(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158984
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/68 20060101AFI20241031BHJP
E06B 9/11 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E06B9/68 A
E06B9/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074676
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐騎
(72)【発明者】
【氏名】師岡 聖
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042BA00
2E042CA01
2E042CB11
(57)【要約】
【課題】電圧が異なる電源を用いた場合にも、シャッターカーテンが一定の速度で開閉可能な電動シャッター装置を提供する。
【解決手段】直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、電源からDCモータへの電力供給をPWM制御する制御部と、を備える。制御部は、電源の電圧に応じてPWM制御におけるデュ-ティ比を設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、
電源から前記DCモータへの電力供給をPWM制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電源の電圧に応じて前記PWM制御におけるデュ-ティ比を設定する、電動シャッター装置。
【請求項2】
前記電源から給電される電力は、トランスによって変圧される、
請求項1に記載の電動シャッター装置。
【請求項3】
前記シャッターカーテンの開閉に関する異常を検知する異常検知部を有し、
前記制御部は、前記異常検知部が前記異常を検知した後に、前記シャッターカーテンの全開状態を検知する上限検知モードを有し、
前記上限検知モードにおいて前記制御部は、前記シャッターカーテンの現在位置と上限位置との距離が所定の閾値以下のときに、前記距離が所定の閾値よりも大きいときの第1速度よりも小さい第2速度で前記シャッターカーテンが開動作する前記デュ-ティ比を設定する、
請求項1または2に記載の電動シャッター装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記シャッターカーテンの開閉動作において、基準電圧時における前記DCモータに給電される基準電圧情報を所定時間毎に格納する格納部と、
前記電源から前記DCモータに給電される電圧情報を用いて前記基準電圧情報を更新する更新部と、
を有し、
更新された前記基準電圧情報に応じて前記デュ-ティ比を設定する、
請求項3に記載の電動シャッター装置。
【請求項5】
前記格納部は、前記電圧情報を前記所定時間毎に格納し、
所定タイミングで得られた前記電圧情報と、前記格納部に過去に格納された前記電圧情報のうち最新の前記電圧情報とを含む第1学習データと、前記第1学習データに含まれる最も古い前記電圧情報よりも過去に格納された複数の前記電圧情報を含む第2学習データとを用い、前記基準電圧情報の更新の要否を判定する判定部を有する、
請求項4に記載の電動シャッター装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記シャッターカーテンの開閉動作開始から第2所定時間経過後であり、前記電圧情報が所定回数以上更新され、前記第1学習データと前記第2学習データとの差分が第2閾値以上のときに、前記基準電圧情報の更新を否と判定する、
請求項5に記載の電動シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動シャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを使用してシャッターカーテンを開閉する電動シャッターが知られている。特許文献1には、モータとして直流電流によって駆動されるDCモータを用いてシャッターカーテンを開閉する電動シャッター装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、再生可能エネルギーの導入のために太陽光発電設備の設置が進められている。DCモータは、電圧が変動すると速度が変動することが一般的に知られている。DCモータの駆動源として、例えば、昼間は108Vの太陽光発電を用い、夜間は100Vの商用電源を用いることがある。電圧が異なる電源を用いた場合には、シャッターカーテンの開閉に速度差が生じる。