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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158981
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】角度検出装置およびポジショナ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20241031BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01D5/16 V
G01B7/00 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074672
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上野山 寛人
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA06
2F063DA01
2F063DA05
2F063DA21
2F063GA52
2F077AA16
2F077CC02
2F077JJ03
2F077JJ09
2F077JJ23
2F077UU20
(57)【要約】
【課題】MRセンサの出力のオフセットを補正することなく磁界の角度を検出する。
【解決手段】角度検出装置1は、MRセンサ10と、MRセンサ10の出力電圧を測定するセンサ出力測定部111,112と、磁界発生部からMRセンサ10に磁界が印加されるときの出力電圧と磁界の角度とを、磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について記憶する記憶部113と、測定された出力電圧と記憶部113に記憶されている情報とに基づいて、磁界の角度を算出する角度算出部118と、角度検出時に測定された出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定して、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する判定部116とを備える。角度算出部118は、算出した値を正確な値として採用するかどうかを、判定部116から得られた結果に基づいて判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第4の磁気抵抗効果素子からなる第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と出力電圧の位相が異なるように配置された第5乃至第8の磁気抵抗効果素子からなる第2のブリッジ回路とから構成されたMRセンサと、
前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧をそれぞれ測定するように構成されたセンサ出力測定部と、
外部の磁界発生部から前記MRセンサに磁界が印加されるときの前記出力電圧と前記磁界の角度とを、前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について予め記憶するように構成された記憶部と、
角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧と前記記憶部に記憶されている情報とに基づいて、前記磁界の角度を算出するように構成された角度算出部と、
角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第1の判定部とを備え、
前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の角度検出装置において、
前記角度算出部は、角度検出時に、前記記憶部に記憶されている情報のうち、前記磁界発生部の軌道上の1点を選択し、前記選択した1点における前記出力電圧と前記角度検出時に測定された前記出力電圧とに基づいて、前記角度検出時の前記磁界発生部の位置と前記選択した1点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度を算出し、この算出した角度と前記選択した1点における前記磁界の角度とに基づいて、前記角度検出時に前記磁界発生部から前記MRセンサに印加される磁界の角度を算出することを特徴とする角度検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の角度検出装置において、
角度検出時に前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第2の判定部をさらに備え、
前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に加えて、前記第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の角度検出装置において、
初期設定時に前記記憶部に記憶する情報を設定するように構成された初期設定部をさらに備え、
前記角度算出部は、初期設定時に、前記磁界発生部の軌道上の隣接する2点においてそれぞれ測定された前記出力電圧に基づいて、前記隣接する2点の中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度を算出し、
前記第2の判定部は、初期設定時に、前記磁界発生部が前記軌道上の連続する3点を移動したときに第1の点と第2の点との中間点における前記磁界の角度の値と、前記第2の点と第3の点との中間点における前記磁界の角度の値とを前記角度算出部から取得し、前記第1、第2の点においてそれぞれ測定された前記出力電圧の平均電圧を前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧として算出する共に、前記第2、第3の点においてそれぞれ測定された前記出力電圧の平均電圧を前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧として算出し、算出した出力電圧と前記角度算出部から取得した前記磁界の角度とに基づいて、前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定し、
前記初期設定部は、前記第2の判定部から前記MRセンサによって正確な角度算出が可能という判定結果が得られたときに、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧と、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度とを、前記第1の点と前記第2の点との中間点についての情報として前記記憶部に格納することを特徴とする角度検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の角度検出装置において、
前記MRセンサを複数備え、
前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、
前記記憶部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記出力電圧と前記磁界の角度の情報を前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について記憶し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、
前記第1の判定部は、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記角度算出部は、角度検出時に前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項6】
請求項3記載の角度検出装置において、
前記MRセンサを複数備え、
前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、
前記記憶部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記出力電圧と前記磁界の角度の情報を前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について記憶し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、
前記第1の判定部は、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記第2の判定部は、角度検出時に前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記角度算出部は、角度検出時に前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1、第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項7】
請求項1記載の角度検出装置において、
前記第1の判定部は、前記記憶部に記憶されている情報のうち3組の情報を選択し、選択した第1の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1A、前記第1の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2A、選択した第2の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1B、前記第2の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2B、選択した第3の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1D、前記第3の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2D、角度検出時に測定された前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1E、角度検出時に測定された前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2Eとし、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2とし、点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)と点(V1B/Vm1,V2B/Vm2)を結ぶ辺の長さをAB、点(V1B/Vm1,V2B/Vm2)と点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)を結ぶ辺の長さをBD、点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)と点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)を結ぶ辺の長さをDA、点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)と点(V1E/Vm1,V2E/Vm2)を結ぶ辺の長さをAE、点(V1E/Vm1,V2E/Vm2)と点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)を結ぶ辺の長さをEDとしたとき、|(AB+BD-DA)/(2AB×BD)|≒|(AE+ED-DA)/(2AE×ED)|が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項8】
請求項4記載の角度検出装置において、
前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、AMR素子であり、
前記第2の判定部は、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α1α2、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α1α2、前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α2α3、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第2のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α2α3とし、前記第1の点と前記第2の点との中間点における前記磁界の角度を(α2+α1)/2、前記第2の点と前記第3の点との中間点における前記磁界の角度を(α3+α2)/2、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2としたとき、磁界の角度変化における前記第1のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)を(aveV1α2α3-aveV1α1α2)/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1=(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)により算出し、磁界の角度変化における前記第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)を(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2=(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)により算出し、(1/4)×{(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)}+{(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)}≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項9】
請求項4記載の角度検出装置において、
前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、GMR素子またはTMR素子であり、
前記第2の判定部は、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α1α2、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α1α2、前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α2α3、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第2のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α2α3とし、前記第1の点と前記第2の点との中間点における前記磁界の角度を(α2+α1)/2、前記第2の点と前記第3の点との中間点における前記磁界の角度を(α3+α2)/2、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2としたとき、磁界の角度変化における前記第1のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(cosα3-cosα1)/(α3-α1)を(aveV1α2α3-aveV1α1α2)/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1=(cosα3-cosα1)/(α3-α1)により算出し、磁界の角度変化における前記第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(sinα3-sinα1)/(α3-α1)を(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2=(sinα3-sinα1)/(α3-α1)により算出し、{(cosα3-cosα1)/(α3-α1)}+{(sinα3-sinα1)/(α3-α1)}≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項10】
請求項1または3記載の角度検出装置と、
バルブ制御運転時に、前記角度算出部によって正確な値として採用された磁界の角度に基づいてバルブの開度実測値を求めるように構成された開度実測値生成部と、
前記バルブ制御運転時に、前記バルブの開度設定値と前記開度実測値とに基づいて前記バルブの開度を制御するための制御信号を生成するように構成された制御信号生成部とを備え、
前記MRセンサは、前記バルブの開閉によって移動する前記磁界発生部から印加される磁界の角度を検出するように配置されることを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた角度検出装置と、角度検出装置を用いたポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、角度センサとして、回転体に取り付けられた磁石による磁界の回転角度を測定するセンサが知られている。角度測定には、磁気抵抗効果(MR:Magneto Resistance effect)素子などを用いたセンサ回路が使用される(特許文献1~4参照)。
【0003】
図35は従来のMRセンサの構成を示すブロック図である。MRセンサ10は、磁場のベクトル変化によって電気抵抗が変化するMR素子で構成された2つのブリッジ回路100,101から構成される。ブリッジ回路100は、MR素子R1とMR素子R2とを直列に接続した直列回路103と、MR素子R3とMR素子R4とを直列に接続した直列回路104とを並列に接続したものである。同様に、ブリッジ回路101は、MR素子R5とMR素子R6とを直列に接続した直列回路105と、MR素子R7とMR素子R8とを直列に接続した直列回路106とを並列に接続したものである。
【0004】
図示しない回転体と共に磁石がブリッジ回路100,101の周囲を回転すると、ブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向が変化してブリッジ回路100,101のMR素子R1~R8の抵抗値が変化する。図36に示すようにMRセンサ10のブリッジ回路100,101に対して磁界を角度α=0°~360°の向きで印加した場合、ブリッジ回路100の出力電圧Vを余弦(cos)波で表せるとすると、ブリッジ回路101の出力電圧Vを正弦(sin)波で表すことができる。
【0005】
MR素子R1~R8として異方性磁気抵抗効果(AMR:AnisotropicMagneto Resistance effect)素子を用いる場合、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの周期が180°であるため、以下の式が得られる。
=Vm1cos2α+Voff ・・・(1)
=Vm2sin2α+Voff ・・・(2)
【0006】
m1は出力電圧Vの最大振幅、Vm2は出力電圧Vの最大振幅、Voffは出力電圧Vのオフセット、Voffは出力電圧Vのオフセットである。オフセットVoff,Voffと振幅Vm1,Vm2とを事前に求めておけば、出力電圧V,Vを測定することにより、磁界の角度αを算出することができる。また、MR素子R1~R8として巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistance effect)素子またはトンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magneto resistance effect)素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期が360°であるため、式(1)、式(2)の2αがαとなる。
