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特開2024-158944撮像装置、収音装置および撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158944
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】撮像装置、収音装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/92 20060101AFI20241031BHJP
   H04N 5/765 20060101ALI20241031BHJP
   H04N 23/60 20230101ALN20241031BHJP
【FI】
H04N5/92 020
H04N5/765
H04N23/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074596
(22)【出願日】2023-04-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】春日井 宏樹
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122FJ01
5C122FK37
5C122FK38
5C122FK40
5C122GA18
5C122GA34
5C122GC07
5C122HA04
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】収音装置及び撮像装置を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる撮像装置、収音装置および撮像システムを提供する。
【解決手段】撮像装置(100)は、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部(115)と、画像データに対応付けされる音声データを生成する音声処理部(170)と、外部の収音装置(200)から、第1の音声信号(A2)及び第2の音声信号(A3)を受信する受信部(160)とを備える。第1の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた第1の増幅変換の結果を示す。第2の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の結果を示す。音声処理部は、受信部から受信された第1及び第2の音声信号を入力として、所定のデータ形式において互いに結合する処理を行って、当該データ形式において入力音声を示す収音結果の音声データ(A10)を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、
前記画像データに対応付けされる音声データを生成する音声処理部と、
外部の収音装置から、第1の音声信号及び第2の音声信号を受信する受信部とを備え、
前記第1の音声信号は、前記収音装置において入力音声に行われた第1の増幅変換の結果を示し、
前記第2の音声信号は、前記収音装置において前記入力音声に行われた、前記第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の結果を示し、
前記音声処理部は、前記受信部から受信された第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において前記入力音声を示す収音結果の音声データを生成する
撮像装置。
【請求項2】
前記第1の増幅変換は、第1のゲインが設定された第1のアンプにおいて前記入力音声を増幅して、A/D変換することにより前記第1の音声信号を生成し、
前記第2の増幅変換は、前記第1のゲインよりも小さい第2のゲインが設定された第2のアンプにおいて前記入力音声を増幅して、A/D変換することにより前記第2の音声信号を生成し、
前記収音結果の音声データにおいて、前記第1の音声信号に対応する部分の音量は、前記第2の音声信号に対応する部分の音量以上である
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記音声処理部は、
前記収音装置における前記第1及び第2のアンプに設定されるゲイン情報を取得して、
前記ゲイン情報を用いて、前記第1及び第2の音声信号から前記収音結果の音声データを生成する
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記音声処理部は、前記受信部における前記収音装置との情報通信により、前記ゲイン情報を取得する
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記所定のデータ形式は、仮数部と指数部とを有するフロート形式であり、
前記音声処理部は、前記入力音声の音量が大きいほど前記指数部を増大させるように、前記収音結果の音声データを生成する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記受信部は、前記収音装置から所定の通信規格にしたがうデータ信号を受信し、
前記データ信号は、前記通信規格における通信単位毎に前記第1の音声信号が格納された第1の部分と、前記第2の音声信号が格納された第2の部分とを含む
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記収音結果の音声データと、前記画像データとを対応付けて動画ファイルを生成する制御部をさらに備える
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像装置に音声信号を送信する収音装置であって、
入力音声を取得する音声入力部と、
前記入力音声に第1の増幅変換を行って、第1の音声信号を生成する第1の信号処理部と、
前記第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換を前記入力音声に行って、第2の音声信号を生成する第2の信号処理部と、
前記第1の音声信号及び前記第2の音声信号を、前記撮像装置に送信する送信部と
を備える収音装置。
【請求項9】
請求項8に記載の収音装置と、
前記収音装置から前記第1及び第2の音声信号を受信して、受信した第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において前記入力音声を示す収音結果の音声データを生成する撮像装置と
