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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158954
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱交換器、製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241031BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F28D15/02 101G
F28D15/02 101L
F28D15/02 L
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074619
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀志
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322DB02
5E322DB06
5E322DB12
5E322FA01
5F136CC12
(57)【要約】
【課題】厚み方向の寸法を抑制しつつ、発熱体を効率よく冷却することが可能な熱交換器などを製造する。
【解決手段】本発明の熱交換器は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として蒸発器に環流させる。そして、蒸発器は、液相の作動流体を収容する液相収容体と、蒸発体を挟んで液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、液相収容体と気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、囲い部材における側面と対向する対向面と蒸発体の側面とに挟まれて設けられる封止材と、を備え、囲い部材は、厚み方向における液相収容体および気相収容体の間の距離よりも厚さが薄い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、
前記蒸発器は、
液相の作動流体を収容する液相収容体と、
前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、
前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、
前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、
を備え、
前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄い、
熱交換器。
【請求項2】
前記囲い部材の前記対向面は、前記蒸発体の前記側面から離間する、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記囲い部材は、前記対向面から前記蒸発体に向けて突出するとともに先端が前記蒸発体の前記側面から離間する突出部が設けられ、
前記封止材は、前記突出部によって前記厚み方向の移動が制限される、請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記厚み方向において前記突出部を挟んで複数の封止材が設けられる、請求項3記載の熱交換器。
【請求項5】
前記囲い部材は、前記液相収容体および前記気相収容体と比較して熱伝導率が低い、請求項1乃至4のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記封止材は、Oリングである、請求項5記載の熱交換器。
【請求項7】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、
前記蒸発器は、
液相の作動流体を収容する液相収容体と、
前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、
前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、
前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、
を備え、
前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄く、前記気相収容体から離間し、前記液相収容体および前記気相収容体と比較して熱伝導率が低く、前記対向面から前記蒸発体に向けて突出する突出部が設けられ、
前記封止材は、前記厚み方向において前記突出部を挟んで複数設けられたOリングであり、前記突出部によって前記厚み方向の移動が制限される、
熱交換器。
【請求項8】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器を製造する製造方法であって、
前記蒸発器は、
液相の作動流体を収容する液相収容体と、
前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、
前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、
前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、
を備え、
前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄く、
前記囲い部材に前記封止材を嵌める工程と、
前記囲い部材に嵌められた前記封止材に対して前記蒸発体を嵌める工程と、
前記蒸発体が嵌められた前記囲い部材を、前記液相収容体および前記気相収容体で挟む工程と、
