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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158961
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ロボット用配線構造及びロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B25J19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074633
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】棚田 瑞樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CX01
3C707CX03
3C707CY02
3C707CY10
3C707CY12
(57)【要約】
【課題】フレキシブル配線基板の組み付け際して断線が生じることを抑制することにより、ロボットの信頼性の向上を図ること。
【解決手段】ロボットに内蔵されたモータユニットには、モータ制御基板41と歪みゲージ39とを繋ぐフレキシブル配線基板(FPC45)が設けられている。FPC45は、ベースフィルム層71、カバーレイフィルム層73、それらの間に設けられた導体層72を有してなる。FPC45には、カバーレイフィルム層73から導体層72が露出した制御基板側接続部45bが設けられており、制御基板側接続部45bの裏面にはコネクタ42の挿入部43に合わせてFPC45の厚さを補填する補填層74が設けられている。補填層74において挿入部43から突出している部分にFPC45の厚さ方向にて重なる位置には、補填層74に当接することによりFPC45の変形を規制可能な規制部68が設けられている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と、カバー層と、それらベース層及びカバー層の間に設けられ配線パターンを形成している導体層とを有するフレキシブル配線基板を備え、
前記フレキシブル配線基板の一端部には、前記カバー層から前記導体層が露出し、他のロボット用電気部品に設けられたコネクタに接続される接続部が設けられており、
前記接続部には、前記ベース層を挟んで前記導体層とは反対側となる部分に前記コネクタにおける当該接続部の挿入部分に合わせて前記フレキシブル配線基板の厚さが補填された補填層が設けられており、
前記補填層は、前記カバー層によって前記導体層が覆われている部分と、前記カバー層から前記導体層が露出している部分との境界を跨ぎ、且つ前記接続部と前記コネクタとが接続されている状況下にて前記挿入部から当該補填層の一部が突出した状態となるように形成されており、
前記補填層において前記挿入部から突出する突出部分に前記フレキシブル配線基板の厚さ方向にて重なる位置に設けられ、当該補填層に当接することにより前記フレキシブル配線基板の変形を規制可能な規制部を備えているロボット用配線構造。
【請求項2】
前記規制部は、少なくとも前記フレキシブル配線基板の幅方向における前記補填層の両縁部に対して前記厚さ方向に重なる位置に設けられている請求項1に記載のロボット用配線構造。
【請求項3】
前記規制部は、前記補填層において前記挿入部から突出している側の縁部を跨ぐようにして形成されている請求項1に記載のロボット用配線構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のロボット用配線構造を備えているロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用配線構造及び当該配線構造を有するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節型ロボット等のロボットには、モータへの電源供給や制御装置との間での制御用信号の送受信等を行うためのケーブルを具備しているものがある。近年では、このようなケーブルとして、フレキシブル配線基板(所謂FPC)を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。フレキシブル配線基板は柔軟性が高いため、当該フレキシブル配線基板を用いることでモータ等の周辺部品との共存を容易とし、各種部品の高密度実装やロボットの小型化等の実現に寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-214528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブル配線基板については、コネクタ等の接続対象に対する抜き差しを考慮してある程度の余長を確保する必要がある。余長を確保することは作業性の向上等を図る上でも好ましいものの、余長の処理に際してフレキシブル配線基板に大きな曲げ反力(応力)が発生し得る。ここで、フレキシブル配線基板には、配線パターンを形成する導体層を覆うようにしてカバーレイフィルム層が設けられ、このカバーフィルム層に開口等を形成することで配線パターンの一部を露出させるように構成されているものがある。このような構成では、当該開口の縁部(境界)にてフレキシブル配線基板の厚さが不連続となり、この部分に組み付け作業時の余長の処理等に際して発生する曲げ反力が集中しやすくなる。このような応力集中が過度になることは、境界付近にて配線パターンが断線し、通信機能が損なわれる要因になり得る。このように、フレキシブル配線基板を具備するロボットにおいては、当該フレキシブル配線基板の組み付けに際して断線が生じることを抑制し、ロボットの信頼性の向上を図る上で、配線構造に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記例示した課題等に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、フレキシブル配線基板の組み付け際して断線が生じることを抑制することにより、ロボットの信頼性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.ベース層と、カバー層と、それらベース層及びカバー層の間に設けられ配線パターンを形成している導体層とを有するフレキシブル配線基板を備え、
