(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015900
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】表面修飾炭素材料、表面修飾炭素材料の製造方法、電極、液体組成物、収容容器、電極の製造装置、電極の製造方法、及び電気化学素子
(51)【国際特許分類】
C09C 1/44 20060101AFI20240130BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240130BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240130BHJP
C09D 11/324 20140101ALI20240130BHJP
【FI】
C09C1/44
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/139
C09D17/00
C09D11/324
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118277
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】本橋 佑一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
5H050
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037BB15
4J037CB18
4J037CB21
4J037EE03
4J037EE11
4J037EE43
4J037FF15
4J039BA02
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA02
4J039CA05
4J039DA02
4J039EA46
4J039GA24
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA10
5H050EA08
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気化学素子等に広く用いられる非プロトン性極性溶剤等への優れた分散性を有する表面修飾炭素材料の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料。
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、*は、結合部位を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加されたことを特徴とする表面修飾炭素材料。
【化1】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化2】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【請求項2】
前記表面修飾炭素材料の前記炭素材料がアントラセンに変換され、前記アントラセンの9位に前記置換基が付与されたモデル化合物において、非経験的分子軌道法による双極子モーメントが、4.0debye以上である、請求項1に記載の表面修飾炭素材料。
【請求項3】
前記金属イオンが、リチウムイオンである、請求項1に記載の表面修飾炭素材料。
【請求項4】
電極形成用である、請求項1に記載の表面修飾炭素材料。
【請求項5】
下記一般式(4)で表されるラジカル化合物を炭素材料の表面に反応させて、下記一般式(1)で表される官能基を前記炭素材料の表面に結合させる工程を有することを特徴とする表面修飾炭素材料の製造方法。
【化3】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
・は、ラジカルを示す。)
【化4】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化5】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【請求項6】
前記一般式(4)で表されるラジカル化合物が、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩から生成される、請求項5に記載の表面修飾炭素材料の製造方法。
【化6】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、前記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示す。)
【請求項7】
集電体と、
前記集電体上に設けられ、請求項1から4のいずれかに記載の表面修飾炭素材料を含有する電極合材層と、
を有することを特徴とする電極。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の表面修飾炭素材料と、
非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒と、
を含有することを特徴とする液体組成物。
【請求項9】
活物質を更に含有する、請求項8に記載の液体組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器。
【請求項11】
請求項10に記載の収容容器と、
前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する付与手段と、
を有することを特徴とする電極の製造装置。
【請求項12】
請求項8に記載の液体組成物を付与する付与工程を有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項13】
前記液体組成物が、インクジェット法により付与される、請求項12に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
請求項7に記載の電極を含有することを特徴とする電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾炭素材料、表面修飾炭素材料の製造方法、電極、液体組成物、収容容器、電極の製造装置、電極の製造方法、及び電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面に炭素材料を付与することで基材に対して炭素材料が持つ機能を付与することができる。基材に対して炭素材料を付与する方法としては、炭素材料を分散媒中に分散させた液体組成物を、例えばインクジェット法などにより塗布することで付与する方法がある。一般的に、炭素材料を分散媒中に分散させるために分散剤を添加することが多いが、この分散剤が種々の課題に繋がることから、分散剤を使用することなく炭素材料を分散させる技術が市場で広く求められている。
【0003】
これまでに、水系媒体内に炭素材料を分散させる技術として、炭素粒子を色素として使用するインクジェットインク等の分野での開発が進んでいる。例えば、炭素平面エッジにラジカル反応により官能基を導入し、水系媒体中での分散性を有する、いわゆる自己分散炭素材料が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気化学素子等に広く用いられる非プロトン性極性溶剤等への優れた自己分散性を有する表面修飾炭素材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の表面修飾炭素材料は、下記一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料である。
【化1】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化2】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電気化学素子等に広く用いられる非プロトン性極性溶剤等への優れた自己分散性を有する表面修飾炭素材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の表面修飾炭素材料における一般式(1)を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の電極の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電極の製造装置である液体吐出装置の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図3の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の電極の製造装置である液体吐出装置の他の例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の電極の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の電極の製造装置としての無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の電極の製造方法における製造工程の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
【
図12】
図12は、負極と正極とセパレータとを有する電気化学素子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(表面修飾炭素材料)
本発明の表面修飾炭素材料は、下記一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料である。
【化3】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化4】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【0009】
本発明の表面修飾炭素材料は、以下の従来技術の問題点を見出したことに基づく発明である。
すなわち、基材表面に炭素材料を付与することで基材に対して炭素材料が持つ機能を付与する技術が求められているが、分散剤を用いて炭素材料を分散させると、分散剤の結合原理により炭素材料の表面が被覆され、炭素材料の導電性を低下させるという問題がある。
また、分散剤を使用することなく炭素系導電粒子などの炭素材料を分散させる従来技術のほとんどが、水系媒体への分散に関する技術であり、電気化学素子、特に二次電池等の形成に広く用いられる非水系媒体(特に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶剤)を分散媒体とした粒子や液体組成物の開発はあまり進んでいないという問題がある。
【0010】
本発明者が、以下に述べる通り鋭意検討した結果、前記一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料によって、電気化学素子等に広く用いられる非プロトン性極性溶剤等への優れた自己分散性を有する表面修飾炭素材料を提供できることを知見し、本発明の完成に至った。
【0011】
水系媒体での分散性の確保は、いわゆる電気二重層斥力を用いて分散する場合が多く、具体的には分散基としてイオン性置換基を使用する場合が多い。水と比較して低極性の非水系媒体は電気二重層斥力が弱く、分散も水系媒体と比較して難易度が高いことが、開発が進んでいない理由であると考えられる。
【0012】
基材表面に炭素材料を付与することで基材に対して炭素材料が持つ機能を付与する一例として、リチウムイオン二次電池をはじめとする電気化学素子の部材を、炭素材料を分散媒中に分散させた液体組成物を用いて形成する場合がある。
リチウムイオン二次電池をはじめとする電気化学素子は、高いエネルギー密度を示すことから、電気機器をはじめ自動車等の車両向けへの展開も期待されている。その中でも、特に二次電池の安全性のさらなる向上が要望されている。一般的に電気化学素子は、(正極)集電体、電極合材層(正極層)、紙、不織布、多孔質フィルム等のセパレータ、電極合材層(負極層)、及び(負極)集電体を基本構成としている。