を備える撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収音装置から音声信号を受信する撮像装置、収音装置、及びこれらを含む撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、音声信号を処理するために好適に浮動小数点データを演算処理するデータ処理装置を開示する。このデータ処理装置には、浮動小数点データの仮数部と指数部とをそれぞれストアする仮数部レジスタと指数部レジスタとが設けられる。データ処理装置は、左右2チャネルの固定小数点データである音声信号を演算処理して、浮動小数点データを作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-282800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、収音装置及び撮像装置を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる撮像装置、収音装置および撮像システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における撮像装置は、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、画像データに対応付けされる音声データを生成する音声処理部と、外部の収音装置から、第1の音声信号及び第2の音声信号を受信する受信部とを備える。第1の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた第1の増幅変換の結果を示す。第2の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の結果を示す。音声処理部は、受信部から受信された第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において入力音声を示す収音結果の音声データを生成する。
【0006】
本開示における収音装置は、撮像装置に音声信号を送信する収音装置である。収音装置は、入力音声を取得する音声入力部と、入力音声に第1の増幅変換を行って、第1の音声信号を生成する第1の信号処理部と、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換を入力音声に行って、第2の音声信号を生成する第2の信号処理部と、第1の音声信号及び第2の音声信号を、撮像装置に送信する送信部とを備える。
【0007】
本開示における撮像システムは、上記収音装置と、収音装置から第1及び第2の音声信号を受信して、受信した第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において入力音声を示す収音結果の音声データを生成する撮像装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示における撮像装置、収音装置および撮像システムによると収音装置及び撮像装置を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係る撮像システムを説明するための図
図2】撮像システムにおけるデジタルカメラの構成を示す図
図3】撮像システムにおける収音装置の構成を示す図
図4】撮像システムにおけるフロート録音のための回路構成を示す図
図5】撮像システムにおけるフロート録音動作を説明するための波形図
図6】フロート形式のデータ構造を説明するための図
図7】撮像システムにおける通信動作を例示するシーケンス図
図8】撮像システムにおける通信パケットの構造例を示す図
図9】変形例のデジタルカメラにおける表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
1.構成
本開示の実施形態1に係る撮像システムについて、図1を用いて説明する。
【0012】
1-1.システム概要
本実施形態に係る撮像システム10は、例えば図1に示すように、デジタルカメラ100と、収音装置200とを備える。本システム10において、デジタルカメラ100と収音装置200とは、例えばBluetooth等の無線通信により接続される。
【0013】
本システム10は、例えばデジタルカメラ100による動画撮影において収音装置200を用いてフロート録音を実現する。フロート録音は、フロート形式といった所定のデータ形式により、比較的に大音量の音声から小音量の音声にわたって各音声の分解能を確保可能な録音機能である。
【0014】
本実施形態の撮像システム10は、こうしたフロート録音の実現において、デジタルカメラ100の演算機能を活用して、収音装置200において簡単な構成を採用する。本システム10によると、例えばデジタルカメラ100のユーザが、簡単な構成の収音装置200を準備することで容易に動画撮影において高ダイナミックレンジかつ高精度の録音結果を得られる。
【0015】
以下、本システム10におけるデジタルカメラ100および収音装置200の構成について説明する。
【0016】
1-2.デジタルカメラの構成
本実施形態におけるデジタルカメラ100の構成について、図2を用いて説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係るデジタルカメラ100の構成を示す図である。本実施形態のデジタルカメラ100は、イメージセンサ115と、画像処理エンジン120と、表示モニタ130と、制御部135とを備える。さらに、デジタルカメラ100は、バッファメモリ125と、カードスロット140と、フラッシュメモリ145と、操作部150と、通信モジュール160と、音声処理エンジン170とを備える。また、デジタルカメラ100は、例えば光学系110及びレンズ駆動部112を備える。
【0018】
光学系110は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、光学式手ぶれ補正レンズ(OIS)、絞り、シャッタ等を含む。フォーカスレンズは、イメージセンサ115上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。ズームレンズは、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ等は、それぞれ1枚又は複数枚のレンズで構成される。
【0019】
レンズ駆動部112は、光学系110におけるフォーカスレンズ等を駆動する。レンズ駆動部112はモータを含み、制御部135の制御に基づいてフォーカスレンズを光学系110の光軸に沿って移動させる。レンズ駆動部112においてフォーカスレンズを駆動する構成は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0020】
イメージセンサ115は、光学系110を介して形成された被写体像を撮像して、撮像データを生成する。撮像データは、イメージセンサ115による撮像画像を示す画像データを構成する。イメージセンサ115は、所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒)で新しいフレームの画像データを生成する。イメージセンサ115における、撮像データの生成タイミングおよび電子シャッタ動作は、制御部135によって制御される。イメージセンサ115は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、またはNMOSイメージセンサなど、種々のイメージセンサを用いることができる。
【0021】
イメージセンサ115は、動画像、静止画像の撮像動作、スルー画像の撮像動作等を実行する。スルー画像は主に動画像であり、ユーザが例えば静止画像の撮像のための構図を決めるために表示モニタ130に表示される。スルー画像、動画像及び静止画像は、それぞれ本実施形態における撮像画像の一例である。イメージセンサ115は、本実施形態における撮像部の一例である。
【0022】