電動シャッター装置が車庫に設置された場合、昼夜で車の出入り時にシャッターカーテンの開閉時間に差が生じ不都合が生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、以上のような点を考慮してなされたもので、電圧が異なる電源を用いた場合にも、シャッターカーテンが一定の速度で開閉可能な電動シャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、電源から前記DCモータへの電力供給をPWM制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電源の電圧に応じて前記PWM制御におけるデュ-ティ比を設定する、電動シャッター装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るシャッターシステムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るシャッター制御装置の概略構成図である。
【
図4】速度制御処理を実行するための制御部の機能ブロック図である。
【
図5】電圧降下前後のモータ速度の波形を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るPWM制御による速度設定方法のフロー図である。
【
図7】開動作におけるPWM制御による速度設定方法のフロー図である。
【
図8】学習機能におけるデータ更新の要否の判定方法を示すフロー図である。
【
図9】学習機能におけるデータ更新の要否の判定方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の電動シャッター装置の実施の形態を、
図1から
図9を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺等を異ならせている。
【0009】
図1に示すように、シャッターシステム1は、電動シャッター装置2及び操作装置3を備える。
【0010】
電動シャッター装置2は、建物の窓やドア等の開口部2Aの開放又は閉鎖を行う電動シャッター装置である。電動シャッター装置2は、シャッターカーテン4を備える。電動シャッター装置2は、操作装置3からの操作信号に基づいてシャッターカーテン4を開閉することによって開口部2Aを開放又は閉鎖することができる。
【0011】
操作装置3は、操作対象である電動シャッター装置2に有線又は無線で接続され、電動シャッター装置2と相互に通信可能である。操作装置3は、ユーザや作業者が操作可能である。操作装置3は、電動シャッター装置2に対して操作信号を入力する手段を備える、例えばリモコン装置である。
【0012】
操作装置3は、ユーザによっていずれかのスイッチが押下されると、電動シャッター装置2にスイッチに応じた信号である操作信号を出力する。
【0013】
例えば、操作装置3は、開スイッチSWoと、閉スイッチSWcと、停止スイッチSWtと、を有する。操作装置3は、開スイッチSWoが操作されると、シャッターカーテン4の開動作を指示する第1の操作信号を電動シャッター装置2に送信する。操作装置3は、閉スイッチSWcが操作されると、シャッターカーテン4の閉動作を指示する第2の操作信号を電動シャッター装置2に送信する。操作装置3は、停止スイッチSWtが操作されると、シャッターカーテン4の開動作又は閉動作の停止を指示する停止信号を電動シャッター装置2に送信する。
【0014】
操作装置3は、ユーザによって所定の操作が行われると、設定信号を電動シャッター装置2に送信する。例えば、所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、一つのスイッチの短押し操作とは異なる操作である。所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、二つ以上のスイッチの同時押し、又は、一つ以上のスイッチの長押しである。
【0015】
所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、二つ以上のスイッチの同時押し、又は、一つ以上のスイッチの長押しに限定されない。例えば、操作装置3は、初期設定ボタンを備えてもよい。所定の操作は、初期設定ボタンの押下操作であってもよい。例えば、初期設定ボタンは、操作装置3の前面に設けられてもよいし、背面に設けられてもよい。初期設定ボタンが操作装置3の背面に設けられる場合には、例えば、初期設定ボタンは、背面カバーに覆われており、背面カバーを取り外すことにより操作可能となる。初期設定ボタンは、背面カバーが取り外されると露出する位置に設けられている。
【0016】
