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特開2024-159000点検計画支援方法及び点検計画支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159000
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】点検計画支援方法及び点検計画支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241031BHJP
   G06Q 10/0631 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q10/0631
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074703
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 有里
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】大野 茂樹
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA13
5L049AA13
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】実工程の点検作業同士が干渉しないかを簡単に判定することができる点検計画支援方法及び点検計画支援装置を提供する。
【解決手段】本発明の点検計画支援方法は、複数の下位工程から成る上位工程におけるひとつの上位工程と他の上位工程の間の下位工程の干渉を評価する点検計画支援方法であって、一部の作業期間が重複し干渉の可能性のある上位工程の組合せに関し、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間を算出するステップと、各上位工程に属し干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算出するステップと、組合せ作業期間と総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かに応じて下位工程の成立性を判定するステップと、を含むようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の下位工程から成る上位工程におけるひとつの上位工程と他の上位工程の間の下位工程の干渉を評価する点検計画支援方法であって、
一部の作業期間が重複し干渉の可能性のある上位工程の組合せに関し、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間を算出するステップと、
各上位工程に属し干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算出するステップと、
前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かに応じて下位工程の成立性を判定するステップと、
を含むことを特徴とする点検計画支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の点検計画支援方法において、
干渉項目を選定するステップと、
干渉可能性がある上位工程の組合せを抽出するステップと、
干渉可能性がある上位工程の組合せが存在しない場合に、下位工程が成立すると判定するステップと、
干渉可能性がある上位工程の組合せが存在する場合に、干渉可能性がある上位工程に関する前記組合せ作業期間と前記総所要時間を算出し、前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かに応じて下位工程の成立性を判定するステップと、
を含むことを特徴とする点検計画支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載の点検計画支援方法において、
前記干渉項目は、点検作業に用いる工具、点検作業に用いる機材、点検作業を行う作業班、又は点検作業を行う作業エリアのいずれかである
ことを特徴とする点検計画支援方法。
【請求項4】
請求項2に記載の点検計画支援方法において、
前記干渉項目に火災荷重の保安規定に基づいて作業を行う防護区画が選定された場合に、上位工程の組合せにおける火災荷重の総量を算定するステップと、
干渉可能性がある上位工程の組合せが存在するとともに前記火災荷重の総量が保安規定を満たさない場合に、干渉可能性がある上位工程に関する前記組合せ作業期間と前記総所要時間を算出し、前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かを判定し、判定式を満たす場合に下位工程の火災荷重の総量調整を行うステップと、
を含むことを特徴とする点検計画支援方法。
【請求項5】
干渉項目に関連するとともに作業期間の一部が重複する上位工程の組合せを選定する対象範囲選定部と、
