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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015896
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240130BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61F13/511 400
A61F13/494 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118272
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永橋 歩美
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA11
3B200DA03
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】使用者によって使用形態を選択可能とすると共に、使用形態に拘らず前後方向の端部からの体液の漏れを抑制できる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】トップシート2とバックシート3とこれらの間に配置された吸収体4とを備え、使用者の前後に対応する前後方向D1を有する吸収性物品1であって、トップシート2は、前後方向D1の一方の端部にオーバーシート10が重ねられ、オーバーシート10は、トップシート2に臨む第1面11が親水性を有し、第1面11の反対側の第2面12が撥水性を有するシート材であり、固定領域K1において、剥離を阻害する固定力でトップシート2に固定され、固定領域K1を折り返し位置として前後方向D1の外側に向かって折り返し可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシートとバックシートとこれらの間に配置された吸収体とを備え、使用者の前後に対応する前後方向と前記前後方向に直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、
前記トップシートは、前記前後方向の少なくとも一方の端部にオーバーシートが重ねられ、
前記オーバーシートは、前記トップシートに臨む第1面が親水性を有し、前記第1面の反対側の第2面が撥水性を有するシート材であり、固定領域において、剥離を阻害する固定力で前記トップシートに固定され、前記固定領域を折り返し位置として前記前後方向の外側に向かって折り返し可能とする
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載された吸収性物品において、
前記固定領域は、前記オーバーシートの前記前後方向の外側縁に沿って設定されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された吸収性物品において、
前記オーバーシートの周縁部には、前記固定領域と前記オーバーシートの前記前後方向の内側縁との間に仮固定領域が設定され、
前記オーバーシートは、前記仮固定領域において、前記固定領域よりも弱く、前記トップシートからの剥離を許容する固定力で、前記トップシートに固定されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載された吸収性物品において、
前記仮固定領域は、前記固定領域側に第1仮固定部が設けられ、前記オーバーシートの前記前後方向の内側縁側に第2仮固定部が設けられ、
前記第1仮固定部は、前記第2仮固定部よりも弱い固定力で前記オーバーシートを前記トップシートに固定し、前記第2仮固定部は、前記固定領域よりも弱い固定力で前記オーバーシートを前記トップシートに固定する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項3に記載された吸収性物品において、
前記トップシートには、弾性伸縮材の収縮力で前記トップシートから起立する一対のギャザーシートが設けられ、
前記ギャザーシートは、前記吸収体の前記幅方向の両側部に配置され、前記前後方向の両端部に、収縮しない非伸縮領域を有し、前記前後方向の中間部に、前記弾性伸縮材の収縮力が機能する伸縮領域を有し、
前記オーバーシートは、前記ギャザーシートを覆い、前記固定領域及び前記仮固定領域は、前記伸縮領域に重ならない位置に設定されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項5に記載された吸収性物品において、
前記仮固定領域は、前記ギャザーシートの前記伸縮領域に対し、前記幅方向に沿って並ぶ位置に、前記オーバーシートを前記トップシートに固定しない間欠部が設けられている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項5に記載された吸収性物品において、
前記バックシートの非肌側には、使用時に下着に係止される係止部が設けられ、
