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特開2024-1590廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001590
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61M1/00 170
A61M1/00 150
A61M1/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100334
(22)【出願日】2022-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ブルークロス株式会社は、令和3年12月8日に、「廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法」の使用状況を説明する動画を、Youtube(https://www.youtube.com/watch?v=SGnB2m8Kid0)に掲載した。 ブルークロス株式会社は、令和4年1月7日に、「廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法」の使用状況を説明する動画を、Youtube(https://www.youtube.com/watch?v=SGnB2m8Kid0)に掲載した。 ブルークロス株式会社は、令和4年1月28日~29日に、ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター(大阪市)で開催された「第43回日本手術医学会総会」において、「廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法」の記載されたパンフレットを来場者に配布した。 ブルークロス株式会社は、令和4年2月24日に、群馬大学医学部附属病院で開催された説明会において、パンフレットを使用して「廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法」の使用状況を説明した。 ブルークロス株式会社は、令和4年3月24日に、「廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法」の使用状況を説明する動画を、協和医科器械株式会社 岡崎支店(愛知県岡崎市所在)の勉強会用として、Youtube(https://youtu.be/8B-9D_M5aes)に掲載した。
(71)【出願人】
【識別番号】304052754
【氏名又は名称】ブルークロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085110
【弁理士】
【氏名又は名称】千明 武
(72)【発明者】
【氏名】前田 政利
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077DD12
4C077DD19
4C077EE04
4C077GG02
4C077GG03
4C077GG12
4C077KK09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療現場で回収した廃液を安全かつ確実に管理し、廃液の溢水や漏水を防止し、それらの汚染や汚損を阻止して、回収した廃液および廃液回収容器を洗浄し得るようにした、廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】廃液処理装置1は、装置本体2内部に単一かつ大容量の廃液回収容器21を備え、廃液回収容器に医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液25を直接かつ連続的に吸引して回収し、回収した廃液を廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ廃棄可能にした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を廃液回収容器に吸引して回収可能に設け、回収した廃液を廃液槽へ廃棄可能にした廃液処理装置において、装置本体内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該廃液回収容器に前記廃液を直接かつ連続的に吸引して回収可能に設け、回収した廃液を前記廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ廃棄可能にしたことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
前記廃液回収容器を密閉し開閉かつ転倒不可能に固定した請求項1記載の廃液処理装置
【請求項3】
装置本体の上端部に平坦なテーブル面を設け、該テーブル面の後部に本体ヘッドを突設し、該本体ヘッドに外部の吸引設備に連通する吸引ホースを配管し、該吸引ホースの他端を廃液回収容器に連通し、前記吸引設備と吸引ホースを介し廃液回収容器内の空気を吸引可能した請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項4】
前記テーブル面の後部に複数のサクションフィルタとその開閉コックを配置し、各サクションフィルタの一端を廃液回収容器に連通可能に配管し、各サクションフィルタの他端に医療現場で発生する血液等の体液を吸引可能なオペホースとサブオペホースを接続可能にした請求項3記載の廃液処理装置。
【請求項5】
装置本体の前面中央に廃液回収容器に連通する液柱管を垂直に配置した請求項3記載の廃液処理装置。
【請求項6】
装置本体の前面上部に複数のハンドルを垂直に配置し、装置本体の背面上部に長尺のハンドルを水平に配置した請求項3記載の廃液処理装置。
【請求項7】
廃液回収容器内の廃液を除菌洗浄し、該廃液を廃棄後、前記回収容器に水道水を導入して洗浄可能にした廃液洗浄ユニットを設け、該廃液洗浄ユニットを廃液処理装置と分離して設け、常時はこれらを別々に配置し、廃液回収容器に水道水を導入して洗浄する際にそれらの給排水路を接続可能に設けた請求項3記載の廃液処理装置。
【請求項8】
前記廃液洗浄ユニットを、廃液処理装置と廃液槽との間に移動可能に配置した請求項7記載の廃液処理装置。
【請求項9】
前記廃液洗浄ユニットに給水制御装置と排水ポンプを設け、該給水制御装置に給水源に連通する給水ホースと、廃液回収容器に連通する洗浄ホースを接続し、前記排水ポンプに廃液回収容器の底部に連通する廃液ホースと、廃液槽の排出口に連通する排出ホースを接続した請求項7記載の廃液処理装置。
【請求項10】
前記給水ホースと洗浄ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、前記廃液ホースと排出ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、前記フロースイッチを介して給水エラーまたは排水エラーを監視可能した請求項9記載の廃液処理装置。
【請求項11】
前記水道水の給水路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラーを検知して警告し、各流路を遮断し排出ポンプの作動を停止可能にした請求項10記載の廃液処理装置。
【請求項12】
前記廃液回収容器を鋼製の有底筒状に形成し、その底部を装置本体内の底部の支持管に嵌合して溶接し、上部の開口部に鋼製の蓋体を装着して液密に密閉した請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項13】
前記装置本体内に該本体と略同長の容量が60~70Lの単一の廃液回収容器を固定した請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項14】
前記廃液回収容器内の上部に廃液溢流防止装置を設け、該廃液溢流防止装置は廃液レベルと同動可能なフロートを備え、該フロートの上方に圧力調整器に連通するコーンシールを配置し、前記フロートの上昇時にコーンシールに係合し、コーンシールの開口部を閉塞可能に設け、オペホースの吸引動作を解除可能にした請求項9記載の廃液処理装置。
【請求項15】
前記廃液処理装置と本体ヘッドを含む装置本体と、廃液洗浄ユニットの周面をステンレス鋼板で被覆して防錆可能にした請求項7記載の廃液処理装置。
【請求項16】
医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を廃液回収容器に吸引して回収し、回収した廃液を廃液槽へ廃棄する廃液処理方法において、装置本体内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該装置本体をオペ室に移動し前記廃液を廃液回収容器に回収後、接続したオペホースとサブオペホースを取外し、装置本体をオペ室から廃液洗浄ユニット側へ移動し、装置本体と廃液洗浄ユニットとの給排水路を接続するとともに、廃液洗浄ユニットと給水源と廃液槽との給排水路を接続し、廃液回収容器を除菌洗浄後、水道水で洗浄することを特徴する廃液処理方法。
