(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158993
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水中音響通信システム
(51)【国際特許分類】
H03J 9/04 20060101AFI20241031BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20241031BHJP
H04B 11/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H03J9/04
H04Q9/00 331B
H04B11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074689
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
(72)【発明者】
【氏名】穗▲崎▼ 英治
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 道洋
(72)【発明者】
【氏名】下原 正弘
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048BA21
5K048DA01
5K048DB05
5K048EB02
5K048EB12
5K048FB10
5K048FB15
5K048HA22
5K048HA24
(57)【要約】
【課題】水中の機械が動作しているか否かを容易に判断可能な技術を提供する。
【解決手段】水中音響通信システム1は、作業者側装置10と機械側装置30を有する。作業者側装置は、操作部12aと、第1の周波数の音波を送信する第1の送信部14と、第1の送信部から送信された音波を受信する第1の受信部16と、操作部の操作に応じて第1の送信部に第1の周波数の音波を送信させる制御と、第1の受信部で受信された音波の波形が、第1の送信部から送信された音波の波形と比べて乱れている場合、機械が動作していると判断する制御と、を行う第1の制御部18とを有する。機械側装置は、第1の送信部から送信された音波を受信する第2の受信部32と、第2の周波数の音波を送信する第2の送信部34と、第2の受信部で第1の送信部から送信された音波が受信された場合、第2の送信部に第2の周波数の音波を送信させる制御を行う第2の制御部36とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者側装置と、水中の機械に設置された機械側装置とを有する水中音響通信システムであって、
前記作業者側装置は、
作業者が操作する操作部と、
第1の周波数の音波を送信するための第1の送信部と、
少なくとも前記第1の送信部から送信された音波を受信するための第1の受信部と、
前記操作部の操作に応じて、前記第1の送信部に前記第1の周波数の音波を送信させる制御と、前記第1の受信部で受信された音波の波形が、前記第1の送信部から送信された音波の波形と比べて乱れている場合に、前記機械が動作していると判断する制御と、を行う第1の制御部と、
を有し、
前記機械側装置は、
少なくとも前記第1の送信部から送信された音波を受信するための第2の受信部と、
第2の周波数の音波を送信するための第2の送信部と、
前記第2の受信部で前記第1の送信部から送信された音波が受信された場合に、前記第2の送信部に前記第2の周波数の音波を送信させる制御を行う第2の制御部と、
を有する、
ことを特徴とする水中音響通信システム。
【請求項2】
前記作業者側装置は、提示部を有し、
前記第1の制御部は、前記提示部に、前記判断結果を提示させる制御を行う、
請求項1に記載の水中音響通信システム。
【請求項3】
前記第1の制御部は、前記第1の受信部で受信された音波の波形が、前記第1の送信部から送信された音波の波形と比べて乱れていない場合に、前記第1の送信部に前記第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う、
請求項1に記載の水中音響通信システム。
【請求項4】
前記第2の制御部は、前記機械の動作状況に応じて、前記第2の送信部に、前記第2の周波数とは異なる第3の周波数の音波を送信させる制御を行い、
前記第1の制御部は、前記第1の受信部で受信された音波の波形に、前記第3の周波数の音波の波形が含まれていると判断した場合に、前記第1の送信部に前記第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う、
請求項1に記載の水中音響通信システム。
【請求項5】
前記作業者側装置は、提示部を有し、
前記第1の制御部は、前記第1の受信部で受信された音波の波形に、前記第3の周波数の音波の波形が含まれていると判断した場合に、前記第1の送信部に前記第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う前に、前記提示部に、前記判断結果を提示させる制御を行う、
