以下、単に「ポンプ装置P」という。)のケース10内の構造を示す透視斜視図である。以下の説明における「上下」とは、
図1等に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向を意味しており、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。同様に、「前後」とは、同座標軸のX軸に平行な方向であり、X1側を「前」、X2側を「後ろ」とする。
【0018】
ポンプ装置Pは、家庭用の洗濯機に搭載され、水道水の代わりに浴槽の残り湯を洗濯に利用するためのポンプである。ポンプ装置Pの吸込口11には、一端が浴槽に沈められたホースの他端が接続され、ポンプ装置Pに吸い上げられた残り湯は、吐出口13から洗濯機に供給される。また、ポンプ装置Pは自吸式ポンプであるため、運転開始時には、洗濯機から呼び水供給口12に呼び水が供給される。ポンプ装置Pは、呼び水を利用してまずホース内の空気を吸い出し(自吸運転)、その後、残り湯の吐水(給水運転)を開始する。
【0019】
ポンプ装置Pは渦巻きポンプであり、羽根車であるインペラをモータ50で高速回転させることで加圧給水を行う。モータ50のコネクタ59には洗濯機の給電コネクタが接続されており、モータ50の始動・停止は洗濯機によって制御される。
【0020】
ポンプ装置Pは、吸込口11から取り込んだ水や空気(以下、自吸運転中に吸気・排気される空気も含めて単に「水」ということもある。)を、インペラが配置される空間であるインペラ室30aに送る管状の流路を形成する流路部材20を有している。流路部材20は、ポンプ装置Pのケース10内に配置されている。流路部材20の入口部分20aには、後ほど説明するシール部材23が装着されており、これにより流路部材20の流路は、室内筒部16からインペラ室30aまで、ケース10内の他の空間から隔絶される。
【0021】
図2は、ポンプ装置Pの側面視断面図である。以下、
図2を参照して、ポンプ装置Pの具体構成やその動作について説明する。
【0022】
ポンプ装置Pのケース10は、樹脂製の容器体であり、その内部空間として、インペラ40や流路部材20が設置されるポンプ室15と、モータ50が格納されるモータ室14とを有している。ポンプ室15は、ケース10にポンプ室カバー151が被せられることで区画・密閉され、モータ室14は、ケース10にモータ室カバー141が被せられることで区画される。ポンプ室15は水が充填される空間であり、自吸運転中に空気と水を分離する気液分離室でもある。一方、モータ室14には水は充填されない。詳しくは後ほど説明するが、ポンプ室15の水は、モータ50が備えるオイルシール53やOリング54により堰き止められ、モータ室14の中には進入しない。
【0023】
ポンプ室15には、吸込口11から取り込まれた水をポンプ室15に送り出す筒状部である室内筒部16が設けられている。室内筒部16は、吸込口11から連続する筒部111のうち、ポンプ室15の内部に突き出した部分である。本形態の筒部111及び室内筒部16はケース10と一体成形されている。上でも述べたように、ポンプ室15にはインペラ40が配置される空間であるインペラ室30aが設けられており、室内筒部16とインペラ室30aとは流路部材20によって接続されている。室内筒部16の外周面には、円環形状のシール部材23が装着されている。シール部材23は、流路部材20の入口部分20aと室内筒部16との隙間を塞いでおり、これにより流路部材20の流路は、室内筒部16からインペラ室30aまで、ポンプ室15内の他の空間から隔絶される。
【0024】
室内筒部16からインペラ室30aへの流路をポンプ室15の他の空間から隔絶するにあたり、これをポンプ室15内の形状や構造により実現しようとする場合、ポンプ室15の容積やスペース効率がその影響を受けることとなる。自吸式ポンプ装置は、一般に、気体と液体とを分離する気液分離室の容積が減少すると、その自吸性能が低下する。本形態のように、流路部材20が、室内筒部16に装着されるシール部材23を別途備えることにより、流路部材20の形状やその配置、ポンプ室15の内部構造、及びこれらの成形方法について、その自由度が高められている。これにより本形態のポンプ装置Pは、ポンプ室15の容積を極力低下させることなく、つまり、ポンプ装置Pの自吸性能を極力低下させることなく、装置を小型化している。