前記フレキシブル配線基板の一端部には、前記カバー層から前記導体層が露出し、他のロボット用電気部品に設けられたコネクタに接続される接続部が設けられており、
前記接続部には、前記ベース層を挟んで前記導体層とは反対側となる部分に前記コネクタにおける当該接続部の挿入部分に合わせて前記フレキシブル配線基板の厚さが補填された補填層が設けられており、
前記補填層は、前記カバー層によって前記導体層が覆われている部分と、前記カバー層から前記導体層が露出している部分との境界を跨ぎ、且つ前記接続部と前記コネクタとが接続されている状況下にて前記挿入部から当該補填層の一部が突出した状態となるように形成されており、
前記補填層において前記挿入部から突出する突出部分に前記フレキシブル配線基板の厚さ方向にて重なる位置に設けられ、当該補填層に当接することにより前記フレキシブル配線基板の変形を規制可能な規制部を備えている。
【0008】
第1の手段に示す構成では、カバー層によって導体層が覆われている部分と、カバー層から導体層が露出している部分との境界にてフレキシブル配線基板の厚さが不連続となっている。厚さが不連続となる部分では局所的に変形の度合いが大きくなり得る。何故ならば、強度が低くなることで応力集中が発生するからである。この点、この境界を跨ぐようにしてコネクタ用の補填層を形成すれば、当該補填層によってフレキシブル配線基板の厚さが大きくなり、境界付近の変形を緩和することができる。但し、補填層が形成されている部分であっても、フレキシブル配線基板の組み付け作業等に際して強い力が加わることで変形が生じる可能性があり、このような事象が発生すると境界付近の変形は他の部分よりも大きくなる点については否定できない。ここで、第1の手段に示す補填層については、その一部がコネクタの挿入部から突出した状態となるように形成されており、この突出部分に重なる位置には規制部が設けられている。フレキシブル配線基板が変形(例えば撓み変形)して規制部に当たると当該規制部によってそれ以上の変形が規制されることとなる。故に、上記境界にて断線が発生すること、すなわち断線によって通信機能が損なわれることを抑制できる。これにより、フレキシブル配線基板を適用することによる恩恵(例えば各種部品の高密度実装やロボットの小型化)を享受しつつ、ロボットの信頼性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態におけるロボットシステムを示す概略図。
図2】ロボットシステムの電気的構成を示すブロック図。
図3】モータユニット及びそれに関連する構成を平面図。
図4】基板ユニット及びフレキシブル配線基板を示す斜視図。
図5】(a)図3のA-A線部分断面図、(b)図3のB-B線部分断面図。
図6】フレキシブル配線基板を示す概略図。
図7】(a)対比例を示す概略図、(b)規制の様子を示す概略図。
図8】フレキシブル配線基板の組み付け時の作業手順を示すフローチャート。
図9】(a)~(c)フレキシブル配線基板の組み付け時の作業の流れを示す概略図。
図10】変形例を示す概略図。
図11】変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、工場の製造ライン等にて作業に従事する垂直多関節型の産業用ロボット(以下、ロボット15という)を備えるロボットシステム10に具現化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、ロボット15の本体部(ロボット本体21)は、台座等に固定されるベース部22と、当該ベース部22により支持されているショルダ部23と、ショルダ部23により支持されている下アーム部24と、下アーム部24により支持されている第1上アーム部25と、第1上アーム部25により支持されている第2上アーム部26と、第2上アーム部26により支持されている手首部27と、手首部27により支持されているフランジ部28とを有している。
【0012】
ベース部22及びショルダ部23には、それらベース部22及びショルダ部23を連結する第1関節部が形成されており、ショルダ部23は第1関節部の連結軸(第1軸AX1)を中心として水平方向に回動可能となっている。ショルダ部23及び下アーム部24には、それらショルダ部23及び下アーム部24を連結する第2関節部が形成されており、下アーム部24は第2関節部の連結軸(第2軸AX2)を中心として上下方向に回動可能となっている。下アーム部24及び第1上アーム部25には、それら下アーム部24及び第1上アーム部25を連結する第3関節部が形成されており、第1上アーム部25は第3関節部の連結軸(第3軸AX3)を中心として上下方向に回動可能となっている。第1上アーム部25及び第2上アーム部26には、それら第1上アーム部25及び第2上アーム部26を連結する第4関節部が形成されており、第2上アーム部26は第4関節部の連結軸(第4軸AX4)を中心として捻り方向に回動可能となっている。第2上アーム部26及び手首部27には、それら第2上アーム部26及び手首部27を連結する第5関節部が形成されており、手首部27は第5関節部の連結軸(第5軸AX5)を中心として上下方向に回動可能となっている。手首部27及びフランジ部28には、それら手首部27及びフランジ部28を連結する第6関節部が形成されており、フランジ部28は第6関節部の連結軸(第6軸AX6)を中心として捻り方向に回動可能となっている。
【0013】
ショルダ部23、下アーム部24、第1上アーム部25、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28は、一連となるように配列されることでロボット本体21におけるアーム31を構成しており、当該アーム31の先端のフランジ部28にはエンドエフェクタ29が取り付けられている。例えば、このエンドエフェクタ29をハンドタイプとすることでワークを把持可能となる。
【0014】
詳細については後述するが、アーム31には、関節部を回動させる電動式アクチュエータとしてのサーボモータ、当該サーボモータに付属する減速機(具体的には波動歯車装置)、サーボモータの駆動制御等を行うモータ制御基板(サーボアンプ)を有してなるモータユニットが関節部毎に設けられている。
【0015】
ここで、図2を参照して、ロボットシステム10の電気的構成について補足説明する。ロボットシステム10は、統括制御装置としてのロボットコントローラ81を備えており、このロボットコントローラ81には、上述したモータ制御基板41が各々接続されている。モータ制御基板41には、サーボモータ36及びロータリエンコーダ38が接続されており、ロボットコントローラ81から作業用の動作指示を受けて動作目標位置を特定する。そして、当該動作目標位置と、ロータリエンコーダ38から取得したポジションデータ、すなわちサーボモータ36の回転角度(回転位置)を示すエンコーダ値とに基づいてサーボモータ36の駆動制御を行う。