請求項4に記載の水中音響通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中音響通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中構造物に対する作業を、水中での遠隔操作により実施可能なシステムが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の水中玉外しシステムは、水中音響通信設備を利用して、指令情報発信装置に入力された水中玉外し装置に対する動作指令を指令情報として水中に発信する。また、これを機械制御装置で受信することにより、水中玉外し装置の動作を指令情報に基づいて制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、濁度の高い水中において、水中玉外し装置が指令通りに動作しているかの判断が難しくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水中の機械が動作しているか否かを容易に判断可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水中音響通信システムは、作業者側装置と、水中の機械に設置された機械側装置とを有する水中音響通信システムであって、前記作業者側装置は、作業者が操作する操作部と、第1の周波数の音波を送信するための第1の送信部と、少なくとも前記第1の送信部から送信された音波を受信するための第1の受信部と、前記操作部の操作に応じて、前記第1の送信部に前記第1の周波数の音波を送信させる制御と、前記第1の受信部で受信された音波の波形が、前記第1の送信部から送信された音波の波形と比べて乱れている場合に、前記機械が動作していると判断する制御と、を行う第1の制御部と、を有し、前記機械側装置は、少なくとも前記第1の送信部から送信された音波を受信するための第2の受信部と、第2の周波数の音波を送信するための第2の送信部と、前記第2の受信部で前記第1の送信部から送信された音波が受信された場合に、前記第2の送信部に前記第2の周波数の音波を送信させる制御を行う第2の制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水中の機械が動作しているか否かを容易に判断可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る水中音響通信システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2A】実施形態に係る作業者側装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図2B】実施形態に係る機械側装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3A】実施形態に係る作業者側装置のスピーカから送信される音波の波形の一例を示す図である。
【
図3B】実施形態に係る作業者側装置のマイクで受信される音波の波形の一例を示す図である。
【
図4A】実施形態に係る機械側装置の動作の別の例を示すフローチャートである。
【
図4B】実施形態に係る作業者側装置の動作の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る水中音響通信システム1について説明する。
【0011】
<水中音響通信システム>
図1は、実施形態に係る水中音響通信システム1の構成を概略的に示す図である。水中音響通信システム1は、水中で音波の送受信を行うことにより、水中における機械50の動作を制御するためのシステムである。水中音響通信システム1は、海洋や河川もしくは湖沼等の水中で使用可能である。機械50は、水中で動作するものであればよく、例えばアクアジャスター(登録商標)等が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、水中音響通信システム1は、作業者側装置10と、機械側装置30とを有する。
【0013】
[作業者側装置]
作業者側装置10は、ダイバー等の水中作業者もしくは船上の水上作業者(以下、作業者という)により選択された機械50に対する動作指示を、音波として送信するための装置である。
【0014】
作業者側装置10は、リモコン12と、スピーカ14(第1の送信部の一例)と、マイク16(第1の受信部の一例)と、コンピュータ18(第1の制御部の一例)と、を有する。
図1は、コンピュータ18が船上に配置され、リモコン12、スピーカ14、及びマイク16が水中に配置される場合を示す。なお、リモコン12は、船上に配置されてもよい。また、コンピュータ18は、水密に構成されていれば、水中に配置されてもよい。リモコン12、スピーカ14、マイク16、及びコンピュータ18は、それぞれ、各接続ポートを介して、無線または有線により電気通信可能に接続されている。
【0015】
=リモコン=
リモコン12は、作業者が操作するための操作部12aと、作業者が機械50の動作状況を確認するための提示部12bとを有する。リモコン12は、水密に構成されていることが好ましい。
【0016】
