(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158948
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両におけるCO2排出測定デバイス装置
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074603
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】522289448
【氏名又は名称】株式会社アルモ
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】507415266
【氏名又は名称】有限会社浅草ギ研
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】河田 宜人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝佳
【テーマコード(参考)】
3E138
【Fターム(参考)】
3E138AA06
3E138BA09
3E138MA10
3E138MB12
3E138MD05
3E138MF06
3E138MF08
(57)【要約】
【課題】車両の排気ガスから排出されるCO
2量を精確に測定し得る測定デバイス装置を提供する。
【解決手段】車両のエンジンと同期して駆動されるオルタネータからバッテリに供給される充電電流(+側)およびバッテリから出力される負荷電流(-側)を検出して形成した電流信号に基づき、エンジンの始動キーを操作した後、負荷電流が所定の閾値Ithを超えて増大し、その後の平坦期間T2を経て減少してゼロ点P0に至り、さらに充電電流が増大して最大値Imaxに達した時点に基づいてエンジンの始動時点Pstを特定するとともに、負荷電流がほぼゼロの所定範囲に収まり、しかもその継続時間T5が所定の閾値Tthを超えた時点に基づきエンジンの停止時点Pspを特定して始動時点Pstと停止時点Pspとの間の時間をエンジン駆動時間として該駆動時間に基づき排気ガス中のCO
2量を演算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの駆動に同期して一体的に駆動されるオルタネータと、
前記オルタネータからバッテリに供給される充電電流および前記バッテリから出力される負荷電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段が検出する前記充電電流または前記負荷電流を表す電流信号を入力して、前記エンジンの始動キーを操作した後、前記負荷電流が所定の閾値を超えて増大し、その後の平坦期間を経て減少してゼロ点に至り、さらに前記充電電流が増大して最大値に達した時点に基づいて前記エンジンの始動時点を特定するとともに、前記負荷電流が所定範囲に収まり、しかもその継続時間が所定値を超えた時点に基づき前記エンジンの停止時点を特定して前記始動時点と前記停止時点との間の時間をエンジン駆動時間として前記エンジン駆動時間に基づき前記エンジンから排出された排気ガス中のCO2量を演算し、その演算結果を排出CO2量として出力する演算処理手段とを有することを特徴とする車両におけるCO2排出測定デバイス装置。
【請求項2】
請求項1に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記演算処理手段は、
前記車両に搭載され、前記始動時点を表す第1の状態信号と前記停止時点を表す第2の状態信号とを送出する端末機器と、
前記車両の遠隔に配設され、前記第1の状態信号と前記第2の状態信号とを受信して前記エンジンの駆動時間を演算するとともに、前記駆動時間に基づき前記エンジンから排出された排気ガス中のCO2量を演算する演算処理部を備えた中央監視所とを有することを特徴とする車両におけるCO2排出測定デバイス装置。
【請求項3】
請求項2に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
複数台の前記車両のそれぞれに前記端末機器をそれぞれ搭載する一方、
前記中央監視所の前記演算処理部は、各端末機器から送出されてきた前記第1の状態信号と前記第2の状態信号とをそれぞれ受信して前記エンジンの駆動時間をそれぞれ演算するとともに、各駆動時間を積算してすべてのエンジンから排出された排気ガス中のCO2量の総量を演算するものであることを特徴とする車両におけるCO2排出測定デバイス装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記車両は、建設機械であることを特徴とする車両におけるCO2排出測定デバイス装置。