前記係止部は、前記トップシートと前記吸収体と前記バックシートとが重なる積層方向から見て、前記ギャザーシートの前記非伸縮領域に重ならない位置に配置されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載された吸収性物品において、
前記オーバーシートは、少なくとも前記第1面に凹凸を有するシート材によって構成されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の前後に対応する前後方向に長い吸収性物品において、前後方向の一端部(前端部)からの体液の漏れを防止するため、前後方向の一端部(前端部)を使用者側に立ち上げて使用される吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-29807号公報
【特許文献2】特開2005-52219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸収性物品では、使用者によっては装着時の違和感から、前後方向の一端部を立ち上げての使用に抵抗を感じる人がいる。また、装着時の違和感を緩和するために前後方向の一端部を立ち上げずに使用する場合では、吸収性物品の前後方向の一端部から体液の漏れが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、使用者によって使用形態を選択可能とすると共に、使用形態に拘らず前後方向の端部からの体液の漏れを抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、トップシートとバックシートとこれらの間に配置された吸収体とを備え、使用者の前後に対応する前後方向と前記前後方向に直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、前記トップシートは、前記前後方向の少なくとも一方の端部にオーバーシートが重ねられ、前記オーバーシートは、前記トップシートに臨む第1面が親水性を有し、前記第1面の反対側の第2面が撥水性を有するシート材であり、固定領域において、剥離を阻害する固定力で前記トップシートに固定され、前記固定領域を折り返し位置として前記前後方向の外側に向かって折り返し可能とする構成とした。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明の吸収性物品は、使用者によって使用形態を選択可能とすると共に、使用形態に拘らず前後方向の端部からの体液の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の吸収性物品を示す一部を破断した平面図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3図1におけるB部の拡大図である。
図4図3におけるC-C断面図である。
図5図3におけるD-D断面図である。
図6】実施例1の吸収性物品においてオーバーシートを折り返した状態を示す要部平面図である。
図7図6におけるE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による吸収性物品を実施するための形態は、図面に示す実施例1に基づいて以下の通り説明される。
【0010】
実施例1における吸収性物品1は、体液(主に経血やおりもの等)の吸収を目的とする生理用ナプキンである。実施例1の吸収性物品1は、図1に示されたように、トップシート2と、バックシート3と、吸収体4と、一対のギャザーシート5と、を備えている。吸収性物品1は、トップシート2とバックシート3の間に吸収体4を挟み込んだ状態で、トップシート2の上にさらにギャザーシート5が重ねられ、少なくとも周縁部を含む適宜の領域がホットメルト等の接着剤や溶着等によって固定されて形成されている。
【0011】
そして、吸収性物品1は、使用時にバックシート3が下着に固定され、トップシート2が使用者の肌に対向する。すなわち、吸収性物品1は、トップシート2側が肌側(表側)となり、バックシート3側が非肌側(裏側)となる。図1の平面図は、吸収性物品1を肌側から見た図である。
【0012】
また、以下の説明では、使用者の身体の前後に対応する方向は吸収性物品1の前後方向D1とされ、前後方向D1に直交する方向は吸収性物品1の幅方向D2とされる。さらに、トップシート2と吸収体4とバックシート3とが順に重なる方向(吸収性物品1の厚さ方向)は吸収性物品1の積層方向D3とされる。
【0013】
吸収性物品1は、積層方向D3から見た平面視において、前後方向D1に細長い扁平形状を有している。また、実施例1の吸収性物品1は、前後方向D1の中間領域において、幅方向D2の外側へ延出した一対のウイング部6、6が形成されている。ウイング部6は、吸収性物品1が下着に装着された際、基端部位にて非肌側に折り返され、下着のクロッチ部分に巻き付いて吸収性物品1を係止する部分である。
【0014】
図1に示された例では、吸収性物品1は、幅方向D2の中央位置で前後方向D1に延びる中心線CLを対称軸として、ほぼ線対称の平面視形状を有している。なお、吸収性物品1の形状は中心線CLに対して線対称でなくともよい。さらに、吸収性物品1の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、ウイング部6の形状及び大きさ等を含む)も、中心線CLを対称軸とする線対称であってもよいし、線対称でなくてもよい。
