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  • 特開-斜板式可変容量型ピストンポンプ 図1
  • 特開-斜板式可変容量型ピストンポンプ 図2
  • 特開-斜板式可変容量型ピストンポンプ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158992
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】斜板式可変容量型ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/324 20200101AFI20241031BHJP
   F04B 1/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F04B1/324
F04B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074688
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】山本 怜
(72)【発明者】
【氏名】宮田 脩平
(72)【発明者】
【氏名】池生 慎一
(72)【発明者】
【氏名】横田 貴也
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070BB12
3H070CC02
3H070DD44
3H070DD52
3H070DD91
(57)【要約】
【課題】斜板が傾転する際の衝突音の発生を抑制することができ、静音性能を高めることが可能な斜板式可変容量型ピストンポンプを提供する。
【解決手段】本発明にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプの構成は、シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入されたピストンと、ピストンの頭部が摺接可能にされ且つシャフトの回転に対して相対回転不能にハウジング内に支持された斜板と、斜板のアームを押して傾転させるスプリングユニットと、斜板の傾転角が最大のときに斜板に当接して回動を規制する第1ストッパと、を備え、第1ストッパはハウジングに摺動可能に取り付けられていて、第1ストッパとハウジングとの間には、圧油が供給されるダンパ室が形成されていて、ダンパ室に圧油を供給する油路にオリフィスが配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、
前記シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンと、
前記ピストンの頭部が摺接可能にされ且つ前記シャフトの回転に対して相対回転不能に前記ハウジング内に支持された斜板と、
前記斜板の一端から延びたアームを押して傾転させるスプリングユニットと、
前記斜板の傾転角が最大のときに該斜板に当接して回動を規制する第1ストッパと、
を備え、
前記第1ストッパは前記ハウジングに摺動可能に取り付けられていて、
前記第1ストッパと前記ハウジングとの間には、圧油が供給されるダンパ室が形成されていて、
前記ダンパ室に圧油を供給する油路にオリフィスが配置されていることを特徴とする斜板式可変容量型ピストンポンプ。
【請求項2】
シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、
前記シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンと、
前記ピストンの頭部が摺接可能にされ且つ前記シャフトの回転に対して相対回転不能に前記ハウジング内に支持された斜板と、
前記斜板の一端から延びたアームを押して傾転させるスプリングユニットと、
前記斜板の傾転角が最小のときに該斜板に当接して回動を規制する第2ストッパと、
を備え、
前記第2ストッパは前記ハウジングに摺動可能に取り付けられていて、
前記第2ストッパと前記ハウジングとの間には、圧油が供給されるダンパ室が形成されていて、
前記ダンパ室に圧油を供給する油路にオリフィスが配置されていることを特徴とする斜板式可変容量型ピストンポンプ。
【請求項3】
前記圧油は、外部のポンプ、または当該斜板式可変容量型ピストンポンプの吐出ポートから供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の斜板式可変容量型ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械や産業用機械等に用いられる斜板式可変容量型ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や産業用機械には、可変容量型ポンプが用いられることがある。可変容量型ポンプの1つである斜板式可変容量型ピストンポンプは、斜板(スワッシュプレートとも称される)を傾転させることでポンプの容量を変化させることができる。例えば特許文献1には、「シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、シリンダバレルに軸方向に摺接可能に挿入された複数個のピストンの頭部と摺接可能にされかつシャフトの回転に対して相対回転不能にハウジング内に支持された斜板と」を有する可変容量ポンプが開示されている。
【0003】