を含む製造方法。
【請求項9】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器と、
を備える装置において、
前記蒸発器は、
液相の作動流体を収容する液相収容体と、
前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、
前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、
前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、
を備え、
前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄い、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設置角度の如何に関わらず効率的に発熱部品を冷却するべく、蒸発部、凝縮部、及び液戻り管の内部にそれぞれ設けられるとともに、毛細管力を生じさせるウィックを有するループ型ヒートパイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-215702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電子機器などの装置が小型化および高性能化することにともない、装置に設けられる発熱体の発熱密度が増大している。そして、例えば、装置の薄型化にともない、厚み方向の寸法を抑制しつつ、発熱体を効率よく冷却する熱交換器などが求められている。
そこで、本発明は、厚み方向の寸法を抑制しつつ、発熱体を効率よく冷却することが可能な熱交換器などを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、前記蒸発器は、液相の作動流体を収容する液相収容体と、前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、を備え、前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄い、熱交換器である。
ここで、前記囲い部材の前記対向面は、前記蒸発体の前記側面から離間するとよい。
また、前記囲い部材は、前記対向面から前記蒸発体に向けて突出するとともに先端が前記蒸発体の前記側面から離間する突出部が設けられ、前記封止材は、前記突出部によって前記厚み方向の移動が制限されるとよい。
また、前記厚み方向において前記突出部を挟んで複数の封止材が設けられるとよい。
また、前記囲い部材は、前記液相収容体および前記気相収容体と比較して熱伝導率が低いとよい。
また、前記封止材は、Oリングであるとよい。
【0006】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、前記蒸発器は、液相の作動流体を収容する液相収容体と、前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、を備え、前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄く、前記気相収容体から離間し、前記液相収容体および前記気相収容体と比較して熱伝導率が低く、前記対向面から前記蒸発体に向けて突出する突出部が設けられ、前記封止材は、前記厚み方向において前記突出部を挟んで複数設けられたOリングであり、前記突出部によって前記厚み方向の移動が制限される、熱交換器である。
【0007】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる平板状の蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器を製造する製造方法であって、前記蒸発器は、液相の作動流体を収容する液相収容体と、前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、を備え、前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄く、前記囲い部材に前記封止材を嵌める工程と、前記囲い部材に嵌められた前記封止材に対して前記蒸発体を嵌める工程と、前記蒸発体が嵌められた前記囲い部材を、前記液相収容体および前記気相収容体で挟む工程と、を含む製造方法である。
【0008】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器と、を備える装置において、前記蒸発器は、液相の作動流体を収容する液相収容体と、前記蒸発体を挟んで前記液相収容体と反対側に設けられ気相の作動流体を収容する気相収容体と、前記液相収容体と前記気相収容体とに挟まれて設けられ、平板状の前記蒸発体の厚み方向に沿う側面を囲う囲い部材と、前記囲い部材における前記側面と対向する対向面と前記蒸発体の前記側面とに挟まれて設けられる封止材と、を備え、前記囲い部材は、前記厚み方向における前記液相収容体および前記気相収容体の間の距離よりも厚さが薄い、装置である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される技術によれば、厚み方向の寸法を抑制しつつ、発熱体を効率よく冷却することが可能な熱交換器などを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るループ型ヒートパイプを示す概略構成図である。
図2】本実施の形態に係る蒸発器の分解斜視図である。
図3図1の面III-IIIにおける断面図である。
図4】ウィックの支持構成を説明する図である。
図5】ウィックの封止構成を説明する図である。
