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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158964
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】材料吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074639
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM10
4F206AP06
4F206AP08
4F206AR07
4F206AR09
4F206JA07
4F206JD05
4F206JL04
4F206JP30
4F206JQ32
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】プランジャーの先端に、交換前の第1材料が残留する可能性を小さくすることができる材料吐出装置を提供する。
【解決手段】スクリューおよびヒーターを有し、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、前記造形材料が流れる流路に接続され、前記流路の長手方向と交差する方向に延びたシリンダーと、前記シリンダー内に設けられたプランジャーと、前記プランジャーを駆動させる駆動部と、前記可塑化部および前記駆動部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記材料が、第1材料から、前記第1材料とは異なる第2材料に交換された場合、前記プランジャーの前記流路側の先端を前記流路に位置させた状態で、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させるクリーニング処理を行う、材料吐出装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューおよびヒーターを有し、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
前記造形材料が流れる流路に接続され、前記流路の長手方向と交差する方向に延びたシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられたプランジャーと、
前記プランジャーを駆動させる駆動部と、
前記可塑化部および前記駆動部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記材料が、第1材料から、前記第1材料とは異なる第2材料に交換された場合、
前記プランジャーの前記流路側の先端を前記流路に位置させた状態で、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させるクリーニング処理を行う、材料吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記プランジャーは、前記流路に向かって幅が小さくなるテーパー部を有し、
前記先端は、前記テーパー部で構成され、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記流路に前記テーパー部の全体を位置させる、材料吐出装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させながら、前記プランジャーを回転させて前進および後退させるプランジャー移動処理を行う、材料吐出装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記先端を前記流路に位置させた状態で、前記プランジャーを回転させる、材料吐出装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記制御部は、前記プランジャーを正転および逆転させる、材料吐出装置。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記制御部は、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、
前記成形処理では、前記プランジャーを回転させて前進および後退させ、
前記クリーニング処理における前記プランジャーの回転速度は、前記成形処理における前記プランジャーの回転速度よりも大きい、材料吐出装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記先端には、螺旋溝およびシボのうちの少なくとも一方が形成されている、材料吐出装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御部は、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、
前記クリーニング処理における前記スクリューの回転速度は、前記成形処理における前記スクリューの回転速度よりも大きい、材料吐出装置。
【請求項9】
請求項3または4において、
前記プランジャーの回転速度に対する前記スクリューの回転速度の比は、3.6以上5.6以下である、材料吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された材料を吐出する材料吐出装置が知られている。このような材料吐出装置は、射出成形装置などに適用される。
【0003】
例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂を加熱しながら搬送する可塑化部と、該可塑化部から供給される溶融樹脂を射出シリンダー内での射出プランジャーの摺動によって射出する射出部を含んで構成される材料供給装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-157601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような材料供給装置では、材料の交換時に、プランジャーの先端に交換前の材料が残留する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る材料吐出装置の一態様は、
スクリューおよびヒーターを有し、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