【0025】
<モータ>
モータ50は、洗濯機から電力の供給を受けてインペラ40を回転させる駆動源である。本形態のインペラ40は水平に配置された出力軸522の先端に取り付けられている。モータ室14とポンプ室15の空間は、これらを隔てる壁に設けられた貫通穴である連通孔18でつながっている。モータ50の出力軸522は連通孔18を通ってポンプ室15まで延びており、インペラ40はポンプ室15(インペラ室30a)に配置されている。
【0026】
本形態のモータ50はアウターロータ型モータであり、カップ形状のロータ52の内周面にマグネット521が貼られ、その内側にステータ51が配置されている。出力軸522は、その根元側の端部がロータ52の底部中央に固定されており、ロータ52の回転に伴って、回転する。ポンプ装置Pは、モータ50としてアウターロータ型モータを採用することで、同程度のサイズのインナーロータ型モータに比べ、大きなトルクでインペラ40を回転させることができる。
【0027】
また、本形態のモータ50は、その耐水性を高めるべく、ステータ51やコネクタ59(
図1参照)の結線部分が合成樹脂でモールドされている(以下、この合成樹脂部分を「モールド部58」という。)。ここで、モールド部58に用いる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂よりも成形精度に優れる熱硬化性樹脂であることが好ましい。ここでいう熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂を主成分として含む樹脂であってもよい。例えば、不飽和ポリエステルにガラス繊維等を混合したBMC(Bulk Mold Compound)等がモールド部58に好適と考えられる。
【0028】
さらに、出力軸522のうち、モータ室14側に配置された部分には、連通孔18に隣接して、オイルシール53が装着されている。オイルシール53は、出力軸522とその軸穴との隙間を塞ぎ、軸穴からモータ50に水が進入することを阻止する。また、連通孔18の周囲には、モータ室14側に突き出した円環形状のリブである外筒部142が形成されている。そして、モールド部58は、外筒部142の筒内に配置される円環形状の筒状部である内筒部581を有している。外筒部142と内筒部581の間にはOリング54が挟まれており、これによりモールド部58とモータ室14との隙間が塞がれている。これらオイルシール53とOリング54により、ポンプ室15の水がモータ室14に進入することが阻止されている。
【0029】
尚、ポンプ装置Pの駆動源は本形態のモータ50には限られず、インペラ40を適切に回転させることができれば、例えばインナーロータ型モータであってもよく、さらに、マグネットを水没させるキャンドモータ等であってもよい。
【0030】
<インペラ室>
図3は、ポンプ装置Pの背面図である。
図3は、ケース10からポンプ室カバー151を取り外した状態を示している。
図3に示すように、ポンプ装置Pのインペラ室30aは、ポンプ室15の底部に設けられている。インペラ室30aの空間は、ポンプ室15のボリュートを形成するボリュート部17と、流路部材20の一部であるケース部材22によって区画されている。より具体的には、ボリュート部17は、ポンプ室15の内面に形成された渦巻形状のリブであり、インペラ40をその周方向に壁状に取り囲んでいる。ケース部材22は、そのインペラカバー部222が、インペラ40を覆うようにボリュート部17に被せられる。これらボリュート部17及びケース部材22は、インペラ40を収容するケース体であるインペラケース30を構成しており、インペラ室30aはその内部空間である。
【0031】
ケース部材22のインペラカバー部222には、インペラ40に水を供給する開口である流入口223が形成されている。流路部材20を流れてきた水は、流入口223からインペラ40の回転中心に吸い込まれる。インペラ40は、吸い込んだ水に遠心力を加え、インペラ室30aからポンプ室15に水を送り出す。送り出された水は吐出口13から洗濯機に供給される。
【0032】
<流路部材>