【0013】
電極合材層は、活物質粒子と炭素系粒子若しくは炭素系繊維との分散体、又は活物質粒子を分散媒に分散することで得られる液体組成物を、集電箔上に塗布することで一般に得られる。電極合材層においては、イオン伝導性と電子伝導性を具有することが必須条件でとされるが、電極合材層で高い電子伝導性を担保するためには、一次粒子径が小さく比表面積の大きく、多孔質構造のアグリゲートが発達した形状のカーボンブラック2次凝集体が必要がとされる。一般に、このようなアグリゲート構造を有する比表面積の大きな粒子を安定して分散させるためには、比表面積に応じた大量の分散剤が必要とされるが、分散剤は本質的に電池性能に寄与することがなく、場合によっては電池性能を阻害する場合もあるという問題がある。
【0014】
近年、炭素粒子からなる導電層を集電箔上に塗布した炭素-金属複合集電箔を用いて、リチウムイオン電池の電池特性を向上する試みがなされている(特開2007-226969号公報、特開2010-135338等参照)。これらの試みにおいても、炭素粒子を含有する液体組成物を金属集電箔上に塗布することにより電池が作製される場合が多い。薄層で導電層を形成する場合、特にインクジェット等を用いて非接触で導電層を形成する場合、一般的に液体粘度を低下させる必要がある。その場合、炭素粒子を安定して分散させるために、電極合材層の場合と同様に大量の分散剤を必要とする。しかしながら、分散剤は本質的に導電性に寄与することがなく、場合によっては導電性を阻害する場合もあるという問題があるため、分散剤の使用量の抑制、より好ましくは分散剤の不使用が求められている。
【0015】
また近年、リチウムデンドライド抑制を目的として銀粒子と炭素粒子を混合したハイブリッド層を集電箔上に塗布したリチウム電池が報告されている(特開2019-96610号公報等参照)。この場合も前記同様に炭素粒子を安定して分散させるために、多量の分散剤が必要になることが予想されるが、こちらも同様に分散剤の使用量の抑制、より好ましくは分散剤の不使用が求められている。
炭素材料に使用される分散剤は、吸着基として芳香族系化合物を有する分散剤を使用する場合が多い(例えば、Chemistry Letters 36(6),pp.692-697、2007参照)。炭素材料の表面はπ平面で構成されており、官能基が少ないため分散剤が吸着するいわゆるアンカー部分が少なく、このため炭素π平面をアンカー部分として使用する場合が多い。これは、分散剤の吸着基と炭素π平面が強くπ-πスタッキング相互作用する現象を利用したものである。
しかしながら、このような設計の分散剤は、炭素粒子のπ電子雲の上にあるため、炭素粒子間における主たる電子伝導機構である、π電子雲-π電子雲間の重なりの間に分散剤という異分子を挟み込んでしまう。このため分散剤の存在が電子伝導を悪化させる要因となる場合がある。
以上について、本発明者らが鋭意検討し、知見した結果、本発明の完成に至ったものである。
【0016】
<炭素材料>
前記炭素材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック等の無定形炭素材料:グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、VGCF等の炭素繊維;ナノダイヤモンド等のいわゆるグラフェン構造を含有する、単独材料又は複合材料;などが挙げられる。
これらの中でも、カーボンブラックが、微小粒子が凝集することで重量当たり大きなネットワーク構造を有し、リチウムイオン電池等の電気化学素子要の導電材料として広く用いられる点で好ましい。
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チャネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラック又はアセチレンブラックが、高い二次電池特性を有する点で、より好ましい。ファーネスブラックの中でも、特に大きな比表面積を有するケッチェンブラックは、特に大きな比表面積を有する点で、更に好ましい。
【0017】
<一般式(1)で表される置換基>
前記置換基は、下記一般式(1)で表される置換基である。
図1にも、本発明の表面修飾炭素材料における前記一般式(1)を示す。
【化5】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化6】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【0018】
前記一般式(1)のMにおける、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムは、前記一般式(1)の窒素原子Nに対して、イオン結合や共有結合、あるいはそれらが混生した結合により結合し、カウンターイオンとして遊離することもできる。
前記金属イオンとしては、正帯電した原子又は分子を意味し、分散安定性の点で一価のアルカリ金属イオンが好ましく、リチウムイオン電池の炭素材料として前記表面修飾炭素材料を用いる場合は、イオン伝導のキャリアであるリチウムイオンが好ましい。
前記有機アミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1-メチルピロリジン、N-ブチルジメチルアミン、1-エチルピペリジン、4-ヒドロキシー1-メチルピペリジン、N,N-ジメチルフォルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルフォリン、3-ジプロピルアミノエタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-エチルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール;ピリジン誘導体などが挙げられる。
【0019】
前記一般式(2)中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNである。前記一般式(2)中、Nの数は0~5のいずれであってよいが、1~3のいずれかが好ましく、1又は2がより好ましい。
前記一般式(2)で表される置換基Rとしては、例えば下記の置換基Rが好適に挙げられる。
【化7】
【0020】
前記一般式(3)中、A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、A9は、CR’R’、NR’、O又はSである。前記一般式(3)中、ヘテロ原子N、O及びSの数は0~4のいずれであってよいが、1~3のいずれかが好ましく、2又は3がより好ましい。
前記一般式(3)で表される置換基Rとしては、例えば下記の置換基Rが好適に挙げられる。
【化8】
【0021】
前記一般式(2)~(3)のR’におけるアルキル基、及びアルコキシ基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1~12のアルキル基、及び炭素数1~12のアルコキシ基が好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、へキシルオキシ基、オクチル基、デシル基、ドデシルオキシ基などが挙げられる。
【0022】
本発明における「表面修飾」、及び「置換基が炭素材料に付加された」とは、基材となる炭素材料内のグラフェン構造に対して置換基を共有結合すること、及び置換基を共有結合することで得られる構造を意味する。
後述する本発明の表面修飾炭素材料の製造方法により、前記置換基が炭素材料に付加された本発明の表面修飾炭素材料を好適に製造することができる。
【0023】
[表面修飾炭素材料の双極子モーメント]
前記表面修飾炭素材料の双極子モーメントとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、4.0debye以上が好ましく、5.0debye以上がより好ましい。
本発明の表面修飾炭素材料において、官能基の機能は炭素材料のグラフェンエッジに置換(共有結合)した形で機能を発揮できる。しかしながら、炭素材料の構造(グラフェン構造)は多数存在するため、炭素材料の構造を一律化したモデル化合物を設定して一般化した後、計算することが一般的である。
本発明においては、アントラセン環の9位に目的とする官能基を付与したモデル化合物を用いて、双極子モーメントを算出した。なお、計算は、非経験的分子軌道法を用いた。
ここで、前記表面修飾炭素材料の双極子モーメントは、前記表面修飾炭素材料の前記炭素材料がアントラセンに変換され、前記アントラセンの9位に前記置換基が付与され、前記置換基におけるMがHに変換されたモデル化合物を用いて、非経験的分子軌道法により算出する。
このようにモデル化合物を設定することにより、量子科学計算のための構造最適化を行い、次いで、モデル化合物の構造に基づき量子計算を行うことで、双極子モーメントを算出することができる。
【0024】
具体的には、前記双極子モーメントの計算には、量子計算化学プログラム Gaussian16(Gaussian社、米国)を用いた。
【0025】
なお、双極子モーメントの単位[debye]は、SI単位系では[C・m]で表され、換算式:1[debye]=3.336×e-30[C・m]によって換算することができる。
【0026】
[分散性]
前記表面修飾炭素材料の分散性としては、表面修飾炭素材料を含有する液体組成物におけるメジアン径の大小を指標として、比較対象としての同種の炭素材料を含有する液体組成物との比較により、評価することができる。
すなわち、分散性が悪い(置換基を有しない)炭素材料を含有する液体組成物では、液体組成物中で炭素材料が凝集し、メジアン径が大きくなる。一方、分散性が良い表面修飾炭素材料を含有する液体組成物中では、メジアン径が小さくなる。
なお、前記表面修飾炭素材料は、追加の分散剤を用いることなく自ら分散性を有することから、「自己分散性」を有する、又は「自己分散性」が高いと表現することがある。
【0027】
前記表面修飾炭素材料の分散性は、具体的には、下記方法を用いて評価することができる。
非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒中に10質量%の固形分となるよう表面修飾炭素材料を投入した混合物に対して、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所製)を用いて、3分間超音波照射し、分散することで液体組成物を得た。得られた液体組成物を分散に用いた有機溶媒で1,000倍に希釈し、動的光散乱度計(NanoSAQLA、大塚電子株式会社製)を用いて粒径分布を測定し、メジアン径(D50)を得た。
前記「非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒」としては、後述する本発明の液体組成物において説明した事項を適宜選択することができる。
前記表面修飾炭素材料と、非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒とを含有する「液体組成物」、乃至「分散体」とは、5nm~5,000nm程度の表面修飾炭素材料の粒子が液体中に浮遊乃至懸濁している状態を意味する。
【0028】
前記置換基が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料における構造を同定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の同定方法を適宜選択することができ、例えば、電子分光法(X線吸収端近傍スペクトル:XANES)を用いる方法、固体NMRによるプロトン又はカーボンの挙動から同定する方法、ESRによるラジカルの挙動から同定する方法などが挙げられる。
電子分光法を用いる方法としては、具体的には、ガラス基板上に塗布したサンプルを、X電子分光装置(XPS)(LJPS-9030、日本分光株式会社製)を用いて、特定の置換基構造のスペクトルを測定することで、表面修飾炭素材料の構造を同定することができる。