操作部12aは、作業者が機械50に対する動作指示を選択し、機械50を動作させるための音波送信のオン/オフを切り替えるためのものである。つまり、作業者が操作部12aを操作している間、コンピュータ18の制御により、スピーカ14は音波を送信し続ける。一方、作業者が操作部12aの操作を停止すると、コンピュータ18の制御により、スピーカ14は音波の送信を停止する。操作部12aとしては、ボタン、レバー、ディスプレイ上に表示された操作入力用のアイコン等が挙げられる。機械50に対する動作指示としては、「右旋回」、「左旋回」、「停止」等が挙げられる。
【0017】
提示部12bは、光、文字、音などを提示し、作業者に機械50の動作状況を確認させるためのものである。提示部12bとしては、ディスプレイ、LEDランプ、ブザー等が挙げられる。機械50の動作状況が正常である場合、例えば、LEDランプが緑に点灯する。又は、ディスプレイに「正常」という文字が表示されてもよい。一方、機械50の動作状況が異常である場合、例えば、LEDランプが赤に点灯する。又は、ディスプレイに「異常」という文字が表示されてもよいし、ブザー音が発報されてもよい。
【0018】
操作部12aと提示部12bは、例えば、ディスプレイとして一体に構成されてもよいし、別体に構成されてもよい。
【0019】
=スピーカ=
スピーカ14は、水中で音波を送信する。スピーカ14は、リモコン12で選択された動作指示を、第1の周波数の音波として送信する。第1の周波数は、水中でのノイズと区別するため、約2kHz~3kHzの極めて狭い範囲から選択される。スピーカ14から送信される音波の波形は、機械50に対する動作指示に応じて異なる。なお、スピーカ14は、アンプ(図示せず)により増幅された音波を送信してもよい。
【0020】
=マイク=
マイク16は、水中で音波を受信する。マイク16は、スピーカ14及び後述するスピーカ34から送信される、約2kHz~3kHzの周波数帯域の音波を受信できる。
【0021】
=コンピュータ=
コンピュータ18は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサと、当該プロセッサにより読み取り可能な非一過性のメモリと、を含む。コンピュータ18は、作業者側装置10の各種処理を統括的に制御する。本実施形態において、コンピュータ18は、プロセッサを用いて、メモリに予め記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行することで、作業者側装置10の動作を制御する。当該プログラムは、プロセッサによって読み取られるソフトウェアである。
【0022】
メモリは、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等である。メモリは、コンピュータ18とは別に設けられたものでもよいし、コンピュータ18に内蔵されたものでもよい。メモリは、コンピュータ18における各種処理に用いられる種々の情報を格納する。例えば、メモリは、所定のプログラムを記憶する。また、メモリは、機械50に対する各動作指示に対応付けられた音のデータを記憶する。本実施形態において、音のデータとしては、音波の振幅、及び音波の周波数が挙げられる。
【0023】
コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れているか否か判断する。この例では、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の振幅及び周波数の一方が、スピーカ14から送信された音波の振幅及び周波数に対し、一例として10%以上離れる場合、音波が乱れていると判断する。コンピュータ18による作業者側装置10の制御については、後述する。
【0024】
[機械側装置]
機械側装置30は、作業者側装置10から送信された音波を受信し、この音波に対応する動作指示に基づいて、機械50の動作を制御するための装置である。
【0025】
機械側装置30は、マイク32(第2の受信部の一例)と、スピーカ34(第2の送信部の一例)と、コンピュータ36(第2の制御部の一例)と、を有する。
図1は、マイク32、スピーカ34、及びコンピュータ36が水中に配置される場合を示す。なお、コンピュータ36は、船上に配置されてもよい。マイク32、スピーカ34、及びコンピュータ36は、それぞれ、各接続ポートを介して、無線または有線により電気通信可能に接続されている。
【0026】
=マイク=
マイク32は、水中で音波を受信する。マイク32は、スピーカ14及び後述するスピーカ34から送信される、約2kHz~3kHzの周波数帯域の音波を受信できる。マイク32は、水中の機械50に取付けられてもよいし、機械50の近傍に配置されてもよいし、機械50に組み込まれてもよい。
【0027】
=スピーカ=
スピーカ34は、水中で音波を送信する。スピーカ34は、作業者側装置10から送信された音波に基づいて機械50が動作している場合、第2の周波数の音波を送信する。スピーカ34から送信される音波の波形は、機械50の動作に応じて異なる。機械50の動作は、機械50に対する動作指示と対応しており、この例では、「右旋回」、「左旋回」、「停止」等が挙げられる。また、スピーカ34は、機械50の動作状況を、第3の周波数の音波として送信する。この例では、機械50の動作状況とは、機械50の旋回角度等が挙げられる。第2の周波数及び第3の周波数は、第1の周波数と同じ周波数帯域であり、水中でのノイズと区別するため、約2kHz~3kHzの極めて狭い範囲から選択される。第2の周波数は、第1の周波数と同じでもよいし、異なってもよい。第3の周波数は、第2の周波数と異なる。スピーカ34は、水中の機械50に取付けられてもよいし、機械50の近傍に配置されてもよいし、機械50に組み込まれてもよい。機械側装置30のマイク32及びスピーカ34と、作業者側装置10のスピーカ14及びマイク16との間の距離は約10~50mである。なお、スピーカ34は、アンプ(図示せず)により増幅された音波を送信してもよい。
