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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158972
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液状組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20241031BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 D
A23L2/68
A23L2/52
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074657
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】首藤 愛呼
(72)【発明者】
【氏名】白幡 登
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD01
4B018MD09
4B018MD27
4B018MD77
4B018ME11
4B117LC03
4B117LC04
4B117LK01
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK20
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】グルコン酸類を高含有しながらも、グルコン酸類の酸味が抑えられた液状組成物の提供。
【解決手段】グルコン酸類を5.5質量%以上含有し、水分活性が0.89以下である液状組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコン酸類を5.5質量%以上含有し、水分活性が0.89以下である液状組成物。
【請求項2】
Brix値が63.2%以上である請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
水で10倍希釈した水溶液のpHが1.5~6である請求項1又は2記載の液状組成物。
【請求項4】
更にミネラルを0.05~6質量%含有する請求項1~3のいずれか1項記載の液状組成物。
【請求項5】
ミネラルがナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の液状組成物。
【請求項6】
更に炭水化物を30質量%以上含有する請求項1~5のいずれか1項記載の液状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸味を有する液状組成物には、一般的に、有機酸が配合されている。酸味を考慮して、液状組成物へは有機酸の濃度が1質量%以下となるように配合されることが多い。
【0003】
有機酸の一種であるグルコン酸類は、腸内のビフィドバクテリウム菌を増殖させる効果(特許文献1)、小腸の腸内環境を改善する効果(特許文献2)、皮膚の紫外線抵抗性を増加させる効果(特許文献3)等の種々の健康機能が知られている。そのためグルコン酸類は積極的に摂取したい成分である。これらグルコン酸類の種々の健康機能を得るために必要な摂取量は1日あたり2~9gである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表特許第1994/09650
【特許文献2】特開2019-6735号公報
【特許文献3】特開2015-27996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グルコン酸は、例えばクエン酸と比べて3分の1程度の酸味であることが知られている(特許文献1参照)ものの、液状組成物に配合した場合、経口摂取するにはやはり酸味が強い。そのため、酸味を経口摂取できる程度に抑えるとグルコン酸類は液状組成物中に2~3質量%程度の含有量に止める必要がある。しかしながら、2~3質量%程度の含有量では、生理効果を得るために有効な量のグルコン酸類を摂取しようとすると、1日あたりに多量の液状組成物を摂取する必要があるため負担が大きい。
【0006】
従って、本発明は、グルコン酸類を高含有しながらも、グルコン酸類の酸味が抑えられた液状組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、グルコン酸類の酸味抑制について鋭意検討した結果、グルコン酸類に特有の現象として、液状組成物において水分活性を一定値以下とすれば、酸味が抑制された液状組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、グルコン酸類を5.5質量%以上含有し、水分活性が0.89以下である液状組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グルコン酸類を高含有しながらも、良好な酸味を感じる液状組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、液状組成物は、常温(20℃±15℃)以下の温度において流動性を有する経口摂取用の組成物である。液状組成物の例として、シロップ、水飴、ヨーグルトソース、具材入りヨーグルトソース、液状調味料、具材入り液状調味料、濃縮飲料、清涼飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料等が挙げられる。なかでも、本発明の効果を享受し易い点から、好ましくはシロップである。
