(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158985
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/68 20060101AFI20241031BHJP
E06B 9/11 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E06B9/68 A
E06B9/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074677
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐騎
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042BA00
2E042CA01
2E042CB05
2E042CC02
(57)【要約】
【課題】コスト増を招くことなく簡単に高速動作の学習データ及び低速動作の学習データを取得できる電動シャッター装置を提供する。
【解決手段】直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、DCモータへの電力供給をPWM制御して、DCモータを第1速度又は第1速度と異なる第2速度で駆動する制御部と、第1速度でDCモータを駆動することによりシャッターカーテンが経時的に変化する位置及び位置における負荷情報とを対応付けた第1学習データを格納する格納部と、格納部に格納された第1学習データに基づいて、第2速度に対応した第2学習データに変換する変換部と、を備える。制御部は、DCモータを第2学習データを用いたPWM制御によって第2速度で駆動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、
前記DCモータへの電力供給をPWM制御して、前記DCモータを第1速度又は前記第1速度と異なる第2速度で駆動する制御部と、
前記第1速度で前記DCモータを駆動することにより前記シャッターカーテンが経時的に変化する位置及び当該位置における負荷情報とを対応付けた第1学習データを格納する格納部と、
前記格納部に格納された前記第1学習データに基づいて、前記第2速度に対応した第2学習データに変換する変換部と、
を備え、
前記制御部は、前記DCモータを前記第2学習データを用いた前記PWM制御によって前記第2速度で駆動する、電動シャッター装置。
【請求項2】
前記第2速度は、前記第1速度よりも大きい、
請求項1に記載の電動シャッター装置。
【請求項3】
前記シャッターカーテンの開閉に関する異常を検知する異常検知部を備え、
前記制御部は、前記異常が検知された後に前記DCモータを前記第1速度で駆動するときに、前記第1学習データを取得させる、
請求項2に記載の電動シャッター装置。
【請求項4】
前記変換部は、前記第1学習データに対して、前記第1速度に対応した第1PWM値と前記第2速度に対応した第2PWM値との比率を用いて前記第2学習データに変換する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電動シャッター装置。
【請求項5】
前記格納部は、前記シャッターカーテンの位置毎に、前記第1速度で駆動したときの前記負荷情報及び前記第2速度で駆動したときの前記負荷情報を組みで格納する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電動シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動シャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータとして直流電流によって駆動されるDCモータを用いてシャッターカーテンを開閉する電動シャッター装置が知られている。電動シャッター装置においては、初期設定時等に低速で動作させた後に、通常開閉動作を高速で行うことがある。
【0003】
通常の開閉動作においては、過去のデータを学習データとして用いることによって感度よく障害物を検知する障害物検知機能がある。特許文献1には、シャッターカーテンを閉動作又は開動作させるときにおけるモータの電流値をモータ負荷として検出し、障害物にシャッターカーテンが衝突することによって、モータ電流が増加して閾値を超えたときに障害物が存在すると判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
学習データは、高速で動作した場合と低速で動作した場合の双方が必要である。初期設定時に学習データの取得のためだけに、例えば、低速での学習後に高速での学習を実施することは手間がかかる。また、高速動作の学習データ及び低速動作の学習データの双方を記憶するための記憶領域が必要となりコスト増となる。
【0006】
本開示は、以上のような点を考慮してなされたもので、コスト増を招くことなく簡単に高速動作の学習データ及び低速動作の学習データを取得できる電動シャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、直流電流によってシャッターカーテンを開閉駆動するDCモータと、前記DCモータへの電力供給をPWM制御して、前記DCモータを第1速度又は前記第1速度と異なる第2速度で駆動する制御部と、前記第1速度で前記DCモータを駆動することにより前記シャッターカーテンが経時的に変化する位置及び当該位置における負荷情報とを対応付けた第1学習データを格納する格納部と、前記格納部に格納された前記第1学習データに基づいて、前記第2速度に対応した第2学習データに変換する変換部と、を備え、前記制御部は、前記DCモータを前記第2学習データを用いた前記PWM制御によって前記第2速度で駆動する、電動シャッター装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るシャッターシステムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るシャッター制御装置の概略構成図である。
【
図3】シャッター制御装置の復帰処理を実行する制御部の機能ブロック図である。
【
図4】組みで格納された第1学習データと第2学習データの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の移動平均算出部の動作を説明する図である。
【
図6】本実施形態の移動平均算出部の動作を説明する図である。
【
図8】本実施形態の積算部の動作を説明する図である。
【
図9】本実施形態の判定部の動作を説明する図である。
【
図10】本実施形態に係る上限位置及び下限位置の設定方法のフロー図である。
【
図11】本実施形態に係る上限位置及び下限位置の設定方法を説明する図である。
【
図12】シャッター制御装置における障害物検知システムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の電動シャッター装置の実施の形態を、
図1から
図12を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺等を異ならせている。