【0015】
トップシート2は、体液を速やかに透過させる透液性のシート材である。トップシート2を構成するシート材は、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。また、不織布を構成する素材繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法は、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。なお、これらの加工法のうち、スパンレース法は、柔軟性に富む不織布を製造できる点で好ましい。また、スパンボンド法は、ドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、不織布を構成する素材繊維は、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維等が用いられてもよい。
【0016】
バックシート3は、体液を透過させない不透液性(遮水性)のシート材である。バックシート3を構成するシート材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートが好適に用いられる。また、バックシート3として、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等が用いられてもよい。さらに、バックシート3は、ムレ防止の観点から、透湿性を有するシート材が用いられることが望ましい。遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
【0017】
吸収体4は、体液を吸収して保持する液体吸収材である。吸収体4は、例えば吸収性ポリマー粒子とパルプ繊維を含んで構成され、クレープ紙や不織布等からなる図示しないコアラップシートによって包まれてもよい。吸収体4は、トップシート2及びバックシート3よりも小さい外形に形成され、トップシート2及びバックシート3から前後方向D1及び幅方向D2にはみ出ない形状及び大きさを有する。吸収体4は、単層であっても複層であってもよい。
【0018】
ギャザーシート5は、吸収体4の幅方向D2の両側に配置され、トップシート2の肌側に固定された前後方向D1に延びる細長いシート材である。ギャザーシート5は、例えば、撥水性又は不透液性の不織布等によって形成されている。ギャザーシート5は、幅方向D2の一端部が、例えばホットメルト等の接着剤や溶着等によってトップシート2に固定される。また、ギャザーシート5の幅方向D2の他端部には、前後方向D1に延び、幅方向D2に並列された複数の弾性伸縮材5aが所定の伸張状態で設けられている。弾性伸縮材5aは、例えば、糸状又は帯状の合成ゴム等によって構成される。
【0019】
そして、ギャザーシート5は、弾性伸縮材5aの収縮力によって収縮し、トップシート2から起立する。実施例1の吸収性物品1では、ギャザーシート5が起立して壁様となることで、体液の漏れ(横漏れ)を防止する。
【0020】
また、ギャザーシート5の前後方向D1の両端部では、ギャザーシート5の幅方向D2の他端部もトップシート2に接合され、トップシート2に対して倒伏している。そして、ギャザーシート5のうち、トップシート2に対して倒伏した部分では、弾性伸縮材5aがギャザーシート5に設けられていないため収縮性がない。つまり、ギャザーシート5は、前後方向D1の両端部に、ギャザーシート5が収縮しない非伸縮領域S1を有している。また、ギャザーシート5は、前後方向D1の中間部に、弾性伸縮材5aの収縮力が有効に機能し、弾性伸縮材5aの収縮力でトップシート2から起立する伸縮領域S2を有している。
【0021】
また、吸収性物品1は、図2に示されたように、バックシート3の非肌側に、使用時に下着に係止される係止部7が設けられている。係止部7は、例えば粘着剤層からなり、前後方向D1に沿って帯状に延びている。吸収性物品1は、係止部7が下着に係止することで、下着に対してズレ止めがなされる。そして、係止部7は、積層方向D3から見て、伸縮領域S2に重なる位置に配置されている(図1参照)。
【0022】
さらに、実施例1の吸収性物品1は、トップシート2の前後方向D1の一方の端部(ここでは、使用者の前側に対応する前端部)にオーバーシート10が重ねられている。オーバーシート10は、図1に示されたようなトップシート2に重ねられた状態でトップシート2に臨む第1面11が親水性を有し、第1面11の反対側の第2面12が撥水性を有するシート材である(図2参照)。
【0023】
ここで、親水性を有する第1面11は、親水処理を施した不織布、パルプシート、高吸水性樹脂シート(SAP(Super Absorbent Polymer)シート)によって構成されることが好ましい。また、撥水性を有する第2面12は、ポリエチレンシートによって構成されることが好ましい。オーバーシート10は、図2に示されたように、第1面11を構成するシート材と、第2面12を構成するシート材とが積層され、接着されて形成されている。
【0024】