図6】コネクタの詳細構成を説明する図である。
図7】蒸発器の製造方法を説明する図である。
図8】ループ型ヒートパイプを備えるコンピュータを説明する図である。
図9】第1の変形例を説明する図である。
図10】第2の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<ループ型ヒートパイプ1の構成>
図1は、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ1を示す概略構成図である。
まず、図1を参照しながら、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1の構成を説明する。本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1は、冷却素子の一例である。ループ型ヒートパイプ1は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末など電子機器の筺体の内部に備えられる中央演算処理装置(CPU)などの発熱体500を、外部から動力を供給することなく冷却するため、作動流体を循環させるよう構成されている。
【0012】
詳細に説明すると、ループ型ヒートパイプ1は、作動流体が気化する際の潜熱を利用して発熱体500を冷却するため作動流体を蒸発させる蒸発器(Evaporator)101と、放熱体400を介して放熱して蒸発器101で気化された作動流体を液化する凝縮器(Condenser)105とを有する。
【0013】
また、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器101で気化された作動流体を凝縮器105まで送る蒸気管(Vapor Line)107と、凝縮器105で液化された作動流体を蒸発器101まで送る液管(Liquid Line)109とを備えている。なお、ループ型ヒートパイプ1内には液相および気相の間で相変化する作動流体が充填されている。この作動流体は、例えば、水、アルコール、アンモニア等が用いられる。
【0014】
<ループ型ヒートパイプ1の動作>
次に、図1を参照して、ループ型ヒートパイプ1の動作を説明する。
発熱体500において発生する熱は、蒸発器101に伝達される(矢印C1参照)。蒸発器101において熱を吸収した作動流体は気化し、蒸気管107を通って凝縮器105へ送られる(矢印A1参照)。凝縮器105へ送られた作動流体は、放熱体400を介して熱を放出して(矢印C2参照)液化する。そして、液化した作動流体は、液管109を通って再び蒸発器101へと送られる(矢印A4参照)。
【0015】
ここで、蒸気管107および液管109は、ステンレスや樹脂などにより曲げ変形可能に構成される。すなわち、輸送管である蒸気管107および液管109は、フレキシブル化したケーブルとして構成される。
【0016】
本実施の形態に係る蒸発器101は、平面視略長方形のフランジ部で接合された円筒状の形状である。なお、以下の説明においては、図1における蒸発器101の円筒の中心軸方向(図中上下方向)、すなわち蒸発器101の厚み方向を、単に厚み方向ということがある。また、厚み方向と直交する方向であってフランジ部の一辺に沿う方向を長手方向ということがある。また、長手方向および厚み方向に交差する方向を、幅方向ということがある。なお、ここでの上下方向など向きの名称は、便宜上のものであり、ループ型ヒートパイプ1を設置する向きを限定するものではない。
【0017】
<蒸発器101>
(蒸発器101の概略構成)
図2は、本実施の形態に係る蒸発器101の分解斜視図である。
次に、図2を参照しながら、本実施の形態が適用される蒸発器101の概略構成を説明する。
【0018】
図2に示すように、蒸発器101は、蒸発器本体110と、蒸発器本体110に重ねて設けられるウィック支持体120と、ウィック支持体120によって支持されるウィック130と、蒸発器本体110、ウィック支持体120、およびウィック130を覆う蓋体140と、蒸発器本体110に接続されるコネクタ190とを有する。
【0019】
ここで、蒸発器本体110、ウィック支持体120、および蓋体140は、内部にウィック130を収容する筐体として機能する。そして、蒸発器本体110、ウィック支持体120、および蓋体140の内部には、作動流体が充填される。
【0020】
以下、蒸発器101を構成する各機能部材について詳細に説明をする。
まず、蒸発器本体110について説明をする。蒸発器本体110は、有底円筒状のフィン収容部111と、平面視略長方形の蒸発器フランジ112とを有する。
【0021】
ここで、フィン収容部111の内底部には、幅方向に延びる突起であるフィン113が設けられている。このフィン113は、長手方向において所定の間隔で複数並べて設けられている。フィン113同士の間の空間は、気相の作動流体が流れる蒸気流路である。付言すると、気相の作動流体は、蒸気流路に沿って幅方向に案内される。
【0022】
また、フィン収容部111は、その側面に、液相の作動流体が流出する貫通孔である作動流体流出口117が形成されている。また、蒸発器フランジ112は、各角部に、発熱体500に対して固定するための固定片115を備える。また、固定片115は、板面中央に、ボルト(不図示)を貫通させる固定孔118が形成されている。また、蒸発器フランジ112は、ボルト390(後述する図3参照)を貫通させる第1固定孔119が複数形成されている。
【0023】
ここで、蒸発器本体110は、例えば銅などの金属や樹脂により形成される。この蒸発器本体110は、所謂高熱伝導材により形成されることが好ましい。
【0024】
次に、ウィック支持体120について説明をする。ウィック支持体120は、平板状のスペーサ230と、スペーサ230およびウィック130の間を封止する第1リング210および第2リング270を有する。