【0011】
本発明においてグルコン酸類は、グルコン酸(化学式:C12)、グルコノデルタラクトン(化学式:C10)及びグルコン酸塩から選ばれる。グルコノデルタラクトンは、グルコン酸から1分子の水が脱水された分子内エステルである。グルコン酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム等のアルカリ土類金属との塩、マグネシウム塩が挙げられる。このうち、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩が好ましい。 グルコン酸類は、溶媒和物であっても無溶媒和物であってもよく、いずれも包含される。溶媒和物の好ましい例としては、水和物やアルコール和物が挙げられる。グルコン酸類は、各々単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明の液状組成物中のグルコン酸類の含有量は5.5質量%以上であるが、健康機能を発揮する量のグルコン酸類を効率的に摂取可能な組成物を得るための観点から、7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、食用に適した酸味を得る観点から、46質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
液状組成物中のグルコン酸類の含有量は、5.5質量%以上であって、好ましくは5.5~46質量%、より好ましくは7~40質量%、更に好ましくは10~35質量%、更に好ましくは15~30質量%、更に好ましくは15~25質量%である。本明細書において、グルコン酸類の含有量はグルコン酸換算量である。
本発明において、グルコン酸類の含有量は、市販酵素キット法で求めるものとする。キットに供した試料は、水で適宜希釈したものを用いる。なお、市販酵素キットは、ロシュ・ダイアグノスティック社製のFキットを使用するものとする。
【0013】
本発明の液状組成物は、酸味抑制の観点から、更にミネラルを含有することが好ましい。ミネラルとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。これらのミネラルは他のミネラルと比較して摂取上限量の幅が広いため多量摂取時の安全性が高く好ましい。また、これらのミネラルは、緩衝剤に由来することが好ましい。
緩衝剤としては、グルコン酸と混合してpH緩衝作用を有するものであればよく、例えば、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸、酢酸等の有機酸の塩、リン酸、塩酸、炭酸等の無機酸の塩が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム等のアルカリ土類金属との塩、マグネシウム塩が挙げられる。これらは溶媒和物であっても無溶媒和物であってもよく、いずれも包含される。溶媒和物の好ましい例としては、水和物やアルコール和物が挙げられる。
緩衝剤は、各々単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、得られる液状組成物の風味安定性の観点、及びグルコン酸も同時に混合できる観点から、グルコン酸塩が好ましく、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム及びグルコン酸カルシウムから選択される1種又は2種以上がより好ましい。
【0014】
本発明の液状組成物中のミネラルの含有量は、その種類に応じて所望のpHになるように適宜決定することができるが、酸味抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、ミネラルの塩味やエグ味を抑えた良好な風味が得られる観点から、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
液状組成物中のミネラルの含有量は、好ましくは0.05~6質量%、より好ましくは0.1~4質量%、更に好ましくは0.5~3質量%、更に好ましくは0.5~2質量%である。
【0015】
本発明において、ミネラルの含有量は、次のICP発光分析法(塩酸抽出)により求めることができる。
具体的な手法としては、液状組成物を1g採取し500℃で10時間加熱し灰化させる。次に20%塩酸を加え蒸発乾固させる。次に、改めて20%塩酸を加えて加温抽出したものをろ過してろ液を回収する。ろ紙上の残さは、500℃1時間で灰化させ、20%塩酸を加えて蒸発乾固させたものに改めて20%塩酸を加えて加温抽出したものをろ過する。ろ紙上の残さがなくなるまで、この残さの塩酸抽出を繰り返し行う。得られた全てのろ液を1%塩酸で定容しICP発光分析を行う。
<ICP発光分析装置操作条件>
機種:ICPE-9820[株式会社島津製作所]
高周波出力:1100W
ガス流量:プラズマガス15L/min(アルゴン)
:補助ガス1.2L/min(アルゴン)
:キャリヤーガス0.80L/min(アルゴン)
ネブライザー:同軸型ネブライザー
プラズマ観測位:横方向
測定波長:カルシウム 317.933nm
ナトリウム 589.592nm
カリウム 766.491nm
【0016】