【0016】
また、ロボット15(各モータユニット35)には、関節部に発生するトルクを検出するトルク検出センサが設けられている。トルク検出センサは、上記減速機に配設された複数の歪みゲージ39と、リード線を介して各歪みゲージ39に接続された検出部とを有してなる。検出部には、抵抗値の微小変化の検出に適した電気回路であるブリッジ回路部(例えばホイートストンブリッジ)と、ブリッジ回路部にて検出した各信号を増幅するアンプ部とが各々設けられている。増幅後の信号については、モータユニット35に搭載されたモータ制御基板41に送信される。モータ制御基板41はトルク検出センサからの信号(検出したトルク)に応じてロボット15を減速させたり、停止(防護停止を含む)させたりすることが可能となっており、ロボットシステム10の安全性の向上が図られている。
【0017】
上述したようにモータユニット35は、サーボモータ36や減速機等の様々な部品が組み合わされてなり、各種部品を密接させることで小型化が図られている。上述したトルク検出センサを用いてロボットシステム10の安全性を向上させる上では、限られたスペースにてトルク検出センサ、サーボモータ36、減速機37等を上手く共存させることが重要となる。このような事情に配慮して、本実施形態では、歪みゲージ39とリジッド基板であるモータ制御基板41とを、薄型で帯状をなすフレキシブル配線基板(以下、FPC45という)を介して接続している。
【0018】
図3及び図4に示すように、FPC45の一端部(当該FPC45の長手方向における一端部)は、減速機37への接続部、詳しくは可撓性歯車に配設された上記歪みゲージ39への接続部(以下、ゲージ側接続部45aともいう)となっており、FPC45の他端部(長手方向における他端部)はモータ制御基板41への接続部、詳しくはモータ制御基板41に設けられたコネクタ42への接続部(以下、制御基板側接続部45bともいう)となっている。
【0019】
図4及び図5に示すように、モータ制御基板41は、サーボモータ36の回転軸と同じ方向、すなわちサーボモータ36と減速機37(図4参照)との並び方向に延びる長板状をなしており、一方の板面(コネクタ42が搭載されている側の板面)がサーボモータ36側、他方の板面がサーボモータ36とは反対側を向くようにして配置され、金属製のシールド板金51(基板保持用板金)を介してサーボモータ36のハウジング36aに固定(ネジ止め)されている。
【0020】
また、モータ制御基板41には、コネクタ42が搭載されている側の板面(以下、表面という)を覆う合成樹脂製の基板カバー61が組み付けられており、この基板カバー61によってロボット本体21の機内の汚れがモータ制御基板41に付着することを抑制している。
【0021】
以下、モータ制御基板41、基板カバー61、シールド板金51を有してなる基板ユニット40のアセンブリ構造及びハウジング36aへの固定構造について補足説明する。
【0022】
基板カバー61は、モータ制御基板41に対して隙間を隔てて対向する長板状の平板部62を有している(図5参照)。平板部62には、当該平板部62の一端部(減速機側の端部)からモータ制御基板41側に突出する脚部63と、平板部62の中央部分からモータ制御基板41側に突出するボス64とが設けられている。脚部63の先端部分とボス64の先端部分とがモータ制御基板41の表面に当接することで、モータ制御基板41と平板部62との接触が回避されている。
【0023】
上記コネクタ42は、モータ制御基板41における減速機37側の端部に配置されており、FPC45が挿入される挿入部43が減速機37側を向いている。基板カバー61の脚部63は、モータ制御基板41の隅部に位置し、挿入部43の向きと直交する方向に並んでいる。それら脚部63によって挟まれた領域は挿入部43に連なっており、脚部63は後述する規制部とともに当該領域に配置されたFPC45のねじれ等を抑制する壁部として機能している。
【0024】
脚部63の先端部分は、モータ制御基板41と平行となる平板状をなしている。それら先端部分(平面部)とモータ制御基板41とは当該モータ制御基板41の厚さ方向に重なっており、シールド板金51には当該重なっている部分と係合する係合部52が形成されている。また、平板部62における他端部(脚部63が形成されている側の端部とは反対側の端部)には、モータ制御基板41側に突出するようにして爪部65が形成されている。当該爪部65の先端がモータ制御基板41の裏面に引っ掛かり、且つ上記重なっている部分と係合部52とが係合した状態となることで、モータ制御基板41からの基板カバー61の浮き上がりが規制される。
【0025】
また、平板部62には、コネクタ42に合わせて開口部(コネクタ用開口66a)が形成されており、コネクタ42の一部が当該コネクタ用開口66aに位置している。コネクタ42がコネクタ用開口66aに引っ掛かることにより、モータ制御基板41の板面と平行となる方向への基板カバー61の位置ずれが規制される。
【0026】
以上詳述した構成によって基板カバー61の脱落が回避されている。なお、モータ制御基板41、シールド板金51、基板カバー61を組み合わせた状態にて基板ユニット40の着脱(ネジの取り付け/取り外し)を可能とすべく、基板カバー61の平板部62には工具(例えばドライバ)用の挿通部が形成されている。
【0027】
次に、モータ制御基板41とFPC45との接続に係る構成について補足説明する。
【0028】
図6に示すように、FPC45は、ベースフィルム層71(具体的にはポリイミド:絶縁層)と、当該ベースフィルム層71の片面(表面)側に設けられ導体層72(具体的には銅箔)と、導体層72を覆うことにより当該導体層72を保護するカバーレイフィルム層73(具体的にはポリイミド:絶縁層)とを有してなる。導体層72には、各歪みゲージ39からの信号を送信する配線パターン(上記リード線に相当)が各々形成されており、それら配線パターンには上述したブリッジ回路部やアンプ部が含まれている。
【0029】