前記対象範囲選定部で選定した上位工程の組合せに対し、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する期間算定部と、
前記組合せ作業期間及び前記総所要時間を基に下位工程の成立性を判定する成立性判定部と、
を備えることを特徴とする点検計画支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の点検計画支援装置において、
前記成立性判定部は、前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かに応じて下位工程の成立性を判定する
ことを特徴とする点検計画支援装置。
【請求項7】
請求項5に記載の点検計画支援装置において、
前記対象範囲選定部は、点検作業に用いる工具、点検作業に用いる機材、点検作業を行う作業班、又は点検作業を行う作業エリアのいずれかを干渉項目とする
ことを特徴とする点検計画支援装置。
【請求項8】
請求項5に記載の点検計画支援装置において、
前記干渉項目に火災荷重の保安規定に基づいて作業を行う防護区画が選定された場合に、
前記対象範囲選定部は、
火災荷重の保安規定に基づいて作業を行う防護区画を前記干渉項目とし、
前記成立性判定部は、
上位工程の組合せにおける火災荷重の総量を算定し、
干渉可能性がある上位工程の組合せが存在するとともに前記火災荷重の総量が保安規定を満たさない場合に、前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かを判定し、
判定式を満たす場合に下位工程の火災荷重の総量調整を行う
ことを特徴とする点検計画支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検計画支援方法及び点検計画支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの定期検査では、膨大な数の機器を点検する必要があるため、複数の業者が分担して各機器の点検作業を行うことが多い。定期検査を計画する際には、点検作業を依頼する業者が、各機器の点検作業に関する大まかな工程(標準工程)を作成し、点検作業を請け負う業者が、標準工程に従って点検作業を実施するための詳細な工程(実工程)を作成する。
【0003】
実工程は、各機器の緻密な制約条件を考慮して作成されるが、他の業者が担当する機器との制約条件を考慮していないため、ある業者の点検作業が他の業者の点検作業に干渉し、どちらかの業者が点検作業を実工程通りに実施できないことがある。
【0004】
点検作業の干渉を回避するためには、複数の業者が保有する緻密な制約条件を同時に考慮して実工程を調整する必要があり、時間を要する。あるいは、複数の業者による実工程の調整をしなくても済むように、予め点検作業の日数に余裕を持たせた標準工程を作成するという方法もある。しかし、その場合には定期検査の日数が延びて、原子力発電プラントの稼働率が低下する。
【0005】
特許文献1には、競合作業の有無を判定し、競合すると判定した場合には作業データを調整し競合を解消することができる競合作業調整装置および競合作業調整方法が開示されている。詳しくは、「鉄道路線の保線区間で実施される作業の競合を調整する競合作業調整装置であって、作業内容種別と競合対象種別とが定義された作業内容データベースと、重要度が高い作業を優先的に実施するための優先順位が定義された優先度データベースと、距離データと作業計画データとに基づいて作業の日付および場所が一致するか否かを判定する競合判定部と、競合対象種別に基づいて日付および場所が一致すると判定された一の作業と他の作業とが競合する場合、優先度データベースを参照して優先順位の高い作業の作業日程を先に確定する作業日程調整部と、を備える。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-022909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の開示技術では、作業同士の競合を調整する際に一方の作業の日付を変更するため、前記の作業が再び別の作業と競合する可能性があり、複数回の競合調整が必要となり、時間を要する問題がある。
【0008】
本発明の目的は、緻密な制約条件を考慮せず、実工程の点検作業同士が干渉しないか(実工程が成立するか)を簡単に判定することができる点検計画支援方法及び点検計画支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の点検計画支援方法は、複数の下位工程から成る上位工程におけるひとつの上位工程と他の上位工程の間の下位工程の干渉を評価する点検計画支援方法であって、一部の作業期間が重複し干渉の可能性のある上位工程の組合せに関し、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間を算出するステップと、各上位工程に属し干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算出するステップと、前記組合せ作業期間と前記総所要時間とが所定の判定式を満たすか否かに応じて下位工程の成立性を判定するステップと、を含むようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緻密な制約条件を考慮せず、実工程の点検作業同士が干渉しないか(実工程が成立するか)を簡単に判定することができる。これにより、他の業者との実工程の調整が不要となり、定期検査の計画に要する時間を短縮できる。あるいは、予め点検作業の日数に余裕を持たせた標準工程を作成していた場合には、適切な日数の標準工程を採用できるため、プラントの稼働率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の点検計画支援装置の構成を示す図である。