【0025】
スペーサ230は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂(樹脂)や金属により形成される。スペーサ230は、所謂低熱伝導材により形成されることが好ましい。さらに説明をすると、スペーサ230は、蒸発器本体110および蓋体140よりも低い熱伝導率の材質で形成されることが好ましい。
【0026】
図示のスペーサ230は、板面中央に形成された貫通孔である中央開口231が形成されている。また、スペーサ230は、ボルト390(後述する図3参照)を貫通させる第2固定孔239が複数形成されている。
【0027】
ここで、スペーサ230は、中央開口231の内周面232から中央開口231の仮想中心軸側に向けて突出する支持突起233が備えられている。さらに説明をすると、図示の例の支持突起233は、厚み方向の中央部において内周面232から突出する。そして、内周面232と支持突起233とにより、第1隅部234および第2隅部236が形成される。この第1隅部234および第2隅部236には、第1リング210および第2リング270が各々配置される。なお、支持突起233が設けられていることにより、第1リング210および第2リング270が厚み方向において移動することが制限される。さらに説明をすると、支持突起233は、第1リング210および第2リング270がスペーサ230から外れることを抑制する。
【0028】
第1リング210および第2リング270は、Oリングである。さらに説明をすると、第1リング210および第2リング270は、それぞれ断面が略円形の環型をした封止材である。第1リング210および第2リング270の材質は特に限定されないが、例えばゴム材料により形成される。このゴム材料は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムなどである。
【0029】
次に、ウィック130について説明をする。図示のウィック130は、概形が略円板状である。ウィック130の寸法は特に限定されるものではないが、例えば直径が5mm乃至500mmであり、厚さが3mm乃至100mmである。
【0030】
また、ウィック130は、多孔質金属(ポーラスメタル)などの多孔質体により形成される。ウィック130は、作動流体に毛細管力を発生させ、結果として作動流体を移動させる。ウィック130の実効空孔径は、0.1~20μmである。また、ウィック130の空孔率は、25~70%である。なお、実効空孔径および空孔率の測定法は特に限定されない。例えば、実効空孔径および空孔率は、水中含侵法による見かけ密度測定、水銀圧入法による気孔径分布測定、あるいはX線CTによる気孔観察などにより測定してもよい。
【0031】
また、ウィック130は、上述の金属製の多孔質体に限定されるものではない。ウィック130は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂製の多孔質体、セラミック多孔質体、ガラス多孔質体、多孔質繊維など、その内部に多数の孔、すなわち空隙が形成された材料であればよい。また、ウィック130として、熱伝導率が低い材質を用いると、蒸発器101における熱リークを低減することができる。なお、熱リークをより低減したい場合、一般的に熱伝導率が金属よりも低い非金属製の材料を用いることが好ましい。
【0032】
次に、蓋体140について説明をする。蓋体140は、有底円筒状の蓋体収容部141と、平面視略長方形の蓋体フランジ142とを有する。蓋体収容部141の底面には、それぞれ貫通孔である作動流体流入口145および注入口147が形成されている。また、蓋体フランジ142は、ボルト390(後述する図3参照)を貫通させる第3固定孔149が複数形成されている。
【0033】
蓋体140は、例えばステンレス鋼(SUS)などの金属や樹脂などにより形成される。図示の例の蓋体140は、蒸発器本体110よりも低く、スペーサ230よりも高い熱伝導率の材質である。
【0034】
ここで、蒸発器101の製造時に、蓋体140の注入口147を介して、蒸発器101内に作動流体が導入される。また、注入口147は、作動流体の導入した後に塞がれる。また、蓋体140の作動流体流入口145には、液管109が接続される。そして、蒸発器101の動作時には、作動流体流入口145を介して、液管109から蓋体140内に液相の作動流体が流入する。
【0035】
コネクタ190は、蒸発器本体110と蒸気管107とを接続する。コネクタ190は、例えばステンレス鋼(SUS)などの金属や樹脂などにより形成される。コネクタ190の詳細構成については後述する。
【0036】
(蒸発器101の内部構成)
図3は、図1の面III-IIIにおける断面図である。
次に、図3を参照しながら、蒸発器本体110の内部構成について説明をする。
図3に示すように、蒸発器101は、蒸発器本体110、ウィック支持体120、および蓋体140を厚み方向に重ねて配置される。これらの蒸発器本体110、ウィック支持体120、および蓋体140は、ボルト390により互いに固定される。
【0037】
互いに対向して配置された蒸発器101のフィン収容部111と、蓋体140の蓋体収容部141とによって、内部空間R0が形成される。この内部空間R0の内部にウィック130が収容される。内部空間R0の内部は、ウィック130によって、液相の作動流体が収容される空間である液相領域R1と、気相の作動流体が収容される空間である気相領域R3とに区画される。
【0038】