固体NMRによるプロトン又はカーボンの挙動から同定する方法としては、具体的には、粉体のまま核磁気共鳴装置(JNM-ECA700、日本電子株式会社製)を用いて、室温(25℃)で測定し、プロトンピーク又はカーボンピークの同定により、置換基構造を同定し、表面修飾炭素材料の構造を同定することができる。
【0029】
(表面修飾炭素材料の製造方法)
本発明の表面修飾炭素材料の製造方法は、下記一般式(4)で表されるラジカル化合物を炭素材料の表面に反応させて、下記一般式(1)で表される官能基を前記炭素材料の表面に結合させる工程を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
【0030】
前記一般式(1)で表される置換基を前記炭素材料の表面に結合(共有結合)させる方法としては、公知の方法により適宜行うことができ、これらも本発明の開示の範囲であるが、前記一般式(1)で表される置換基をラジカル化した、前記一般式(4)で表されるラジカル化合物を前記炭素材料のグラフェンエッジに共有結合させる方法が好ましい。
置換基をラジカル化して炭素材料のグラフェンエッジに共有結合させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、国際特許96/18688号公報、特開2016-27092号公報、特開2016-27093号公報などに記載された方法を適宜選択して、前記一般式(4)で表されるラジカル化合物に適用することができる。
【0031】
<一般式(4)で表されるラジカル化合物>
前記ラジカル化合物は、下記一般式(4)で表されるラジカル化合物である。
【化9】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
・は、ラジカルを示す。)
【化10】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化11】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【0032】
前記一般式(4)のMにおける、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムとしては、前記一般式(1)において説明した事項を適宜選択して適用することができる。
前記一般式(2)及び一般式(3)についても、同様に、前記一般式(1)において説明した事項を適宜選択して適用することができる。
【0033】
ラジカル化合物(有機ラジカル)を得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、国際特許96/18688号公報、特開2016-27092号公報、特開2016-27093号公報などに記載された方法を適宜選択して、前記一般式(4)で表されるラジカル化合物に適用することができる。
これらの中でも、表面修飾率が高く、かつ炭素材料本来の特性の損失が少ない表面修飾炭素を得られる点から、アニリン化合物を出発物質として前記アニリン化合物のアミノ基をジアゾ化したジアゾニウム塩を用いる方法が好ましい。
具体的には、前記一般式(4)で表されるラジカル化合物が、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩から生成されることが好ましい。
【0034】
<一般式(5)で表されるジアゾニウム塩>
前記ジアゾニウム塩は、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩である。
【化12】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示す。)
【化13】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
【0035】
前記一般式(5)のMにおける、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムとしては、前記一般式(1)において説明した事項を適宜選択して適用することができる。
前記一般式(2)及び一般式(3)についても、同様に、前記一般式(1)において説明した事項を適宜選択して適用することができる。
【0036】
前記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩に対応するアニリン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スルファピリジン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファチアゾール、スルフィイソキサゾール、スルファメチゾール、スルファメタジン、スルファモノメトキシン、スルファメトキシピリダジン、スルファーレン、4-アミノ-2,5-ジメトキシ-N-フェニルベンゼンスルホンアミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファダイアジンなどが挙げられる。
【0037】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、上記した本発明の表面修飾炭素材料と、非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒と、を含有し、活物質を更に含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記液体組成物において、前記表面修飾炭素材料は、追加の分散剤を用いることなく自ら分散性を有し、液体組成物に均一に分散することができる。前記液体組成物は、メジアン径5nm~5,000nm程度の表面修飾炭素材料の粒子が液体中に浮遊乃至懸濁している状態であることが好ましく、このことは、上記した表面修飾炭素材料のメジアン径の測定方法により評価することができる。
【0038】
<有機溶媒>
前記有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、スチレン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルスルホキシド(DMSO)、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、ジメチルアセタミド(DMAA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、アセトニトリル、ジメチルスルホンなどが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、電気化学素子の製造に広く使用され、フッ素系ポリマー等の溶解性が高い点で、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルスルホキシド(DMSO)、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセタミド(DMAA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、アセトニトリル、ジメチルスルホン等の非プロトン性極性溶剤が好ましい。
【0039】
<活物質>
前記活物質としては、特に制限はなく、前記液体組成物の用途及び目的に応じて、公知の活物質を適宜選択することができ、具体的には、後述する電極における正極活物質、及び負極活物質を含む活物質から適宜選択することができる。
【0040】
[液体組成物の製造方法]
前記液体組成物は、前記表面修飾炭素材料、前記有機溶媒、及び必要に応じて、樹脂などのその他の成分を、分散装置を用いて分散、混合することで製造できる。
分散装置としては、例えば、攪拌機、ボールミル、ビーズミル、リング式ミル、高圧式分散機、回転式高速せん断装置、超音波分散機などが挙げられる。
【0041】
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物と、容器を含み、前記容器に液体組成物が収容されてなる。
容器としては、例えば、ガラス瓶、プラスチック容器、プラスチックボトル、ステンレスボトル、一斗缶、ドラム缶などが挙げられる。
【0042】
(電極)
本発明の電極は、集電体と、前記集電体上に設けられ、上記した本発明の表面修飾炭素材料を含有する電極合材層と、を有し、更に必要に応じて機能層などのその他の部材を有してもよい。
前記電極としては、正極及び負極のいずれであってもよい。
【0043】
ここで、
図2は、本発明の電極の一例を示す概略図である。
図2の電極10は、集電体1上に電極合材層2と、を有する。
【0044】
<正極>
正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられた正極材からなる正極合材層と、を有する平板又はシート状の電極部である。
正極材は、正極活物質を含有し、バインダ、導電助剤、及び増粘剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0045】
-正極活物質-
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物;結晶構造中にXO4四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン化合物;などが挙げられる。
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。
これらの中でも、サイクル特性の点から、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数及び出力特性の点から、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
なお、ポリアニオン化合物は、電子伝導性の点から、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0046】
-バインダ及び増粘剤-
バインダは、正極活物質同士、又は正極活物質と正極集電体とを結着させ、電極構造を維持するためのバインダである。
バインダの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系バインダ、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フッ素系バインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
なお、バインダは、電極製造時に用いる溶媒、及び印加される電位に対して安定な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。
【0047】
-導電助剤-
また、本発明において、表面修飾炭素材料の他に下記の導電助剤を添加することができる。
前記導電助剤とは、電極中に分散して電極の抵抗を低減するために使用される導電性材料を指し、電極材料間の導電性を補助する役割を担い、導電ネットワークの形成機能を有する。
なお、表面修飾炭素材料が、例えば上述した導電助剤の役割以外の役割を有している場合であっても、少なくとも上述した導電助剤の役割を有する限りにおいては、表面修飾炭素材料は少なくとも導電助剤として扱う。すなわち、表面修飾炭素材料が、例えばアルカリ金属イオンを挿入又は放出する役割を有し、かつ電極中に分散して電極の抵抗を低減し、電極材料間の導電性を補助する役割を有する場合は、表面修飾炭素材料は活物質と、導電助剤と、を兼ねるものとする。
前記導電助剤は、金属材料、又は正極活物質に合わせて炭素質材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電助剤に用いられる金属材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