前記造形材料が流れる流路に接続され、前記流路の長手方向と交差する方向に延びたシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられたプランジャーと、
前記プランジャーを駆動させる駆動部と、
前記可塑化部および前記駆動部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記材料が、第1材料から、前記第1材料とは異なる第2材料に交換された場合、
前記プランジャーの前記流路側の先端を前記流路に位置させた状態で、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させるクリーニング処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す側面図。
図2】本実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る射出成形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
図4】本実施形態に係る射出成形装置のバレルを模式的に示す図。
図5】本実施形態に係る射出成形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
図6】本実施形態に係る射出成形装置の制御部の処理を説明するための断面図。
図7】本実施形態に係る射出成形装置の制御部の処理を説明するための断面図。
図8】本実施形態の第1変形例に係る射出成形装置の制御部の処理を説明するための断面図。
図9】本実施形態の第1変形例に係る射出成形装置の制御部の処理を説明するための断面図。
図10】本実施形態の第2変形例に係る射出成形装置のプランジャーを模式的に示す側面図。
図11】本実施形態の第2変形例に係る射出成形装置のプランジャーを模式的に示す側面図。
図12】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 射出成形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る射出成形装置100を模式的に示す側面図である。なお、図1では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0010】
射出成形装置100は、図1に示すように、材料供給部10と、材料吐出装置20と、型部30と、型締部40と、制御部50と、を含む。
【0011】
材料供給部10は、材料吐出装置20に原料となる材料を供給する。材料供給部10は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料供給部10から供給される材料の形状は、例えば、ペレット状、粉末状である。
【0012】
材料吐出装置20は、材料供給部10から供給された材料を可塑化して、造形材料にする。そして、材料吐出装置20は、造形材料を型部30に向けて射出する。
【0013】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
型部30には、成形品の形状に相当するキャビティーが形成される。材料吐出装置20から射出された造形材料は、キャビティーに流れ込む。そして、造形材料が冷却されて固化され、成形品が生成される。
【0015】
型締部40は、型部30の開閉を行う。型締部40は、造形材料が冷却されて固化された後に、型部30を開く。これにより、成形品が外部に排出される。
【0016】
制御部50は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部50は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部50は、材料吐出装置20および型締部40を制御する。なお、制御部50は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0017】
1.2. 具体的な構成
図2は、射出成形装置100を模式的に示す図1のII-II線断面図である。材料吐出装置20は、図2に示すように、例えば、可塑化部60と、射出機構70と、ノズル80と、を有している。
【0018】
可塑化部60は、材料供給部10から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して射出機構70へと導くように構成されている。可塑化部60は、例えば、スクリューケース62と、駆動モーター64と、フラットスクリュー110と、バレル120と、ヒーター130と、を含む。
【0019】
スクリューケース62は、フラットスクリュー110を収容する筐体である。スクリューケース62とバレル120とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー110が収容されている。
【0020】
駆動モーター64は、スクリューケース62に接続されている。駆動モーター64は、フラットスクリュー110を回転させる。駆動モーター64は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター64のシャフト66は、フラットスクリュー110に接続されている。駆動モーター64は、制御部50によって制御される。
【0021】
フラットスクリュー110は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Y軸と平行である。駆動モーター64が発生させるトルクによって、フラットスクリュー110は、回転軸Rを中心に回転する。フラットスクリュー110は、例えば、シャフト66が接続されるシャフト面111と、シャフト面111とは反対側の溝形成面112と、シャフト面111と溝形成面112とを接続する接続面113と、を有している。ここで、図3は、フラットスクリュー110を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、図3では、図2に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0022】