本発明の液状組成物において、グルコン酸類とミネラルとの質量比[ミネラル/グルコン酸類]は、酸味抑制の観点から、0.002以上が好ましく、0.003以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましく、また、ミネラルの塩味やエグ味を抑えた良好な風味が得られる観点から、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.08以下が更に好ましい。
液状組成物において、グルコン酸類とミネラルとの質量比[ミネラル/グルコン酸類]は、好ましくは0.002~0.2、より好ましくは0.003~0.1、更に好ましくは0.03~0.08である。
【0017】
本発明の液状組成物は、水分活性を低下させて酸味を抑える観点、風味の観点、粘度を調整する観点から、更に炭水化物を含有することが好ましい。炭水化物としては、糖質、食物繊維が挙げられるが、風味及び粘度調整の観点から糖質であることが好ましい。糖質としては、例えば、糖類(多糖類、二糖類、単糖類)、糖アルコールが挙げられる。
【0018】
単糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、キシロース、プシコース、アロース、ソルボース、タガトース、リボース、アラビノース、ラムノース、アミノ糖(グルコサミン、N-アセチルグルコサミンなど)等が挙げられる。二糖類としては、ショ糖、麦芽糖、ラクトース、トレハロース、パラチノース、セロビオース、ニゲロース、イソマルトース等が挙げられる。多糖類としては、でん粉、デキストリン、マルトデキストリン、水飴、オリゴ糖(ラクチュロース、ケストース、ラフィノース、シクロデキストリンなど)等が挙げられる。
【0019】
糖類の原料は、主に単糖類を含有するものとして、はちみつ、異性化糖(果糖ぶどう糖液糖など)、コーンシロップ等が挙げられ、主に二糖類を含有するものとして、メープルシュガー等が挙げられ、主に多糖類を含有するものとして、デキストリン、マルトデキストリン、水飴、糖蜜等が挙げられる。また、コーンスターチ、小麦でん粉、馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、タピオカでん粉、米等のでん粉を加水分解したでん粉加水分解物は、その加水分解の程度により単糖類、二糖類又は多糖類のいずれかが主体の原料とすることもできる。
【0020】
糖アルコールは、例えば、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等が挙げられる。糖アルコールの原料としては、還元麦芽糖水飴、還元水飴等が挙げられる。
【0021】
食物繊維は、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維が挙げられるが、風味及び粘度調整の観点、水分活性を低下させる観点から、水溶性食物繊維が好ましい。水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、グルカン、グアーガム、フェヌグリークガム、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム、グルコマンナン、サイリウム、アルギン酸、ペクチン、寒天、カラギナン、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、アラビアガム、プルラン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)等が挙げられる。不溶性食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン等が挙げられる。なお、本発明において水溶性食物繊維とは、食品の栄養表示基準制度 第3版(平成13年1月、編集 財団法人日本健康・栄養食品協会、46頁~51頁)に記載のプロスキー法(酵素-重量法)、及び、高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)による測定値で50質量%の食物繊維を含有し、かつ20℃の水100gに20g以上、好ましくは30g以上、より好ましくは40g以上溶解するものをいう。また、本発明において不溶性食物繊維とは、前記水溶性食物繊維以外の食物繊維をいう。
【0022】
炭水化物は、各々単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、液状組成物のテクスチャー及び風味の観点から、糖質が好ましく、糖類がより好ましく、単糖類、二糖類、オリゴ糖が更に好ましく、ブドウ糖、果糖、ショ糖がより更に好ましい。これらの原料としては、はちみつ、果糖ぶどう糖液糖、オリゴ糖、水飴、及びコーンシロップから選択される1種以上がより好ましく、はちみつ、果糖ぶどう糖液糖が更に好ましい。また、保存安定性の観点からは、糖アルコールが好ましく、マルチトール、還元麦芽糖水飴、還元水飴、キシリトールがより好ましい。
【0023】
また、水分活性を低下させる観点から、炭水化物は水溶性であることが好ましいが、なかでも1分子あたりの水酸基の数が多いほど好ましい。より具体的には、水分活性を低下させて酸味を抑える観点から、分子量に対する1分子中の水酸基の数の比[1分子中の水酸基の数/分子量]が0.020以上のものが好ましく、0.022以上のものがより好ましく、0.025以上のものが更に好ましく、0.027以上のものがより更に好ましい。