ここで、ウィック130は、厚み方向において、蒸発器101および蓋体140に挟まれて配置される。さらに説明をすると、ウィック130は、蒸発器101の蒸発器フランジ112および蓋体140の蓋体フランジ142に両板面が抑えられて配置される。このことにより、ウィック130の端部に負荷が集中しウィック130の欠けが生じることが抑制される。また、ウィック130の蒸発器側板面133は、フィン113によって支持される。さらに説明をすると、複数形成されているフィン113の各先端部は、ウィック130の蒸発器側板面133と接触する。付言すると、フィン113の先端が平面でウィック130の蒸発器側板面133と均等に接触することで、接触面における蒸気の生成が促進される。
【0039】
また、ウィック130は、ウィック130の径方向、すなわち厚み方向と直交する方向において、ウィック支持体120の内周面に支持される。さらに説明をすると、ウィック130は、ウィック支持体120の第1リング210および第2リング270に外周面が抑えられて配置される。
【0040】
(蒸発器101の動作)
次に、図3を参照しながら、蒸発器本体110の動作を説明する。
図3に示すように、液管109から蒸発器本体110内部に流入した液相の作動流体(矢印A11参照)は、液相領域R1に収容される。そして、液相の作動流体は、ウィック130に浸透する。さらに説明をすると、液相の作動流体は、ウィック130の毛細管力によりウィック130内を移動しながら(矢印A22参照)、発熱体500の熱により加熱され気化する。この気化した作動流体は、気相領域R3においてフィン113に沿って流れる。そして、気相の作動流体は、作動流体流出口117から流出する(矢印A13参照)。この流出した気相の作動流体は、コネクタ190を介して蒸気管107へと送られる。
【0041】
一方、凝縮器105(図1参照)で液化した作動流体は、液管109を介して蒸発器本体110内へと流入する(矢印A11参照)。蒸発器本体110内へ流入した作動流体は、ウィック130に浸透する。このように、ウィック130において作動流体の流れが途切れることなく、上記のサイクルが繰り返される。そして、発熱体500において発生した熱が、蒸発器101から凝縮器105へと輸送される。
【0042】
<ウィック130の周辺構成>
(ウィック130の支持構成)
図4は、ウィック130の支持構成を説明する図である。
次に、図4を参照しながら、ウィック130を支持する構成について詳細に説明する。
【0043】
上記のように、ウィック130は、ウィック支持体120の第1リング210および第2リング270に外周面が抑えられて配置される。ここで、ウィック支持体120の支持突起233は、第2リング270から離間している。
【0044】
さらに説明をすると、支持突起233の内径D2は、ウィック130の外径D1より大大きい。このことにより、ウィック130の外周面131とスペーサ230に形成された支持突起233の先端である内周頂面237とが離間し、間隙GAが形成される。
【0045】
また、上記のように、ウィック130は、蒸発器本体110の蒸発器フランジ112および蓋体140の蓋体フランジ142に両板面が抑えられて配置される。ここで、スペーサ230の厚みT2は、ウィック130の厚みT1よりも小さい。言い替えると、スペーサ230の厚みT2は、蒸発器本体110の蒸発器フランジ112および蓋体140の蓋体フランジ142の厚み方向の間隔よりも小さい。このことにより、図示の例では蒸発器本体110の上面114とスペーサ230の下面238とが離間し、間隙GBが形成される。
【0046】
ここで、間隙GAが形成されることにより、ウィック130からスペーサ230に熱が伝わること(矢印F1参照)が抑制される。また、間隙GBが形成されることにより、蒸発器本体110からスペーサ230に熱が伝わること(矢印F2参照)が抑制される。このように間隙GAおよび間隙GBが形成されることにより、スペーサ230がウィック130から熱的に分断される。そして、蓋体140が蒸発器本体110から熱を受けることが抑制される。言い替えると、蒸発器本体110からの熱漏れが抑制される。
【0047】
付言すると、厚みが薄いウィック130が採用される場合などにおいて、スペーサ230の厚みを薄くすることが求められることがある。スペーサ230の厚みを薄くすると、蒸発器本体110側の熱が蓋体140側へと伝わりやすくなる。そこで、間隙GBが形成されることにより、蒸発器本体110側の熱が蓋体140側に伝わりにくくなる。
【0048】
(ウィック130の封止構成)
図5は、ウィック130の封止構成を説明する図である。
次に、図5を参照しながら、ウィック130の封止構成を説明する。
まず、上記のように第1リング210および第2リング270がウィック130の周辺を封止する。
【0049】
第1リング210は、厚み方向において、スペーサ230の支持突起233と、蒸発器101の蒸発器フランジ112とにより挟まれて配置される。また、第1リング210は、径方向において、ウィック130の外周面131と、ウィック支持体120の内周面232とにより挟まれて配置される。付言すると、第1リング210は、厚み方向および径方向ともに、スペーサ230およびスペーサ230以外の部材により挟まれて配置される。また、第1リング210は、接触領域CP11乃至CP14において周辺の部材と接触している状態である。
【0050】
第2リング270は、厚み方向において、スペーサ230の支持突起233と、蓋体140の蓋体フランジ142とにより挟まれて配置される。また、第2リング270は、径方向において、ウィック130の外周面131と、ウィック支持体120の内周面232とにより挟まれて配置される。付言すると、第2リング270は、厚み方向および径方向ともに、スペーサ230およびスペーサ230以外の部材により挟まれて配置される。また、第2リング270は、接触領域CP21乃至CP24において周辺の部材と接触している状態である。