【請求項5】
請求項4に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記電流検出手段および前記端末機器は、前記建設機械に搭載したことを特徴とするCO2排出測定デバイス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両におけるCO2排出測定デバイス装置に関し、特にCO2を含む排気ガスの排出を伴うエンジンの駆動モードとオルタネータによる発電モードとが一対一に対応する建設機械等の車両の排気ガス中のCO2排出量の計測に適応して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の抑制のためには温室効果ガスの排出量の抑制が喫緊の課題とされている。温室効果ガスの代表としてCO2がある。そこで、CO2の発生を抑制する種々の提案がなされているが、かかる抑制を効果的に行うには、CO2の発生量を精確に把握することが肝要である。建築業界では、現場におけるCO2の発生量を企業別に報告する義務が課されている。
【0003】
現在、建築業界では現場に搬入されたエンジン駆動式の建設機械等や下請けの搬入車両等をリストアップしてCO2の総排出量を計算して報告している。この場合には実際の建設機械の稼働時間が不明なため、稼働予想時間として、8時間稼働に対して0.4掛け程度で計算している。しかしながらすべての建設機械に前記計算方法が適切に当てはまるとは考えにくく実測による根拠が必要とされる。
【0004】
そこで、建設機械を含む車両のエンジンが駆動されているということは、排気ガス(CO2)が排出されているということと等価であるという事実に即し、エンジンが駆動されている状態を検出することでエンジンから排出されるCO2の積算値を計測するというアイデアが考えられる。この場合、エンジンがON状態となっていることを計測のスタート時点とすると、ON状態となっていてもエンジンが駆動されていない場合もあることから計測値に信憑性がない。また、エンジンが駆動されたことをエンジンの振動を利用して検知することも考えられるが、他の振動も拾う場合が多いので、同様に信頼性に欠ける。
【0005】
一方、オルタネータにより充電されるバッテリの電圧を監視することでエンジンの駆動時間を検知する方法も考えられる。オルタネータは、エンジンの駆動と同期して駆動されて電力を発生し、エンジンの駆動はバッテリの電圧に反映されると考えられるからである。しかしながらバッテリの出力電圧は、エンジンの停止中であっても車両の電装品(エアコン、ワイパー等)が動作していれば変動し、他にも種々の要素でエンジンの駆動とは関係なく変動する場合がある。すなわち、エンジンの駆動とバッテリ電圧の変動とに間には、厳密な相関関係は成立せず、バッテリ電圧の変動に基づきエンジンの駆動時間を検出しても満足できる測定精度のデータを得ることができないことが分かった。
【0006】
このように従来においては、充分信頼できるCO2排出量を計測し得る技術は、存在していなかった。
【0007】
関連の公知技術として、車両による貨物の輸送時の二酸化炭素排出量を把握して環境保護に貢献することを目的とする二酸化炭素排出量計測システムが存在する(特許文献1)。これは、車両の移動距離と輸送する貨物重量とに基づいて二酸化炭素排出量を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、バッテリを充電するため、エンジンと同期して駆動されるオルタネータを有する車両におけるCO2排出量を精確に測定し得る測定デバイス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は次の知見を基礎とするものである。
【0011】
図1は建設機械(油圧ショベル、ブルドーザ等)等の車両のオルネータからバッテリに充電される充電電流およびバッテリから前記車両の電装品(エアコン、ワイパー等)に供給される負荷電流を表す電流信号の波形を示す波形図である。ここで、+側は充電電流の大きさ、-側は負荷電流の大きさをそれぞれ示している。
【0012】
図1に示すように、車両の始動キーを操作する(回す)と電源がONになることにより一定期間T1、小さな負荷電流が流れる。したがって、電流信号は一定期間T1、負側に小さく変化する。その後、セルモータが駆動されることにより負荷電流が急激に大きくなり、セルモータの駆動開始に伴う平坦期間T2を経てゼロ点P0に至り、今度は充電電流が増大して最大値Imaxに達する。
【0013】