画像処理エンジン120は、イメージセンサ115から出力された撮像データに対して各種の処理を施して画像データを生成したり、画像データに各種の処理を施して、表示モニタ130に表示するための画像を生成したりする。各種処理としては、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、YC変換処理、電子ズーム処理、圧縮処理、伸張処理等が挙げられるが、これらに限定されない。画像処理エンジン120は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータ、プロセッサなどで構成してもよい。
【0023】
表示モニタ130は、種々の情報を表示する表示部の一例である。例えば、表示モニタ130は、イメージセンサ115で撮像され、画像処理エンジン120で画像処理された画像データが示す画像(スルー画像)を表示する。また、表示モニタ130は、ユーザがデジタルカメラ100に対して種々の設定を行うためのメニュー画面等を表示する。表示モニタ130は、例えば、液晶ディスプレイデバイスまたは有機ELデバイスで構成できる。
【0024】
操作部150は、デジタルカメラ100の外装に設けられた操作釦や操作レバー等のハードキーの総称であり、使用者による操作を受け付ける。操作部150は、例えば、レリーズ釦、モードダイヤル、タッチパネル、カーソルボタン、ジョイスティックを含む。操作部150はユーザによる操作を受け付けると、ユーザ操作に対応した操作信号を制御部135に送信する。
【0025】
制御部135は、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御する。制御部135はCPU等を含み、CPUがプログラム(ソフトウェア)を実行することで所定の機能を実現する。例えば、制御部135は、通信モジュール160から受信される信号を復号するデコーダ165として機能する。
【0026】
上記デコーダ165は、制御部135の機能で実現されなくてもよく、例えば通信モジュール160に組み込まれてもよい。制御部135は、CPUに代えて、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。すなわち、制御部135は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現できる。制御部135は1つまたは複数のプロセッサで構成してもよい。また、制御部135は、画像処理エンジン120などと共に1つの半導体チップで構成してもよい。
【0027】
バッファメモリ125は、画像処理エンジン120や制御部135のワークメモリとして機能する記録媒体である。バッファメモリ125は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などにより実現される。フラッシュメモリ145は不揮発性の記録媒体である。また、図示していないが、制御部135は各種の内部メモリを有してもよく、例えばROMを内蔵してもよい。ROMには、制御部135が実行する様々なプログラムが記憶されている。また、制御部135は、CPUの作業領域として機能するRAMを内蔵してもよい。
【0028】
カードスロット140は、着脱可能なメモリカード142が挿入される手段である。カードスロット140は、メモリカード142を電気的及び機械的に接続可能である。メモリカード142は、内部にフラッシュメモリ等の記録素子を備えた外部メモリである。メモリカード142は、画像処理エンジン120で生成される画像データなどのデータを格納できる。
【0029】
通信モジュール160は、例えばBluetooth Low Energy(BLE)といった所定の通信規格に従って、収音装置200等の外部機器に接続するモジュール(回路)である。例えば、通信モジュール160は、LE Audio規格において音声信号の無線通信を行う。通信モジュール160による通信は無線通信に限らず、有線通信であってもよい。又、通信モジュール160の通信規格は特に限定されず、例えばUSB、HDMI(登録商標)、IEEE802.11、Wi-Fi等であってもよい。通信モジュール160は、本実施形態におけるデジタルカメラ100の受信部の一例であり、デジタルカメラ100の送信部あるいは通信部の一例であってもよい。
【0030】
音声処理エンジン170は、例えばデジタルカメラ100の外部から取得した音声信号に対して種々の音声処理を施して、処理結果として音声データを生成する。音声処理エンジン170は、本実施形態における音声処理部の一例である。
【0031】
本実施形態の音声処理エンジン170は、例えば図2に示すように、データ変換部172、増幅部174および結合部176を備える。各部172~176は、フロート録音を実現するための演算処理を行う機能的構成である(詳細は後述)。音声処理エンジン170は、画像処理エンジン120及び制御部135の一方又は双方と一体的に構成されてもよい。
【0032】
デジタルカメラ100は、内蔵のマイクを備えてもよく、こうしたマイクで収音された音声について音声処理エンジン170が音声処理を行ってもよい。又、デジタルカメラ100は、外付けのマイクを接続するための入力端子および信号処理回路などを備えてもよい。
【0033】
1-3.収音装置の構成
本実施形態における収音装置200の構成について、図3~4を用いて説明する。
【0034】
図3は、本システムにおける収音装置200の構成を示す。図4は、本システム10におけるフロート録音のための回路構成を示す。
【0035】
本実施形態の収音装置200は、例えば図3に示すように、音声入力部210と、複数の信号処理部220,230と、制御部240と、記憶部250と、通信部260とを備える。収音装置200は、例えば外付けのマイクを用いてフロート録音のための収音を行う装置である。
【0036】
音声入力部210は、例えば1つ又は複数の外部マイクを接続する入力端子を含む。音声入力部210は、例えば1つのモノラルマイクにより収音される音声を示すアナログ信号を収音装置200に入力することで、1チャネルの入力音声を取得する。
【0037】
音声入力部210は、1チャネルの入力音声に対して並列する2つの信号処理部220,230に接続される。音声入力部210は、複数チャネルの入力音声を取得してもよく、例えばステレオ入力であってもよい。収音装置200は、マイクと一体的に構成されてもよい。この場合、音声入力部210は、収音装置200のマイクであってもよい。
【0038】
各信号処理部220,230は、例えば図4に示すように、アンプ222,232およびアナログ/デジタル(A/D)変換器224,234をそれぞれ含む信号処理回路で構成される。複数の信号処理部220,230は、収音装置200のダイナミックレンジ全体を分担するように別々のゲインGa,Gbが設定された、ハイ(H)レベル信号処理部220及びロー(L)レベル信号処理部230を含む。
【0039】
Hレベル信号処理部220のアンプ222には、例えば比較的に小さい音量の入力音声を精度良く収音する観点から、回路雑音の影響を低減するようにゲインGaが設定される。例えば、ゲインGaはLレベル信号処理部230のゲインGbよりも大きい。こうして、Hレベル信号処理部220は、収音装置200において小音量側のダイナミンクレンジを有する。
【0040】