フラットスクリュー110の溝形成面112には、図3に示すように、第1溝114が形成されている。第1溝114は、例えば、中央部115と、接続部116と、材料導入部117と、を有している。中央部115は、バレル120に形成された連通孔126と対向している。中央部115は、連通孔126と連通している。接続部116は、中央部115と材料導入部117とを接続している。図示の例では、接続部116は、中央部115から溝形成面112の外周に向かって渦状に形成されている。材料導入部117は、溝形成面112の外周に形成されている。すなわち、材料導入部117は、フラットスクリュー110の接続面113に形成されている。材料供給部10から供給された材料は、材料導入部117から第1溝114に導入され、接続部116および中央部115を通って、バレル120に形成された連通孔126に搬送される。図示の例では、第1溝114は、2つ形成されている。
【0023】
なお、第1溝114の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝114は、3つ以上形成されていてもよいし、1つだけ形成されていてもよい。
【0024】
また、図示はしないが、可塑化部60は、フラットスクリュー110ではなく、側面に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを有していてもよい。そして、可塑化部60は、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0025】
バレル120は、図2に示すように、フラットスクリュー110に対向して設けられている。バレル120は、フラットスクリュー110の溝形成面112に対向する対向面1
22を有している。対向面122は、Y軸方向において、溝形成面112と対向している。対向面122の中心には、連通孔126が形成されている。ここで、図4は、バレル120を模式的に示す図である。
【0026】
バレル120の対向面122には、図4に示すように、第2溝124と、連通孔126と、が形成されている。第2溝124は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝124が形成されているが、その数は、特に限定されない。複数の第2溝124は、Y軸方向からみて、連通孔126の周りに形成されている。第2溝124は、一端が連通孔126に接続され、連通孔126から対向面122の外周に向かって渦状に延びている。第2溝124は、造形材料を連通孔126に導く機能を有している。連通孔126は、可塑化された材料をバレル120の外部に流出させる。
【0027】
なお、第2溝124の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝124の一端は、連通孔126に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝124は、対向面122に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔126に造形材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝124は、対向面122に形成されていることが好ましい。
【0028】
ヒーター130は、図2に示すように、バレル120に設けられている。ヒーター130は、フラットスクリュー110とバレル120との間に供給された材料を加熱する。ヒーター130は、第1溝114に供給された材料を加熱する。ヒーター130は、制御部50によって制御される。可塑化部60は、フラットスクリュー110、バレル120、およびヒーター130によって、材料を連通孔126に向かって搬送しながら加熱して造形材料を生成し、生成された造形材料を、連通孔126から射出機構70へと流出させる。
【0029】
射出機構70は、例えば、シリンダー72と、プランジャー74と、プランジャー駆動部79と、を有している。シリンダー72は、連通孔126に接続された略円筒状の部材である。プランジャー74は、シリンダー72内に設けられている。プランジャー74は、シリンダー72の内部を移動する。プランジャー74は、モーターやギア等によって構成されたプランジャー駆動部79によって駆動される。制御部50は、プランジャー駆動部79および可塑化部60を制御する。
【0030】
射出機構70は、プランジャー74をシリンダー72内で摺動させることによって、計量操作および射出操作を実行する。計量操作とは、連通孔126から離れる-X軸方向にプランジャー74を移動させることによって、連通孔126に位置する造形材料をシリンダー72内へと導いて、シリンダー72内において計量する操作を指す。射出操作とは、連通孔126へ近付く+X軸方向にプランジャー74を移動させることによって、シリンダー72内の造形材料を、ノズル80を介して型部30に射出する操作を指す。
【0031】
ノズル80には、ノズル孔82が形成されている。ノズル孔82は、連通孔126と連通している。ノズル80は、可塑化部60から供給された造形材料を型部30の成形型32に向けて射出する。具体的には、上述した計量操作および射出操作が実行されることによって、シリンダー72内で計量された造形材料が、射出機構70から連通孔126を介してノズル孔82へと送られる。そして、造形材料は、ノズル孔82から型部30へと射出される。
【0032】
ノズル孔82および連通孔126は、造形材料が流れる流路140を形成している。図示の例では、流路140の長手方向は、Y軸方向である。シリンダー72は、流路140に接続されている。シリンダー72は、流路140の長手方向と交差する方向に延びてい
る。図示の例では、シリンダー72は、X軸方向に延びている。
【0033】
型部30は、成形型32を有している。成形型32は、金型である。ノズル孔82に送られた造形材料は、ノズル孔82から成形型32のキャビティー34に射出される。具体的には、成形型32は、互いに対向する可動型36および固定型38を有し、可動型36と固定型38との間にキャビティー34を有している。キャビティー34は、成形品の形状に相当する空間である。可動型36および固定型38の材質は、金属である。なお、可動型36および固定型38の材質は、セラミック、樹脂であってもよい。
【0034】
型締部40は、例えば、型駆動部42と、ボールねじ部44と、を有している。型駆動部42は、例えば、モーター、ギアなどによって構成されている。型駆動部42は、ボールねじ部44を介して可動型36に接続されている。型駆動部42は、制御部50によって制御される。ボールねじ部44は、型駆動部42の駆動による動力を可動型36に伝達する。型締部40は、型駆動部42およびボールねじ部44により可動型36を移動させることによって、型部30の開閉を行う。
【0035】
1.3. 動作
図5は、射出成形装置100の動作を説明するためのフローチャートである。具体的には、図5は、制御部50の処理を説明するためのフローチャートである。図6および図7は、制御部50の処理を説明するため断面図である。
