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特開2024-158943積層フィルム及び積層フィルムの分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158943
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】積層フィルム及び積層フィルムの分離方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241031BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20241031BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20241031BHJP
   C08J 5/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B27/30 B
B32B7/06
C09J153/00
C08J5/12 CER
C08J5/12 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074595
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝禎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F071AA12A
4F071AA12X
4F071AA15A
4F071AA15X
4F071AA18B
4F071AA19B
4F071AA22A
4F071AA22X
4F071CA01
4F071CB06
4F071CC02
4F071CD06
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06C
4F100AK12
4F100AK12B
4F100AK63
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AK73
4F100AK73B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB01
4F100CB01B
4F100EJ82
4F100EJ86
4F100EJ93
4F100EJ94
4F100JA03
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JN01
4J040DM011
4J040MA10
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】容易に分離することができる、積層フィルム及び多層の分離方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る積層フィルムは、第1面及び第2面を有する第1樹脂層と、前記第1面及び第2面の少なくとも一方に接着層を介して接着される第2樹脂層と、を備え、前記接着層は、溶剤によって溶解可能なスチレン系樹脂を含有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する第1樹脂層と、
前記第1面及び第2面の少なくとも一方に接着層を介して接着される第2樹脂層と、
を備え、
前記接着層は、溶剤によって溶解可能なスチレン系樹脂を含有している、
積層フィルム。
【請求項2】
前記接着層におけるスチレン比率は、2~75重量%である、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂は、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)から選択される少なくとも1種である、
請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記接着層の厚みは、3~35μmである、
請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の積層フィルムを溶剤に浸漬するステップと、
溶剤に浸漬した前記積層フィルムから前記第2樹脂層を剥離するステップと、
を備えている、積層フィルムの分離方法。
【請求項6】
前記溶剤に浸漬するステップに先立って、前記積層フィルムが巻き取られたロールから当該積層フィルムを繰り出すステップと、
剥離された前記第2樹脂層、及び当該第2樹脂層の剥離後の前記第1樹脂層をそれぞれ、ロールに巻き取るステップと、
をさらに備えている、請求項5に記載の積層フィルムの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及び積層フィルムの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂材料の再生の要請から、接着層を介して複数の樹脂層が積層された積層フィルムを、複数の樹脂層に分離し、回収する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、異なる材質から構成された積層フィルムの表面層を加熱加圧下で熱接着する転写材と接触させて表面層と基材フィルム層とを分離する積層フィルムの分離方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―034650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法であっても、積層フィルムを容易に分離することには改良の余地があったため、分離に適した積層フィルム及びその分離方法が要望されていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、容易に分離することができる、積層フィルム及びその分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.第1面及び第2面を有する第1樹脂層と、