【請求項17】
医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を装置本体内の廃液回収容器に吸引して回収後、廃液回収容器を洗浄する廃液回収容器の洗浄方法において、廃液回収容器内の廃液に除菌洗浄剤を添加して所定時間漬け置き、該漬け置き洗浄時に廃液中の蛋白質を分解し、該漬け置き洗浄後の廃液を廃液槽へ廃棄することを特徴とする廃液処理装置の洗浄方法
【請求項18】
廃液回収装置と給水源と廃液槽との間に廃液洗浄ユニットを配置し、廃液回収容器の漬け置き洗浄後の廃液を廃棄後、水道水を廃液回収容器内に導入して吹き付け洗浄し、その洗浄水を廃液回収容器の底部へ流下し、これを廃液回収容器の底部から吸引し、廃液洗浄ユニットを介し廃液槽へ廃棄する請求項17記載の廃液処理装置の洗浄方法。
【請求項19】
前記廃液洗浄ユニットの上端部に二つの給水カプラを離間して配置し、一の給水カプラを給水源の蛇口の接続用カプラに連結可能に設け、他の給水カプラを廃液回収装置に装着した給水カプラに連結可能に設け、前記給水カプラに給水ホースを接続し、該給水ホースの一端を洗浄制御装置に連係するとともに、各給水ホ-スをホース収容孔に出没可能に配置し、各収容孔の口縁部に各給水カプラを係合して配置する請求項18記載の廃液処理装置の洗浄方法。
【請求項20】
前記廃液洗浄ユニットは洗浄制御装置と排出ポンプを備え、これらの流路にフロースイッチを介挿し、各流路を監視する請求項18記載の廃液処理装置の洗浄方法。
【請求項21】
前記水道水の供給路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラーを検知して警告し、各流路を遮断し排出ポンプの作動を停止する請求項19記載の廃液処理装置の洗浄方法。
【請求項22】
装置本体の上端部に廃液回収容器に連通する複数のサクションフィルタを開閉可能に設け、該サクションフィルタの吸引コックの開放時に除菌洗浄剤を廃液回収容器内に添加する請求項17記載の廃液処理装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量の廃液回収容器を備え、医療現場で発生する血液や体液、洗浄液、灌流液(以下、血液等の体液を含む廃液と呼ぶ)を連続かつ円滑に回収し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるとともに、回収した廃液を安全かつ確実に管理し、廃液の溢水や漏水を防止しそれらの汚染や汚損を阻止して、医療現場や院内の衛生を確保するとともに、廃液回収容器に回収した廃液を漬け置き洗浄し、廃液中の蛋白質を除菌洗浄剤によって分解し、この洗浄後に廃液を廃棄して廃棄回収容器を清浄な水道水で洗浄し、廃液回収容器を合理的かつ精密に洗浄し得るようにした、廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等で患者から採取した鼻汁や痰等の体液処理装置として、例えば蓋を装着する有底筒状の小容量の複数の貯留容器に体液を回収し、この貯留容器を病院の定位置に設置した筐体に立位姿勢で収容し、蓋に設けた通孔にノズルを差し込み、その上部にコネクタを装着し、該コネクタにYチューブの一端を接続し、Yチューブの他端を筐体内に配置した排液タンクに連絡させ、前記貯留容器内の廃液を排液タンクに排出する場合は、吸引ポンプを駆動して空状態の廃液タンク内の空気を吸出し、貯留容器内の廃液をノズルで吸引して排液タンクに排出し、この後、空状態の貯留容器内に洗浄液を導入し、排液タンクを大気圧に連通して、排液タンク内の廃液を汚物流しへ流下して下水道に排出するようにしている。
【0003】
次に、空気取入れ管から空気を取り入れ、これをYチューブに導いて貯留容器内の洗浄液に吹き出してバブリング洗浄し、その際、貯留容器の汚れ具合が激しい場合は、水道水を貯留容器の外周部へ吹き流し、外部洗浄後に温風を吹き付けて、乾燥するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この廃液処理装置は、複数の貯留容器の製作とそれらへの廃液の回収と、筐体内への出し入れを要して煩わしく、また貯留容器から排液タンクへの廃液の移し替えと、それらの洗浄に種々の設備と長時間を要するという問題があった。
更に、貯留容器を洗浄する場合は、廃液を廃棄後に水道水等の洗浄液を吹き付けて行っているため、蛋白質を含む廃液の洗浄には精密性に限界があり、しかも蛋白質を含む廃液の廃棄は下水道設備の故障と汚損を招く等の問題があった。
【0005】
また、この他の廃液処理装置として、箱形のケーシング内に大容量(15L)の密閉タンクを収容し、該タンクに医療現場で発生した体液を受け入れる体液導入ポートと、体液を排出させる体液排出ポートを接続し、密閉タンクの直上に外部から圧縮ガスを導入する第1および第2圧力タンクを配置し、これらの圧力タンクと密閉タンクを圧縮ガス供給管で接続するとともに、圧縮ガス供給管を開閉する開閉機構を備え、この開閉機構によって圧縮ガス供給管が開状態に設定されると、圧縮ガス供給管を介して圧力タンクから密閉タンクへ圧縮ガスを供給し、密閉タンク内の廃液の液面を加圧して、廃液を排出ポートから排出させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、この廃液処理装置は、ケーシング内に密閉タンクと二つの圧力タンクを収容しているため、ケーシングないし廃液処理装置が大形化する上に、圧力タンクの製作を要し、また圧力タンクと圧縮ガス供給管と分岐管とそれらに配置した弁との配管が複雑になり、設備構造が複雑になるとともに、密閉タンクの容量が然程大きくないため、廃液の排出頻度が多くなって煩わしく作業能率が悪い上に、廃液の排出に医療用ガスを用いているため、医療用ガスの消費量が増大してランニングコストが上昇する等の問題があった。
しかも、廃液を廃棄後に水道水等の洗浄液を吹き付けて洗浄しているため、蛋白質を含む廃液の洗浄には精密性に限界があり、また蛋白質を含む廃液の廃棄は下水道設備の故障と汚損を招く等の問題があった。
【0007】
このような問題を解決する廃液処理装置として、廃液を貯留可能な第1密閉容器と第2密閉容器を備え、第2密閉容器の容量を第1密閉容器の5倍以上に構成し、最初に廃液を第1密閉容器に貯留し、該第1密閉容器の廃液を第2密閉容器へ移送するようにしている
第1密閉容器には、第1液吸引ポートと第1液排出ポートと第1ガス排出ポートと第1洗浄用ポートが設けられ、また第1液吸引ポートに液吸引管の出口側が接続され、第1液排出ポートには容器接続管の入口側が接続され、第1ガス排出ポートに、ガス吸引管うち第1ガス吸引管の入口側が接続され、第1洗浄用ポートに第1洗浄用配管の出口側が接続されている。
【0008】
前記第2密閉容器に、第2液吸引ポートと第2ガス排出ポートと第2洗浄用ポートとガス連通用ポートとが設けられ、第2液吸引ポートに容器接続管の出口側が接続され、また第2ガス排出ポートにガス吸引管のうち第2ガス吸引管の入口側が接続され、第2洗浄用ポートに第2洗浄用配管の出口側が接続され、ガス連通用ポートに連通管が接続されている。
【0009】
前記廃液処理装置は、第1密閉容器と第2密閉容器からガスを吸引するためのガス吸引通路を備え、このガス吸引通路を介して第1密閉容器と第2密閉容器からガスを吸引し、第1および第2密閉容器を負圧に形成可能にし、外部から廃液を第1密閉容器に吸引しながら、第1密閉容器と第2密閉容器とに差圧を生じさせ、第1液排出ポートと第2液吸引ポートを通じて、第1密閉容器から第2密閉容器へ廃液を移送するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
しかし、この廃液処理装置は、二つの密閉容器のうち、一方の密閉容器を大容積に構成する必要があり、また二つの密閉容器の差圧によって第1密閉容器から第2密閉容器へ廃液を移送させているため、安定した差圧形成と廃液の移送量の安定性を確保し難く、円滑かつ安定した医療行為の確保が難しいという問題があった。
【0011】
また、前記廃液処理装置によって、第1および第2密閉容器を洗浄する場合は、これらの密閉容器に洗浄水を供給して各々を洗浄するステップと、ガス吸引通路を通じて第2密閉容器からガスを吸引し、第1液排出ポ-トと第2液排出ポートを介し、第1密閉容器内の汚水を第2密閉容器へ移送するようにしているため、それぞれの密閉容器を洗浄後、第1密閉容器内の汚水を第2密閉容器へ移送する工程を要して、手間が掛かる上に洗浄の精密性に欠ける等の問題があった。
しかも、廃液を廃棄後にスプリンクラーによって水道水を噴射して洗浄しているため、蛋白質を含む廃液の洗浄には精密性に限界があり、しかも蛋白質を含む廃液の廃棄は下水道設備の故障と汚損を招く等の問題があった。