初期設定ボタンは、電池を収納する電池ボックス内に設けられてもよい。初期設定ボタンが電池ボックス内に設けられる場合には、電池ボックスを操作装置3の背面側から覆うように操作装置3の本体ケースに取り付け可能に構成されている電池カバーを取り外すことによって、初期設定ボタンは、ユーザにより操作可能に構成されている。初期設定ボタンは、電池カバーが取り外されると露出する位置に設けられている。
【0017】
操作装置3は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末であってもよい。操作装置3が携帯情報端末の場合には、所定の操作は、例えば、例えば、スマートフォンアプリケーション等、携帯情報端末のアプリケーションにおける初期設定用のコマンド操作であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る電動シャッター装置2の概略構成の一例について説明する。
図1に示すように、電動シャッター装置2は、シャッターカーテン4、ガイドレール5a,5b及びシャッターボックス6を備える。
【0019】
シャッターカーテン4は、上下方向に連結された長尺な複数のスラット4a及び最下端に設けられた巾木部4bを有する。
【0020】
巾木部4bは、最下端のスラット4aに接続された矩形断面を有する長尺部材である。巾木部4bは、シャッターカーテン4が上限位置となる全開状態になる場合に図示しないマグサ又はシャッターボックス6に接触するように突出して形成されている。巾木部4bは、シャッターカーテン4の全開状態時にはマグサ又はシャッターボックス6に接触する。巾木部4bは、シャッターカーテン4が下限位置となる全閉状態になる場合には、電動シャッター装置2の枠体の下枠や床面に接触する。マグサは、シャッターカーテン4が上昇することで形成される電動シャッター装置2の開口部の見切り部材であって、シャッターボックス6の下部に設けられていてもよい。
【0021】
ガイドレール5a及びガイドレール5bは、シャッターカーテン4の幅方向の両端に一対で設けられている。ガイドレール5a及びガイドレール5bは、底面に対して垂直に立設されている。ガイドレール5a及びガイドレール5bは、シャッターカーテン4を構成する各スラット4aの横ずれを規制する。
【0022】
シャッターボックス6の概略構成の一例について説明する。シャッターボックス6は、電動シャッター装置2の上部に設けられている。シャッターボックス6は、シャッターカーテン4の閉動作時にシャッターカーテン4の巻き戻し、又は、シャッターカーテン4の開動作時に巻き取りを行う。シャッターボックス6は、シャフト7、DCモータ8、出力部9及びシャッター制御装置10を備える。
【0023】
シャフト7は、シャッターカーテン4の上端部とDCモータ8とに連結されている。シャフト7は、DCモータ8によって正逆方向に回転駆動される。このシャフト7の回転に応じて、シャッターカーテン4の巻き戻し、又は、巻き取りが行われる。シャフト7に巻き取られたシャッターカーテン4は、シャッターボックス6内に収容されるようになっている。
【0024】
DCモータ8は、シャフト7を回転駆動することでシャッターカーテン4を開閉駆動する駆動源である。DCモータ8は、直流電流によってシャッターカーテン4を開閉駆動する。DCモータ8は、シャッター制御装置10からの駆動信号に基づいて正回転、逆回転、又は回転停止する。
【0025】
出力部9は、DCモータ8の駆動状況を出力する機能を有する。出力部9は、例えばDCモータ8に内蔵されたエンコーダである。出力部9は、DCモータ8の回転に応じたパルス信号である位置パルスをシャッター制御装置10に出力する。例えば、出力部9は、DCモータ8が1回転すると1つの位置パルスをシャッター制御装置10に出力する。出力部9は、エンコーダに限らず、例えばDCモータ8の回転角量を計測する等、巻取り軸やDCモータ8の回転量を把握できる構成であれば任意に選択できる。
【0026】
図2に示すように、シャッター制御装置10は、通信部11、駆動部12及び制御部13を備える。通信部11は、操作装置3と通信することで情報を送受信する。通信部11の通信方式は、特に限定されないが、例えば、短距離無線通信規格RF4CE(Radio Frequency for Consumer Electronics)やBluetooth(登録商標)等の無線通信方式を用いることができる。
【0027】
図3に示すように、駆動部12は、電源30からDCモータ8に給電される電力を用いて、制御部13からの指令に応じた駆動信号を生成してDCモータ8に出力することによってDCモータ8を駆動、又は停止させる。
【0028】
電源30は、交流電源である。電源30からは、電圧が異なる電力が給電される。電源30は、一例として、昼間においては電圧が108Vの太陽光発電装置であり、夜間においては電圧が100Vの商用電源である。
【0029】
駆動部12は、トランス31と、ブリッジダイオード32と、レギュレータ33と、抵抗分圧34と、FET35と、を有する。
【0030】