前記第1面及び第2面の少なくとも一方に接着層を介して接着される第2樹脂層と、
を備え、
前記接着層は、溶剤によって溶解可能なスチレン系樹脂を含有している、
積層フィルム。
【0007】
項2.前記接着層におけるスチレン比率は、2~75重量%である、
項1に記載の積層フィルム。
【0008】
項3.前記スチレン系樹脂は、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)から選択される少なくとも1種である、
項1または2に記載の積層フィルム。
【0009】
項4.前記接着層の厚みは、3~35μmである、
項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
【0010】
項5.項1から4のいずれかに記載の積層フィルムを溶剤に浸漬するステップと、
溶剤に浸漬した前記積層フィルムから前記第2樹脂層を剥離するステップと、
を備えている、積層フィルムの分離方法。
【0011】
項6.前記溶剤に浸漬するステップに先立って、前記積層フィルムが巻き取られたロールから当該積層フィルムを繰り出すステップと、
剥離された前記第2樹脂層、及び当該第2樹脂層の剥離後の前記第1樹脂層をそれぞれ、ロールに巻き取るステップと、
をさらに備えている、項5に記載の積層フィルムの分離方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積層フィルムを容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの断面図である。
図2図1の積層フィルムの分離方法の一例を示す側面図である。
図3】接着層の分離のメカニズムを示す図である。
図4】実施例1~8,比較例1~3の組成を示す表である。
図5】実施例1~8,比較例1~3の物性を示す表である。
図6】実施例1~8,比較例1~3の剥離強度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る積層フィルム及び積層フィルムの分離方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、積層フィルムについて説明した後、その分離方法について説明する。
【0015】
<1.積層フィルム>
図1は積層フィルムの断面図である。図1に示すように、本実施形態の積層フィルム1は、第1面21及び第2面22を有する第1樹脂層2と、第1面21及び第2面22の少なくとも一方の面に接着層3を介して配置される第2樹脂層4と、を備えている。なお、第1樹脂層2の第1面21及び第2面22の両方に第2樹脂層4を配置しなくてもよく、いずれか一方の面に接着層3を介して第2樹脂層4を配置することもできる。
【0016】
このように構成された積層フィルムは、後述する方法により、第1樹脂層2から第2樹脂層4を剥離し、第1樹脂層2及び第2樹脂層4を個別に回収することができる。すなわち、積層フィルム1を、第1樹脂層2と第2樹脂層4に分離することができる。また、このような積層フィルム1は、例えば、飲料、食料品や日用品等の包装体用のラベル用基材、食品の包装用フィルム、半導体製造用のダイシング、バックグラインド用基材等として使用することができる。更に前記ラベル用基材や包装用フィルムの製造途中で得られる半製品なども対象となる。以下、各層について説明する。
【0017】
<1-1.第1樹脂層及び第2樹脂層>
第1樹脂層2及び第2樹脂層4は特には限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル系単量体とジエン系単量体とスチレン系単量体との3元共重体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体とジエン系単量体とスチレン系単量体との3元共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体とアクリロニトリル系単量体とジエン系単量体とスチレン系単量体との共重合体、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン等から選択される少なくとも1種の樹脂材料で構成することができる。したがって、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂を樹脂層として用いることができる。
【0018】
第1樹脂層2の厚みは、特には限定されないが、例えば、40~135μmであることが好ましく、45~130μmであることがさらに好ましい。また、第2樹脂層の厚みは、特には限定されないが、例えば、5~35μmであることが好ましく、7~30μmであることがさらに好ましい。
【0019】
<1-2.接着層>
接着層は、少なくともスチレン系樹脂を含有するものであり、その他、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料が含有されていてもよい。スチレン系樹脂は、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)及びスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0020】
接着層3におけるスチレン比率は、例えば、2~75重量%であることが好ましく、3~72重量%であることがさらに好ましく、5~70重量%であることが特に好ましい。接着層中のスチレン系樹脂が少なすぎると、スチレン比率が小さくなるため、後述するように樹脂層の剥離が困難になり、スチレン系樹脂が多すぎると、スチレン比率が大きくなるため、積層フィルムのヤング率、層間強度、生産性の低下、コストが高くなるおそれがある。また、後述するように層間強度の低下を考慮すれば、接着層中のスチレン比率は低いことが好ましく、例えば、3~15重量%とすることもできる。一方、後述するように、溶解後の接着層の成分の残留量を考慮すれば、例えば、20~70重量%とすることができる。