また、オーバーシート10は、例えば全面にエンボス加工が施されることで一様な凹凸が形成されたシート材によって構成されることが好ましい。なお、オーバーシート10が有する凹凸は、オーバーシート10の全面に一様に形成されている必要はなく、任意の位置に適宜の大きさで形成された凹凸であってもよい。また、凹凸はエンボス加工によって形成されなくてもよく、例えば部分的にシート材を積層させることで形成された凹凸であってもよい。さらに、凹凸は、少なくともオーバーシート10の第1面11に形成されていればよいが、第1面11及び第2面12の双方に形成されてもよい。
【0025】
そして、オーバーシート10は、前後方向D1の外側縁10aが、トップシート2の前後方向D1の外側縁2aに揃えられ、周縁部がトップシート2及びバックシート3からはみ出ない大きさに形成されている。また、オーバーシート10は、図1に示されたように、ギャザーシート5の前後方向D1の一方の端部を覆っている。そして、オーバーシート10には、固定領域K1と、一対の仮固定領域K2と、が設定されている。
【0026】
固定領域K1は、オーバーシート10の前後方向D1の外側縁10aに沿って設定され、幅方向D2に延びた領域である。なお、固定領域K1は、積層方向D3から見て、ギャザーシート5の非伸縮領域S1及び伸縮領域S2に重ならない位置に設定されている。そして、オーバーシート10は、固定領域K1において、トップシート2からのオーバーシート10の剥離を阻害する所定の固定力でトップシート2に固定されている。
【0027】
ここで、「トップシート2からのオーバーシート10の剥離を阻害する所定の固定力」とは、使用者がオーバーシート10を把持して引っ張った際に、トップシート2からオーバーシート10を剥離させない(固定状態を維持する)程度の固定力である。
【0028】
実施例1では、固定領域K1の全域にホットメルト(接着剤)が塗布されると共に、固定領域K1を熱ロールでプレスして熱融着させ、固定領域K1の全域に隙間なく延びる幅広の帯状エンボスパターンが形成されている。つまり、固定領域K1では、ホットメルトによる固定力と、帯状のエンボスパターンの融着による固定力で、オーバーシート10がトップシート2に固定されている。
【0029】
そして、オーバーシート10は、固定領域K1において剥離が阻害される固定力でトップシート2に固定されたことで、固定領域K1を折り返し位置として、前後方向D1の外側に向かって折り返し可能になっている。
【0030】
一対の仮固定領域K2は、固定領域K1の幅方向D2の両側に、オーバーシート10の周縁に沿って設定されている。各仮固定領域K2は、固定領域K1よりも前後方向D1の内側の位置、すなわち、固定領域K1の幅方向D2の端部とオーバーシート10の前後方向D1の内側縁10bとの間に設定されている。なお、仮固定領域K2は、積層方向D3から見て、ギャザーシート5の非伸縮領域S1及び伸縮領域S2に重ならない位置に設定されている。
【0031】
そして、オーバーシート10は、仮固定領域K2において、固定領域K1よりも弱い固定力であって、トップシート2からのオーバーシート10の剥離を許容する固定力でトップシート2に固定されている。ここで、「トップシート2からのオーバーシート10の剥離を許容する」とは、使用者がオーバーシート10を把持して引っ張った際に、トップシート2を破損することなくオーバーシート10を剥離できることである。
【0032】
そして、実施例1では、図3に示されたように、仮固定領域K2に、第1仮固定部13と、第2仮固定部14と、間欠部15と、が設けられている。
【0033】
第1仮固定部13は、仮固定領域K2のうち、固定領域K1側に設けられている。第1仮固定部13は、第2仮固定部14よりも弱い固定力でオーバーシート10をトップシート2に固定する。実施例1では、第1仮固定部13は、熱融着によって形成された一定の間隔をあけた複数のエンボスパターンで構成されている。つまり、第1仮固定部13は、各エンボスパターンの融着による固定力で、オーバーシート10をトップシート2に固定する。
【0034】
第2仮固定部14は、仮固定領域K2のうち、オーバーシート10の前後方向D1の内側縁10b側に設けられている。第2仮固定部14は、第1仮固定部13よりも強く、固定領域K1よりも弱い固定力でオーバーシート10をトップシート2に固定する。実施例1では、第2仮固定部14は、熱融着によって形成され、且つ、第1仮固定部13に形成されたエンボスパターンよりも面積の大きいエンボスパターンで構成されている。つまり、第2仮固定部14は、第1仮固定部13よりも面積の大きいエンボスパターンの融着による固定力で、オーバーシート10をトップシート2に固定する。
【0035】
なお、オーバーシート10は、熱融着によってトップシート2に固定されるため、固定力は、熱融着によって形成されるエンボスパターンの面積の大きさに依存する。すなわち、エンボスパターンの面積が大きいほど固定力が強くなる。
【0036】
間欠部15は、オーバーシート10をトップシート2に固定しない部分である。そのため、図4に示されたように、間欠部15ではオーバーシート10とトップシート2の間に隙間Sが生じる。そして、間欠部15は、仮固定領域K2のうち、第1仮固定部13と第2仮固定部14の間であって、ギャザーシート5の伸縮領域S2に対し、幅方向D2に沿って並ぶ位置に設けられている。これにより、ギャザーシート5は、隙間Sの内側で起立可能となる。