【0010】
図1に示すように、シャッターシステム1は、電動シャッター装置2及び操作装置3を備える。
【0011】
電動シャッター装置2は、建物の窓やドア等の開口部2Aの開放又は閉鎖を行う電動シャッター装置である。電動シャッター装置2は、シャッターカーテン4を備える。電動シャッター装置2は、操作装置3からの操作信号に基づいてシャッターカーテン4を開閉することによって開口部2Aを開放又は閉鎖することができる。
【0012】
操作装置3は、操作対象である電動シャッター装置2に有線又は無線で接続され、電動シャッター装置2と相互に通信可能である。操作装置3は、ユーザや作業者が操作可能である。操作装置3は、電動シャッター装置2に対して操作信号を入力する手段を備える、例えばリモコン装置である。
【0013】
操作装置3は、ユーザによっていずれかのスイッチが押下されると、電動シャッター装置2にスイッチに応じた信号である操作信号を出力する。
【0014】
例えば、操作装置3は、開スイッチSWoと、閉スイッチSWcと、停止スイッチSWtと、を有する。操作装置3は、開スイッチSWoが操作されると、シャッターカーテン4の開動作を指示する第1の操作信号を電動シャッター装置2に送信する。操作装置3は、閉スイッチSWcが操作されると、シャッターカーテン4の閉動作を指示する第2の操作信号を電動シャッター装置2に送信する。操作装置3は、停止スイッチSWtが操作されると、シャッターカーテン4の開動作又は閉動作の停止を指示する停止信号を電動シャッター装置2に送信する。
【0015】
操作装置3は、ユーザによって所定の操作が行われると、設定信号を電動シャッター装置2に送信する。例えば、所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、一つのスイッチの短押し操作とは異なる操作である。所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、二つ以上のスイッチの同時押し、又は、一つ以上のスイッチの長押しである。
【0016】
所定の操作は、開スイッチSWo、閉スイッチSWc、及び停止スイッチSWtのうち、二つ以上のスイッチの同時押し、又は、一つ以上のスイッチの長押しに限定されない。例えば、操作装置3は、初期設定ボタンを備えてもよい。所定の操作は、初期設定ボタンの押下操作であってもよい。例えば、初期設定ボタンは、操作装置3の前面に設けられてもよいし、背面に設けられてもよい。初期設定ボタンが操作装置3の背面に設けられる場合には、例えば、初期設定ボタンは、背面カバーに覆われており、背面カバーを取り外すことにより操作可能となる。初期設定ボタンは、背面カバーが取り外されると露出する位置に設けられている。
【0017】
初期設定ボタンは、電池を収納する電池ボックス内に設けられてもよい。初期設定ボタンが電池ボックス内に設けられる場合には、電池ボックスを操作装置3の背面側から覆うように操作装置3の本体ケースに取り付け可能に構成されている電池カバーを取り外すことによって、初期設定ボタンは、ユーザにより操作可能に構成されている。初期設定ボタンは、電池カバーが取り外されると露出する位置に設けられている。
【0018】
操作装置3は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末であってもよい。操作装置3が携帯情報端末の場合には、所定の操作は、例えば、例えば、スマートフォンアプリケーション等、携帯情報端末のアプリケーションにおける初期設定用のコマンド操作であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る電動シャッター装置2の概略構成の一例について説明する。
図1に示すように、電動シャッター装置2は、シャッターカーテン4、ガイドレール5a,5b及びシャッターボックス6を備える。
【0020】
シャッターカーテン4は、上下方向に連結された長尺な複数のスラット4a及び最下端に設けられた巾木部4bを有する。
【0021】
巾木部4bは、最下端のスラット4aに接続された矩形断面を有する長尺部材である。巾木部4bは、シャッターカーテン4が上限位置となる全開状態になる場合に図示しないマグサ又はシャッターボックス6に接触するように突出して形成されている。巾木部4bは、シャッターカーテン4の全開状態時にはマグサ又はシャッターボックス6に接触する。巾木部4bは、シャッターカーテン4が下限位置となる全閉状態になる場合には、電動シャッター装置2の枠体の下枠や床面に接触する。マグサは、シャッターカーテン4が上昇することで形成される電動シャッター装置2の開口部の見切り部材であって、シャッターボックス6の下部に設けられていてもよい。
【0022】
ガイドレール5a及びガイドレール5bは、シャッターカーテン4の幅方向の両端に一対で設けられている。ガイドレール5a及びガイドレール5bは、底面に対して垂直に立設されている。ガイドレール5a及びガイドレール5bは、シャッターカーテン4を構成する各スラット4aの横ずれを規制する。
【0023】
シャッターボックス6の概略構成の一例について説明する。シャッターボックス6は、電動シャッター装置2の上部に設けられている。シャッターボックス6は、シャッターカーテン4の閉動作時にシャッターカーテン4の巻き戻し、又は、シャッターカーテン4の開動作時に巻き取りを行う。シャッターボックス6は、シャフト7、DCモータ8、出力部9及びシャッター制御装置10を備える。
【0024】
シャフト7は、シャッターカーテン4の上端部とDCモータ8とに連結されている。シャフト7は、DCモータ8によって正逆方向に回転駆動される。このシャフト7の回転に応じて、シャッターカーテン4の巻き戻し、又は、巻き取りが行われる。シャフト7に巻き取られたシャッターカーテン4は、シャッターボックス6内に収容されるようになっている。
【0025】
DCモータ8は、シャフト7を回転駆動することでシャッターカーテン4を開閉駆動する駆動源である。DCモータ8は、直流電流によってシャッターカーテン4を開閉駆動する。DCモータ8は、シャッター制御装置10からの駆動信号に基づいて正回転、逆回転、又は回転停止する。
【0026】
出力部9は、DCモータ8の駆動状況を出力する機能を有する。出力部9は、例えばDCモータ8に内蔵されたエンコーダである。出力部9は、DCモータ8の回転に応じたパルス信号である位置パルスをシャッター制御装置10に出力する。例えば、出力部9は、DCモータ8が1回転すると1つの位置パルスをシャッター制御装置10に出力する。出力部9は、エンコーダに限らず、例えばDCモータ8の回転角量を計測する等、巻取り軸やDCモータ8の回転量を把握できる構成であれば任意に選択できる。
【0027】
図2に示すように、シャッター制御装置10は、通信部11、駆動部12及び制御部13を備える。通信部11は、操作装置3と通信することで情報を送受信する。通信部11の通信方式は、特に限定されないが、例えば、短距離無線通信規格RF4CE(Radio Frequency for Consumer Electronics)やBluetooth(登録商標)等の無線通信方式を用いることができる。