【0021】
接着層3の厚みは、特には限定されないが、例えば、3~35μmであることが好ましく、5~30μmであることがさらに好ましい。これは、接着層3の厚みが小さすぎると層間強度が低下し、厚みが大きすぎすると、コストが高くなるからである。
【0022】
<2.積層フィルムの製造方法>
積層フィルム1の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記第1樹脂層、第2樹脂層、及び接着層を構成する樹脂組成物をそれぞれ所定の温度に設定された押出機に投入し、第2樹脂層/接着層/第1樹脂層/接着層/第2樹脂層の積層順になるようにTダイから押出し、所定温度に設定された冷却ロールで引き取ることで、図1に示すような5層の積層フィルムが得られる。
【0023】
<3.積層フィルムの分離方法>
積層フィルム1は、次のように第1樹脂層及び第2樹脂層に分離することができる。一例として、図2に示す装置により分離を行う。
【0024】
図2に示すように、この装置は、積層フィルム1を巻き取った第1ロール51を有し、その下流側に第1ロール51から繰り出された積層フィルム1が浸漬される溶剤用のタンク52が配置されている。ここで用いられる溶剤としては、スチレン系樹脂を溶解できるものであれば、特には限定されず、例えば、芳香族系溶媒、環状テルペン系溶媒、環状エーテル系溶媒、及び環状脂肪族溶媒の少なくとも1つを含有する溶剤とすることができる。
【0025】
芳香族系溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。環状テルペン系溶媒としては、例えば、リモネン、ピネン、シメンなどが挙げられる。環状エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。環状脂肪族溶媒異としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0026】
図3に示すように、溶剤に浸漬された積層フィルム1においては、接着層3に含有されるスチレン系樹脂31が溶剤によって溶解し、接着層3には多数の空隙32が形成される。これにより、第1樹脂層2から第2樹脂層4を分離するように力が作用すると、形成された空隙32を伝うように力が伝播し、第1樹脂層2から第2樹脂層4を容易に剥離することができる。
【0027】
タンク52の下流側には、第1分離具53及び第1従動ローラ54がこの順で配置されており、第1分離具53により、第1面21側の第2樹脂層4の一部が第1樹脂層2から剥離される。そして、第2樹脂層4が第1従動ローラ54によって上方に搬送されることで、第2樹脂層4が連続して第1樹脂層2から剥離し、第2ローラ55に巻き取られる。
【0028】
また、第1従動ローラ54の下流側には、第2分離具56及び第2従動ローラ57がこの順で配置されており、第2分離具56により、第2面22側の第2樹脂層4の一部が第1樹脂層2から剥離される。そして、第2樹脂層4が第2従動ローラ57によって下方に搬送されることで、第2樹脂層4が連続して第1樹脂層1から剥離し、第3ローラ58に巻き取られる。
【0029】
また、第2面22側の第2樹脂層4が剥離された第1樹脂層2は直進し、第4ローラ59に巻き取られる。こうして、第2~第4ローラ55,58,59に、それぞれ、第1面21側の第2樹脂層4、第1樹脂層2、及び第2面22側の第2樹脂層4がそれぞれ巻き取られて回収される。
【0030】
なお、第1及び第2分離具53、56は、第1樹脂層2から第2樹脂層4を剥離するためのきっかけになるような作用を積層フィルム1に及ぼすものであれば、特には限定されない。例えば、セパレータ剥離機構で使用されている剥離刀やナイフエッジ等を使用することができる。
【0031】
上記の分離方法は一例であり、少なくとも積層フィルム1を溶剤に浸漬し、その後、第1樹脂層2と第2樹脂層4とを分離するように力を及ぼせるような工程であればよい。
【0032】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る積層フィルム1は、第1樹脂層2と第2樹脂層4とを接着する接着層3にスチレン系樹脂31が含有されている。そして、積層フィルム1を溶剤に浸漬すると、スチレン系樹脂31を溶解できるため、これによって接着層3に空隙32を形成することができる。その結果、第1樹脂層1から第2樹脂層2を分離するように力を作用させると、空隙31を伝うように力を伝播させることができるため、第1樹脂層2と第2樹脂層4とを容易に分離することができる。
【0034】
接着層3におけるスチレン比率を、例えば、2~75重量%とすることで、第1樹脂層2と第2樹脂層4とを容易に分離することができるとともに、積層フィルム1のヤング率、層間強度を適度に保つことができる。
【実施例0035】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0036】
<1.積層フィルムの準備>
まず、図4に示すとおり、実施例1~6及び比較例1~2に係る組成を有する積層フィルムを準備した。いずれも図1に示すような5層の積層フィルムを用いた。実施例1~6,比較例2の積層フィルムの厚みは200μmとした。具体的には、30μm(第2樹脂層)/10μm(接着層)/120μm(第1樹脂層)/10μm(接着層)/30μm(第2樹脂層)の厚みを有する積層フィルムとした。一方、比較例1の積層フィルムの厚みは150μmとした。具体的には、22μm(第2樹脂層)/8μm(接着層)/90μm(第1樹脂層)/8μm(接着層)/22μm(第2樹脂層)の厚みを有する積層フィルムとした。
【0037】
図4に示す積層フィルムの各組成を構成する材料は以下の通りである。
・PE-1(LDPE)比重0.934、MFR5.3g/10min
・PE-2(LDPE)比重0.922、MFR0.5g/10min