【0012】
このような問題を解決する別の廃液処理装置として、装置本体内に吸引室と排水室を上下に配置し、これらを電磁開閉弁で導通可能に構成するとともに、室外にアウトレットボックスを配置し、装置本体以外の廃液を外部に排出可能に構成し、前記吸引室は真空ポンプを介して負圧可能に構成され、該吸引室に吸引ホースを接続し、その先端部に漏斗状の集中パットを接続しており、前記排水室はコンプレッサを介して加圧可能にされ、室内の汚水を排水側へ排出可能にしている。
【0013】
そして、手術時に発生した血液等の体液を集中パットに吸入し、これを吸引ホースに導いて吸引室へ移動し、その吸引量を液面センサで検出し、その所要量の検出時に真空ポンプを停止させ、同時に電磁開閉弁を開弁させて汚水を排水室に落下させ、汚水量が減量すると真空ポンプを再起動させて吸引を開始するようにしている。
一方、排水室に流入した汚水は運転時に始動するコンプレッサで加圧した空気によって、排水室から室内排水管を介して、アウトレットボックスの排水用升へ移動し、外部に廃棄処理し、手術後、洗浄液と消毒液を吸引室から外部排水管まで流して、アウトレットボックスを含む装置を洗浄・消毒するようにしたものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0014】
しかし、この廃液処理装置は、装置本体内に吸引室と排水室を上下に配置し、装置が大形重量化するとともに、吸引室と排水室に大容量を図れないため、体液の吸引量や排水室からの排出量が制約され、廃液を連続かつ円滑に回収することが難しく、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なうことが難しい上に、装置本体が移動時に転倒すると吸引室と排水室内の廃液が漏れ出て汚染や汚損する惧れがあり、また吸引室や排水室の洗浄時には洗浄液と消毒液を単に流下させているため、蛋白質を含む廃液の洗浄には精密さに欠ける等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2016-42970号公報
【特許文献2】特許第5948689号公報
【特許文献3】特開2019-25287号公報
【特許文献4】特開2003-325658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような問題を解決し、大容量の廃液回収容器を備え、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を連続かつ円滑に回収し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるとともに、回収した廃液を安全かつ確実に管理し、廃液の溢水や漏水を防止しそれらの汚染や汚損を阻止して、医療現場や院内の衛生を確保するとともに、廃液回収容器に回収した廃液を漬け置き洗浄し、廃液中の蛋白質を除菌洗浄剤によって分解し、この洗浄後に廃液を廃棄して廃液回収容器を清浄な水道水で洗浄し、廃液回収容器を合理的かつ精密に洗浄し得るようにした、廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を廃液回収容器に吸引して回収可能に設け、回収した廃液を廃液槽へ廃棄可能にした廃液処理装置において、廃液処理装置内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該廃液回収容器へ前記廃液を直接かつ連続的に吸引して回収可能に設け、回収した廃液を前記廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ廃棄可能にし、単一かつ大容量の廃液回収容器に廃液を回収することで、廃液を連続して円滑に回収し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるとともに、回収した廃液を廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ安全かつ確実に廃棄し得るようにしている。
請求項2の発明は、廃液回収容器を密閉し開閉かつ転倒不可能に固定し、廃液処理装置の移動または静止時若しくは転倒時に、廃液回収容器に回収した廃液の流出や漏出、飛散、滲み出しを阻止し、廃液による汚損や汚染、衛生の劣化を防止し、院内の衛生の維持向上を図るようにしている。
【0018】
請求項3の発明は、装置本体の上端部に平坦なテーブル面を設け、該テーブル面の後部に本体ヘッドを突設し、該本体ヘッドに外部の吸引設備に連通する吸引ホースを配管し、該吸引ホースの他端を廃液回収容器に連通し、前記吸引設備と吸引ホースを介し廃液回収容器内の空気を吸引可能にするとともに、テーブル面にサクションフィルタや開閉コックの配置スペースを確保し、本体ヘッドに廃液回収容器に連通する吸引ホースを配管して、その配管スペースを確保するようにしている。
請求項4の発明は、テーブル面の後部に複数のサクションフィルタとその開閉コックを配置し、各サクションフィルタの一端を廃液回収容器に連通可能に配管し、各サクションフィルタの他端に医療現場で発生する血液等の体液を吸引可能なオペホースとサブオペホースを接続可能にし、テーブル面の後部に複数のサクションフィルタとその開閉コックを配置して、それらの装置本体前部への突出を回避し、オペ室内で施術する医師や介助者の手指がサクションフィルタや開閉コックに誤って接触し、誤作動を起こす事態を未然に防止するとともに、医師や介助者の手指の怪我の発生を未然に防止するようにしている。
また、複数のサクションフィルタの他端にオペホースとサブオペホースを接続して、医療現場で発生する血液等の体液を吸引し回収可能にするとともに、オペ室周辺に飛散した体液をサブオペホースで吸引可能にして、体液による汚損を防止し医療現場の衛生の維持向上を図るようにしている。
【0019】
請求項5の発明は、装置本体の前面中央に廃液回収容器に連通する液柱管を垂直に配置し、廃液柱の視認効果を向上し、医師や介助者の利用の利便性を向上するようにしている
請求項6の発明は、装置本体の前面上部に複数のハンドルを垂直に配置し、装置本体の背面上部に長尺のハンドルを水平に配置し、装置本体を移動する際の使用の利便性を向上するようにしている。
請求項7の発明は、廃液回収容器内の廃液を除菌洗浄し、該廃液を廃棄後、前記回収容器に水道水を導入して洗浄可能にした廃液洗浄ユニットを設け、該廃液洗浄ユニットを廃液処理装置と分離して設け、常時はこれらを別々に配置し、廃液回収容器に水道水を導入して洗浄する際にそれらの給排水路を接続可能に設け、廃液処理装置と廃液洗浄ユニットの構成の合理化と製作の容易化、並びにそれらの使用の合理化を図るようにしている。
請求項8の発明は、廃液洗浄ユニットを、廃液処理装置と廃液槽との間を移動可能に配置し、廃液洗浄ユニットの配置を簡潔に行なえるとともに、その使用の利便性を向上するようにしている。
【0020】
請求項9の発明は、廃液洗浄ユニットに給水制御装置と排水ポンプを設け、該給水制御装置に給水源に連通する給水ホースと、廃液回収容器に連通する洗浄ホースを接続し、前記排水ポンプに廃液回収容器の底部に連通する廃液ホースと、廃液槽の排出口に連通する排出ホースを接続し、廃液洗浄ユニットに給排水設備を合理的かつ簡潔に連係するようにしている。
請求項10の発明は、給水ホースと洗浄ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、また前記廃液ホースと排出ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、前記フロースイッチを介して給水エラーまたは排水エラーを監視可能にし、廃液洗浄ユニット周辺の給排水作動の安全性と確実性を確保するようにしている。
請求項11の発明は、水道水の供給路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラーを検知して警告し、各流路を遮断し給水ポンプの作動を停止可能にし、フロースイッチによる具体的な検出作動を実現し、洗浄作業の安全性と確実性を確保させるようにしている。
【0021】
請求項12の発明は、廃液回収容器を鋼製の有底筒状に形成し、その底部を装置本体内の底部の支持管に嵌合して溶接し、上部の開口部に鋼製の蓋体を装着して液密に密閉し、廃液回収容器を安定かつ堅牢に構成するとともに、装置本体の移動若しくは静止時、または万一の転倒時、廃液回収容器に回収した廃液の漏出、飛散、滲み出しを阻止し、廃液による汚損や汚染、衛生の劣化を防止し、院内の衛生の維持向上を確保するようにしている
請求項13の発明は、装置本体内に該本体と略同長の60~70Lの単一の廃液回収容器を固定し、安定かつ大容量の廃液回収容器を実現し、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を連続かつ円滑に回収し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるようにしている。