前記導電助剤に用いられる炭素質材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により製造されている導電性カーボンブラック;人造黒鉛、天然黒鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましい。
これら導電助剤は活物質と複合化して使用することもでき、これにより導電性を向上させることができる。
【0048】
-正極集電体-
正極集電体は、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたもので、印加される電位に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが好ましい。
前記正極集電体の種類(形状や加工の有無)としては、後述する正極の製造方法の工程において、使用可能な耐久性があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレーン箔、孔空箔、エッジド箔、貫通箔、突起箔、エキスパンドメタルなどが挙げられる。これらの中でも、プレーン箔、孔空箔、エッジド箔、貫通箔、突起箔が好ましい。
前記正極集電体上に、前記導電助剤に用いられる炭素質材料があらかじめ塗布されているコーティング箔を正極集電体として使用してもよい。この際にコーティング層として使用される炭素質材料は導電助剤で既に説明した導電助剤として使用される炭素質材料と同様の炭素質材料を用いることができる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。
【0049】
<負極>
負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極材からなる負極合材層と、を有する平板又はシート状の電極部である。
負極材は、負極活物質を含有し、バインダ、導電助剤、及び増粘剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0050】
-負極活物質-
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハード炭素材料)、易黒鉛化性炭素(ソフト炭素材料)などが挙げられる。
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、負極活物質としては、例えば、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0051】
-導電助剤-
前記表面修飾炭素材料の他に下記の導電助剤を添加することができる。
負極に用いられる導電助剤としては、正極で既に説明した導電助剤と同様の導電助剤を用いることができる。
【0052】
-バインダ及び増粘剤-
負極に用いられるバインダ及び増粘剤としては、前記正極のバインダと同様のバインダ及び増粘剤を用いることができる。
前記バインダ及び増粘剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素系バインダ、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。
【0053】
-負極集電体-
負極集電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたものであり、印加される電位に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。これらの中でも銅が好ましい。
前記負極集電体の形状は、平板状の他、目的に応じて適宜選択してよい。
前記負極集電体の大きさは、蓄電素子に使用可能な大きさであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
-その他の成分-
また本発明に用いる電極合材層には、下記その他の成分を添加することができる。
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、金属ナノ粒子などが挙げられる。
本発明における電極層は、下記集電体上に電極合材層を塗布することで形成することもできる。
【0055】
<その他の部材>
<<機能層>>
前記電極は、電極合材層上に、電気化学素子の耐熱性向上を目的として絶縁性粒子を電極合材層上に有することができる。前記機能層は、電極合材層と複合させた複合電極合材層としてもよい。
前記絶縁粒子としては、無機酸化物が好ましく、無機酸化物の中でも、耐熱性の点から、アルミナ、シリカが好ましく、アルミナが特に好ましい。
また、電極合材層上に平滑性を付与する目的で導電性粒子を塗布することができる。導電性粒子としては、カーボンブラックや、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末等が好ましく、分散剤量を減らす又は使用せずに付与できる点で、本発明の表面修飾炭素材料がより好ましい。
【0056】
(電極の製造装置、及び電極の製造方法)
本発明の電極の製造装置は、上記した本発明の収容容器と、前記収容容器に収容された上記した本発明の液体組成物を付与対象物上に付与する付与手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の電極の製造方法は、上記した本発明の液体組成物を付与する付与工程を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
【0057】
<付与手段、付与工程>
前記付与手段は、前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する手段である。
前記吐出工程は、前記液体組成物を付与対象物上に付与する工程であり、前記付与手段により好適に実施できる。
前記付与により、集電体上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。
前記付与対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、集電体(電極基体)、活物質層などが挙げられる。
【0058】
前記付与手段及び付与工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、バーコーティング法、スロットダイコーティング法、ドクターブレードコーティング法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、活版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、液体現像方式による電子写真印刷法などが挙げられる。
これらの中でも、液滴を吐出する位置を精密に制御することができる点で、インクジェット方式で吐出する付与手段及び付与工程が好ましい。なお、電極合材層は下記方法で作成できるが本発明における電極合材層製造方法は上記方法に限定されるものではない。
【0059】
<その他の構成、その他の工程>
前記電極の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。
前記電極の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0060】
-加熱手段、加熱工程-
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。
前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0061】
図3は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す模式図である。
電極の製造装置は、上記した表面修飾炭素材料を含む液体組成物を用いて電極を製造する装置である。電極の装置は、付与対象物を有する印刷基材4上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する付与工程を実施する吐出部110と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を実施する加熱部130を備える。電極の製造装置は、印刷基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出部110、加熱部130の順に印刷基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0062】
前記活物質層などの付与対象物を有する印刷基材4の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
吐出部110は、印刷基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段であるインクジェット印刷法に応じた任意の印刷装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
収容容器1bは液体組成物7を収容し、吐出部110は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、電極の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極の製造装置と一体化した収容容器や電極の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
加熱部130は、
図3に示すように、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を行う。これにより電極合材層を形成することができる。加熱部130は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物7に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0063】
図4は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
前記電極の製造装置を用いると、付与対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
前記電極は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。
【0064】
本実施形態の電極の製造方法の他の例を
図5に示す。
電極210の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、電極基体211上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の電極基体211を準備する。そして、電極基体211を筒状の芯に巻き付け、電極合材層212を形成する側が、
図5中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、電極基体211は、
図5中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の電極基体211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、
図3と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される電極基体211上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、電極基体211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された電極基体211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、電極合材層212が形成され、電極210が得られる。その後、電極210は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
加熱機構309は、電極基体211の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。なお、加熱機構309は、複数個設置されていてもよい。また、重合のための紫外線による硬化装置が設置されていてもよい。