【0036】
なお、便宜上、図6および図7では、制御部50、駆動モーター64、シリンダー72、プランジャー74、プランジャー駆動部79、フラットスクリュー110、およびバレル120以外の部材の図示を省略している。また、フラットスクリュー110およびバレル120を簡略化して図示している。このことは、後述する図8および図9において同様である。
【0037】
ユーザーは、材料供給部10に貯留される材料を、第1材料から第2材料に交換した場合、図示せぬ操作部を操作して、制御部50に処理を開始するための処理開始信号を出力する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって構成されている。制御部50は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0038】
第2材料は、第1材料と異なる材料である。第2材料は、第1材料と種類が異なる材料であってもよい。例えば、第1材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂であり、第2材料は、ポリプロピレン(PP)である。第2材料は、第1材料と色が異なる材料であってもよい。例えば、第1材料および第2材料は、ともにABS樹脂であり、第2材料は、第1材料と色が異なる。
【0039】
まず、制御部50は、クリーニング処理を行う。クリーニング処理は、図5に示すように、例えば、造形材料流通処理と、プランジャー前進処理と、前進停止処理と、プランジャー後退処理と、を含む。換言すると、制御部50は、クリーニング処理において、造形材料流通処理と、プランジャー前進処理と、前進停止処理と、プランジャー後退処理と、を行う。制御部50は、ステップS1として、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させる造形材料流通処理を行う。制御部50は、後述するプランジャー前進処理、前進停止処理、およびプランジャー後退処理の間中、造形材料流通処理を行う。
【0040】
具体的には、制御部50は、駆動モーター64を制御してフラットスクリュー110を回転させ、さらに、ヒーター130を制御して第2材料を可塑化し、生成された造形材料を流路140に流通させる。フラットスクリュー110の回転数は、例えば、0rpmよ
り大きく、120rpm以下である。造形材料流通処理におけるフラットスクリュー110の回転速度は、例えば、後述する成形処理におけるフラットスクリュー110の回転速度よりも大きい。
【0041】
次に、制御部50は、ステップS2として、プランジャー74を前進させるプランジャー前進処理を行う。
【0042】
具体的には、制御部50は、図6に示すプランジャー74の先端75が流路140に位置していない状態から、図7に示す先端75が流路140に位置するまで、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74を前進させる。図示の例では、制御部50は、プランジャー74を+X軸方向に移動させる。
【0043】
なお、「前進」とは、プランジャー74を流路140に近づけるように移動させることをいう。また、「後退」とは、プランジャー74を流路140から遠ざけるように移動させることをいう。
【0044】
先端75は、プランジャー74の流路140側の端である。先端75は、流路140から臨むことができる部分である。プランジャー74は、例えば、流路140側に向かって幅Wが小さくなるテーパー部76と、流路140側に向かって幅Wが一定である幅一定部77と、を有している。幅Wは、プランジャー74の長手方向と直交する方向の大きさである。図示の例では、幅Wは、Y軸方向の大きさである。テーパー部76の形状は、例えば、円錐である。図示はしないが、円錐の頂点は、丸まっていてもよい。先端75は、テーパー部76で構成されている。図示の例では、先端75は、テーパー部76の表面である。テーパー部76と幅一定部77との境界には、角78が形成されている。
【0045】
なお、図示はしないが、プランジャー74の形状は、円柱形状であってもよい。この場合、先端75は、流路140と対向するプランジャー74の流路140側の端面である。
【0046】
次に、制御部50は、ステップS3として、プランジャー74の前進を停止させて、流路140にプランジャー74の先端75を流路140に位置させる前進停止処理を行う。前進停止処理および造形材料流通処理によって、制御部50は、プランジャー74の先端75を流路140に位置させた状態で、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させ先端75をクリーニングすることができる。
【0047】
具体的には、制御部50は、プランジャー駆動部79を制御して、先端75が流路140に位置する状態で、プランジャー74の前進を停止させる。制御部50は、例えば、流路140にテーパー部76の全体を位置させる。制御部50は、流路140にプランジャー74の先端75が流路140に位置している状態を、所定時間、維持する。
【0048】
次に、制御部50は、ステップS4として、プランジャー74を後退させるプランジャー後退処理を行う。プランジャー前進処理およびプランジャー後退処理によって、制御部50は、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させながら、プランジャー74を前進および後退させるプランジャー移動を行うことができる。
【0049】
具体的には、制御部50は、図7に示すプランジャー74の先端75が流路140に位置している状態から、図6に示す先端75が流路140から外れる位置まで、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74を後退させる。図示の例では、制御部50は、プランジャー74を-X軸方向に移動させる。
【0050】
次に、制御部50は、ステップS5として、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行う。
【0051】
具体的には、制御部50は、駆動モーター64を制御してフラットスクリュー110を回転させ、さらに、ヒーター130を制御して第2材料を可塑化し、生成された造形材料を流路140に流通させる。そして、制御部50は、プランジャー74を前進および後退させて、上述のように、計量操作および射出操作を行い、キャビティー34に造形材料を吐出して成形品を成形する。