請求項14の発明は、廃液回収容器内の上部に廃液溢流防止装置を設け、該廃液溢流防止装置は廃液レベルと同動可能なフロートを備え、該フロートの上方に圧力調整器に連通するコーンシールを配置し、前記フロートの上昇時にコーンシールに係合し、その開口部を閉塞可能に設け、オペホースの吸引動作を解除可能にし、廃液の溢流ないし院内への逆流を阻止し、廃液回収容器による廃液の安全かつ確実な回収を実現するようにしている。
請求項15の発明は、廃液処理装置と本体ヘッドを含む装置本体と、廃液洗浄ユニットの周面をステンレス鋼板で被覆して防錆可能にし、廃液処理装置と装置本体と廃液洗浄ユニットの錆の発生を防止し、それらの長期に亘る使用を確保するとともに、ステンレス鋼板によるシルバーカラーによって高級感と美観の向上を図るようにしている。
【0022】
請求項16の発明は、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を廃液回収容器に吸引して回収し、回収した廃液を廃液槽へ廃棄する廃液処理方法において、装置本体内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該装置本体をオペ室に移動し前記廃液を廃液回収容器に回収後、接続したオペホースとサブオペホースを取外し、オペ室から廃液洗浄ユニット側へ移動し、該廃液洗浄ユニットは前記装置本体と離間して配置し、廃液回収容器内の廃液を除菌洗浄後、除菌洗浄後の廃液を廃棄し、廃液回収容器に水道水を導入して洗浄する際に装置本体に接続し、廃液洗浄ユニットと装置本体の給排水路を接続し、装置本体と廃液洗浄ユニットを院内で相互に移動して、廃液の回収と除菌洗浄後の廃液回収容器の洗浄をそれぞれ合理的に実行するようにしている。
【0023】
請求項17の発明は、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を装置本体内の廃液回収容器に吸引して回収後、廃液回収容器を洗浄する廃液回収容器の洗浄方法において、廃液回収容器内の廃液に除菌洗浄剤を添加して所定時間漬け置き、該漬け置き洗浄時に廃液中の蛋白質を分解し、該漬け置き洗浄後の廃液を廃液槽へ廃棄し、除菌洗浄剤によって血液等の体液を含む廃液中の蛋白質を分解して洗浄することによって、廃液回収容器に凝固し付着した蛋白質を除去し、廃液に水道水等を吹き付けて洗浄する方法に比べ、廃液回収容器を精密かつ正確に洗浄するようにしている。
請求項18の発明は、廃液回収装置と給水源と廃液槽との間に廃液洗浄ユニットを配置し、漬け置き洗浄後の廃液を廃棄後、廃液回収装置と給水源と廃液槽との間に廃液洗浄ユニットを配置し、水道水を廃液回収容器内に導入して吹き付け洗浄し、その洗浄水を廃液回収容器の底部へ流下し、これを廃液回収容器の底部から吸引し、廃液洗浄ユニットを介し廃液槽へ廃棄し、蛋白質を分解して除去した廃液回収容器を精密かつ良好に洗浄するようにしている。
請求項19の発明は、廃液洗浄ユニットの上端部に二つの給水カプラを離間して配置し、一の給水カプラを給水源の蛇口の接続用カプラに連結可能に設け、他の給水カプラを廃液回収装置に装着した給水カプラに連結可能に設け、前記給水カプラに給水ホースを接続し、該給水ホースの一端を洗浄制御装置に連係するとともに、各給水ホースをホース収容孔に出没可能に配置し、各収容孔の口縁部に各給水カプラを係合して配置し、廃液回収装置に装着した給水カプラに連結する給水カプラと、蛇口に連結する給水カプラと、給水ホースをホース収容孔に出没可能に配置し、常時は給水ホースを廃液洗浄ユニットの表面から隠蔽して簡潔に構成し、使用時は水道水を給水して廃液回収装置を精密に洗浄するようにしている。
請求項20の発明は、廃液洗浄ユニットは洗浄制御装置と排出ポンプを備え、これらの流路にフロースイッチを介挿し、各流路を監視するようにして、前記流路の安全と作業の確実性を確保するようにしている。
請求項21の発明は、水道水の供給路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラーを検知して警告し、各流路を遮断し排出ポンプの作動を停止し、フロースイッチの検出作動による流路の具体的な安全を確保するようにしている。
請求項22の発明は、装置本体の上端部に廃液回収容器に連通する複数のサクションフィルタを開閉可能に設け、該サクションフィルタの吸引コックの開放時に除菌洗浄剤を廃液回収容器内に添加し、除菌洗浄剤の注入を簡便に行なうようにしている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明は、廃液処理装置内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該廃液回収容器へ前記廃液を直接かつ連続的に吸引して回収可能に設け、回収した廃液を前記廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ廃棄可能にしたから、単一かつ大容量の廃液回収容器に廃液を回収することによって、廃液を連続して円滑に回収することができ、従来のように複数の回収容器を使用し、その交換や持ち運び作業の煩雑を解消し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるとともに、回収した廃液を廃液回収容器の下方から吸引して廃液槽へ安全かつ確実に廃棄することができる。
請求項2の発明は、廃液回収容器を密閉し開閉かつ転倒不可能に固定したから、廃液処理装置の移動または静止時若しくは転倒時に、廃液回収容器に回収した廃液の流出や漏出、飛散、滲み出しを阻止することができ、廃液による汚損や汚染、衛生の劣化を防止し、院内の衛生の維持向上を図ることができる。
【0025】
請求項3の発明は、装置本体の上端部に平坦なテーブル面を設け、該テーブル面の後部に本体ヘッドを突設し、該本体ヘッドに外部の吸引設備に連通する吸引ホースを配管し、該吸引ホースの他端を廃液回収容器に連通し、前記吸引設備と吸引ホースを介し廃液回収容器内の空気を吸引可能にしたから、テーブル面にサクションフィルタや開閉コックの配置スペースを確保し得るとともに、本体ヘッドに廃液回収容器に連通する吸引ホースを配管して、その配管スペースを確保することができる。
請求項4の発明は、テーブル面の後部に複数のサクションフィルタとその開閉コックを配置し、各サクションフィルタの一端を廃液回収容器に連通可能に配管し、各サクションフィルタの他端に医療現場で発生する血液等の体液を吸引可能なオペホースとサブオペホースを接続可能にしたから、テーブル面の後部に複数のサクションフィルタとその開閉コックを配置して、それらの装置本体前部への突出を回避し、オペ室内で施術する医師や介助者の手指がサクションフィルタや開閉コックに誤って接触し、誤作動を起こす事態を未然に防止することができるとともに、医師や介助者の手指の怪我の発生を防止することができる。
また、複数のサクションフィルタの他端にオペホースとサブオペホースを接続したから、医療現場で発生する血液等の体液を吸引し回収できるとともに、オペ室周辺に飛散した体液をサブオペホースで吸引して、体液による汚損を防止し医療現場の衛生の維持向上を図ることができる。
【0026】
請求項5の発明は、装置本体の前面中央に廃液回収容器に連通する液柱管を垂直に配置したから、廃液柱の視認効果を向上することができ、オペ室における医師や介助者の利用の利便性を向上することができる。
請求項6の発明は、装置本体の前面上部に複数のハンドルを垂直に配置し、装置本体の背面上部に長尺のハンドルを水平に配置したから、装置本体を移動する際の使用の利便性を向上することができる。
請求項7の発明は、廃液回収容器内の廃液を除菌洗浄し、該廃液を廃棄後、前記回収容器に水道水を導入して洗浄可能にした廃液洗浄ユニットを設け、該廃液洗浄ユニットを廃液処理装置と分離して設け、常時はこれらを別々に配置し、廃液回収容器に水道水を導入して洗浄する際にそれらの給排水路を接続可能に設けたから、廃液処理装置と廃液洗浄ユニットの構成の合理化と製作の容易化、並びにそれらの使用の合理化を図ることができる
請求項8の発明は、廃液洗浄ユニットを、廃液処理装置と廃液槽との間を移動可能に配置したから、廃液洗浄ユニットの配置を簡潔に行なえるとともに、その使用の利便性を向上することができる。
【0027】
請求項9の発明は、廃液洗浄ユニットに給水制御装置と排水ポンプを設け、該給水制御装置に給水源に連通する給水ホースと、廃液回収容器に連通する洗浄ホースを接続し、前記排水ポンプに廃液回収容器の底部に連通する廃液ホースと、廃液槽の排出口に連通する排出ホースを接続したから、廃液洗浄ユニットに給排水設備を合理的かつ簡潔に連係することができる。