Lレベル信号処理部230のアンプ232には、例えば比較的に大きい音量の入力音声を精度良く収音する観点から、信号波形の飽和歪みを抑制するようにゲインGbが設定される。こうして、収音装置200においてLレベル信号処理部230は、小音量側のダイナミンクレンジを有する。
【0041】
Hレベル信号処理部220のダイナミックレンジとLレベル信号処理部230のダイナミックレンジとは、例えば連続しており、部分的に重畳してもよい。各信号処理部220,230のA/D変換器は、例えば分解能など、互いに共通の回路特性を有する。1つ又は複数の信号処理部220,230がICチップに集積されてもよい。
【0042】
制御部240は、例えば収音装置200の全体動作を制御する。制御部240は、例えばソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU又はMPUを含む。例えば、制御部240は、通信部260から送信する信号を符号化するエンコーダ245として機能する。
【0043】
上記エンコーダ245は、制御部240の機能で実現されなくてもよく、例えば通信部260に組み込まれてもよい。制御部240は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路又は再構成可能な電子回路などのハードウェア回路であってもよい。制御部240は、CPU、MPU、マイコン、DSP、FPGA及びASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0044】
記憶部250は、収音装置200の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶するROMやRAMを含む。記憶部250は、例えば複数の信号処理部220,230における各々のゲインを示す情報を格納する。
【0045】
通信部260は、例えばBLEといった所定の通信規格に従って外部機器に接続するモジュール(回路)である。例えば、通信部260は、LE Audio規格において音声信号の無線通信を行う。通信部260による通信は無線通信に限らず、有線通信であってもよい。又、通信部260の通信規格は特に限定されず、例えばUSB、HDMI、IEEE802.11、Wi-Fi等であってもよい。通信部260は、本実施形態における収音装置200の送信部の一例であり、収音装置200の受信部の一例であってもよい。
【0046】
2.動作
以上のように構成される撮像システム10の動作について、以下説明する。
【0047】
本実施形態の収音装置200(図3)は、本システム10の撮影環境における環境音といった入力音声を音声入力部210から取得して、Hレベル信号処理部220とLレベル信号処理部230とにより当該入力音声に2種類の増幅変換を行う。本実施形態の収音装置200は、こうした2種類の増幅変換の結果を含むデータ信号を生成して、通信部260からデジタルカメラ100(図1)に送信する。
【0048】
本実施形態において、デジタルカメラ100は、例えば動画の撮影中に収音装置200から上記のデータ信号を受信すると、2種類の増幅変換の結果からフロート録音を行うための演算処理であるフロート録音処理を実行する。こうした本システム10の収音装置200とデジタルカメラ100によるフロート録音動作の詳細、及び通信動作の詳細については後述する。
【0049】
上記のフロート録音動作中に、デジタルカメラ100において、イメージセンサ115は動画のフレーム毎の撮像を行い、画像処理エンジン120は順次、動画の各フレームの画像データを生成する。本実施形態のデジタルカメラ100によると、制御部135は、上記のように得られるフロート録音の音声データと、各フレームの画像データとを順次、対応付けるエンコード等を行って、動画ファイルを生成する。生成された動画ファイルは、例えばカードスロット140からメモリカード142に記録される。
【0050】
以上の本システム10の動作によると、例えばユーザが動画撮影を行う際に、デジタルカメラ100においてフロート録音を行え、動画撮影中の音割れ又は音量不足といった録音事故を回避し易くできる。又、こうした動画撮影の際に従来のデジタルカメラで為されていた録音レベル設定の調整といった煩雑な手間も省け、ユーザは、例えば動画撮影の構図等に集中しながら、高精度の収音結果を容易に得ることができる。
【0051】
又、本システム10によると、ユーザは、例えばデジタルカメラ100の動画撮影の結果として得られる動画ファイルにおいて、フロート録音の音声データを得ることができる。これにより、例えばフロート録音を実行する機材を別途用意した場合に比べて、ユーザが撮影後に別機材の収音結果の音声データを、動画ファイルの音声データに差し替えるような編集の手間を省くことができ、ユーザにとってフロート録音を利用し易くできる。
【0052】
2-1.フロート録音動作
本システム10におけるフロート録音動作の詳細について、図4~6を用いて説明する。
【0053】
図5(A)~(F)は、本システム10におけるフロート録音動作を説明するための波形図である。図6は、フロート形式のデータ構造を説明するための図である。
【0054】
本システム10の収音装置200において、音声入力部210により取得された入力音声を示す入力音声信号A1は、図4に示すように、Hレベル信号処理部220と、Lレベル信号処理部230とにそれぞれ入力される。入力音声信号A1の一例を図5(A)に例示する。図5(A)の波形図において、横軸は時間を示し、縦軸は音量を示す(以下同様)。
【0055】
Hレベル信号処理部220において、アンプ222は、比較的大きく設定されたゲインGaにおいて入力音声信号A1を増幅する。A/D変換器224は、アンプ222における入力音声信号A1の増幅結果をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換を行って、Hレベルの音声信号A2を生成する。こうしたHレベル信号処理部220における入力音声信号A1の処理は、本実施形態における第1の増幅変換の一例である。
【0056】
図5(B)は、図5(A)の例の入力音声信号A1から得られるHレベルの音声信号A2を例示する。図5(B)の例では、各信号処理部220,230が出力可能な最大値Ma近傍で、Hレベルの音声信号A2に波形歪みが生じている。一方で、Hレベルの音声信号A2によると、ゲインGaが大きい分、信号対雑音比が高い。
【0057】
Lレベル信号処理部230において、アンプ232は、比較的小さく設定されたゲインGbにおいて入力音声信号A1を増幅する。A/D変換器234は、アンプ232における入力音声信号A1の増幅結果をアナログ信号からデジタル信号にA/D変換して、Lレベルの音声信号A3を生成する。こうしたLレベル信号処理部230における入力音声信号A1の処理は、本実施形態における第2の増幅変換の一例である。
【0058】
図5(C)は、図5(A)の例の入力音声信号A1から得られるLレベルの音声信号A3を例示する。Lレベルの音声信号A3よると、Hレベルの音声信号A2よりも信号波形の歪みが生じ難い。一方で、ゲインGbが小さい分、信号対雑音比は低い。
【0059】
こうした収音装置200において生成される音声信号A2,A3は、所定のダイナミックレンジ(±Ma)及び分解能において音声をデジタル値で示すフィックス形式のデジタル信号である。本システム10は、上記のように生成された2種類の音声信号A2,A3に対するフロート録音のための残りの演算処理を、デジタルカメラ100において行う。