特許文献1の可変容量ポンプでは、斜板は、前記ハウジングに設けた駆動装置に押圧され、シャフトの回転軸に直交する軸線を形成する2個のボール又は円筒状体の回りを傾転させて、斜板の傾斜角を変えるようにされている。また2個のボール又は円筒状体は、「セラミック材料で形成され、セラミック材料は、重量%で92-99.5%の酸化アルミニウム(Al2O3)と、残部を不可避な不純物として、SiO2、CaO2、MgO、及び微量のNa2O、K2O、及びFe」を含むとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第291559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の可変容量ポンプでは、スプリング荷重による斜板を保持するモーメント(Ms)と、ピストンの反力による斜板を傾転させるモーメント(Mp)とのバランスによって斜板が傾転する。Mp<Msの場合には、斜板のアームはストッパに押し付けられた状態となっている。そしてMp>Msとなると、斜板が傾転することにより、斜板のアームがストッパから離れる。このとき、斜板にはピストンの圧力脈動によって振動が生じる。すると、その振動によって斜板がストッパに細かく衝突する衝突音が騒音となってしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、斜板が傾転する際の衝突音の発生を抑制することができ、静音性能を高めることが可能な斜板式可変容量型ピストンポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプの代表的な構成は、シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンと、ピストンの頭部が摺接可能にされ且つシャフトの回転に対して相対回転不能にハウジング内に支持された斜板と、斜板の一端から延びたアームを押して傾転させるスプリングユニットと、斜板の傾転角が最大のときに斜板に当接して回動を規制する第1ストッパと、を備え、第1ストッパはハウジングに摺動可能に取り付けられていて、第1ストッパとハウジングとの間には、圧油が供給されるダンパ室が形成されていて、ダンパ室に圧油を供給する油路にオリフィスが配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプの他の構成は、シャフトと共に回転可能にハウジング内に支持されたシリンダバレルと、シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンと、ピストンの頭部が摺接可能にされ且つシャフトの回転に対して相対回転不能にハウジング内に支持された斜板と、斜板の一端から延びたアームを押して傾転させるスプリングユニットと、斜板の傾転角が最小のときに斜板に当接して回動を規制する第2ストッパと、を備え、第2ストッパはハウジングに摺動可能に取り付けられていて、第2ストッパとハウジングとの間には、圧油が供給されるダンパ室が形成されていて、ダンパ室に圧油を供給する油路にオリフィスが配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記圧油は、外部のポンプ、または当該斜板式可変容量型ピストンポンプの吐出ポートから供給されるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、斜板が傾転する際の衝突音の発生を抑制することができ、静音性能を高めることが可能な斜板式可変容量型ピストンポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプ(最大容量時)を説明する図である。
図2】本実施形態にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプ(最小容量時)を説明する図である。
図3図1および図2の斜板の正面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1および図2は、本実施形態にかかる斜板式可変容量型ピストンポンプ(以下、ピストンポンプ100と称する)を説明する図である。図1は、斜板120の傾転角が最大である最大容量時のピストンポンプ100を例示している。図2は、斜板120の傾転角が最小である最小容量時のピストンポンプ100を例示している。
【0014】
本実施形態のピストンポンプ100は、吐出口(不図示)を通じて作動油等の流体を不図示の建設機械や産業用機械に供給する装置である。図1および図2に示すように本実施形態のピストンポンプ100はハウジング102を有する。ハウジング102内には、シャフト104(軸)と共に回転可能に支持されたシリンダバレル110が配置されている。
【0015】
シリンダバレル110には、シャフト104の軸方向Dに摺動可能な複数個のピストン112が挿入されている。複数のピストン112は、シリンダバレル110の周方向に並んで配置されていて、シリンダバレル110を回転させると往復運動し、吐出口から作動油が吐出される。またピストン112は、摺接可能に斜板120に当接する頭部112aを有する。
【0016】
図3は、図1および図2の斜板120の正面図および断面図である。図1および図2に示す斜板120は、シャフト104の回転に対して相対回転不能にハウジング102内に支持されていて、ポンプの吐出圧に応じて変化するピストン112の反力に連動して傾転する。
【0017】
図3に示すように斜板120は、シャフト104が挿通される挿通孔122aを有する円環部122と、円環部122(斜板120の一端)から延びたアーム124とを有する。また円環部122には、ボール130(図1および図2参照)が嵌め込まれる2つの穴122bが形成されている。この2つの穴122bそれぞれに嵌め込まれる2つのボール130によってシャフト104の回転軸(軸方向D)に直交する軸線Jが形成される。したがって、斜板120が2つのボール130の回りを傾転し、斜板120の傾転角が変化可能となる。
【0018】
また図1および図2に示すようにハウジング102内には、斜板120の一端から延びたアーム124を押して傾転させるスプリングユニット140が設けられている。スプリングユニット140は、スプリング142、スプリング受け146およびスプリングホルダ148を有する。スプリング142は、スプリング受け146によって一端142aが支持され、スプリングホルダ148によって他端142bが支持される。
【0019】
またピストンポンプ100は、ハウジング102に摺動可能に取り付けられた第1ストッパ150および第2ストッパ160を備える。第1ストッパ150は、斜板120の傾転角が最大のときに斜板120のアーム124に当接して回動を規制する。第2ストッパ160は、斜板120の傾転角が最小のときに斜板120の円環部122に当接して回動を規制する。
【0020】