請求項10の発明は、給水ホースと洗浄ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、また前記廃液ホースと排出ホースとの間に、それらの流路の流量を検出可能なフロースイッチを介挿し、前記フロースイッチを介して給水エラーまたは排水エラーを監視可能にしたから、廃液洗浄ユニット周辺の給排水作動の安全性と確実性を確保することができる。
請求項11の発明は、水道水の供給路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラーを検知して警告し、各流路を遮断し給水ポンプの作動を停止可能にしたから、フロースイッチによる具体的な検出作動を実現し、洗浄作業の安全性と確実性を確保することができる。
【0028】
請求項12の発明は、廃液回収容器を鋼製の有底筒状に形成し、その底部を装置本体内の底部の支持管に嵌合して溶接し、上部の開口部に鋼製の蓋体を装着して液密に密閉したから、廃液回収容器を安定かつ堅牢に構成できるとともに、装置本体の移動若しくは静止時、または万一の転倒時、廃液回収容器に回収した廃液の漏出、飛散、滲み出しを阻止でき、廃液による汚損や汚染、衛生の劣化を防止し、院内の衛生の維持向上を確保することができる。
請求項13の発明は、装置本体内に該本体と略同長の60~70Lの単一の廃液回収容器を固定したから、安定かつ大容量の廃液回収容器を実現し、医療現場で発生する血液等の体液を含む廃液を連続かつ円滑に回収することができ、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なうことができる。
請求項14の発明は、廃液回収容器内の上部に廃液溢流防止装置を設け、該廃液溢流防止装置は廃液レベルと同動可能なフロートを備え、該フロートの上方に圧力調整器に連通するコーンシールを配置し、前記フロートの上昇時に吸引コーンに係合し、その開口部を閉塞可能に設け、オペホースの吸引動作を解除可能にしたから、廃液の溢流ないし院内への逆流を阻止し、廃液回収容器による廃液の安全かつ確実な回収を実現することができる
請求項15の発明は、廃液処理装置と本体ヘッドを含む装置本体と、廃液洗浄ユニットの周面をステンレス鋼板で被覆して防錆可能にしたから、廃液処理装置と装置本体と廃液洗浄ユニットの錆の発生を防止し、それらの長期に亘る使用を確保できるとともに、ステンレス鋼板によるシルバーカラーによって高級感と美観の向上を図ることができる。
【0029】
請求項16の発明は、装置本体内部に単一かつ大容量の廃液回収容器を備え、該装置本体をオペ室に移動し前記廃液を廃液回収容器に回収後、接続したオペホースとサブオペホースを取外し、装置本体をオペ室から廃液洗浄ユニット側へ移動し、装置本体と廃液洗浄ユニットとの給排水路を接続するとともに、廃液洗浄ユニットと給水源と廃液槽との給排水路を接続し、廃液回収容器を除菌洗浄後、水道水で洗浄するから、装置本体と廃液洗浄ユニットを院内で相互に移動して、廃液の回収と除菌洗浄後の廃液回収容器の洗浄をそれぞれ合理的に実行することができる。
【0030】
請求項17の発明は、廃液回収容器内の廃液に除菌洗浄剤を添加して所定時間漬け置き、該漬け置き洗浄時に廃液中の蛋白質を分解し、該漬け置き洗浄後の廃液を廃液槽へ廃棄するから、除菌洗浄剤によって血液等の体液を含む廃液中の蛋白質を分解して洗浄することによって、廃液回収容器に凝固し付着した蛋白質を除去し、廃液に水道水等を吹き付けて洗浄する方法に比べ、廃液回収容器を精密かつ正確に洗浄することができる。
請求項18の発明は、廃液回収装置と給水源と廃液槽との間に廃液洗浄ユニットを配置し、漬け置き洗浄後の廃液を廃棄後、水道水を廃液回収容器内に導入して吹き付け洗浄し、その洗浄水を廃液回収容器の底部へ流下し、これを廃液回収容器の底部から吸引し、廃液洗浄ユニットを介し廃液槽へ廃棄するから、廃液に水道水を直接吹き付けて洗浄する方法に比べて、蛋白質を分解して除去した廃液回収容器を精密かつ良好に洗浄することができる。
【0031】
請求項19の発明は、廃液洗浄ユニットの上端部に二つの給水カプラを離間して配置し、一の給水カプラを給水源の蛇口の接続用カプラに連結可能に設け、他の給水カプラを廃液回収装置に装着した給水カプラに連結可能に設け、前記給水カプラに給水ホースを接続し、該給水ホースの一端を洗浄制御装置に連係するとともに、各給水ホースをホース収容孔に出没可能に配置し、各収容孔の口縁部に各給水カプラを係合して配置し、廃液回収装置に装着した給水カプラに連結する給水カプラと、蛇口に連結する給水カプラと、給水ホースをホース収容孔に出没可能に配置したから、常時は給水ホースを廃液洗浄ユニットの表面から隠蔽して簡潔に構成し、使用時は水道水を給水して廃液回収装置を精密に洗浄することができる。
請求項20の発明は、廃液洗浄ユニットは洗浄制御装置と排出ポンプを備え、これらの流路にフロースイッチを介挿し、各流路を監視するから、前記流路の安全と作業の確実性を確保することができる。
請求項21の発明は、水道水の供給路に所定の水道水が流れていない場合、または洗浄水の排出路若しくは廃液の排出路に所定の洗浄水または廃液が流れていない場合、各流路のエラ-を検知して警告し、各流路を遮断し排出ポンプの作動を停止するから、フロースイッチの検出作動による流路の具体的な安全を確保することができる。
請求項22の発明は、装置本体の上端部に廃液回収容器に連通する複数のサクションフィルタを開閉可能に設け、該サクションフィルタの吸引コックの開放時に除菌洗浄剤を注入し、これを廃液回収容器内に添加するから、除菌洗浄剤の注入を簡便に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に適用した廃液処理装置の組み立て後の状況を示す正面図である。
図2図1の右側面図である。
図3図1の平面図である。
図4図1の背面図である。
図5】本発明に適用した廃液処理装置の正面縦断面図を拡大して示している。
【0033】
図6】本発明を適用した廃液処理装置の内部状況と、外部の接続状況を示す説明図である。
図7】本発明に適用した廃液溢れ防止装置を拡大して示す断面図で、(a)は廃液溢れ防止装置の作動前の状況を示し、(b)は廃液溢れ防止装置の作動時の状況を示している。
図8】本発明に適用した廃液処理装置の斜視図で、若干拡大して示している。
図9】本発明に適用した廃液処理装置を俯瞰して示す斜視図である。
図10】本発明に適用した廃液洗浄ユニットの正面図である。
図11図10の平面図である。
【0034】
図12図10の左側面図である。
図13図10の背面図である。
図14】本発明に適用した廃液洗浄ユニットの斜視図で若干拡大して示し、上端面に二つの給水カプラを離間して配置し、それらの下部に給水ホースを接続している。
図15】本発明に適用した廃液洗浄ユニットの斜視図で、左側面に廃液ホースと廃液カプラを取付け、常時は掛け止めている。
図16】本発明に適用した廃液処理装置の使用状況を示す斜視図で、オペ室における医師と介助者によるオペ状況を示している。
【0035】
図17】本発明に適用した廃液処理装置と廃液洗浄ユニットの使用状況を示す正面図で、廃液処理装置と廃液洗浄ユニットを近接して配置し、廃液回収容器に回収した廃液を漬け置き洗浄後に廃棄後、水道水を廃液回収容器に給水して噴射し、洗浄している状況を示している。
図18】本発明に適用した廃液洗浄ユニットに使用した洗浄制御装置を示す説明図である。
図19】本発明に適用した廃液回収装置の応用形態を示す側面図で、前面の支持ガイドを省略して簡潔に構成している。
図20】本発明に適用した廃液回収装置の更に別の応用形態を示す斜視図で、底部の廃液ホースを背面に配置して掛け止めている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、図1乃至図20において1は筒状の廃液回収装置で、略角柱状の装置本体2を備え、その底部に床面3を走行可能なキャスター4を取付けている。
前記装置本体2は周面を薄厚のステンレス鋼板で被覆して防錆処理し、その上端面に平坦なテーブル面5を形成し、該テーブル面5の後方に本体ヘッド6を突設している。この本体ヘッド6の周面も薄厚のステンレス鋼板で被覆して防錆処理している。
【0037】
前記本体ヘッド6は四角柱状に形成され、その前部壁面に後述する廃液洗浄ユニットの給水ホースを接続する給水カプラ7と、ホースコネクタ8が設けられ、またテーブル面5の中央に二つのサクションフィルタ9,10が左右に配置され、そのフィルタソケット11,12がテーブル面5に立設され、直下の廃液回収容器に連通している。
サクションフィルタ9,10の上部にキャップが開閉可能に取付けられ、後述する廃液回収容器を漬け置き洗浄する際、何れか一方のフィルタ9または10のキャップを開け、所定の除菌洗浄剤の定量を注入し、対応する吸引コック13または14を開弁して、除菌洗浄剤を廃液回収容器内の廃液に滴下するようにしている。
【0038】
前記フィルタソケット11,12の下端部に吸引コック13,14が開閉可能に設けられ、フィルタソケット11,12を開閉して、院内の吸引設備に連通する後述の吸引ホースに導通および遮断可能にしている。