そこで、一定期間T1の終点と平坦期間T2の始点との間に負荷電流の閾値Ithを設け、電流信号に基づく負荷電流が閾値Ithを超えて増大するとともに、平坦期間T2を経てゼロ点P0に至り、今度は電流信号に基づく充電電流が増大して最大値Imaxに達した時点に基づきエンジンの始動時点Pstを特定すれば精確にエンジンの始動時点Pstを特定できる。例えば、最大値Imaxに達した後の一定期間T3の経過時点をエンジンの始動時点Pstとすれば始動時点Pstを精確に検出し得る。
【0014】
一方、
図1に示すように電流信号に基づく充電電流が小さく変動している期間は、アイドリング期間であり、エンジンは駆動している。しかしながら、アイドリング期間に続けて電流信号がほぼゼロとなる平坦期間T4が発生する場合がある。この場合、その後電流信号が小さく変動するアイドリング期間が再開されるという特有の現象がみられる場合があることが分かった。また、エンジンの停止時には電流信号はほぼゼロで一定になる。そこで、アイドリング期間に挟まれて一旦平坦となる期間を排除すべく、平坦期間T4の閾値Tthを設け、T4<Tthの関係にある平坦期間T4を除き、T5>Tthとなる平坦期間T5がエンジンの停止を反映している平坦期間T5であると判断する。そして、平坦期間T5において閾値Tthが経過した時点でエンジンの停止時点Stpを特定することで、当該停止時点Stpを精確に特定し得る。
【0015】
かくしてエンジンの始動時点Pstと停止時点Pspとの間の時間でエンジンの駆動時間を精確に検出することができる。
【0016】
上記知見を基礎とする本発明の構成は、次の点を特徴とする。
【0017】
本発明の第1の態様は、
車両のエンジンの駆動に同期して一体的に駆動されるオルタネータと、
前記オルタネータからバッテリに供給される充電電流および前記バッテリから出力される負荷電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段が検出する前記充電電流または前記負荷電流を表す電流信号を入力して、前記エンジンの始動キーを操作した後、前記負荷電流が所定の閾値を超えて増大し、その後の平坦期間を経て減少してゼロ点に至り、さらに前記充電電流が増大して最大値に達した時点に基づいて前記エンジンの始動時点を特定するとともに、前記負荷電流が所定範囲に収まり、しかもその継続時間が所定値を超えた時点に基づき前記エンジンの停止時点を特定して前記始動時点と前記停止時点との間の時間をエンジン駆動時間として前記エンジン駆動時間に基づき前記エンジンから排出された排気ガス中のCO2量を演算し、その演算結果を排出CO2量として出力する演算処理手段とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記演算処理手段は、
前記車両に搭載され、前記始動時点を表す第1の状態信号と前記停止時点を表す第2の状態信号とを送出する端末機器と、
前記車両の遠隔に配設され、前記第1の状態信号と前記第2の状態信号とを受信して前記エンジンの駆動時間を演算するとともに、前記駆動時間に基づき前記エンジンから排出された排気ガス中のCO2量を演算する演算処理部を備えた中央監視所とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
複数台の前記車両のそれぞれに前記端末機器をそれぞれ搭載する一方、
前記中央監視所の前記演算処理部は、各端末機器から送出されてきた前記第1の状態信号と前記第2の状態信号とをそれぞれ受信して前記エンジンの駆動時間をそれぞれ演算するとともに、各駆動時間を積算してすべてのエンジンから排出された排気ガス中のCO2量の総量を演算するものであることを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様は、
第1~第3の態様のいずれか一つに記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記車両は、建設機械であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第5の態様は、
第4の態様に記載する車両におけるCO2排出測定デバイス装置において、
前記電流検出手段および前記端末機器は、前記建設機械に搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オルタネータによるバッテリへの充電電流の供給時間とエンジンの駆動時間とが等価であるという事実を利用して、バッテリに供給される充電電流およびバッテリから出力される負荷電流を表す電流信号の新たな知見に基づく特性を利用してエンジンの駆動時点および停止時点を特定している。したがって、エンジンの駆動時点と停止時点との間の期間で精確にエンジンの駆動時間を選出することができる。
【0023】