【0024】
本発明の液状組成物中の炭水化物の含有量は、健康機能を発揮する量のグルコン酸類を効率的に摂取可能な組成物を得るための観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、また、水分活性を低減させて酸味を抑制する観点、液状組成物に適した風味やテクスチャーを得る観点から、30質量%以上が好ましく、32質量%以上がより好ましく、37質量%以上が更に好ましく、45質量%以上がより更に好ましい。
液状組成物中の炭水化物の含有量は、好ましくは30~80質量%、より好ましくは32~75質量%、更に好ましくは37~70質量%、より更に好ましくは45~70質量%である。
【0025】
本発明の液状組成物中の水の含有量は、水分活性を低下させる観点、酸味抑制の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下がより更に好ましく、また、流動性を保持する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
液状組成物中の水の含有量は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは15~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
【0026】
本発明の液状組成物中の炭水化物に対する水の質量比は、水分活性を低下させる観点、酸味抑制の観点から、1.0以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましく、また、流動性を保持する観点から、0.1以上が好ましく、0.13以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましい。
液状組成物中の炭水化物に対する水の質量比は、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.13~0.6、更に好ましくは0.15~0.5である。
【0027】
本発明の液状組成物中のグルコン酸類に対する水の質量比は、酸味抑制の観点から、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましく、1.5以下がより更に好ましく、また、流動性を保持する観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましい。
液状組成物中のグルコン酸類に対する水の質量比は、好ましくは0.3~5.0、より好ましくは0.5~3.0、更に好ましくは0.6~2.0、より更に好ましくは0.6~1.5である。
【0028】
本発明の液状組成物中のグルコン酸類に対する炭水化物の質量比は、健康機能を発揮する量のグルコン酸類を効率的に摂取可能な組成物を得るための観点から、8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましく、また、酸味抑制の観点から、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。
液状組成物中のグルコン酸類に対する炭水化物の質量比は、好ましくは0.5~8.0であり、より好ましくは1.0~6.0であり、更に好ましくは1.5~5.0である。
【0029】
本発明の液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に液状組成物に配合し得る他の原料成分を含有してもよい。当該原料成分としては、例えば、上記炭水化物以外の甘味料(例えば、非糖質天然甘味料、合成甘味料等)、グルコン酸以外の酸味料(例えば、アスコルビン酸等)、乳成分、安定剤、野菜汁・果汁、果肉、香料、着色料、酸化防止剤、保存料、消泡剤、油脂、ビタミン等の微量栄養素等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0030】
本発明の液状組成物は、酸味を抑える観点より、グルコン酸以外の有機酸等の酸味料の含有量は少ないことが好ましい。液状組成物中のグルコン酸以外の有機酸の含有量は、8質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%、すなわちグルコン酸以外の有機酸を含まないのがより更に好ましい。
【0031】
本発明の液状組成物は、水分活性が0.89以下である。液状組成物の水分活性は、酸味抑制の観点、防腐防黴性を得る観点から、0.82以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.70以下が更に好ましく、0.68以下が更に好ましく、0.62以下が更に好ましく、0.50以下が更に好ましく、また、脂質酸化を抑制して良好な風味を保つ観点、流動性を保持する観点から、0.20以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.30以上が更に好ましい。
液状組成物の水分活性は、0.89以下であって、好ましくは0.20~0.82、より好ましくは0.25~0.75、更に好ましくは0.30~0.70、更に好ましくは0.30~0.68、更に好ましくは0.30~0.62、更に好ましくは0.30~0.50である。
本発明において、水分活性は、後掲の実施例に記載のとおり、液状組成物を25℃に温度調整し、水分活性計により測定するものとする。