また、電極基体211に吐出された液体組成物12Aは加熱されることが好ましく、加熱する際には、ステージにより加熱してもよいし、ステージ以外の加熱機構により加熱してもよい。加熱機構は、電極基体211の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0065】
加熱温度は特に制限はない。加熱により液体組成物12Aが乾燥して電極合材層が形成される。但し、液体組成物12Aがバインダ前駆体を含む場合は、バインダ前駆体が重合する温度であることが好ましく、使用エネルギーの観点から、70℃~150℃の範囲であることが好ましい。また、電極基体211に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
また、
図6のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
前記電気化学素子の製造方法としては、電極合材層を本発明のものとする以外は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0066】
-正極の製造方法-
正極の製造方法としては、正極活物質に、必要に応じて、バインダ、増粘剤、導電助剤、溶媒を加えてスラリー状とした正極材を、正極集電体上に塗布し、乾燥させる方法などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール等の水系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、アニソール等の有機系溶媒などが挙げられる。
なお、正極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0067】
-負極の製造方法-
負極の製造方法としては、例えば、負極活物質に、必要に応じてバインダ、増粘剤、導電助剤、溶媒などを加えてスラリー状とした負極材を、負極集電体上に塗布して乾燥する方法が用いられる。
なお、スラリー状とした負極材をそのままロール成形してシート電極とする方法、圧縮成形によりペレット電極とする方法、蒸着、スパッタ、メッキ等により負極集電体上に負極活物質の薄膜を形成する方法などを用いてもよい。
負極の製造方法に用いる溶媒としては、正極の製造方法と同様の溶媒を用いることができる。
【0068】
<<印刷部の変形例>>
上述の
図3に示す電極の製造装置(液体吐出装置)では、付与手段として、印刷装置1aから吐出される液体組成物を直接、印刷基材4に付与する方式としたが、転写工程を介して液体組成物を基材に付与する方式(転写方式)であってもよい。転写方式の例を、
図7~8を用いて説明する。
【0069】
図7~8は、印刷部の変形例を示す説明図であり、
図7はドラム状の中間転写体を用いた印刷部、
図8は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示している。
図7に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に表面修飾炭素材料を含む液体組成物を転写することで基材の表面に表面修飾炭素を含む層を形成するインクジェットプリンタである。
【0070】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に表面修飾炭素材料を含む液体組成物層を形成する。各ヘッド101はラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。
ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0071】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。
必要に応じて加熱ユニット4004を有していてもよい。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、液体組成物層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留した液体組成物やごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の液体組成物層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0072】
図8に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に表面修飾炭素材料を含む液体組成物を転写することで基材の表面に表面修飾炭素材料を含む層を形成するインクジェットプリンタである。
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から表面修飾炭素材料を含む液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に表面修飾炭素材料を含む液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、液体組成物層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0073】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した液体組成物層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101から表面修飾炭素材料を含む液体組成物の液滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0074】
なお、
図7に示された中間転写体4001、および
図8に示された中間転写ベルト4006に形成される液体組成物層は単層とは限らず、複数のヘッド101毎に液体組成物を異ならせ、1パスで2層以上の液体組成物層を形成する構成としてもよい。
【0075】
その場合、例えば
図9に示す、本実施形態の電極の製造方法における製造工程(1)~(3)によって付与対象物W10上に第1の層W20(X20)と第2の層X30を形成することが可能になる。
【0076】
中間転写方式の場合、最終的に付与対象物W10に液体組成物層を転写する段階で、液体組成物層の上下が反転する。そのため、工程(1)では、第2の層用の液体組成物を吐出するヘッド101を用いて、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対して液体組成物を付与し、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に第2の層X30を形成する。
【0077】
次に、工程(2)において、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対し第1の層用の液体組成物および第2の層用の液体組成物を付与する。そして、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上の第2の層X30の上に更に第1の層W20(X20)および第2の層X30を形成する。
【0078】
工程(2)における第1の層W20(X20)および第2の層X30の作製は、第1の層用の液体組成物と第2の層用の液体組成物を吐出可能な1つのヘッドにより1工程で作製してもよい。また、第1の層用の液体組成物を吐出するヘッドと、第2の層用の液体組成物を吐出するヘッドを用いて2工程で作製してもよい。
【0079】
中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に作製された液体組成物層は、工程(3)において中間転写体4001(中間転写ベルト4006)から付与対象物W10に転写される。中間転写方式の場合には、上記のような工程により付与対象物W10への第1の層W20(X20)および第2の層X30の作製が行われる。
【0080】
<<液体吐出ヘッドの変形例>>
上述の電極の製造装置では、ヘッド101の構成として、ノズル板のノズル面(ノズルが形成された面)の形状は長方形としたが、ノズル板は台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの例を、
図10および
図11を用いて説明する。
【0081】
図10は液体吐出ヘッドの変形例を示す説明図、
図11は、
図10の液体吐出ヘッドを複数並べた場合の説明図である。
【0082】
ヘッド1Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1Rの液体吐出部101Rおよびノズル板10Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Rを有し、ノズル板10Rには複数のノズル11Rが規則的に二次元状に配列されている。
【0083】
ノズル11Rの配列は、例えば、N個のノズル11Rによって1列のノズル列11Nが構成され、このノズル列11Nを、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0084】
上記構成のヘッド1Rは、
図11に示すように複数のヘッド1Ra,1Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0085】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、上記した本発明の電極を含有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。
前記電気化学素子は、一般的に、正極と、負極と、電解質と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質を保持するセパレータを有する。
【0086】
図12に、本発明の電気化学素子の一例を示す。
電気化学素子100は、電気化学素子セル40に、電解質水溶液又は非水電解質で構成される電解質層81が形成されており、封止容器82により封止されている。電気化学素子100において、引き出し線41及び42は、封止容器82の外部に引き出されている。
電気化学素子セル40は、正極15と負極25が、セパレータ30を介して、積層されている。ここで、負極25は、正極15の両側に積層されている。また、正極集電体11には、引き出し線41が接続されており、負極集電体21には、引き出し線42が接続されている。
負極25は、負極集電体21の両面に、負極合材層22が形成されており、必要に応じて負極合材層22上に第1の絶縁層24が形成され、また必要に応じて負極合材層22及び第1の絶縁層24が第2の絶縁層26で被覆されている。
負極合材層22は、正極合材層形成用液体組成物を塗布することにより、形成することができる。
負極合材層形成用液体組成物は、活物質、及び分散媒を含有し、必要に応じて、導電助剤、分散剤などを更に含有してもよい。
負極合材層形成用液体組成物の塗布方法としては、例えば、コンマコータ法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、液体吐出方法などが挙げられる。
【0087】
正極15は、正極集電体11の両面に、正極合材層12が形成されている。
正極合材層12は、正極合材層形成用液体組成物を塗布することにより、形成することができる。
正極合材層形成用液体組成物は、活物質、及び分散媒を含有し、必要に応じて、導電助剤、分散剤などを更に含有してもよい。
正極合材層形成用液体組成物の塗布方法としては、例えば、コンマコータ法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、液体吐出方法などが挙げられる。
【0088】
<集電体>
本明細書において、集電体とは導電性の高い物質であり、一般的に正極にはアルミニウム、負極には銅が用いられるが、本明細書において集電体は前記物質に限定されるものではない。また、金属基板上にいわゆるカーボンコートをしたものも好ましく用いられる。