サクションフィルタ9,10の上面にホース接続エンド15,16が突設され、それらに医師等が手術時に使用するオペホース17と、手術の介助者等が使用するサブオペホース18が接続されている。
図中、19はサクションフィルタ9,10の間に配置された圧力調節器で、その圧力導管が後述する廃液回収容器内に連通し、該廃液回収容器の圧力を計測かつ調節可能にしている。
【0039】
前記装置本体2内の底部に円管状の支持筒20が上向きに取付けられ、該支持筒20に有底円筒状の廃液回収容器21の下部が嵌合して収容され、その嵌合部周縁を溶接して固定している。
廃液回収容器21は、ステンレス鋼板をプレス成形した椀状の底部21aと、ステンレス鋼板を円管状に成形した長尺の胴部21bとで構成され、これらの接合部を溶接して有底円筒状に継ぎ足して大容量60~70L、実施形態では72Lに構成し、その胴部21bの上端開口部のフランジ21cに円板状の蓋体22を載置している。
【0040】
前記フランジ21cと蓋体22との間にシールパッキン(図示略)を介在し、この重合部に複数のボルト(図示略)を配置し、上部に突出した螺軸にナット(図示略)をねじ込んで、前記開口部を液密に密閉している。
したがって、廃液回収容器21は装置本体2が移動時また手術時に転倒しても、内部の廃液が外部に漏出したり、周囲を汚損し汚染させたりする事態を阻止し得る。図中、23は装置本体2内と廃液回収容器21との間に設けた空隙部である。
【0041】
前記廃液回収容器21内の上端部の外周に廃液溢れ防止装置24が取付けられ、廃液回収容器21内の廃液25を回収時、廃液溢れ防止ないし逆流防止可能にしている。
前記廃液溢れ防止装置24は、本体ヘッド6内に配管された院内の吸引設備に連通する吸引ホース26の支流管27に、クリップホルダ28を介して垂直に支持されている。
【0042】
廃液溢れ防止装置24は、管状の外筒29の上端部に仕切板30を固定し、該仕切板30の中央の透孔に支流管27を開口している。仕切板30の内側に段付きのパッキンガイド31を配置し、該パッキンガイド31内の上段部に肉厚のパッキン32を配置している
前記パッキン32の中央に通孔33が形成され、該通孔33の下側開口部に柔軟な円錐台形の中空のコーンシール34が圧潰かつ原形回復可能に設けられ、常時は円錐台形の原形を維持して通気可能に形成され、その圧潰時は板状に押し潰されて通孔33を閉塞可能にされている。
【0043】
前記コーンシール34の直下にディスクプレート35が上下動可能に配置され、その支軸36の下端部にフロート37が固定されている。フロート37は釣鐘状に形成され、廃液回収容器21内の廃液25による浮力によって液面と同動可能にされている。
前記廃液溢れ防止装置24は、廃液25の液面がフロート37の下方に位置するときは、ディスクプレート35が最下位置に置かれて、廃液回収容器21内の負圧空気がパッキンガイド31内を移動し、通孔33を介し支流管27に導かれて外部へ排出され、オペホ-ス27による廃液25の吸引回収を実行可能にしている。この状況は図7(a)のようである。
【0044】
一方、廃液25の回収量が増量し、その液面が上昇してフロート37の下部に接するようになると、フロート37が廃液25の浮力によって押し上げられ、これにディスクプレ-ト35が同動してコーンシール34を板状に押し潰し、通孔33を閉塞するようにしている。
この結果、通孔33における負圧空気の移動が遮断され、かつフロート37の上部がパッキンガイド31の下端部に当接して上動を阻止され、通孔33を経由した負圧空気の移動やパッキンガイド31内に侵入した廃液25の移動が阻止され、それらの支流管27への侵入や逆流、すなわち院内への溢流を防止するようにしている。この状況は図7(b)のようである。
【0045】
その際、廃液回収容器21内は、オペホース17やサブオペホース18の体液回収に伴ない混入した空気によって負圧が低下し、体液回収能力が低下して体液等の回収が停止され、容器21内からの体液等の溢流が防止される。
【0046】
前記廃液回収容器21の底部に十字状の出口弁38が突設され、その一端に連結ホース39の一端が接続され、その先端に液柱管40が連通している。前記液柱管40は半透明の樹脂管で構成され、これを装置本体2の前部中央に垂直に配置して、廃液回収容器21に回収した廃液量を柱状に表示可能にし、その背面に黒色の目盛板41を配置している。
42,42は液柱管40の上下位置に配置された支持ガイド、74は一端を出口管38に接続した排液管で、他端を後述の排出管72に連通させている。
図中、43は装置本体2の前部の両側の上部に垂直に配置された略コ字形状の前ハンドル、44は装置本体2の背部の上端部に水平方向に配置された略コ字形状の長尺の後ハンドルである。
【0047】
この他、45はオペ室(手術室)で、該室45に廃液回収装置1が出入り可能にされ、その壁面46の操作パネル47に院内の吸引設備に連通する吸引ポート48が設けられ、該吸引ポート48に吸引ホース26の一端が接続され、その他端が廃液回収容器21に連通している。
【0048】
前記オペ室45に手術台50が設置され、該手術台50上の患者51の手術部位に、医師52の操作を介してオペホース17の先端部を位置付け、患者51の患部から発生する血液等の体液を吸引し廃液回収容器21へ回収可能にしている。その際、手術台50の周辺に飛散した体液等は介助者が保持するサブオペホース18によって吸引可能にしている
【0049】
廃液回収容器21に回収された廃液25は、蛋白質を分解可能な除菌洗浄剤を添加されて一定時間漬け置かれ、実施形態では約一時間経過後、廃液25中の蛋白質を分解して後述の廃液槽に廃棄され、この廃棄後、廃液回収容器21に水道水を導入して洗浄するようにしている。
したがって、廃液回収容器21中の廃液25に洗浄水を導入して直接洗浄する従来の方法に比べて、廃液回収容器21を精密かつ合理的に洗浄するようにしている。
図17はこの洗浄状況を示し、廃液回収装置1をオペ室45から廃液槽53方向へ移動し、周辺の定位置で待機している廃液洗浄ユニット54に近接配置している。
【0050】
前記廃液洗浄ユニット54は図10のように縦長の箱体に形成され、その周面を薄厚のステンレス鋼板で被覆して防錆処理し、上端面に平坦なテーブル面55を形成し、その前面上部に操作パネル56が斜状に形成され、その一端に給水と排水用の操作スイッチ57が配置されている。
前記テーブル面55の後方にカプラ58,59が設けられ、これらのカプラ58,59に給水ホース60,62が接続され、該給水ホース60,62がホース収容孔60a,62aから出没可能に挿入され、その開口縁にカプラ58,59が係合して配置されている
したがって、給水ホース60,62は常時はホース収容孔60a,62a内に隠蔽され、廃液洗浄ユニット54の表面を簡潔にしている。
【0051】
このうち、一方のカプラ58を、前記本体ヘッド6の周面に突設したカプラ7に連結し、その給水ホース60の端部を後述する洗浄制御装置のストレーナに接続している。また、他方のカプラ59を給水源である蛇口61の接続カプラに連結し、その給水ホース62の端部を後述する洗浄制御装置のフロースイッチに接続している。
前記カプラ7に洗浄ホース64の一端が接続され、該洗浄ホース64は本体ヘッド6内に配管され、その他端に洗浄ノズル65が接続され、該洗浄ノズル65を廃液回収容器21内の上部に配置している。
【0052】
前記洗浄制御装置66は廃液洗浄ユニット54内の上部に設けられ、下部に排出ポンプ67が設けられ、これらの作動をマイクロコンピュータ68で制御している。
マイクロコンピュータ68は、後述するフロースイッチ71,79の作動によって、給水ホース60,62に水道水が流れていない場合、または給水ホース60,62が接続されていない場合、廃液洗浄ユニット54の側面に付設した排出管72、廃液回収装置1の底部に配置した廃液管74,廃液洗浄ユニット54の側面から引き出した廃液管76に廃液が流れていない場合、または排出管72、廃液管74,76が接続されていない場合を検出し、それぞれのエラーを検知してブザー(図示略)を警報作動し、或いは廃液回収容器21内の廃液25の残量が略零に低下した場合、所定時間経過後に電磁弁70を閉弁して給水作動を停止し、または排出ポンプ67の駆動を停止するようにしている。
【0053】
前記洗浄制御装置66は給水ホース60,62の中継部に、上流側からストレーナ69と電磁弁70とフロースイッチ71が配置され、ストレーナ69によって水道水をろ過し、フロースイッチ71によって流量を計測し、その流量低下等の異状および流路のエラーを検出してブザー(図示略)を警報作動し、かつその信号を電磁弁70に送って給水をON・OFF作動可能にしている。
【0054】
前記排出ポンプ67に排出管72の一端が接続され、その他端に廃液カプラ75が接続され、該廃液カプラ75に廃液管74の廃液カプラ73が接続されている。すなわち、廃液カプラ73に廃液管74の一端が接続され、その他端が廃液回収容器21の底部に接続されている。
