IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158976
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/893 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/893
A61K8/25
A61K8/37
A61K8/31
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074664
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 章子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB04
4C083BB25
4C083CC11
4C083CC12
4C083DD17
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、自然な仕上がりが得られる固形粉末化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルコキシシランで処理された板状粉体 20~95質量%、
(B)HLB8未満の非イオン性界面活性剤、
(C)HLB8以上の非イオン性界面活性剤、
(D)25℃で液状の油成分
を含有する固形粉末化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルコキシシランで処理された板状粉体 20~95質量%、
(B)HLB8未満の非イオン性界面活性剤、
(C)HLB8以上の非イオン性界面活性剤、
(D)25℃で液状の油成分
を含有する固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(B)の含有量が0.01~5質量%、成分(C)の含有量が0.1~5質量%、成分(D)の含有量が4~25質量%である請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(B)及び(C)の合計含有量に対する成分(A)の質量割合(A)/〔(B)+(C)〕が、25以上である請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
さらに、(E)アルコキシシランで処理された着色顔料を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
水を含ませた塗布具で使用する請求項1~4のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用時の清涼感と化粧持続性に優れた固形粉末化粧料として、水を含ませたスポンジで使用する固形粉末化粧料が知られている。
例えば、特許文献1には、非シリコーン系アニオン性界面活性剤、非シリコーン系ノニオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、粉体を含有する水使用専用固形粉末化粧料が、水と粉体との混和性が良好で、清涼感が高く、肌上での伸び広がりが良く、しかも、化粧持続性に優れることが記載されている。
特許文献2には、HLBが10~15である非イオン性界面活性剤、粒子径が1~100μmである無水ケイ酸及び/又は結晶セルロース、疎水化処理粉体、不揮発性油性成分を配合することを特徴とする水溶きアイメイクアップ化粧料が、水溶き性に優れ、発色が良く、滑らかで描きやすく、均一性のある仕上がりで、化粧持続性が良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-220319号公報
【特許文献2】特開2012-211102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水で使用する固形粉末化粧料は、塗布時にムラづきしやすく、仕上がりに課題があった。具体的には、塗布時に筋ムラになりやすかったり、乾燥後に塗布部位と無塗布部位の境目が目立ったり、粉っぽさや白さが目立つようになったりという現象がみられた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、アルコキシシランで処理された板状粉体と、特定HLBの2種の非イオン性界面活性剤、液状の油成分を組合わせた固形粉末化粧料が、水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、自然な仕上がりが得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルコキシシランで処理された板状粉体 20~95質量%、
(B)HLB8未満の非イオン性界面活性剤、
(C)HLB8以上の非イオン性界面活性剤、
(D)25℃で液状の油成分
を含有する固形粉末化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固形粉末化粧料は、水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、透明感のある自然な仕上がりが得られ、さらに、汗で崩れにくいものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)は、アルコキシシランで処理された板状粉体である。
板状粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、窒化ホウ素、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、セリサイト、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、合成金雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。また、これらの板状粉体を母体とする複合化顔料を用いることもできる。これらの板状粉体を母体とする複合化顔料としては、例えば、酸化チタン被覆セリサイト、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン・酸化鉄被覆雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン・硫酸バリウム被覆マイカ、酸化チタン・シリカ被覆マイカ、酸化亜鉛被覆タルク、酸化チタン・酸化スズ被覆マイカ、酸化亜鉛・酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン・アルミナ被覆マイカ、酸化チタン・酸化鉄・シリカ被覆マイカ、酸化チタン・シリカ・アルミナ被覆マイカ等が挙げられる。
これらのうち、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、透明感のある自然な仕上がりが得られ、さらに、汗による崩れを抑制する観点から、セリサイト、タルク、マイカ、合成マイカ、窒化ホウ素から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、タルク、合成マイカから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、少なくともタルクを含むのがさらに好ましい。
【0009】
成分(A)において、板状粉体を処理するアルコキシシランとしては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、カプリリルトリメトキシシラン、カプリリルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられ、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、透明感のある自然な仕上がりが得られ、さらに、汗による崩れを抑制する観点から、カプリリルシランが好ましく、カプリリルトリエトキシシランがより好ましい。
【0010】
板状粉体をアルコキシシランで表面処理するには、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
【0011】