なお、電気化学素子セル40の正極15と負極25の積層数は、特に制限は無い。
また、電気化学素子セル40の正極15の個数と負極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
電気化学素子100は、必要に応じて、その他の部材を有してもよい。
電気化学素子100の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
電気化学素子100としては、例えば、水系蓄電素子、非水系蓄電素子などが挙げられる。
【0089】
<セパレータ>
セパレータ30は、正極15と負極25の短絡を防ぐために、必要に応じて、正極15と負極25の間に設けられている。
セパレータ30としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜などが挙げられる。
セパレータ30の大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば、特に制限はない。
セパレータ30は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
なお、非水電解質として、固体電解質を使用する場合は、セパレータ30を省略することができる。
【0090】
<電解質水溶液>
電解質水溶液を構成する電解質塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩化亜鉛などが挙げられる。
【0091】
<非水電解質>
非水電解質としては、固体電解質又は非水電解液を使用することができる。
ここで、非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
-非水溶媒-
非水溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。
非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。
また、非プロトン性有機溶媒は、粘度が低いことが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などが挙げられる。
非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量は、50質量%以上が好ましい。非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量が50質量%以上であると、鎖状カーボネート以外の非水溶媒は誘電率が高い環状物質(例えば、環状カーボネート、環状エステル)であっても、環状物質の含有量が少なくなる。このため、2M以上の高濃度の非水電解液を作製しても、非水電解液の粘度が低くなり、非水電解液の電極へのしみ込みやイオン拡散が良好となる。
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0092】
なお、カーボネート系有機溶媒以外の非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などを用いることができる。
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)などが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどが挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0093】
-電解質塩-
電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はない。
電解質塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましい。
電解質塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオンなどが挙げられる。
電解質塩を構成するアニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-などが挙げられる。
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)などが挙げられる。これらの中でも、イオン伝導度の点から、LiPF6が好ましく、安定性の点から、LiBF4が好ましい。
なお、電解質塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水電解液中の電解質塩の濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非水系蓄電素子がスイング型である場合、1mol/L以上2mol/L以下が好ましく、非水系蓄電素子がリザーブ型である場合、2mol/L以上4mol/L以下が好ましい。
【0094】
[表面修飾炭素材料の用途]
前記表面修飾炭素材料の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した電極形成用途、三次元造形(3Dプリンティング)などが好適に挙げられる。
三次元造形、例えば、SLS方式、SMS方式、FDM方式、MJF(Multi Jet Fusion)方式、又はBJ(Binder Jetting)法などの3Dプリンティングにおいて、色調調整や強度補強などを目的として三次元造形用液体組成物に添加される添加剤として表面修飾炭素材料を用いることができる。本実施形態に係る表面修飾炭素材料を用いることで、三次元造形において分散剤の存在により生じる諸問題の発生を抑制することができる。
したがって、本発明の表面修飾炭素材料を含む三次元造形用液体組成物、三次元造形用液体組成物を収容してなる三次元造形用収容容器、三次元造形用液体組成物を用いた三次元造形装置、及び三次元造形方法、並びに表面修飾炭素材料を含む三次元造形物にも適用することができる。
【0095】
[電気化学素子の用途]
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、車両;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。
車両としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、ダンプカー、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【実施例0096】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0097】
(実施例1-1)
<表面修飾炭素材料1の製造>
室温かつ攪拌条件下、18質量部の炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)を320質量部のイオン交換水に投入し、1時間攪拌した。攪拌終了後、4時間に1回ずつ、1.5質量部のアニリン化合物としてのスルファチアゾール(東京化成株式会社製)、及び0.7質量部の亜硝酸リチウム(三津和化学薬品株式会社製)を投入後、塩酸を用いてpHを2.5に調整し、攪拌を計4回繰り返し、4回目の投入後さらに4時間攪拌を行った。攪拌終了後、遠心分離し上澄み液を除去した残留物をイオン交換水で再分散を4回繰り返した。得られた第1の分散液を7Nの水酸化リチウム水溶液でpH=10に調整し、攪拌を計4回繰り返し、4回目の投入後さらに4時間攪拌を行った。攪拌終了後、遠心分離し上澄み液を除去した残留物をイオン交換水で再分散を3回繰り返した。得られた第2の分散液を遠心処理し、上澄みを除去した後、残渣を真空乾燥機で乾燥することで目的とする一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加された実施例1-1の表面修飾炭素材料1を得た。
【0098】
以下の反応式(I)に示すように、表面修飾炭素材料1の製造において、アニリン化合物であるスルファチアゾール(化合物(a))を、亜硝酸を用いてジアゾ化することにより、一般式(5)で表されるジアゾニウム塩としての化合物(b)が得られ、化合物(b)をラジカル化することにより、一般式(4)で表されるラジカル化合物としての化合物(c)が得られ、化合物(c)が炭素材料であるファーネスブラックラックのグラフェン構造のエッジに共有結合することにより、一般式(1)で表される置換基(d)が炭素材料に付加された表面修飾炭素材料1が得られる。ここで、・はラジカルを示し、*は炭素材料への結合部位を示す。
【化14】
【0099】
(実施例1-2)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファメチゾール(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-2の表面修飾炭素材料2を得た。
【0100】
(実施例1-3)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファメタキサゾール(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-3の表面修飾炭素材料3を得た。
【0101】
(実施例1-4)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファジアジン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-4の表面修飾炭素材料4を得た。
【0102】
(実施例1-5)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファピリジン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-5の表面修飾炭素材料5を得た。
【0103】
(実施例1-6)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファメサジン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-6の表面修飾炭素材料6を得た。
【0104】
(実施例1-7)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファモノメトキシン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-7の表面修飾炭素材料7を得た。
【0105】
(実施例1-8)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファジメトキシン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-8の表面修飾炭素材料8を得た。
【0106】
(実施例1-9)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファドキシン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-9の表面修飾炭素材料9を得た。
【0107】
(実施例1-10)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファモノメトキシン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-10の表面修飾炭素材料10を得た。
【0108】
(実施例1-11)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファメトキシピリダジン(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-11の表面修飾炭素材料11を得た。
【0109】
(実施例1-12)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルフイソキサゾール(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-12の表面修飾炭素材料12を得た。