なお、FPC45については、歪み検出に係る信号を送信可能な構成となっていれば足り、必ずしもブリッジ回路部やアンプ部が形成されている必要はない。例えば、ブリッジ回路部やアンプ部に相当する構成についてはモータ制御基板41等に設け、歪みゲージ39からの信号がFPC45を通じてモータ制御基板41に入力される構成としてもよい。また、減速機37側にブリッジ回路部やアンプ部に相当する構成を有する検出基板を設け、当該検出基板からの信号がFPC45を通じてモータ制御基板41に入力される構成としてもよい。因みに、FPC45が歪みゲージを含み、当該FPC45にセンサ機能を集約することも可能である。
【0030】
コネクタ42には、上述した挿入部43の奥に、FPC45の挿入方向と交差(直交)する方向に並べて(横並びとなるようにして)複数の接続端子44が配設されている。FPC45の制御基板側接続部45bにおいては、カバーレイフィルム層73が一部省略されており、上記導体層72の各配線パターンの先端部が露出している。つまり、各配線パターンの先端部がそのまま制御基板側接続部45bにおける端子として機能するように構成されている。
【0031】
また、FPC45は、ベースフィルム層71の裏面側に設けられた厚み補填用の補填層74(具体的にはポリイミド:絶縁層)を有している。この補填層74については、平板状をなしており、制御基板側接続部45bの厚さが挿入部43の大きさ(高さ)と略同一となるように、すなわちFPC45の配線パターンとコネクタ42の接続端子44との接触が担保されるように調整されている(図5参照)。FPC45が挿入部43における奥位置まで差し込まれることで当該FPC45に設けられた配線パターンと接続端子44とが接触した状態(導通した状態)となる。なお、補填層74は、FPC45の幅方向における全域亘ってベースフィルム層71と重なっており、FPC45の長手方向において当該FPC45の先端を含む一部範囲に形成されている。
【0032】
ここで、カバーレイフィルム層73が省略されることで導体層72が露出している部分については、カバーレイフィルム層73によって導体層72が覆われている部分と比較して、FPC45の強度が低くなり(可撓性が高くなり)、導体層72の配線パターンに断線が生じるリスクが高くなる。特に、制御基板側接続部45bにてカバーレイフィルム層73が形成されている部分と形成されていない部分との境界BPにおいてはFPC45の厚さが変化するため(不連続となるため)、境界BP付近でFPC45が撓む等した場合には当該境界BPにて断線が生じやすくなる傾向がある。
【0033】
この点、本実施形態に示す補填層74については、その厚さがベースフィルム層71の厚さ及びカバーレイフィルム層73の厚さの和よりも大きくなっており、少なくとも補填層74が形成されている範囲では、形成されていない範囲よりもFPC45の強度が高くなっている。言い換えれば、補填層74はある種の補強機能を有しており、補填層74が形成されていない部分よりもFPC45に撓みが生じにくくなっている。
【0034】
そして、補填層74は、FPC45の厚さ方向にて境界BPと重なるように、換言すればFPC45の長手方向にて当該境界BPを跨ぐように形成されている。これにより、強度不足による断線の懸念は小さくなっている。但し、補填層74によってある程度の補強が実現されたとしても、境界BP付近でFPC45が撓んだ場合に当該境界BPにて応力集中が発生する点への懸念を払しょくすることは困難である。例えば、図7(a)に示す比較例では、コネクタ42の近傍にてFPC45が大きく撓んでいるが、この撓みによって境界BP付近に応力集中による断線が発生している。本実施形態では、このような事情に配慮した工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、当該工夫について説明する。
【0035】
図5に示したように、FPC45とモータ制御基板41とを接続した状態では、境界BPがコネクタ42の挿入部43の外側に位置しており、補填層74についてもその一部がコネクタ42の挿入部43から外側に突出している。
【0036】
基板カバー61の平板部62の一部、具体的には上述した一対の脚部63の間となる部分は、FPC45の厚さ方向において当該補填層74に重なる位置、すなわちコネクタ42の先側となる位置へ延出している。この延出している部分は、補填層74に対して僅かな隙間を隔てて対向しており、FPC45がベースフィルム層71の裏面側に凸となるようにして撓む場合に、FPC45の補填層74に当接することで当該撓みを規制する機能を有している。以下、当該延出している部分を「規制部68」という。
【0037】
なお、この規制部68の中央部分には、窓開口66bが形成されており、当該窓開口66bを通じてFPC45の制御基板側接続部45bが露出している。制御基板側接続部45b(詳しくは補填層74)にはFPC45が適切な位置に挿入されているかを確認するためのマーカ79が印刷(詳しくはシルク印刷)されている(図4参照)。作業者は窓開口66bを通じてマーカ79の位置を目視で確認することにより、規制部68の存在が確認作業の妨げになることを抑制している。なお、例えば補填層74が透明性を有している場合には、マーカ79の配設対象を補填層74からベースフィルム層71に変更してもよい。
【0038】
図4に示すように、規制部68は、FPC45の幅方向において窓開口66bの両側に位置する第1規制部68aと、FPC45の取外方向において窓開口66bの先側(ゲージ側接続部45a側)となる位置にて両第1規制部68aの先端部を繋ぐ第2規制部68bとで構成されている。
【0039】
図5(a)に示すように各第1規制部68aは、上記境界BPを跨ぐようにしてFPC45の着脱方向に延びる長板状をなしており、境界BPの両側にて補填層74と対向している。図5(b)に示すように、第2規制部68bはFPC45の幅方向に延びる長板状をなしており、境界BPに対してFPC45の取り外し方向における先側となる位置にて補填層74と対向している。このような構成によれば、窓開口66bを設けて作業ミスを抑制しつつも当該窓開口66bの存在が上述した規制機能を発揮させる上で妨げになることを回避できる。
【0040】
なお、本実施形態では、第1規制部68a及び第2規制部68bを併用する構成としたが、第1規制部68a及び第2規制部68bの何れか一方を具備する構成とすることも可能である。
【0041】
次に、図8及び図9を参照して、FPC45の組付手順について説明する。
【0042】