【0037】
さらに、オーバーシート10の前後方向D1の内側縁10bは、トップシート2に固定されていない。そのため、図2に示されたように、オーバーシート10の内側縁10bとトップシート2との間には、隙間が生じる。
【0038】
実施例1の吸収性物品1の作用は、以下の通り説明される。
【0039】
実施例1の吸収性物品1は、下着に装着されて使用される際、トップシート2が使用者に向けられた状態で、バックシート3の非肌側(裏側)に設けられた係止部7が下着に貼り付けられる。このとき、トップシート2の前後方向D1の一方の端部(前端部)には、オーバーシート10が重ねられている。ここで、オーバーシート10は、固定領域K1において、トップシート2からの剥離を阻害する所定の固定力でトップシート2に固定されている。これにより、実施例1の吸収性物品1では、前後方向D1の一方の端部(前端部)の肌側に、トップシート2をオーバーシート10で覆い、前後方向D1の内側縁10bがトップシート2から離れて開口したポケット状の構造が形成される。
【0040】
また、オーバーシート10は、トップシート2に重ねられた状態でトップシート2に臨む第1面11が親水性を有し、第1面11の反対側の第2面12が撥水性を有するシート材である。このため、実施例1の吸収性物品1は、前後方向D1の一方の端部(前端部)に流れた体液を、ポケット状の構造を形成するオーバーシート10の内側縁10bによる開口から、オーバーシート10とトップシート2の間(ポケット状の構造の内側)に導き、トップシート2に対向した親水性のオーバーシート10の第1面11によって吸収することが可能となる。さらに、オーバーシート10の第1面11に吸収された体液は、撥水性を有する第2面12によって、オーバーシート10の表面(肌側)に染み出ることが阻止される。これにより、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10がトップシート2に重なった状態で、前後方向D1の一方の端部(前端部)からの体液の漏れを抑制することができる。
【0041】
また、オーバーシート10は、固定領域K1を折り返し位置にして、前後方向D1の外側に向かって折り返し可能である。すなわち、使用者は、実施例1の吸収性物品1を下着に装着した後、オーバーシート10の内側縁10bを摘まんでから前後方向D1の外側に向かって引っ張り、仮固定領域K2を剥離して、固定領域K1を折り返し位置としてオーバーシート10を折り返してもよい。そして、オーバーシート10が折り返された場合、図6及び図7に示されたように、吸収性物品1は、折り返されたオーバーシート10の分だけ、前後方向D1の長さが拡大する。また、オーバーシート10を折り返した状態では、親水性を有する第1面11が使用者に対向し、撥水性を有する第2面12が下着に対向する。
【0042】
これにより、実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10が折り返された際、使用者に対向するオーバーシート10の第1面11によって直接体液を吸収する。すなわち、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10が折り返されることで、前後方向D1の一方の端部(前端部)における体液を吸収可能な面積を拡大することができる。この結果、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10が折り返された状態であっても、前後方向D1の一方の端部(前端部)からの体液の漏れを抑制することができる。
【0043】
このように、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10をトップシート2に重ねたまま使用されたり、前後方向D1の外側に折り返して使用されたりできる。これにより、使用者は、自身の好みに合った使用形態を選択して吸収性物品1を使用することが可能である。また、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10の状態に拘らず、吸収性物品1の前後方向D1の一方の端部(前端部)に流れた体液をオーバーシート10によって吸収することができる。つまり、実施例1の吸収性物品1は、使用者によって使用形態を選択可能とすると共に、使用形態に拘らず前後方向D1の一方の端部(前端部)からの体液の漏れを抑制することができる。
【0044】
また、実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10を折り返すことで前後方向D1の一方の端部(前端部)における体液を吸収可能な面積が拡大する。このため、実施例1の吸収性物品1は、トップシート2やバックシート3、吸収体4等の前後方向D1の長さを長くしなくても、前後方向D1の一方の端部(前端部)からの体液の漏れを防止できる。
【0045】