【0007】
ただし、式(1)、式(2)は正確な角度検出をするうえで十分な磁界がかけられている状態の場合で、十分な磁界がかけられていない場合には、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの関係性が不明瞭となる(必ずしも正弦波,余弦波の関係とはならない)。例えばMRセンサ10と磁石130とが図37のような位置関係にある場合、MRセンサ10が十分な磁界がかけられている状態となり、磁界の角度αを検出することが可能である。一方、MRセンサ10と磁石130とが図38のような位置関係にある場合、MRセンサ10に印加される磁界の強度が不十分となり、角度αを検出することが不可能となる。図37図38では、実線131の内側がMRセンサ10の角度検出可能範囲を示している。
【0008】
図39は、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いた場合の磁界の角度αとブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vとの関係を示す図である。図39の500は角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサに印加されている範囲を示し、501は磁界の強度が不十分な範囲を示している。
【0009】
以上のように、従来の技術では、MRセンサの検知範囲を超えるような磁石の動きを検知する際、検知範囲外のときは出力電圧V,Vの関係が不明瞭となるため、どのタイミングからセンシングすれば角度を正確に検知できるかタイミングが分からないという課題があった。また、MRセンサの出力には角度誤差要因となるオフセットがあるため、正確な角度を算出するためにはオフセットを補正する必要があるという課題があった。また、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に検知できるか分からないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第10571305号明細書
【特許文献2】欧州特許第2672285号明細書
【特許文献3】特開2021-148447号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0191546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定して磁界の角度を検出することができ、MRセンサの出力のオフセットを補正することなく磁界の角度を検出することができる角度検出装置およびポジショナを提供することを目的とする。
また、本発明は、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に算出可能かどうかを判定して磁界の角度を検出することができ、MRセンサの出力のオフセットを補正することなく磁界の角度を検出することができる角度検出装置およびポジショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の角度検出装置は、第1乃至第4の磁気抵抗効果素子からなる第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と出力電圧の位相が異なるように配置された第5乃至第8の磁気抵抗効果素子からなる第2のブリッジ回路とから構成されたMRセンサと、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧をそれぞれ測定するように構成されたセンサ出力測定部と、外部の磁界発生部から前記MRセンサに磁界が印加されるときの前記出力電圧と前記磁界の角度とを、前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について予め記憶するように構成された記憶部と、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧と前記記憶部に記憶されている情報とに基づいて、前記磁界の角度を算出するように構成された角度算出部と、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第1の判定部とを備え、前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記角度算出部は、角度検出時に、前記記憶部に記憶されている情報のうち、前記磁界発生部の軌道上の1点を選択し、前記選択した1点における前記出力電圧と前記角度検出時に測定された前記出力電圧とに基づいて、前記角度検出時の前記磁界発生部の位置と前記選択した1点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度を算出し、この算出した角度と前記選択した1点における前記磁界の角度とに基づいて、前記角度検出時に前記磁界発生部から前記MRセンサに印加される磁界の角度を算出することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、角度検出時に前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第2の判定部をさらに備え、前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に加えて、前記第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、初期設定時に前記記憶部に記憶する情報を設定するように構成された初期設定部をさらに備え、前記角度算出部は、初期設定時に、前記磁界発生部の軌道上の隣接する2点においてそれぞれ測定された前記出力電圧に基づいて、前記隣接する2点の中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度を算出し、前記第2の判定部は、初期設定時に、前記磁界発生部が前記軌道上の連続する3点を移動したときに第1の点と第2の点との中間点における前記磁界の角度の値と、前記第2の点と第3の点との中間点における前記磁界の角度の値とを前記角度算出部から取得し、前記第1、第2の点においてそれぞれ測定された前記出力電圧の平均電圧を前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧として算出する共に、前記第2、第3の点においてそれぞれ測定された前記出力電圧の平均電圧を前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧として算出し、算出した出力電圧と前記角度算出部から取得した前記磁界の角度とに基づいて、前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定し、前記初期設定部は、前記第2の判定部から前記MRセンサによって正確な角度算出が可能という判定結果が得られたときに、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の出力電圧と、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記磁界の角度とを、前記第1の点と前記第2の点との中間点についての情報として前記記憶部に格納することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、前記MRセンサを複数備え、前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、前記記憶部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記出力電圧と前記磁界の角度の情報を前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について記憶し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、前記第1の判定部は、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、前記角度算出部は、角度検出時に前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、前記MRセンサを複数備え、前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、前記記憶部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記出力電圧と前記磁界の角度の情報を前記磁界発生部の軌道上の少なくとも4点について記憶し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、前記第1の判定部は、角度検出時に前記センサ出力測定部によって測定された前記出力電圧を既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、前記第2の判定部は、角度検出時に前記磁界の角度変化における前記出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記角度算出部は、角度検出時に前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1、第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1の判定部は、前記記憶部に記憶されている情報のうち3組の情報を選択し、選択した第1の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1A、前記第1の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2A、選択した第2の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1B、前記第2の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2B、選択した第3の組における前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1D、前記第3の組における前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2D、角度検出時に測定された前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV1E、角度検出時に測定された前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV2Eとし、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2とし、点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)と点(V1B/Vm1,V2B/Vm2)を結ぶ辺の長さをAB、点(V1B/Vm1,V2B/Vm2)と点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)を結ぶ辺の長さをBD、点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)と点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)を結ぶ辺の長さをDA、点(V1A/Vm1,V2A/Vm2)と点(V1E/Vm1,V2E/Vm2)を結ぶ辺の長さをAE、点(V1E/Vm1,V2E/Vm2)と点(V1D/Vm1,V2D/Vm2)を結ぶ辺の長さをEDとしたとき、|(AB+BD-DA)/(2AB×BD)|≒|(AE+ED-DA)/(2AE×ED)|が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、AMR素子であり、前記第2の判定部は、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α1α2、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α1α2、前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α2α3、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第2のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α2α3とし、前記第1の点と前記第2の点との中間点における前記磁界の角度を(α2+α1)/2、前記第2の点と前記第3の点との中間点における前記磁界の角度を(α3+α2)/2、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2としたとき、磁界の角度変化における前記第1のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)を(aveV1α2α3-aveV1α1α2)/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1=(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)により算出し、磁界の角度変化における前記第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)を(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2=(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)により算出し、(1/4)×{(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)}+{(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)}≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、GMR素子またはTMR素子であり、前記第2の判定部は、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α1α2、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α1α2、前記第2の点と前記第3の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第1のブリッジ回路の出力電圧をaveV1α2α3、前記第1の点と前記第2の点との中間点に前記磁界発生部が位置する場合の前記第2のブリッジ回路の出力電圧をaveV2α2α3とし、前記第1の点と前記第2の点との中間点における前記磁界の角度を(α2+α1)/2、前記第2の点と前記第3の点との中間点における前記磁界の角度を(α3+α2)/2、前記第1のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm1、前記第2のブリッジ回路の出力電圧の既知の振幅をVm2としたとき、磁界の角度変化における前記第1のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(cosα3-cosα1)/(α3-α1)を(aveV1α2α3-aveV1α1α2)/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1=(cosα3-cosα1)/(α3-α1)により算出し、磁界の角度変化における前記第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率(sinα3-sinα1)/(α3-α1)を(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2=(sinα3-sinα1)/(α3-α1)により算出し、{(cosα3-cosα1)/(α3-α1)}+{(sinα3-sinα1)/(α3-α1)}≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のポジショナは、角度検出装置と、バルブ制御運転時に、前記角度算出部によって正確な値として採用された磁界の角度に基づいてバルブの開度実測値を求めるように構成された開度実測値生成部と、前記バルブ制御運転時に、前記バルブの開度設定値と前記開度実測値とに基づいて前記バルブの開度を制御するための制御信号を生成するように構成された制御信号生成部とを備え、前記MRセンサは、前記バルブの開閉によって移動する前記磁界発生部から印加される磁界の角度を検出するように配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1の判定部を設けることにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定して磁界の角度を検出することができる。また、本発明では、記憶部と角度算出部とを設けることにより、MRセンサの出力のオフセットを補正することなく磁界の角度を検出することができる。また、本発明では、第1の判定部を設けることにより、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に算出可能かどうかを判定して磁界の角度を検出することができる。
【0023】
また、本発明では、第2の判定部を設けることにより、磁界発生部がMRセンサの角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみ磁界の角度を検出したいといった状況に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の抵抗値が最小になる磁界の方向を説明する図である。
図4図4は、MR素子としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合のピン層の磁化方向を説明する図である。
図5図5は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係の1例を示す図である。
図6図6は、MR素子としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係の1例を示す図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の初期設定時の動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の初期設定部の動作を説明する図である。
図9図9は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の初期設定部の動作を説明する図である。
図10図10は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の角度検出時の動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、MRセンサのブリッジ回路の出力電圧の幾何学的関係を説明する図である。
図12図12は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の場合別の角度算出部の判定結果を示す図である。