【0060】
本実施形態のデジタルカメラ100において、音声処理エンジン170は、例えば図4に示すように、データ変換部172、増幅部174及び結合部176として各々に対応する演算を行うことによって、フロート演算処理を実行する。
【0061】
デジタルカメラ100の音声処理エンジン170において、まず、データ変換部172は、収音装置200からの各音声信号A2,A3を、フィックス形式からフロート形式の音声データに変換する。フロート形式のデータ構造について、図6を用いて説明する。
【0062】
フロート形式は、データ値が浮動小数点型で表されるデータ形式である。フロート形式のデータ構造は、例えば図6に示すように、符号部50と、指数部51と、仮数部52とを含む。
【0063】
符号部50は、例えばフロート形式のデータ構造を示すビット列において正負の符号を示す部分である。符号部50は適宜、フロート形式のデータ構造から省略されてもよい。
【0064】
指数部51は、フロート形式のビット列において、データ値の指数表記におけるべき指数を示す部分である。指数表記は、例えば2進数で基数2を有する。指数部51によると、こうした表記における小数点の位置に対応した音量のレベルが管理される。
【0065】
仮数部52は、フロート形式のビット列においてデータ値の有効数字を示す部分である。例えば、指数部52に割り当てられるビット数が多い程、音声データの分解能が高められる。
【0066】
フロート形式では、上記ビット列を規定する所定量のビット数が、符号部50と仮数部52と指数部51との間で予め振り分けて設定される。例えば32ビットフロート録音において、符号部50は1ビットを有し、指数部51は7ビットを有し、仮数部52は24ビットを有する。こうしたフロート形式の音声データによると、仮数部52のビット数分の分解能が、指数部51のビット数分の音量レベルにわたり確保できる。
【0067】
データ変換部172としての音声処理エンジン170は、例えばHレベルの音声信号A2が時刻毎に示すデータ値を、それぞれ浮動小数点型において正規化するように指数部51の値及び仮数部52の値を順次、算出して、フロート形式の音声データを生成する。又、音声処理エンジン170は、Lレベルの音声信号A3についても同様に、浮動小数点型の正規化演算を行って、フロート形式の音声データを生成する。こうして生成される音声データは、指数部51の値が大きいほど、大きい音量を示す。正規化は、例えば仮数部52の最上位桁がゼロでなくなるまで指数部51の値を順次、増大させることによって行われる。
【0068】
図4に戻り、音声処理エンジン170において、増幅部174は、例えば収音装置200における各アンプ222,232のゲインGa,Gbを示すゲイン情報に基づいて、ゲインGa,Gb間の差異を相殺する増幅演算を行う。
【0069】
例えば、音声処理エンジン170において、増幅部174は、浮動小数点演算において、フロート形式におけるHレベルの音声信号A2の変換結果を、低い方のゲインGbの分だけ増幅するように、Hレベルの音声データA20を算出する。同様に、増幅部174は、Lレベルの音声信号A3の変換結果を、高い方のゲインGaの分だけ増幅するように、Lレベルの音声データA30を算出する。
【0070】
図5(D)は、図5(B)のHレベルの音声信号A2から算出されたHレベルの音声データA20を例示する。図5(E)は、図5(C)のLレベルの音声信号A3から算出されたLレベルの音声データA30を例示する。増幅部174の演算によると、例えば図5(D),5(E)に示すように、Hレベルの音声データA20とLレベルの音声データA30との間で、音量の大きさを揃えることができる。
【0071】
次に、音声処理エンジン170における結合部176は、例えばHレベルの音声データA20とLレベルの音声データA30とを切り替えながら結合する演算処理により、フロート録音の音声データA10を生成する。図5(F)に、図5(D),(E)の音声データA20,A30から生成されるフロート録音の音声データA10を例示する。
【0072】
例えば、結合部176は、Lレベルの音声データA30の大きさ(絶対値)と所定のしきい値Mtとを比較して、Lレベルの音声データA30がしきい値Mt以上であるときには、Lレベルの音声データA30を、フロート録音の音声データA10に採用する。一方、結合部176は、Lレベルの音声データA30がしきい値Mt未満であるときには、Hレベルの音声データA20を、フロート録音の音声データA10に採用する。しきい値Mtは、例えば各音声データA20,A30において各信号処理部220,230の出力の最大値Maに対応する値Mb以下の近傍に設定される。
【0073】
以上のフロート録音動作によると、本システム10において収音装置200とデジタルカメラ100との協働により、収音装置200により収音された入力音声を精度良く示すフロート録音の音声データA10を得ることができる。又、例えば浮動小数点演算を実行可能な演算回路を、特に収音装置200に設けずに済み、収音装置200の装置構成を簡単化できる。
【0074】
上記の結合部176の処理によると、しきい値判定にLレベルの音声データA30を用いることにより、Hレベルの音声データA20における信号歪みの影響を回避し易い。又、例えば図5(E),(F)に示すように、Hレベルの音声データA20で信号歪みが有り得るほど大音量の範囲では、Lレベルの音声データA30を採用して、フロート録音の音声データA10において信号歪みの影響を抑制できる。更に、例えば図5(D),(F)に示すように、上記大音量の範囲を除いてHレベルの音声データA20を収音結果に採用して、信号対雑音比を向上し易い。
【0075】
結合部176は、Hレベルの音声データA20とLレベルの音声データA30とを結合する種々の演算処理を行ってもよく、例えば上記のようなしきい値判定にヒステリシスを設けてもよい。又、しきい値判定によるHレベルの音声データA20とLレベルの音声データA30との切替が多発するときは、例えばLレベルの音声データA30に一時的に固定されるようにしてもよい。こうした演算処理により、フロート録音の音声データA10において、聴感上の違和感を低減できる。
【0076】
また、本実施形態において、結合部176は、各音声データA20、A30を切り替えながら結合する演算処理の代わりに、例えば所定の結合比でHレベルの音声データA20とLレベルの音声データA30とを結合する浮動小数点演算といった演算処理を行ってもよい。こうした演算処理によっても、本実施形態のデジタルカメラ100は、フロート録音の音声データA10を得られる。
【0077】
又、増幅部174においては、例えばゲイン情報が示すゲインGa,Gbと、双方の音声信号A2,A3間の差異とを比較すること等により、増幅率を補正して上記の増幅処理が行われてもよい。これにより、アンプの製造バラつきなどによる増幅率の差異が生じても結合に影響を与えないロバストなシステムとなる。
【0078】
2-2.通信動作
本システム10における収音装置200とデジタルカメラ100との通信動作の詳細を、図7~8を用いて説明する。以下では、本システム10において、デジタルカメラ100がBLE通信におけるマスタとして動作し、収音装置200がスレーブとして動作する一例を説明する。
【0079】