・PE-3(LLDPE)比重0.931、MFR4g/10min
・非晶PO比重0.89、MFR11g/10min
・SEBS-1(旭化成株式会社社製、H1221)スチレン含有率12.5重量%
・SEPS(クレイトンポリマー社製、G1730)SEPSのスチレン含有率20重量%
・SEBS-2(旭化成株式会社社製、H1063)スチレン含有率67重量%
なお、図4中のスチレン比率は、接着層中の各スチレン系樹脂材料の重量%に、各スチレン系樹脂材料に含まれるスチレンの含有率を掛けることで算出している。例えば、実施例1の接着層は、スチレン系樹脂として、スチレン含有率が12.5重量%のSEBS-1が、30重量%用いられているため、接着層のスチレン比率は、3.8重量%(12.5×30/100=3.75≒3.8)となる。
【0038】
まず、実施例1~6、比較例1~2の積層フィルムについて、以下の試験を行った。
【0039】
<2.引張強度、引張伸度、25%モジュラス>
各積層フィルムを、測定するMDまたはTD方向が長辺となるように標線間隔40mmおよび幅10mmの大きさにカットし試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてJISK-6732に準拠した方法で測定した。ただし、測定雰囲気温度25℃、試験速度200mm/minにて測定した。引張強度および引張伸度は、各実施例および各比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。また、25%モジュラス(MPa)は、伸び率25%における応力値を夫々読み取った。
【0040】
<3.ヤング率>
各積層フィルムを、測定するMDまたはTD方向が長辺となるように標線間隔250mmおよび5mmの大きさにカットし試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてASTM D882に準拠した方法で測定した。ヤング率は、各実施例及び各比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0041】
<4.ヘイズ率>
ヘイズ率は、日本電色工業社製 NDH-2000を使用して測定した。
【0042】
<5.乾熱収縮率>
各積層フィルムを測定するMDまたはTD方向が長辺となるように、150mm×20mmの大きさにカットし、標線間隔が100mmとなるように標線を引き、試験片を得た。次いで、得られた試験片の片端を固定し、温度を100℃に設定したESPEC社製恒温槽PHH-102に投入した。投入から60秒後に積層フィルムを取り出し、標線間隔を測定し、下記式から収縮率を算出した。
乾熱収縮率={(100-収縮後の標線間距離(mm))/100}×100
なお、乾熱収縮率としては3つの測定試料に対する測定結果の平均値を用いた。また、平均値よりも2%以上離れた値はカウントしないこととした。
【0043】
結果は、図5に示すとおりである。同種のスチレン系樹脂を用いている実施例1~4を比べると、接着層のスチレン比率が高くなっても、破断強度、破断伸度、25%モジュラスは概ね変化しなかったが、ヤング率は低下傾向となっている。スチレン系樹脂の種類が異なる実施例4,5,6の比較においては、接着層のスチレン比率が高くなっても、破断強度、破断伸度、25%モジュラス、ヤング率は概ね変化しなかった。
【0044】
続いて、実施例1~6、比較例1~2の積層フィルムを室温にて溶剤(リモネン)に40分間浸漬し、浸漬前後の層間強度を測定した。層間強度の測定方法は以下の通りである。
【0045】
各積層フィルムをMD方向が長辺となるように100mm×10mmの大きさにカットし、フィルム端部の一部分を層間剥離した。各積層フィルムの長辺方向に引張速度100mm/minで、180度方向に剥離させた時の強度(N/10mm)を、イマダ社製デジタルフォースゲージZTS-100Nを用いて測定した。なお、3回試験を行い層間強度の平均値を求めた。溶剤浸漬後の層間強度の評価は、積層フィルムを溶剤に40分浸漬後に同様の方法で実施した。
【0046】
また、上述した剥離強度と同じ評価方法にて、積層フィルムの剥離強度が溶剤浸漬後1N/cm以下となる溶剤浸漬時間を評価した。結果は、図6に示す通りである。
【0047】
溶剤への浸漬前について、図6に示す実施例1~3を比べると、接着層のスチレン比率が変化しても、浸漬前の剥離強度(層間強度)は概ね同じであった。しかし、実施例4~6に示すように、スチレン比率が10重量%を超えると、剥離強度は低下するが、実施例6のようにスチレンの比率が大幅に増えても、10重量%以上の含有率では、剥離強度は概ね同じであった。
【0048】
溶剤への浸漬後について、40分経過後の剥離強度は、接着層中のスチレン比率が多いほど溶解に時間を要するため、例えば、スチレン比率が低い実施例1はスチレンの溶解が進むと考えられ、剥離強度の低下率が最も大きくなっている(元の剥離強度に対する、40分経過後の剥離強度の割合がもっと低い)。一方、スチレン比率が高い実施例6はスチレンの溶解が進みにくいと考えられ、剥離強度の低下率が最も低くなっている。
【0049】
以上の傾向は剥離強度が1N/cm以下になるまでに要した時間に現れており、スチレン比率が最も低い実施例1は、1時間で剥離強度が1N/cm以下になったが、スチレン比率が最も高い実施例6は、7.5時間も要した。
【0050】
以上のように、スチレン比率が低い接着層は、短時間で剥離強度を低くできるという利点があるが、接着層のうちスチレン以外の成分は溶解せずに残留するため、剥離した樹脂材料に接着層の一部が付着したまま回収されることになる。したがって、回収した材料の純度がやや低下することがある。
【0051】
一方、比較例1~2の層間強度は、溶剤に浸漬しても、浸漬前と同じであった。
【符号の説明】
【0052】
1 積層フィルム
2 第1樹脂層
3 接着層
4 第2樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6