【0110】
(実施例1-13)
水酸化リチウム水溶液を水酸化ナトリウム水溶液(10N)に代え、第1の分散液をpH=10に調整した以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-13の表面修飾炭素材料13を得た。
【0111】
(実施例1-14)
水酸化リチウム水溶液を水酸化カリウム水溶液に代え、第1の分散液をpH=10に調整した以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-14の表面修飾炭素材料14を得た。
【0112】
(実施例1-15)
水酸化リチウム水溶液をアンモニア水に代え、第1の分散液をpH=10に調整した以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-15の表面修飾炭素材料15を得た。
【0113】
(実施例1-16)
水酸化リチウム水溶液をジエチルアミノエタノール(東京化成株式会社)に代え、第1の分散液をpH=10に調整した以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-16の表面修飾炭素材料16を得た。
【0114】
(実施例1-17)
炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)をファーネスブラックラック(LITXHP、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値100m2g-1)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-17の表面修飾炭素材料17を得た。
【0115】
(実施例1-18)
炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)をアセチレンブラック(デンカブラックLi100、デンカ株式会社製、一次粒径35nm、BET値69m2g-1)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-18の表面修飾炭素材料18を得た。
【0116】
(実施例1-19)
炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)をアセチレンブラック(ケッチェン600J、ケッチェン社製、一次粒径35nm、BET値1,280m2g-1)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で目的とする置換基が炭素材料に付加された実施例1-19の表面修飾炭素材料19を得た。
【0117】
(比較例1-1)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファニルアミド(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-1の表面修飾炭素材料aを得た。
【0118】
(比較例1-2)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファニル酸(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-2の表面修飾炭素材料bを得た。
【0119】
(比較例1-3)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)を4-アミノフマル酸(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-3の表面修飾炭素材料cを得た。
【0120】
(比較例1-4)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファニルアミド(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-1と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-4の表面修飾炭素材料dを得た。
【0121】
(比較例1-5)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファニルアミド(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-18と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-5の表面修飾炭素材料eを得た。
【0122】
(比較例1-6)
スルファチアゾール(東京化成株式会社製)をスルファニルアミド(東京化成株式会社製)に代えた以外は、実施例1-19と同様の方法で一般式(1)を満たさない置換基が炭素材料に付加された比較例1-6の表面修飾炭素材料fを得た。
【0123】
実施例1-1~1-19及び比較例1-1~1-6で用いた成分を表1に示す。
【表1】
【0124】
(実施例2-1)
<液体組成物1の製造>
実施例1-1の表面修飾炭素材料1が10質量%となるように、有機溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンと混合した後、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所製)を用いて、3分間超音波照射することで目的とする実施例2-1の液体組成物1を得た。
【0125】
<分散性の評価:メジアン径の測定>
得られた液体組成物1を使用した有機溶剤で100倍希釈した後、動的光散乱装置(nanoSAQLA、大塚電子株式会社製)を用いて、メジアン径を測定した。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例2-2~2-24、及び比較例2-1~2-11)
表1に示す表面修飾炭素材料と、有機溶剤との組み合わせを用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で目的とする実施例2-2~2-24の液体組成物、及び比較例2-1~2-11の液体組成物を得た。また、実施例2-1と同様の方法で各液体組成物のメジアン径(単位:nm)を測定した。結果を表2-1~2-2に示す。
【0127】
(比較例2-12~2-14)
比較例2-12~2-14として、下記の方法でそれぞれ液体組成物を得ようとしたが、いずれもゲル状となり液体組成物は得られず、粒径分布を測定することはできなかった。
【0128】
(比較例2-12)
18質量部の炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)を160質量部のN-メチル-2-ピロリドンに投入し、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所)を用いて、3分間超音波照射した。
【0129】
(比較例2-13)
18質量部の炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)を162質量部のイオン交換水に投入し、1時間攪拌した。攪拌終了後、4時間に1回ずつ、1.5質量部のアニリン化合物としてのスルファチアゾール(東京化成株式会社製)を投入後、7Nの水酸化リチウム水溶液でpH=10に調整した。調整後エバポレータで水分を除去し、さらに60℃で12時間真空乾燥を行った。乾燥終了後、162質量部のN-メチル-2-ピロリドンを加え、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所製)を用いて、3分間超音波照射した。
【0130】
(比較例2-14)
18質量部の炭素材料としてのファーネスブラックラック(LITX300、キャボット社製、一次粒径20nm、BET値160m2g-1)と5質量部の分散剤(マリアリム150A、日油株式会社製)を160質量部のN-メチル-2-ピロリドンに投入した後、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所製)を用いて、3分間超音波照射した。
【0131】
【0132】
【0133】
<表面修飾炭素材料の双極子モーメント計算>
<<モデル化合物の設定>>
表面修飾炭素材料の双極子モーメントを計算するためのモデル化合物として、実施例1-1の表面修飾炭素材料1において、炭素材料をアントラセンに変換し、前記アントラセンの9位に置換基として前記反応式(I)における置換基(b)が付与され、置換基におけるMがHに変換されたモデル化合物1を設定した。
【0134】
<<双極子モーメント計算>>
設定したモデル化合物1を用いて、非経験的分子軌道法により双極子モーメントを算出した。
具体的には、前記双極子モーメントの計算には、量子計算化学プログラム Gaussian16(Gaussian社、米国)を用いた。なお、このとき作成したモデル化合物の構造最適化を行っている。
【0135】
実施例1-2~1-12の表面修飾炭素材料2~12、及び比較例1-1~1-3の表面修飾炭素材料a~cについても、表面修飾炭素材料1と同様の方法により、モデル化合物を設定し、双極子モーメントを算出した。
【0136】
表3-1~3-4に、対応する表面修飾炭素材料の種類、モデル化合物の構造、当該構造のsmails線形表記、算出した双極子モーメント(単位:Debye)、及び表2-1~2-2に示したメジアン径(単位:nm)を示す。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
表2-1~2-2の結果から、同種の炭素材料を用いた実施例2-1~2-16の表面修飾炭素材料1~16と、比較例2-1~2-3の表面修飾炭素材料a~cとを比較すると、実施例ではメジアン径が小さいことから、従来技術の表面修飾炭素材料と比べて、本発明の表面修飾炭素材料では、微粒化しており分散性が良好であることが確認できた。また、実施例2-17~2-19の表面修飾炭素材料17~19と、比較例2-4~2-6の表面修飾炭素材料d~fとの比較においても同様の傾向が確認できた。
また、実施例2-20~2-24において、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)以外の各種の非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒を用いた場合、本発明の表面修飾炭素材料は、従来技術の表面修飾炭素材料と比較して、いずれの溶媒を用いた場合でも分散性に優れることが確認できた。中でも、非プロトン性極性溶剤であるNMP、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホキシド(DMF)、及びアセトニトリルでは、評価したアルコール溶剤と比較して、より分散性に優れることが確認できた。
【0142】
また、表3-1~3-4の結果から、従来技術の表面修飾炭素材料である表面修飾炭素材料a~cと比較した場合、双極子モーメントとは関係なく本発明の表面修飾炭素材料1~12がいずれも、優れた分散性を有することが確認できた。このことは、分散性は、第一義的には双極子モーメント量ではなく表面修飾された官能基の構造的特徴に由来していることが確認できる。
加えて、4.0debye以上の双極子モーメントを有する表面修飾炭素材料では、より顕著な安定分散化が確認できた。
【0143】
(実施例3~4)
以下の手順により、本発明の表面修飾炭素材料を含む、集電箔、電極、及び電気化学素子を作製した。
【0144】
(実施例3-1)
<炭素材料-金属複合集電箔の作製例>
実施例2-1における表面修飾炭素材料1を含む液体組成物1を、銅箔(古河電気工業株式会社製、厚み:15μm)上にバーコーターにより平均厚みが1μmとなるように塗工し、150℃で2時間乾燥することにより、炭素材料-金属複合集電箔を作製した。
その結果、分散剤を使用することなく、集電箔上に目視上均一に炭素材料をコートすることができた。