図7は、本システム10における通信動作を例示するシーケンス図である。図8は、本システム10における通信パケットの構造例を示す図である。
【0080】
例えば、本システム10の通信確立前に、収音装置200は自装置の仕様を示すデバイス情報をブロードキャスト送信するアドバタイジングを行う(S1)。デジタルカメラ100は、BLE通信が適用可能なデバイスを検索するスキャニングを行う(S2)。こうして、デジタルカメラ100が収音装置200からのデバイス情報を受信して、収音装置200とデジタルカメラ100との間の通信接続が確立される(S3)。
【0081】
例えばこうした本システム10の通信確立時(S1~S3)に、収音装置200の制御部240は、記憶部250に格納された各アンプ222,232のゲインGa,Gbを示すゲイン情報をデバイス情報に含めて、通信部260に送信させる(S1)。こうして、デジタルカメラ100の通信モジュール160は、収音装置200からゲイン情報を受信する(S2)。デバイス情報は、収音装置200の識別情報、および自装置がフロート録音動作に適用可能か否かを含んでもよい。
【0082】
次に、デジタルカメラ100の制御部135は、確立された通信接続における各種設定を示す通信設定情報を、収音装置200に通知する(S4)。通信設定情報は、例えばフロート録音動作を行うためのパケット長及びパケットの割り当て設定(図8参照)などを含む。収音装置200の通信部260は、デジタルカメラ100から、通信設定情報を受信する(S4)。
【0083】
その後、デジタルカメラ100は、例えばユーザ操作に応じて動画撮影を開始する(S5)と、収音装置200に収音の動作開始を指示する。通信設定情報の通知(S4)は、例えば動画撮影の開始時(S5)であってもよく、収音開始の指示と共に行われてもよい。収音装置200は、例えばデジタルカメラ100からの指示(S5)に応じて、フロート録音のための増幅変換及び符号化を実行する(S6)。
【0084】
ステップS6において、収音装置200における各信号処理部220,230(図4)は、例えば1チャネルの音声入力信号A1毎に並列に2種類の増幅変換を実行して、チャネル毎にHレベルの音声信号A2とLレベルの音声信号A3とを生成する。さらに、本実施形態の収音装置200においては、生成された各音声信号A2,A3が同様のタイミングでデジタルカメラ100に送信されるように、データ信号の通信パケットへの符号化が行われる。
【0085】
図8は、本システム10における通信パケットの構造例を示す。図8の例では、2チャネルの入力音声信号についての通信パケットを例示している。本例の通信パケットは、30ミリ秒のパケット長さにおいて、1チャネル当たりに2つのセグメントを有する。通信パケットは、本実施形態の通信単位の一例である。
【0086】
図8に例示する通信パケットは、各チャネルにおいて一方のセグメントにHレベルの音声信号A2を格納し、他方のセグメントにLレベルの音声信号A3のデータ値を格納する。ステップS6において、収音装置200のエンコーダ245は、例えばステップS4で受信した通信設定情報に従って、こうした通信パケットを順次、構成することにより、各音声信号A2,A3を符号化する。収音装置200の通信部260は、エンコーダ245の処理結果として生成され、上記の通信パケットで構成されるデータ信号を、デジタルカメラ100に送信する。
【0087】
デジタルカメラ100は、通信モジュール160において、収音装置200からのデータ信号を受信して、データ信号の復号およびフロート録音処理を実行する(S7)。まず、デジタルカメラ100の制御部135は、例えばデコーダ165として機能し、収音装置200からのデータ信号を復号して、Hレベルの音声信号A2とLレベルの音声信号A3とを取得する。
【0088】
さらに、ステップS7において、デジタルカメラ100の音声処理エンジン170は、取得された各音声信号A2,A3に基づいて、上述したフロート録音処理を行って、フロート録音の音声データA10を生成する(図4参照)。こうしたフロート録音処理は、例えばステップS2で取得されたゲイン情報(Ga,Gb)を用いて実行される。例えばデジタルカメラ100の制御部135は、こうして生成された音声データA10と同時に撮影された画像データとを対応付けて、動画ファイルを生成できる。
【0089】
以上の本システム10における通信動作によると、収音装置200とデジタルカメラ100との間におけるデータ信号の無線通信によって、複数チャネルのフロート録音を実現することができる。
【0090】
図8では2チャネルの場合の通信パケットを例示した。本システム10において、データ信号は特に2チャネルに限定されず、1チャネルであってもよいし、3チャネル以上であってもよい。例えば1チャネルの場合、図8に例示した通信パケットのチャネル別の2セグメントに、同じチャネルの各音声信号A2,A3のデータ値を順次、格納することにより、レイテンシを低減するようにしてもよい。
【0091】
以上の説明では、収音装置200からのゲイン情報が本システム10の通信確立時(S1~S3)に行われる例を説明した。本システム10において、ゲイン情報の送受信は、特にこれに限らず、例えば収音装置200とデジタルカメラ100との通信確立後に行われてもよい。
【0092】
3.まとめ
以上のように、本実施形態において、撮像装置の一例のデジタルカメラ100は、撮像部の一例のイメージセンサ115と、音声処理部の一例の音声処理エンジン170と、受信部の一例の通信モジュール160とを備える。イメージセンサ115は、被写体像を撮像して画像データを生成する。音声処理エンジン170は、画像データに対応付けされる音声データを生成する。通信モジュール160は、外部の収音装置200から、第1の音声信号の一例のHレベルの音声信号A2、及び第2の音声信号の一例のLレベルの音声信号A3を受信する。Hレベルの音声信号A2は、収音装置200において入力音声に行われた第1の増幅変換の一例としてHレベル信号処理部220の処理の結果を示す。Lレベルの音声信号A3は、収音装置200において入力音声に行われた、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の一例としてLレベル信号処理部230の処理の結果を示す。音声処理エンジン170は、通信モジュール160から受信された各音声信号A2,A3を入力として、所定のデータ形式の一例のフロート形式において互いに結合する処理を行って、当該データ形式において入力音声を示す収音結果の音声データA10を生成する。
【0093】
以上のデジタルカメラ100によると、音声処理エンジン170においてフロート形式の音声データを生成するための処理を担うことで、収音装置200及びデジタルカメラ100を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる。
【0094】
本実施形態において、第1の増幅変換は、第1のゲインの一例のゲインGaが設定された第1のアンプの一例のアンプ222において入力音声を増幅して、A/D変換することによりHレベルの音声信号A2を生成する。第2の増幅変換は、第1のゲインよりも小さい第2のゲインの一例のゲインGbが設定された第2のアンプの一例のアンプ232において入力音声を増幅して、A/D変換することによりLレベルの音声信号A3を生成する。収音結果の音声データA10において、第1の音声信号に対応する部分の音量は、第2の音声信号に対応する部分の音量以上である。こうして、本システム10の収音結果として、各音声信号A2,A3を用いて幅広いダイナミックレンジにおいて精度良く収音された入力音声の音声データA10を得られる。