【0028】
駆動部12は、制御部13からの指令に応じた駆動信号を生成してDCモータ8に出力することでDCモータ8を駆動、又は停止させる。
【0029】
制御部13は、例えばCPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラや記憶装置などから構成され、操作装置3のスイッチの操作に応じてDCモータ8の駆動をPWM制御する。
【0030】
制御部13は、操作装置3からの操作信号に基づいて、DCモータへの電力供給をPWM制御して駆動することによって、上限位置Puと下限位置Plとの間でシャッターカーテン4の開動作又は閉動作を実行する。シャッターカーテン4の開動作又は閉動作を以下の説明では開閉動作と呼ぶ。上限位置Puは、シャッターカーテン4が全開状態となる全開位置である。下限位置Plは、シャッターカーテン4が全閉状態となる全閉位置である。
【0031】
制御部13は、通信部11を介して操作装置3から第1の操作信号を受信した場合には、シャッターカーテン4をシャフト7に巻き取らせて開動作させる開指令を駆動部12に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8を正転させてシャッターカーテン4を開動作させる。
【0032】
制御部13は、通信部11を介して操作装置3から閉動作を指示する操作信号を受信した場合には、シャッターカーテン4をシャフト7から巻き出させて閉動作させる閉指令を駆動部12に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8を逆転させてシャッターカーテン4を閉動作させる。
【0033】
制御部13は、操作装置3から停止信号を受信した場合、シャッターカーテン4の動作を停止させる停止指令を駆動部12に対して出力する。駆動部12は、DCモータ8の回転を停止させて開閉動作を停止させる。
【0034】
制御部13は、シャッターカーテン4の速度制御処理を実行する。制御部13は、DCモータ8の速度をPWM制御することによって、シャッターカーテン4の開閉速度を制御する。制御部13は、PWM制御によってDCモータ8を第1速度又は第2速度で駆動する。第1速度は低速であり、第2速度は、第1速度よりも大きい高速である。
【0035】
制御部13は、操作装置3からの設定信号を受信した場合には、上限位置Pu及び下限位置Plを設定する設定モードに移行する。制御部13は、設定モードにおいて、DCモータ8を制御することで開閉動作を行うとともにDCモータ8の過負荷状態を検知する過負荷検知を実行する。そして、制御部13は、設定モードにいて、シャッターカーテン4の開動作時にDCモータ8の過負荷状態が検知された場合にはシャッターカーテン4の現在位置に基づいて上限位置Puを設定し、シャッターカーテン4の閉動作時にDCモータ8の過負荷状態が検知された場合にはシャッターカーテン4の現在位置に基づいて下限位置Plを設定する。
【0036】
以下において、設定モードの処理及び障害物検知処理を実行するための制御部13の機能部を、
図3を用いて説明する。制御部13は、駆動制御部14、負荷検出部15、処理部16及び格納部17を備える。
【0037】
駆動制御部14は、操作装置3に対して所定の操作が行われた場合には、駆動部12に開指令を出力してシャッターカーテン4の開動作を開始させる。駆動制御部14は、当該開動作中において過負荷検知によりDCモータ8の過負荷状態が検知された場合には、停止指令を出力して当該開動作を停止させ、駆動部12に閉指令を出力してシャッターカーテン4の閉動作を開始させる。駆動制御部14は、当該閉動作中において過負荷検知によりDCモータ8の過負荷状態が検知された場合には、停止指令を出力して当該閉動作を停止させる。
【0038】
負荷検出部15は、DCモータ8にかかるモータ負荷を検出する。本実施形態に係る負荷検出部15は、カウンタ151及び負荷計測部152を備える。
【0039】
カウンタ151は、位置パルスのパルス数をカウントする。なお、このパルス数のカウント値nは、シャッターカーテン4の現在位置に相当する。
【0040】
負荷計測部152は、出力部9から出力された位置パルスに基づいてモータ負荷を計測する。具体的には、例えば、負荷計測部152は、出力部9から出力された位置パルスのパルス幅Anをモータ負荷として、カウンタ151のカウント値n毎となる位置パルス毎に計測する。例えば、パルス幅Anは、DCモータ8が1回転したときの位置パルスのパルス幅である。
【0041】
位置パルスは、DCモータ8の回転速度が遅くなるにつれてそのパルス幅が大きくなり、DCモータ8の回転速度が速くなるにつれてそのパルス幅が小さくなる。シャッターカーテン4が上限位置Puに到達して、巾木部4bがマグサやシャッターボックス6に接触すると、DCモータ8に負荷がかかり、DCモータ8は過負荷状態となる。DCモータ8は過負荷状態となることによって、DCモータ8の回転速度が遅くなり、位置パルスのパルス幅が大きくなる。
【0042】
シャッターカーテン4が下限位置Plに到達して、巾木部4bが床面又は下枠に当接してから、さらに閉動作が継続すると巾木部4bが床面又は下枠に押圧している状態になる。巾木部4bが床面又は下枠に押圧している状態になった結果、DCモータ8に負荷がかかり、DCモータ8は過負荷状態となる。DCモータ8の回転速度が遅くなり、位置パルスのパルス幅が大きくなる。
【0043】
シャッターカーテン4が下限位置Plに到達して、巾木部4bが床面又は下枠に当接してから、さらに閉動作が継続するとスラットの撓みが下方から発生する。スラットの撓みが発生することによって、DCモータ8に負荷がかかり、DCモータ8は過負荷状態となる。DCモータ8の回転速度が遅くなり、位置パルスのパルス幅が大きくなる。
【0044】
負荷計測部152は、カウント値n毎である位置パルス毎に、位置パルスのパルス幅を測定することによって、DCモータ8のパルス幅Anをモータ負荷の負荷情報として算出する。負荷計測部152は、カウント値nとモータ負荷とを関連付けて処理部16に出力する。負荷計測部152は、カウント値nとそのカウント値nに対応するモータ負荷である位置パルスのパルス幅Anとを処理部16に出力する。負荷計測部152は、経時的に変化する位置情報nと、その位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅Anとを関連付けて負荷情報として格納部17に格納する。格納部17は、シャッターカーテン4の位置に対応するDCモータ8の位置毎に負荷情報を格納する。
【0045】
処理部16は、設定モードにおいて、上限位置Pu及び下限位置Plを過負荷検知により設定する。処理部16は、異常検知部160、学習機能部165、移動平均算出部166、差分値算出部167、積算部168、判定部169及び変換部170を備える。
【0046】
異常検知部160は、シャッターカーテン4の開閉に関する異常を検知する。異常検知部160は、シャッターカーテン4の開閉動作中に、負荷検出部15から出力されるモータ負荷を監視して、モータ負荷に基づいてDCモータ8の過負荷状態か否かを判定する。例えば、異常検知部160は、モータ負荷又はモータ負荷の変化率が閾値を超えた場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定する。