【0052】
クリーニング処理におけるフラットスクリュー110の回転速度は、例えば、成形処理におけるフラットスクリュー110の回転速度よりも大きい。プランジャー前進処理、前進停止処理、およびプランジャー後退処理におけるフラットスクリュー110の回転速度は、例えば、成形処理におけるフラットスクリュー110の回転速度よりも大きい。
【0053】
制御部50は、成形処理を行った後に、処理を終了する。
【0054】
なお、制御部50は、プランジャー前進処理、前進停止処理、およびプランジャー後退処理の一連の処理を、複数回繰り返してもよい。
【0055】
また、上記では、造形材料流通処理を行いながら、プランジャー前進処理、前進停止処理、およびプランジャー後退処理を行う例について説明したが、造形材料流通処理を行いながら前進停止処理を行うことによりプランジャー74の先端75をクリーニングすることができれば、制御部50は、プランジャー前進処理およびプランジャー後退処理の間中に、造形材料流通処理を行わなくてもよい。
【0056】
また、制御部50は、プランジャー74の先端75を流路140に位置させた後に、造形材料流通処理を行うことにより、先端75をクリーニングしてもよい。
【0057】
また、制御部50は、プランジャー後退処理から成形処理に移行する間に、フラットスクリュー110の回転を停止させてもよいし、停止させずにフラットスクリュー110を回転させたまま成形処理に移行してもよい。
【0058】
1.4. 作用効果
材料吐出装置20では、制御部50は、材料が、第1材料から、第1材料とは異なる第2材料に交換された場合、プランジャー74の流路140側の先端75を流路140に位置させた状態で、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させるクリーニング処理を行う。
【0059】
そのため、材料吐出装置20では、プランジャー74の先端75に、第2材料を可塑化して生成された造形材料を接触させることができる。これにより、先端75を、第2材料を可塑化して生成された造形材料によってクリーニングすることができる。したがって、先端75に、交換前の第1材料が残留する可能性を小さくすることができる。その結果、成形品に第1材料が残留する可能性を小さくでき、成形品の品質の安定化を図ることができる。
【0060】
さらに、材料吐出装置20では、材料を第1材料から第2材料に交換する前に、パージ材でプランジャー74の先端75をクリーニングしなくても、先端75に交換前の第1材料が残留する可能性を小さくすることができるため、材料の交換時間を短縮できる。なお、材料の交換時間の短縮を考慮しない場合は、材料吐出装置20において、第1材料から
第2材料に交換する前に、パージ材で先端75をクリーニングしてもよい。
【0061】
さらに、プランジャー74の先端75を流路140に位置させることにより、流路140の幅が狭くなるため、造形材料の流速を大きくすることができる。これにより、クリーニング効果を高めることができる。
【0062】
材料吐出装置20では、プランジャー74は、流路140に向かって幅Wが小さくなるテーパー部76を有し、先端75は、テーパー部76で構成され、制御部50は、クリーニング処理において、流路140にテーパー部76の全体を位置させる。そのため、材料吐出装置20では、先端75の全体を、第2材料を可塑化して生成された造形材料によってクリーニングすることができる。
【0063】
特にテーパー部76と幅一定部77との角78近傍では、プランジャー74を前進させた場合に、テーパー部76のY軸方向における中心に比べて、流速が遅くなる。そのため、プランジャー74を前進および後退させただけでは、角78近傍に第1材料が残留する場合がある。材料吐出装置20では、クリーニング処理において、流路140にテーパー部76の全体を位置させるため、このような問題を回避できる。
【0064】
材料吐出装置20では、制御部50は、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、クリーニング処理におけるフラットスクリュー110の回転速度は、成形処理におけるフラットスクリュー110の回転速度よりも大きい。そのため、材料吐出装置20では、クリーニング処理におけるフラットスクリューの回転速度が成形処理におけるフラットスクリューの回転速度よりも小さい場合に比べて、クリーニング処理において、プランジャー74の先端75のクリーニング効果を高めることができる。フラットスクリュー110の回転速度が大きいほど、第2材料を可塑化して生成された造形材料の流速が大きくなり、クリーニング効果が高くなる。
【0065】
2. 射出成形装置の変形例
2.1. 第1変形例
2.1.1. 動作
次に、本実施形態の第1変形例に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。図8および図9は、本実施形態の第1変形例に係る射出成形装置200の制御部50の処理を説明するため断面図である。
【0066】
以下、本実施形態の第1変形例に係る射出成形装置200において、上述した本実施形態に係る射出成形装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2,第3変形例に係る射出成形装置おいて、同様である。
【0067】
射出成形装置200では、制御部50は、図8および図9に示すように、クリーニング処理において、プランジャー74を回転させる点において、上述した射出成形装置100と異なる。具体的には、射出成形装置200では、制御部50は、プランジャー前進処理、前進停止処理、プランジャー後退処理、および成形処理において、プランジャー74を回転させる。
【0068】
制御部50は、図8に示すように、プランジャー前進処理において、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74を回転させながら、プランジャー74を前進させる。
【0069】
制御部50は、図9に示すように、前進停止処理において、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74の回転を維持しながら、プランジャー74の前進を停止させる。制御部50は、前進停止処理において、プランジャー74の先端75を流路140に位置させた状態で、プランジャー74を回転させる。
【0070】