この結果、エンジンの駆動時間に関連する排出ガス中のCO2量を演算して精確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】車両のオルタネータからバッテリに供給される充電電流と、バッテリから車両の電装品に供給される負荷電流に基づく電流信号の波形を示す波形図である。
【
図2】本発明の実施の形態を建設機械に適用した場合を示すCO
2排出測定デバイス装置を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るCO
2排出測定デバイス装置の全体を示すブロック図である。
【
図4】
図3の各部の信号を示す説明図で、(a)は
図1に示す電流信号と同様の波形図、(b)はフラグ生成部で生成する状態信号、(c)はカウンタで生成するカウント信号である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図2は本発明の実施の形態に係る車両におけるCO
2排出測定デバイス装置を示す模式図である。同図に示すように、本形態の車両1は、バッテリ3を充電するため、エンジンに直結されて駆動するオルネータ2を搭載している建設機械の一種であるショベルカーである。ここで、車両1は建設機械に限定するものではない。オルタネータ2がエンジン(図示せず)と同期して駆動され、エンジンの駆動とオルタネータ2の駆動とが同時に行われる等、オルタネータ2の出力電流がエンジンの駆動を反映する関係があるものであれば、乗用車等も含み、特に車両1の種類に制限されることはない。
【0027】
オルタネータ2は配線4A,4Bを介して充電電流をバッテリ3に供給する。したがって、エンジンが駆動されている間は、オルタネータ2も駆動され、この間バッテリ3には充電電流が供給される。また、バッテリ3からは車両1のワイパやエアコン等の電装品に負荷電流を供給する。
【0028】
ここで、充電電流および負荷電流は、直流であるので、本形態のオルタネータ2は交流発電機に整流手段が一体化されて直流電流を出力するもの、または直流発電機(ダイナモ)で形成したものとする。電流検出手段である電流検出器Iは車両1に配設され、配線4Aの外周を取り囲んで装着されるクランプ形式のものであり、配線4Aを流れる充電電流およびこれとは反対方向に流れる負荷電流に基づき充電電流および負荷電流を表す電流信号を出力する。本形態における電流検出器Iは、直流電流を好適に検出することができるホール素子を利用したものとした。
【0029】
本形態における演算処理手段IIは、車両1に配設された端末機器IIIと、車両1に対し遠隔の所定位置に配設された中央監視所IVとを備えている。端末機器IIIは電流検出器Iから供給された電流信号を所定の手順で処理して生成される第1および第2の2種類の状態信号を中央監視所IVに向けて無線伝送する。さらに詳言すると、端末機器IIIは、電流検出器Iが検出する電流信号を入力し、
図1に示すように、車両1のエンジンの始動キーを操作した後、一定期間T1を経て負荷電流が所定の閾値Tthを超えて増大し、その後の平坦期間T2を経て減少してゼロ点P0に至り、さらに充電電流が増大して最大値Imaxに達した後の一定期間T3経過後の時点をエンジンの始動時点Pstとして特定する。一方、
図1に示すように電流信号に基づく充電電流が小さく変動している期間は、アイドリング期間であり、エンジンは駆動していると判断し、電流信号がほぼゼロになり、このゼロ期間である平坦期間T5が閾値Tthを超えた時点をエンジンの停止と判断してエンジンの停止時点Pspを特定する。
【0030】
なお、エンジンの停止を検出する判断基準に、平坦期間T5>閾値Tthなる条件を設けることによりエンジンのアイドリングの途中に現れる電流信号が一時的にほぼゼロとなるが、エンジンの停止状態を表していない期間を排除することができる。
【0031】
一方、中央監視所IVは端末機器IIIから無線伝送された電流信号に基づく状態信号に基づき、エンジンの始動時点Pstと停止時点Pspとの間の期間で表されるエンジンの駆動時間を検出するとともに、エンジンの駆動時間に基づきエンジンから大気中に排出された排気ガス中のCO2の量を検出する。ここで、単位時間あたりに排出される排気ガス中のCO2量は別途計測したデータとして中央監視所IVの記憶装置に記憶されている。
【0032】
図3は本発明の実施の形態に係るCO
2排出測定デバイス装置の全体を示すブロック図、
図4は
図3の各部の信号を示す図で、(a)は
図1に示す電流信号と同様の波形図、(b)はフラグ生成部で生成する状態信号、(c)はカウンタで生成するカウント信号である。両図中、
図1および
図2と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
図3に示すように、本形態はN台の車両1(
図2参照、以下同じ)がその駆動により排出した排気ガス中のCO