【0047】
異常検知部160は、第1の処理部161及び第2の処理部162を備える。第1の処理部161は、シャッターカーテン4の開動作中においてDCモータ8の過負荷状態か否かを判定する。第2の処理部162は、シャッターカーテン4の閉動作中においてDCモータ8の過負荷状態か否かを判定する。
【0048】
第1の処理部161は、設定モードにおけるシャッターカーテン4の開動作中において第1の過負荷検知を実行する。第1の処理部161は、第1の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知した場合には、シャッターカーテン4の現在位置に基づいて上限位置Puを設定する。例えば、第1の処理部161は、第1の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態が検知されたときのカウント値nを上限位置Puに設定してもよい。例えば、第1の処理部161は、第1の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態が検知されたときのカウント値nを「0」にリセットし、「0」にリセットされたカウント値nを上限位置Puに設定してもよい。
【0049】
第1の過負荷検知とは、負荷検出部15から出力されるモータ負荷に基づいてDCモータ8が過負荷状態か否かを判定する処理である。例えば、第1の処理部161は、モータ負荷又はモータ負荷の変化率が所定の閾値th1を超えた場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定する。
【0050】
第1の処理部161は、第1の過負荷検知において、巾木部4bがマグサ又はシャッターボックス6に当接した上限位置Pu位ではなく、上限位置Puからさらにシャッターカーテン4の開動作を行ってシャッターカーテン4を巻き締めした巻き締め位置で、DCモータ8の過負荷状態を検知する。巻き締め位置と上限位置Puとの間のずれΔH1は、巻き締め位置と上限位置Puとの間の位置パルスのカウント数n1で表され、実験やシャッターカーテン4のサイズ等により予め求めることが可能である。したがって、第1の処理部161は、既知であるずれΔH1を用いて巻き締め位置から上限位置Puを求めてもよい。例えば、第1の処理部161は、第1の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知されたときのカウント値nからカウント数n1を減算又は加算することで上限位置Puに設定してもよい。
【0051】
例えば、駆動制御部14は、操作装置3に対して所定の操作が行われた場合には、駆動部12に開指令を出力してシャッターカーテン4の開動作を開始させる。駆動制御部14は、開動作中において過負荷検知によりDCモータ8の過負荷状態が検知された場合には、停止指令を出力して開動作を停止させる。シャッターカーテン4の現在位置は、巻き締め位置である。よって、駆動制御部14は、巻き締め位置のシャッターカーテン4をカウント数n1分だけ下降させて停止させる。そして、第1の処理部161は、カウント数n1分だけ閉動作されたシャッターカーテン4の現在位置、すなわち現在のカウント値nを「0」にリセットし、「0」にリセットされたカウント値nを上限位置Puに設定してもよい。駆動制御部14は、上限位置Puが設定されたことを契機として自動で閉動作を実行する。ただし、ずれΔH1が許容できる程度であれば、巻き締め位置のシャッターカーテン4をカウント数n1分だけ下降させず、巻き締め位置を上限位置Puとして設定してもよい。
【0052】
第2の処理部162は、設定モードにおけるシャッターカーテン4の閉動作中において第2の過負荷検知を実行する。第2の処理部162は、第2の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知した場合には、シャッターカーテン4の現在位置に基づいて下限位置Plを設定する。
【0053】
例えば、第2の処理部162は、第2の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知されたときのカウント値nを下限位置Plに設定してもよい。第2の過負荷検知とは、負荷検出部15から出力されるモータ負荷に基づいてDCモータ8が過負荷状態か否かを判定する処理である。例えば、第2の処理部162は、モータ負荷又はモータ負荷の変化率が所定の閾値th2を超えた場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定する。なお、第1の過負荷検知と第2の過負荷検知とは、同一の方法による過負荷検知であってもよいし、互いに異なる方法による過負荷検知であってもよい。
【0054】
第2の処理部162は、第2の過負荷検知において、巾木部4bが床面又は下枠に当接した下限位置Plではなく、下限位置Plからさらにシャッターカーテン4の閉動作を行ってシャッターカーテン4が床面又は下枠を押し込んだ押し込み位置で、DCモータ8の過負荷状態を検知する。押し込み位置のシャッターカーテン4は、下方から撓みが発生しており、閉動作時における第2の過負荷検知でDCモータ8の過負荷状態が検知された位置である押し込み位置と、上記撓みの無い下限位置との間にズレΔH2が生じる。押し込み位置と下限位置Plとの間のずれΔH2は、押し込み位置と下限位置Plとの間の位置パルスのカウント数n2で表され、実験やシャッターカーテン4のサイズ等により予め求めることが可能である。
【0055】
第2の処理部162は、既知であるカウント数n2を用いて押し込み位置から下限位置Plを求めることができる。例えば、第2の処理部162は、第2の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知されたときのカウント値nからずれΔH2となるカウント数n2を減算した値を下限位置Plに設定してもよい。ずれΔH2が許容できる程度であれば、第2の処理部162は、第2の過負荷検知によってDCモータ8の過負荷状態を検知されたときのカウント値nを下限位置Plに設定してもよい。カウント数n2は「第1の距離」に相当する。第2の処理部162は、閉動作中の過負荷検知によりDCモータ8過負荷状態が検知されたときのシャッターカーテン4の現在位置から開方向に第1の距離だけ離れた位置を下限位置Plに設定してもよい。開方向とは、シャッターカーテン4の開動作によってシャッターカーテン4が動作する方向であって、本実施形態では、シャッターボックス6が配置されている方向である。
【0056】
格納部17には、処理部16により設定された上限位置Pu及び下限位置Plの情報が格納される。処理部16は、設定信号を受信した場合において、格納部17にすでに上限位置Pu及び下限位置Plの情報が格納されている場合には、格納されている上限位置Pu及び下限位置Plの情報を削除してもよい。例えば、第1の処理部161は、操作装置3に対して所定の操作が行われた場合において既に上限位置Pu及び下限位置Plが設定されている場合には、上限位置Pu及び下限位置Plの設定を初期化する初期化処理を実行してもよい。初期化処理を実行した場合には、初期化処理後において、シャッターカーテン4の開動作が開始されてもよい。