【0051】
ここで、ウィック130の製造時の不良などの要因により、ウィック130の一部に亀裂、すなわちクラックCRが生じることがある。このウィック130にクラックCRが生じた場合における第1リング210および第2リング270の作用について説明をする。この例におけるクラックCRは、図示のようにウィック130の内部から外周面131に到達して形成されているものとする。
【0052】
この構成においては、気相領域R3内の気相の作動流体がクラックCRを通りウィック130の外周側に流出し得る。ここで、作動流体がクラックCRから流出したとしても、接触領域CP11、接触領域CP14、接触領域CP21、接触領域CP24で囲まれた空間は封止された状態である。このことにより、気相の作動流体が、例えば液相領域R1内に流入することが抑制される。付言すると、液相領域R1内と気相領域R3内の圧力差が減少し、ループ型ヒートパイプ1が動作しなくなることが抑制される。
【0053】
ここで、図示のスペーサ230がウィック130および蒸発器本体110から離間して配置されている。そして、スペーサ230の内周面232が、第1リング210および第2リング270によって支持されることにより、スペーサ230の位置が固定される。また、図示の例においては、スペーサ230に第1リング210および第2リング270を配置するための溝は形成されない。したがって、スペーサ230の構成が簡素化され製造コストが抑制され得る。
【0054】
さらに説明をすると、図示の蒸発器本体110および蓋体140において、第1リング210および第2リング270を配置するための溝は形成されない。したがって、蒸発器本体110および蓋体140の構成が簡素化され製造コストが抑制され得る。付言すると、上記構成は、蒸発器本体110および蓋体140に第1リング210および第2リング270を配置するために溝を形成する場合と比較して、蒸発器101の寸法(例えば、厚み方向、幅方向)を抑制することが可能である。なお、ここでの第1リング210および第2リング270を配置するための溝とは、第1リング210(第2リング270)の断面において、第1リング210の底部および両側部の三方向を囲う凹部である。
【0055】
なお、本実施の形態とは異なる例としては、ウィック130の外周をOリングで覆う構成ではなく、断面略C字状(コ字状)の弾性変形可能なVリング(不図示)でウィック130の外周端部を覆う構成が採用され得る。しかしながら、この構成においては、ウィック130およびフィン113の接触調整が困難になる。
【0056】
また、本実施の形態とは異なる他の例として、ウィック130の外周端部を所謂シール系接着剤(不図示)で固定する構成が採用され得る。しかしながら、この構成においては、シール系接着剤の塗布時に、シール系接着剤がウィック130に吸収されシール機能が消失し得る。さらに、このウィック130への吸収を抑制するには、ウィック130の外周面等に所定の処理が必要となり、製造コストが増加し得る。
【0057】
一方で、本実施の形態においては、上記のように第1リング210および第2リング270を配置するための溝は不要である。ここで、ウィック130に第1リング210および第2リング270を配置するための溝を形成することが不要となることで、ウィック130の幅方向の長さおよび長手方向の長さを狭くすることが可能となる。このことにより、ウィック130の材料コストを削減することが可能となる。また、ウィック130において第1リング210および第2リング270のためののりしろが不要になる。
【0058】
また、図示のスペーサ230は、汎用のOリングである第1リング210および第2リング270により、ウィック130のシール性が確保される。さらに説明をすると、ウィック支持体120を製造し試験を行ったところ、シール性に問題がないことが確認された。
【0059】
<コネクタ190>
図6は、コネクタ190の詳細構成を説明する図である。
次に、図6を参照しながら、コネクタ190の詳細構成を説明する。
【0060】
図6(A)に示すように、コネクタ190は略直方体状の部材である。図示のコネクタ190は、平板状の形状である。このコネクタ190は、蒸発器側開口191と、蒸気管側開口195とを備える。蒸発器側開口191は側面192に形成されている。また、蒸気管側開口195は板面196に形成されている。そして、これらの蒸発器側開口191および蒸気管側開口195は、内部空間197で接続される。
【0061】
図6(B)に示すように、コネクタ190は、蒸発器本体110および蒸気管107に対して固定される。図示の例においては、コネクタ190の蒸発器側開口191が、蒸発器本体110の作動流体流出口117と対向する位置にコネクタ190が固定される。また、コネクタ190の蒸気管側開口195が蒸気管107と対向する位置で、コネクタ190と蒸気管107とが固定される。コネクタ190は、例えばロウ付けやレーザ溶接など周知の固定技術により固定される。
【0062】
このように配置されたコネクタ190は、気相の作動流体を案内する。具体的には、コネクタ190の内部には、蒸発器本体110の作動流体流出口117から、蒸発器側開口191を介して気相の作動流体が流入する(矢印A13参照)。また、コネクタ190の内部の作動流体は、蒸気管側開口195から蒸気管107へと流出する(矢印A3参照)。
【0063】
ここで、図6(B)に示すように、図示の例における蒸発器101は、作動流体の流出と作動流体の流入とが、同一の方向(図6(B)における厚み方向における上側)で行われる。言い替えると、蒸発器101においては、作動流体が流入する向きと同一の方向に対して作動流体が流出する。このことにより、蒸発器101における発熱体500側(図中上下方向下側)の構成が簡素化され得る。
【0064】