トランス31は、電源30から給電される電力を変圧する。電源30から給電される電力は、トランス31によって変圧される。ブリッジダイオード32は、電源30から給電される電力を全波整流し交流から直流に変換する整流回路である。レギュレータ33は、トランス31で変圧された電力の電圧及び電流を一定に保つように制御する。抵抗分圧34は、トランス31で変圧された電力から参照電圧を生成する。レギュレータ33において電圧及び電流が制御された電力と、抵抗分圧34において生成された参照電圧は、制御部13に出力される。FET35は、ブリッジダイオード32から出力された直流電力が入力し、制御部13からの指令に応じた駆動信号を生成してDCモータ8に出力する。FET35は、制御部13によるPWM制御に応じたデューティー比の駆動信号をDCモータ8に出力する。
【0031】
制御部13は、例えばCPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラや記憶装置などから構成され、操作装置3のスイッチの操作に応じてDCモータ8の駆動を制御する。
【0032】
制御部13は、操作装置3からの操作信号に基づいて、DCモータ8の回転をPWM制御することによって、上限位置と下限位置との間でシャッターカーテン4の開動作又は閉動作を実行する。シャッターカーテン4の開動作又は閉動作を以下の説明では開閉動作と呼ぶ。上限位置は、シャッターカーテン4が全開状態となる全開位置である。下限位置は、シャッターカーテン4が全閉状態となる全閉位置である。
【0033】
制御部13は、通信部11を介して操作装置3から開動作を指示する操作信号を受信した場合には、シャッターカーテン4をシャフト7に巻き取らせて開動作させる開指令を駆動部12におけるFET35に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8を正転させてシャッターカーテン4を開動作させる。
【0034】
制御部13は、通信部11を介して操作装置3から閉動作を指示する操作信号を受信した場合には、シャッターカーテン4をシャフト7から巻き出させて閉動作させる閉指令を駆動部12におけるFET35に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8を逆転させてシャッターカーテン4を閉動作させる。
【0035】
制御部13は、操作装置3から停止信号を受信した場合、シャッターカーテン4の動作を停止させる停止指令を駆動部12におけるFET35に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8の回転を停止させて開閉動作を停止させる。
【0036】
制御部13は、シャッターカーテン4の速度制御処理を実行する。制御部13は、シャッターカーテン4を第1速度又は第2速度で動作させる。第1速度は、高速である。第2速度は、第1速度よりも小さい低速である。制御部13は、シャッターカーテン4を第1速度で開閉動作させる。制御部13は、
図4に示すように、シャッターカーテン4の開閉に関する異常を検知する後述の異常検知部171を有する。制御部13は、例えば、異常検知部171が異常を検知した後に、シャッターカーテン4を第1速度から第2速度に切り替えて動作させる。
【0037】
シャッター制御装置10によるシャッターカーテン4の速度制御処理を実行するための制御部13の機能部を
図4を用いて説明する。制御部13は、格納部14、駆動制御部15、負荷検出部16及び処理部17を備える。
【0038】
格納部14は、シャッターカーテン4の開閉動作に関する各種の情報を格納する。格納部14は、例えば、揮発性のメモリである。格納部14は、シャッターカーテン4の開閉動作において、基準電圧時におけるDCモータ8に給電される基準電圧情報を所定時間毎に格納する。基準電圧情報は、例えば、抵抗分圧34において生成された参照電圧であり、電源電圧ADポート値としてシャッターカーテン4の位置と対応付けられて格納部14に格納されている。
【0039】
基準電圧情報は、予め例えば、工場検査時に、通信部11との接続を利用して工場検査モードに移行し、安定化電源を繋いだ状態でシャッターカーテン4を開閉動作させることによって得られる。基準電圧は、例えば、100Vである。基準電圧情報を格納する所定時間は、一例として、20msecである。
【0040】
駆動制御部15は、操作装置3から受信した操作信号に基づいて、DCモータ8の回転をPWM制御することによって、シャッターカーテン4の開閉動作を制御する。駆動制御部15は、後述するように、電源30の電圧に応じてPWM制御におけるデュ-ティ比を設定する。
【0041】