【0095】
本実施形態において、音声処理エンジン170は、収音装置200におけるゲインGa,Gbを示すゲイン情報を取得して、取得したゲイン情報を用いて、各音声信号A2,A3から収音結果の音声データA10を生成する。こうしたゲイン情報を用いて、収音結果の音声データA10を精度良く生成できる。例えば、音声処理エンジン170は、ゲイン情報を用いて、各音声信号A2,A3におけるゲインGa,Gb間の差異を低減するように、収音結果の音声データA10を生成する。
【0096】
本実施形態において、音声処理エンジン170は、通信モジュール160における収音装置200との情報通信により、ゲイン情報を取得する。こうして、デジタルカメラ100は、収音装置200のゲイン情報を容易に取得でき、精度良い音声データA10を得やすい。
【0097】
本実施形態において、所定のデータ形式は、仮数部52と指数部51とを有するフロート形式である。音声処理エンジン170は、入力音声の音量が大きいほど指数部51を増大させるように、収音結果の音声データA10を生成する。こうして、本実施形態のデジタルカメラ100は、フロート形式を用いて収音結果の音声データA10を高精度に生成できる。
【0098】
本実施形態において、通信モジュール160は、収音装置200から所定の通信規格にしたがうデータ信号を受信する。データ信号は、通信規格における通信単位の一例の通信パケット毎にHレベル音声信号A2が格納された第1の部分の一例のセグメントと、Lレベル音声信号A3が格納された第2の部分の一例とを含む(図8参照)。こうして、デジタルカメラ100と収音装置200間のデータ通信により、収音結果の音声データA10をデジタルカメラ100で得易くできる。
【0099】
本実施形態において、デジタルカメラ100は、収音結果の音声データA10と、画像データとを対応付けて動画ファイルを生成する制御部135をさらに備える。本実施形態のデジタルカメラ100によると、動画撮影の結果の動画ファイルにおいて、上記データ形式による収音結果の音声データA10を得られ、ユーザにとってこうした動画撮影を行い易くすることができる。
【0100】
本実施形態において、収音装置200は、各音声信号A2,A3を含むデータ信号の送信により、音声信号をデジタルカメラ100に送信する。収音装置200は、収音装置200は、入力音声を取得する音声入力部210と、入力音声に第1の増幅変換を行って、第1の音声信号を生成する第1の信号処理部の一例のHレベル信号処理部220と、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換を入力音声に行って、第2の音声信号を生成する第2の信号処理部の一例のHレベル信号処理部230と、第1の音声信号及び第2の音声信号を、撮像装置に送信する送信部の一例の通信部260とを備える。本実施形態の収音装置200により、収音装置200及びデジタルカメラ100を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる。
【0101】
本実施形態において、撮像システム10は、上記の収音装置200と、収音装置200から第1及び第2の音声信号を受信して、受信した第1及び第2の音声信号を入力として、所定のデータ形式において互いに結合する処理を行って、当該データ形式において入力音声を示す収音結果の音声データA10を生成するデジタルカメラ100とを備える。本システム100によると、収音装置200及びデジタルカメラ100を用いて、所定のデータ形式において収音結果を示す音声データを得易くできる。
【0102】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0103】
上記の実施形態1において、デジタルカメラ100が収音装置200からゲイン情報を受信する動作例を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、本実施形態のデジタルカメラ100のフラッシュメモリ145には、予め収音装置200の機種別にゲイン情報が格納されていてもよい。本実施形態のデジタルカメラ100は、ゲイン情報の代わりに、収音装置200の識別情報を受信してもよく、こうした識別情報に基づいて、フラッシュメモリ145からゲイン情報を取得してもよい。
【0104】
また、本実施形態において、ゲイン情報等は、収音装置200からに限らず、ユーザ操作を介して取得されてもよい。こうした変形例について、図9を用いて説明する。
【0105】
図9は、変形例のデジタルカメラ100における表示モニタ130の表示例を示す。例えば、本実施形態のデジタルカメラ100は、表示モニタ130にHレベル信号処理部220のゲインGaとLレベル信号処理部230のゲインGbとを変更可能な操作画面を表示して、操作部150において操作画面のユーザ操作を受け付ける。
【0106】
図9の例では、各ゲインGa,Gbの数値が変更可能に表示されている。デジタルカメラ100は、例えば収音装置200の機種別に各ゲインGa,Gbの数値の選択肢を表示してもよい。或いは、デジタルカメラ100は、収音装置200の機種を選択肢として表示し、その選択のユーザ操作を受け付けてもよい。本実施形態のデジタルカメラ100は、上記のような種々のユーザ操作の入力にしたがって、ゲイン情報を取得してもよい。
【0107】
上記の各実施形態では、収音装置200とデジタルカメラ200とがBLE通信を行ってフロート録音を実現する例を説明した。本実施形態において、収音装置200とデジタルカメラ200とは、BLE通信以外の無線通信または有線通信によってフロート録音を実現してもよい。例えば、本実施形態の収音装置200は、デジタルカメラ100との間でUSB規格の有線通信を行って、各音声信号A2,A3のデータ送信を行ってもよい。
【0108】
上記の各実施形態では、1チャネルの入力音声に対して2つの信号処理部220,230を備える収音装置200を説明した。本実施形態の収音装置200は、1チャネルの入力音声に対して3つ以上の信号処理部を備えてもよい。本実施形態の収音装置200においては、3つ以上の信号処理部の間でダイナミックレンジを分担するように各々のゲインが設定されてもよい。本実施形態のデジタルカメラ100は、こうした3つ以上の信号処理部の各々の収音結果の音声信号に基づいて、各々の音声信号において精度良く収音された音声を用いるように、フロート形式の音声データを生成してもよい。
【0109】
上記の各実施形態では、収音装置200がフロート録音処理を行わない例を説明した。本実施形態において、収音装置200は、フロート録音処理を行ってもよく、こうした演算処理を実現する演算回路等の構成を、更に備えてもよい。あるいは、収音装置200は、フロート録音とは別の録音機能を、更に備えてもよい。こうした場合であっても、例えば実施形態1と同様に収音装置200から各音声信号A2,A3をデジタルカメラ100に送信可能であることにより、デジタルカメラ100においてもフロート録音処理を行えて、例えば収音装置200の演算負荷を低減できる。本実施形態の収音装置200によっても、上記実施形態と同様に、収音装置200及びデジタルカメラ100を用いて、フロート形式において収音結果を示す音声データを得易くすることができる。