排出ポンプ67の吐出側にフロースイッチ79が配置され、該フロースイッチ79によって廃液管74から廃液管76に亘る廃液25の流量を計測し、その流量低下等の異状および流路のエラーを検出してブザー(図示略)を警報作動し、かつその信号を排出ポンプ67へ送って、その駆動をON・OFF制御可能にしている。
図中、77は廃液洗浄ユニット2の下部に設けたキャスター、78は廃液洗浄ユニット54の背面上部に設けた平面略U字形のハンドルで、前記洗浄ユニット54の移動の際、握持可能にしている。
【0055】
このように構成した廃液回収装置1は、医療現場で発生した廃液25等の回収と収容に使用し、廃液洗浄ユニット54は、廃液回収容器21に回収された廃液25の除菌洗浄と、除菌洗浄後の廃液25を廃棄後の廃液回収容器21の水道水による洗浄に使用し、これらを別々に分離して構成している。
したがって、廃液回収装置1と廃液洗浄ユニット54を一体に構成する場合に比べ、構成が簡潔になり、製作の容易化と合理化、およびそれらの小形軽量化を図れ、しかもそれらの取り扱いや保守および管理が容易になる。これらの廃液回収装置1と廃液洗浄ユニット54は常時は病院の適所に別々に配置され、保守や管理を別個に行ない、必要に応じて所定の位置へ移動する。
【0056】
このうち、廃液処理装置1は廃液洗浄ユニット54よりも若干大形に構成し、その装置本体2の内部に容量60~70L、実施形態では72Lの大容量の廃液回収容器21を収容している。廃液回収容器20は鋼板を椀状にプレス成形した底部21aと、鋼板を中空円筒状に成形した胴部21bとを接合し、その接合部を溶接して有底円筒状に構成している。
そして、底部21aを装置本体2の底部に設けた支持筒20に嵌合し、その嵌合部を溶接するとともに、上端の開口部のフランジ21cに鋼板製の蓋体22を載置し、その載置部にシール材(図示略)を介して複数のボルト(図示略)を通し、上方に突出した螺軸にナット(図示略)をねじ込んで緊締し、液密に装着する。
【0057】
したがって、廃液回収容器を複数の密閉容器で構成するものに比べて、容器の製作費の低減と合理化並びにそれらの使用時における取り換えの煩雑を解消し得るとともに、手術時における廃液の回収を連続かつ円滑に行なえるようになる。
しかも、廃液回収容器21を密閉構造に構成し、内部を開閉不可能に構成しているから、内部に収容した廃液25の流出を阻止することができ、手術後の廃液処理装置1の移動時における転倒事故に際しても、廃液回収容器20からの廃液25の漏出や飛散を防止し、廃液25による汚損や汚染を未然に防止し得る。
なお、廃液回収容器21内には廃液25の溢れ防止装置24が設けられ、廃液回収時の溢れや逆流を防止しているが、これは後述する。
【0058】
本発明の廃液処理装置1は、装置本体2の前部上端面に平坦なテーブル面5を形成し、該テーブル面5の後方に本体ヘッド6を突設し、またテーブル面5の後方にフィルタソケット11,12を離間して突設し、その下端部に吸引コック13,14を回動可能に設けている。
したがって、吸引コック13,14が装置本体2の前部後方に避退して配置されているから、手術時に医師52や介助者達が誤って吸引コック13,14に接触し、誤操作の発生を未然に防止し得る。
【0059】
また、廃液処理装置1は、サクションフィルタ9,10を左右に配置し、その上端のホース接続部15,16にオペホース17と、サブオペホース18を接続可能にしている。
したがって、オペホース17によって手術時に発生する血液等の体液を吸引回収することができ、また周辺に飛散した体液をサブオペホース18によって吸引回収することができるから、手術を円滑に行なえるとともに、手術台50周辺の汚損を防止し、オペ室45の衛生の維持向上を図れる。
【0060】
更に、廃液処理装置1は、前部中央に長尺の液柱管5を配置して廃液量を表示可能にしているから、従来のように短小な液柱管を密閉容器に沿わせて配置する場合に比べて、廃液量の視認効果を向上し得る。
また、廃液処理装置1は、装置本体2の前面上部に左右一対のハンドル43を垂直に設け、背面上部に長尺のハンドル44を水平に配置しているから、ハンドル43によって前方への牽引操作が容易になり、ハンドル44によって後方からの押し移動操作を容易に行なえ、それぞれのハンドル43,44を容易に使い分けられる。
【0061】
一方、廃液洗浄ユニット54は細長の箱状に構成し、その小形軽量化を図って移動と配
置を容易に行えるようにし、その内部の上部に洗浄制御装置66を備え、下部に排出ポンプ67を備え、該洗浄ユニット54を常時は廃液槽53の周辺に配置している。
廃液洗浄ユニット54は上端面に平坦なテーブル面55を備え、その前面上部に操作パネル56を斜状に形成し、その一端に給排水操作スイッチ57を配置し、側面にカプラ75を備えた排出管72を付設している。
【0062】
前記テーブル面55の後方にカプラ58,59を設け、これらのカプラ58,59に給水ホース60,62を接続し、該給水ホース60,62をホース収容孔60a,62aに抜き差し可能に挿入し、その開口縁にカプラ58,59を係合して配置している。
したがって、給水ホース60,62は常時はホース収容孔60a,62a内に隠蔽され、廃液洗浄ユニット54の表面を簡潔にしている。
【0063】
そして、前記一方のカプラ58を、前記本体ヘッド6の周面に突設したカプラ7に連結し、その給水ホース60の端部を洗浄制御装置66のストレーナに接続する。また、他方のカプラ59を給水源である蛇口61の接続カプラに連結し、その給水ホース62の端部を洗浄制御装置66のフロ-スイッチ71に接続する。
一方、前記カプラ7に洗浄ホース64の一端を接続し、該ホース64の他端に洗浄ノズル65を接続し、該洗浄ノズル65を廃液回収容器21内の上部中央に配置する。
【0064】
廃液洗浄ユニット54内の上部に洗浄制御装置66を設け、下部に排出ポンプ67を設け、これらの作動をマイクロコンピュータ68で制御する。
マイクロコンピュータ68は、フロースイッチ71,79の作動によって、給水ホース60,62に水道水が流れていない場合、または給水ホース60,62が接続されていない場合、更に排出管72、廃液管74,76に廃液が流れていない場合、または排出管72、廃液管74,76が接続されていない場合を検出し、それぞれのエラーを検知してブザー(図示略)を警報作動し、或いは廃液回収容器21内の廃液25の残量が略零に減少した場合、所定時間経過後に電磁弁70を閉弁して給水作動を停止し、または排出ポンプ67の駆動を停止させる。
【0065】
前記洗浄制御装置66は給水ホース60,62の中継部に、上流側からストレーナ69と電磁弁70とフロースイッチ71を配置し、ストレーナ69によって水道水をろ過し、フロースイッチ71によって水道水の流量を検出し、その流量低下等の異状および流路のエラーを検出してブザー(図示略)を警報作動し、かつその信号を電磁弁70へ送って給水をON・OFF作動可能にする。
前記排出ポンプ67に排出管72の一端を接続し、その他端のカプラ75を廃液回収装置1の下部から引き出した廃液管74の廃液カプラ73に接続し、廃液管76の他端を廃液槽76の廃液口に連通させる。
【0066】
排出ポンプ67の吐出側にフロースイッチ79を配置し、該フロースイッチ79によって廃液管74から廃液管76に亘る廃液25の流量を計測し、その流量低下等の異状および流路のエラーを検出してブザー(図示略)を警報作動し、かつその信号を排出水ポンプ67へ送って、その駆動をON・OFF制御可能にする。
【0067】
次に、本発明の廃液処理装置1を使用して手術時に発生する血液等の体液を回収する場合は、ハンドル43,44を握持して廃液処理装置1をオペ室45内の所望位置へ移動し、手術台50の側方位置で停止する。
その際、廃液処理装置1は背面を壁面46側に向け、テーブル面5を正面側に向けて手術台50の側方へ離間して位置させる。この状況は図16のようである。
【0068】
この状況の下で手術開始前に、吸引ホース26の一端を院内の吸引設備に連通する吸引ポート48に挿入し、該吸引設備を始動して吸引ホース26の他端から廃液回収容器21内の空気を吸引し、廃液回収容器21が所定の負圧状態に達したところで、該負圧状態を維持し前記空気の吸引を停止する。
【0069】
一方、前記廃液回収容器21の空気の吸引と前後して、サクションフィルタ9,10のホース接続エンド15,16に、サブオペホース18とオペホース17の一端を接続し、これらのホース18,17による体液等の吸引を可能にする。
そして、吸引コック13,14を開操作し、オペホース17の他端を担当医師52が保持し、サブオペホース18の他端を担当介助者が保持して、それらの先端を体液発生現場の患者51の患部に接近し、発生した体液を吸引可能にする。
【0070】
