(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158982
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】調剤業務支援システム及び調剤業務支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20241031BHJP
G16H 40/20 20180101ALI20241031BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074673
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】家田 啓史
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA02
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】より適切なタイミングでの調剤順を提案可能な調剤業務支援システム及び調剤業務支援プログラムを提供する。
【解決手段】調剤業務支援システム10は、受付処理部111と、決定処理部112と、を備える。前記受付処理部111は、電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能に構成されている。前記決定処理部112は、複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能な受付処理部と、
複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する決定処理部と、を備える、
調剤業務支援システム。
【請求項2】
前記決定処理部は、前記判定条件に従って所定タイミング以降に調剤可能な後処理対象の前記処方箋を特定し、前記後処理対象については、前記調剤順を前記後処理対象以外よりも下位に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する、
請求項1に記載の調剤業務支援システム。
【請求項3】
前記決定処理部は、前記処方箋の内容に基づいて先行処理対象の前記処方箋を特定し、前記先行処理対象については、前記調剤順を前記先行処理対象以外よりも優先的に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項4】
前記判定条件は、前記処方箋の受け付けから前記服薬指導までの時間、前記服薬指導から前記薬品の受け渡しまでの時間、及び、前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間又は距離の実績に関する条件を更に含む、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項5】
前記決定処理部は、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、前記薬品の受け渡しの態様、及び前記実績の少なくとも1つに関する機械学習によって生成される学習済みモデルを使用して、前記判定条件に従って前記調剤順を決定する、
請求項4に記載の調剤業務支援システム。
【請求項6】
前記判定条件は、前記処方箋に従う調剤の内容に関する条件を更に含む、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項7】
前記判定条件は、前記処方箋の受付タイミングに関する条件を更に含む、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項8】
前記決定処理部は、前記複数の処方箋を、前記処方箋の受付タイミングに応じて時間帯ごとにグループに分類し、前記グループごとに前記調剤順を決定する、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項9】
前記判定条件に係る事項の変更、及び更新タイミングの到来の少なくとも一方があると、前記判定条件に従って前記調剤順を自動的に変更する変更処理部を更に備える、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項10】
前記調剤順に従って出力データを出力する出力処理部を更に備える、
請求項1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【請求項11】
電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能な受付ステップと、
複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する決定ステップと、
をコンピューターに実行させるための調剤業務支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調剤業務の一部又は全部を支援する調剤業務支援システム及び調剤業務支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、調剤薬局が、患者が調剤薬局に来局するまでの最も適切なタイミングで当該患者の調剤の準備を行うことを可能にして、調剤薬局における患者の待ち時間を短縮して患者満足度を高めるためのシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記関連技術に係るシステムは、病院来訪等情報取得部と、タイミング等情報取得部と、を備えている。
【0003】
前記システムは、医療機関側に配置された識別情報発信部から近距離無線で発信された識別情報を患者側端末が受信し、前記患者側端末が、前記識別情報の受信又はその有無に関する受信関連情報を生成又は取得するように構成されている。前記病院来訪等情報取得部は、前記受信関連情報に基づいて、患者が医療機関を訪問したこと、患者が医療機関内に所在していること又は患者が医療機関を出たことを検知若しくは取得する。前記タイミング等情報取得部は、前記病院来訪等情報取得部からの情報に基づいて、当該患者が医療機関を出て調剤薬局に来局することが予想される時間若しくは時間帯に関する情報又は調剤薬局が当該患者の調剤を準備すべきタイミングに関する情報であって調剤薬局における患者の待ち時間の短縮に役立つ情報を生成若しくは取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記関連技術に係るシステムでは、例えば、複数の患者が同じタイミングで医療機関を訪問すると、前記複数の患者が実際に薬を受け取るタイミングによらずに、前記複数の患者について提案される(調剤を準備すべき)タイミングが一緒になってしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、より適切なタイミングでの調剤順を提案可能な調剤業務支援システム及び調剤業務支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る調剤業務支援システムは、受付処理部と、決定処理部と、を備える。前記受付処理部は、電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能に構成されている。前記決定処理部は、複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する。
【0008】
本発明の他の局面に係る調剤業務支援プログラムは、受付ステップと、決定ステップと、をコンピューターに実行させるためのプログラムである。前記受付ステップでは、電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能である。前記決定ステップでは、複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より適切なタイミングでの調剤順を提案可能な調剤業務支援システム及び調剤業務支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで調剤順を決定するための判定条件の一例を示す表である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで調剤順を決定する処理の一例を表である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで調剤順を決定する処理の一例を表である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システムで実行される調剤業務支援方法の手順の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。また、下記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることも可能である。
【0012】
[調剤業務支援システム10]
図1に示すように、本発明の実施形態に係る調剤業務支援システム10は、サーバー1、クライアント端末2、及びプリンター3などを備える。前記サーバー1、前記クライアント端末2、及び前記プリンター3は、通信網NT1を介して無線又は有線で通信可能に接続される。前記通信網NT1は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、又はイントラネットなどを含む。また、前記サーバー1には、前記通信網NT1を介して上位システム5が接続される。前記調剤業務支援システム10は、前記サーバー1、前記クライアント端末2、及び前記プリンター3のうちの少なくとも一つについて、複数備えていてもよい。