すなわち、実施例1の吸収性物品1は、トップシート2やバックシート3、吸収体4等の前後方向D1の長さについて、オーバーシート10を折り返した状態と同程度の長さまで長くしなくても、体液の漏れを防止できる。これにより、実施例1の吸収性物品1は、トップシート2やバックシート3等の資材の使用量を抑制でき、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0046】
また、実施例1の吸収性物品1では、固定領域K1が、オーバーシート10の前後方向D1の外側縁10aに沿って設定されている。このため、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10が折り返された際、オーバーシート10のほぼ全面を反転させることができる。これにより、実施例1の吸収性物品1は、例えば固定領域K1が、オーバーシート10の前後方向D1の中間部に設定された場合よりも、折返時の第1面11の露出面積を大きくすることができる。そして、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10による体液の吸収量を増大し、体液の漏れをさらに抑制することができる。
【0047】
また、実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10の周縁部であって、固定領域K1とオーバーシート10の前後方向D1の内側縁10bとの間に仮固定領域K2が設定されている。そして、オーバーシート10は、仮固定領域K2において、固定領域K1よりも弱い固定力であって、トップシート2からのオーバーシート10の剥離を許容する固定力でトップシート2に固定されている。
【0048】
そのため、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10を折り返さずに吸収性物品1が使用されるときには、オーバーシート10がめくれたり、よれたり、折れたりすることなく、トップシート2に重なった状態が維持される。また、使用者がオーバーシート10を折り返す際には、オーバーシート10を容易に剥離可能とすることができる。これにより、実施例1の吸収性物品1は、使用感の悪化を防止し、使用者は所望の状態で違和感なく吸収性物品1を使用することができる。
【0049】
また、実施例1の吸収性物品1では、仮固定領域K2のうち、固定領域K1側に第1仮固定部13が設けられ、仮固定領域K2の内側縁10b側に第2仮固定部14が設けられている。そして、第1仮固定部13は、第2仮固定部14よりも弱い固定力でオーバーシート10をトップシート2に固定する。また、第2仮固定部14は、固定領域K1よりも弱い固定力でオーバーシート10をトップシート2に固定する。
【0050】
これにより、実施例1の吸収性物品1は、第2仮固定部14によって、使用者との摩擦等でめくれやすいオーバーシート10の前後方向D1の内側縁10bを、比較的強い固定力でトップシート2に固定する。よって、実施例1の吸収性物品1は、オーバーシート10のめくれをさらに抑制できる。また、実施例1の吸収性物品1は、第1仮固定部13によって、オーバーシート10とトップシート2とに生じる隙間を抑えて、体液の漏れを防止することができる。さらに、第1仮固定部13の固定力が、第2仮固定部14の固定力よりも弱いため、オーバーシート10が剥離されるときには、オーバーシート10を剥がしやすくできる。
【0051】
さらに、実施例1の吸収性物品1では、トップシート2に、弾性伸縮材5aの収縮力でトップシート2から起立する一対のギャザーシート5が設けられている。ここで、各ギャザーシート5は、吸収体4の幅方向D2の両側部に配置されている。そして、各ギャザーシート5は、前後方向D1の両端部に、弾性伸縮材5aが設けられていないために収縮しない非伸縮領域S1を有し、前後方向D1の中間部に、弾性伸縮材5aの収縮力が有効に機能して、弾性伸縮材5aの収縮力で起立する伸縮領域S2を有している。そして、オーバーシート10は、ギャザーシート5を覆い、固定領域K1及び仮固定領域K2は、積層方向D3から見たときに伸縮領域S2に重ならない位置に設定されている。
【0052】
これにより、ギャザーシート5を伸縮させる弾性伸縮材5aの収縮力(収縮性)が、オーバーシート10をトップシート2に固定する固定領域K1や仮固定領域K2によって阻害されることがない。このため、実施例1の吸収性物品1は、ギャザーシート5による体液の漏れ防止性能を維持することができる。
【0053】
また、実施例1の吸収性物品1では、仮固定領域K2が、ギャザーシート5の伸縮領域S2に対し、幅方向D2に沿って並ぶ位置に、オーバーシート10をトップシート2に固定しない間欠部15が設けられている。
【0054】
実施例1の吸収性物品1は、仮固定領域K2に間欠部15を設けたことで、仮固定領域K2によってオーバーシート2をトップシート2に固定する固定力を低減させることができ、使用者がオーバーシート10を剥離する際に、容易に剥離させることができる。
【0055】
また、実施例1の吸収性物品1では、ギャザーシート5がトップシート2から起立する伸縮領域S2に対し、幅方向D2に沿って並ぶ位置に間欠部15が設けられている。このため、実施例1の吸収性物品1は、図4に示されたように、間欠部15によって生じるオーバーシート10とトップシート2との間の隙間Sの内側に、ギャザーシート5を立たせることができる。よって、実施例1の吸収性物品1は、隙間Sからの体液の漏れを起立するギャザーシート5によって阻止することが可能となる。