図13図13は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の1例を示す図である。
図14図14は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図15図15は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図16図16は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図17図17は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図18図18は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図19図19は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図20図20は、本発明の第2の実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。
図21図21は、本発明の第2の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図22図22は、バルブの1例を示す図である。
図23図23は、本発明の第2の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図24図24は、本発明の第2の実施例に係るポジショナのバルブ制御時の動作を説明するフローチャートである。
図25図25は、本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。
図26図26は、本発明の第3の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図27図27は、本発明の第3の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図28図28は、本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の初期設定時の動作を説明するフローチャートである。
図29図29は、本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の角度検出時の動作を説明するフローチャートである。
図30図30は、本発明の第4の実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。
図31図31は、本発明の第4の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図32図32は、本発明の第4の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図33図33は、本発明の第4の実施例に係るポジショナのバルブ制御時の動作を説明するフローチャートである。
図34図34は、本発明の第1~第4の実施例に係る角度検出装置またはポジショナを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図35図35は、従来のMRセンサの構成を示すブロック図である。
図36図36は、MRセンサに印加される磁界の角度を説明する図である。
図37図37は、MRセンサが磁界の角度を検出可能な場合を示す図である。
図38図38は、MRセンサが磁界の角度を検出不可能な場合を示す図である。
図39図39は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。角度検出装置1は、角度センサであるMRセンサ10と、データ処理制御部11とを備えている。
【0026】
MRセンサ10は、印加される磁界の角度によって磁界発生部12の位置を検出する。データ処理制御部11は、MRセンサ10の出力信号に基づいて磁界の角度を算出する。
図2は本実施例のデータ処理制御部11の構成を示すブロック図である。データ処理制御部11は、電源110と、センサ出力測定部111,112と、記憶部113と、振幅算出部114と、初期設定部115と、判定部116,117と、角度算出部118と、制御信号生成部119とを備えている。
【0027】
MRセンサ10の構成は図35に示したとおりである。データ処理制御部11の電源110がONになると図35におけるブリッジ回路100のPとGNDの間、およびブリッジ回路101のQとGNDの間のそれぞれに、一定電圧Vがかかり電流Iが流れる。
ブリッジ回路100の中点電位差(直列回路103の中点と直列回路104の中点との電位差)Vをブリッジ回路100の出力電圧とし、ブリッジ回路101の中点電位差(直列回路105の中点と直列回路106の中点との電位差)Vをブリッジ回路101の出力電圧とする。
【0028】
MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、図3の矢印で示すように、ブリッジ回路100のMR素子R1とR4の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一であり、MR素子R2とR3の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一である。ブリッジ回路100の隣り合うMR素子の抵抗値が最小になる磁界の方向は直交している。同様に、ブリッジ回路101のMR素子R5とR8の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一であり、MR素子R6とR7の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一である。ブリッジ回路101の隣り合うMR素子の抵抗値が最小になる磁界の方向は直交している。そして、ブリッジ回路100とブリッジ回路101は、抵抗値が最小になる磁界の方向が45°ずれるように配置されている。
【0029】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、図4の矢印で示すように、ブリッジ回路100のMR素子R1とR4のピン層の磁化方向が同一であり、MR素子R2とR3のピン層の磁化方向が同一である。ブリッジ回路100の隣り合うMR素子のピン層の磁化方向は逆方向になっている。同様に、ブリッジ回路101のMR素子R5とR8のピン層の磁化方向が同一であり、MR素子R6とR7のピン層の磁化方向が同一である。ブリッジ回路101の隣り合うMR素子のピン層の磁化方向は逆方向になっている。そして、ブリッジ回路100とブリッジ回路101は、ピン層の磁化方向が直交するように配置されている。
【0030】
磁界発生部12(磁石)は、ブリッジ回路100,101に作用する磁界を発生させる。磁界発生部12は、MR素子R1~R8の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面(図3図4の紙面と平行な面)に対して垂直な平面上の軌道を移動する。
【0031】
図36に示したようにMRセンサ10のブリッジ回路100,101に対して磁界を角度α(ただし、0°≦α≦360°)の向きで印加した場合、ブリッジ回路100の出力電圧Vを余弦(cos)波で表せるとすると、ブリッジ回路101の出力電圧Vを正弦(sin)波で表すことができる。
【0032】
MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期は180°、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期は360°である。このため、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、磁界の角度αと出力電圧V,Vとの関係は図5のようになる。また、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、磁界の角度αと出力電圧V,Vとの関係は図6のようになる。ただし、図5図6は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加されている場合を示している。
【0033】
上記のとおりブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vはそれぞれcos波、sin波で表すことができるが、一般的にどちらにもオフセットが存在する。ブリッジ回路100の出力電圧VのオフセットをVoffとし、ブリッジ回路101の出力電圧VのオフセットをVoffとする。Vm1は出力電圧Vの最大振幅、Vm2は出力電圧Vの最大振幅である。角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加されている場合、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vは、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、式(1)、式(2)のように表すことができる。
【0034】
図7は本実施例の角度検出装置1の初期設定時の動作を説明するフローチャートである。角度検出装置1の工場出荷時に、振幅算出部114は、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を算出する(図7ステップS100)。
【0035】
具体的には例えば工場の作業者が磁界発生部12(磁石)を移動させることで、MRセンサ10のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加される範囲となることが必要である。
【0036】
データ処理制御部11のセンサ出力測定部111は、MRセンサ10のブリッジ回路100の出力電圧Vを測定し、センサ出力測定部112は、ブリッジ回路101の出力電圧Vを測定する。センサ出力測定部111,112によって測定された出力電圧V,Vの値は、記憶部113に格納される。
【0037】
データ処理制御部11の振幅算出部114は、例えば工場の作業者から算出処理の実行指示があったときに、ブリッジ回路100の出力電圧Vの最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm1として算出する。同様に、振幅算出部114は、ブリッジ回路101の出力電圧Vの最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm2として算出する。振幅算出部114によって算出された振幅Vm1,Vm2は、記憶部113に格納される。
【0038】
次に、振幅算出部114は、角度検出装置1が化学プラント等の現場に設置された後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図7ステップS101)。このステップS101の処理はステップS100と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS101の処理によって更新される。振幅Vm1,Vm2の値を再度算出する理由は、現場の温度によって振幅Vm1,Vm2が変化するためである。
【0039】
次に、初期設定部115は、磁界発生部12の軌道上の少なくとも4点についてブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vと磁界の角度αとを取得するために、図8に示すように磁界発生部12(磁石)を等速で直線的に移動させる(図7ステップS102)。このときサンプリング間隔をできるだけ短くすることが望ましい。磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に対して初期設定部115が制御信号を供給することによって磁界発生部12を移動させてもよいし、外部の入力装置から制御信号を供給してもよい。
【0040】
センサ出力測定部111は、MRセンサ10のブリッジ回路100の出力電圧Vを測定し、センサ出力測定部112は、ブリッジ回路101の出力電圧Vを測定する(図7ステップS103)。
【0041】
データ処理制御部11の判定部117は、ステップS103で測定された出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。
【0042】
上記のように、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vは、式(1)、式(2)のように表すことができる。時刻t=tα2のときの磁界の角度をα2とすると、このときの出力電圧V=V1α2,V=V2α2は、式(3)、式(4)のようになる。
1α2=Vm1cos2α2+Voff ・・・(3)
2α2=Vm2sin2α2+Voff ・・・(4)
【0043】
出力電圧V,Vの測定は定期的に行われる。時刻t=tα2よりも1回前の時刻t=tα1(tα1<tα2)のときの磁界の角度をα1とすると、このときの出力電圧V=V1α1,V=V2α1は、式(5)、式(6)のようになる。
1α1=Vm1cos2α1+Voff ・・・(5)
2α1=Vm2sin2α1+Voff ・・・(6)
【0044】
式(3)~式(6)より、式(7)、式(8)が得られる。
1α2-V1α1=Vm1(cos2α2-cos2α1) ・・・(7)
2α2-V2α1=Vm2(sin2α2-sin2α1) ・・・(8)
【0045】
式(7)の右辺のcos2α2-cos2α1は、式(9)のようになる。また、式(8)の右辺のsin2α2-sin2α1は、式(10)のようになる。
cos2α2-cos2α1=-2sin(α2+α1)sin(α2-α1)
・・・(9)
sin2α2-sin2α1=2sin(α2-α1)cos(α2+α1)
・・・(10)
【0046】
式(9)、式(10)より、式(11)が得られる。
|-2sin(α2+α1)sin(α2-α1)|
/|2sin(α2-α1)cos(α2+α1)|=|tan(α2+α1)| ・・・(11)
【0047】
式(7)、式(8)、式(11)より、式(12)が得られる。
|α2+α1|
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1α2-V1α1)/(V2α2-V2α1)}|
・・・(12)
【0048】
実際に角度算出部118が用いるのは、以下の式(13)である。
|α2+α1|/2
=(1/2)
×|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1α2-V1α1)/(V2α2-V2α1)}|
・・・(13)
【0049】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合には、式(1)~式(8)中の2αをαにすればよく、2α1をα1に、2α2をα2にすればよい。その結果、GMR素子またはTMR素子を用いる場合、式(9)、式(10)は、式(14)、式(15)のようになる。
cosα2-cosα1=-2sin{(α2+α1)/2}
×sin{(α2-α1))/2} ・・(14)
sin2α2-sin2α1=2sin{(α2-α1)/2}
×cos{(α2+α1)/2} ・・・(15)
【0050】
式(14)、式(15)より、式(16)が得られる。
|-2sin{(α2+α1)/2}×sin{(α2-α1)/2}|
/|2sin{(α2-α1)/2}×cos{(α2+α1)/2}|
=|tan(α2+α1)/2| ・・・(16)
【0051】
式(16)より、式(13)に相当する式(17)が得られる。
|α2+α1|/2
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1α2-V1α1)/(V2α2-V2α1)}|
・・・(17)
【0052】
角度算出部118は、前回の時刻t=tα1における出力電圧V=V1α1,V=V2α1と、最新の時刻t=tα2における出力電圧V=V1α2,V=V2α2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2とに基づいて、第2の点(磁界の角度がα2になるときの磁界発生部12の位置)と第1の点(磁界の角度がα1になるときの磁界発生部12の位置)との中間点に磁界発生部12が位置するときの磁界の角度|α2+α1|/2を算出する(図7ステップS104)。具体的には、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)により角度|α2+α1|/2を算出する。また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)により角度|α2+α1|/2を算出する。
【0053】
角度算出部118は、次の時刻t=tα3(tα2<tα3)においても同様に、1回前の時刻t=tα2における出力電圧V=V1α2,V=V2α2と、最新の時刻t=tα3における出力電圧V=V1α3,V=V2α3と、記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2とに基づいて、第3の点(磁界の角度がα3になるときの磁界発生部12の位置)と第2の点(磁界の角度がα2になるときの磁界発生部12の位置)との中間点に磁界発生部12が位置するときの磁界の角度|α3+α2|/2を算出する(ステップS104)。
【0054】
角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)と同様の式(18)により角度|α3+α2|/2を算出する。
|α3+α2|/2
=(1/2)
×|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1α3-V1α2)/(V2α3-V2α2)}|
・・・(18)
【0055】
また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)と同様の式(19)により角度|α3+α2|/2を算出する。
|α3+α2|/2
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1α3-V1α2)/(V2α3-V2α2)}|
・・・(19)
【0056】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、時刻t=tα1のときのブリッジ回路100の出力電圧V=V1α1と時刻t=tα2のときのブリッジ回路100の出力電圧V=V1α2との平均電圧aveV1α1α2は、式(3)、式(5)より、式(20)のようになる。
aveV1α1α2=(V1α1+V1α2)/2
={Vm1(cos2α1+cos2α2)+2Voff}/2 ・・(20)
【0057】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、時刻t=tα2のときのブリッジ回路100の出力電圧V=V1α2と時刻t=tα3のときのブリッジ回路100の出力電圧V=V1α3との平均電圧aveV1α2α3は、式(21)のようになる。
aveV1α2α3=(V1α2+V1α3)/2
={Vm1(cos2α2+cos2α3)+2Voff}/2 ・・(21)
【0058】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、時刻t=tα1のときのブリッジ回路101の出力電圧V=V2α1と時刻t=tα2のときのブリッジ回路101の出力電圧V=V2α2との平均電圧aveV2α1α2は、式(4)、式(6)より、式(22)のようになる。
aveV2α1α2=(V2α1+V2α2)/2