図2】点検計画支援装置の動作を説明するフローチャートである。
図3】上位工程の例を示す図である。
図4】点検計画支援装置の動作を説明する他のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
以下の説明では、点検作業が干渉する要因となる項目を干渉項目、点検作業を依頼する業者が作成し、機器の点検作業に関する大まかな工程(標準工程)を上位工程、点検作業を請け負う業者が作成し、標準工程に従って点検作業を実施するための詳細な工程(実工程)を下位工程と、呼ぶ。そして、点検作業の干渉を回避できる場合を、下位工程が成立すると呼ぶこととする。
【実施例0013】
本実施例では、1個の工具Aを干渉項目とし、工具Aに関する下位工程の成立性を判定する例を示している。
図1は、実施形態の点検計画支援装置100の構成を示す図である。
【0014】
入力部110は、過去の定期検査実績、保安規定、今回の定期検査情報等を入力するためのキーボードやマウスである。
制御部120は、対象範囲選定部121と期間算定部122と成立性判定部123を有する。
【0015】
対象範囲選定部121は、ユーザが選定した干渉項目に関連するとともに、作業期間(開始日時から終了日時までの期間)の一部が重複する上位工程の組合せを選定する。
期間算定部122は、対象範囲選定部121で選定した上位工程の組合せに対し、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する。
成立性判定部123は、期間算定部122で算定した組合せ作業期間、及び、干渉項目に係る下位工程の総所要時間を基に、下位工程の成立性を判定する。
【0016】
記録部130は、入力部110から入力された情報、対象範囲選定部121と期間算定部122と成立性判定部123の過程で行った演算結果を記憶する。
出力部140は、制御部120で得られた結果を表示する。
【0017】
上記では、点検計画支援装置100が、入力部110と出力部140を備える構成を示したが、入力部110と出力部140に替えて通信部を備えるようにしてもよい。この場合、点検計画支援装置100は、他の制御端末で入力した過去の定期検査実績、保安規定、今回の定期検査情報等を、通信部を介して取得する。また、点検計画支援装置100は、制御部120で得られた結果を、通信部を介して他の制御端末に通知し、制御端末に表示する。
【0018】
より具体的には、点検計画支援装置100は、プロセッサと記憶部と通信I/Fと入出力部を備えたコンピュータ(情報処理装置)により実現する。制御部120の対象範囲選定部121、期間算定部122及び成立性判定部123は、記憶部のプログラムをプロセッサが実行することにより実現する。
【0019】
次に、点検計画支援装置100の動作を、図2のフローチャートにより説明する。
【0020】
ステップS200で、入力部110は、過去の定期検査実績、保安規定、今回の定期検査で実施される上位工程の作業期間、1日の稼働時間等のデータを取得し、取得したデータを、記録部130に記録する。例えば、1日の稼働時間を6時間とする。
【0021】
ステップS201で、入力部110には干渉項目として工具Aが入力されると、点検計画支援装置100は、工具Aを干渉項目に選定し、記録部130に干渉項目として選定された工具Aを記録する。干渉項目の選定は、ユーザによって行われてもよいし、他のシステムで選択されて入力部110に通知されるようにしてもよい。
【0022】
ステップS202で、対象範囲選定部121は、干渉可能性がある上位工程の組合せを抽出する。詳しくは、記録部130から干渉項目が工具Aであることを参照し、工具Aを使用する下位工程を含む上位工程のうち、全ての上位工程の組合せから工具Aの使用が干渉する可能性のある上位工程を抽出する。
【0023】
より具体的には、図3の上位工程の例300に示すガントチャートのように、作業期間が重複(5月1日から5月3日)している、4月29日から5月3日までの実施が計画されている第1の上位工程と、5月1日から5月4日までの実施が計画されている第2の上位工程を、干渉可能性がある上位工程の組合せとして抽出する。なお、図示はしていないが、第1の上位工程も第2の上位工程も、少なくとも工具Aを用いる下位工程を少なくとも1つずつ有して成る。
【0024】