駆動制御部15は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、シャッターカーテン4に作用する負荷の異常を検知する異常検知処理によって異常が検知された場合には、シャッターカーテン4の開閉動作を停止する。駆動制御部15は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、シャッターカーテン4に作用する負荷の異常が検知された場合には、シャッターカーテン4の開閉動作を停止する。
【0042】
負荷検出部16は、DCモータ8にかかるモータ負荷を検出する。負荷検出部16は、カウンタ161及び負荷計測部162を備える。カウンタ161は、位置パルスのパルス数をカウントする。パルス数のカウント値は、シャッターカーテン4の現在位置に相当する。
【0043】
負荷計測部162は、出力部9から出力された位置パルスに基づいてモータ負荷を計測する。例えば、負荷計測部162は、出力部9から出力された位置パルスのパルス幅をモータ負荷として、カウンタ161のカウント値毎である位置パルス毎に計測する。例えば、パルス幅は、DCモータ8が1回転したときの位置パルスのパルス幅である。
【0044】
位置パルスは、DCモータ8の回転速度が遅くなるにつれてそのパルス幅が大きくなり、DCモータ8の回転速度が速くなるにつれてそのパルス幅が小さくなる。例えば、シャッターカーテン4が上限位置に到達して、巾木部4bがマグサやシャッターボックス6に接触すると、DCモータ8に負荷がかかり、DCモータ8は過負荷状態となる。DCモータ8は過負荷状態となると、DCモータ8の回転速度が遅くなり、位置パルスのパルス幅が大きくなる。シャッターカーテン4が下限位置に到達して、巾木部4bが床面又は下枠に当接してから、さらに閉動作が継続すると巾木部4bが床面又は下枠に押圧している状態になる。巾木部4bが床面又は下枠に押圧している状態になると、DCモータ8に負荷がかかり、DCモータ8は過負荷状態となり、DCモータ8の回転速度が遅くなり、位置パルスのパルス幅が大きくなる。負荷計測部162は、位置パルス毎であるカウント値毎に、位置パルスのパルス幅を測定することにより、DCモータ8のパルス幅をモータ負荷として算出する。負荷計測部162は、カウント値とモータ負荷とを関連付けて処理部17に出力する。
【0045】
処理部17は、異常検知部171、更新部172及び判定部173を備える。
【0046】
異常検知部171は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、シャッターカーテン4の異常を検知する異常検知処理を実行する。シャッターカーテン4の異常とは、シャッターカーテン4に作用する負荷の異常である。負荷の異常とは、例えば、シャッターカーテン4に対して、通常の開閉動作時よりも大きい負荷である過負荷が作用したことである。シャッターカーテン4に作用する負荷は、モータ負荷である。異常検知部171は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、負荷計測部162から出力されるモータ負荷を監視して、モータ負荷に基づいてDCモータ8の過負荷状態か否かを判定する。例えば、異常検知部171は、モータ負荷又はモータ負荷の変化率が閾値を超えた場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定する。
【0047】
更新部172は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、格納部14に格納された基準電圧情報を更新する。更新部172は、電源30からDCモータ8に給電される電圧情報を用いて基準電圧情報を更新する。更新部172は、シャッターカーテン4の開閉動作中に抵抗分圧34において生成された参照電圧の電圧情報を用いて基準電圧情報を更新する。電動シャッター装置2は、更新部172が基準電圧情報を更新することによって、DCモータ8を介してシャッターカーテン4を開閉動作させるための電圧情報を学習する学習機能を有する。制御部13は、更新された基準電圧情報に応じて、PWM制御におけるデュ-ティ比を設定する。
【0048】
判定部173は、更新部172による障害物検知機能を高精度に行うために通常開閉動作のエンコーダによるモータ速度データの学習に関する更新の要否を判定する。例えば、シャッターカーテン4の開閉動作中に落雷や瞬間的な電圧降下が生じる場合がある。例えば、
図5に示すように、基準電圧情報におけるモータ速度の波形W1に対して、電圧降下後のモータ速度の波形W2は、降下した電圧を急激に上昇させるため、障害物検知用のモータ速度データを更新させるための学習データとして不適切である。判定部173は、所定タイミングで得られた電圧情報と、格納部14に格納された過去の基準電圧情報を構成する電圧情報と、を参照して後述するように、基準電圧情報の更新の要否を判定する。
【0049】
[電源30の電圧に応じたPWM制御]
制御部13は、電源30の電圧に応じてPWM制御におけるデュ-ティ比を設定する。PWM制御によるシャッターカーテン4の速度設定方法について、