図1では一例として、前記クライアント端末2は複数(2台)設けられている。
【0013】
前記調剤業務支援システム10のユーザーは、例えば調剤薬局、又は病院などの医療機関における薬剤師、医師、看護士、又は施設管理者などの医療従事者(医療スタッフ)である。本実施形態では一例として、前記調剤業務支援システム10は、調剤薬局で用いられ、当該調剤薬局の薬剤師が前記調剤業務支援システム10のユーザーであることとする。
【0014】
前記調剤業務支援システム10は、医療機関(例えば調剤薬局)においてユーザー(例えば薬剤師)による調剤業務の一部又は全部を支援する機能を有している。本実施形態では特に、前記調剤業務支援システム10は、複数の処方箋内での調剤順を決定し、ユーザーに提示(提案)する機能を有する。つまり、前記調剤業務支援システム10は、例えば、前記調剤薬局が「患者A」の「処方箋A」と、「患者B」の「処方箋B」を受け付けた場合に、「処方箋A」と「処方箋B」のいずれについて調剤を実施すべきか、その順番(調剤順)をユーザーに提示する。これにより、ユーザーにおいては、複数の処方箋(「処方箋A」及び「処方箋B」)内での調剤順を知ることができ、当該調剤順に従って調剤を実施することで、調剤業務の一部が支援されることになる。
【0015】
本開示でいう「処方箋」は、医療機関(例えば病院)によって発行され、医師が患者の疾病等に応じて患者に処方することが必要と判断した、薬品の種類、使用量、及び使用法等を示す文書である。「処方箋」には、薬品名、使用量及び使用方法等の薬品に関する情報の他、患者の氏名及び年齢等の患者に関する情報、当該処方箋の発行元である病院等及び担当医師等に関する情報、及び当該処方箋の発行日及び使用期間等に関する情報などが含まれる。
【0016】
「処方箋」の種類としては、紙媒体(印刷物)の他、電子処方箋等がある。本開示でいう「電子処方箋」は、例えば日本国において導入されている、処方箋情報を電子化した電子的データである。具体的に、「電子処方箋管理サービス」を通して病院等から調剤薬局等に伝達される処方箋情報の電子的データを「電子処方箋」と呼び、医師(歯科医師を含む)等が「電子処方箋管理サービス」に処方箋情報を登録し、薬剤師等が「電子処方箋管理サービス」から処方箋情報を受け取ることで、紙媒体の処方箋を用いなくとも、処方箋情報の伝達が可能となる。さらに、紙媒体の処方箋に関しても、例えば、調剤薬局への処方箋の提出手段として、処方箋の原本を持参(又は郵送)する他、アプリケーションソフト(WEB)、電子メール又はファクシミリ等で、処方箋の画像を調剤薬局に送信する手段等がある。つまり、処方箋の態様としては、処方箋の原本を持参する他、電子処方箋、又はアプリケーションソフト等での処方箋画像の送信などの、複数の態様がある。
【0017】
また、本実施形態において、特に断りがない限り、前記調剤業務支援システム10で支援される「調剤業務」は、前記調剤業務支援システム10のユーザー(薬剤師など)が、処方箋に基づいて、薬品(医薬品)を使用して特定の患者の特定の疾病に対する薬剤を、特定の使用法に適合するように調製し、患者に交付する業務を意味する。具体的に、ユーザーが、処方箋を確認し、薬品を計数又は計量し、調製した上で、患者に薬品を交付するまでの一連の業務を「調剤業務」という。
【0018】
本開示でいう「調製」は、患者の疾病及び状態などに応じて薬品を混合したり、適正な形及び量で準備したりすることを意味する。具体的に、ユーザー(薬剤師など)が、処方箋に従って、複数の薬品の混合又は錠剤の粉砕作業を行うほか、患者が1回に服用する分の薬品だけを分包するなど、患者が薬品を服用しやすくなるための加工を行うことを「調製」という。「調製」には、輸液の混合又は注射薬を融解する作業も含まれる。
【0019】
前記調剤業務支援システム10では、前記サーバー1が、複数の処方箋内での調剤順を決定し、当該調剤順に係る情報を、前記クライアント端末2に表示させるなどして、ユーザーに提示することが可能である。なお、前記クライアント端末2は、前記サーバー1から送信される表示データに基づいて表示画面を制御し、又は前記サーバー1に記憶されている各種のデータを参照して表示画面を制御する。また、前記サーバー1は、ユーザーによる前記クライアント端末2に対する操作入力を受け付け可能である。
【0020】
具体的に、本実施形態では、前記サーバー1及び前記クライアント端末2によりサーバークライアントシステムが構成されており、前記サーバー1が前記クライアント端末2のユーザー操作に応じて表示及び印刷などの各種の処理を実行する場合について説明する。そのため、本実施形態において、以下に説明する「表示」、「操作」、「選択」、及び「入力」等は、前記クライアント端末2を用いて行われるものとして説明する。なお、同様の表示及び操作などが前記サーバー1で行われてもよい。
【0021】
前記上位システム5は、例えば電子カルテシステム、又は薬局におけるレセプトコンピュータシステムなどの医療関連システムである。前記上位システム5は、前記調剤業務支援システム10とは別のシステムであって、前記調剤業務支援システム10と通信により連携可能であればよく、前記調剤業務支援システム10に対して「上位」の関係にあることは必須でない。前記上位システム5は、例えば、患者の疾病情報、診察内容、診断結果、投薬情報、検査結果及び経過等の診療情報を電子的データとして保存した診療データ(診療記録)、薬品の患者への処方又は使用に関する処方データ、及び患者について行われた各種の検査の検査結果に関する検査データなどの入力を受け付け可能である。
【0022】
そして、前記上位システム5は、前記診療データ、前記処方データ及び前記検査データなどを、ユーザー操作に応じて前記サーバー1に入力し、又は予め設定された締め処理時刻などの所定タイミングで自動的に前記サーバー1に入力する。また、前記サーバー1が前記上位システム5から、前記診療データ、前記処方データ及び前記検査データなどを能動的に読み出す構成であってもよい。前記上位システム5は複数設けられてもよく、さらに、複数の前記上位システム5は異なる種類のシステムを含んでもよい。なお、前記診療データ、前記処方データ及び前記検査データの少なくとも一つは、前記クライアント端末2又は前記サーバー1に対するユーザーの操作により、前記調剤業務支援システム10に直接的に入力されてもよい。
【0023】
ところで、関連技術として、調剤薬局が、患者が調剤薬局に来局するまでの最も適切なタイミングで当該患者の調剤の準備を行うことを可能にして、調剤薬局における患者の待ち時間を短縮して患者満足度を高めるためのシステムが提案されている。前記関連技術に係るシステムは、病院来訪等情報取得部と、タイミング等情報取得部と、を備えている。
【0024】
前記関連技術に係るシステムは、医療機関側に配置された識別情報発信部から近距離無線で発信された識別情報を患者側端末が受信し、前記患者側端末が、前記識別情報の受信又はその有無に関する受信関連情報を生成又は取得するように構成されている。前記病院来訪等情報取得部は、前記受信関連情報に基づいて、患者が医療機関を訪問したこと、患者が医療機関内に所在していること又は患者が医療機関を出たことを検知若しくは取得する。前記タイミング等情報取得部は、前記病院来訪等情報取得部からの情報に基づいて、当該患者が医療機関を出て調剤薬局に来局することが予想される時間若しくは時間帯に関する情報又は調剤薬局が当該患者の調剤を準備すべきタイミングに関する情報であって調剤薬局における患者の待ち時間の短縮に役立つ情報を生成若しくは取得する。しかし、前記関連技術に係るシステムでは、例えば、複数の患者が同じタイミングで医療機関を訪問すると、前記複数の患者が実際に薬を受け取るタイミングによらずに、前記複数の患者について提案される(調剤を準備すべき)タイミングが一緒になってしまう場合がある。
【0025】
このような事情に鑑みて、本実施形態に係る前記調剤業務支援システム10は、より適切なタイミングでの調剤順を提案可能なとするための構成を採用する。すなわち、前記調剤業務支援システム10は、
図1に示すように、受付処理部111と、決定処理部112と、を備える。前記受付処理部111は、電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能である。前記決定処理部112は、複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する。前記受付処理部111及び前記決定処理部112の機能の詳細については、「[調剤業務支援方法]」以降で説明する。
【0026】
このような前記調剤業務支援システム10によれば、前記複数の処方箋内での調剤順を、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、及び前記薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む前記判定条件に従って決定することが可能となる。ここで、前記処方箋の態様には、前記電子処方箋を含む前記複数の態様があるので、例えば、当該複数の態様のうちのいずれの態様の処方箋かによって、前記調剤順を異ならせることができる。したがって、例えば、複数の患者が同じタイミングで医療機関を訪問する場合であっても、前記処方箋の態様などによって、前記複数の患者について提案される(調剤を準備すべき)タイミングを異ならせることが可能となる。結果的に、より適切なタイミングでの調剤順を提案可能な前記調剤業務支援システム10及び調剤業務支援プログラムを提供することにある。
【0027】
特に、前記電子処方箋においては、従前の処方箋のように、患者が来局して処方箋を提出する場合と異なり、当該処方箋を受け付けたタイミングは、他の患者に把握されにくい。そのため、処方箋の受付順と前記調剤順とが異なっていても、患者が不満に感じにくい。