ステップS203で、対象範囲選定部121は、ステップS202において干渉可能性がある上位工程の組合せがひとつでも存在したか否かを判定する。図3に示したように第1の上位工程と第2の上位工程が干渉可能性のある上位工程として抽出された場合には(S203のY)、ステップS204に進み、存在しなかった場合には(S203のN)、ステップS208に進む。
【0025】
ステップS204で、期間算定部122は、ステップS202で干渉可能性があるとして抽出した第1の上位工程と第2の上位工程の組合せについて、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する。
【0026】
より具体的には、図3に示すように、第1の上位工程と第2の上位工程の組合せにおいて、最も早い開始日は4月29日、最も遅い終了日5月4日であることから、第1の上位工程と第2の上位工程が工具Aを使用できる組合せ作業期間Tは36時間(=6日×6時間/日)と算出する。
【0027】
一方、記録部130に記録されている過去の定期検査実績から、第1の上位工程において工具Aを用いる下位工程の所要時間T1Aが20時間、第2の上位工程において工具Aを用いる下位工程の所要時間T2Aが10時間と得られた場合、第1の上位工程及び第2の上位工程において工具Aを用いる総所要時間TAは30時間(=T1A+T2A=20+10時間)と算出される。
【0028】
ステップS205で、成立性判定部123は、ステップS202で干渉可能性があると抽出された上位工程の組合せのそれぞれに対し、ステップS204で算定した組合せ作業期間、及び、干渉項目に係る下位工程の総所要時間を基に判定式を評価し、下位工程の成立性を判定する。
【0029】
判定式は、例えば、式(1)に示すように、第1の上位工程と第2の上位工程が工具Aを使用できる組合せ作業期間Tが、第1の上位工程及び第2の上位工程において工具Aを用いる総所要時間TAより大きい場合に、工具Aを用いる下位工程を、第1の上位工程と第2の上位工程で、工程を遅延させることなく互いに調整して干渉を回避できるので、下位工程が成立すると判定する。
T > TA ……(1)
【0030】
ステップS206で、成立性判定部123は、ステップS202において干渉可能性があると抽出された上位工程の組合せの全ての組合せで、判定式を満たしたか否かを判定する。全ての組合せで判定式を満たした場合には(S206のY)、ステップS208に進み、少なくともいずれかひとつの上位工程の組合せで判定式を満たしていない場合には(S206のN)、ステップS207に進む。
【0031】
ステップS207で、出力部140は、工具Aに関して下位工程が不成立であることを、ユーザに提示し、処理を終了する。
ステップS208で、出力部140は、工具Aに関して下位工程が成立することを、ユーザに提示し、処理を終了する。
【0032】
ステップS205における判定式は、工具Aを第1の上位工程と第2の上位で融通して用いる場合に生じる任意の時間遅延を考慮して判定する遅延係数αを用いた式(2)、又は、遅延時間Tdを用いた式(3)を用いてもよい。
αT > TA ……(2)
T-Td > TA ……(3)
【0033】
判定式として、式(1)~(3)のいずれを用いるかは、干渉項目に応じてユーザが手動で設定するか、又は、制御部120の成立性判定部123が、適切な判定式を自動で設定すればよい。成立性判定部123が、判定式を自動で設定する方法として、過去の定期検査実績を基に算出するか、あるいは機械学習を通じて推定結果を反映する。
【0034】
本実施例では、干渉項目を工具Aとする例を説明したが、点検作業に用いる機材としてもよい。また、点検作業を行う作業班、点検作業を行う作業エリア、火災荷重の保安規定に基づいて作業を行う保護区画を干渉項目とすることもできる。以下に、他の実施形態として詳細に説明する。
【実施例0035】
本実施例では、2班ある点検作業を行う作業班Bを干渉項目とし、作業班Bに関する下位工程の成立性を判定する例、つまり、2班ある作業班Bによる下位工程の実施可否の判定例を、図2のフローチャートにより説明する。
【0036】
ステップS200で、入力部110は、第1の上位工程の作業期間を5月2日9時から5月5日16時まで、第2の上位工程の作業期間を5月3日9時から5月4日16時まで、1日の稼働時間を6時間と取得し、記録部130に記録する。
ステップS201で、入力部110には干渉項目として作業班Bが入力されると、点検計画支援装置100は、作業班Bを干渉項目に選定する。
【0037】
ステップS202で、対象範囲選定部121は、5月3日9時から5月4日16時まで作業期間が重複しているので、干渉可能性がある上位工程の組合せとして第1の上位工程と第2の上位工程の組合せを選択する。
ステップS203で、対象範囲選定部121は、干渉可能性のある上位工程の組合せが存在するので、ステップS204に進む。
【0038】
ステップS204で、期間算定部122は、第1の上位工程と第2の上位工程の組合せについて、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する。
【0039】