={Vm2(sin2α1+sin2α2)+2Voff}/2 ・・(22)
【0059】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、時刻t=tα2のときのブリッジ回路101の出力電圧V=V2α2と時刻t=tα3のときのブリッジ回路101の出力電圧V=V2α3との平均電圧aveV2α2α3は、式(23)のようになる。
aveV2α2α3=(V2α2+V2α3)/2
={Vm2(sin2α2+sin2α3)+2Voff}/2 ・・(23)
【0060】
したがって、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率は式(24)、式(25)のようになる。
(aveV1α2α3-aveV1α1α2
/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1
=(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1) ・・・(24)
(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2
=(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1) ・・・(25)
【0061】
(α3-α1)が0に限りなく近づくときに、平均変化率が微分相当となる。(α3-α1)が0に限りなく近づくとき、式(24)、式(25)より式(26)が得られる。
(1/4)×{(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)}
+{(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)}≒1 ・・(26)
【0062】
なお、角度α3とα1の差が微小のときは(時刻tα3とtα1の差が微小のとき)、式(27)~式(29)が得られる。
【0063】
【数1】

【0064】
(1/4)×{(-2sin2α1)+(2cos2α1)}=1 ・・(29)
【0065】
一方、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合には、式(20)~式(23)中の2α1をα1に、2α2をα2に、2α3をα3にすればよい。したがって、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率は式(30)、式(31)のようになる。
(aveV1α2α3-aveV1α1α2
/{(α2+α3)/2-(α1+α2)/2}/Vm1
=(cosα3-cosα1)/(α3-α1) ・・・(30)
(aveV2α2α3-aveV2α1α2)/{(α2+α3)-(α1+α2)}/Vm2
=(sinα3-sinα1)/(α3-α1) ・・・(31)
【0066】
(α3-α1)が0に限りなく近づくときに、平均変化率が微分相当となる。(α3-α1)が0に限りなく近づくとき、式(30)、式(31)より式(32)が得られる。
{(cosα3-cosα1)/(α3-α1)}
+{(sinα3-sinα1)/(α3-α1)}≒1 ・・・(32)
【0067】
角度α3とα1の差が微小のときは(時刻tα3とtα1の差が微小のとき)、式(33)~式(35)が得られる。
【0068】
【数2】



【0069】
{(-sinα1)+(cosα1)}=1 ・・・(35)
【0070】
判定部117は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(26)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図7ステップS105)。また、判定部117は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(32)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS105)。
【0071】
具体的には、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117は、ブリッジ回路100の出力電圧V1α1,V1α2の平均電圧aveV1α1α2を式(20)により算出し、ブリッジ回路100の出力電圧V1α2,V1α3の平均電圧aveV1α2α3を式(21)により算出し、ブリッジ回路101の出力電圧V2α1,V2α2の平均電圧aveV2α1α2を式(22)により算出し、ブリッジ回路101の出力電圧V2α2,V2α3の平均電圧aveV2α2α3を式(23)により算出する。
【0072】
続いて、判定部117は、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3と、角度算出部118によって算出された磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)を式(24)により算出する。また、判定部117は、平均電圧aveV2α1α2,aveV2α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)を式(25)により算出する。
【0073】
そして、判定部117は、算出した平均変化率(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1),(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)を式(26)に代入して式(26)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(26)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(26)の左辺が、1±β(βは所定の許容範囲を規定する実数)の範囲内にあるときに式(26)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(26)が成立しないと判定する。
【0074】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、判定部117は、AMR素子の場合と同様に、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3,aveV2α1α2,aveV2α2α3を算出する。続いて、判定部117は、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2と、振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cosα3-cosα1)/(α3-α1)を式(30)により算出する。また、判定部117は、平均電圧aveV2α1α2,aveV2α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2と、振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sinα3-sinα1)/(α3-α1)を式(31)により算出する。
【0075】
そして、判定部117は、算出した平均変化率(cosα3-cosα1)/(α3-α1),(sinα3-sinα1)/(α3-α1)を式(32)に代入して式(32)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(32)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(32)の左辺が、1±β(βは所定の許容範囲を規定する実数)の範囲内にあるときに式(32)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(32)が成立しないと判定する。
【0076】
初期設定部115は、判定部117から角度算出可能という判定結果が得られたときに(図7ステップS106においてYES)、このときのブリッジ回路100,101の出力電圧と磁界の角度とを記憶部113に記憶させる(図7ステップS107)。磁界発生部12が図9のP,P,Pの位置にあるときの磁界の角度を上記のα1,α2,α3とする。3点の位置P,P,P(時刻tα1,tα2,tα3)でブリッジ回路100,101の出力電圧V1α1,V1α2,V1α3,V2α1,V2α2,V2α3が得られ、判定部117から角度算出可能という判定結果が得られたときには、初期設定部115は、第1の点Pと第2の点Pの中間点の電圧(平均電圧)aveV1α1α2,aveV2α1α2をこの中間点に磁界発生部12が位置する場合のブリッジ回路100,101の出力電圧として記憶部113に記憶させ、角度|α2+α1|/2を中間点に磁界発生部12が位置する場合の磁界の角度として記憶部113に記憶させる。
【0077】
初期設定部115は、電圧と角度とを4組以上記憶したかどうかを判定し(図7ステップS108)、4組以上記憶していない場合にはステップS103に戻る。こうして、電圧と角度とを少なくとも4組記憶するまで、ステップS103~S107の処理を繰り返す。図8では、電圧と角度とが記憶された、磁界発生部12の軌道上の点をP,P,P,Pで表している。
【0078】
これら点P,P,P,Pは、それぞれ電圧測定が行われていない点である。例えば点Pは、点Pの直前の位置の第1の電圧測定点(上記のP)と点Pの直後の位置の第2の電圧測定点(上記P)との中間点である。第1の電圧測定点と第2の電圧測定点におけるブリッジ回路100の出力電圧の平均電圧(上記のaveV1α1α2)と第1の電圧測定点と第2の電圧測定点におけるブリッジ回路101の出力電圧の平均電圧(上記のaveV2α1α2)とが点Pに磁界発生部12が位置する場合のブリッジ回路100,101の出力電圧V1A,V2Aとして記憶される。また、第1の電圧測定点と第2の電圧測定点の中間点における磁界の角度(上記の|α2+α1|/2)が点Pに磁界発生部12が位置する場合の磁界の角度αAとして記憶される。点Pについても同様に出力電圧V1B,V2Bと磁界の角度αBが記憶され、点Pについて出力電圧V1C,V2Cと磁界の角度αCが記憶され、点Pについて出力電圧V1D,V2Dと磁界の角度αDが記憶される。以上で、初期設定部115の動作が終了する。
【0079】
図10は本実施例の角度検出装置1の角度検出時の動作を説明するフローチャートである。データ処理制御部11の振幅算出部114は、角度検出開始時にブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図10ステップS200)。このステップS200の処理はステップS100と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS200の処理によって更新される。上記で説明したように、振幅Vm1,Vm2の値を再度算出する理由は、現場の温度によって振幅Vm1,Vm2が変化するためである。
【0080】
センサ出力測定部111は、MRセンサ10のブリッジ回路100の出力電圧Vを測定し、センサ出力測定部112は、ブリッジ回路101の出力電圧Vを測定する(図10ステップS201)。センサ出力測定部111,112によって測定された出力電圧V,Vの値は、記憶部113に格納される。
【0081】
データ処理制御部11の判定部116は、ステップS201で測定された出力電圧V=V1E,V=V2Eを振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図10ステップS202)。
【0082】
具体的には、判定部116は、まずステップS201で測定された出力電圧V=V1Eを、記憶部113に記憶されている出力電圧Vの振幅Vm1で除算する。振幅Vm1で除算した値をV1E’(=V1E/Vm1)とする。同様に、判定部116は、ステップS201で測定された出力電圧V=V2Eを、記憶部113に記憶されている出力電圧Vの振幅Vm2で除算する。振幅Vm2で除算した値をV2E’(=V2E/Vm2)とする。
【0083】
ここで、記憶部113に記憶されている、点Pにおける出力電圧をV1A,V2A、点Pにおける出力電圧をV1B,V2B、点Pにおける出力電圧をV1C,V2C、点Pにおける出力電圧をV1D,V2Dとする。出力電圧V1A,V1B,V1C,V1Dを振幅Vm1で除算した値をV1A’(=V1A/Vm1),V1B’(=V1B/Vm1),V1C’(=V1C/Vm1),V1D’(=V1D/Vm1)とする。同様に、出力電圧V2A,V2B,V2C,V2Dを振幅Vm2で除算した値をV2A’(=V2A/Vm2),V2B’(=V2B/Vm2),V2C’(=V2C/Vm2),V2D’(=V2D/Vm2)とする。
【0084】
出力電圧Vを振幅Vm1で除算した値V’=V/Vm1をx軸(横軸)にとり、出力電圧Vを振幅Vm2で除算した値V’=V/Vm2をy軸(縦軸)にとったxy平面上に、電圧(V1A’,V2A’),(V1B’,V2B’),(V1C’,V2C’),(V1D’,V2D’)をプロットすると、図11に示すように円200上の点となる。
【0085】
判定部116は、予め定められた選択ルールに従って、点(V1A’,V2A’),(V1B’,V2B’),(V1C’,V2C’),(V1D’,V2D’)のうち、点(V1E’,V2E’)と異なる任意の3点を選択する。ここでは、点(V1E’,V2E’)と異なる3点を選択すればよく、適当な選択ルールを設定しておけばよい。初期設定部115が記憶部113に電圧と角度の組を4組以上記憶させた理由は、点(V1E’,V2E’)と異なる3点を選択できるようにするためである。本実施例では、点(V1A’,V2A’),(V1B’,V2B’),(V1D’,V2D’)を選択したとする。
【0086】
点(V1A’,V2A’),(V1B’,V2B’),(V1D’,V2D’)を頂点とする三角形T1において頂点(V1B’,V2B’)の内角を∠ABDとし、点(V1A’,V2A’),(V1E’,V2E’),(V1D’,V2D’)を頂点とする三角形T2において頂点(V1E’,V2E’)の内角を∠AEDとする。点(V1E’,V2E’)が円200上の点であるとき、余弦定理により式(24)が成立する。
|cos∠ABD|≒|cos∠AED| ・・・(36)
【0087】
点(V1A’,V2A’)と点(V1B’,V2B’)を結ぶ辺の長さをAB、点(V1B’,V2B’)と点(V1D’,V2D’)を結ぶ辺の長さをBD、点(V1D’,V2D’)と点(V1A’,V2A’)を結ぶ辺の長さをDA、点(V1A’,V2A’)と点(V1E’,V2E’)を結ぶ辺の長さをAE、点(V1E’,V2E’)と点(V1D’,V2D’)を結ぶ辺の長さをEDとする。このとき、式(36)は式(37)のように記述できる。
|(AB+BD-DA)/(2AB×BD)|
≒|(AE+ED-DA)/(2AE×ED)| ・・・(37)
【0088】
判定部116は、式(37)が成立するときに電圧V1E’,V2E’が所定の幾何学的関係を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。式(37)が成立することは、円200上の弦DAを共通の1辺とする三角形T1,T2の内角∠ABDと∠AEDがほぼ等しく、点(V1E’,V2E’)が円200上の点であることを意味する。判定部116は、式(37)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0089】
なお、上記では、円200上の弦DAを共通の1辺とする2つの三角形の場合について述べたが、円200上の別の弦を2つの三角形の共通の1辺とする場合の、式(36)に相当する条件式を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
一方、データ処理制御部11の判定部117は、ステップS201で測定された出力電圧V1E,V2Eの平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。
【0092】
角度検出時において、角度算出部118は、記憶部113に記憶されている、点Pにおける出力電圧V1A,V2Aと点Pにおける磁界の角度αA、点Pにおける出力電圧V1B,V2Bと点Pにおける磁界の角度αB、点Pにおける出力電圧V1C,V2Cと点Pにおける磁界の角度αC、点Pにおける出力電圧V1D,V2Dと点Pにおける磁界の角度αDのうち任意の1組の電圧と角度を予め定められた選択ルールに従って選択する。ここでは、V1E,V2Eと異なる電圧の組を選択すればよく、適当な選択ルールを設定しておけばよい。角度算出部118は、選択した電圧と角度の組と、ステップS201で測定された出力電圧V1E,V2Eとに基づいて、出力電圧V1E,V2Eが得られたときの磁界の角度αEを算出する(図10ステップS203)。
【0093】
本実施例では、点Pにおける出力電圧V1A,V2Aと点Pにおける磁界の角度αAを選択したとする。角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)と同様の式(38)により、出力電圧V1E,V2Eが得られたときの磁界発生部12の軌道上の点P(磁界発生部12の位置)と点Pとの中間点に磁界発生部12が位置する場合の磁界の角度αAE=|αE+αA|/2を算出する。
|αE+αA|/2
=(1/2)×|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-V1A)/(V2E-V2A)}|
・・・(38)
【0094】
また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)と同様の式(39)により、角度αAEを算出する。
|αE+αA|/2
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-V1A)/(V2E-V2A)}|
・・・(39)
【0095】
αAE=|αE+αA|/2なので、磁界の角度αEは次式により求めることができる。
αE=2αAE-αA ・・・(40)
【0096】
こうして、角度算出部118は、算出した角度αAEと記憶部113から取得した角度αAとに基づいて、式(40)により磁界の角度αEを算出する(ステップS203)。
【0097】
また、ステップS201で測定された最新の出力電圧V=V1E,V=V2Eよりも1回前に測定された出力電圧をV=V1E-1,V=V2E-1とし、2回前に測定された出力電圧をV=V1E-2,V=V2E-2とする。角度算出部118は、2回前に出力電圧V=V1E-2,V=V2E-2が測定されたときの磁界の角度αE-2と1回前に出力電圧V=V1E-1,V=V2E-1が測定されたときの磁界の角度αE-1との中間の角度|αE-2+αE-1|/2を算出する(ステップS203)。|αE-2+αE-1|/2は、2回前の磁界発生部12の位置と1回前の磁界発生部12の位置との中間点に磁界発生部12が位置する場合の磁界の角度である。
【0098】
角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)と同様の式(41)により角度|αE-2+αE-1|/2を算出する。
|αE-2+αE-1|/2
=(1/2)
×|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-1-V1E-2)/(V2E-1-V2E-2)}|
・・・(41)
【0099】
また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)と同様の式(42)により角度|αE-2+αE-1|/2を算出する。
|αE-2+αE-1|/2
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-1-V1E-2)/(V2E-1-V2E-2)}|