【0110】
上記の各実施形態では、収音装置200がデジタルカメラ100に各音声信号A2,A3のデータ送信を行って、デジタルカメラ100がフロート録音処理を行う例を説明した。本実施形態において、収音装置200は、デジタルカメラ100等の撮像装置以外の種々の電子機器といった音声処理装置にデータ送信を行ってもよい。本実施形態において、こうした音声処理装置が、実施形態1のデジタルカメラ100と同様に、フロート録音処理を行ってもよい。
【0111】
すなわち、本実施形態の音声処理装置は、音声データを生成する音声処理部と、外部の収音装置から、第1の音声信号及び第2の音声信号を受信する受信部とを備える撮像装置である。第1の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた第1の増幅変換の結果を示す。第2の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の結果を示す。音声処理部は、受信部から受信された第1及び第2の音声信号に基づいて、所定のデータ形式において入力音声を示す収音結果の音声データを生成する。これにより、本実施形態では、データ通信する収音装置と音声処理装置とを用いて、フロート形式において収音結果を示す音声データを得易くすることができる。
【0112】
上記の各実施形態では、所定のデータ形式の一例としてフロート形式を例示した。本実施形態において、所定のデータ形式は、必ずしもフロート形式に限らず、例えば音声の分解能の範囲よりも大幅に音量が異なる音声間で各々の分解能を確保可能な種々のデータ形式であってもよい。
【0113】
また、上記の各実施形態では、記録媒体としてメモリカード142を例示し、デジタルカメラ100の記録部としてカードスロット140を例示したが、記録部はこれに限定されない。本実施形態において、記録媒体はメモリカードに限らず、例えばSSDドライブなどの外部記憶装置であってもよい。また、本実施形態のデジタルカメラ100は、例えば通信モジュール160を介してクラウドサーバ等に動画ファイル等をアップロードしてもよい。
【0114】
また、上記の各実施形態では、光学系110及び駆動部112を備えるデジタルカメラ100を例示した。本実施形態の撮像装置は、光学系110及び駆動部112を備えなくてもよく、例えば交換レンズ式のカメラであってもよい。
【0115】
また、上記の各実施形態では、撮像装置の例としてデジタルカメラを説明したが、これに限定されない。本開示の撮像装置は、画像撮影機能を有する電子機器(例えば、ビデオカメラ、スマートフォン、タブレット端末等)であればよい。
【0116】
(態様のまとめ)
以下、本開示に係る各種態様を付記する。
【0117】
本開示に係る第1の態様は、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、画像データに対応付けされる音声データを生成する音声処理部と、外部の収音装置から、第1の音声信号及び第2の音声信号を受信する受信部とを備える撮像装置である。第1の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた第1の増幅変換の結果を示す。第2の音声信号は、収音装置において入力音声に行われた、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換の結果を示す。音声処理部は、受信部から受信された第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において入力音声を示す収音結果の音声データを生成する。
【0118】
第2の態様は、第1の態様に記載の撮像装置において、第1の増幅変換は、第1のゲインが設定された第1のアンプにおいて入力音声を増幅して、A/D(アナログ/デジタル)変換することにより第1の音声信号を生成する。第2の増幅変換は、第1のゲインよりも小さい第2のゲインが設定された第2のアンプにおいて入力音声を増幅して、A/D変換することにより第2の音声信号を生成する。収音結果の音声データにおいて、第1の音声信号に対応する部分の音量は、第2の音声信号に対応する部分の音量以上である。
【0119】
第3の態様は、第2の態様に記載の撮像装置において、音声処理部は、収音装置における第1及び第2のアンプに設定されるゲイン情報を取得して、ゲイン情報を用いて、第1及び第2の音声信号から収音結果の音声データを生成する。
【0120】
第4の態様は、第3の態様に記載の撮像装置において、音声処理部は、受信部における収音装置との情報通信により、ゲイン情報を取得する。
【0121】
第5の態様は、第1ないし第4の何れかの態様に記載の撮像装置において、所定のデータ形式は、仮数部と指数部とを有するフロート形式である。音声処理部は、入力音声の音量が大きいほど指数部を増大させるように、収音結果の音声データを生成する。
【0122】
第6の態様は、第1ないし第5の何れかの態様に記載の撮像装置において、受信部は、収音装置から所定の通信規格にしたがうデータ信号を受信する。データ信号は、通信規格における通信単位毎に第1の音声信号が格納された第1の部分と、第2の音声信号が格納された第2の部分とを含む。
【0123】
第7の態様は、第1ないし第6の何れかの態様に記載の撮像装置が、収音結果の音声データと、画像データとを対応付けて動画ファイルを生成する制御部をさらに備える。
【0124】
第8の態様は、撮像装置に音声信号を送信する収音装置である。収音装置は、入力音声を取得する音声入力部と、入力音声に第1の増幅変換を行って、第1の音声信号を生成する第1の信号処理部と、第1の増幅変換とは異なる第2の増幅変換を入力音声に行って、第2の音声信号を生成する第2の信号処理部と、第1の音声信号及び第2の音声信号を、撮像装置に送信する送信部とを備える。
【0125】
第9の態様は、第8の態様に記載の収音装置と、収音装置から第1及び第2の音声信号を受信して、受信した第1及び第2の音声信号を入力として互いに結合する処理を行って、所定のデータ形式において入力音声を示す収音結果の音声データを生成する撮像装置とを備える撮像システムである。
【0126】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0127】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0128】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示は、収音装置から音声信号を受信する撮像装置、収音装置、及びこれらを含む撮像システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0130】
10 撮像システム
100 デジタルカメラ
115 イメージセンサ
135 制御部
160 通信モジュール
170 音声処理エンジン
200 収音装置
210 音声入力部
220,230 信号処理部
240 制御部
260 通信部
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9