【0032】
本発明の液状組成物は、酸味抑制の観点、微生物制御に必要な低い水分活性を得る観点から、Brix値が、63.2%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。また、液状組成物に適した流動性を得る観点から、90%以下であることが好ましく、88%以下であることがより好ましく、85%以下であることがより更に好ましい。
液状組成物のBrix値は、好ましくは63.2~90%、より好ましくは70~88%、更に好ましくは75~85%である。本明細書において「Brix値」とは、糖用屈折計を利用して測定した値であり、20℃のショ糖水溶液の質量百分率に相当する値である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法に従って求めることができる。
【0033】
本発明の液状組成物のpHは、酸による歯のエナメル質溶解が抑えられる観点から、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.2以上であることが更に好ましく、2.4以上であることがより更に好ましい。また、微生物の増殖が抑えられる観点から、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。
液状組成物のpHは、好ましくは1.5~6、より好ましくは2.0~5、更に好ましくは2.2~4、より更に好ましくは2.4~4である。
本発明において、液状組成物のpHは、後掲の実施例に記載のとおり、10倍希釈液を25℃に温度調整し、pHメータにより測定するものとする。
【0034】
本発明の液状組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を取り得る。例えば、グルコン酸類、水及び必要に応じて他の成分を、水分活性が0.89以下となるように混合して製造することができる。グルコン酸類、水及び必要に応じて混合される他の成分の混合順序は特に限定されない。
また、グルコン酸類及び必要に応じて混合される他の成分を水に溶解して得られた水溶液を水分活性が0.89以下となるように濃縮して製造することもできる。濃縮は、加熱濃縮、減圧濃縮等の公知の手段により行うことができる。加熱濃縮する場合の水溶液の加熱温度は、品温として、焦げ付き防止の観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下、より更に好ましくは120℃以下であり、また、濃縮時間短縮の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは105℃以上である。
加熱濃縮する場合の水溶液の加熱温度は、品温として、好ましくは90~140℃、より好ましくは95~130℃、更に好ましくは100~125℃、より更に好ましくは105~120℃である。
また、減圧濃縮する場合は、更に加熱温度を低下できる。例えば、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、より更に好ましくは95℃以下とすることができる。また、減圧濃縮する場合の水溶液の加熱温度は、濃縮時間短縮の観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、75℃以上がより更に好ましい。
減圧濃縮する場合の水溶液の加熱温度は、品温として、好ましくは50~120℃、より好ましくは60~110℃、更に好ましくは70~100℃、より更に好ましくは75~95℃である。
濃縮時間は、処理スケールによって異なるが、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上が更に好ましく、また、60分以下が好ましく、50分以下がより好ましく、40分以下が更に好ましい。
濃縮時間は、好ましくは10~60分、より好ましくは15~50分、更に好ましくは20~40分である。
【0035】
本発明の液状組成物は、高濃度のグルコン酸類を含むことから、ビフィドバクテリウム菌の増殖促進用、小腸の腸内環境改善用又は紫外線抵抗性向上用の液状組成物等として有用であり、グルコン酸類の高い機能発現が期待できる。
【0036】
本発明の液状組成物は、食用に適した酸味に抑えられていること、グルコン酸類を高含有することから、また、液状組成物の風味及びテクスチャーの観点から、5.5質量%以上のグルコン酸類を含有し、0.89以下の水分活性であり、63.2%以上のBrix値である、液状組成物であることが好ましい。
【0037】
本発明の液状組成物は、食用に適した酸味に抑えられていること、グルコン酸類を高含有することから、また、液状組成物の風味及びテクスチャーの観点から、5.5質量%以上のグルコン酸類を含有し、0.89以下の水分活性であり、63.2%以上のBrix値であり、液状組成物を水で10倍希釈した水溶液のpHが1.5~6である、液状組成物であることが好ましい。
【0038】
本発明の液状組成物は、食用に適した酸味に抑えられていること、グルコン酸類を高含有することから、また、液状組成物の風味及びテクスチャーの観点から、また、多量摂取時の安全性が高いことから、5.5質量%以上のグルコン酸類と、0.05~6質量%のミネラルを含有し、0.89以下の水分活性であり、63.2%以上のBrix値であり、液状組成物を水で10倍希釈した水溶液のpHが1.5~6である、液状組成物であることが好ましい。