【0028】
[クライアント端末2]
前記クライアント端末2は、制御部21、記憶部22、通信I/F23、表示部24、操作部25、及びドライブ装置26などを備えるパーソナルコンピュータである。前記クライアント端末2各々は、前記調剤業務支援システム10が使用される医療機関(本実施形態では調剤薬局)に配置され、ユーザーによって操作される操作端末である。例えば、前記クライアント端末2は、前記医療機関において調剤業務を行う薬剤師などによって使用される。なお、前記クライアント端末2は、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、又はラップトップコンピュータなどの携帯(可搬)型の情報処理装置であってもよい。
【0029】
前記制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びEEPROM(登録商標)などの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の処理を実行させるための制御プログラムなどの情報が予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは揮発性の記憶部、前記EEPROMは不揮発性の記憶部である。前記RAM及び前記EEPROMは、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、前記制御部21は、前記CPUを用いて、前記ROM、前記EEPROM、又は前記記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
【0030】
前記記憶部22は、前記制御部21によって実行される各種の制御プログラム及び各種のデータが記憶されるハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶部である。具体的に、前記記憶部22には、オペレーティングシステム(OS)及びブラウザソフトなどのアプリケーションプログラムが記憶されるプログラム記憶部が含まれる。前記ブラウザソフトは、前記通信網NT1を介して前記サーバー1にアクセスすることにより前記表示部24に各種の操作画面などを表示させると共に、前記操作部25を用いた前記操作画面に対する入力操作を前記サーバー1に伝達するためのアプリケーションソフトウェアである。例えば、前記制御部21は、前記ブラウザソフトにより表示される操作画面の所定位置に、前記サーバー1に対応するURL(Universal Resource Locator)などのアドレス情報が入力された場合に、該アドレス情報に基づいて前記サーバー1にアクセスする。
【0031】
前記通信I/F23は、前記通信網NT1を介して前記サーバー1、及び前記プリンター3などの外部機器との間で、予め定められた通信プロトコルに従って無線又は有線でデータ通信を実行するネットワークカード等を有する通信インターフェースである。
【0032】
前記表示部24は、前記制御部21からの制御指示に従って各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの装置である。例えば、前記制御部21は、前記ブラウザソフトに従って各種の処理を実行することにより、前記サーバー1から受信する表示用データに基づいて、当該表示用データに基づく各種の情報を前記表示部24に表示させる。
【0033】
前記操作部25は、前記クライアント端末2に各種の情報を入力するためにユーザーによって操作される装置である。具体的に、前記操作部25は、前記表示部24に表示される各種の操作画面における入力操作を受け付けるキーボード及びポインティングデバイス(マウス等)を含む。また、前記操作部25は、前記表示部24に表示される各種の操作画面に対するタッチ操作を受け付けるタッチパネル、又は音声認識により各種情報の入力を受け付ける音声入力装置を含んでもよい。そして、前記制御部21は、前記ブラウザソフトに従って各種の処理を実行することにより、前記操作部25に対するユーザー操作を受け付け、当該ユーザー操作の内容を前記サーバー1に入力する。
【0034】
前記ドライブ装置26は、前記OS又は前記ブラウザソフトなどが非一時的に記録されたコンピューター読み取り可能な記録媒体261から前記OS又は前記ブラウザソフトなどを読み取る装置である。前記ドライブ装置26は、前記クライアント端末2に一体化されていてもよいし、前記クライアント端末2に対して取り外し可能に接続されることで前記クライアント端末2に外付けされてもよい。前記記録媒体261は、CD、DVD、BD、又はUSBメモリーなどであり、前記ドライブ装置26は、CDドライブ、DVDドライブ、BDドライブ、又はUSBポートなどである。前記クライアント端末2では、前記制御部21により、前記ドライブ装置26を用いて前記記録媒体261から読み取られた前記OS又は前記ブラウザソフトなどが前記記憶部22の前記プログラム記憶部にインストールされる。
【0035】
具体的に、前記サーバー1は、例えば、HTML(Hyper Text Markup Language)などのWebページ記述言語によって記述されたデータを前記クライアント端末2に送信することにより、前記クライアント端末2の表示部24に各種の画面を表示させる。また、前記クライアント端末2の制御部21は、前記操作部25に対する操作入力に応じて前記サーバー1に操作信号を送信する。
【0036】
[プリンター3]
前記プリンター3は、前記サーバー1又は前記クライアント端末2から前記通信網NT1を介して入力される印刷データに含まれる情報を紙などのシートに記録する印刷処理を実行可能なカラープリンター又はモノクロプリンターなどの画像形成装置である。前記プリンター3各々は、前記クライアント端末2と同様に、前記調剤業務支援システム10が使用される医療機関(本実施形態では調剤薬局)に配置される。前記プリンターは、例えば、前記調剤業務支援システム10(の前記決定処理部112)が決定する、前記複数の処方箋内での調剤順を反映する情報の印刷に用いられる。
【0037】
[サーバー1]
前記サーバー1は、
図1に示すように、制御部11、記憶部12、通信I/F13、表示部14、操作部15、及びドライブ装置16などを備えるコンピューターである。なお、前記サーバー1は、前記調剤業務支援システム10が使用される調剤薬局、又は処方箋の発行元である病院等の医療機関に設置されてもよいし、当該医療機関の外部に設置されてもよい。また、前記サーバー1は、スマートフォン、タブレット端末、又はラップトップコンピュータなどの情報処理装置であってもよい。
【0038】
前記制御部11は、前記制御部21と同様の構成であって、CPU、ROM、RAM、及びEEPROMなどの制御機器を有し、前記CPUを用いて、前記ROM、前記EEPROM、又は前記記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
【0039】
前記記憶部12は、前記制御部11によって実行される各種の制御プログラム及び各種のデータが記憶されるハードディスク又はSSD等の不揮発性の記憶部である。また、前記記憶部12には、プログラム記憶部121、マスター記憶部122、及び情報記憶部123が含まれる。
【0040】
前記プログラム記憶部121は、後述の調剤業務支援方法に係る各種処理を前記制御部11に実行させるための調剤業務支援プログラムなどが記憶される記憶領域である。なお、前記プログラム記憶部121には、オペレーティングシステム(OS)などのプログラムも記憶される。
【0041】
前記マスター記憶部122は、例えば、前記判定条件に関する条件マスター、薬品マスター、患者マスター、及び施設マスターなどの各種のマスター情報が記憶される記憶領域である。前記条件マスターには、前記決定処理部112が調剤順を決定するのに使用する前記判定条件に関する情報が含まれる。前記薬品マスターには、薬品ごとに対応する、薬品の種類、薬品ID(YJコード等を含む)、薬品名、JANコード、RSSコード、薬瓶コード、剤形、単位、比重、配合変化、賦形薬品、注意事項、アレルギー情報、及び添付文書情報などの情報が含まれる。前記患者マスターには、患者ごとに対応する、患者ID、患者名、年齢、性別、既往歴、処方薬履歴、飲酒有無、喫煙有無、家族情報、罹りつけの病院、及び担当医師などの情報が含まれる。前記施設マスターには、処方箋の発行元である病院ID、病院名、及び病院の位置情報などの情報が含まれる。
【0042】
なお、前記マスター記憶部122に記憶されるマスター情報は、例えば前記ドライブ装置16によってコンピューター読み取り可能な記録媒体161から読み取られて、前記記憶部12に記憶される。各種のマスター情報は、前記記憶部12に予め記憶されていてもよいし、前記サーバー1が前記通信網NT1を介して外部装置から受信してもよい。前記制御部11は、前記マスター記憶部122に記憶されている各種のマスター情報を、前記上位システム5若しくはその他のシステムから取得する情報、又は前記ドライブ装置16を用いて記録媒体から読み取られる情報に基づいて、随時更新可能である。また、前記制御部11は、前記サーバー1又は前記クライアント端末2を用いたユーザー操作に応じて各種のマスター情報を編集することも可能である。
【0043】
前記情報記憶部123は、前記受付処理部111が受け付ける処方箋の情報(処方箋情報)、及び前記決定処理部112が決定する調剤順の情報(調剤順情報)などの各種の情報を、前記調剤業務支援システム10が使用される医療機関(本実施形態では調剤薬局)ごとに対応付けて記憶する記憶領域である。