<蒸発器101の製造方法>
図7は、蒸発器101の製造方法を説明する図である。
次に、図7を参照しながら、蒸発器101の製造方法について説明をする。
【0065】
図7(A)に示すように、スペーサ230に第1リング210および第2リング270が嵌め込まれる。そして、図7(B)に示すように、スペーサ230に嵌めこまれた第1リング210および第2リング270に対して、ウィック130が嵌め込まれる。このことにより、スペーサ230に対してウィック130が固定される。
【0066】
次に、図7(C)に示すように、スペーサ230が蒸発器101および蓋体140によって挟み込まれる。そして、図7(D)に示すように、蒸発器101、スペーサ230、および蓋体140がボルト390によって固定(締結)される。このことにより、蒸発器101および蓋体140の内部にウィック130が配置された状態となる。
【0067】
なお、詳細な説明は省略するが、上記のように形成された蒸発器101を、蒸気管107および液管109を介して、凝縮器105と接続することにより、ループ型ヒートパイプ1が製造される。
【0068】
ここで、図7(A)に示すように、スペーサ230に第1リング210および第2リング270を嵌め込まれた状態でスペーサ230を持ち上げた場合、第1リング210および第2リング270が落下しない程度にスペーサ230が第1リング210および第2リング270を保持する。言い替えると、第1リング210および第2リング270が落下しない程度に、第1リング210および第2リング270がスペーサ230内で突っ張っている状態である。
【0069】
また、図7(B)に示すように、スペーサ230に嵌めこまれた第1リング210および第2リング270に対して、ウィック130を嵌め込んだ状態でスペーサ230を持ち上げた場合、ウィック130が落下しない程度にスペーサ230、第1リング210および第2リング270がウィック130を支持する。なお、ここではスペーサ230に嵌めこまれた第1リング210および第2リング270に対して、ウィック130を嵌め込むことを説明したが、これに限定されない。例えば、スペーサ230内にウィック130を配置した状態で、第1リング210および第2リング270を嵌め込む態様でもよい。
【0070】
<ループ型ヒートパイプ1を備える装置>
図8は、ループ型ヒートパイプ1を備えるコンピュータ600を説明する図である。
次に、図8を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1を備える装置を説明する。ループ型ヒートパイプ1が備える装置は、発熱体500を備えるものであれば特に限定されない。
【0071】
例えば、図8に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、コンピュータ600に設けられてもよい。コンピュータ600は、CPU発熱体により構成される発熱体500が基板610に複数設けられている。また、コンピュータ600は、コールドプレートである放熱体400を有する。そして、各発熱体500と放熱体400とが、ループ型ヒートパイプ1によって接続される。このコンピュータ600においては、発熱体500で発生した熱が、ループ型ヒートパイプ1を介して、放熱体400へと伝送される。
【0072】
<変形例>
以下では、ループ型ヒートパイプ1の変形例を説明する。なお、以下の説明においては、上記の実施の形態の構成と同一の部分には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略することがある。
【0073】
(変形例1)
図9は、第1の変形例を説明する図である。
次に、図9を参照しながら、第1の変形例を説明する。
上記の説明においては、ウィック130を支持するウィック支持体120の固定方法として、蒸発器本体110および蓋体140でウィック支持体120を挟み込み、ボルト390で固定することを説明した。ここで、蒸発器本体110および蓋体140に挟まれるウィック支持体120の位置が固定されれば、固定方法は特に限定されない。
【0074】
例えば、ねじ止め加工により、ウィック支持体120が固定されてもよい。具体的には、図9(A)に示すように、蒸発器本体310における蒸発器フランジ312の外周面にねじ溝313が形成される。また、蓋体340の蓋体フランジ342が、ウィック支持体120および蒸発器本体310の外周を覆うよう形成される。また、蓋体フランジ342の内周面にねじ溝343が形成される。このねじ溝313およびねじ溝343を噛み合わせることにより、蒸発器本体310および蓋体340がウィック支持体120を挟み固定する構成となる。
【0075】
また、曲げ加工により、ウィック支持体120が固定されてもよい。具体的には、図9(B)に示すように、蒸発器本体410の蒸発器フランジ412に曲げ加工を施した曲げ部418によって、ウィック支持体120および蓋体440の蓋体フランジ442の外周が覆われる。そして、蒸発器フランジ412の端部413によって蓋体フランジ上面443が抑えられる。このことにより、蒸発器本体410および蓋体440が、ウィック支持体120を挟み固定する構成となる。なお、図9(B)に示す曲げ加工は、一般的に加工が容易であり、製造コストを低減させ得る。
【0076】
(変形例2)
図10は、第2の変形例を説明する図である。
次に、図10を参照しながら、第2の変形例を説明する。
【0077】
上記の説明においては、ウィック支持体120が第1リング210および第2リング270を備えることを説明したが、これに限定されない。例えば、図10(A)に示すように、ウィック530の厚みが薄い場合などにおいて、ウィック支持体520が単一のリング510を備える構成でもよい。単一のリング510を備える構成は、複数のリングを備える構成と比較して製造コストを低減させ得る。また、図示は省略するが、ウィック支持体120が3つ以上のリングを備える構成でもよい。なお、ウィック支持体120が複数のリングを備えることにより、より確実に封止がなされる。