制御部50は、プランジャー後退処理において、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74を回転させながら、プランジャー74を後退させる。プランジャー前進処理およびプランジャー後退処理によって、制御部50は、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させながら、プランジャー74を回転させて前進および後退させるプランジャー移動を行うことができる。
【0071】
制御部50は、成形処理において、プランジャー駆動部79を制御して、プランジャー74を回転させて前進および後退させる。
【0072】
制御部50は、プランジャー前進処理、前進停止処理、プランジャー後退処理、および成形処理の各々の処理において、プランジャー74を回転させる場合に、プランジャー74を正転および逆転させてもよい。制御部50は、プランジャー74を回転させる場合に、-X軸方向からみて、プランジャー74を、時計回りに回転させた後に反時計回りに回転させてもよいし、反時計回りに回転させた後に時計回りに回転させてもよい。制御部50は、プランジャー前進処理において、プランジャー74を正転させ、プランジャー後退処理において、プランジャー74を逆転させてもよい。
【0073】
クリーニング処理におけるプランジャー74の回転速度は、例えば、成形処理におけるプランジャー74の回転速度よりも大きい。プランジャー前進処理におけるプランジャー74の回転速度、前進停止処理におけるプランジャー74の回転速度、およびプランジャー後退処理におけるプランジャー74の回転速度は、例えば、成形処理におけるプランジャー74の回転速度よりも大きい。なお、プランジャー前進処理におけるプランジャー74の回転速度、前進停止処理におけるプランジャー74の回転速度、およびプランジャー後退処理におけるプランジャー74の回転速度のうちいずれかが、成形処理におけるプランジャー74の回転速度よりも大きければ、残りは、成形処理におけるプランジャー74の回転速度以下であってもよい。
【0074】
プランジャー前進処理、前進停止処理、およびプランジャー後退処理において、プランジャー74の回転速度に対するフラットスクリュー110の回転速度の比は、例えば、3.6以上5.6以下である。換言すると、プランジャー74の回転速度:フラットスクリュー110の回転速度=1:3.6~1:5.6である。射出成形装置200の型締力が3トンの場合、プランジャー74の回転数は、例えば、0rpmより大きく、675rpm以下である。射出成形装置200の型締力が10トンの場合、プランジャー74の回転数は、例えば、0rpmより大きく、432rpm以下である。
【0075】
2.1.2. 作用効果
射出成形装置200の材料吐出装置20では、制御部50は、クリーニング処理において、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、流路140に流通させながら、プランジャー74を回転させて前進および後退させるプランジャー移動処理を行う。そのため、材料吐出装置20では、プランジャー移動処理によって、プランジャー74の先端75をクリーニングできる。さらに、プランジャー74の回転によって、造形材料を、プランジャー74の先端75のY軸方向における中心近傍に吸い寄せることができ、角78近傍に、第1材料が残留することを抑制できる。
【0076】
射出成形装置200の材料吐出装置20では、制御部50は、クリーニング処理において、先端75を流路140に位置させた状態で、プランジャー74を回転させる。そのため、材料吐出装置20では、プランジャーを回転させない場合に比べて、第2材料を可塑化して生成された造形材料が接触する領域を大きくすることができる。
【0077】
射出成形装置200の材料吐出装置20では、制御部50は、プランジャー74を正転および逆転させる。そのため、材料吐出装置20では、一方向だけの回転では剥がすことができないような造形材料でも、他方向の回転によって、造形材料がプランジャー74の先端75から剥がれる可能性を高くすることができる。
【0078】
射出成形装置200の材料吐出装置20では、制御部50は、フラットスクリュー110を回転させて、第2材料を可塑化して生成された造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、成形処理では、プランジャー74を回転させて前進および後退させ、クリーニング処理におけるプランジャー74の回転速度は、成形処理における前記プランジャー74の回転速度よりも大きい。そのため、材料吐出装置20では、クリーニング処理におけるプランジャーの回転速度が成形処理における前記プランジャーの回転速度よりも小さい場合に比べて、クリーニング処理において、プランジャー74の先端75のクリーニング効果を高めることができる。プランジャー74の回転速度が大きいほど、粘性体である造形材料からの抵抗が高くなって、クリーニング効果が高くなる。
【0079】
射出成形装置200の材料吐出装置20では、プランジャー74の回転速度に対するフラットスクリュー110の回転速度の比は、3.6以上5.6以下である。そのため、材料吐出装置20では、プランジャー74の先端75のクリーニング効果を高めることができる。
【0080】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。図10および図11は、本実施形態の第2変形例に係る射出成形装置300のプランジャー74の側面図である。
【0081】
射出成形装置300では、図10に示すように、プランジャー74の先端75に、螺旋溝310が形成されている点において、上述した射出成形装置100と異なる。螺旋溝310によって、プランジャー74を前進および後退させた場合に、造形材料を、プランジャー74の先端75のY軸方向における中心近傍に吸い寄せることができ、角78近傍に、第1材料が残留することを抑制できる。
【0082】
射出成形装置300では、図11に示すように、プランジャー74の先端75に、シボ320が形成されていてもよい。シボ320は、シボ加工によって形成される。シボ320によって、造形材料と先端75との間に空隙を形成することができ、先端75に残留した第1材料を、容易に剥がすことができる。なお、図示はしないが、先端75に、螺旋溝310およびシボ320の両方が形成されていてもよい。
【0083】
射出成形装置300の材料吐出装置20では、プランジャー74の先端75には、螺旋溝310およびシボ320のうちの少なくとも一方が形成されている。そのため、材料吐出装置20では、プランジャー74の先端75のクリーニング効果を高めることができる。
【0084】