【0044】
具体的に、前記制御部11は、例えば前記複数の処方箋を受け付けると、当該複数の処方箋に関する処方箋情報と、当該複数の処方箋内での調剤順に関する調剤順情報と、を前記情報記憶部123に記憶する。前記処方箋情報及び前記調剤順情報は、調剤薬局ごとに記憶される。なお、調剤業務の完了した処方箋に関する前記処方箋情報及び前記調剤順情報は、前記情報記憶部123から適宜消去されてもよい。
【0045】
前記制御部11は、前記上位システム5若しくはその他のシステムから取得する情報、又は前記サーバー1若しくは前記クライアント端末2にて記録媒体から読み取られる情報に基づいて、前記情報記憶部123内の各種のデータを更新する。さらに、前記制御部11は、前記クライアント端末2又は前記サーバー1に対するユーザーの操作により、前記調剤業務支援システム10に直接的に入力されるデータにより、前記情報記憶部123内の各種のデータを更新することが可能である。すなわち、前記制御部11は、前記サーバー1又は前記クライアント端末2を用いたユーザー操作に応じて前記処方箋情報及び前記調剤順情報等を編集可能である。
【0046】
前記通信I/F13は、前記通信I/F23と同様の構成であって、前記通信網NT1を介して前記クライアント端末2、及び前記プリンター3などの外部機器との間でデータ通信を実行する。前記通信I/F13は、前記上位システム5との間でもデータ通信を行う。
【0047】
前記表示部14は、前記制御部11からの制御指示に従って各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの装置である。前記操作部15は、前記操作部25と同様の構成であって、前記サーバー1に各種の情報を入力するためにユーザーによって操作される装置である。そして、前記制御部11は、前記操作部15に対するユーザー操作を受け付け、当該ユーザー操作の内容に応じて処理を実行する。
【0048】
前記ドライブ装置16は、前記ドライブ装置26と同様の構成であって、前記調剤業務支援プログラムが非一時的に記録されたコンピューター読み取り可能な記録媒体161から前記調剤業務支援プログラムを読み取る装置である。そして、前記サーバー1では、前記制御部11により、前記ドライブ装置16を用いて前記記録媒体161から読み取られた前記調剤業務支援プログラムが前記記憶部12の前記プログラム記憶部121にインストールされる。なお、前記調剤業務支援プログラムは、前記記憶部12に予め記憶されていてもよいし、前記サーバー1が前記通信網NT1を介して外部装置から受信してもよい。
【0049】
ところで、前記サーバー1の前記制御部11は、
図1に示すように、前記受付処理部111、前記決定処理部112、変更処理部113、及び出力処理部114を含む。具体的に、前記制御部11は、前記調剤業務支援プログラムに従って後述の調剤業務支援方法に係る各種の処理を実行することにより、前記受付処理部111、前記決定処理部112、前記変更処理部113、及び前記出力処理部114などの各種の処理部として機能する。すなわち、本実施形態では、前記サーバー1が前記調剤業務支援システム10の主要機能を具現化する。言い換えれば、本実施形態に係る前記調剤業務支援システム10は、前記サーバー1さえ備えていればよく、前記クライアント端末2、及び前記プリンター3などは、構成要素に含まなくてもよい。なお、前記制御部11は、複数のプロセッサーを備え、当該複数のプロセッサーのいずれかが前記各種の処理部として機能してもよい。また、前記各種の処理部の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。
【0050】
また、前記サーバー1の機能の一部又は全部が前記クライアント端末2に設けられることも他の実施形態として考えられる。例えば、前記クライアント端末2に、前記調剤業務支援プログラムの一部又は全部がインストールされており、前記クライアント端末2の前記制御部21が、前記サーバー1から必要な情報を適宜取得して、後述の調剤業務支援方法に係る各種の処理を実行することも考えられる。この場合、前記クライアント端末2が前記調剤業務支援システム10の主要機能を具現化する。さらに、前記調剤業務支援システム10において、前記サーバー1及び前記クライアント端末2が協働して後述の調剤業務支援方法に係る各種の処理を実行することも考えられる。
【0051】
前記受付処理部111は、処方箋を受け付ける受付処理(受付ステップ)を実行する。ここで、処方箋には電子処方箋を含む複数の態様の処方箋が存在するところ、前記受付処理部111は、様々な(複数の)態様の処方箋を受け付け可能に構成されている。前記受付処理部111は、前記調剤業務支援システム10が使用される医療機関(本実施形態では調剤薬局)ごとに、処方箋を受け付ける。つまり、「調剤薬局A」と「調剤薬局B」とで前記調剤業務支援システム10が使用される場合、前記受付処理部111は、「調剤薬局A」に提出される処方箋と、「調剤薬局B」に提出される処方箋とを区別して、処方箋を受け付ける。本実施形態では医療機関ごとに前記クライアント端末2が設置されているので、前記クライアント端末2ごとに、処方箋を受け付けることになる。
【0052】
ここで、前記受付処理部111は、少なくとも処方箋の態様、並びに処方箋の内容(薬品に関する情報、及び患者に関する情報など)を特定可能な状態で、処方箋の受け付けを行う。前記受付処理部111が処方箋を受け付けるに際して、ユーザーが前記クライアント端末2を操作して、処方箋の態様及び内容等を入力してもよいし、例えば、電子処方箋等の電子的データからなる処方箋であれば前記受付処理部111が直接的に当該処方箋の態様及び内容等を取得してもよい。また、前記受付処理部111は、例えば前記上位システム5などから、処方箋の態様及び内容等を取得してもよい。さらに、前記受付処理部111は、処方箋の画像等から、例えばOCR(Optical Character Reader)等により、当該処方箋の内容に関する情報を自動的に取得してもよい。
【0053】
前記決定処理部112は、複数の処方箋内での調剤順を、前記判定条件に従って決定する決定処理(決定ステップ)を実行する。前記判定条件は、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む。例えば、前記調剤薬局が「患者A」の「処方箋A」と、「患者B」の「処方箋B」を受け付けた場合に、前記決定処理部112は、「処方箋A」と「処方箋B」のいずれについて調剤を実施すべきか、その順番(調剤順)を前記判定条件に従って決定する。前記判定条件の詳細については、「[調剤業務支援方法]」以降で説明する。
【0054】
前記変更処理部113は、前記判定条件に係る事項の変更、及び更新タイミングの到来の少なくとも一方があると、前記判定条件に従って前記調剤順を自動的に変更する変更処理(変更ステップ)を実行する。つまり、前記決定処理部112が決定した前記調剤順は不変ではなく、前記判定条件に係る事項(例えば服薬指導の態様、又は薬品の受け渡しの態様など)に変更があれば、前記判定条件に従って自動的に変更される。同様に、前記更新タイミングの到来時にも、前記決定処理部112が決定した前記調剤順は、前記判定条件に従って自動的に変更される。要するに、前記決定処理部112が前記調剤順を決定した根拠が変更された場合などにあっては、前記変更処理部113は、前記調剤順を変更することが可能である。
【0055】
前記出力処理部114は、前記調剤順に従って出力データを出力する出力処理(出力ステップ)を実行する。本開示でいう「出力データ」は、前記調剤順に従って出力されるデータであって、前記出力処理部114は、前記出力データとして、例えば、前記調剤順そのものを出力してもよいし、前記調剤順に従って調剤データ(具体的に調剤業務を指示するデータ)を順次出力してもよい。
【0056】
具体的に、前記出力処理部114は、例えば、前記調剤順そのものを前記出力データとして前記情報記憶部123に出力することにより、前記情報記憶部123に前記調剤順に従って前記出力データを書き込む。さらに、前記出力処理部114は、例えば前記情報記憶部123に記憶されている前記出力データを読み出して、前記調剤順を含む表示画面D1(
図2参照)を生成し、前記表示画面D1を、例えば前記クライアント端末2の前記表示部24等に表示させることにより、前記出力データを出力する。つまり、本実施形態では、前記出力処理に係る「出力」の態様は、メモリー(前記記憶部12)への書き込み、及び前記ユーザーへの提示(詳細には「表示」)を含んでいる。
【0057】
ただし、前記出力処理に係る「出力」の態様は、メモリー(前記記憶部12)への書き込み、及び表示に限らず、例えば、印刷、音声出力、データ出力、他システム(他装置)への送信、データベースへの書き込み、及び前記記憶部12以外のメモリーへの書き込み等を含んでもよい。例えば、前記出力処理部114は、前記情報記憶部123に前記出力データを書き込むだけでもよく、前記表示画面D1を、例えば前記クライアント端末2の前記表示部24等に表示させることは必須ではない。反対に、前記出力処理部114は、前記表示画面D1を、例えば前記クライアント端末2の前記表示部24等に表示させるだけでもよく、前記情報記憶部123に前記出力データを書き込むことは必須ではない。また、前記出力処理部114は、前記調剤業務支援システム10以外の装置(前記上位システム5を含む)に、前記出力データを出力してもよい。また、前記出力処理部114は、例えば前記表示画面D1の印刷により、前記出力データを出力してもよい。この場合、前記出力処理部114は、前記プリンター3に対して前記調剤順を含む印刷データを出力(送信)する。
【0058】