具体的には、第1の上位工程と第2の上位工程の組合せにおいて、最も早い開始日時は5月2日9時、最も遅い終了日時は5月5日16時である。また、作業班Bは2班あることから、第1の上位工程と第2の上位工程において、作業班Bが点検できる組合せ作業期間Tは48時間(=(6+6+6+6)時間×2班)となる。
【0040】
また、第1の上位工程の下位工程の総数11個のうち作業班Bが担当する下位工程が8個であるとすると、第1の上位工程の作業時間が24時間であり、第1の工程における作業班Bが担当する下位工程の所要時間T1Bは、17.5時間(=24時間×8÷11)となる。第2の上位工程の下位工程の総数8個のうち作業班Bが担当する下位工程が7個であるとすると、第2の上位工程の作業時間が12時間であり、第2の工程における作業班Bが担当する下位工程の所要時間T2Bは、10.5時間(=12時間×7÷8)となる。したがって、期間算定部122は、第1の上位工程及び第2の上位工程における作業班Bが担当する下位工程の総所要時間TBを28時間(=T1B+T2B=17.5+10.5時間)と算出する。
【0041】
ステップS205で、成立性判定部123は、第1の上位工程と第2の上位工程において、作業班Bが点検できる組合せ作業期間Tが48時間であり、第1の上位工程及び第2の上位工程における作業班Bが担当する下位工程の総所要時間TBが28時間であることは、式(1)を満たすと評価する。
【0042】
ステップS206で、成立性判定部123は、判定式を満たしているので、ステップS208に進む。
【0043】
ステップS208で、出力部140は、作業班Bに関して下位工程が成立することを、ユーザに提示し、処理を終了する。
【実施例0044】
本実施例では、作業エリアCを干渉項目とし、作業エリアCに関する下位工程の成立性を判定する例、つまり、作業エリアCの使用重複による下位工程の実施可否の判定例を、図2のフローチャートにより説明する。
【0045】
ステップS200で、入力部110は、第1の上位工程の作業期間を4月29日9時から5月3日16時まで、第2の上位工程の作業期間を5月1日9時から5月4日16時まで、第3の上位工程の作業工程を5月2日9時から16時まで、1日の稼働時間を6時間と取得し、記録部130に記録する。
ステップS201で、入力部110には干渉項目として作業エリアCが入力されると、点検計画支援装置100は、作業エリアCを干渉項目に選定する。
【0046】
ステップS202で、対象範囲選定部121は、5月2日9時から16時までの作業期間が重複しているので、干渉可能性がある上位工程の組合せとして第1の上位工程と第2の上位工程と第3の上位工程の組合せを選択する。
ステップS203で、対象範囲選定部121は、干渉可能性のある上位工程の組合せが存在するので、ステップS204に進む。
【0047】
ステップS204で、期間算定部122は、第1の上位工程と第2の上位工程と第3の上位工程の組合せについて、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する。
【0048】
具体的には、第1の上位工程と第2の上位工程と第3の上位工程の組合せにおいて、最も早い開始日時は4月29日9時、最も遅い終了日時は5月4日16時である。第1の上位工程と第2の上位工程と第3の上位工程において、作業エリアCを使用できる組合せ作業期間Tは36時間(=6日×6時間/日)となる。
【0049】
また、記録部130に記録されている過去の定期検査実績において、第1の上位工程の作業エリアCで実施する下位工程の所要時間T1Cが20時間、第2の上位工程の作業エリアCで実施する下位工程の所要時間T2Cが12時間、第3の上位工程の作業エリアCで実施する下位工程の所要時間T3Cが6時間の場合、期間算定部122は、作業エリアCで実施する下位工程の総所要時間TCを38時間(=T1C+T2C+T3C=20+12+6時間)と算出する。
【0050】
ステップS205で、成立性判定部123は、第1の上位工程と第2の上位工程と第3の上位工程において、作業エリアCを使用できる組合せ作業期間Tが36時間であり、作業エリアCで実施する下位工程の総所要時間TCが38時間であることは、式(1)を満たしていないと評価する。
【0051】
ステップS206で、成立性判定部123は、判定式を満たしていないので、ステップS207に進む。
【0052】
ステップS207で、出力部140は、作業エリアCに関して下位工程が不成立であることを、ユーザに提示し、処理を終了する。
【実施例0053】
本実施例では、防護区画Dを干渉項目とし、防護区画Dにおける火災荷重に関する下位工程の成立性を判定する例、つまり、防護区画Dにおける火災荷重が保安規定を満たすか否かによる下位工程の実施可否の判定例を、図4のフローチャートにより説明する。
【0054】
図4のフローチャートは、図2にフローに、ステップS501、S502、S503の火災荷重の処理を追加したもので、ステップS200~S208は図2と同様である。
【0055】
ステップS200で、入力部110は、第1の上位工程の作業期間を4月29日9時から5月3日16時まで、第2の上位工程の作業期間を5月1日9時から5月4日16時まで、第3の上位工程の作業工程を5月2日9時から16時まで、1日の稼働時間を6時間と取得し、記録部130に記録する。