なお、プランジャー74の先端75には、窒化クロム処理を行うことによって、窒化クロム層が設けられていてもよい。または、プランジャー74の先端75には、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon:DLC)処理を行うことによって、DLC層
が設けられていてもよい。窒化クロム層やDLC層が設けられていれば、先端75に残留した第1材料を、容易に剥がすことができる。
【0085】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る射出成形装置について説明する。
【0086】
上述した射出成形装置100では、材料供給部10から供給される材料は、ABS樹脂、またはPPであった。
【0087】
これに対し、本実施形態の第3変形例に係る射出成形装置では、材料供給部10から供給される材料は、ABS樹脂およびPP以外の材料、または、ABS樹脂およびPPに他の成分が加えられた材料である。
【0088】
材料供給部10から供給される材料としては、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、射出成形装置で成形される成形品の形状を形作っている中心となる材料を意味し、成形品おいて50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0089】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0090】
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0091】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0092】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部60において、フラットスクリュー110の回転と、ヒーター130の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル80から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル80から吐出されることが望ましい。
【0093】
可塑化部60では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部60に投入されることが望ましい。
【0094】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(N
i)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0095】
可塑化部60においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0096】
材料供給部10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部60において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0097】
材料供給部10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0098】
その他に、材料供給部10から供給される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA、PA、PPS、PEEK、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0099】
3. 三次元造形装置
次に、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図12は、本実施形態に係る三次元造形装置400を模式的に示す断面図である。
【0100】
三次元造形装置400は、図12に示すように、例えば、材料供給部10と、制御部50と、可塑化部60と、射出機構70と、ノズル80と、ステージ410と、位置変更部420と、を含む。三次元造形装置400は、FDM(Fused Deposition Modeling)(登録商標)方式の三次元造形装置である。
【0101】
ノズル80は、可塑化部60から供給された造形材料を、ステージ410に向けて吐出する。具体的には、三次元造形装置400は、ノズル80からステージ410に造形材料を吐出させつつ、位置変更部420を駆動して、ノズル80とステージ410との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置400は、ステージ410上に所望形状の成形品としての三次元造形物を造形する。
【0102】
射出機構70は、プランジャー74を前進および後退させることにより、造形材料の糸引きを切断する。
【0103】
ステージ410は、ノズル80の下方に設けられている。図示の例では、ステージ410の形状は、直方体である。ステージ410は、ノズル80から吐出された造形材料を支持する。ステージ410の材質は、例えば、アルミニウムなどの金属である。
【0104】
位置変更部420は、ステージ410を支持している。位置変更部420は、ノズル80とステージ410との相対的な位置を変更する。図示の例では、位置変更部420は、ステージ410をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル80とステージ410との相対的な位置を変更する。さらに、位置変更部420は、ノズル80をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル80とステージ410との相対的な位置を変更する。
【0105】
位置変更部420は、例えば、第1電動アクチュエーター422と、第2電動アクチュエーター424と、第3電動アクチュエーター426と、を有している。第1電動アクチュエーター422は、ステージ410をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター424は、ステージ410をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター426は、ノズル80をZ軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター426は、例えば、可塑化部60のスクリューケース62を支持している。
【0106】