さらに、前記出力処理部114は、前記出力データとしての前記調剤データを、前記調剤業務の少なくとも一部を実行する調剤機器に出力してもよい。すなわち、前記出力処理部114による前記出力データの出力先は、前記調剤機器を含んでいてもよい。この場合、前記調剤機器は、前記調剤データ(前記出力データ)に従って、前記調剤業務の一部を実行することが可能である。
【0059】
[調剤業務支援方法]
以下、前記サーバー1の前記制御部11によって実行される前記調剤業務支援方法の一例について説明する。
【0060】
前記制御部11は、前記調剤業務支援プログラムを実行させるための予め設定された特定の開始操作が前記クライアント端末2に対して行われた場合に、前記調剤業務支援方法に係る各種の処理を実行する。なお、前記制御部11は、複数の前記クライアント端末2において前記特定の開始操作が行われた場合には、当該クライアント端末2各々に対応して前記調剤業務支援方法を略並行して実行することが可能である。また、前記調剤業務支援方法は、当該調剤業務支援方法の実行中であっても前記クライアント端末2に対する特定の終了操作に応じて終了することがある。なお、本発明は、前記サーバー1のようなコンピューターによって前記調剤業務支援方法の一部又は全部の処理を実行する、方法(調剤業務支援方法)の発明として捉えてもよい。
【0061】
ここで、前記開始操作は、前記サーバー1に対する前記クライアント端末2の接続(アプリケーションソフトウェアの起動)、並びにユーザーID及びパスワードの入力を伴うログインなどを含む。一方、前記終了操作は、ログアウト、及び前記サーバー1と前記クライアント端末2との間の接続切断などを含む。
【0062】
また、本実施形態に係る前記調剤業務支援方法においては、前記サーバー1の前記制御部11は、基本的に、前記クライアント端末2の前記表示部24に表示される画面(表示画面D1)により、前記調剤順をユーザーに提示する。本開示でいう「画面」は、前記表示部24(又は前記表示部14)等に表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト、及び動画などを含む。前記表示部24に表示される主な画面としては、
図2に示す前記表示画面D1の他に、ホーム画面などがある。本実施形態では一例として、前記サーバー1の前記制御部11は、ユーザー操作に応じて、前記ホーム画面から前記表示画面D1などへ遷移可能に構成される。
【0063】
すなわち、前記開始操作により、まず前記クライアント端末2の前記表示部24には、前記ホーム画面が表示される。そして、前記ホーム画面において、特定の操作がされると、前記ホーム画面から、当該クライアント端末2が設置されている調剤薬局における前記調剤順等を含む前記表示画面D1に遷移する。前記表示部24に表示される各種の操作画面(前記表示画面D1を含む)では、前記操作部25がユーザーの操作が受け付ける。
【0064】
以下では一例として、前記クライアント端末2は、前記操作部25に含まれるマウスにて、前記表示部24に表示される各種の操作画面における入力操作を受け付けることとする。つまり、例えば前記変更処理部113に前記変更処理を実行させる際においても、ユーザーは、前記操作部25に含まれるマウスを操作することで前記判定条件に係る事項を変更する所定の操作(ユーザー操作)を行う。
【0065】
なお、ソートボタンK1等の画面中のボタンは、前記表示部24に表示される画面中に含まれるオブジェクトであって、当該ボタンの操作は、当該ボタンを選択するような前記操作部25の操作である。例えば、ユーザーは、前記操作部25に含まれるマウスを操作し、前記表示画面D1中の前記ソートボタンK1にカーソルを合わせてクリックするなどの操作を前記操作部25で行うことで、前記ソートボタンK1を操作できる。また、
図2などの前記表示部24に表示される画面を示す図面において、領域を表す一点鎖線、引出線及び参照符号は、説明のために付しているに過ぎず、実際に前記表示部24に表示される訳ではない。
【0066】
[表示画面D1]
ここではまず、前記クライアント端末2の前記表示部24に表示される前記表示画面D1について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0067】
前記表示画面D1は、ヘッダ領域R1と、リスト領域R2と、操作領域R3と、を含む。前記ヘッダ領域R1には、現在の日時(日付及び時刻)、前記クライアント端末2が設置されている調剤薬局の名称(
図2の例では「ABC調剤薬局」)などが表示される。
【0068】
前記リスト領域R2には、前記受付処理部111が受け付けた処方箋のリストが表示される。つまり、前記リスト領域R2には、前記調剤薬局に提出された処方箋に関する情報が、一覧表示される。具体的に、前記リスト領域R2には、前記受付処理部111が受け付けた処方箋であって、かつ調剤業務が未だ開始されていない処方箋に関する情報が、表形式で表示される。前記リスト領域R2には、例えば、受付順、受付時刻、調剤順、患者名、処方箋タイプ(処方箋の態様)、来局の有無、薬品の受け渡しの態様、服薬指導の態様、及び調剤ボリュームなどを含む複数の項目が、処方箋ごとに表示される。
【0069】
図2の例では、前記リスト領域R2に、「患者A」~「患者G」の7名の患者から受け付けた7つの処方箋に関する情報が一覧表示されている。ここでは、「患者A」、「患者B」、「患者C」、「患者D」、「患者E」、「患者F」、「患者G」の順で、前記受付処理部111が処方箋を受け付けた場合を想定しており、前記受付順は、「患者A」の処方箋が「1」、「患者B」の処方箋が「2」、…「患者G」の処方箋が「7」となる。一方、前記調剤順に関しては、前記決定処理部112が前記判定条件に従って決定しているため、「患者A」の処方箋が「7」、「患者B」の処方箋が「1」、…「患者G」の処方箋が「3」となる。つまり、前記調剤順は、前記受付順と必ずしも一致するのではなく、前記決定処理部112によって前記受付順とは切り離して決定されることになる。
【0070】
図3に示す前記表示画面D1は、
図2と同じく「患者A」~「患者G」の7名の患者から受け付けた7つの処方箋に関する情報を、前記リスト領域R2において、前記調剤順に従って並べた例である。つまり、
図3の例では、上から「患者B」、「患者D」、「患者G」、「患者F」、「患者C」、「患者E」、「患者A」の順で、処方箋に関する情報が表示されている。
【0071】
前記操作領域R3には、前記ソートボタンK1、印刷ボタンK2、及び閉じるボタンK3などが表示される。前記ソートボタンK1は、前記リスト領域R2に表示される処方箋の前記リストのソート(並べ替え)を行うための操作を受け付ける。一例として、前記ソートボタンK1が操作される度に、前記受付順に基づいて処方箋が並べられた状態(
図2の状態)と、前記調剤順に基づいて処方箋が並べられた状態(
図3の状態)と、が交互に切り替わる。前記印刷ボタンK2は、前記リスト領域R2に表示されている前記リストを、前記プリンター3に印刷させるための操作を受け付ける。前記閉じるボタンK3は、前記表示画面D1を閉じるための操作を受け付ける。
【0072】
なお、
図2及び
図3に示す前記表示画面D1は、前記表示部24に表示される前記表示画面D1の一例に過ぎず、レイアウト、及び表示項目等は適宜変更可能である。
【0073】
[決定処理]
次に、前記決定処理部112が実行する前記決定処理について、
図4~
図6を参照して説明する。すなわち、
図2及び
図3に例示した前記表示画面D1中の前記調剤順は、前記決定処理にて決定される。
【0074】
前記決定処理部112は、前記受付処理部111が受け付けた複数の処方箋内での前記調剤順を、前記判定条件に従って決定する。ここで、前記判定条件は、
図4に例示するように、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む。
図4は、前記判定条件に係る項目を複数の処方箋について例示した表である。前記決定処理部112は、
図4に例示するような項目を前記判定条件に照らすことによって、前記調剤順を決定する。
図4に示す表では、処方箋の態様(「処方箋タイプ」と表記)、服薬指導の態様(「服薬指導」と表記)、及び薬品の受け渡しの態様(「薬受け渡し」と表記)の各々に係る条件を含んでいる。
【0075】
また、前記判定条件は、前記処方箋の受付タイミングに関する条件を更に含む。すなわち、前記決定処理部112は、前記処方箋の受付順を基準として、前記調剤順を決定する。そのため、例えば、前記受付順以外の他の条件が全く同じ複数の処方箋があった場合、これら複数の処方箋内での前記調剤順は、前記受付順に従って決定されることになる。したがって、患者にとって不毛な待ち時間が生じにくい。
【0076】
処方箋の態様には、上述したように、処方箋の原本である紙媒体を持参する態様(
図4では「紙媒体」と表記)の他、電子処方箋、又はアプリケーションソフト等での処方箋画像の送信(
図4では「アプリ送信」と表記)などの、複数の態様がある。ここでは更に、処方箋の態様として、患者本人ではなくヘルパ等が代理で調剤薬局に持ち込む「ヘルパ持込」、及び「施設向け調剤」などがある。そして、紙媒体(処方箋の原本)の持参、又はアプリケーションソフト等での処方箋画像の送信(
図4では「アプリ送信」と表記)などの、複数の態様がある。さらに、処方箋の態様には、患者が来局するか否かも含まれている。ここで、「紙媒体」及び「アプリ送信」に関しては、患者の来局は必ず「あり」であるのに対して、「電子処方箋」に関しては、患者が来局するか否かを選択可能である。
図4の例では、「13」番、「14」番、及び「15」番の処方箋(電子処方箋)に関しては、患者が来局しないため、「患者来局」の項目は「なし」とされている。
【0077】