【0057】
格納部17には、設定モードにおいて、位置情報nと、位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅Anとが関連付けられた情報である負荷情報が位置情報nごとに格納される。例えば、格納部17は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリやHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。
【0058】
格納部17には、低速である第1速度でDCモータ8を駆動することによりシャッターカーテン4が全閉状態から全開状態に経時的に変化する全開動作、又は全開状態から全閉状態に移行する閉動作毎に算出した位置情報n及び位置パルスのパルス幅が第1学習データとして記憶されている。格納部17には、低速時の過去の位置情報n及び位置パルスのパルス幅の過去データが第1学習データとして記憶されている。過去データが格納部17に記憶される場合は、全開動作、又は全閉動作時において障害物を検知しなかった場合のみである。格納部17に記憶される過去データは、例えば、現在を基準として過去4回分の全開動作、又は全閉動作時の過去の位置情報n及び位置パルスのパルス幅である。制御部13は、後述するように、第1速度及び第2速度のうち何れか一方の速度における過去データを格納部17に格納させる。制御部13は、低速の第1速度における過去データを第1学習データとして格納部17に格納させる。
【0059】
変換部170は、格納部17に格納された第1速度に対応する負荷情報の第1学習データに基づいて、第2速度に対応した負荷情報の第2学習データに変換する。変換部170は、第1学習データにおける位置情報n毎に、第1速度に対応した第1PWM値と第2速度に対応した第2PWM値との比率を用いて、第1学習データにおける位置パルスのパルス幅Anを、第2速度に対応した第2学習データにおける位置パルスのパルス幅Anとして変換する。
【0060】
図4に示すように、変換部170は、第1学習データに基づき変換した第2学習データを、一例として、シャッターカーテンの位置に対応する位置情報n毎に組みで格納する。
図4においては、高速の第2速度が低速の第1速度の二倍の速度であり、第1PWM値と第2PWM値との比率が1:2である場合にDCモータ8が半回転するときに要する回転時間のデータが示されている。第1学習データ及び第2学習データが組みで格納部17に格納されているため、第1学習データ及び第2学習データをそれぞれ位置情報n毎に個別に格納する場合と比較して記憶領域を低減することができ、コスト増を抑制することができる。
【0061】
学習機能部165は、格納部17に記憶されている過去のデータに基づいて基準値負荷Bnを決定する機能を有する。例えば学習機能部165は、過去4回分の過去データに基づいて、位置情報nに対応する高速の第2速度時の位置パルスのパルス幅を決定する学習機能を有する。学習機能部165は、位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅を過去4回分の過去データから取得する。学習機能部165は、4つのデータ郡の中から標準偏差が最小から2番目のデータ郡を選択する。学習機能部165は、例えば、
図11に二点鎖線で示されるように、データ郡から選択した位置情報nに対応する高速の第2速度時の位置パルスのパルス幅を基準値負荷Bnとして格納する。
【0062】
図5における横軸は、移動平均算出部166が取得する位置情報nを示す。
図5おける縦軸は、パルス幅を示す。
図5には、移動平均算出部166が取得する位置情報nに対応するパルス幅An、及び基準値負荷Bnが示されている。
【0063】
移動平均算出部166は、負荷計測部152から位置情報nと、その位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅Anとを取得する。移動平均算出部166は、取得した位置情報nに対応する基準値負荷Bnを学習機能部165から取得する。移動平均算出部166は、パルス幅An及び基準値負荷Bnの各々の移動平均値を位置情報n毎に算出する。なお、位置情報nに対するパルス幅Anに対する移動平均値を移動平均値ave_An、位置情報nに対する基準値負荷Bnに対する移動平均値を移動平均値ave_Bnとして表す。なお、移動平均には、位置情報の所定の間隔(例えば、位置情報n-300から位置情報nまでの間)に対応するDCモータ8の負荷を用いる。
【0064】
移動平均算出部166は、以下に示す(1)、(2)式を用いてパルス幅An及び基準値負荷Bnを補正して正規化する。正規化は、
図5に示すパルス幅Anと基準値負荷Bnとの差Δdを最小限にし、パルス幅An及び基準値負荷Bnを略同一の基準で比較して振幅の基準値をそろえるためである。正規化によって、周囲環境や測定環境等によるパルス幅An及び基準値負荷Bnの振幅の基準の変動、いわゆるオフセットを除去する。
【0065】
αn=An-ave_An …(1)
【0066】
βn=Bn-ave_Bn …(2)
【0067】
補正値αnは、位置情報nに対応するパルス幅Anの補正値である。補正値βnは、位置情報nに対応する基準値負荷Bnの補正値である。
図6には、移動平均算出部166が算出した位置情報nに対応する補正値αn及び補正値βnが示されている。パルス幅An及び基準値負荷Bnは、略同一基準として、0を基準として比較される。移動平均算出部166は、算出した補正値αn及び補正値βnを差分値算出部167に出力する。
【0068】
差分値算出部167は、移動平均算出部166から補正値αn及び補正値βnを取得する。差分値算出部167は、以下に示す(3)式を用いて負荷差分値Cnを算出する。
【0069】
Cn=αn-βn …(3)
【0070】
差分値算出部167は、補正値αnから補正値βnを差し引くことで負荷差分値Cnを算出する。
図7には、縦軸がパルス幅を示し、横軸が位置情報nを示し、算出した負荷差分値Cnが示されている。
図7の領域Yに示すように、差分値算出部167は、DCモータ8の負荷に対して再現性の高いノイズを除去することができる。すなわち、負荷差分値Cnは、再現性の高いノイズを除去したDCモータ8の負荷とみなすことができる。差分値算出部167は、算出した負荷差分値Cnを積算部168に出力する。
【0071】
積算部168は、差分値算出部167から負荷差分値Cnを取得する。積算部168は、負荷差分値Cnが積算閾値Pを超える場合、以下に示す(4)式を用いて負荷評価値である負荷積算値Dnを算出する。
【0072】
Dn=Dn-1+Cn …(4)
【0073】
積算部168は、負荷差分値Cnが積算閾値P以下である場合、以下に(5)式に示すように負荷積算値Dnを0とする。
【0074】
Dn=0 …(5)
【0075】