図8に示すように、先ず歪みゲージ39とFPC45のゲージ側接続部45aとを接続する(ステップS101、図9(a)参照)。次に、FPC45の制御基板側接続部45bをモータ制御基板41のコネクタ42に挿入する(S102、図9(b)参照)。この際、FPC45については変形が容易であるため、比較的撓みにくい制御基板側接続部45b、具体的には補填層74が形成されている部分を指で挟んで当該制御基板側接続部45bをコネクタ42の挿入部43に差し込むことにより、作業を円滑に行うことができる。このようにして、コネクタ42にFPC45を差し込むことで、モータ制御基板41とFPC45とが接続された状態となる。
【0043】
その後は、モータ制御基板41にシールド板金51及び基板カバー61を組み付けて、基板ユニット40を形成する(S103)。これにより、基板カバー61の規制部68がFPC45の補填層74に対向した状態となる。この状態では、上記爪部65や係合部52等によって基板カバー61の脱落が回避され、FPC45が撓んで上記規制部68に当たった場合には、当該規制部68によってそれ以上の撓みが規制されることとなる。
【0044】
そして、FPC45を減速機37とサーボモータ36との隙間を通すようにして、それら減速機37等を迂回させた後、基板ユニット40をサーボモータ36のハウジング36aに固定する(ステップS104、図9(c)参照)。FPC45を撓ませたとしても、既に規制部68による規制が有効となっているため、作業ミス等によってFPC45(特に上記境界BP付近)に断線が生じることを抑制できる。
【0045】
基板ユニット40を固定した後は、基板カバー61の窓開口66bを通じて、上記マーカ79(図4参照)が適切な位置にあるかを目視により確認する(ステップS105)。組付作業にてFPC45を撓ませる等した場合に、当該FPC45の挿入部43への挿入代が小さくなる等した場合であっても、当該確認にてこれを把握することができる。
【0046】
カバーレイフィルム層73によって導体層72が覆われている部分と、カバーレイフィルム層73から導体層72が露出している部分との境界BPにてFPC45の厚さが不連続となっている。厚さが不連続となる部分では局所的に変形の度合いが大きくなり得る。何故ならば、強度が低くなることで応力集中が発生するからである。この点、この境界BPを跨ぐようにして補填層74を形成しているため、当該補填層74によってFPC45の厚さが大きくなり、境界BP付近の変形を緩和することができる。但し、補填層74が形成されている部分であっても、FPC45の組み付け作業等に際して強い力が加わることで変形が生じる可能性があり、このような事象が発生すると境界BP付近の変形は他の部分よりも大きくなる点については否定できない。ここで、本実施形態に示した補填層74については、その一部がコネクタ42の挿入部43から突出した状態となるように形成されており、この突出部分に重なる位置に規制部68が設けられている。FPC45が変形(例えば撓み変形)して規制部68に当たると当該規制部68によってそれ以上の変形が規制されることとなる。故に、上記境界BPにて断線が発生すること、すなわち断線によって通信機能が損なわれることを抑制できる。これにより、FPC45を適用することによる恩恵(例えば各種部品の高密度実装やロボットの小型化)を享受しつつ、ロボット15の信頼性の向上に寄与できる。
【0047】
本実施形態に示したFPC45はコネクタ42の挿入部43へ挿入することにより、モータ制御基板41に接続される。このような構成においては、様々な要因によってFPC45の挿入位置がばらつく可能性がある。この点、本実施形態に示した規制部68については補填層74の縁部を跨ぐようにして形成されている。このような構成とすることで、上述した挿入位置のばらつきが生じた場合であっても規制機能を上手く発揮させることができる。
【0048】
なお、補填層74を用いてFPC45の厚さを大きくすることで、コネクタ42については汎用品の流用が可能となる。言い換えれば、FPC45側の工夫によって接続構造を共通化できるため、ロボットの製造コストの削減に寄与できる。
【0049】
「規制部」として、FPC45の幅方向における補填層74の両縁部に沿って延びる第1規制部68aを設けたことにより、FPC45の変形をバランスよく規制することができる。また、FPC45はある程度の幅を有するため、FPC45のねじれ等によっても上記境界BP付近にて応力集中が発生する可能性がある。この点、本実施形態においては「規制部」としてFPC45の幅方向に延びる第2規制部68bを設けたことにより、規制部68をよけるようにしてねじれが発生することを回避できる。
【0050】
本実施形態に示したように、FPC45の制御基板側接続部45bにマーカ79を設けることは、当該FPC45の挿入が不十分になる等して接続不良が発生することを回避する上で好ましい。ここで、上記規制部68を設けることはFPC45の保護を図る上で好ましいものの、当該規制部68がコネクタ42付近に位置することでマーカ79の確認が困難になり得る。この点、本実施形態では、第1規制部68a、第2規制部68bによって囲まれるようにして平板部62に窓開口66bを形成しており、この窓開口66bを通じてマーカ79を目視で確認可能となっている。これにより、規制部68とマーカ79とを好適に共存させることができる。
【0051】
規制部68とFPC45とが当接した際に規制部68がFPC45に押されて変形・変位することは好ましくない。そこで、ある程度の強度が確保される基板カバー61に規制部68を設けることで、そのような不都合を生じにくくすることができる。
【0052】
ロボット15の機内では、様々な要因によって汚れが発生し得る。このような汚れがモータ制御基板41に付着することは、ロボット15の誤作動や故障等の要因になり得る。そこで、基板カバー61によってモータ制御基板41を覆う構成とすれば、誤作動や故障等を抑制できる。基板カバー61による保護機能を上手く発揮させるには、モータ制御基板41の大部分を当該基板カバー61によって覆うことが好ましい。そこで、このような部品に上記規制部68を設ける構成とすれば、当該規制部68がモータ制御基板41の一部を覆う機能と変形を規制する機能とを兼ねることとなり、個別に規制部68とカバー部とを設ける構成と比較してロボット15内の空間を効率よく利用できる。
【0053】
<変形例>
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0054】