・・・(42)
【0100】
また、角度算出部118は、1回前に出力電圧V=V1E-1,V=V2E-1が測定されたときの磁界の角度αE-1と出力電圧V=V1E,V=V2Eが測定されたときの磁界の角度αEとの中間の角度|αE-1+αE|/2を算出する(ステップS203)。|αE-1+αE|は、1回前の磁界発生部12の位置とステップS201で出力電圧V=V1E,V=V2Eが測定されたときの磁界発生部12の位置との中間点に磁界発生部12が位置する場合の磁界の角度である。
【0101】
角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)と同様の式(43)により角度|αE-1+αE|/2を算出する。
|αE-1+αE|/2
=(1/2)
×|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-V1E-1)/(V2E-V2E-1)}|
・・・(43)
【0102】
また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)と同様の式(44)により角度|αE-1+αE|/2を算出する。
|αE-1+αE|/2
=|tan-1{(Vm2/Vm1)×(V1E-V1E-1)/(V2E-V2E-1)}|
・・・(44)
【0103】
判定部117は、ステップS201で測定された出力電圧V=V1E,V=V2Eの平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図10ステップS204)。
【0104】
具体的には、判定部117は、2回前に測定された出力電圧V=V1E-2と1回前に測定された出力電圧V=V1E-1との平均電圧aveV1E-2E-1を式(45)により算出する。
aveV1E-2E-1=(V1E-2+V1E-1)/2 ・・・(45)
【0105】
同様に、判定部117は、1回前に測定された出力電圧V=V1E-1とステップS201で測定された最新の出力電圧V=V1Eとの平均電圧aveV1E-1Eを式(46)により算出する。
aveV1E-1E=(V1E-1+V1E)/2 ・・・(46)
【0106】
また、判定部117は、2回前に測定された出力電圧V=V2E-2と1回前に測定された出力電圧V=V2E-1との平均電圧aveV2E-2E-1を式(47)により算出する。
aveV2E-2E-1=(V2E-2+V2E-1)/2 ・・・(47)
【0107】
同様に、判定部117は、1回前に測定された出力電圧V=V2E-1とステップS201で測定された最新の出力電圧V=V2Eとの平均電圧aveV2E-1Eを式(48)により算出する。
aveV2E-1E=(V2E-1+V2E)/2 ・・・(48)
【0108】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率は式(49)、式(50)のようになる。
(aveV1E-1E-aveV1E-2E-1
/{(αE-1+αE)/2-(αE-2+αE-1)/2}/Vm1
=(cos2αE-cos2αE-2)/(αE-αE-2) ・・・(49)
(aveV2α2αE-aveV2α1α2
/{(αE-1+αE)-(αE-2+αE-1)}/Vm2
=(sin2αE-sin2αE-2)/(αE-αE-2) ・・・(50)
【0109】
(αE-αE-2)が0に限りなく近づくとき、式(49)、式(50)より式(51)が得られる。
(1/4)×{(cos2αE-cos2αE-2)/(αE-αE-2)}
+{(sin2αE-sin2αE-2)/(αE-αE-2)}≒1
・・・(51)
【0110】
一方、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率は式(52)、式(53)のようになる。
(aveV1E-1E-aveV1E-2E-1
/{(αE-1+αE)/2-(αE-2+αE-1)/2}/Vm1
=(cosαE-cosαE-2)/(αE-αE-2) ・・・(52)
(aveV2α2αE-aveV2α1α2
/{(αE-1+αE)-(αE-2+αE-1)}/Vm2
=(sinαE-sinαE-2)/(αE-αE-2) ・・・(53)
【0111】
(αE-αE-2)が0に限りなく近づくときに、平均変化率が微分相当となる。(αE-α1)が0に限りなく近づくとき、式(52)、式(53)より式(54)が得られる。
{(cosαE-cosαE-2)/(αE-αE-2)}
+{(sinαE-sinαE-2)/(αE-αE-2)}≒1 ・・(54)
【0112】
判定部117は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(51)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図10ステップS204)。また、判定部117は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(54)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS204)。
【0113】
具体的には、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117は、ブリッジ回路100の出力電圧V1E-2,V1E-1の平均電圧aveV1E-2E-1を式(45)により算出し、ブリッジ回路100の出力電圧V1E-1,V1Eの平均電圧aveV1E-1Eを式(46)により算出し、ブリッジ回路101の出力電圧V2E-2,V2E-1の平均電圧aveV2E-2E-1を式(47)により算出し、ブリッジ回路101の出力電圧V2E-1,V2Eの平均電圧aveV2E-1Eを式(48)により算出する。
【0114】
続いて、判定部117は、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1Eと、角度算出部118によって算出された磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cos2αE-cos2αE-2)/(αE-αE-2)を式(49)により算出する。また、判定部117は、平均電圧aveV2E-2E-1,aveV2E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sin2αE-sin2αE-2)/(αE-αE-2)を式(50)により算出する。
【0115】
そして、判定部117は、算出した平均変化率(cos2αE-cos2αE-2)/(αE-αE-2),(sin2αE-sin2αE-2)/(αE-αE-2)を式(51)に代入して式(51)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(51)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(51)の左辺が、1±β(βは所定の許容範囲を規定する実数)の範囲内にあるときに式(51)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(51)が成立しないと判定する。
【0116】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、判定部117は、AMR素子の場合と同様に、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1E,aveV2E-2E-1,aveV2E-1Eを算出する。続いて、判定部117は、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cosαE-cosαE-2)/(αE-αE-2)を式(52)により算出する。また、判定部117は、平均電圧aveV2E-2E-1,aveV2E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sinαE-sinαE-2)/(αE-αE-2)を式(53)により算出する。
【0117】
そして、判定部117は、算出した平均変化率(cosαE-cosαE-2)/(αE-αE-2),(sinαE-sinαE-2)/(αE-αE-2)を式(54)に代入して式(54)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(54)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(54)の左辺が、1±β(βは所定の許容範囲を規定する実数)の範囲内にあるときに式(54)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(54)が成立しないと判定する。
【0118】
角度算出部118は、判定部116,117から得られた結果に基づいて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図10ステップS205)。本実施例では、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することも可能である。
【0119】
判定部116による判定は、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内か外かを判定することができる。磁界発生部12が停止しているときも判定が可能である。ただし、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内にあるときに磁界発生部12が動いているか停止しているかを判定することはできない。
【0120】
同様に、判定部117による判定は、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内か外かを判定することができる。判定部117による判定では、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内にあるときに磁界発生部12が動いているか停止しているかを判定することができるが、磁界発生部12が停止しているときに角度検出可能範囲内か外かを判定することはできない。
【0121】
判定部116,117の何れの方法においてもノイズの影響を受けるが、判定部117による判定の方がノイズの影響を受け易い。どちらも、サンプリング時間によって精度が変わるが、116は正確な角度算出が可能なタイミングで記憶した基準角度の情報を用いるのに対し、117は正確な角度算出が可能なタイミングをサンプリングする度に判断しなければならないため、一般的には判定部116による判定の方が安定している。
【0122】
磁界発生部12が直線的に動く構成において、MRセンサ10の角度検出可能範囲内において磁界発生部12が停止したときのみ磁界の角度α(磁界発生部12の位置)を検出するようなシステムにおいては、判定部116と判定部117の両方の判定を用いることで対応できる。
【0123】
MRセンサ10と磁界発生部12の位置関係の場合別の角度算出部118の判定結果を図12に示す。図12の「センシング判定」が角度算出部118の判定結果、「第1の判定部」が判定部116の判定結果、「第2の判定部」が判定部117の判定結果を示している。「○」は正確な角度算出が可能なタイミングという結果を示し、「×」は正確な角度算出が不可能なタイミングという結果を示している。
【0124】
図12の「a」は、図13に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲(実線131の内側)外で停止している場合を示し、「b」は、図14に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外でMRセンサ10に近づく方向に動いている場合を示している。図12の「c」は、図15に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内でMRセンサ10に近づく方向に動いている場合を示し、「d」は、図16に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内で停止している場合を示している。図12の「e」は、図17に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内でMRセンサ10から遠ざかる方向に動いている場合を示し、「f」は、図18に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外でMRセンサ10から遠ざかる方向に動いている場合を示し、「g」は、図19に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外で停止している場合を示している。
【0125】
図12から分かるように、角度算出部118は、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することが可能である。角度算出部118は、判定部116から角度算出可能という判定結果が得られたときに正確な角度算出が可能なタイミングと判定し(ステップS205においてYES)、ステップS203で算出した角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用する(図10ステップS206)。
【0126】
制御信号生成部119は、上位装置4から与えられた角度設定値と角度算出部118によって算出された角度αとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する(図10ステップS207)。この制御信号を、磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に供給することにより、物体の位置を制御することができる。
以上のステップS201~S207の処理が、例えばオペレータの指示によって角度検出装置1の動作が終了するまで(図10ステップS208においてYES)、繰り返し実施される。
【0127】
なお、上記の例では、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定しているが、判定部116,117の両方の判定結果を用いる方が好適な場合もある。具体的には、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみを検出したい場合には、判定部116,117の両方の判定結果を使用する。この場合、角度算出部118は、判定部116から角度算出が可能という判定結果が得られ、判定部117から角度算出が不可能という判定結果が得られたときに正確な角度算出が可能なタイミングと判定し(ステップS205においてYES)、ステップS203で算出した角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用すればよい(ステップS206)。
【0128】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、MRセンサ10に印加される磁界の角度αを算出する例について説明した。本実施例では、第1の実施例で説明した角度検出装置を利用し、磁界の角度αに基づいて、磁界発生部12が取り付けられた物体の位置を算出して制御する具体例について説明する。
【0129】
図20は本実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。ポジショナ1aは、上位装置4から与えられたバルブ3の弁開度の設定値とバルブ3の弁開度の実測値との偏差を算出し、その偏差に応じた空気圧操作信号を生成して操作器2に与えることにより、バルブ3の開度を制御する。ポジショナ1aは、MRセンサ10と、データ処理制御部11aと、電空変換部13と、空気圧増幅部14とを備えている。
【0130】
MRセンサ10は、バルブ3の開度をポジショナ1aのフィードバックレバーの変位によって検出する。データ処理制御部11aは、MRセンサ10の出力信号に基づいて、バルブ3の開度を制御するための制御信号を生成する。具体的には、データ処理制御部11aは、MRセンサ10の出力信号に基づいてバルブ3の開度の実測値を算出し、上位装置4から与えられたバルブ3の開度の設定値と開度の実測値との偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する。
【0131】
電空変換部13は、データ処理制御部11aによって生成された制御信号を空気圧信号に変換して出力する。具体的には、電空変換部13は、例えば減圧弁(図示せず)から供給された空気の給気圧を、制御信号に応じた圧力に変換し、空気圧信号として出力する。
【0132】
空気圧増幅部14は、電空変換部13から出力された空気圧信号の圧力を増幅して操作器2に出力する。具体的には、空気圧増幅部14は、例えば減圧弁から供給された空気の給気圧を、電空変換部13から出力された空気圧信号の圧力に応じて調圧し、空気圧操作信号として出力する。
【0133】
図21は本実施例のデータ処理制御部11aの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11aは、電源110と、センサ出力測定部111,112と、記憶部113と、振幅算出部114aと、初期設定部115aと、判定部116,117と、角度算出部118と、角度算出部118と、開度実測値生成部120と、制御信号生成部121とを備えている。
【0134】
図22に示す操作器2は、ポジショナ1aから供給される出力空気圧に応じてバルブステム(弁棒)31を上下動させて、バルブ本体30の開度を調節する。
MRセンサ10は、バルブステム31の上下動に応じて回転するフィードバックレバー32の鉛直面(図22の紙面と平行な面)上での回転角度を検出する。すなわち、図23に示すように磁界発生部12をフィードバックレバー32に取り付けると、フィードバックレバー32の回転に伴って磁界発生部12が鉛直面(図23では紙面に対して垂直な面)上を移動する。そこで、磁界発生部12の軌道に対してセンサ面(図23の紙面)が垂直となるようにMRセンサ10を設置すればよい。バルブステム31の上下動に応じて磁界発生部12が移動することにより、バルブ3の開度に応じた方向の磁界がMRセンサ10のブリッジ回路100,101に印加される。
【0135】
本実施例のポジショナ1aの初期設定時の処理の流れは第1の実施例と同様であるので、図7の符号を用いて説明する。ポジショナ1aの工場出荷時に、振幅算出部114aは、第1の実施例の振幅算出部114と同様に、MRセンサ10のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を算出する(図7ステップS100)。
【0136】
具体的には例えば工場の作業者がポジショナ1aのフィードバックレバー32を移動させることで、フィードバックレバー32に取り付けられた磁界発生部12が移動し、MRセンサ10のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させることができる。振幅算出部114aは、センサ出力測定部111,112によって測定され、記憶部113に格納された出力電圧(V,V)の組を全て読み出し、振幅算出部114と同様に振幅Vm1,Vm2を算出する。振幅算出部114aによって算出された振幅Vm1,Vm2は、記憶部113に格納される。
【0137】
次に、振幅算出部114aは、ポジショナ1aが化学プラント等の現場のバルブ3に取り付けられた後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図7ステップS101)。
【0138】