積算閾値Pは、予め設定される値であり、負荷差分値Cnを積算するか否かを判定する閾値である。負荷積算値Dn-1は、位置情報n-1に対応する負荷積算値である。負荷差分値Cnが積算閾値Pを超える場合、積算部168は、現在の位置情報nの1つ前の位置情報であるn-1に対応する負荷積算値Dn-1に対して、負荷差分値Cnを加算することで負荷積算値Dnを算出し、新たな負荷積算値に更新する。負荷差分値Cnが積算閾値P以下である場合、積算部168は、負荷積算値Dn-1に対して、負荷差分値Cnを加算せず、負荷積算値Dnを0とする。
【0076】
図8は、積算部168の動作を説明する図である。
図8における上側は、積算部168が差分値算出部167から取得する負荷差分値Cnを示す。
図8における下側は、積算部168が算出する負荷積算値Dnを示す。例えば、
図8における上側に示すように、負荷差分値C1=12、C2=12、C3=-13、C4=6、C5=10であり、かつ積算閾値Pが0である場合の負荷積算値Dnを説明する。積算部168は、位置情報n=1である場合、12を負荷積算値D1とする。次に、位置情報n=2である場合、積算部168は、D1に負荷差分値C2を加算した値である24をD2とする。位置情報n=3である場合、積算部168は、C3が0以下であるため、D3を0とする。位置情報n=4である場合、積算部168は、D3に負荷差分値C4を加算した値である6をD4とする。位置情報n=5である場合、積算部168は、D4に負荷差分値C5を加算した値である16をD5とする。
【0077】
積算閾値Pについて説明する。巾木部4bが障害物に接触すると、DCモータ8にかかる負荷は増大する。したがって、補正値αn>補正値βnとなり、負荷差分値Cnは正の値となる。そのため、巾木部4bが障害物に接触したことを検知する場合には、積算部168は、0以上の負荷差分値Cnを積算することで、DCモータ8にかかる負荷を増幅することができる。一般的には、積算閾値Pは0に設定される。0以上の負荷差分値Cnに対してノイズがある場合には、積算閾値Pを0より大きい値に調整する。積算部168は、ノイズ以上の負荷差分値Cnを積算することで、負荷差分値Cnのノイズを除去し、DCモータ8にかかる負荷を増幅することができる。積算部168は、積算した負荷積算値Dnを判定部169に出力する。
【0078】
図9には、移動平均算出部166が取得する位置情報nに対応する負荷積算値Dnが示される。
図9における縦軸はパルス幅を示し、横軸は位置情報nを示す。判定部169は、積算部168から供給された負荷積算値Dnを取得する。判定部169は、格納部17から判定閾値Qを取得する。そして、判定部169は、
図9に示すように、取得した負荷積算値Dnが判定閾値Qを超えるか否かを判定することで、シャッターカーテン4の巾木部4bが障害物に接触したか否かを検出する。判定閾値Qは、巾木部4bが障害物に接触したことを判定する値であり、例えばDCモータ8に4kgの負荷が加わった際の負荷積算値である。
図9に示すnxは、巾木部4bが障害物に接触した際の位置情報である。
【0079】
判定部169は、取得した負荷積算値Dnが判定閾値Qを超えた判定回数xが規定回数に達した場合、巾木部4bが障害物に接触したと判定する。判定部169は、巾木部4bが障害物に接触したと判定した場合、駆動制御部14に制御信号を出力する。判定回数xは、負荷積算値Dnに対するノイズの影響を低減するたけに用いられる値である。判定部169は、x回連続で負荷積算値Dnが判定閾値Qを越えた場合に、巾木部4bが障害物に接触したと判定する。x回は、例えば2回以上である。
【0080】
[初期設定方法]
制御部13の上限位置Pu及び下限位置Plの設定方法について、
図10及び
図11を用いて説明する。以下の設定方法の説明においては、第1の過負荷検知と第2の過負荷検知とは、異なる方法による過負荷検知である。ずれΔH1は無視できる程度に小さいものとする。
【0081】
制御部13は、操作装置3から設定信号を受信した場合には、設定モードに移行する。制御部13は、
図10に示されるように、設定モードに移行すると、ステップS101において初期化処理を実行する。制御部13の駆動制御部14は、ステップS102においてシャッターカーテン4の開動作を実行する。制御部13は、ステップS102においてDCモータ8を低速の第1速度で駆動する。制御部13は、シャッターカーテン4の開動作中においては、カウンタ151で位置パルスのカウント値nをカウントアップしている。
【0082】
第1の処理部161は、ステップS102においてシャッターカーテン4の開動作が開始されると、ステップS103においてカウント値nに対応するパルス幅Anに基づいて、DCモータ8が過負荷状態か否かを判定する第1の過負荷検知を実行する。例えば、第1の処理部161は、カウント値nに対応するパルス幅Anをカウント値nごとに取得し、パルス幅An又はパルス幅Anの変化率が閾値th1以上か否かを判定する。第1の処理部161は、パルス幅An又はパルス幅Anの変化率が閾値th1以上であると判定した場合にはDCモータ8が過負荷状態であると判定する。第1の処理部161は、パルス幅An又はパルス幅Anの変化率が閾値th1未満であると判定した場合にはDCモータ8が過負荷状態ではないと判定する。第1の処理部161は、DCモータ8が過負荷状態ではないと判定した場合には、カウント値n=n+1のパルス幅Anに基づいてDCモータ8が過負荷状態か否かを再度判定する。ステップS103の処理は、開動作中においてDCモータ8が過負荷状態であると判定されるまで継続される。
【0083】
駆動制御部14は、ステップS103においてDCモータ8が過負荷状態であると判定された場合には、ステップS104においてDCモータ8の回転を停止させてシャッターカーテン4の開動作を停止させる。ステップS105において第1の処理部161は、ステップS104において停止されたシャッターカーテンの現在位置である現在のカウント値nを「0」に設定する。
図11に示されるように、n=「0」は、上限位置Puを表す。カウント値nを「0」に設定することは、上限位置Puを設定することと同義である。
【0084】
駆動制御部14は、上限位置Puが設定されると、ステップS106においてシャッターカーテン4の閉動作を実行する。ステップS107において負荷検出部15は、シャッターカーテン4の閉動作によって出力される位置パルスを取得するごとにカウント値nを「+1」カウントアップする。カウント値nは、上限位置Puを基準としてシャッターカーテン4が下降した距離に相当する。負荷検出部15は、カウント値nに対応するパルス幅Anを求め、カウント値nとカウント値nに対応するモータ負荷である位置パルスのパルス幅Anとをカウント値nごとに処理部16に出力する。
【0085】
第2の処理部162は、ステップS106の閉動作において、下記に示す閾値nthを通過した場合にはカウント値n及びパルス幅Anに基づいて第2の過負荷検知を実行する。ステップS108において第2の処理部162は、第2の過負荷検知として、以下に示す式(6)に基づいて基準値負荷Bnをカウント値nごとに求める。
【0086】
Bn=An-A(n-P1) …(6)
【0087】