なお、位置変更部420は、ノズル80とステージ410との相対的な位置を変更できれば、その構成は、特に限定されない。位置変更部420は、例えば、ステージ410をZ軸方向に移動させ、ノズル80をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよいし、ステージ410またはノズル80をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0107】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0108】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0109】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0110】
材料吐出装置の一態様は、
スクリューおよびヒーターを有し、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
前記造形材料が流れる流路に接続され、前記流路の長手方向と交差する方向に延びたシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられたプランジャーと、
前記プランジャーを駆動させる駆動部と、
前記可塑化部および前記駆動部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記材料が、第1材料から、前記第1材料とは異なる第2材料に交換された場合、
前記プランジャーの前記流路側の先端を前記流路に位置させた状態で、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させるクリーニング処理を行う。
【0111】
この材料吐出装置によれば、プランジャーの先端に、交換前の第1材料が残留する可能性を小さくすることができる。
【0112】
材料吐出装置の一態様において、
前記プランジャーは、前記流路に向かって幅が小さくなるテーパー部を有し、
前記先端は、前記テーパー部で構成され、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記流路に前記テーパー部の全体を位置させてもよい。
【0113】
この材料吐出装置によれば、プランジャーの先端の全体を、第2材料を可塑化して生成された造形材料によってクリーニングすることができる。
【0114】
材料吐出装置の一態様において、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、前記流路に流通させながら、前記プランジャーを回転させて前進および後退させるプランジャー移動処理を行ってもよい。
【0115】
この材料吐出装置によれば、プランジャー移動処理によって、プランジャーの先端をクリーニングできる。
【0116】
材料吐出装置の一態様において、
前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記先端を前記流路に位置させた状態で、前記プランジャーを回転させてもよい。
【0117】
この材料吐出装置によれば、第2材料を可塑化して生成された造形材料が接触する領域を大きくすることができる。
【0118】
材料吐出装置の一態様において、
前記制御部は、前記プランジャーを正転および逆転させてもよい。
【0119】
この材料吐出装置によれば、一方向だけの回転では剥がすことができないような造形材料でも、他方向の回転によって、造形材料がプランジャーの先端から剥がれる可能性を高くすることができる。
【0120】
材料吐出装置の一態様において、
前記制御部は、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、
前記成形処理では、前記プランジャーを回転させて前進および後退させ、
前記クリーニング処理における前記プランジャーの回転速度は、前記成形処理における前記プランジャーの回転速度よりも大きくてもよい。
【0121】
この材料吐出装置によれば、クリーニング処理において、プランジャーの先端のクリーニング効果を高めることができる。
【0122】
材料吐出装置の一態様において、
前記先端には、螺旋溝およびシボのうちの少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0123】
この材料吐出装置によれば、プランジャーの先端のクリーニング効果を高めることができる。
【0124】
材料吐出装置の一態様において、
前記制御部は、前記スクリューを回転させて、前記第2材料を可塑化して生成された前記造形材料を、吐出させて成形品を成形する成形処理を行い、
前記クリーニング処理における前記スクリューの回転速度は、前記成形処理における前記スクリューの回転速度よりも大きくてもよい。
【0125】
この材料吐出装置によれば、クリーニング処理において、プランジャーの先端のクリーニング効果を高めることができる。
【0126】
材料吐出装置の一態様において、
前記プランジャーの回転速度に対する前記スクリューの回転速度の比は、3.6以上5.6以下であってもよい。
【0127】
この材料吐出装置によれば、プランジャーの先端のクリーニング効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0128】
10…材料供給部、20…材料吐出装置、30…型部、32…成形型、34…キャビティー、36…可動型、38…固定型、40…型締部、42…型駆動部、44…ボールねじ部、50…制御部、60…可塑化部、62…スクリューケース、64…駆動モーター、66…シャフト、70…射出機構、72…シリンダー、74…プランジャー、75…先端、76…テーパー部、77…幅一定部、78…角、79…プランジャー駆動部、80…ノズル、82…ノズル孔、100…射出成形装置、110…フラットスクリュー、111…シャフト面、112…溝形成面、113…接続面、114…第1溝、115…中央部、116…接続部、117…材料導入部、120…バレル、122…対向面、124…第2溝、126…連通孔、130…ヒーター、140…流路、200,300…射出成形装置、310…螺旋溝、320…シボ、400…三次元造形装置、410…ステージ、420…位置変更部、422…第1電動アクチュエーター、424…第2電動アクチュエーター、426…第3電動アクチュエーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12