ここでは、振幅算出部114aは、所定の範囲内の磁界の角度α(すなわちバルブ開度)に対応する制御信号を電空変換部13に出力する。上記で説明した電空変換部13と空気圧増幅部14と操作器2の動作により、バルブ3の開度が制御信号に応じた開度に設定される。上記のように、MRセンサ10のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの値は、センサ出力測定部111,112によって測定され、記憶部113に格納される。
【0139】
振幅算出部114aは、電空変換部13に出力する制御信号を変更しながら出力電圧V,Vを測定させて、予め定められた範囲の角度αについて出力電圧V,Vを測定し終えた後に、記憶部113に格納された出力電圧(V,V)の組を全て読み出し、振幅算出部114と同様に振幅Vm1,Vm2を算出すればよい。なお、ここで設定する角度αは、MRセンサ10の角度検出可能範囲内である必要がある。記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS101の処理によって更新される。
【0140】
次に、初期設定部115aは、磁界発生部12の軌道上の少なくとも4点についてブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vと磁界の角度αとを取得するために、磁界発生部12(磁石)を等速で直線的に移動させる(図7ステップS102)。このとき、可能な限りサンプリング間隔を短くすることが望ましい。ここでは、初期設定部115aは、制御信号を電空変換部13に出力し、バルブ3の開度を変化させることで、フィードバックレバー32に取り付けられた磁界発生部12を移動させる。
図7のステップS103~S108の処理は、第1の実施例で説明したとおりである。
【0141】
図24は本実施例のポジショナ1aのバルブ制御時(プラント運転時)の動作を説明するフローチャートである。データ処理制御部11aの振幅算出部114aは、バルブ制御時にブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図24ステップS300)。このステップS300の処理はステップS101と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS300の処理によって更新される。
【0142】
バルブ制御時のステップS301~S306の処理は、第1の実施例のステップS201~S206と同じである。
次に、開度実測値生成部120は、角度算出部118によって算出された角度αに基づいてバルブ3の現在の開度実測値PVを求める(図24ステップS307)。開度実測値PVは、角度αと開度実測値PVとの既知の関係に基づいて求めることができる。
【0143】
制御信号生成部121は、上位装置4から与えられたバルブ3の開度設定値SPと開度実測値PVとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成して電空変換部13に出力する(図24ステップS308)。こうして、バルブ3の開度を制御することができる。
以上のステップS301~S308の処理が、例えばプラントの運転が停止するまで(図24ステップS309においてYES)、繰り返し実施される。
【0144】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例では、第1の実施例においてMRセンサが複数設けられている場合について説明する。図25は本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。角度検出装置1bは、複数のMRセンサ10-1,10-2と、データ処理制御部11bとを備えている。
【0145】
本実施例では、磁界発生部12は、図26に示すように複数のMRセンサ10-1,10-2のセンサ面(図26の紙面と平行な面)に対して垂直な平面上の軌道を移動する。図26では、実線131-1の内側がMRセンサ10-1の角度検出可能範囲を示し、実線131-2の内側がMRセンサ10-2の角度検出可能範囲を示している。隣り合うMRセンサ10-1,10-2は、それぞれの角度検出可能範囲131-1,131-2が重なるように配置されている。
【0146】
図27は本実施例のデータ処理制御部11bの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11bは、電源110と、センサ出力測定部111-1,111-2,112-1,112-2と、記憶部113と、振幅算出部114bと、初期設定部115bと、判定部116b,117bと、角度算出部118bと、制御信号生成部119とを備えている。
【0147】
図28は本実施例の角度検出装置1bの初期設定時の動作を説明するフローチャートである。角度検出装置1bの工場出荷時に、振幅算出部114bは、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を算出すると共に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を算出する(図28ステップS400)。
【0148】
以下の説明では、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V,VをV1,V1、振幅Vm1,Vm2をVm11,Vm21、オフセットVoff,VoffをVoff1,Voff1とする。同様に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧V,VをV2,V2、振幅Vm1,Vm2をVm12,Vm22、オフセットVoff,VoffをVoff2,Voff2とする。
【0149】
例えば工場の作業者が磁界発生部12を移動させることで、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10-1に印加される範囲となることが必要である。
【0150】
データ処理制御部11bのセンサ出力測定部111-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路100の出力電圧V1を測定し、センサ出力測定部112-1は、ブリッジ回路101の出力電圧V1を測定する。センサ出力測定部111-1,112-1によって測定された出力電圧V1,V1の値は、記憶部113に格納される。
【0151】
振幅算出部114bは、例えば工場の作業者から算出処理の実行指示があったときに、出力電圧V1の最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm11として算出する。同様に、振幅算出部114bは、出力電圧V1の最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm21として算出する。
【0152】
MRセンサ10-2についても同様に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10-2に印加される範囲となることが必要である。
【0153】
センサ出力測定部111-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路100の出力電圧V2を測定し、センサ出力測定部112-2は、ブリッジ回路101の出力電圧V2を測定する。センサ出力測定部111-2,112-2によって測定された出力電圧V2,V2の値は、記憶部113に格納される。
【0154】
振幅算出部114bは、MRセンサ10-1の場合と同様にして、振幅Vm12,Vm22を算出する。
振幅算出部114bによって算出された振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22は、記憶部113に格納される。
【0155】
次に、振幅算出部114bは、角度検出装置1bが化学プラント等の現場に設置された後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、MRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図28ステップS401)。このステップS401の処理はステップS400と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22の値は、ステップS401の処理によって更新される。
【0156】
次に、初期設定部115bは、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて、磁界発生部12の軌道上の少なくとも4点についてブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vと磁界の角度αを取得するために、磁界発生部12(磁石)を等速で直線的に移動させる(図28ステップS402)。このとき、可能な限りサンプリング間隔を短くすることが望ましい。磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に対して初期設定部115bが制御信号を供給することによって磁界発生部12を移動させてもよいし、外部の入力装置から制御信号を供給してもよい。
【0157】
センサ出力測定部111-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路100の出力電圧V1を測定し、センサ出力測定部112-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路101の出力電圧V1を測定する。センサ出力測定部111-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路100の出力電圧V2を測定し、センサ出力測定部112-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路101の出力電圧V2を測定する(図28ステップS403)。
【0158】
データ処理制御部11bの判定部117bは、ステップS403で測定されたV1,V1の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。また、判定部117bは、ステップS403で測定されたV2,V2が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。
【0159】
角度算出部118bは、前回の時刻t=tα1における出力電圧V1=V1α11,V1=V2α11と、時刻t=tα2における出力電圧V1=V1α21,V1=V2α21と、記憶部113に記憶されている振幅Vm11,Vm21とに基づいて、角度α2とα1の中間の角度|α2+α1|/2をMRセンサ10-1について算出する(図28ステップS404)。同様に、角度算出部118bは、時刻t=tα1における出力電圧V2=V1α12,V2=V2α12と、時刻t=tα2における出力電圧V2=V1α22,V1=V2α22と、記憶部113に記憶されている振幅Vm12,Vm22とに基づいて、角度α2とα1の中間の角度|α2+α1|/2をMRセンサ10-2について算出する(ステップS404)。
【0160】
具体的には、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(13)により角度|α2+α1|/2を算出する。また、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(17)により角度|α2+α1|/2を算出する。MRセンサ10-1については、式(13)、式(17)のVm2,Vm1,V1α2,V1α1,V2α2,V2α1を、それぞれVm21,Vm11,V1α21,V1α11,V2α21,V2α11に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(13)、式(17)のVm2,Vm1,V1α2,V1α1,V2α2,V2α1を、それぞれVm22,Vm12,V1α22,V1α12,V2α22,V2α12に置き替えるようにすればよい。
【0161】
角度算出部118bは、次の時刻t=tα3(tα2<tα3)においても同様に、1回前の時刻t=tα2における出力電圧V1=V1α21,V1=V2α21と、時刻t=tα3における出力電圧V1=V1α31,V1=V2α31と、記憶部113に記憶されている振幅Vm11,Vm21とに基づいて、角度α3とα2の中間の角度|α3+α2|/2をMRセンサ10-1について算出する(ステップS404)。同様に、角度算出部118bは、1回前の時刻t=tα2における出力電圧V2=V1α22,V2=V2α22と、時刻t=tα3における出力電圧V2=V1α32,V2=V2α32と、記憶部113に記憶されている振幅Vm12,Vm22とに基づいて、角度α3とα2の中間の角度|α3+α2|/2をMRセンサ10-2について算出する(ステップS404)。
【0162】
角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(18)により角度|α3+α2|/2を算出する。また、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(19)により角度|α3+α2|/2を算出する。MRセンサ10-1については、式(18)、式(19)のVm2,Vm1,V1α3,V1α2,V2α3,V2α2を、それぞれVm21,Vm11,V1α31,V1α21,V2α31,V2α21に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(18)、式(19)のVm2,Vm1,V1α3,V1α2,V2α3,V2α2を、それぞれVm22,Vm12,V1α32,V1α22,V2α32,V2α22に置き替えるようにすればよい。
【0163】
判定部117bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が式(26)の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図28ステップS405)。また、判定部117bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が式(26)の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS405)。
【0164】
また、判定部117bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が式(32)の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS405)。また、判定部117bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が式(32)の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS405)。
【0165】
具体的には、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117bは、ブリッジ回路100の出力電圧V1α1,V1α2の平均電圧aveV1α1α2を式(20)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、ブリッジ回路100の出力電圧V1α2,V1α3の平均電圧aveV1α2α3を式(21)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、ブリッジ回路101の出力電圧V2α1,V2α2の平均電圧aveV2α1α2を式(22)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する、。また、判定部117bは、ブリッジ回路101の出力電圧V2α2,V2α3の平均電圧aveV2α2α3を式(23)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。
【0166】
MRセンサ10-1については、式(20)~式(23)のV1α1,V1α2,V1α3,V2α1,V2α2,V2α3を、それぞれV1α11,V1α21,V1α31,V2α11,V2α21,V2α31に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(20)~式(23)のV1α1,V1α2,V1α3,V2α1,V2α2,V2α3を、それぞれV1α12,V1α22,V1α32,V2α12,V2α22,V2α32に置き替えるようにすればよい。
【0167】
続いて、判定部117bは、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3と、角度算出部118によって算出された磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cos2α3-cos2α1)/(α3-α1)を式(24)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、平均電圧aveV2α1α2,aveV2α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sin2α3-sin2α1)/(α3-α1)を式(25)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。MRセンサ10-1については、式(24)、式(25)の振幅Vm1をVm11に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(24)、式(25)の振幅Vm1をVm12に置き替えるようにすればよい。
【0168】
そして、判定部117bは、MRセンサ10-1について式(26)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、MRセンサ10-2について式(26)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
【0169】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、判定部117bは、AMR素子の場合と同様に、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3,aveV2α1α2,aveV2α2α3を算出する。続いて、判定部117bは、平均電圧aveV1α1α2,aveV1α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cosα3-cosα1)/(α3-α1)を式(30)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、平均電圧aveV2α1α2,aveV2α2α3と、磁界の角度|α2+α1|/2,|α3+α2|/2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sinα3-sinα1)/(α3-α1)を式(31)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。MRセンサ10-1については、式(30)、式(31)の振幅Vm1をVm11に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(24)、式(25)の振幅Vm1をVm12に置き替えるようにすればよい。
【0170】