基準値負荷Bnは、現在のAnと、DCモータ8におけるn-P1で表されるP1回転前のパルス幅Aとの差である。基準値負荷Bnは、現在のAnと、P1前のパルス幅Aとの差である。P1は、予め設定されている固定値である。P1回転前のパルス幅Aは、nの直前ではなく、二つ以上前のカウント値が望ましい。例えば、現在のカウント値n=100、P1=50である場合には、第2の処理部162は、格納部17からA50の負荷情報を読み出し、カウント値n=100における計測値B100=A100-A50を求める。
【0088】
ステップS109において第2の処理部162は、現在のカウント値nが閾値nth以上か否かを判定する。第2の処理部162は、現在のカウント値nが閾値nth以上であると判定した場合には、シャッターカーテン4の位置が下限位置Plに近づいていると判定して、ステップS110の処理を実行する。第2の処理部162は、現在のカウント値nが閾値nth未満であると判定した場合には、ステップS107の処理に移行する。
【0089】
閾値nthは、予め設定されるものであって、任意に設定可能である。例えば、閾値nthは、実験により予め設定される。シャッターカーテン4が閾値nthを通過した場合には第2の過負荷検知が開始される。例えば、閾値nthは、シャッターカーテン4の製作制限の最小値のパルス数であってもよいし、DCモータ8の初動のデータバラつきを無視するための値であってもよい。
【0090】
第2の処理部162は、現在のカウント値nが閾値nth以上であると判定された場合には、ステップS110において基準値負荷Bnが閾値Sを超えるか否かを判定する。第2の処理部162は、基準値負荷Bnが閾値Sを超えた回数である判定回数iが1以上の規定回数ithを超えた場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定する。第2の処理部162は、(ith+1)回連続して基準値負荷Bnが閾値Sを超えた場合にはDCモータ8が過負荷状態であると判定する。閾値Sは固定値でもよいし、カウント値nや基準値負荷Bnの値と連動する変数でもよい。
【0091】
第2の処理部162は、ステップS110において基準値負荷Bnが閾値Sを超える場合、ステップS111において判定回数iを1インクリメントする。第2の処理部162は、ステップS110において基準値負荷Bnが閾値S以下の場合、ステップS112において判定回数iを0にリセットして、ステップS107の処理を移行する。
【0092】
第2の処理部162は、ステップS111の処理後において、ステップS113において判定回数iが規定回数ithを超えたか否かを判定する。第2の処理部162は、判定回数iが規定回数ithを超えたと判定した場合には、DCモータ8が過負荷状態であると判定してステップS114の処理を実行する。第2の処理部162は、判定回数iが規定回数ithを超えていないと判定した場合には、DCモータ8が過負荷状態ではないと判定してステップS107の処理に移行する。
【0093】
第2の処理部162は、ステップS114において、判定回数iが規定回数ithを超えたと判定したときのカウント値nであるカウント値nxに基づいて下限位置Plを設定する。カウント値nxは、シャッターカーテン4の位置が押し込み位置であるときのカウント値nである。
【0094】
例えば、第2の処理部162は、カウント値nxから下記の式(7)を用いてカウント値ndを求め、カウント値ndを下限位置Plに設定する。
【0095】
nd=nx-n2 …(7)
【0096】
カウント数n2は、実験などから求められる固定値でもよいし、実験などから求められる固定値と閾値Sとから算出される変数の合計であってもよい。カウント数n2が実験などから求められる固定値と閾値Sとから算出される変数の合計である場合にはサイズによるバラつきなく上記撓みの無い下限位置Plがより精度よく得られる。
【0097】
例えば、第2の処理部162は、カウント値nxから下記の式(8)を用いてカウント値ndを求め、そのカウント値ndを下限位置Plに設定してもよい。
【0098】
nd=nx-P2-S/P3 …(8)
【0099】
P2及びP3は、実験などから求められる固定値であってもよい。計算式(8)は、シャッターカーテン4のサイズによるバラつきがなく上記撓みの無い下限位置Plがより精度よく得られる式である。シャッターカーテン4のサイズによらず、シャッターカーテン4が下限位置Plに到達してから固定値P2に相当する一定時間後に負荷が上昇し、その負荷の上昇角度の傾きは一定である。閾値Sが大きくなるほど過負荷検知までの時間を要し撓みが大きくなる。計算式(8)では、カウント値nxに対して、固定値P2と、閾値Sに連動するS/P3とを減算することで、サイズによるバラつきがなく上記撓みの無い下限位置Plをより精度よく算出することができる。
【0100】
シャッターカーテン4が押し込み位置に到達した場合には、シャッターカーテン4に撓みが発生している場合がある。駆動制御部14は、ステップS114においてカウント値ndが求められた場合又はステップS113においてDCモータ8の過負荷状態が検知された場合には、DCモータ8の閉動作を停止するとともに、上記撓みを解消するために、ステップS115においてシャッターカーテン4をカウント値nxである押し込み位置からカウント値ndである下限位置Plまで開動作させる「撓み解消動作」を行う。
【0101】
撓み解消動作では開方向にDCモータ8を動作させるが、実際には停止命令位置と停止位置にはΔxplsと呼ぶ数パルスのズレが存在する場合がある。そのため、駆動制御部14は、「撓み解消動作」では下限位置Pl+Δxplsの位置で停止させて調整してもよい。このΔxplsは、カウント数n2より小さい値である。
【0102】
撓み解消がされた状態である撓み解消動作が完了したシャッターカーテン4の状態とは、第2の過負荷検知でDCモータ8の過負荷状態が検知されたときのシャッターカーテン4の撓みが緩和されている状態であればよい。撓み解消動作が完了したシャッターカーテン4の状態は、シャッターカーテン4が全閉状態であって、且つ、第2の過負荷検知でDCモータ8の過負荷状態が検知されたときのシャッターカーテン4の撓みが緩和されている状態である。シャッターカーテン4の撓みが緩和されている状態は、撓みがない状態や撓みが電動シャッター装置2において許容される程度である状態を含む。
【0103】
第2の処理部162は、ステップS115における撓み解消動作が終了すると、ステップS116において、設定したカウント値ndである下限位置Plを格納部17に格納して、設定モードを終了する。第2の処理部162は、撓み解消動作が終了した時点でのシャッターカーテン4の現在位置であるカウント値ndを下限位置Plに設定してもよい。
【0104】
[障害物検知方法]
制御部13の障害物検知方法について、
図12を用いて説明する。以下では、シャッターカーテン4の全開状態を初期状態とし、シャッターカーテン4及びDCモータ8は高速の第2速度で動作するとして説明する。シャッター制御装置10は、所定の周期で以下に示す障害物検知システムを実行する。
【0105】
ステップS201において、制御部13は、閉スイッチに対する操作信号を操作装置3から受信したか否かを判定する。制御部13は、閉スイッチに対する操作信号を受信した場合、ステップS202の処理を実行する。制御部13は、閉スイッチに対する操作信号を受信しない場合には、障害物検知システムを実行しない。