図4は、流路部材20の構成を示す分解斜視図である。本形態の流路部材20は、上下に分割された2つの部材である弁保持部材21及びケース部材22により構成されている。弁保持部材21及びケース部材22は互いの接続部212,221が嵌合され、室内筒部16からインペラ室30aへの流路を形成する。
【0033】
弁保持部材21は、室内筒部16への水の逆流を阻止する逆止弁24がその内部に取り付けられた弁保持部211を有している。逆止弁24は、室内筒部16の開口を開閉する弁部241と、弁部241を弁保持部211に取り付ける固定部242とを有している。
【0034】
ケース部材22は、上でも述べたように、ボリュート部17に被せられ、インペラケース30の一部を構成する。ケース部材22には、そのボリュート部17側に向けられる面に、ボリュート部17の外周面に沿う形状の壁状部である嵌合部224が形成されている。ケース部材22は、嵌合部224がボリュート部17の外周面に嵌合されることで、ボリュート部17に対してその位置が固定される。
【0035】
このように、本形態の流路部材20は、単に室内筒部16からインペラ室30aへの流路を形成するだけではなく、自吸式ポンプ装置に必要となる種々の構成を兼ねている。これによりポンプ装置P全体としての部品点数や組立工数が抑えられている。
【0036】
尚、室内筒部16からインペラ室30aの流路は本形態の流路部材20には限られない。本発明の流路部材は、シール部材23とともに隔絶された流路を形成可能であれば、例えば一部品で構成されてもよく、逆止弁24の保持部やインペラケース30の一部を兼ねていなくてもよい。
【0037】
<シール部材>
ポンプ装置Pは、流路部材20の入口部分20a、つまり弁保持部材21の入口部分20aと、室内筒部16の外周面との隙間を塞ぐシール部材23を有している。
図5は、シール部材23の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。以下、
図4及び
図5を参照して本形態のシール部材23の構成・構造について説明する。
【0038】
シール部材23は、円環形状の本体部231を有しており、その環の穴である挿通穴231cには室内筒部16が挿通される。そして、室内筒部16の外周面と本体部231との間にはOリングである第1Oリング232が挟まれ、弁保持部材21の入口部分20aと本体部231との間にはOリングである第2Oリング233が挟まれる。本形態のシール部材23は、かかる構成により、簡易かつ低コストでありながらも高い信頼性で室内筒部16と弁保持部材21との隙間を密封することができる。
【0039】
図5(b)に示すように、本形態のポンプ装置Pが設置されたときには、室内筒部16は、ポンプ室15に水平方向に突き出すように配置される。本形態の室内筒部16は、上側よりも下側の方が長く突き出すよう、その先端16aの開口が斜めに形成されている。逆止弁24は、重力によって室内筒部16の開口に被さることでこれを塞ぐ。
【0040】
本形態の室内筒部16は、その突き出し量(長さ)が短く、シール部材23を辛うじて装着可能な程度の長さしかない。そこで、本形態のシール部材23は、その本体部231の肉厚が、室内筒部16の先端16aの形状に沿って変化している。具体的には、シール部材23の上半分は厚みの薄い薄肉部231aとされ、下半分は薄肉部231aよりも厚い肉厚部231bとされている。これにより、本形態のシール部材23は、逆止弁24による室内筒部16の開閉を妨げることなく、短い室内筒部16上でもこれを安定させることができる。尚、本形態の本体部231は、薄肉部231aと肉厚部231bとが上下に段状に分かれているが、本体部231は、その上側から下側に向かって徐々に肉厚が大きくなる形状としてもよい。
【0041】
本形態のケース10(ポンプ室15)や流路部材20は樹脂製の射出成形部品である。仮にシール部材23を用いず、ポンプ室15の形状や構造で流路部材20を管状に隔絶しようとする場合、室内筒部16と弁保持部材21との隙間を、ポンプ室15の空間の一部を埋めたり、潰したりして塞ぐことになりかねない。本形態では、簡易な構成・構造のシール部材23を別部品として備えることにより、射出成形に伴う制約や不自由に対して柔軟に対処することが可能とされている。
【0042】