図6を参照して説明する。シャッターカーテン4の速度設定は、閉動作の例を用いて説明するが、開動作についても同様に適用可能である。
【0050】
図6に示すように、ステップS1において、通信部11を介して操作装置3から閉動作命令を指示する操作信号を受信すると、制御部13は、ステップS2において、異常検知フラグが有るかを判断する。制御部13は、ステップS2において異常検知フラグが無い場合には、ステップS4において、PWM出力基準値を閉動作における高速である第1速度に設定する。制御部13は、ステップS2において異常検知フラグが有る場合には、ステップS3において、PWM出力基準値を閉動作における低速である第2速度に設定する。制御部13は、PWM出力基準値である変数の「StandardPwm」をステップS4において「HIGHSpeedPwm」に設定し、ステップS3において「LowSpeedPwm」に設定する。
【0051】
制御部13は、ステップS5において、現在の電源電圧ADポート値を読み込む。制御部13は、読み込んだ電源電圧ADポート値を変数の「Current Volt」に設定する。
【0052】
制御部13は、ステップS6において、現在の電源電圧ADポート値と基準電圧である100V電圧とによって、出力するPWM制御値を決定する。工場検査時などで記憶した基準電圧時における参照電圧を「Reference Volt」とすると、下式によってPWM値を算出し、算出した「PWM値」に対応するデュ-ティ比を設定する。
【0053】
PWM = StandardPwm × Reference Volt / CurrentVolt
【0054】
制御部13は、ステップS7における20msec経過後に、ステップS8において、停止命令の有無を判断する。制御部13は、ステップS8において、停止命令が無い場合には、ステップS2以降の処理を実行させる。制御部13は、ステップS8において、停止命令がある場合には、ステップS9において処理を停止させる。ステップS1からステップS9の処理を実行することによって、電源30の電圧が変動した場合でも、電圧に応じたPWM制御値を出力してDCモータ8の速度を一定にすることができる。DCモータ8の速度を一定にすることによって、電源30の電圧が変動した場合でも、シャッターカーテン4の開閉速度を一定にできる。
【0055】
[開動作におけるPWM制御]
開動作において制御部13は、シャッターカーテン4の現在位置と上限位置との距離が所定の閾値になるまでは、シャッターカーテン4が高速の第1速度で開動作するデュ-ティ比を設定し、シャッターカーテン4の現在位置と上限位置との距離が所定の閾値以下のときに、シャッターカーテン4が低速の第2速度で開動作するデュ-ティ比を設定する。
【0056】
開動作におけるPWM制御によるシャッターカーテン4の速度設定方法について、
図7を参照して説明する。
【0057】
図7に示すように、ステップS1において、開動作の動作指示を受信すると、制御部13は、ステップS2において、異常検知フラグが有るかを判断する。制御部13は、ステップS2において異常検知フラグが無い場合には、ステップS10において、シャッターカーテン4の現在位置と全開状態の上限位置との距離が所定の閾値以上であるかどうかを判断する。制御部13はステップS10において、シャッターカーテン4の現在位置が全開状態の上限位置から、例えば、5cm以上であるかどうかを判断する。ステップS10において、シャッターカーテン4の現在位置と全開状態の上限位置との距離が所定の閾値以上の場合、制御部13は、ステップS4において、PWM出力基準値を閉動作における高速である第1速度に設定する。ステップS10において、シャッターカーテン4の現在位置と全開状態の上限位置との距離が所定の閾値未満の場合、制御部13は、ステップS3において、PWM出力基準値を閉動作における低速である第2速度に設定する。ステップS5以降の処理は、
図6に示した電源30の電圧に応じたPWM制御における処理と同様である。
【0058】
制御部13は、ステップS2において異常検知フラグが有る場合には、ステップS4において、PWM出力基準値を閉動作における低速である第2速度に設定する。
【0059】
上限検知モードにおいて、シャッターカーテン4の現在位置が上限位置との距離が所定の閾値よりも大きいときにシャッターカーテン4を高速で動作させることによって、動作時間を短くすることができる。シャッターカーテン4の現在位置が上限位置との距離が所定の閾値以下のときにシャッターカーテン4を低速で動作させることによって、シャッターカーテン4がマグサ又はシャッターボックス6に接触した際の衝撃及び音を緩和することができる。
【0060】
[学習機能におけるデータ更新の要否判定]