(1)上記実施形態では、FPC45の変形を規制する規制部68を基板カバー61に設けたが、これに限定されるものではない。規制部68に相当する構成をシールド板金51に設けてもよいし、モータ制御基板41やサーボモータ36のハウジング36aに設けてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、FPC45が撓んでいない真っすぐな状態となっている場合には、規制部68とFPC45の補填層74との間に隙間が形成されるように補填層74の厚さや規制部68の位置等を規定したが、FPC45が撓んでいない真っすぐな状態となっている場合には、規制部68とFPC45の補填層74とが接するように補填層74の厚さや規制部68の位置等を規定してもよい。
【0056】
(3)上記実施形態に示した規制部68については、補填層74の境界部分を跨ぐように形成することも可能である。例えば、規制部68を線状又は面状として当該境界部分を跨いで延びる構成とするとよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、FPC45の幅方向における両側(長辺側)に分けて一対の第1規制部68aを設け、それら第1規制部68aの先端部に跨るようにして第2規制部68bを設けたが、これに限定されるものではない。例えば、各第1規制部68aの中間部に跨がるようにして第2規制部68bに相当する構成を設けてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態に示した窓開口66bについては、FPC45とモータ制御基板41とを接続させた状態にてFPC45のマーカ79を確認可能となるように形成されていればよく、具体的形状については任意である。例えば、円形としてもよいし、FPC45の幅方向に延びるスリットとしてもよい。また、平板部62の端部(FPC45側の端部)に切り欠き形成し、当該切り欠きを通じてマーカ79を確認可能とすることも可能である。
【0059】
なお、窓開口66bについては、コネクタ用開口66aと連通させたが、それらの開口66a,66bを個別に設けてもよい。また、窓開口66b及びコネクタ用開口66aを省略することも可能である。特に、コネクタ用開口66aを省略する場合には、モータ制御基板41の板面と平行に基板カバー61がスライドすること(脱落すること)を防止するためのストッパを別途設けるとよい。
【0060】
(6)上記実施形態に示した基板カバー61の固定対象については任意である。例えば基板カバー61をシールド板金51に固定する構成としてもよしい、サーボモータ36のハウジング36aに固定する構成としてもよい。
【0061】
(7)上記実施形態では、カバーレイフィルム層73の境界BPを跨ぐようにして補填層74及び規制部68を配設した。つまり、FPC45及びモータ制御基板41の接続箇所に対してカバーレイフィルム層73の境界BPよりも遠い位置及び当該境界BPよりも近い位置にて補填層74に規制部68が当接し得る構成とした。少なくとも、FPC45に撓みが発生する場合に、上記境界BPにおける応力集中を抑制することができるのであれば足り、例えば規制部68を境界BPの近傍に配設する構成とすることも可能である。また、上記接続箇所に対して境界BPよりも遠い位置及び近い位置の何れか一方にて補填層74に規制部68が当接し得る構成とすることも可能である。但し、規制部68によって境界BP付近に生じる断線を抑制する上では、上記接続箇所に対して境界BPよりも遠い位置にて補填層74に規制部68が当接し得る構成とすることが好ましい。
【0062】
(8)上記実施形態に示した作業手順では、モータ制御基板41とFPC45とが接続された状態で、シールド板金51及び基板カバー61を組み付けて基板ユニット40を形成し、当該基板ユニット40をサーボモータ36のハウジング36aに固定する流れとしたが、この作業手順を以下のように変更してもよい。すなわち、図10(a)に示すように、歪みゲージ39とFPC45とを接続し(ステップS201)、モータ制御基板41とシールド板金51と基板カバー61とを組み合わせて基板ユニット40を形成し(ステップS202)、基板ユニット40をサーボモータ36のハウジング36aに固定し(ステップS203)、FPC45を減速機37とサーボモータ36との隙間を通るように配置した後、当該FPC45をコネクタ42に挿入し(ステップS204)し、窓開口66bを通じて接続確認を行う(ステップS205)流れとしてもよい。つまり、モータ制御基板41の固定後に当該モータ制御基板41とFPC45とを接続させる流れとしてもよい。このような作業手順とする場合には、基板カバー61の規制部68の存在によって、作業者がFPC45における境界BP付近を掴んだままFPC45の挿入を完了することは困難になる。FPC45が挿入部43の奥位置に突き当たった際に大きな反力が発生し得る点に鑑みれば、境界BP付近を掴んだままFPC45の挿入を完了することを困難とすることには境界BP付近における応力集中を抑えて断線を抑制できるという技術的意義がある。
【0063】
なお、本変形例に示す手順とする場合には、図10(b)に示すように、FPC45Xを挿入部43の奥位置へ挿入した状態であっても、補填層74Xの一部が規制部68から突出したままとなるように構成するとよい。このような構成とすれば、補填層74Xにて当該突出する部分を掴んで挿入作業を行うことで、当該作業を一層簡易に行うことができる。
【0064】
(9)上記実施形態では、コネクタ42の挿入部43付近にてFPC45がベースフィルム層71の表面側へ凸となるようにして撓む(変形する)ことを規制する構成としたが、これに加えて、挿入部43付近にてFPC45がベースフィルム層71の裏面側へ凸となるようにして撓む(変形する)ことを規制する構成とすることも可能である。例えば、図11(a)に示すように、規制部68として、カバーレイフィルム層73に対して当接することでFPC45がベースフィルム層71の裏面側へ凸となるようにして撓む(変形する)ことを規制する第3規制部68cYを追加するとよい。第1規制部68a及び第3規制部68cYによって挟まれた部分がFPC45をコネクタ42の挿入部43へ誘導する誘導路として機能することとなり、例えば上記変形例(8)に示したような作業手順における作業の更なる容易化に寄与できる。
【0065】