尚、シール部材23の構成や構造は本形態のものには限られず、室内筒部16及び流路部材20とは別体の部品で、これらの隙間を塞ぐことができるものであればよい。
【0043】
(循環口)
図6は、インペラケース30の循環口32の構造を示す斜視断面図(a)及び下面視断面図である。上でも述べたように、本形態のインペラケース30は、ポンプ室15の底部に設けられており、インペラ40はその軸線が水平になるように配置されている。以下、
図6を参照して、インペラケース30の循環口32の構造について説明する。
【0044】
ポンプ装置Pは自吸式ポンプである。よってその運転開始時には呼び水を利用してホース内の空気を吸い出す。ホース内の空気はインペラ40の回転により生じる負圧でインペラ室30aに吸い込まれ、同回転により呼び水と攪拌される。攪拌された空気は水との質量差からポンプ室15の上部に送り出され、吐出口13から排出される。一方、水はポンプ室15の底部に留まり続け、空気が全て排出されるまで、インペラ室30aへの再流入を繰り返す。
【0045】
上でも述べたように、本形態のインペラケース30は、ポンプ室15のボリュート部17と流路部材20を構成するケース部材22によって形成される。ケース部材22は、その嵌合部224がボリュート部17の外周面に嵌合されることで、ボリュート部17に対してその位置が固定される。すなわち、ボリュート部17とケース部材22の嵌合部224は、インペラケース30のうち、インペラ40を周方向に取り囲む側壁31を構成している。
【0046】
ここで、ケース部材22の嵌合部224は、インペラケース30の下端部となる部分には設けられておらず、そこは隙間224aとなっている。そして、ボリュート部17には、インペラケース30の下端部となる部分に、ボリュート部17を構成する壁が部分的に低く形成された切欠き部171が設けられている。これにより、ボリュート部17にケース部材22が被せられると、インペラケース30の下端部には、インペラ室30aに連通した貫通孔である循環口32が形成される。循環口32は、インペラ室30aから流出した水がインペラ室30aに再流入するための穴である。本形態のポンプ装置Pは、ポンプ室15の最も低い位置に循環口32を設けることで、インペラ室30aに水を効率的に再流入させることができる。
【0047】
さらに、本形態の循環口32は、インペラ40の軸線方向において、インペラ40の羽根41の位置と重ならない位置に設けられている。インペラ40はその羽根41を回転させることで水に遠心力を与え、これを径方向外側に押し出す。本形態のポンプ装置Pは、その範囲を避けた位置に循環口32を設けることで、水をより効率よくインペラ内に再流入させることができる。
【0048】
<動作>
以下、ポンプ装置Pの動作について説明する。ポンプ装置Pの運転が開始されると、ポンプ室15には、少なくともインペラ40の羽根41の全体が浸かる程度の呼び水が呼び水供給口12から注入される。
【0049】
呼び水の注入後、洗濯機はモータ50を駆動し、インペラ40を回転させる。インペラ40の回転により、インペラ室30aの呼び水がポンプ室15(気液分離室)に押し出され、インペラ室30aは負圧になる。すると、室内筒部16を塞いでいた逆止弁24が開き、ホース内の空気が吸込口11に吸い込まれる。吸込口11から入ってきた空気は、流路部材20を通ってインペラ室30aに吸い込まれ、インペラ40の回転によって呼び水と混合され、ポンプ室15に押し出される。
【0050】
ポンプ室15に押し出された気液混合体のうち、質量の小さな空気はポンプ室15の上部に溜まっていき、徐々に吐出口13から排出される。一方、質量の大きな水はポンプ室15の底部に戻り、循環口32からインペラ室30aに再流入する。そして、再び空気と混合されて、ポンプ室15へと押し出される。
【0051】
このような動作を繰り返すことにより、ポンプ室15やホース内に存在していた空気のみが吐出口13から排出される。空気が排出されると、浴槽から水が引き込まれ始める。そして、空気が完全に排出され、ポンプ室15やホースが水で満たされると、自吸運転から給水運転に移行し、吸込口11から取り込まれた水が吐出口13から連続的に吐出される。
【0052】