そして、判定部117bは、MRセンサ10-1について式(32)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、MRセンサ10-2について式(32)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
【0171】
初期設定部115bは、判定部117bからMRセンサ10-1によって角度算出可能という判定結果が得られたときに(図28ステップS406においてYES)、このときのMRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧と磁界の角度とを記憶部113に記憶させる(図28ステップS407)。また、初期設定部115bは、判定部117bからMRセンサ10-2によって角度算出可能という判定結果が得られたときに(ステップS406においてYES)、このときのMRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧と磁界の角度とを記憶部113に記憶させる(ステップS407)。
【0172】
初期設定部115bは、MRセンサ10-1について電圧と角度とを4組以上記憶し、かつMRセンサ10-2について電圧と角度とを4組以上記憶したかどうかを判定し(図28ステップS408)、MRセンサ10-1,10-2のうち少なくとも一方について4組以上記憶していない場合にはステップS403に戻る。こうして、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて電圧と角度とを少なくとも4組記憶するまで、ステップS403~S407の処理を繰り返す。以上で、初期設定部115bの動作が終了する。
【0173】
図29は本実施例の角度検出装置1の角度検出時の動作を説明するフローチャートである。データ処理制御部11bの振幅算出部114bは、角度検出開始時にMRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図29ステップS500)。このステップS500の処理はステップS401と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22の値は、ステップS500の処理によって更新される。
【0174】
センサ出力測定部111-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路100の出力電圧V1を測定し、センサ出力測定部112-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路101の出力電圧V1を測定する。センサ出力測定部111-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路100の出力電圧V2を測定し、センサ出力測定部112-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路101の出力電圧V2を測定する(図29ステップS501)。
【0175】
データ処理制御部11bの判定部116bは、ステップS501で測定されたV1,V1を振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図29ステップS502)。また、判定部116bは、ステップS501で測定されたV2,V2を振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS502)。
【0176】
具体的には、判定部116bは、まずステップS501で測定された出力電圧V1=V1E1を、記憶部113に記憶されている出力電圧V1の振幅Vm11で除算する。振幅Vm11で除算した値をV1E1’(=V1E1/Vm11)とする。同様に、判定部116bは、ステップS501で測定された出力電圧V1=V2E1を、記憶部113に記憶されている出力電圧V1の振幅Vm21で除算する。振幅Vm21で除算した値をV2E1’(=V2E1/Vm21)とする。また、判定部116bは、ステップS501で測定された出力電圧V2=V1E2を、記憶部113に記憶されている出力電圧V2の振幅Vm12で除算する。振幅Vm12で除算した値をV1E2’(=V1E2/Vm12)とする。同様に、判定部116bは、ステップS501で測定された出力電圧V2=V2E2を、記憶部113に記憶されている出力電圧V2の振幅Vm22で除算する。振幅Vm22で除算した値をV2E2’(=V2E2/Vm22)とする。
【0177】
ここで、MRセンサ10-1について記憶部113に記憶されている、点P1における出力電圧をV1A1,V2A1、点P1における出力電圧をV1B1,V2B1、点P1における出力電圧をV1C1,V2C1、点P1における出力電圧をV1D1,V2D1とする。出力電圧V1A1,V1B1,V1C1,V1D1を振幅Vm11で除算した値をV1A1’(=V1A1/Vm11),V1B1’(=V1B1/Vm11),V1C1’(=V1C1/Vm11),V1D1’(=V1D1/Vm11)とする。同様に、出力電圧V2A1,V2B1,V2C1,V2D1を振幅Vm21で除算した値をV2A1’(=V2A1/Vm21),V2B1’(=V2B1/Vm21),V2C1’(=V2C1/Vm21),V2D1’(=V2D1/Vm21)とする。
【0178】
また、MRセンサ10-2について記憶部113に記憶されている、点P2における出力電圧をV1A2,V2A2、点P2における出力電圧をV1B2,V2B2、点P2における出力電圧をV1C2,V2C2、点P2における出力電圧をV1D2,V2D2とする。出力電圧V1A2,V1B2,V1C2,V1D2を振幅Vm12で除算した値をV1A2’(=V1A2/Vm12),V1B2’(=V1B2/Vm12),V1C2’(=V1C2/Vm12),V1D2’(=V1D2/Vm12)とする。同様に、出力電圧V2A2,V2B2,V2C2,V2D2を振幅Vm22で除算した値をV2A2’(=V2A2/Vm22),V2B2’(=V2B2/Vm22),V2C2’(=V2C2/Vm22),V2D2’(=V2D2/Vm22)とする。
【0179】
出力電圧V1を振幅Vm11で除算した値V1’=V1/Vm11をx軸(横軸)にとり、出力電圧V1を振幅Vm21で除算した値V1’=V1/Vm21をy軸(縦軸)にとったxy平面上に、電圧(V1A1’,V2A1’),(V1B1’,V2B1’),(V1C1’,V2C1’),(V1D1’,V2D1’)をプロットすると、図11と同じ円200上の点となる。同様に、出力電圧V2を振幅Vm12で除算した値V2’=V2/Vm12をx軸にとり、出力電圧V2を振幅Vm22で除算した値V2’=V2/Vm22をy軸にとったxy平面上に、電圧(V1A2’,V2A2’),(V1B2’,V2B2’),(V1C2’,V2C2’),(V1D2’,V2D2’)をプロットすると、図11と同じ円200上の点となる。
【0180】
判定部116bは、予め定められた選択ルールに従って、点(V1A1’,V2A1’),(V1B1’,V2B1’),(V1C1’,V2C1’),(V1D1’,V2D1’)のうち、点(V1E1’,V2E1’)と異なる任意の3点を選択する。また、判定部116bは、予め定められた選択ルールに従って、点(V1A2’,V2A2’),(V1B2’,V2B2’),(V1C2’,V2C2’),(V1D2’,V2D2’)のうち、点(V1E2’,V2E2’)と異なる任意の3点を選択する。本実施例では、点(V1A1’,V2A1’),(V1B1’,V2B1’),(V1D1’,V2D1’)、(V1A2’,V2A2’),(V1B2’,V2B2’),(V1D2’,V2D2’)を選択したとする。
【0181】
判定部116bは、MRセンサ10-1について式(37)が成立するときに電圧V1E1’,V2E1’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部116bは、MRセンサ10-2について式(37)が成立するときに電圧V1E2’,V2E2’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
【0182】
MRセンサ10-1については、点(V1A1’,V2A1’)と点(V1B1’,V2B1’)を結ぶ辺の長さを式(37)のAB、点(V1B1’,V2B1’)と点(V1D1’,V2D1’)を結ぶ辺の長さをBD、点(V1D1’,V2D1’)と点(V1A1’,V2A1’)を結ぶ辺の長さをDA、点(V1A1’,V2A1’)と点(V1E1’,V2E1’)を結ぶ辺の長さをAE、点(V1E1’,V2E1’)と点(V1D1’,V2D1’)を結ぶ辺の長さをEDとすればよい。MRセンサ10-2については、点(V1A2’,V2A2’)と点(V1B2’,V2B2’)を結ぶ辺の長さを式(37)のAB、点(V1B2’,V2B2’)と点(V1D2’,V2D2’)を結ぶ辺の長さをBD、点(V1D2’,V2D2’)と点(V1A2’,V2A2’)を結ぶ辺の長さをDA、点(V1A2’,V2A2’)と点(V1E2’,V2E2’)を結ぶ辺の長さをAE、点(V1E2’,V2E2’)と点(V1D2’,V2D2’)を結ぶ辺の長さをEDとすればよい。
【0183】
一方、データ処理制御部11bの判定部117bは、ステップS501で測定された出力電圧V1E1,V2E1の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。また、データ処理制御部11bの判定部117bは、ステップS501で測定された出力電圧V1E2,V2E2の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。
【0184】
角度検出時において、角度算出部118bは、MRセンサ10-1について記憶部113に記憶されている、点P1における出力電圧V1A1,V2A1と点P1における磁界の角度αA1、点P1における出力電圧V1B1,V2B1と点P1における磁界の角度αB1、点P1における出力電圧V1C1,V2C1と点P1における磁界の角度αC1、点P1における出力電圧V1D1,V2D1と点P1における磁界の角度αD1のうち任意の1組の電圧と角度を予め定められた選択ルールに従って選択する。ここでは、V1E1,V2E1と異なる電圧の組を選択すればよく、適当な選択ルールを設定しておけばよい。角度算出部118bは、選択した電圧と角度の組と、ステップS501で測定された出力電圧V1E1,V2E1とに基づいて、出力電圧V1E1,V2E1が得られたときの磁界の角度αE1を算出する(図29ステップS503)。
【0185】
また、角度算出部118bは、MRセンサ10-2について記憶部113に記憶されている、点P2における出力電圧V1A2,V2A2と点P2における磁界の角度αA2、点P2における出力電圧V1B2,V2B2と点P2における磁界の角度αB2、点P2における出力電圧V1C2,V2C2と点P2における磁界の角度αC2、点P2における出力電圧V1D2,V2D2と点P2における磁界の角度αD2のうち任意の1組の電圧と角度を予め定められた選択ルールに従って選択する。ここでは、V1E2,V2E2と異なる電圧の組を選択すればよく、適当な選択ルールを設定しておけばよい。角度算出部118bは、選択した電圧と角度の組と、ステップS501で測定された出力電圧V1E2,V2E2とに基づいて、出力電圧V1E2,V2E2が得られたときの磁界の角度αE2を算出する(ステップS503)。
【0186】
本実施例では、点P1における出力電圧V1A1,V2A1と点P1における磁界の角度αA1を選択し、点P2における出力電圧V1A2,V2A2と点P2における磁界の角度αA2を選択したとする。角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、MRセンサ10-1について出力電圧V1E1,V2E1が得られたときの磁界発生部12の軌道上の点P1と点P1との中間点における磁界の角度αAE1=|αE1+αA1|/2を式(38)により算出する。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-2について出力電圧V1E2,V2E2が得られたときの磁界発生部12の軌道上の点P2と点P2との中間点における磁界の角度αAE2=|αE2+αA2|/2を式(38)により算出する。
【0187】
また、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、MRセンサ10-1について出力電圧V1E1,V2E1が得られたときの磁界発生部12の軌道上の点P1と点P1との中間点における磁界の角度αAE1=|αE1+αA1|/2を式(39)により算出する。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-2について出力電圧V1E2,V2E2が得られたときの磁界発生部12の軌道上の点P2と点P2との中間点における磁界の角度αAE2=|αE2+αA2|/2を式(39)により算出する。
【0188】
MRセンサ10-1については、式(38)、式(39)のVm2,Vm1,V1E,V1A,V2E,V2Aを、それぞれVm21,Vm11,V1E1,V1A1,V2E1,V2A1に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(38)、式(39)のVm2,Vm1,V1E,V1A,V2E,V2Aを、それぞれVm22,Vm12,V1E2,V1A2,V2E2,V2A2に置き替えるようにすればよい。
【0189】
角度算出部118bは、MRセンサ10-1について磁界の角度αE=αE1を式(40)により算出し、MRセンサ10-2について磁界の角度αE=αE2を式(40)により算出する(ステップS503)。MRセンサ10-1については、式(40)のαAE,αAを、それぞれαAE1,αA1に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-1については、式(40)のαAE,αAを、それぞれαAE2,αA2に置き替えるようにすればよい。
【0190】
また、MRセンサ10-1についてステップS501で測定された最新の出力電圧V1=V1E1,V1=V2E1よりも1回前に測定された出力電圧をV1=V1E-11,V1=V2E-11とし、2回前に測定された出力電圧をV1=V1E-21,V=V2E-21とする。また、MRセンサ10-2についてステップS501で測定された最新の出力電圧V2=V1E2,V2=V2E2よりも1回前に測定された出力電圧をV2=V1E-12,V2=V2E-12とし、2回前に測定された出力電圧をV2=V1E-22,V=V2E-22とする。
【0191】
角度算出部118bは、MRセンサ10-1について2回前に出力電圧V1=V1E-21,V1=V2E-21が測定されたときの磁界の角度αE-21と1回前に出力電圧V1=V1E-11,V1=V2E-11が測定されたときの磁界の角度αE-11との中間の角度|αE-21+αE-11|/2を算出する(ステップS503)。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-2について2回前に出力電圧V2=V1E-22,V2=V2E-22が測定されたときの磁界の角度αE-22と1回前に出力電圧V2=V1E-12,V2=V2E-12が測定されたときの磁界の角度αE-12との中間の角度|αE-22+αE-12|/2を算出する(ステップS503)。
【0192】
角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(41)により角度|αE-21+αE-11|/2,|αE-22+αE-12|/2を算出する。また、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(42)により角度|αE-21+αE-11|/2,|αE-22+αE-12|/2を算出する。
【0193】
MRセンサ10-1については、式(41)、式(42)のVm2,Vm1,V1E-1,V1E-2,V2E-1,V2E-2を、それぞれVm21,Vm11,V1E-11,V1E-21,V2E-11,V2E-21に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(41)、式(42)のVm2,Vm1,V1E-1,V1E-2,V2E-1,V2E-2を、それぞれVm22,Vm12,V1E-12,V1E-22,V2E-12,V2E-22に置き替えるようにすればよい。
【0194】
また、角度算出部118bは、MRセンサ10-1について1回前に出力電圧V1=V1E-11,V1=V2E-11が測定されたときの磁界の角度αE-11と出力電圧V1=V1E1,V1=V2E1が測定されたときの磁界の角度αE1との中間の角度|αE-11+αE1|/2を算出する(ステップS503)。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-2について1回前に出力電圧V2=V1E-12,V2=V2E-12が測定されたときの磁界の角度αE-12と出力電圧V2=V1E2,V2=V2E2が測定されたときの磁界の角度αE2との中間の角度|αE-12+αE2|/2を算出する(ステップS503)。
【0195】
角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(43)により角度|αE-11+αE1|/2,|αE-12+αE2|/2を算出する。また、角度算出部118bは、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(44)により角度|αE-11+αE1|/2,|αE-12+αE2|/2を算出する。
【0196】
MRセンサ10-1については、式(43)、式(44)のVm2,Vm1,V1E,V1E-1,V2E,V2E-1を、それぞれVm21,Vm11,V1E1,V1E-11,V2E1,V2E-11に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(43)、式(44)のVm2,Vm1,V1E,V1E-1,V2E,V2E-1を、それぞれVm22,Vm12,V1E2,V1E-12,V2E2,V2E-12に置き替えるようにすればよい。
【0197】
判定部117bは、ステップS501で測定された出力電圧V1=V1E1,V1=V2E1の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図29ステップS504)。また、判定部117bは、ステップS501で測定された出力電圧V2=V1E2,V2=V2E2の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS504)。
【0198】
具体的には、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117bは、2回前に測定された出力電圧V=V1E-2と1回前に測定された出力電圧V=V1E-1との平均電圧aveV1E-2E-1を式(45)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、1回前に測定された出力電圧V=V1E-1とステップS501で測定された最新の出力電圧V=V1Eとの平均電圧aveV1E-1Eを式(46)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、2回前に測定された出力電圧V=V2E-2と1回前に測定された出力電圧V=V2E-1との平均電圧aveV2E-2E-1を式(47)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、1回前に測定された出力電圧V=V2E-1とステップS501で測定された最新の出力電圧V=V2Eとの平均電圧aveV2E-1Eを式(48)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。