落雷や瞬間的な電圧降下が生じた場合、電圧降下後のモータ速度の波形W2が学習データとして不適切であるため、入力したデータに対して学習データとしての要否を判定する。更新部172は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、格納部14に格納された基準電圧情報を更新するにあたり、判定部173の判定結果を参照する。学習データとしての要否の判定方法について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0061】
格納部14は、シャッターカーテン4の開閉動作中に抵抗分圧34において生成された参照電圧を所定時間毎に電圧情報として順次格納する。所定時間は、一例として、20msecである。
【0062】
判定部173は、所定タイミングで得られた電圧情報と、格納部14に格納された電圧情報のうち最新の電圧情報とを含む第1学習データと、第1学習データに含まれる最も古い電圧情報よりも過去に格納された複数の電圧情報を含む第2学習データとを用い、基準電圧情報の更新の要否を判定する。判定部173は、一例として、所定タイミングで得られた現在の最新の電圧情報と、格納部14に格納された電圧情報のうち現在から1つ前の電圧情報とを第1学習データとする。判定部173は、一例として、過去に格納部14に格納された電圧情報のうち現在から3つ前の電圧情報と現在から4つ前の電圧情報とを第2学習データとする。判定部173は、一例として、現在から2つ前の電圧情報を用いない。
【0063】
判定部173は、現在から過去の4つの電圧情報を電源電圧ADポート値として記憶するための変数として、現在の最新の電圧情報を「CurrentVolt」とし、現在の最新から1つ前の電圧情報を「AdPower0」とし、現在から2つ前の電圧情報を「AdPower1」とし、現在から3つ前の電圧情報を「AdPower2」とし、現在から4つ前の電圧情報を「AdPower3」として用いる。第1学習データは、電圧情報「CurrentVolt」及び電圧情報「AdPower0」を含む。第2学習データは、電圧情報「AdPower2」及び電圧情報「AdPower3」を含む。判定部173は、時間計測関数として、Ta、Tbを用いる。
【0064】
図8に示すように、判定部173は、ステップS1において、データの要否判定方の動作を開始すると、ステップS11において、変数をAdPower0=0、AdPower1=0、AdPower2=0、AdPower3=0に初期化する。判定部173は、ステップS12において、時間計測関数をTa=0、Tb=0に初期化する。
【0065】
電圧情報変数及び時間計測関数が初期化されると、判定部173は、ステップS13において、停止命令の有無を判断する。判定部173は、ステップS13において停止命令が有る場合は、
図9に示すように、ステップS9において処理を停止させる。判定部173は、ステップS13において停止命令が無い場合は、ステップS7における20msec経過後に、ステップS14において、時間計測関数をカウントしてTa=Ta+1の処理を実行する。
【0066】
ステップS15において判定部173は、シャッターカーテン4の開閉動作開始から第2所定時間経過後に、Ta≧10を満たしているかを判断する。第2所定時間は、一例として200msである。ステップS15において判定部173は、シャッターカーテン4の開閉動作開始から200ms以上経過後に、Ta≧10を満たしているかを判断する。判定部173は、シャッターカーテン4の開閉動作開始から200ms以上が経過していない場合は、ステップS13以降の処理を実行させる。
【0067】
ステップS15において動作開始から200ms以上が経過後にTa≧10を満たしている場合、判定部173は、ステップS16において、第1学習データ及び第2学習データに含まれる電圧情報を用いて判定値である「VoltageJudVal」を下式によって計算する。
【0068】
VoltageJudVal=|CurrentVolt+AdPower0-AdPower2-AdPower3|
【0069】
「VoltageJudVal」が計算されると、ステップS17において判定部173は、所定時間の経過に伴い、電圧情報を「Current Volt」「AdPower0」「AdPower1」「AdPower2」「AdPower3」を更新するために、AdPower3=AdPower2、AdPower2=AdPower1、AdPower1=AdPower0、AdPower0=CurrentVoltにデータをずらす。
【0070】
ステップS18において判定部173は、計算した「VoltageJudVal」の値が第2閾値以上であるかを判断する。第2閾値は、例えば、8である。第2閾値の8は、40mVに相当する。判定部173は、ステップS18において「VoltageJudVal」の値が8以上である場合、ステップS19において、時間計測関数Tbを時間計測関数Taに設定する。判定部173は、ステップS18において「VoltageJudVal」の値が8未満である場合、ステップS19の処理は行わずステップS20に移行する。