このようにすると、患者51から発生した体液等がオペホース17に導かれ、サクションフィルタ10を経て廃液回収容器21に回収される。また、患者51および手術台50の周辺に飛散した体液がサブオペホース18に導かれ、サクションフィルタ9を経て廃液回収容器21に回収される。したがって、オペホース17とサブオペホース18によって体液等が精密に回収されるから、体液等の飛散や汚損が除去され、オペ室45の衛生が確保される。
【0071】
こうして医療現場で発生した体液等が廃液回収容器21に回収されると、体液25等が廃液回収容器21の底部の出口弁38から連結ホース39に導かれて液柱管40へ移動し、該液柱管40を上昇する。したがって、オペ室45の医師52や介助者は、液柱管40の液面上昇によって廃液回収容器21内の体液25等の回収量を視認し、手術の進捗状況や施術の進行状況の良否を判断し得る。
【0072】
一方、廃液回収容器21に回収された廃液25等の液面が次第に上昇すると、その液面が廃液溢れ防止装置24によって制御される。前記廃液溢れ防止装置24は廃液回収容器21の上端部に設けられ、そのフロート37の作動によって、廃液25等の院内配管路への逆流と溢流が防止可能になる。
【0073】
すなわち、廃液溢れ防止装置24は、廃液25等の液面がフロート37の下方に位置しているときは、フロート37は重力によって下向きに垂下している。
したがって、ディスクプレート35がパッキンガイド31内の最下位置に置かれ、パッキン32との間に空隙が形成されて、通孔33から空気が支流管27へ流入し、廃液25等の支流管27への移動を防止する。
【0074】
一方、廃液25等の液面が更に上昇し、フロート37の下部に接触すると、フロート37が廃液25等の浮力によって押し上げられ、ディスクプレート35がコーンシール34を押し潰して通孔33を閉塞し、通孔33から支流管27への廃液25等の逆流ないし溢流を防止する。
この場合は、廃液回収容器21内は、オペホース17やサブオペホース18の体液回収に伴ない混入した空気によって負圧が低下し、体液回収能力が低下して体液等の回収が停止され、廃液回収容器21内からの体液等の溢流が防止される。
【0075】
次に、廃液回収容器21に廃液25等を回収後、廃液回収容器21を洗浄する場合は、先ず廃液処理装置1からオペホ-ス17とサブオペホ-ス18を取外し、該廃液処理装置1をオペ室45外へ移動し、外部で待機中の廃液洗浄ユニット54側へ接近移動する。
そして、廃液洗浄ユニット54の上端部に位置する一方のカプラ58を引き上げ、その給水ホース60を収容孔60aから引出し、廃液回収装置1の本体ヘッド6の前面に突設した給水カプラ7に連結する。
また、廃液洗浄ユニット54の上端部に位置する他方のカプラ59を引き上げ、その給水ホース62を収容孔62aから引出し、給水源である蛇口61の接続カプラに連結する
【0076】
次に、廃液洗浄ユニット54の下部側面に付設した排出管72のクリップを掛け外し、その排出カプラ75を廃液回収容器21の底部から引き出した廃液管74の廃液カプラ73に連結する。また、排出ンプ67の吐出管を廃液管76の一端に接続し、その他端を廃液槽76の廃液口に連通する。これらの配管状況は図17のようである。
【0077】
こうして、一連の配管を終了したところで、最初に廃液回収容器21を漬け置き洗浄する。
前記漬け置き洗浄は、何れか一方のサクションフィルタ9,10のキャップを開け、所定の除菌洗浄剤の定量を注入し、対応する吸引コック13または14を開弁して、除菌洗浄剤を廃液回収容器21内の廃液25に滴下する。
実施形態の除菌洗浄剤は蛋白質を分解可能な市販のものを使用し、この除菌洗浄剤を滴下後、一定時間、実施形態では約一時間漬け置き、その間に廃液25中の蛋白質を分解し、廃液回収容器21の内面に付着し凝固した蛋白質を分解する。
【0078】
前記一定時間経過後、排出ポンプ67を駆動して廃液25を吸引し、これを廃液管74,排出管72に導き、廃液管76へ吐出して廃液槽53に廃棄する。これらの漬け置き洗浄時間と排出ポンプ67の始動は、廃液洗浄ユニット54の操作スイッチ57によって制御される
したがって、廃液回収容器21中の廃液25に洗浄水を導入して直接洗浄する従来の方法に比べて、廃液回収容器21を精密かつ合理的に洗浄し得、この後の水道水による噴射洗浄効果を向上し得る。
【0079】
この後、漬け置き洗浄後の空状態の廃液回収容器21に水道水を導入して洗浄する。
その場合は、水道水を給水ホース62へ導き、洗浄制御装置66を経由して給水ホース60へ移動し、給水カプラ7,58から廃液処理装置1内の洗浄ホース64へ移動し、該洗浄ホース64の先端の洗浄ノズル65から水道水を廃液回収容器21内に噴射し、その内面に吹き付けて洗浄する。
その際、廃液回収容器21の内面は、漬け置き洗浄によって蛋白質の付着や凝固が除去されているから、精密かつ効率良く洗浄され、その洗浄水が廃液回収容器21の内面を流下して底部に滞留する。この状況は図17のようである。
【0080】
こうして、廃液回収容器21を洗浄し、その洗浄水が所定量滞留したところで、排出ポンプ67を始動し、洗浄水を吸引して廃液管74,排出管72へ送り出し、これを排出ポンプ67から吐出して廃液管76へ移動し、廃液槽53に廃棄する。
廃棄後、排出ポンプ67を停止し、所定時間経過後、給水源の蛇口61を開操作して定量の水道水を給水する。これらの排出ポンプ67の始動と給水は、廃液洗浄ユニット54の操作スイッチ57によって制御される。
【0081】
そして、水道水の洗浄後、排出ポンプ67を始動して洗浄水を廃棄し、この後、蛇口61を開操作して定量の水道水を給水し、廃液回収容器21をすすぎ洗浄する。このすすぎ洗浄を複数回、実施形態では3回行ったところで、一連の洗浄を終了する。
このように、本発明の廃液回収容器21の洗浄は、漬け置き洗浄と水道水による噴射洗浄と、複数回のすすぎ洗浄とで精密かつ緻密に行われる。
【0082】
この間、マイクロコンピュータ68は、フロースイッチ71,79の検出作動によって、給水ホース60,62に水道水が流れていない場合、または給水ホース60,62が接続されていない場合、排出管72、廃液管74,76に廃液が流れていない場合、または排出管72、廃液管74,76が接続されていない場合を検出し、それぞれのエラーを検知してブザー(図示略)を警報作動し、廃液回収容器21内の廃液25の残量が略零になった場合、所定時間経過後に電磁弁70を閉弁して給水作動を停止し、または排出ポンプ67の駆動を停止して、一連の洗浄作動の安全性を監視する。
【0083】
図19は、本発明に適用した廃液回収装置1の応用形態を示す斜視図で、装置本体2の前面下部に配置した液柱管74を上下に延設し、先端のカプラ73を他所へ移動して、装置本体2の前面を簡潔にするとともに、支持ガイド42,42を省略して装置本体2の前面をフラットに形成し、その分、液柱管40と目盛板41を上下に延長して、装置本体2の前面を簡潔かつコンパクトに構成し、液柱管40の視認効果を向上するとともに、支持ガイド42,42の加工費の低減を図るようにしている。
【0084】
図20は、本発明に適用した廃液回収装置1の更に別の応用形態を示す側面図で、廃液管74と先端のカプラ73を廃液回収装置1の背面に移動してクリップで掛け止め、装置本体2の前面を更に簡潔に構成している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
このように本発明の廃液処理装置および廃液処理方法並びに廃液処理装置の洗浄方法は、大容量の廃液回収容器を備え、医療現場で発生する血液や体液、洗浄液、灌流液を連続かつ円滑に回収し、医療現場における医療行為を確実かつ円滑に行なえるとともに、回収した廃液を安全かつ確実に管理し、廃液の溢水や漏水を防止しそれらの汚染や汚損を阻止して、医療現場や院内の衛生を確保するとともに、廃液回収容器に回収した廃液を漬け置き洗浄し、廃液中の蛋白質を除菌洗浄剤によって分解し、この洗浄に廃液を廃棄して廃棄回収容器を洗浄し、廃液回収容器を合理的かつ精密に洗浄し得るようにしたものであるから、病院での使用に好適である。
【符号の説明】
【0086】
1 廃液回収装置
2 装置本体
5 テーブル面
6 本体ヘッド
7 接続カプラ
9,10 サクションフィルタ
17 オペホース
18 サブオペホース
19 圧力調整器
20 支持管
【0087】
21 廃液回収容器
22 蓋体
24 廃液溢れ防止装置
25 廃液
26 吸引ホース
34 コーンシール
37 フロート
40 液柱管
【0088】
43 ハンドル
44 ハンドル
53 廃液槽
54 廃液洗浄ユニット
58 給水カプラ
59 給水カプラ
60 給水ホース
60a ホース収容孔
61 蛇口(給水源)
【0089】
62 給水ホース
62a ホ-ス収容孔
64 洗浄ホース
66 給水制御装置
67 排出ポンプ
71 フロースイッチ
72 排出ホース
73 廃液カプラ
74 廃液ホース
75 排出カプラ
79 フロースイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20