【0028】
=コンピュータ=
コンピュータ36は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサと、当該プロセッサにより読み取り可能な非一過性のメモリと、を含む。コンピュータ36は、機械側装置30の各種処理を統括的に制御する。本実施形態において、コンピュータ36は、プロセッサを用いて、メモリに予め記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行することで、機械側装置30の動作を制御する。当該プログラムは、プロセッサによって読み取られるソフトウェアである。
【0029】
メモリは、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等である。メモリは、コンピュータ36とは別に設けられたものでもよいし、コンピュータ36に内蔵されたものでもよい。メモリは、コンピュータ36における各種処理に用いられる種々の情報を格納する。例えば、メモリは、所定のプログラムを記憶する。また、メモリは、機械50の動作に対応付けられた音のデータを記憶する。また、メモリは、機械50の動作状況に対応付けられた音のデータを記憶する。本実施形態において、音のデータとしては、音波の振幅、及び音波の周波数が挙げられる。
【0030】
コンピュータ36は、機械50を動作させるための制御信号を機械50へ送信するか否かを判断する。この例では、コンピュータ36は、マイク32で受信した音波の振幅及び周波数をそれぞれ、メモリに記憶された機械50の動作に対応付けられた音波の振幅及び音波の周波数と比較する。コンピュータ36は、マイク32で受信した音波の振幅及び周波数がそれぞれ、機械50の動作に対応付けられた音波の振幅及び音波の周波数に対し、一例として10%以内となる場合、機械50を動作させるための制御信号を送信すると判断する。コンピュータ36による機械側装置30の制御については、後述する。
【0031】
<水中音響通信システムの動作>
次いで、水中音響通信システム1の動作について説明する。
図2Aは、実施形態に係る作業者側装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図2Bは、実施形態に係る機械側装置30の動作の一例を示すフローチャートである。
図3Aは、実施形態に係る作業者側装置10のスピーカ14から送信される音波の波形の一例を示す図である。
図3Bは、実施形態に係る作業者側装置10のマイク16で受信される音波の波形の一例を示す図である。
【0032】
作業者が水中音響通信システム1の電源をオンにすると、水中音響通信システム1は、水中で音波の送受信を行い、機械50の動作を制御することを可能にするスタンバイ状態に移行する。
【0033】
[作業者側装置の動作]
機械50が水中にある状態で、作業者がリモコン12の操作部12aを操作し、機械50に対する所定の動作指示として「左旋回」が選択されたとする。この場合、コンピュータ18は、「左旋回」という動作指示に対応付けられた音のデータ、即ち音波の振幅及び周波数をメモリから読み出す(S10)。
【0034】
コンピュータ18は、「左旋回」という動作指示に対応付けられた振幅及び周波数の音波を、第1の周波数の音波として、スピーカ14に送信させる(S11)。
【0035】
マイク16は、少なくともスピーカ14から送信された第1の周波数の音波を受信するとともに、機械側装置30のスピーカ34から送信された第2の周波数の音波を受信する。コンピュータ18は、マイク16で受信された音波を解析する(S12)。具体的には、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の振幅及び周波数を算出する。
【0036】
コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れているか否か判断する(S13)。この例では、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の振幅(
図3BのW2)及び周波数(
図3Bの1/T2)の一方が、スピーカ14から送信された音波の振幅(
図3AのW1)及び周波数(
図3Aの1/T1)に対し、10%以上離れている場合、音波が乱れていると判断する(S13のYES)。この例では、マイク16が、スピーカ14から送信された音波に加え、スピーカ34から送信された音波を受信することで、上述の音波の乱れが発生する。
【0037】
この場合、コンピュータ18は、リモコン12の提示部12bに、機械50が動作しているという判断結果を提示させる(S14)。
【0038】