【0039】
本発明の液状組成物は、食用に適した酸味に抑えられていること、グルコン酸類を高含有することから、また、液状組成物の風味及びテクスチャーの観点から、また、多量摂取時の安全性が高いことから、10質量%以上のグルコン酸類と、0.05~6質量%のミネラルを含有し、0.89以下の水分活性であり、70%以上のBrix値であり、液状組成物を水で10倍希釈した水溶液のpHが1.5~6であり、前記ミネラルがナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種又は2種以上である、液状組成物であることが好ましい。
【0040】
本発明の液状組成物は、食用に適した酸味に抑えられていること、グルコン酸類を高含有することから、また、液状組成物の風味及びテクスチャーの観点から、また、多量摂取時の安全性が高いことから、10質量%以上のグルコン酸類と、0.05~6質量%のミネラルと、炭水化物を30質量%以上含有し、0.89以下の水分活性と、70%以上のBrix値と、液状組成物を水で10倍希釈した水溶液のpHが1.5~6であり、前記ミネラルがナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種又は2種以上である、液状組成物であることが好ましい。
【0041】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液状組成物を開示する。
【0042】
<1>グルコン酸類を7~40質量%含有し、水分活性が0.20~0.75である液状組成物。
<2>グルコン酸類を5.5質量%以上含有し、Brix値が63.2~90%であり、水分活性が0.20~0.75である液状組成物。
<3>グルコン酸類を7~40質量%含有し、Brix値が63.2%以上であり、水分活性が0.20~0.75である液状組成物。
<4>グルコン酸類を7~40質量%含有し、Brix値が63.2~90%であり、水分活性が0.89以下である液状組成物。
<5>グルコン酸類を5.5質量%以上、炭水化物を30~80質量%含有し、水分活性が0.20~0.75である液状組成物。
<6>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30質量%以上含有し、水分活性が0.20~0.75である液状組成物。
<7>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30~80質量%含有し、水分活性が0.89以下である液状組成物。
【0043】
<8>グルコン酸類を5.5質量%以上、炭水化物を30~80質量%含有し、水分活性が0.20~0.75であり、Brix値が63.2~90%である液状組成物。
<9>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30質量%以上含有し、水分活性が0.20~0.75であり、Brix値が63.2~90%である液状組成物。
<10>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30~80質量%含有し、水分活性が0.89以下であり、Brix値が63.2~90%である液状組成物。
<11>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30~80質量%含有し、水分活性が0.20~0.75であり、Brix値が63.2%以上である液状組成物。
<12>グルコン酸類を7~40質量%、炭水化物を30~80質量%、ミネラルを0.05~6質量%含有し、水分活性が0.20~0.75であり、Brix値が63.2~90%である液状組成物。
【実施例0044】
[pHの測定]
液状組成物を1g採取し水9gを加えた。次に、よく振り交ぜることを液状組成物が均一に溶解又は分散するまで繰り返して10倍希釈液を得た。25℃の恒温槽で12時間以上放置して平衡状態が安定した後、pH電極計で求めた。
【0045】
[Brix値の測定]
デジタル屈折計:RX-5000i(株式会社アタゴ)にて液状組成物のBrix値(%)を測定した。
なお、具材入りの液状組成物の採取は具材を避けて液状部より行う。
【0046】
[水分活性の測定]
水分活性計 LabMaster-aw(ノバシーナ社製)にて液状組成物の水分活性を測定した。予め25℃にて保持した液状組成物6gを測定用容器に入れ、密封した後、25℃環境下にて定常状態にある分析サンプルの水分活性値をセンサーにて測定した。
なお、具材入りの液状組成物の採取は具材を避けて液状部より行う。
【0047】
[原料]
グルコン酸液(50%):グルコン酸液(50質量%)(扶桑化学工業株式会社)
グルコン酸ナトリウム:ヘルシャスA(扶桑化学工業株式会社)
グルコン酸カリウム:ヘルシャスK(扶桑化学工業株式会社)
グルコン酸カルシウム・1水和物:グルコン酸カルシウム(扶桑化学工業株式会社)
クエン酸(無水):精製クエン酸(無水)(扶桑化学工業株式会社)
はちみつ:サクラ印純粋はちみつ(株式会社加藤美蜂園本舗)
果糖ぶどう糖液糖:フジフラクトH-100(日本食品化工株式会社)
還元麦芽糖水飴:アマルティシロップ(三菱商事ライフサイエンス株式会社)
還元水飴:スイートNT(物産フードサイエンス株式会社)
難消化性デキストリン:ファイバーソル2(松谷化学工業株式会社)
【0048】
[液状組成物の調製]