【0056】
さらに、実施例1の吸収性物品1では、バックシート3の非肌側に、使用時に下着に係止される係止部7が設けられている。そして、係止部7は、積層方向D3から見て、ギャザーシート5の伸縮領域S2に重なる位置に配置されている。これにより、実施例1の吸収性物品1は、係止部7によってトップシート2やバックシート3を下着に沿わせ、弾性伸縮材5aの収縮力によるトップシート2やバックシート3の使用者側への縮みを規制することができる。このため、ギャザーシート5は、トップシート2に対して適切に起立することができる。この結果、間欠部15における隙間Sからの体液の漏れをさらに抑えることができる。
【0057】
そして、実施例1の吸収性物品1において、オーバーシート10が、少なくとも第1面11に凹凸を有するシート材によって構成されている場合では、オーバーシート10の凹んだ部分が使用者の肌に接触しにくくなる。このため、吸収性物品1は、体液を吸収した第1面11が使用者に接触してべたつくことを防止できる。
【0058】
以上、本発明の吸収性物品を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10がトップシート2の前後方向D1の一方の端部(前端部)に重ねられた例が示された。しかしながら、オーバーシート10は、トップシート2の前後方向D1の他方の端部(使用者の後側に対応する後端部)に重ねられてもよいし、トップシート2の前後方向D1の両端部の双方にそれぞれ重ねられてもよい。
【0060】
オーバーシート10がトップシート2の前後方向D1の他方の端部(使用者の後側に対応する後端部)に重ねられた場合には、オーバーシート10によって、前後方向D1の他方の端部(使用者の後側に対応する後端部)からの体液の漏れを防止することができる。また、オーバーシート10がトップシート2の前後方向D1の両端部に重ねられた場合では、前後方向D1の両端部のいずれであっても、オーバーシート10によって体液の漏れが防止される。
【0061】
また、実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10を固定する固定領域K1が、オーバーシート10の前後方向D1の外側縁10aに沿って設定された例が示された。しかしながら、固定領域K1は、オーバーシート10の少なくとも一部を前後方向D1の外側に向かって折り返し可能とする位置であれば、オーバーシート10上の任意の位置に設定することができる。
【0062】
また、固定領域K1は、実施例1では幅方向D2に延びて設定されているが、これに限らない。固定領域K1は、例えば、一定の間隔をあけて幅方向D2に沿って連続的に並ぶように設定されてもよい。この場合であっても、オーバーシート10は、固定領域K1を折り返し位置として前後方向D1の外側に向かって折り返し可能となる。
【0063】
また、実施例1の吸収性物品1では、オーバーシート10の周縁部に仮固定領域K2が設定された例が示されたが、仮固定領域K2は、必ずしも設定されなくてもよい。仮固定領域K2が設定されない場合、オーバーシート10は、固定領域K1のみでトップシート2に固定される。
【0064】
また、実施例1の吸収性物品1では、固定領域K1と仮固定領域K2の間に、ギャザーシート5に重なる位置であって、オーバーシート10がトップシート2に固定されない領域が設けられている。しかしながら、固定領域K1と仮固定領域K2とは、隙間なく連続して設定されてもよい。また、固定領域K1或いは仮固定領域K2は、ギャザーシート5の非伸縮領域S1であれば、ギャザーシート5に重なって設定されてもよい。つまり、非伸縮領域S1では、弾性伸縮材5aがギャザーシート5に設けられていないため、収縮力がない。このため、固定領域K1或いは仮固定領域K2が、ギャザーシート5の非伸縮領域S1に重なって設定され、非伸縮領域S1に重なる位置でオーバーシート10がトップシート2に固定されても、ギャザーシート5の起立状態が阻害されることはない。
【0065】
また、実施例1の吸収性物品1では、第1仮固定部13と第2仮固定部14との間に間欠部15を設けた例が示された。しかしながら、間欠部15は必ずしも設けられていなくてもよく、第1仮固定部13と第2仮固定部14とが連続的に設けられてもよい。
【0066】
また、実施例1の吸収性物品1は、経血やおりもの等の体液の吸収を目的とする生理用ナプキンである例が示された。しかしながら、吸収性物品1は、例えば主に尿の吸収を目的とする尿取りパッド等であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 吸収性物品
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
10 オーバーシート
11 第1面
12 第2面
13 第1仮固定部
14 第2仮固定部
15 間欠部
D1 前後方向
D2 幅方向
K1 固定領域
K2 仮固定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7