一方、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れていない場合、機械50が動作していないと判断する(S13のNO)。この例では、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の振幅(
図3BのW2)及び周波数(
図3Bの1/T2)がそれぞれ、スピーカ14から送信された音波の振幅(
図3AのW1)及び周波数(
図3Aの1/T1)に対し、10%より小さな範囲内となる場合、音波が乱れていないと判断する。マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れていない場合、機械側装置30のスピーカ34から第2の周波数の音波が送信されず、作業者側装置10のスピーカ14から送信された第1の周波数の音波のみが、マイク16で受信されていると考えられる。このため、コンピュータ18は、機械50が動作していないと判断する。
【0039】
コンピュータ18は、リモコン12の提示部12bに、機械50が動作していないという判断結果、即ちエラーを提示させる(S15)。この場合、コンピュータ18は、スピーカ14に第1の周波数の音波の送信を停止させてもよい。
【0040】
[機械側装置の動作]
【0041】
コンピュータ36は、スピーカ14から送信された第1の周波数の音波がマイク32で受信された場合に、この音波を解析する(S20)。具体的には、コンピュータ36は、マイク32で受信された音波の振幅及び周波数を算出する。
【0042】
コンピュータ36は、機械50を動作させるための制御信号を機械50へ送信するか否かを判断する(S21)。この例では、コンピュータ36は、マイク32で受信した音波の振幅及び周波数をそれぞれ、メモリに記憶された機械50の動作に対応付けられた音波の振幅及び音波の周波数と比較する。コンピュータ36は、マイク32で受信した音波の振幅及び周波数がそれぞれ、機械50の動作に対応付けられた音波の振幅及び音波の周波数に対し、一例として10%以内となる場合、機械50を動作させるための制御信号を送信すると判断する。
【0043】
機械50を動作させるための制御信号を送信すると判断した場合(S21のYES)、この例では、コンピュータ36は、当該制御信号に基づいて機械50を左旋回させる(S22)。一方、機械50を動作させるための制御信号を送信しないと判断した場合(S21のNO)、本制御は終了する。
【0044】
コンピュータ36は、機械50の動作、この例では左旋回に対応付けられた音のデータ、即ち音波の振幅及び周波数をメモリから読み出す(S23)。
【0045】
コンピュータ36は、「左旋回」という機械50の動作に対応付けられた振幅及び周波数の音波を、第2の周波数の音波として、スピーカ34に送信させる(S24)。
【0046】
[機械側装置及び作業者側装置の動作の別の例]
図4Aは、実施形態に係る機械側装置30の動作の別の例を示すフローチャートである。
図4Bは、実施形態に係る作業者側装置10の動作の別の例を示すフローチャートである。この例では、作業者側装置10から送信された第1の周波数の音波により、機械50が動作しているとする。
【0047】
コンピュータ36は、機械50の動作状況を示す信号を、当該機械50から、連続的に又は所定の時間間隔をおいて受信する(S30)。この例では、機械50の動作状況とは、機械50が20度旋回している状況等が挙げられる。機械50の動作状況を示す信号とは、機械50の旋回角度を示す信号である。
【0048】
コンピュータ36は、機械50の動作状況を示す信号を解析する(S31)。具体的には、コンピュータ36は、機械50の動作状況を示す信号から、例えば機械50の旋回角度を算出する。コンピュータ36は、この旋回角度と所定の閾値とを比較し、当該旋回角度が所定の閾値を超えたか否かを判断する。閾値は、機械50が正常に動作しなくなる値であり、実験等で予め算出しておく。閾値は、一例として60度である。コンピュータ36は、旋回角度が閾値を超えている、即ち機械50の動作状況が異常であると判断した場合に、この動作状況に対応する音のデータ、即ち音波の振幅及び周波数をメモリから読み出す(S31)。
【0049】
コンピュータ36は、機械50の動作状況に対応付けられた振幅及び周波数の音波を、第3の周波数の音波として、スピーカ34に送信させる(S32)。例えば、コンピュータ36は、機械50の動作状況が異常であることを示す振幅及び周波数の音波を、第3の周波数の音波として、スピーカ34に送信させる。
【0050】
なお、機械50の動作状況が異常であると判断した場合、コンピュータ36は、第2の周波数の音波をスピーカ34に送信させる制御より、第3の周波数の音波をスピーカ34に送信させる制御を優先する。また、コンピュータ36は、マイク32で受信した、スピーカ14から送信された第1の周波数の音波の解析を停止する。また、コンピュータ18は、作業者がリモコン12の操作部12aを操作している場合であっても、第1の周波数の音波の送信を停止する。
【0051】