第1ストッパ150および第2ストッパ160は、抜け止めとしてのスナップリング152、162(Cリング)によってハウジングに固定されている。また第1ストッパ150および第2ストッパ160の外周には、油のリークを防止するためのシール154、164(Oリング)が設けられている。
【0021】
本実施形態のピストンポンプ100の特徴として、第1ストッパ150とハウジング102との間、および第2ストッパ160とハウジング102との間には、圧油が供給されるダンパ室(以下、第1ダンパ室172および第2ダンパ室174と称する)がそれぞれ形成されている。また第1ダンパ室172および第2ダンパ室174にはそれぞれ、第1油路180および第2油路184を通じて圧油が供給され、第1油路180および第2油路184にはそれぞれ第1オリフィス182および第2オリフィス186が配置されている。
【0022】
本実施形態では、図1および図2に示すようにピストンポンプ100の外部のポンプ190から第1ダンパ室172および第2ダンパ室174に圧油が供給される構成を例示している。ただし、かかる構成は例示に過ぎず、ピストンポンプ100の吐出ポート(吐出口)から第1ダンパ室172および第2ダンパ室174に圧油が供給される構成としてもよい。
【0023】
次に図1および図2を参照し、本実施形態のピストンポンプ100の動作について説明する。本実施形態のピストンポンプ100は、スプリングユニット140の荷重による斜板120を保持するモーメント(以下、保持モーメントMsと称する)と、ピストン112の反力による斜板120を傾転させるモーメント(以下、傾転モーメントMpと称する)との関係によって斜板120が傾転する。
【0024】
図1は、保持モーメントMsが傾転モーメントMpより大きい「ポンプ容量最大時」の状態を例示している。保持モーメントMsが傾転モーメントMpより大きい場合、斜板120のアーム124は、スプリングユニット140からかかるスプリング荷重によって押され、傾転した状態になる。このときの斜板120の傾転角θによってポンプの最大吐出流量が定まる。
【0025】
図2は、傾転モーメントMpが保持モーメントMsより大きい「ポンプ容量最小時」の状態を例示している。ポンプの吐出圧力が増大すると、傾転モーメントMpが保持モーメントMsよりも大きくなる。すると、斜板120はピストン112の反力によって押されて傾転する。これにより、斜板120の傾斜角θは、図1の状態よりも小さくなる。
【0026】
上記説明した本実施形態のピストンポンプ100では、「ポンプ容量最大時」に傾転角θが最大となった斜板120のアーム124は第1ストッパ150に接触し、「ポンプ容量最小時」に傾転角が最小となった斜板120の円環部122は第2ストッパ160に接触する。このとき、第1ストッパ150および第2ストッパ160それぞれに対して第1ダンパ室172および第2ダンパ室174が形成されているため、第1ダンパ室172および第2ダンパ室174に充填されている油の弾性によってダンパ効果が得られる。したがって、斜板120が第1ストッパ150および第2ストッパ160に衝突した際の衝撃がハウジング102に直接伝達されないため、衝突音を抑制することができる。
【0027】
特に本実施形態では、第1油路180および第2油路184それぞれに第1オリフィス182および第2オリフィス186が設けられている。これにより、第1ストッパ150や第2ストッパ160が斜板120に叩かれることによって第1ダンパ室172や第2ダンパ室174の作動油が押し出された際に、作動油が第1油路180および第2油路184を通過する流量を第1オリフィス182および第2オリフィス186によって絞ることができる。したがって、衝突音を抑制する効果を高めることができる。
【0028】
また上述したように本実施形態では第1ストッパ150および第2ストッパ160はスナップリング152、162によってハウジング102に固定されているため、圧油によって第1ストッパ150および第2ストッパ160がハウジング102から押し出される方向(図中の右に向かう方向)の力が作用しても、ハウジング102からの第1ストッパ150および第2ストッパ160の脱落を好適に防止することができる。更に第1ストッパ150および第2ストッパ160に対してシール154、164が嵌め込まれていることにより、圧油のリークを確実に防ぐことが可能である。
【0029】
上記説明したように本実施形態のピストンポンプ100によれば、ストッパ150、160とハウジング102との間にダンパ室172、174を形成したことにより、ピストン112の圧力脈動によって生じた振動に起因する斜板とストッパとの衝突音を抑制することができ、静音性能を高めることが可能となる。
【0030】
なお本実施形態では、ピストンポンプ100が第1ストッパ150および第2ストッパ160の両方を備える構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、斜板120の傾転角が最大のときの斜板120のアーム124の衝突音を抑制したいのであれば第1ストッパ150のみを設ける構成とすればよく、斜板120の傾転角が最小のときの斜板120の円環部122の衝突音を抑制したいのであれば第2ストッパ160のみを設ける構成としてもよい。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、建設機械や産業用機械に用いられる斜板式可変容量型ピストンポンプとして利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…ピストンポンプ、102…ハウジング、104…シャフト、110…シリンダバレル、112…ピストン、112a…頭部、120…斜板、122…円環部、122a…挿通孔、122b…穴、124…アーム、130…ボール、140…スプリングユニット、142…スプリング、142a…一端、142b…他端、146…スプリング受け、148…スプリングホルダ、150…第1ストッパ、152…スナップリング、154…シール、160…第2ストッパ、162…スナップリング、164…シール、172…第1ダンパ室、174…第2ダンパ室、180…第1油路、182…第1オリフィス、184…第2油路、186…第2オリフィス、190…ポンプ、D…軸方向、J…軸線
図1
図2
図3