【0145】
(実施例3-2)
<負極1の作製>
<<負極合材層1の作製>>
93質量部の黒鉛粉末KS6(ティムカル社製)、及び5質量部のアセチレンブラック(デンカブラックLi、デンカ株式会社製)に、水を加えて混練した後、カルボキシメチルセルロースの2質量%水溶液(ダイセル株式会社製)1質量部を加えて混練した。更に、スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製)1質量部を加え、負極合材層1用スラリーを作製した。
負極集電体としての銅箔(古河電気工業株式会社製、厚み:15μm)上に、負極合材層1用スラリーを塗布した後、150℃で12時間真空乾燥させた。次に、プレス機(テスター産業株式会社製)を用いて、圧縮し、単位体積当たりの固形分が1.6g/cm3の負極合材層1を負極集電体上に形成した。反対側の面にも同様の作業を行うことで負極集電体の両面に負極合材層1が形成された負極1が得られた。
【0146】
<<複合負極合材層1の作製>>
負極合材層1上に、実施例2-20における表面修飾炭素材料1を含む液体組成物20を液体吐出装置(EV2500、株式会社リコー製)、及び液体吐出ヘッド(5421Fヘッド、株式会社リコー製)を用いて、単位面積当たりの固形分量が0.5mg/cm2となるように塗工し、120℃で10分間乾燥した後、100℃で2時間真空乾燥することにより、目的とする複合負極合材層1を作製した。
以上により、負極集電体としての銅箔の両面に、負極合材層1と、表面修飾炭素材料1とが複合された複合負極合材層1を形成することにより、負極1を作製した。
【0147】
(実施例3-3)
<正極1の作製>
<<正極合材層1の作製>>
リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA、シグマアルドリッチ社製)93質量部、導電剤としてアセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)3質量部、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン(シグマアルドリッチ社製)4質量部、及びN-メチル-2-ピロリドン100質量部を混合して、正極合材層1用スラリーを得た。
次に、ダイコート法により、搬送速度0.5m/分間で正極合材層1用スラリーを正極集電体としてのアルミニウム箔(株式会社UACJ製、厚み:15μm)上に塗布した後、乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が15.0mg/cm2の正極合材層1を形成した。反対側の面にも同様の作業を行うことでアルミニウム箔の両面に正極合材層1を形成した。
【0148】
<<複合正極合材層の作製>>
得られた正極合材層1上に、実施例2-20における表面修飾炭素材料1を含む液体組成物20を液体吐出装置(EV2500、株式会社リコー製)、及び液体吐出ヘッド(5421Fヘッド、株式会社リコー製)を用いて、単位面積当たりの固形分量が0.5mg/cm2となるように塗工し、120℃で10分間乾燥した後、100℃で2時間真空乾燥することにより、目的とする複合正極合材層1を作成した。
以上により、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に、正極合材層1と表面修飾炭素材料1とが複合された複合正極合材層1を形成することにより、正極1を作製した。
【0149】
(実施例3-4)
<正極2の作製>
<<複合正極合材層2の作製>>
表面修飾炭素材料1を3質量部と、N-メチル-2-ピロリドン100質量部を混合した後、超音波ホモジナイザー(Ultrasonic Generator、株式会社日本精機製作所製)で合計15分間超音波を照射した。
得られた液体組成物にリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA、シグマアルドリッチ社製)93質量部、導電剤としてアセチレンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)3質量部、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン(シグマアルドリッチ社製)4質量部を混合することで複合正極合材層2用液体組成物を得た。
次に、ダイコート法により、搬送速度0.5m/分間で複合正極合材層2用液体組成物をアルミニウム箔(株式会社UACJ製、厚み:15μm)上に塗布した後、乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が15.0mg/cm2の複合正極合材層2を形成した。得られた電極合材層を裏返し、同様の作業を行うことでアルミニウム箔の両面に複合正極合材層2を形成した。
以上により、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に、表面修飾炭素材料1を含む複合正極合材層2を形成することにより、正極2を作製した。
【0150】
(実施例4-1)
<電気化学素子1の作製>
<<非水電解液の調製>>
1.5Mとなるように、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶剤(質量比1:1:1)にLiPF6を溶解させ、非水電解液を得た。
【0151】
<<電気化学素子1の作製>>
正極として正極1、及び負極として負極1を用いた。
フィルムセパレータを介して、正極3枚、及び負極4枚を交互に積層して、電極素子を得た。このとき、負極の負極合材層が形成されていない領域をまとめて引き出し線となるニッケルタブを溶接した。また、正極の正極合材層が形成されていない領域をまとめて引き出し線となるアルミニウムタブを溶接した(
図12参照)。
電極素子に非水電解液を注入した後、アルミラミネートフイルムで封止して、非水系蓄電素子である電気化学素子100を作製した。
【0152】
(実施例4-2)
<電気化学素子2の作製>
正極として正極2、及び負極として負極1を用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で電気化学素子2を作製した。
【0153】
[電気化学素子の出力の測定]
得られた実施例4-1~4-2の電気化学素子1~2について、以下の手順により電気化学素子の出力を測定し、評価を行った。
充放電試験装置(TOSCAT-3100、東洋システム株式会社製)に電気化学素子の引き出し線を接続し、最大電圧4.2V、電流レート0.2Cで5時間定電流定電圧充電した後、10分間の休止を挟んで、電流レート0.2Cで2.5時間定電流放電させ、非水系蓄電素子の充電率を50%とした。
次に、電流レート1C~10Cのパルスで10秒間放電させ、放電させた後の電圧と電流の相関直線から、2.5Vカットオフ電圧に至る電力を計算し、出力を算出した。
なお、非水系蓄電素子の出力は、10.5W以上であれば、良好であるが、実施例4-1~4-2の電気化学素子1~2はいずれも10.5W以上の出力であった。
すなわち、本発明の表面修飾炭素材料を用いることにより、分散剤を含まない液体組成物を用いて製造された電気化学素子であっても、電気化学素子特性としての出力特性に優れることがわかった。
【0154】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表される置換基が炭素材料に付加されたことを特徴とする表面修飾炭素材料である。
【化15】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化16】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
<2> 前記表面修飾炭素材料の前記炭素材料がアントラセンに変換され、前記アントラセンの9位に前記置換基が付与されたモデル化合物において、非経験的分子軌道法による双極子モーメントが、4.0debye以上である、前記<1>に記載の表面修飾炭素材料である。
<3> 前記金属イオンが、リチウムイオンである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料である。
<4> 電極形成用である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料である。
<5> 下記一般式(4)で表されるラジカル化合物を炭素材料の表面に反応させて、下記一般式(1)で表される官能基を前記炭素材料の表面に結合させる工程を有することを特徴とする表面修飾炭素材料の製造方法である。
【化17】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
・は、ラジカルを示す。)
【化18】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、下記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示し、
*は、結合部位を示す。)
【化19】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A6、A7、及びA8は、それぞれ独立してCR’又はNであり、
A9は、CR’R’、NR’、O又はSであり、
R’は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかであり、
*は、結合部位を示す。)
<6> 前記一般式(4)で表されるラジカル化合物が、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩から生成される、前記<5>に記載の表面修飾炭素材料の製造方法である。
【化20】
(式中、Mは、金属イオン、有機アミン、及びアンモニウムのいずれかであり、
Rは、前記一般式(2)、及び一般式(3)のいずれかを示す。)
<7> 集電体と、
前記集電体上に設けられ、前記<1>から<4>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料を含有する電極合材層と、
を有することを特徴とする電極である。
<8> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料と、
非プロトン性極性溶媒、及びアルコール溶媒の少なくともいずれかの有機溶媒と、
を含有することを特徴とする液体組成物である。
<9> 活物質を更に含有する、前記<8>に記載の液体組成物である。
<10> 前記<8>から<9>のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器である。
<11> 前記<10>に記載の収容容器と、
前記収容容器に収容された前記液体組成物を集電体上に付与する付与手段と、
を有することを特徴とする電極の製造装置である。
<12> 前記<8>から<9>のいずれかに記載の液体組成物を付与する付与工程を有することを特徴とする電極の製造方法である。
<13> 前記液体組成物が、インクジェット法により付与される、前記<12>に記載の電極の製造方法である。
<14> 前記<7>に記載の電極を含有することを特徴とする電気化学素子である。
【0155】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料、前記<5>から<6>のいずれかに記載の表面修飾炭素材料の製造方法、前記<8>から<9>のいずれかに記載の液体組成物、及び前記<10>に記載の収容容器は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
前記<7>に記載の電極、前記<11>に記載の電極の製造装置、及び前記<12>に記載の電極の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、前記電極、前記電極の製造装置、及び前記電極の製造方法は、分散剤を用いることなく分散性及び均一性に優れた表面修飾炭素材料を含有する電極、電極の製造装置、及び電極の製造方法を提供することを目的とする。