成分(A)の板状粉体は、透明感のある自然な仕上がりが得られる観点から、平均粒子径が1~20μmであるのが好ましく、5~15μmがより好ましく、7~12μmがさらに好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定器(堀場製作所製、LA-920)により測定される。本発明において、体積平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
【0012】
また、成分(A)の板状粉体は、滑り性に優れ、透明感のある自然な仕上がりが得られる観点から、見かけ比重が0.1~0.4g/cmであるのが好ましく、0.18~0.37g/cmがより好ましく、0.25~0.34g/cmがさらに好ましい。
ここで、見かけ比重は、粉体を自然落下することで定められた容量のカップへ試料を充填し、秤量することで導き出される測定値であって、粉体を自然落下させた状態の充填密度を示すものである。これらの見掛け比重は、JIS K-5101の規格に従って測定することができる。
【0013】
成分(A)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布時にムラになりにくく、透明感のある自然な仕上がりが得られ、さらに、汗による崩れを抑制する観点から、全組成中に20~95質量%であり、40~92質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。
【0014】
成分(B)は、HLB8未満の非イオン性界面活性剤であり、HLB2~7.5であるのが好ましく、HLB3~7がより好ましい。
【0015】
本発明において、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lipophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、非イオン性界面活性剤については、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
【0016】
成分(B)の非イオン界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・フルオロアルキル共変性シリコーン等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、水で使用した際、塗布時にムラになりにくく、汗による崩れを抑制する観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーンを含むのが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルを含むのがより好ましい。
【0018】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、水で使用した際、塗布時にムラになりにくく、汗による崩れを抑制する観点から、全組成中に0.01~5質量%であるのが好ましく、0.2~4質量%がより好ましく、0.4~1.5質量%がさらに好ましい。
【0019】
成分(C)は、前記非イオン性界面活性剤と同様であって、HLB8以上の非イオン性界面活性剤であり、HLB9~16であるのが好ましく、HLB9.5~15.5がより好ましい。
【0020】
成分(C)の非イオン性界面活性剤としては、前記非イオン性界面活性剤と同様のもので、HLB8以上のものが挙げられ、水で使用した際の取れに優れる観点から、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むのがより好ましい。
【0021】
成分(C)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、水で使用した際の取れに優れる観点から、全組成中に0.1~5質量%であるのが好ましく、0.2~4質量%がより好ましく、0.4~2質量%がさらに好ましい。
【0022】
本発明において、成分(B)及び(C)の合計含有量(B)+(C)は、水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、さらに、汗による崩れを抑制する観点から、全組成中に0.11~10質量%であるのが好ましく、0.4~8質量%がより好ましく、0.8~3.5質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明において、成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、さらに、汗による崩れを抑制する観点から、1.8以下であるのが好ましく、1.5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、成分(B)及び(C)の合計含有量に対する成分(A)の質量割合(A)/〔(B)+(C)〕は、水を使用した際の取れに優れ、塗布時にムラになりにくく、均一で、粉っぽさのない、透明感のある自然な仕上がりが得られ、さらに、汗による崩れを抑制され、石鹸等での洗浄性にも優れる観点から、25以上であるのが好ましく、25~300がより好ましく、35~200がさらに好ましく、40~100がよりさらに好ましい。
【0025】
成分(D)は、25℃で液状の油成分である。液状とは、流動性があることをいい、ペースト状も含まれる。
成分(D)の油成分としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、炭化水素油、エステル油、エーテル油、シリコーン油、高級アルコール等が挙げられる。
【0026】
より具体的には、炭化水素油としては、例えば、スクワラン、植物性スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、ワセリン等の直鎖又は分岐鎖の炭化水素油が挙げられる。
【0027】
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油及びテトラエステル油が挙げられる。
モノエステル油としては、炭素数2~24の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸のモノエステルが挙げられ、具体例としては、2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-ヘキシルデシルステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソデシルベンゾエート、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、安息香酸アルキル(C12~C15)、12-ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0028】
ジエステル油としては、炭素数3~18のジカルボン酸のジエステル、多価アルコールのジ脂肪酸エステル等が挙げられ、具体例としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0029】
トリエステル油としては、3価以上の多価アルコールのトリ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、オリーブ油、ホホバ油等が挙げられる。
【0030】
テトラエステル油としては、4価以上の多価アルコールのテトラ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットが挙げられる。
【0031】
エーテル油としては、ジアルキルエーテルが挙げられ、具体的には、ジヘキシルエーテル、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル等が挙げられる。
【0032】
シリコーン油としては、架橋型メチルポリシロキサン、網状型メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシクロポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のメチルフェニルポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