【0071】
ステップS20において判定部173は、電圧差を検知してから電圧情報が所定回数以上更新されているかを判断する。判定部173は、電圧差を検知してから、例えば、600msec動作して、Tb-Ta≧30を満たしているかを判断する。ステップS20における判断は、動作停止直前で動作が不安定である、例えば、600msecの時間で得られた電圧情報を判定対象外とするためである。
【0072】
ステップS20において判定部173は、電圧差を検知してから電圧情報が所定回数以上更新されていない場合は、現在の電圧情報を学習データの対象外とする必要はないことから、ステップS11以降の処理を実行させる。ステップS18において計算した「VoltageJudVal」の値が第2閾値未満の場合、ステップS19においてTb=Taに設定されているため、Tb-Ta≧30を満たさず、現在の電圧情報を学習データの対象外とする必要はないことから、ステップS11以降の処理を実行させる。
【0073】
ステップS20において電圧差を検知してから電圧情報が所定回数以上更新され、且つ、第1学習データと第2学習データとの差分が第2閾値以上の場合、ステップS21において判定部173は、現在動作中のエンコーダデータなどを学習値として採用しないようフラグを立て、ステップS11以降の処理を実行させる。
【0074】
更新部172は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、格納部14に格納された基準電圧情報を更新するにあたり判定部173の判定結果を参照し、学習値として採用しないフラグが立っている場合は電圧情報を更新せず、フラグが立っていない場合は電圧情報を更新する。
【0075】
判定部173が、学習データとしての要否を判定するため、落雷や瞬間的な電圧降下が生じた場合に不適切なデータを除外することによって、適切な障害物検知システムを運用可能となる。
【0076】
実施形態の電動シャッター装置2においては、電源30の電圧に応じてPWM制御におけるデュ-ティ比を設定するため、例えば、昼間は108Vの太陽光発電を用い、夜間は100Vの商用電源を用いた場合でも、DCモータ8を一定の速度で回転させることによって、シャッターカーテン4一定の速度で開閉可能にできる。
【0077】
実施形態の電動シャッター装置2においては、開動作においてシャッターカーテン4の現在位置と上限位置との距離が所定の閾値以下のときに、距離が所定の閾値よりも大きいときの第1速度よりも小さい第2速度でシャッターカーテン4が開動作するデュ-ティ比を設定するため、動作時間を短くすることができるとともに、シャッターカーテン4がマグサ又はシャッターボックス6に接触する場合は衝撃及び音を緩和することができる。
【0078】
実施形態の電動シャッター装置2においては、電源30からDCモータ8に給電される電圧情報を用いて基準電圧情報を更新するため、更新された基準電圧情報を用いてDCモータ8の回転を高精度に速度制御して、シャッターカーテン4の開閉を高精度に速度制御することができる。
【0079】
実施形態の電動シャッター装置2においては、所定タイミングで得られた電圧情報と、格納部14に格納された過去の電圧情報のうち最新の電圧情報とを含む第1学習データと、第1学習データに含まれる最も古い電圧情報よりも過去に格納された複数の電圧情報を含む第2学習データとを用い、エンコーダデータもしくはモータ速度データ情報の更新の要否を判定するため、不適切なデータを除外することによって、更新されたエンコーダ情報を用いて適切な障害物検知システムを運用可能となる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0081】
例えば、実施形態で説明した電動シャッター装置2におけるシャッター制御装置10及び制御部13の構成は一例であり、この構成に限定されず、電源30の電圧に応じてPWM制御におけるデュ-ティ比を設定できれば、他の制御構成であってもよい。また、実施形態で説明した電動シャッター装置2における制御部13は、異常検知部171と更新部172と判定部173とを有する構成を例示したが、この構成に限定されない。
【0082】
実施形態における制御部13の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。制御部13の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…シャッターシステム、2…電動シャッター装置、4シャッターカーテン、8…DCモータ、10…シャッター制御装置、13…制御部、14…格納部、30…電源、31…トランス、171…異常検知部、172…更新部、173…判定部