【0106】
ステップS202において、カウンタ151は、出力部9から供給された位置パルスを検出し、位置パルスを取得する毎に位置情報nを1インクリメントする。位置情報nの初期値は、0(ゼロ)である。カウンタ151は、位置パルス及び位置情報nを負荷計測部152に出力する。
【0107】
ステップS203において、負荷計測部152は、カウンタ151から位置パルス及び位置情報nを取得する。そして、負荷計測部152は、位置パルスのパルス幅Anを位置情報n毎に測定する。負荷計測部152は、位置情報nと、位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅Anとを移動平均算出部166に出力する。
【0108】
ステップS204において、移動平均算出部166は、負荷計測部152から位置情報nと、位置情報nに対応する位置パルスのパルス幅Anとを取得する。移動平均算出部166は、学習機能部165が学習機能により選択した位置情報nに対応する高速の第2速度時の基準値負荷Bnを学習機能部165から取得する。
【0109】
ステップS205において、移動平均算出部166は、パルス幅Anの移動平均値ave_An及び基準値負荷Bnの移動平均値ave_Bnを算出する。そして、移動平均算出部166は、(1)式及び(2)式を用いて、パルス幅Anから移動平均値ave_Anを減算することで補正値αnを算出する。移動平均算出部166は、(1)式及び(2)式を用いて、基準値負荷Bnから移動平均値ave_Bnを減算することで補正値βnを算出する。移動平均算出部166は、算出した補正値αn及び補正値βnを差分値算出部167に出力する。
【0110】
ステップS206において、差分値算出部167は、移動平均算出部166から補正値αn及び補正値βnを取得する。差分値算出部167は、(3)式を用いて、補正値αnから補正値βnを差し引くことで負荷差分値Cnを算出する。差分値算出部167は、算出した負荷差分値Cnを積算部168に出力する。
【0111】
ステップS207において、積算部168は、差分値算出部167から負荷差分値Cnを取得する。積算部168は、負荷差分値Cnが積算閾値Pを超える場合、(4)式を用いて、負荷積算値Dn-1に負荷差分値Cnを加算することで負荷積算値Dnを算出する。積算部168は、差分値算出部167から負荷差分値Cnを取得する。積算部168は、負荷差分値Cnが積算閾値P以下である場合、負荷積算値Dnを0とする。積算部168は、算出した負荷積算値Dnを判定部169に出力する。
【0112】
ステップS208において、判定部169は、積算部168から供給された負荷積算値Dnを取得する。判定部169は、格納部17から判定閾値Qを取得する。判定部169は、取得した負荷積算値Dnが判定閾値Qを超える場合、ステップS209の処理を実行する。判定部169は、取得した負荷積算値Dnが判定閾値Q以下である場合、ステップS213の処理を実行する。
【0113】
ステップS209において、判定部169は、判定回数xを1インクリメントする。ステップS210において、判定部169は、判定回数xが規定回数以上である場合、ステップS211の処理を実行する。判定部169は、判定回数xが規定回数未満である場合、ステップS214の処理を実行する。
【0114】
ステップS211において、判定部169は、駆動制御部14に制御信号を出力する。駆動制御部14は、判定部169から制御信号を取得すると、駆動部12に停止指令を出力する。駆動部12は、制御部13からの停止指令に基づいて、DCモータ8に対する駆動信号の出力を停止する。シャッターカーテン4の閉動作が停止される。
【0115】
ステップS212において、判定部169は、判定回数xを0(ゼロ)にリセットする。ステップS213において、判定部169は、判定回数xを0(ゼロ)にリセットし、ステップS202の処理を実行する。
【0116】
ステップS214において、制御部13は、シャッターカーテン4が全閉状態か否かを判定する。例えば、制御部13は、位置情報nが全閉回数に達した場合、シャッターカーテン4が全閉状態であると判定し、ステップS211の処理を実行する。制御部13は、位置情報nが全閉回数に達していない場合、シャッターカーテン4が全閉状態ではないと判定し、ステップS202の処理を実行する。
【0117】
実施形態の電動シャッター装置2においては、低速の第1速度でDCモータ8を駆動することによりシャッターカーテン4が経時的に変化する位置及び当該位置における負荷情報とを対応付けた第1学習データを格納部17が格納し、格納部17に格納された第1学習データに基づいて、高速の第2速度に対応した第2学習データに変換部170が変換するため、第1速度での学習後に第2速度での学習に係る手間が不要となることによって、簡単に第2学習データを取得でき作業性が向上する。
【0118】
実施形態の電動シャッター装置2においては、第1学習データ及び第2学習データが組みで格納部17に格納されているため、第1学習データ及び第2学習データをそれぞれ位置情報n毎に個別に格納する場合と比較して記憶領域を低減することができ、コストを抑制することができる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0120】
例えば、上記実施形態では、第1学習データに基づき変換した第2学習データを、一例として、
図4に示したように、シャッターカーテン4の位置に対応する位置情報n毎に組みで格納部17に格納する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第1学習データのみを格納部17に格納しておき、シャッターカーテン4を高速の第2速度で開閉する場合には、格納部17に格納された第1学習データを取得した後に、第1学習データに基づき変換した第2学習データを用いてDCモータ8をPWM制御する構成であってもよい。
【0121】
実施形態の電動シャッター装置2においては、低速の第1速度に対応した第1学習データを格納部17に格納し、変換部170が第1学習データに基づいて、高速の第2速度に対応した第2学習データに変換する構成を例示したが、この構成に限定されない。高速の第2速度に対応した第2学習データを格納部17に格納し、変換部170が第2学習データに基づいて、第1学習データに変換する構成であってもよい。第1学習データの格納時は、シャッターカーテンの経時的に変化する位置に基づいてシャッターカーテンの移動平均を取るようにして格納してもよい。この場合におけるシャッターカーテンの位置データは移動平均の幅となる。
【0122】
実施形態における制御部13の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。制御部13の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…シャッターシステム、2…電動シャッター装置、4シャッターカーテン、8…DCモータ、10…シャッター制御装置、13…制御部、17…格納部、160…異常検知部、170…変換部