コンピュータ18は、マイク16で受信した音波を解析する(S40)。具体的には、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形に、第3の周波数の音波の波形が含まれているか否かを判断する。マイク16で受信された音波の波形に、第3の周波数の音波の波形が含まれていると判断した場合、コンピュータ18は、機械50の動作状況が異常である、即ち機械50の動作にエラーが生じたと判断する(S41のYES)。この場合、コンピュータ18は、リモコン12の提示部12bに、機械50の動作にエラーが生じたという判断結果を提示させる(S42)。さらに、コンピュータ18は、スピーカ14に第1の周波数の音波の送信を停止させてもよい。
【0052】
一方、マイク16で受信された音波の波形に、第3の周波数の音波の波形が含まれていないと判断した場合、コンピュータ18は、機械50の動作状況は正常である、即ち機械50の動作にエラーが生じていないと判断する(S41のNO)。
【0053】
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
【0054】
(態様1)
水中音響通信システム1は、作業者側装置10と、水中の機械50に設置された機械側装置30とを有する。作業者側装置10は、作業者が操作する操作部12aと、第1の周波数の音波を送信するためのスピーカ14と、少なくともスピーカ14から送信された音波を受信するためのマイク16と、操作部12aの操作に応じて、スピーカ14に第1の周波数の音波を送信させる制御と、マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れている場合に、機械50が動作していると判断する制御と、を行うコンピュータ18と、を有する。機械側装置30は、少なくともスピーカ14から送信された音波を受信するためのマイク32と、第2の周波数の音波を送信するためのスピーカ34と、マイク32でスピーカ14から送信された音波が受信された場合に、スピーカ34に第2の周波数の音波を送信させる制御を行うコンピュータ36と、を有する。
【0055】
態様1の水中音響通信システム1によれば、作業者側装置10で生成される第1の周波数の音波と、機械側装置30で生成される第2の周波数の音波とを、作業者側装置10と機械側装置30との間で双方向通信するため、機械50が動作しているか否かを容易に判断可能となる。したがって、例えば濁度の高い水中であっても、作業者は、安全に、水中に配置される機械50の動作を制御できる。
【0056】
(態様2)
態様1において、作業者側装置10は、提示部12bを有し、コンピュータ18は、提示部12bに、上記判断結果を提示させる制御を行う。
【0057】
態様2の水中音響通信システム1によれば、機械50が動作していると判断結果を、作業者の手元に配置される提示部12bに提示することができる。このため、作業者は、自身が選択した機械50に対する動作指示が機械50に到達していることを、容易に把握できる。
【0058】
(態様3)
態様1又は2において、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形が、スピーカ14から送信された音波の波形と比べて乱れていない場合に、スピーカ14に第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う。
【0059】
態様3の水中音響通信システム1によれば、機械側装置30のスピーカ34から第2の周波数の音波が送信されていない場合、即ち、機械50が作業者の動作指示に応じて動作していない場合、機械50に対する動作指示を、速やかに停止することができる。
【0060】
(態様4)
態様1から3において、コンピュータ36は、機械50の動作状況に応じて、スピーカ34に、第2の周波数とは異なる第3の周波数の音波を送信させる制御を行い、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形に、第3の周波数の音波の波形が含まれていると判断した場合に、スピーカ14に第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う。
【0061】
態様4の水中音響通信システム1によれば、機械50の動作状況が異常である場合、機械50の動作を、速やかに停止させることができる。
【0062】
(態様5)
態様1から4において、作業者側装置10は、提示部12bを有し、コンピュータ18は、マイク16で受信された音波の波形に、第3の周波数の音波の波形が含まれていると判断した場合に、スピーカ14に第1の周波数の音波の送信を停止させる制御を行う前に、提示部12bに、判断結果を提示させる制御を行う。
【0063】
態様5の水中音響通信システム1によれば、作業者は、機械50の動作が停止される前に、手元に配置される提示部12bで、機械50の動作状況が異常であることを把握できる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る水中音響通信システム1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 水中音響通信システム、10 作業者側装置、12a 操作部、12b 提示部、14 スピーカ(第1の送信部)、16 マイク(第1の受信部)、18 コンピュータ(第1の制御部)、30 機械側装置、32 マイク(第2の受信部)、34 スピーカ(第2の送信部)、36 コンピュータ(第2の制御部)、50 機械