揮発性シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(1cs)、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0033】
高級アルコールとしては、炭素数10~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を有するものが挙げられ、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0034】
成分(D)としては、保形性に優れ、良好な使用感、仕上がりが得られる観点から、炭化水素油、エステル油が好ましく、炭化水素油、モノエステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
【0035】
成分(D)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、保形性に優れ、良好な使用感、仕上がりが得られる観点から、全組成中に4~25質量%であるのが好ましく、6~20質量%がより好ましく、8~15質量%がさらに好ましい。
【0036】
本発明の固形粉末化粧料は、さらに、(E)アルコキシシランで処理された着色顔料を含有することができる。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料、有機色素及びそのレーキ顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられる。
着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0037】
成分(E)において、着色顔料を処理するアルコキシシランとしては、成分(A)と同様であり、カプリリルシランが好ましく、カプリリルトリエトキシシランがより好ましい。
【0038】
成分(E)の着色顔料は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、メイキャップ効果を維持しつつ、塗布時にムラになりにくく、汗による崩れを抑制する観点から、全組成中に0.01~30質量%であるのが好ましく、0.1~25質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましい。
【0039】
本発明の固形粉末化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、成分(A)及び(E)以外の粉体、成分(D)以外の油成分、成分(B)及び(C)以外の界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤などを含有することができる。
【0040】
本発明の固形粉末化粧料は、環境に配慮し、使用感に優れる観点から、マイクロプラスチックなどの有機樹脂粉体の含有量が、全組成中に1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、実質的に含まないのがさらに好ましい。
具体的には、生分解性に優れるセルロース末以外の有機樹脂粉体のことである。
有機樹脂粉体として、例えば、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂;アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、シリコーン樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体から選ばれる1種又は2種以上の重合体又は共重合体のパウダー等の架橋型あるいは非架橋型の有機樹脂粉体などが挙げられる。
【0041】
本発明の固形粉末化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、成分(A)を含むすべての粉体成分を混合・粉砕した後、成分(B)、(C)及び(D)を含む油相成分を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕し、粉砕物を、容器に充填して、成型圧1000~2500kgfで成型することにより、固形粉末化粧料を得ることができる。
【0042】
本発明の固形粉末化粧料は、例えば、ファンデーション、ほほ紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料などとして好適である。
本発明の固形粉末化粧料は、水を含ませた塗布具(スポンジ等)で使用することができ、例えば、水を含ませたスポンジでこすりとって、使用することができる。
【実施例0043】
実施例1-6、比較例1-6
表1に示す組成の固形粉末化粧料(ファンデーション)を製造し、水使用時の取れ、塗布時のムラになりにくさ、仕上がりの均一さ、仕上がりの粉っぽさのなさ、仕上がりの透明感、耐水性、石鹸での落としやすさを評価した。結果を表1に併せて示す。
なお、比較例1の固形粉末化粧料は、水を含ませたスポンジで取ることができなかったため、その他の評価はできなかった。
【0044】
(製造方法)
成分(A)を含む粉体成分を、ヘンシェルミキサーを用いて均一混合し、これに成分(B)、(C)、(D)を含む油性成分を加えてさらに混合した後、アトマイザーを用いて粉砕し、ふるいを通した。これを金皿に充填し圧縮成型して、固形粉末化粧料を得た。
【0045】
(評価方法)
(1)水使用時の取れ:
5名の専門パネラーが、各固形粉末化粧料の表面を、水を含ませたスポンジでこすりとった時の取れやすさを、以下の基準で評価した。結果を5名の平均点で示した。
5;とても取れがよい。
4;取れが良い。
3:普通の力で取ることができる。
2:やや取れにくい、力を入れても取れる量が少ない。
1;取ることができない。
【0046】
(2)塗布時のムラになりにくさ、仕上がりの均一さ、仕上がりの粉っぽさのなさ、仕上がりの透明感:
5名の専門パネラーが、各固形粉末化粧を、水を含ませたスポンジで腕に塗布したときの、塗布時のムラになりにくさ、乾燥後の仕上がりの均一さ、仕上がりの粉っぽさのなさ、仕上がりの透明感を以下の基準で評価した。結果を5名の平均点で示した。
(2-1)塗布時のムラになりにくさ:
5;とてもムラになりにくい。
4;ムラになりにくい。
3:ややムラになりにくい。
2:ややムラになりやすい。
1;ムラになりやすい。
【0047】
(2-2)乾燥後の仕上がりの均一感:
5;とても均一である。
4;均一である。
3:やや均一である。
2:あまり均一ではない。
1;均一ではない。
【0048】
(2-3)仕上がりの粉っぽさのなさ:
5;とても粉っぽくない。
4;粉っぽくない。
3;やや粉っぽくない。
2;やや粉っぽい。
1;粉っぽい。
【0049】
(2-4)仕上がりの透明感:
5;透明感がとてもある。
4;透明感がある。
3:透明感がややある。
2:透明感がややない。
1;透明感がない。
【0050】
(3)耐水性:
5名の専門パネラーが、各固形粉末化粧を、水を含ませたスポンジで腕に塗布し、乾燥した数時間後に、水道水で手を洗ったときの耐水性を、以下の基準で評価した。結果を5名の平均点で示した。
5;とても落ちにくい。
4;落ちにくい。
3:やや落ちにくい。
2:やや落ちる。
1;落ちる、流れる。
【0051】
(4)石けんでの落としやすさ:
5名の専門パネラーが、各固形粉末化粧を、水を含ませたスポンジで腕に塗布し、乾燥した数時間後に、石鹸を用いて洗浄したときの落としやすさを、以下の基準で評価した。結果を5名の平均点で示した。
5;とても落としやすい。
4;落としやすい。
3:やや落としやすい。
2:やや落としにくい。
1;落としにくく、残る場合がある。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例7~10
表2に示す組成の固形粉末化粧料は、実施例1~6と同様にして製造され、いずれも、水使用時の取れが良く、塗布時にムラになりにくく、仕上がりが均一で、粉っぽさがなく、透明感のある仕上がりで、耐水性に優れ、石鹸等での洗浄性にも優れるものである。
【0054】
【表2】