服薬指導の態様には、患者等が調剤薬局に来局して調剤薬局にて対面で服薬指導を行う態様の他、オンラインでの服薬指導等がある。特に、オンライン服薬指導に関しては、患者が日時を指定して予約することが可能であるため、例えば、
図4に例示するように、当日に行われる「オンライン当日」、翌日に行われる「オンライン翌日」等がある。
図4の例では、服薬指導の態様は、「1」番の処方箋に関しては「来局」、「3」番の処方箋に関しては「オンライン当日」とされている。さらに、「来局」に関しては、来局日時等を指定して予約することも可能である。
【0078】
薬品の受け渡しの態様には、患者等が調剤薬局に来局して調剤薬局にて薬品を直接受け渡す態様の他、駅、コンビニエンスストア又はスーパーマーケット等の任意の場所に設置されたロッカーに配達することで患者がロッカーから薬品を受け取る態様(「ロッカー」と表記)、及び患者に薬品を配達することで受け渡す態様(「配達」と表記)等がある。特に、「ロッカー」に関しては、ロッカーに薬品を配達する日時を指定することが可能であるため、例えば、
図4に例示するように、当日に配達される「ロッカー/配達当日」、翌日に配達される「ロッカー/配達翌日」等がある。
図4の例では、薬品の受け渡しの態様は、「1」番の処方箋に関しては「来局」、「5」番の処方箋に関しては「ロッカー/配達翌日」とされている。さらに、「来局」に関しては、来局日時等を指定して予約することも可能である。
【0079】
また、本実施形態では、前記判定条件は、前記処方箋の受け付けから前記服薬指導までの時間、前記服薬指導から前記薬品の受け渡しまでの時間、及び、前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間又は距離の実績に関する条件を更に含む。すなわち、前記判定条件は、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様に係る条件に加えて、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでの各段階に要する時間について過去の実績(例えば統計値)に関する条件を更に含んでいる。
【0080】
前記処方箋の受け付けから前記服薬指導までの時間の実績は、例えば、
図4に例示するように、「服薬指導」欄の「Time」として表記される。また、前記服薬指導から前記薬品の受け渡しまでの時間の実績は、例えば、
図4に例示するように、「薬受け渡し」欄の「Time」として表記される。前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間(又は距離)の実績は、
図4に例示するように、「過去来局ペース」欄の「Time」として表記される。前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間は、例えば、患者の移動手段(徒歩/電車/車等)によっても変化する。これら時間に関する実績は、患者の行動履歴、前記処方箋の発行元である病院の立地、及び前記薬品の受け渡し場所である調剤薬局の立地等によって異なる。
【0081】
このように、前記判定条件が、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでの各段階に要する時間の実績に関する条件を含むことにより、例えば、いつも到着が早い患者の処方箋ほど前記調剤順を上位とすることで、患者の待ち時間の短縮を図ることが可能である。反対に、例えば、いつも到着が遅い患者の処方箋ほど前記調剤順を下位とすることで、他の患者の待ち時間の短縮を図ることが可能である。
【0082】
また、本実施形態では、前記決定処理部112は、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、前記薬品の受け渡しの態様、及び前記実績の少なくとも1つに関する機械学習によって生成される学習済みモデルを使用して、前記判定条件に従って前記調剤順を決定する。すなわち、例えば、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでの各段階に要する時間等の実績に関して、単なる統計ではなく、機械学習(Machine Learning)によって精度よく推定することにより、各患者、又は各調剤薬局により適した、前記調剤順を求めることが可能となる。
【0083】
さらに、前記判定条件は、前記処方箋に従う調剤の内容に関する条件を更に含んでもよい。ここでいう「調剤の内容」は、例えば、処方対象の薬品について、PTP(press through pack)包装の薬品のみである場合、外用薬のピッキングのみである場合、分包のみである場合、又は高価な薬品の有無等を含む。つまり、例えば、調剤業務の負荷が大きい処方箋ほど、前記調剤順を上位とすることで、患者の待ち時間の短縮を図ることが可能である。反対に、例えば、調剤業務の負荷が小さい処方箋ほど、前記調剤順を下位とすることで、他の患者の待ち時間の短縮を図ることが可能である。
【0084】
ここにおいて、前記決定処理部112は、例えば、処方箋ごとに、前記判定条件に係る各項目を指数化し、当該指数の合計値に基づいて、複数の処方箋内での前記調剤順を決定する。基本的には、前記指数は、前記調剤順を上位とすべき場合ほど小さくなり、前記調剤順を下位とすべき場合ほど大きくなる。
【0085】
一例として、処方箋の態様に関しては、「紙媒体」の場合の指数を「1」、「アプリ送信」、「電子処方箋」及び「ヘルパ持込」の場合の指数を「2」、「施設向け調剤」の場合の指数を「4」とする。また、服薬指導の態様に関しては、「来局」の場合の指数を「1」、「オンライン当日」の場合の指数を「5」、「オンライン翌日」の場合の指数を「100」とする。また、薬品の受け渡しの態様に関しては、即時の場合の指数を「0」、30分未満の場合の指数を「1」、30分以上1時間未満の場合の指数を「2」、1時間以上2時間未満の場合の指数を「3」、2時間以上当日内の場合の指数を「4」、翌日以降の場合の指数を「10」とする。
【0086】
前記決定処理部112は、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでの各段階に要する時間(又は距離)についての実績、及び前記処方箋に従う調剤の内容(前記調剤ボリューム)に関しても、指数を求める。一例として、「過去来局ペース」に関しては、3分未満の場合の指数を「0」、3分以上10分未満の場合の指数を「1」、10分以上30分未満の場合の指数を「2」、30分以上1時間未満の場合の指数を「3」、1時間以上(つまり来局後対応)場合の指数を「4」とする。また、「調剤ボリューム」に関しては、PTP包装の薬品のみ又は外用薬のピッキングのみである場合の指数を「0」、分包のみの場合の指数を「1」、それ以外の場合の指数を「10」とする。
【0087】
さらに、前記決定処理部112は、例えば、服薬指導の態様、薬品の受け渡しの態様、及び前記処方箋に従う調剤の内容(前記調剤ボリューム)に関しては、「Time」として時間換算した値も併せて求める。
【0088】
そして、前記決定処理部112は、処方箋ごとに、前記指数及び前記時間換算した値の各々の合計値を、「調剤換算」として演算する。このようにして求められる「調剤換算」の前記指数及び前記時間換算した値を用いて、前記決定処理部112は、前記調剤順を決定することが可能である。基本的には、前記指数が小さいほど前記調剤順が上位(先)となるように、前記決定処理部112は前記判定条件に従って前記調剤順を決定する。
【0089】
ただし、「調剤換算」の前記指数が「100」以上の処方箋については、前記決定処理部112は、前記調剤順には含めず、後処理対象とする除外処理を実行してもよい。この場合、「調剤換算」の指数が「100」未満であって、かつ即時調剤業務を開始する処方箋以外の複数の処方箋を対象に、前記決定処理部112が、前記調剤順を決定することになる。
【0090】
つまり、前記決定処理部112は、前記判定条件に従って所定タイミング以降に調剤可能な前記後処理対象の前記処方箋を特定し、前記後処理対象については、前記調剤順を前記後処理対象以外よりも下位に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する。前記所定タイミングは、例えば、調剤薬局の営業終了時刻、午前診終了時刻、又は日付が変わるタイミング(24時)などである。要するに、前記決定処理部112は、前記指数が「100」以上の処方箋については、例えば、調剤薬局の営業終了時刻(所定タイミング)以降に調剤を行うこととして、前記調剤順には含めないことが可能である。このような前記後処理対象を設定することによって、後回しにできる処方箋は後回しにし、その他の処方箋について優先的に調剤を行うことが可能となる。
【0091】
以上説明したように、前記決定処理部112は、処方箋が多様な形式でランダムに取得されるとしても、例えば、
図4に示すような一覧表を作成し、処方箋ごとに前記判定条件に係る項目についての前記指数を演算する。その際、例えば、処方箋の態様などの入力すべき情報に関しては、例えば、前記クライアント端末2に表示される前記表示画面D1において、プルダウンリスト等で容易に選択、入力可能であることが好ましい。前記服薬指導の態様、及び前記薬品の受け渡しの態様についても同様である。
【0092】
さらに、これらとは別に、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでの各段階に要する時間(又は距離)の実績については、前記決定処理部112は、例えば、患者の過去の行動履歴等から自動的に前記指数を演算することが可能である。つまり、病院の立地、及び調剤薬局の立地などを考慮して、前記処方箋の受け付けから前記薬品の受け渡しまでのタイムラグのマスター情報を作成し、当該マスター情報に照らして前記指数を求めることが可能である。おおよそのタイムラグに関して、前記クライアント端末2に表示される前記表示画面D1において、プルダウンリスト等で容易に選択、入力可能であってもよい。