(10)上記実施形態では、FPC45(制御基板側接続部45b)を挿入部43の奥位置へ挿入した状態にて当該FPC45の境界BPがコネクタ42の挿入部43の外側に位置する構成について例示したが、図11(b)に示すように、FPC45Z(制御基板側接続部45bZ)を挿入部43の奥位置へ挿入した状態にて当該FPC45の境界BPが挿入部43の内側に位置する構成を否定するものではない。FPC45Zをコネクタ42の挿入部43に挿入する場合、当該FPC45Zの厚さを当該厚さ方向における挿入部43の隙間よりも小さくする必要があるため、FPC45Zと挿入部43との間には僅かながらギャップが生じ得る。また、可撓性を有していることがFPC45の利点の1つであるため、挿入部43の入口付近に大きな撓みが発生すれば、その影響は挿入部43の内側に位置する境界BPに及ぶこととなる。このような事情に鑑みれば、境界BPが挿入部43の外側に位置する構成のみならず、境界BPが挿入部43の内側に位置する構成においても規制部68によって撓みを抑える構成とすることには技術的意義がある。
【0066】
(11)上記実施形態では、歪みゲージ39とモータ制御基板41とを繋ぐFPC45の断線を抑制する配線構造について例示したが、同様の配線構造を他のFPCに適用することも可能である。例えば、ロータリエンコーダ38とモータ制御基板41とをFPCによって接続する構成においては、当該FPCに上記配線構造を適用するとよい。
【0067】
(12)上記実施形態に示した制御基板側接続部45bに係る配線構造を、歪みゲージ39とゲージ側接続部45aとの接続部分に適用してもよい。すなわち、歪みゲージ39側にコネクタを設け、このコネクタにFPC45のゲージ側接続部45aを挿入する構成とした上で、ゲージ側接続部45aを構成する補填層と、この補填層に当接することによりFPC45の撓みを規制する規制部とを設けるとよい。
【0068】
(13)上記実施形態では、導体層72が単層となっているFPC45について例示したが、導体層72が複層となっているFPCについても、規制部68に相当する構成によって境界BP付近の断線を抑制することが好ましい。
【0069】
(14)ベースフィルム、カバーレイフィルム、補填板の材質については任意である。例えば、カバーレイフィルムや補填板をPETとすることも可能である。
【0070】
(15)上記実施形態に示したリジッド基板であるモータ制御基板41を、上述したブリッジ回路部や当該ブリッジ回路部にて検出した各信号を増幅するアンプ部が設けられた検出用基板とし、モータ制御用の基板を別に設けてもよい。
【0071】
(16)上記実施形態では6軸の多関節型ロボットについて例示したが、3軸~5軸、7軸等の他の多関節型ロボットに適用することも可能である。また、垂直多関節型ロボットに代えて、当該構成を水平多関節型ロボットに適用することも可能である。
【0072】
(17)上記実施形態では、工場で使用される産産業用ロボットについて例示したが、FPCを具備する他の分野のロボット、具体的には食品、サービス、医療等の分野にて使用されるロボットに適用することも可能である。
【0073】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0074】
特徴1.ベース層(ベースフィルム層71)と、カバー層(カバーレイフィルム層73)と、それらベース層及びカバー層の間に設けられ配線パターンを形成している導体層(導体層72)とを有するフレキシブル配線基板(FPC45)を備え、
前記フレキシブル配線基板の一端部には、前記カバー層から前記導体層が露出し、他のロボット用電気部品(モータ制御基板41)に設けられたコネクタ(コネクタ42)に接続される接続部(制御基板側接続部45b)が設けられており、
前記接続部には、前記ベース層を挟んで前記導体層とは反対側となる部分に前記コネクタにおける当該接続部の挿入部分に合わせて前記フレキシブル配線基板の厚さが補填された補填層(補填層74)が設けられており、
前記補填層は、前記カバー層によって前記導体層が覆われている部分と、前記カバー層から前記導体層が露出している部分との境界(境界BP)を跨ぎ、且つ前記接続部と前記コネクタとが接続されている状況下にて前記挿入部から当該補填層の一部が突出した状態となるように形成されており、
前記補填層において前記挿入部から突出する突出部分に前記フレキシブル配線基板の厚さ方向にて重なる位置に設けられ、当該補填層に当接することにより前記フレキシブル配線基板の変形を規制可能な規制部(規制部68)を備えているロボット用配線構造。
【0075】
本特徴に示す構成では、カバー層によって導体層が覆われている部分と、カバー層から導体層が露出している部分との境界にてフレキシブル配線基板の厚さが不連続となっている。厚さが不連続となる部分では局所的に変形の度合いが大きくなり得る。何故ならば、強度が低くなることで応力集中が発生するからである。この点、この境界を跨ぐようにしてコネクタ用の補填層を形成すれば、当該補填層によってフレキシブル配線基板の厚さが大きくなり、境界付近の変形を緩和することができる。但し、補填層が形成されている部分であっても、フレキシブル配線基板の組み付け作業等に際して強い力が加わることで変形が生じる可能性があり、このような事象が発生すると境界付近の変形は他の部分よりも大きくなる点については否定できない。ここで、本特徴に示す補填層については、その一部がコネクタの挿入部から突出した状態となるように形成されており、この突出部分に重なる位置には規制部が設けられている。フレキシブル配線基板が変形(例えば撓み変形)して規制部に当たると当該規制部によってそれ以上の変形が規制されることとなる。故に、上記境界にて断線が発生すること、すなわち断線によって通信機能が損なわれることを抑制できる。これにより、フレキシブル配線基板を適用することによる恩恵(例えば各種部品の高密度実装やロボットの小型化)を享受しつつ、ロボットの信頼性の向上に寄与できる。
【0076】
特徴2.前記規制部は、前記補填層において前記挿入部から突出している側の縁部を跨ぐようにして形成されている特徴1に記載のロボット用配線構造。
【0077】
補填層において挿入部から突出している側の縁部付近に規制部が位置すればフレキシブル配線基板の変形を効率よく規制することができる。但し、特徴1に示したようにフレキシブル配線基板をコネクタに挿入する構成においては、様々な理由によってフレキシブル配線基板の位置がばらつく可能性を否定できない。つまり、フレキシブル配線基板の組付状態によっては規制部と補填層の縁部との位置関係が不適切となり規制機能が上手く発揮されなくなる可能性がある。この点、本特徴に示すように、補填層の縁部を跨ぐようにして規制部を形成することにより、上述した位置ばらつきをある程度許容できることとなり、規制機能が上手く発揮されなくなるといった不都合を生じにくくすることができる。
【0078】