2の総量を計測するための測定デバイス装置である。
図3に示すように、N個の電流検出器I1~INは
図2に示す態様で各車両1に装着してあり、各電流検出器I1~INに対応して設けられた端末機器III1~IIINに充電電流および負荷電流の情報を含む
図4(a)に示すような電流信号を供給している。ここで電流検出器I1~INと端末機器III1~IIINとは一対一の対応する一組として各車両1にそれぞれ搭載されている。
【0034】
端末機器III1は電流信号生成部21、フラグ生成部22,カウンタ23および送信機24を有している。ここで電流信号生成部21は、
図4(a)に示すように、再現された電流信号および前述した新たな知見(段落[0012]~[0014]参照)に基づきエンジンの始動時点Pstと停止時点Pspとを検出する。フラグ生成部22は、状態信号が「0」から「1」に、また「1」から「0」に変化するごとにその回数をカウントする。すなわち、状態信号の状態「0、「1」が変化するごとにそのカウント数を「1」ずつカウントアップする。
【0035】
送信機24は、フラグ生成部22で生成した「1」、「0」の2種類の状態信号と、カウンタ23がカウントした内容を表すカウント信号とを中央監視所IVに無線で送出する。
【0036】
他の各車両12~1Nにも電流検出器I1および端末機器III1と同様の電流検出器I2~INおよび端末機器III2~IIINが搭載されており、各端末機器III1~IIINで同様の情報処理が実行される。
【0037】
中央監視所IVは、端末機器III1~IIINを搭載する各車両1の遠隔に配設されており、受信機31,32~3N、CPU41,42~4N、中央演算処理部51およびRAM52を有している。受信機31,32~3Nは各端末機器III1~IIINから無線送信される状態信号およびカウント信号を受信してCPU41,42~4Nに供給する。各CPU41,42~4Nでは、
図4(d)に示すような状態信号に基づきエンジンの始動時点Pstと停止時点Pspとを特定し、各CPU41,42~4Nで特定される始動時点Pstと停止時点Pspとに基づいて各車両1のエンジンの駆動時間を計測し、この駆動時間を表す信号を中央演算処理部51に供給する。中央演算処理部51では、各車両1のエンジンの駆動時間に基づき各車両1が排出した排気ガス中のCO
2量を演算し、当該システムに属する車両1から環境に排出されるCO
2の総排出量を演算する。
【0038】
本形態において、各端末機器III1~IIINからは所定の信号を無線で遠隔の中央監視所IVに送信しているが、この場合の通信方式としては、LPWA、LTE、4G、5G等、既存の通信方式をいずれも利用することができる。本形態では、特に消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式であるLPWA(Low Power Wide Area)のSigfoxを適用した。
【0039】
ここで、本形態では、通信の消費電力を低減する目的で一方向にしか通信をしていない。すなわち、送信のみを行っているので、装置の故障等により正常な通信が阻害されていないかどうかの判定を行う必要がある。これは、定期的、例えば3時間おきに送信し、中央監視所IV側で一定時間(例えば3時間)を超えて受信がなかった場合に異常事態の発生を検知として、所定の措置を採るようにしている。
【0040】
かくして上記実施の形態に係るCO2排出測定デバイス装置は、CO2削減を目的とした建設現場におけるCO2排出量の実稼働測定デバイスとして有用なものとなる。近年、地球温暖化防止の観点からCO2の排出量を企業別で報告する義務が課されているが、かかる義務の遂行に良好に応えることができる。
【0041】
上記実施の形態では、端末機器IIIと中央監視所IVとの間の情報の伝達は無線を利用したが、これに限る必要はない。車両1,オルタネータ2,バッテリ3,配線4A,4B,電流検出器Iおよび端末機器IIIからなる一つのブロックを、例えば一つの端末と考え、車両1毎に形成される複数の端末をインターネットのウェブ回線に接続して各端末の情報を中央監視所IVに集積すれば、複数端末(現場)におけるCO2の排出量を中央監視所IVで演算してシステム全体のCO2排出量を計測することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、種々の車両におけるCO2排出測定デバイス装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 オルタネータ
3 バッテリ
4A,4B 配線
I1~IN 電流検出器
II 演算手段
III1~IIIN 端末機器
IV 中央監視所
Pst 始動時点
Psp 停止時点