【0093】
そして、前記決定処理によって決定される前記調剤順は、例えば、前記出力処理部114にて出力される。前記出力処理部114は、例えば、前記調剤順を含む前記表示画面D1を生成し、前記表示画面D1を、例えば前記クライアント端末2の前記表示部24等に表示させることにより、前記出力データを出力する。これにより、ユーザーにおいては、例えば、前記表示画面D1上で、前記判定条件に係る項目の入力だけでなく、当該判定条件に従って決定される前記調剤順を確認することが可能となる。
【0094】
また、例えば、調剤業務が混み合っている状況においては、調剤薬局の営業終了時刻等の前記所定タイミング以降で間に合う処方箋に関しては、前記調剤順には含めず前記後処理対象として後回しにすることも可能である。一例として、服薬指導は当日に行うものの、患者の申し出により薬品の受け渡しが翌日である場合等、調剤を急がない場合には、前記後処理対象とすることが有用である。
【0095】
ここで、前記出力処理部114が、前記出力データとしての前記調剤データを前記調剤機器に出力する場合、前記後処理対象となる処方箋については、前記所定タイミングまで前記調剤データをプールし、前記所定タイミングの経過後に一括して出力してもよい。これにより、前記後処理対象(「バッチ対象」ともいう)の処方箋に関しては、一括して後回しにして処理することが可能となる。
【0096】
ところで、調剤の内容(前記調剤ボリューム)に関しては、前記調剤順を決定するための前記判定条件として使用しなくてもよい。この場合でも、前記調剤ボリュームは、例えば、当該処方箋の調剤に要する概算時間の算出に使用したり、前記調剤順に含まれる全ての処方箋の調剤が完了するまでの概算時間の算出に使用したりすることもできる。算出される概算時間は、ユーザー又は患者に対して提示されてもよい。さらに、前記調剤ボリュームは、前記調剤順を検討する際の参考情報として提示されてもよい。
【0097】
次に、前記決定処理部112が行う前記決定処理の具体例を示す。
【0098】
ここで、前記決定処理部112は、前記複数の処方箋を、前記処方箋の受付タイミングに応じて時間帯ごとにグループに分類し、前記グループごとに前記調剤順を決定する。一例として、9時台(9:00~9:59)、10時台(10:00~10:59)、・・・のように、1時間ごとに、前記処方箋の受け付けタイミングを前記グループに分類し、前記決定処理部112は、9時台の前記グループに含まれる複数の処方箋内で前記調剤順を決定する。これにより、時間帯ごとに前記調剤順が決定されることになり、次の時間帯に受け付けた処方箋の方が先に調剤されるような事態を回避できる。
【0099】
図5は、
図2及び
図3に示した前記表示画面D1で示したのと同じ、9時台に受け付けた「患者A」~「患者G」の7名の患者から受け付けた7つの処方箋について、前記調剤順を決定する処理を例示している。前記決定処理部112は、例えば「患者A」について、過去に「患者A」から「電子処方箋」を受け付けた際の、処方箋の受け付けから薬品の受け渡しまでに要した時間を、過去の実績から自動的に演算する。当該時間を考慮し、前記決定処理部112は、「患者A」の処方箋について、「調剤換算」の前記指数は「110」となり、前記調剤順を最下位である「7」とする。
【0100】
すなわち、
図5の例では、「患者A」の処方箋については、前記決定処理部112は、処方箋の態様の指数を「0」、服薬指導の態様の指数を「100」、薬品の受け渡しの態様の指数を「10」、前記過去来局ペースの指数を「0」、前記調剤ボリュームの指数を「0」と演算する。そのため、前記決定処理部112は、「患者A」の処方箋について、これら5項目の指数の合計(0+100+10+0+0)から、「調剤換算」の前記指数を「110」と演算する。同様に、前記決定処理部112は、「調剤換算」の前記指数を、「患者B」については「3」、「患者C」については「7」、「患者D」については「4」、「患者E」については「5」、「患者F」については「4」、「患者G」については「3」と演算する。
【0101】
ここで、「調剤換算」の前記指数は、「患者B」と「患者G」とのいずれについても「3」であるものの、受付時刻が早い「患者B」の方が「患者G」よりも前記調剤順が優先される。また、「調剤換算」の前記指数が「3」の次点の「4」である処方箋として、「患者D」と「患者F」とがある。「患者D」の「調剤換算」の前記指数は「4」であるものの、「患者G」と比較して受付時刻が早く、かつ処方箋の態様が「アプリ送信」であって来局前に処方箋情報が調剤薬局に届いているため、処方箋の態様が「紙媒体」である「患者G」よりも「患者D」の前記調剤順が優先される。また、同じく「調剤換算」の前記指数が「4」である「患者F」については、処方箋の態様が「電子処方箋」であるものの、「患者G」と比較して受付時刻が1分早いだけであって、かつ「患者G」が「紙媒体」の処方箋を持参して来局しているので、「患者F」よりも「患者G」の前記調剤順が優先される。前記決定処理部112は、基本的には「調剤換算」の前記指数が小さい順としつつ、このような種々の条件(前記判定条件)を総合的に勘案して並び替えを行うことで、「患者B」、「患者D」、「患者G」、「患者F」、「患者C」、「患者E」、「患者A」、との前記調剤順を算出する。
【0102】
ここで、前記決定処理部112は、例えば、前記服薬指導の態様が翌日(以降)、又は前記薬品の受け取りの態様が、ロッカー又は配達等である処方箋については、前記後処理対象(前記バッチ対象)として、前記調剤順から除外してもよい。
図5の例では、「患者A」及び「患者E」は、前記薬品の受け取りの態様が配達又はロッカーであるので、前記後処理対象に当てられる。そして、前記後処理対象である「患者A」と「患者E」とを比較すると、「患者A」の方が受付時刻は早いものの、「患者A」の前記薬品の受け取りの態様が配達であるのに対し、「患者E」の前記薬品の受け取りの態様が当日のロッカーであることから、前記調剤順は「患者A」よりも「患者E」が優先される。その結果、「患者E」の処方箋についての前記調剤順が「6」となり、「患者A」の処方箋についての前記調剤順が「7」となる。
【0103】
図6には、
図5とは別の例であって、9時台に受け付けた「患者A」~「患者H」の8名の患者から受け付けた8つの処方箋について、前記調剤順を決定する処理を例示している。前記決定処理部112は、例えば、前記薬品の受け取りの態様が、ロッカー又は配達等である処方箋については、前記後処理対象(前記バッチ対象)として、前記調剤順から除外してもよい。
【0104】
図6の例では、「患者A」、「患者D」、「患者F」及び「患者H」は、前記薬品の受け取りの態様が配達である。その中でも翌日の配達となる「患者D」及び「患者H」については、前記後処理対象に当てられた上で、受付時刻が早い「患者D」は「患者H」よりも前記調剤順が優先される。一方、当日の配達となる「患者A」及び「患者F」については、「患者A」の前記服薬指導の態様が当日のオンラインであるのに対し、「患者F」の前記服薬指導の態様が来局であることから、前記調剤順は「患者A」よりも「患者F」が優先される。
【0105】
その他の患者(患者B,C,E,G)は、いずれも前記薬品の受け取りの態様が来局であるので、前記薬品の受け取りの態様以外の条件に基づいて、前記調剤順が決定される。例えば、「患者B」及び「患者C」は前記服薬指導の態様が翌日のオンラインであるから、前記服薬指導の態様が当日のオンライン又は来局である「患者E」及び「患者G」よりも前記調剤順が下位になる。さらに、「患者E」については、「患者G」と比較して受付時刻が早く、かつ処方箋の態様が「アプリ送信」であって来局前に処方箋情報が調剤薬局に届いているため、処方箋の態様が「紙媒体」である「患者G」よりも「患者E」の前記調剤順が優先される。このような種々の条件(前記判定条件)を総合的に勘案して、前記決定処理部112は、「患者E」、「患者G」、「患者F」、「患者A」、「患者B」、「患者C」、「患者D」、「患者H」、との前記調剤順を算出する。
【0106】
また、慢性長期の患者(継続患者であり、処方変更がほぼないと判断される患者)など、ユーザー(薬剤師)の判断により、処方箋を受け付け後、前記服薬指導前に、先行調剤が許容されるケースがある。このようなケースに対応するべく、前記決定処理部112は、先行調剤の登録を行うことで、服薬指導(又は服薬指導の予約)の有無にかかわらず、直ちに調剤を開始させることが可能である。これにより、このような患者に対しては、来局した患者と同等の扱いで、前記調剤順が優先的に設定されることになる。
【0107】
このように、前記決定処理部112は、前記処方箋の内容に基づいて先行処理対象の前記処方箋を特定し、前記先行処理対象については、前記調剤順を前記先行処理対象以外よりも優先的に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する。要するに、前記決定処理部112は、前記後処理対象(前記バッチ対象)の処方箋だけでなく、前記先行処理対象の処方箋についても、前記調剤順から除外することが可能である。その結果、前記先行処理対象の処方箋については、例外的に、優先して調剤を行うことが可能となる。
【0108】
ただし、このような患者の処方箋については、前記決定処理部112が、前記調剤順を決定するに際して、前記薬品の受け渡しの態様の影響が大きくなる。例えば、前記薬品の受け渡しの態様が「翌日配達」のように急がない態様であれば、前記決定処理部112は、当該処方箋を前記後処理対象(前記バッチ対象)としてもよい。