【0056】
ステップS201で、入力部110には干渉項目として防護区画Dが入力されると、点検計画支援装置100は、干渉項目に防護区画Dを選定する。
【0057】
ステップS202で、対象範囲選定部121は、5月1日9時から5月3日16時までの作業期間が重複しているので、干渉可能性がある上位工程の組合せとして第1の上位工程と第2の上位工程の組合せを選択する。
【0058】
ステップS203で、対象範囲選定部121は、干渉可能性のある上位工程の組合せが存在するので、ステップS501に進む。
【0059】
ステップS501で、成立性判定部123は、記録部130に記録されている過去の定期検査実績から、各上位工程の組合せの防護区画Dにおける火災荷重の総量を算定する。具体的には、第1の上位工程において防護区画D内で実施される下位工程の作業で持ち込まれる火災荷重の総量W1Dが20GJ、第2の上位工程において防護区画D内で実施される下位工程の作業で持ち込まれる火災荷重の総量W2Dが10GJと得られた場合、防護区画D内に持ち込まれる火災荷重の総量WDは、30GJ(=W1D+W2D=20+10GJ)と算出される。
【0060】
ステップS502で、防護区画Dにおける火災荷重の総量は保安規定を満たすか否かを判定する。詳しくは、式(4)に示すように、保安規定における防護区画Dの火災荷重の最大値をWとし、防護区画Dにおける第1の上位工程と第2の上位工程で持ち込まれる火災荷重の総量WDが、最大値Wより小さければ、防護区画D内で第1の上位工程と第2の上位工程における火災荷重に関して保安規定を満たしている(保安規定を違反していない)と判定する。
WD < W ……(4)
【0061】
そして、ステップS502で、防護区画Dにおける火災荷重の総量が保安規定を満たしていれば(S502のY)、ステップS208に進み、防護区画Dにおける火災荷重の総量が保安規定を満たしていなければ(S502のN)、ステップS204に進む。具体的には、記録部130に記録されている保安規定の情報から、防護区画D内で持ち込める火災荷重の最大値Wが20GJと参照される場合、火災荷重の総量WDが30GJは、式(4)を満たしていないので、ステップS204に進む。
【0062】
ステップS204で、期間算定部122は、ステップS202で干渉可能性があるとして抽出した第1の上位工程と第2の上位工程の組合せについて、組合せた上位工程の開始から終了までの組合せ作業期間、及び、各上位工程に属する干渉項目に係る下位工程の所要時間の合計である総所要時間を算定する。
【0063】
より具体的には、図3に示すように、第1の上位工程と第2の上位工程の組合せにおいて、最も早い開始日は4月29日、最も遅い終了日5月4日であることから、第1の上位工程と第2の上位工程で防護区画D内に火災荷重を持ち込める組合せ作業期間Tは36時間(=6日×6時間/日)と算出する。
【0064】
一方、記録部130に記録されている過去の定期検査実績から、第1の上位工程において防護区画D内で実施される下位工程の所要時間T1Dが20時間、第2の上位工程において防護区画D内で実施される下位工程の所要時間T2Dが10時間と得られた場合、第1の上位工程及び第2の上位工程において防護区画D内で実施される下位工程の総所要時間TDは30時間(=T1A+T2A=20+10時間)と算出される。
【0065】
ステップS205で、成立性判定部123は、第1の上位工程と第2の上位工程で防護区画D内に火災荷重を持ち込める組合せ作業期間Tが36時間であり、防護区画D内で実施される下位工程の総所要時間TDが30時間であることは、式(1)を満たしていると評価する。なお、式(1)の上位工程において工具Aを用いる総所要時間TAを、防護区画D内で実施される下位工程の総所要時間TDに読み替える。
【0066】
ステップS206で、成立性判定部123は、組合せ作業期間Tが36時間、総所要時間TDが30時間の場合に、式(1)の判定式を満たしているので(S206のY)、ステップS503に進む。成立性判定部123は、判定式を満たしてない場合には(S206のN)、ステップS207に進む。
【0067】
ステップS503で、成立性判定部123は、第1の上位工程と第2の上位工程に関して、防護区画D内で実施される下位工程(実工程)を作成する際に、火災荷重の総量が保安規定を満ように火災荷重の総量調整を行って詳細な工程を作成するよう、点検作業を請け負う業者に通知する。そして、成立性判定部123は、ステップS208に進む。
【0068】
ステップS207で、出力部140は、防護区画Dにおける火災荷重に関して下位工程が不成立であることを、ユーザに提示し、処理を終了する。
ステップS208で、出力部140は、防護区画Dにおける火災荷重に関して下位工程が成立することを、ユーザに提示し、処理を終了する。
【0069】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 点検計画支援装置
110 入力部
120 制御部
121 対象範囲選定部
122 期間算定部
123 成立性判定部
130 記録部
140 出力部
図1
図2
図3
図4