実施例1
表1の配合表に従い、グルコン酸液(50%)20質量部、はちみつ100質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0049】
実施例2
グルコン酸液(50%)20質量部、はちみつ75質量部、水5質量部を加えてかき混ぜ液状組成物を得た。
【0050】
実施例3~14
表1の配合表に従い、実施例1と同様にして、グルコン酸液(50%)とはちみつを加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0051】
実施例15
表1の配合表に従い、グルコン酸液(50%)40質量部、果糖ぶどう糖液糖80質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0052】
実施例16
表1の配合表に従い、グルコン酸液(50%)40質量部、還元麦芽糖水アメ80質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0053】
実施例17
グルコン酸液(50%)40質量部、難消化性デキストリン60質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、100質量部になるまで蒸発した水を添加して液状組成物を得た。
【0054】
実施例18
グルコン酸液(50%)40質量部、還元水飴85.7質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0055】
実施例19
グルコン酸液(50%)40質量部、還元水飴92.9質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0056】
実施例20
グルコン酸液(50%)30質量部、グルコン酸ナトリウム5.6質量部、はちみつ74.3質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、更に加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0057】
実施例21
グルコン酸液(50%)30質量部、グルコン酸カリウム6質量部、はちみつ73.7質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、更に加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0058】
実施例22~24
表1の配合表に従い、実施例21と同様にして、グルコン酸液(50%)、グルコン酸カリウム、はちみつを加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、更に加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0059】
実施例25
グルコン酸液(50%)39質量部、グルコン酸カルシウム0.6質量部、はちみつ74.9質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、更に加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0060】
比較例1
表2の配合表に従い、グルコン酸液(50%)40質量部を100質量部になるまで水で希釈して液状組成物を得た。
【0061】
比較例2
グルコン酸液(50%)100質量部を液状組成物とした。
【0062】
比較例3
グルコン酸液(50%)40質量部、はちみつ31.3質量部、水28.7質量部を加えてかき混ぜ液状組成物を得た。
【0063】
比較例4
クエン酸(無水)5.5質量部、水94.5質量部を加えてかき混ぜ液状組成物を得た。
【0064】
比較例5
クエン酸(無水)5.5質量部、はちみつ105.6質量部を加えてかき混ぜた後、加熱して溶解し、更に加熱して100質量部になるまで煮詰めて液状組成物を得た。
【0065】
[液状組成物の評価]
(1)酸味の評価
酒石酸(L-酒石酸、扶桑化学工業株式会社)の添加濃度を0.3質量%、1.0質量%、3.0質量%に調整することで、異なる酸味強度を有する3種類の標準水溶液を作製した。標準水溶液、評価した発明品及び比較品は、12時間以上25℃保存したものを用いた。
専門パネル4名で、下記評価基準に従って発明品及び比較品の酸味の評価を行った。4名の協議をもって評点とした。
(評価基準)
7:酒石酸3.0%水溶液よりも強い酸味が感じられる
6:酒石酸3.0%水溶液とほぼ同じ酸味が感じられる
5:酒石酸1.0%水溶液と酒石酸3.0%水溶液の中間の酸味が感じられる
4:酒石酸1.0%水溶液とほぼ同じ酸味が感じられる
3:酒石酸1.0%水溶液と酒石酸0.3%水溶液の中間の酸味が感じられる
2:酒石酸0.3%水溶液とほぼ同じ酸味が感じられる
1:酒石酸0.3%水溶液よりも弱い酸味が感じられる
【0066】
表1及び表2に液状組成物の配合組成、分析値と評価結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1~表2より明らかなように、液状組成物において水分活性を一定以下とすれば、グルコン酸類を高配合しても、経口摂取に適した強度の酸味を有する液状組成物が得られることが確認された。
クエン酸を配合した場合は、水分活性の変化による酸味の変化は見られなかった(比較例4、5)。