特徴3.前記規制部は、前記フレキシブル配線基板の幅方向における前記補填層の両縁部(両長辺)に跨るようにして形成されている特徴1又は特徴2に記載のロボット用配線構造。
【0079】
フレキシブル配線基板についてはある程度の幅を有するため、フレキシブル配線基板にねじれ等が発生した場合にも上記境界付近にて応力集中が発生する可能性がある。この点、本特徴に示すように規制部をフレキシブル配線基板の幅方向における両縁部に跨るようにして形成することにより、ねじれの影響を抑えやすい構成を実現できる。
【0080】
特徴4.前記規制部は、少なくとも前記フレキシブル配線基板の幅方向における前記補填層の両縁部に対して前記厚さ方向に重なる位置に設けられている特徴1乃至特徴3のいずれか1つに記載のロボット用配線構造。
【0081】
本特徴に示すように、規制部を当該補填層の両縁部に重なる位置に設ける構成とすれば、規制部によってフレキシブル配線基板の変形をバランスよく規制することができる。
【0082】
特徴5.前記フレキシブル配線基板における前記一端部には、前記コネクタに対する当該フレキシブル配線基板の挿入位置を確認するためのマーカ(マーカ79)が設けられており、
前記規制部には、前記マーカを目視により確認可能となる開放部(窓開口66b)が形成されている特徴1乃至特徴4のいずれか1つに記載のロボット用配線構造。
【0083】
本特徴に示すように、フレキシブル配線基板の一端部にマーカを設けることは、当該フレキシブル配線基板の挿入が不十分になる等して接続不良が発生することを回避する上で好ましい。ここで、特徴1等に示した規制部を設けることはフレキシブル配線基板の保護を図る上で好ましいものの、当該規制部がマーカを確認する上で妨げになり得る。この点、本特徴に示すように規制部にマーカを目視で確認可能とするための開放部を設けることで、そのような懸念を好適に払しょくできる。
【0084】
特徴6.前記規制部は、前記ロボット用電気部品側に設けられている特徴1乃至特徴5のいずれか1つに記載のロボット用配線構造。
【0085】
特徴1等に示した規制部がフレキシブル配線基板と当接した際に当該フレキシブル配線基板に押されて変形・変位することは好ましくない。そこで、ある程度の強度が確保されるロボット用電気部品側を規制部の配設対象とすることで、そのような不都合を生じにくくすることができる。
【0086】
特徴7.前記ロボット用電気部品が載置されるベース(シールド板金51)と、前記ロボット用電気部品を覆うカバー体(基板カバー61)とを有し、
前記規制部は、前記ベース及び前記カバー体の少なくとも一方に設けられている特徴1乃至特徴6のいずれか1つに記載のロボット用配線構造。
【0087】
ロボット用電気部品用のベース及びカバー体については、ある程度の強度が確保される。これらの構成を規制部の配設対象とすれば、特徴6に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0088】
特徴8.前記ロボット用電気部品を覆うカバー体(基板カバー61)を有し、
前記規制部は、前記カバー体に設けられている特徴1乃至特徴7のいずれか1つに記載のロボット用配線構造。
【0089】
ロボットの機内では、様々な要因によって汚れが発生し得る。このような汚れがロボット用電気部品に付着することは、ロボットの誤作動や故障等の要因になり得る。そこで、カバー体によってロボット用電気部品を覆う構成とすれば、誤作動や故障等を抑制できる。カバー体による保護機能を上手く発揮させるには、ロボット用電気部品の広域をカバーすることが好ましい。そこで、このような部品に上記規制部を設ける構成とすれば、当該規制部がロボット用電気部品の一部を覆う機能と変形を規制する機能とを兼ねることとなり、規制部と覆い部とを個別に設ける構成と比較してロボット内の空間を効率よく利用できる。例えばロボット用電気部品がソリッド基板である場合には、当該ソリッド基板の縁部から内側へ離した位置にコネクタを配設するとよい。
【0090】
特徴9.特徴7又は特徴8に記載されたフレキシブル配線基板の取付方法であって、
前記ロボット用電気部品の前記コネクタと前記フレキシブル配線基板の前記接続部とを接続し、且つ前記カバー体の前記規制部により前記フレキシブル配線基板の変形を規制可能とする第1のステップと、
前記第1のステップの後に、前記ロボット用電気部品を前記ロボットの固定部(サーボモータ36のハウジング36a)に固定する第2のステップと
を有しているフレキシブル配線基板の取付方法。
【0091】
本特徴に示す方法によれば、ロボット用電気部品を固定する際に、作業ミス等によってフレキシブル配線基板(特に境界付近)に断線が生じることを抑制できる。
【0092】
特徴10.特徴7又は特徴8に記載されたフレキシブル配線基板の取付方法であって、
前記ロボット用電気部品の前記コネクタと前記フレキシブル配線基板の前記接続部とを接続し、
前記フレキシブル配線基板が接続された前記ロボット用電気部品に前記カバーを組み付けた後、当該ロボット用電気部品を前記ロボットの固定部に固定するフレキシブル基板の取付方法。
【0093】
本特徴によれば、カバーの組み付けによってフレキシブル配線基板を保護可能な状態とした後に、ロボット用電気部品を固定することにより、固定作業の際にフレキシブル配線基板(上記境界)に断線が発生することを抑制できる。
【0094】
特徴11(ロボットクレーム).特徴1乃至特徴8のいずれか1つに記載のロボット用配線構造を備えているロボット。
【0095】
本特徴によれば、フレキシブル配線基板を適用することによる恩恵(例えば各種部品の高密度実装やロボットの小型化)を享受しつつ、ロボットの信頼性の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0096】
15…ロボット、35…モータユニット、36…サーボモータ、36a…固定部としてのハウジング、37…減速機、39…歪みゲージ、40…基板ユニット、41…モータ制御基板、42…コネクタ、45…フレキシブル配線基板としてのFPC、45b…接続部としての制御基板側接続部、51…ベースとしてのシールド板金、61…基板カバー、62…平板部、66b…開放部としての窓開口、68…規制部、68a…第1規制部、68b…第2規制部、71…ベースフィルム層、72…導体層、73…カバーレイフィルム層、74…補填層、79…マーカ、BP…境界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11