【0109】
また、
図5及び
図6に示す前記指数等は、前記調剤順を決定するための中間データであって、ユーザーに対して提示されることは必須ではないが、例えば、
図2及び
図3に示すような前記表示画面D1中に表示されてもよい。これにより、ユーザーにおいては、前記決定処理部112によって決定された前記調剤順の根拠を知ることができ、当該調剤順に納得がいきやすくなる。
【0110】
前記判定条件は、上述した条件に限らず、例えば、患者の属性(年齢及び性別等)天候、気温、季節、及び調剤の込み具合などに関する条件を含んでもよい。
【0111】
[変更処理]
前記決定処理によって決定された前記調剤順は、前記判定条件に係る事項に変更があれば、前記判定条件に従って自動的に変更される。同様に、前記更新タイミングの到来時にも、前記調剤順は、前記判定条件に従って自動的に変更される。
【0112】
前記更新タイミングは、例えば、一定時間(一例として5分)間隔のタイミング、調剤の開始待ちが一定数(一例として10)以上になったタイミング、又は定時などである。すなわち、前記変更処理部113は、前記指数を再計算し、それに基づいて前記調剤順を随時更新することになる。
【0113】
また、前記変更処理部113は、例えば、前記クライアント端末2に対するユーザーの操作に応じて、前記調剤順を変更可能であってもよい。この場合、ユーザーにおいては、前記決定処理部112によって決定された前記調剤順を任意に変更することが可能となる。
【0114】
[フローチャート]
図7を参照しつつ、前記調剤業務支援方法の主たる処理の手順の一例について説明する。
【0115】
<ステップS1>
ステップS1において、前記制御部11の前記受付処理部111は、前記処方箋を受け付けたか否かを判断する。前記受付処理部111は、前記電子処方箋を含む様々な態様の処方箋を受付可能であるため、いずれかの態様の処方箋を受け付けると、前記処方箋を受け付けたと判断し(S1:Yes)、処理をステップS2に移行する。一方、前記処方箋を受け付けなければ(S1:No)、前記受付処理部111は、前記ステップS1を繰り返し実行する。
【0116】
<ステップS2>
前記ステップS2において、前記制御部11の前記受付処理部111は、処方箋情報など、前記ステップS1で受け付けた前記処方箋に関する情報を取り込む。このとき、当該処方箋の態様、前記服薬指導の態様、前記薬品の受け渡しの態様、及び患者の現在位置など、前記判定条件に関連する項目については、前記受付処理部111が前記処方箋情報と対応付けて取り込む。
【0117】
<ステップS3>
ステップS3では、前記制御部11の前記決定処理部112は、前記ステップS1で受け付けた前記処方箋について、前記判定情報に従って前記調剤順を決定する。このとき、前記決定処理部112は、前記ステップS2で取り込まれた種々の情報に基づいて、当該処方箋についての前記指数を演算し、当該指数から前記調剤順を決定する。
【0118】
<ステップS4>
ステップS4において、前記制御部11の前記出力処理部114は、例えば、前記表示画面D1を前記クライアント端末2の前記表示部24に表示させる。前記出力処理部114は、前記表示画面D1中に、前記ステップS3で決定した前記調剤順を表示することにより、前記調剤順に従って前記出力データの出力を行う。
【0119】
なお、上記のフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0120】
[変形例]
前記調剤業務支援システム10に含まれる複数の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、上記実施形態において、複数の筐体に分散している複数の構成要素(前記制御部11及び前記表示部24など)が、1つの筐体に集約して設けられていてもよい。
【0121】
また、前記表示画面D1等が前記クライアント端末2の前記表示部24に表示されることは必須ではなく、例えば前記サーバー1の前記表示部14に前記表示画面D1等が表示されてもよい。さらに、前記表示画面D1等は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの前記表示部24に限らず、例えばプロジェクターなどの表示装置によって投影表示されてもよい。
【0122】
また、前記判定条件が、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、及び前記薬品の受け渡しの態様の全てに関する条件を含むことは必須ではなく、前記判定条件は、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、及び前記薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含んでいればよい。さらに、前記判定条件が、前記処方箋の受け付けから前記服薬指導までの時間、前記服薬指導から前記薬品の受け渡しまでの時間、及び、前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間又は距離の実績に関する条件を含むことも必須ではない。
【0123】
また、前記判定条件が、前記処方箋に従う調剤の内容に関する条件を含むことは必須ではない。さらに、前記判定条件が、前記処方箋の受付タイミングに関する条件を更に含むことも必須ではない。
【0124】
また、前記決定処理部112が、前記判定条件に従って所定タイミング以降に調剤可能な後処理対象の前記処方箋を特定し、前記後処理対象については、前記調剤順を前記後処理対象以外よりも下位に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行することは必須ではない。
【0125】
また、前記決定処理部112が、前記処方箋の内容に基づいて先行処理対象の前記処方箋を特定し、前記先行処理対象については、前記調剤順を前記先行処理対象以外よりも優先的に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行することは必須ではない。
【0126】
また、前記決定処理部112が、処方箋の態様、服薬指導の態様、薬品の受け渡しの態様、及び前記実績の少なくとも1つに関する機械学習によって生成される学習済みモデルを使用して、前記判定条件に従って前記調剤順を決定することは必須ではない。
【0127】
また、前記決定処理部112が、前記複数の処方箋を、前記処方箋の受付タイミングに応じて時間帯ごとにグループに分類し、前記グループごとに前記調剤順を決定することは必須ではない。
【0128】
また、前記調剤業務支援システム10が、前記変更処理部113を備えることは必須ではなく、前記出力処理部114を備えることも必須ではない。前記変更処理部113及び前記出力処理部114の少なくとも一方は、適宜省略されてもよい。
【0129】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0130】
<付記1>
電子処方箋を含む複数の態様の処方箋を受付可能な受付処理部と、
複数の処方箋内での調剤順を、処方箋の態様、服薬指導の態様、及び薬品の受け渡しの態様の少なくとも1つに関する条件を含む判定条件に従って決定する決定処理部と、を備える、
調剤業務支援システム。
【0131】
<付記2>
前記決定処理部は、前記判定条件に従って所定タイミング以降に調剤可能な後処理対象の前記処方箋を特定し、前記後処理対象については、前記調剤順を前記後処理対象以外よりも下位に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する、
付記1に記載の調剤業務支援システム。
【0132】
<付記3>
前記決定処理部は、前記処方箋の内容に基づいて先行処理対象の前記処方箋を特定し、前記先行処理対象については、前記調剤順を前記先行処理対象以外よりも優先的に設定するか、又は前記調剤順に含めない除外処理を実行する、
付記1又は2に記載の調剤業務支援システム。
【0133】
<付記4>
前記判定条件は、前記処方箋の受け付けから前記服薬指導までの時間、前記服薬指導から前記薬品の受け渡しまでの時間、及び、前記処方箋の発行元若しくは患者の現在位置から前記薬品の受け渡し場所までの移動時間又は距離の実績に関する条件を更に含む、
付記1~3のいずれかに記載の調剤業務支援システム。
【0134】
<付記5>
前記決定処理部は、前記処方箋の態様、前記服薬指導の態様、前記薬品の受け渡しの態様、及び前記実績の少なくとも1つに関する機械学習によって生成される学習済みモデルを使用して、前記判定条件に従って前記調剤順を決定する、
付記4に記載の調剤業務支援システム。
【0135】
<付記6>
前記判定条件は、前記処方箋に従う調剤の内容に関する条件を更に含む、
付記1~5のいずれかに記載の調剤業務支援システム。
【0136】
<付記7>
前記判定条件は、前記処方箋の受付タイミングに関する条件を更に含む、
付記1~6のいずれかに記載の調剤業務支援システム。
【0137】
<付記8>
前記決定処理部は、前記複数の処方箋を、前記処方箋の受付タイミングに応じて時間帯ごとにグループに分類し、前記グループごとに前記調剤順を決定する、
付記1~7のいずれかに記載の調剤業務支援システム。
【0138】
<付記9>
前記判定条件に係る事項の変更、及び更新タイミングの到来の少なくとも一方があると、前記判定条件に従って前記調剤順を自動的に変更する変更処理部を更に備える、
付記1~8のいずれかに記載の調剤業務支援システム。
【0139】
<付記10>
前記調剤順に従って出力データを出力する出力処理部を更に備える、
付記1~9のいずれかに記載の調剤業務支援システム。