なお、洗濯機がモータ50への給電を停止し、インペラ40の回転が止まると、インペラ室30aの負圧は消失する。すると、ポンプ室15への水の引き込み作用は無くなり、水が逆流しようとする。しかし、弁保持部材21の逆止弁24が吸込口11への流路、つまり室内筒部16の開口を塞ぐため、水は逆流しない。
【0053】
<その他>
尚、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
液体が充填される空間であるポンプ室と、
前記ポンプ室内に突き出し、液体を前記ポンプ室内に送り出す筒状部と、
前記ポンプ室内に設けられた、インペラが配置される空間であるインペラ室と、
前記室内筒部から前記インペラ室への管状の流路を形成する流路部材と、
前記室内筒部の外周面に装着され、前記流路部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐシール部材と、を備える、
自吸式ポンプ装置。
(2)
前記シール部材は、
環形状の本体部と、
前記室内筒部の外周面と前記本体部との間に挟まれるOリングと、
前記流路部材の入口部分と前記本体部との間に挟まれるOリングと、を有する、
(1)に記載の自吸式ポンプ装置。
(3)
前記流路部材は、
前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を内部に保持する弁保持部材と、
前記インペラ室を区画するケース体の一部を構成するケース部材と、を有し、
前記シール部材は、前記弁保持部材の入口部分と前記室内筒部との隙間を塞ぐ、
(1)又は(2)に記載の自吸式ポンプ装置。
(4)
前記室内筒部は、前記ポンプ室を内部に有する容器体と一体に成形され、
前記容器体および前記弁保持部材は樹脂製の部材である、
(3)に記載の自吸式ポンプ装置。
(5)
前記流路部材は、前記室内筒部への液体の逆流を阻止する逆止弁を有しており、
本装置の設置後において、
前記室内筒部は前記ポンプ室内に水平方向に突き出すよう配置され、
前記室内筒部は、その上側よりも下側の方が長く突き出すよう、その先端の開口が斜めに形成されており、
前記逆止弁は、重力によって前記室内筒部の開口に被さることでこれを塞ぎ、
前記シール部材の、前記室内筒部の突出方向に沿う方向の寸法を該シール部材の厚みというときに、前記シール部材は、前記室内筒部の先端の形状に沿って、その上側よりも下側の方が肉厚に形成されている、
(1)から(4)のいずれかに記載の自吸式ポンプ装置。
(6)
本装置の設置後において、
前記インペラ室は前記ポンプ室の底部に設けられ、
前記インペラはその軸線方向が水平になるように配置され、
前記インペラ室を区画するケース体の下端部には、該インペラ室から流出した液体が該インペラ室に再流入するための貫通穴である循環口が形成されている、
(1)から(5)のいずれかに記載の自吸式ポンプ装置。
(7)
前記ケース体のうち、前記インペラをその周方向に取り囲む壁を該ケース体の側壁というときに、
前記循環口は前記側壁に形成され、
前記循環口は、前記インペラの軸線方向において、前記インペラの羽根の位置とは重ならない位置に設けられている、
(6)に記載の自吸式ポンプ装置。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0055】
P:自吸式ポンプ装置,10:ケース(容器体),11:吸込口,111:筒部,12:呼び水供給口,13:吐出口,14:モータ室,141:モータ室カバー,142:外筒部,15:ポンプ室,151:ポンプ室カバー,16:室内筒部,16a:先端,17:ボリュート部,171:切欠き部,18:連通孔,20:流路部材,20a:入口部分,21:弁保持部材,211:弁保持部,212:接続部,22:ケース部材,221:接続部,222:インペラカバー部,223:流入口,224:嵌合部,224a:隙間,23:シール部材,231:本体部,231a:薄肉部,231b:肉厚部,231c:挿通穴,232:第1Oリング,233:第2Oリング,24:逆止弁,241:弁部,242:固定部,30:インペラケース(ケース体),30a:インペラ室,31:側壁,32:循環口,40:インペラ,41:羽根,50:モータ,51:ステータ,52:ロータ,521:マグネット,522:出力軸,53:オイルシール,54:Oリング,58:モールド部,581:内筒部,59:コネクタ