【0078】
また、上記の説明においては、蒸発器101に設けられたウィック130を支持する構成としてウィック支持体120を説明したが、支持する対象はウィック130に限定されない。例えば、図10(B)に示すように、オリフィス流量計701において、上記各構成が採用されてもよい。
【0079】
具体的に説明をすると、オリフィス流量計701は、第1管710に設けられた第1フランジ715と、第2管770に設けられた第2フランジ775と、オリフィスプレート支持体720と、オリフィスプレート730と、ボルト790とを備える。
【0080】
第1フランジ715においては、外周面716と第1管710の内部とを接続する貫通孔である第1圧力ポート810が形成されている。また、第2フランジ775においては、外周面776と第2管770の内部とを接続する貫通孔である第2圧力ポート820が形成されている。
【0081】
また、オリフィスプレート支持体720は、板状部材であり板面中央に貫通孔が形成されたスペーサ750と、スペーサ750の内周面に設けられた第1リング760および第2リング780とを有する。
【0082】
また、オリフィスプレート730は、略円板状の部材であり板面中央に開口(絞り)が形成されている。このオリフィスプレート730の外周面は、第1リング760および第2リング780によって支持される。
【0083】
ここで、第1管710および第2管770内を一方向に流体が流れる(矢印B1参照)。そして、オリフィス流量計701は、第1圧力ポート810および第2圧力ポート820を介してオリフィスプレート730の前後の圧力差から、流体の流量を検出する。図示の例では、スペーサ750を利用することにより、第1フランジ715および第2フランジ775に第1リング760および第2リング780を配置するための溝加工を施すことが不要となる。さらに説明をすると、第1管710および第2管770に所謂汎用のフランジを形成することが可能となり、製造コストを抑制し得る。
【0084】
(他の変形例)
上記の説明においては、ウィック130が円板状であることを説明したが、これに限定されない。ウィック130の側面において角が形成されない形状であればよい。例えば、平面視略長方形の板状部材であり、長方形の各隅部にあたる部分が湾曲面で形成される構成としてもよい。
【0085】
また、上記の説明においては、第1リング210および第2リング270がOリングであることを説明したが、ウィック130の外側面を弾性変形しながら封止可能な部材であれば、これに限定されない。
【0086】
第1リング210および第2リング270は、例えば、所謂シールリングの一例として、Xリング、Dリング、Tリングなどであってもよい。さらに説明をすると、第1リング210および第2リング270断面形状は特に限定されない。また、第1リング210および第2リング270は、金属リングとゴムを組み合わせた環状形状のオイルシールなどにより構成されてもよい。また、スペーサ230と第1リング210および第2リング270とが一体的に形成される態様でもよい。
【0087】
また、上記の説明においては、ウィック130の外周面131とスペーサ230に形成された支持突起233の内周頂面237とが離間し間隙GAが形成されることを説明した。また、蒸発器本体110の上面114とスペーサ230の下面238とが離間し間隙GBが形成されていることを説明した。これらの部材同士の間での伝熱が抑制されるものであれば、部材同士の配置はこれに限定されない。
【0088】
ウィック130の外周面131とスペーサ230に形成された支持突起233の内周頂面237との間を例に説明をすると、例えば外周面131と内周頂面237との間に他の部材が挟まれる構成であってもよい。なお、挟まれる他の部材は、外周面131と内周頂面237よりも低熱伝導率であることが好ましい。また、外周面131と内周頂面237とが対向する面の一部において接触する構成であってもよい。この接触する領域は、互いに離間する領域の面積よりも小さいことが好ましい。接触する領域は、互いに離間する領域の面積の20%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
また、上記の説明においては、ウィック130の外周面131とスペーサ230に形成された支持突起233の内周頂面237とが離間し間隙GAが形成されることを説明したがこれに限定されない。例えば、蒸発器本体110の上面114とスペーサ230の下面238とが離間するとともに、あるいは替えて、スペーサ230の上面と蓋体140の下面とが離間する構成であってもよい。
【0090】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0091】
ループ型ヒートパイプ1は、熱交換器の一例である。コンピュータ600は、装置の一例である。ウィック130は、蒸発体の一例である。蓋体140は、液相収容体の一例である。蒸発器本体110は、気相収容体の一例である。スペーサ230は、囲い部材の一例である。第1リング210および第2リング270は、封止材の一例である。突出部は、支持突起233の一例である。
【符号の説明】
【0092】
100…ループ型ヒートパイプ、101…蒸発器、105…凝縮器、110…蒸発器本体、140…蓋体、210…第1リング、230…スペーサ、233…支持突起、270…第2リング、500…発熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10