【0199】
MRセンサ10-1については、式(45)~式(48)のV1E-2,V1E-1,V1E,V2E-2,V2E-1,V2Eを、それぞれV1E-21,V1E-11,V1E1,V2E-21,V2E-11,V2E1に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-2については、式(45)~式(48)のV1E-2,V1E-1,V1E,V2E-2,V2E-1,V2Eを、それぞれV1E-22,V1E-12,V1E2,V2E-22,V2E-12,V2E2に置き替えるようにすればよい。
【0200】
続いて、判定部117bは、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1Eと、角度算出部118bによって算出された磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cos2αE-cos2αE-2)/(αE-αE-2)を式(49)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、平均電圧aveV2E-2E-1,aveV2E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、記憶部113に記憶されている振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sin2αE-sin2αE-2)/(αE-αE-2)を式(50)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。
【0201】
MRセンサ10-1については、式(49)、式(50)の(αE-1+αE)/2,(αE-2+αE-1)/2,Vm1,Vm2を、それぞれ(αE-11+αE1)/2,(αE-21+αE-11)/2,Vm11,Vm21に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-1については、式(49)、式(50)の(αE-1+αE)/2,(αE-2+αE-1)/2,Vm1,Vm2を、それぞれ(αE-12+αE2)/2,(αE-22+αE-12)/2,Vm12,Vm22に置き替えるようにすればよい。
【0202】
そして、判定部117bは、MRセンサ10-1について式(51)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、MRセンサ10-2について式(51)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
【0203】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、判定部117bは、AMR素子の場合と同様に、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1E,aveV2E-2E-1,aveV2E-1EをMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。続いて、判定部117bは、平均電圧aveV1E-2E-1,aveV1E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、振幅Vm1とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(cosαE-cosαE-2)/(αE-αE-2)を式(52)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。また、判定部117bは、平均電圧aveV2E-2E-1,aveV2E-1Eと、磁界の角度|αE-2+αE-1|/2,|αE-1+αE|/2と、振幅Vm2とに基づいて、磁界の角度変化における出力電圧Vの平均変化率(sinαE-sinαE-2)/(αE-αE-2)を式(53)によりMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて算出する。
【0204】
MRセンサ10-1については、式(52)、式(53)の(αE-1+αE)/2,(αE-2+αE-1)/2,Vm1,Vm2を、それぞれ(αE-11+αE1)/2,(αE-21+αE-11)/2,Vm11,Vm21に置き替えるようにすればよい。MRセンサ10-1については、式(52)、式(53)の(αE-1+αE)/2,(αE-2+αE-1)/2,Vm1,Vm2を、それぞれ(αE-12+αE2)/2,(αE-22+αE-12)/2,Vm12,Vm22に置き替えるようにすればよい。
【0205】
そして、判定部117bは、MRセンサ10-1について式(54)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、MRセンサ10-2について式(54)が成立するときに、磁界の角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
【0206】
角度算出部118bは、判定部116b,117bから得られた結果に基づいてMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図29ステップS505)。本実施例においても、判定部116bから得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することが可能である。
【0207】
角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られたときに(ステップS505においてYES)、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについてステップS503で算出した角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用する(図29ステップS506)。
【0208】
また、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2のうちどちらか一方のみについて正確な角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られたときに(図29ステップS507においてYES)、ステップS503で算出した角度αEのうち正確な角度算出が可能と判定されたMRセンサによって得られた角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用する(図29ステップS508)。
MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が不可能という判定結果が判定部116bから得られたときには磁界の角度αが不定となる。
【0209】
制御信号生成部119は、上位装置4から与えられた角度設定値と角度算出部118bによって算出された角度αとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する(図29ステップS509)。この制御信号を、磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に供給することにより、物体の位置を制御することができる。
【0210】
以上のステップS501~S509の処理が、例えばオペレータの指示によって角度検出装置1bの動作が終了するまで(図29ステップS510においてYES)、繰り返し実施される。
【0211】
以上のように、本実施例では、複数のMRセンサ10-1,10-2を設けることにより、磁界発生部12の位置の検知範囲を広げることができるので、例えば本実施例をポジショナに適用する場合に、バルブステムの動きにおける直線的な領域を拡大したときにおいてもバルブ開度を検知することができる。また、本実施例では、測定精度を向上させることができる。
【0212】
なお、上記の例では、判定部116bから得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定しているが、判定部116b,117bの両方の判定結果を用いる方が好適な場合もある。具体的には、磁界発生部12がMRセンサ10-1,10-2のどちらか一方または両方の角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみを検出したい場合には、判定部116b,117bの両方の判定結果を使用する。
【0213】
この場合、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2の両方共に角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られ、MRセンサ10-1,10-2の両方共に角度算出が不可能という判定結果が判定部117bから得られたときに(ステップS505においてYES)、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについてステップS503で算出した角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用する(ステップS506)。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2のうちどちらか一方のみについて角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られ、角度算出が可能という結果が得られたMRセンサについて角度算出が不可能という判定結果が判定部117bから得られたときに(ステップS507においてYES)、判定部116bが角度算出が可能と判定したMRセンサによって得られた角度αEを磁界の角度αの正確な値として採用すればよい(ステップS508)。
【0214】
本実施例では、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能な場合、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて磁界の角度αEが得られるが、MRセンサ10-1によって得られた角度αE=αE1を最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-2によって得られた角度αE=αE2を最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αEに基づいて最終的な角度αを算出するかは、適用するアプリケーションによって異なる。
【0215】
例えば測定精度を高めることを目的として、磁界発生部12がMRセンサ10-1に近いときにはMRセンサ10-1によって得られた角度αE=αE1を磁界の角度αとして採用し、磁界発生部12がMRセンサ10-2に近いときにはMRセンサ10-2によって得られた角度αE=αE2を磁界の角度αとして採用できるように、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて角度αEの異なる範囲を予め設定しておく。角度算出部118bは、MRセンサ10-1によって得られた角度αE=αE1がMRセンサ10-1用に規定された角度範囲の場合には、MRセンサ10-1によって得られた角度αE=αE1を最終的に磁界の角度αとして採用し、MRセンサ10-2によって得られた角度αE=αE2がMRセンサ10-2用に規定された角度範囲の場合には、MRセンサ10-2によって得られた角度αE=αE2を最終的に磁界の角度αとして採用する。
【0216】
また、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αEに基づいて最終的な角度αを算出する場合には、所定のルールに基づいて角度αの値を算出すればよい。
【0217】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図30は本実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。ポジショナ1cは、MRセンサ10-1,10-2と、データ処理制御部11cと、電空変換部13と、空気圧増幅部14とを備えている。
【0218】
図31は本実施例のデータ処理制御部11cの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11cは、電源110と、センサ出力測定部111-1,111-2,112-1,112-2と、記憶部113と、振幅算出部114cと、初期設定部115cと、判定部116b,117bと、角度算出部118bと、開度実測値生成部120cと、制御信号生成部121とを備えている。
【0219】
図32に示すように磁界発生部12をポジショナ1cのフィードバックレバー32に取り付けると、フィードバックレバー32の回転に伴って磁界発生部12が鉛直面(図32では紙面に対して垂直な面)上を移動する。そこで、磁界発生部12の軌道に対してセンサ面(図32の紙面と平行な面)が垂直となるようにMRセンサ10-1,10-2を設置すればよい。バルブ3のバルブステム31の上下動に応じて磁界発生部12が移動することにより、バルブ3の開度に応じた方向の磁界がMRセンサ10-1,10-2に印加される。
【0220】
本実施例のポジショナ1cの初期設定時の処理の流れは第3の実施例と同様であるので、図28の符号を用いて説明する。ポジショナ1cの工場出荷時に、振幅算出部114cは、第2の実施例の振幅算出部114a、第3の実施例の振幅算出部114bと同様に、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V1,V1の振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21を算出すると共に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧V2,V2の振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22を算出する(図28ステップS400)。
【0221】
次に、振幅算出部114cは、ポジショナ1cが化学プラント等の現場のバルブ3に取り付けられた後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、振幅算出部114a,114bと同様に、MRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図28ステップS401)。
【0222】
次に、初期設定部115cは、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて、磁界発生部12の軌道上の少なくとも4点についてブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vと磁界の角度αを取得するために、磁界発生部12(磁石)を等速で直線的に移動させる(図28ステップS402)。このとき、可能な限りサンプリング間隔を短くすることが望ましい。ここでは、初期設定部115cは、制御信号を電空変換部13に出力し、バルブ3の開度を変化させることで、フィードバックレバー32に取り付けられた磁界発生部12を移動させる。
図28のステップS403~S408の処理は、第3の実施例で説明したとおりである。
【0223】
図33は本実施例のポジショナ1cのバルブ制御時(プラント運転時)の動作を説明するフローチャートである。振幅算出部114cは、バルブ制御時にMRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図33ステップS600)。このステップS600の処理はステップS401と同様に実施できる。記憶部113に記憶されている振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22の値は、ステップS600の処理によって更新される。
【0224】
バルブ制御時のステップS601~S608の処理は、第3の実施例のステップS501~S508と同じである。
次に、開度実測値生成部120cは、角度算出部118bによって算出された角度αに基づいてバルブ3の現在の開度実測値PVを求める(図33ステップS609)。開度実測値PVは、角度αと開度実測値PVとの既知の関係に基づいて求めることができる。
【0225】
制御信号生成部121は、上位装置4から与えられたバルブ3の開度設定値SPと開度実測値PVとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成して電空変換部13に出力する(図33ステップS610)。こうして、バルブ3の開度を制御することができる。
以上のステップS601~S610の処理が、例えばプラントの運転が停止するまで(図33ステップS611においてYES)、繰り返し実施される。
【0226】
第3の実施例で説明したとおり、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能な場合、MRセンサ10-1によって得られた角度αE=αE1を最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-2によって得られた角度αE=αE2を最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αEに基づいて最終的な角度αを算出するかは、適用するポジショナによって異なる。
【0227】
なお、第3、第4の実施例では、MRセンサの個数を2個としたが、MRセンサの個数を3個以上としてもよい。
【0228】
第1~第4の実施例で説明した記憶部113と振幅算出部114,114a~114cと初期設定部115,115a~115cと判定部116,116b,117,117bと角度算出部118,118bと制御信号生成部119,121と開度実測値生成部120,120cとは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図34に示す。
【0229】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、センサ出力測定部111,111-1,111-2,112,112-1,112-2と電空変換部13等が接続される。本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1~第4の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明は、MRセンサを使用する角度検出装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0231】
1,1b…角度検出装置、1a,1c…ポジショナ、2…操作器、3…バルブ、4…上位装置、10,10-1,10-2…MRセンサ、11,11a~11c…データ処理制御部、12…磁界発生部、13…電空変換部、14…空気圧増幅部、100,101…ブリッジ回路、110…電源、111,111-1,111-2,112,112-1,112-2…センサ出力測定部、113…記憶部、114,114a~114c…振幅算出部、115,115a~115c…初期設定部、116,116b,117,117b…判定部、118,118b…角度算出部、119,121…制御信号生成部、120,120c…開度実測値生成部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図39