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特開2024-159002作業機械の制御方法、プログラム、制御システム、及び作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159002
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】作業機械の制御方法、プログラム、制御システム、及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20241031BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20241031BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20241031BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F02D29/00 B
F01N3/023 A
E02F9/00 M
E02F9/22 Q
E02F9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074705
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 勝也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 一基
(72)【発明者】
【氏名】川口 大輔
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3G093
3G190
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA08
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB06
2D015CA02
3G093AA10
3G093BA04
3G093DA02
3G093DA05
3G093DA14
3G093DB09
3G093DB21
3G093DB22
3G093EA02
3G093EA03
3G093EB06
3G093EB07
3G093EC04
3G190DA04
3G190DA39
3G190DB02
3G190DB12
3G190DB32
3G190DB67
3G190DC11
3G190EA01
3G190EA02
3G190EA14
3G190EA24
3G190EA26
3G190EA53
(57)【要約】
【課題】機関室内部の過剰な温度上昇を抑制する。
【解決手段】エンジン32を収容する機関室30内に外気を取り込むファン321の回転数がエンジン32の回転数Nとともに変化する作業機械1の制御方法は、エンジン32の排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部68を排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、定常状態から特定状態に変化すると、エンジン32の駆動により油圧ポンプ61から吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、第1制御及び第2制御が同時に実行されると、エンジン32の回転数Nを上昇させる第3制御を実行することと、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収容する機関室内に外気を取り込むファンの回転数が前記エンジンの回転数とともに変化する作業機械の制御方法であって、
前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、
定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジンの駆動により油圧ポンプから吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行することと、
を備える、作業機械の制御方法。
【請求項2】
前記特定状態は、前記機関室内の温度が前記定常状態での温度よりも高い温度閾値以上である状態を含む、請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項3】
前記第3制御は、前記第1制御の終了により停止する、請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項4】
前記第3制御において回転数設定部により前記エンジンの目標回転数が小さく設定されると、前記エンジンの回転数を上昇させたまま、前記第2制御における設定よりも前記作業油の吐出量をさらに低下させる第4制御を実行することを備える、請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記第4制御において、前記回転数設定部の設定が低回転側に設定されるとともに、前記作業油の吐出量が減少する、請求項4に記載の作業機械の制御方法。
【請求項6】
前記第3制御において、前記回転数設定部により設定される前記目標回転数が、閾値回転数よりも低く設定されると、前記第4制御を停止するとともに、前記目標回転数に基づいて前記エンジンを制御する第5制御を実行することを備える、請求項4に記載の作業機械の制御方法。
【請求項7】
前記第1制御は、前記作業機械が作業可能な状態で実行される、請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項8】
エンジンを収容する機関室内に外気を取り込むファンの回転数が前記エンジンの回転数とともに変化する作業機械の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、
定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジンの駆動により油圧ポンプから吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行することと、
を行う手段として機能させる、プログラム。
【請求項9】
機関室に収容されるエンジンと、
回転数が前記エンジンの回転数とともに変化し、前記機関室内に外気を取り込むファンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部と、
前記エンジンの駆動により作業油を吐出する油圧ポンプと、
前記エンジン及び前記レギュレータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記排気ガスの温度上昇により前記捕集フィルタ部を再生させる第1制御を実行し、
定常状態から特定状態に変化すると、前記作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行し、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行する、作業機械の制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の作業機械の制御システムを備える、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御方法、プログラム、制御システム、及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
猛暑などの過酷な作業環境では、高温に長時間晒されることで、作業機械に搭載された機器に悪影響が生じる恐れがある。これに対し、たとえば特許文献1は、油圧アクチュエータに供給される作業油の温度上昇を抑制する作業機械を開示している。作業機械は、作業油の温度上昇に応じて油圧ポンプの傾斜角を小さくすることで、作業油の供給量を減少させる。また、作業機械は、油圧アクチュエータの減速制御の緩和によって作業油に対する流動抵抗を小さくすることで、作業油の発熱を抑える。これらによって、油圧アクチュエータを含む油圧機器の破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-112075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、エンジンから排出する排ガスを浄化するために、排ガスに含まれる微粒子を捕集する微粒子捕集フィルタを備えた作業機械がある。集塵フィルタは、捕集された微粒子を定期的な排気ガスの温度上昇により燃焼させることで再生される。掘削などの作業中に集塵フィルタを再生させた場合、機関室内部の温度上昇により、作業機械の内部に搭載された電装機器に悪影響が及ぶ虞がある。但し、特許文献1は、作業中での集塵フィルタの再生により生じる温度上昇、及びこれに伴う電装機器への悪影響を防止することには言及していない。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みて、機関室内部の過剰な温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一の態様による作業機械の制御方法は、エンジンを収容する機関室内に外気を取り込むファンの回転数が前記エンジンの回転数とともに変化する。該制御方法は、前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジンの駆動により油圧ポンプから吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行することと、を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するために本発明の一の態様によるプログラムは、エンジンを収容する機関室内に外気を取り込むファンの回転数が前記エンジンの回転数とともに変化する作業機械の制御方法をコンピュータに実行させる。前記プログラムは、前記コンピュータを、前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジンの駆動により油圧ポンプから吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行することと、を行う手段として機能させる。
【0008】
また、上記目的を達成するために本発明の一の態様による作業機械の制御システムは、エンジンと、ファンと、捕集フィルタ部と、油圧ポンプと、制御部と、を備える。前記エンジンは、機関室に収容される。前記ファンは、回転数が前記エンジンの回転数とともに変化し、前記機関室内に外気を取り込む。前記捕集フィルタ部は、前記エンジンの排気ガスに含まれる微粒子を捕集する。前記油圧ポンプは、前記エンジンの駆動により作業油を吐出する。前記制御部は、前記エンジン及び前記レギュレータを制御する。前記制御部は、前記排気ガスの温度上昇により前記捕集フィルタ部を再生させる第1制御を実行し、定常状態から特定状態に変化すると、前記作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行し、前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジンの回転数を上昇させる第3制御を実行する。
【0009】
また、上記目的を達成するために本発明の一の態様による作業機械は、上述の制御システムを備える構成とされる。
【0010】
本発明の更なる特徴や利点は、以下に示す実施形態によって一層明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、機関室内部の過剰な温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】本実施形態に係る制御システムの一例を示す概略図である。
図3】統合ECUの構成例を示す機能ブロック図である。
図4】第2制御における可変容量ポンプの出力上限の変化を示すグラフである。
図5】第2制御における各温度でのエンジンの回転数に対する可変容量ポンプの出力の変化を示すグラフである。
図6】第3制御におけるエンジンの回転数及び可変容量ポンプの出力の変化を示すグラフである。
図7】第4制御におけるエンジンの回転数及び可変容量ポンプの出力の変化を示すグラフである。
図8】油圧ショベルの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
<1.油圧ショベル1>
まず、図1を参照しながら、作業機械の一例としての油圧ショベル1の概略構造について説明する。油圧ショベル1は、走行を可能にする下部走行体2と、下部走行体2の上部で旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に上下方向に揺動可能に取り付けられる作業機4と、作業機4の先端に前後方向に揺動可能に取り付けられる吊り具5と、
を備える。
【0015】
<1-1.下部走行体2>
下部走行体2は、エンジン32からの動力を受けて駆動し、油圧ショベル1を走行させる。下部走行体2は、左右一対のクローラ21,21及び左右一対の走行用モータ22,22を備える。なお、図1では右のクローラ21及び右の走行用モータ22は図示していない。油圧モータである左右の走行用モータ22,22が左右のクローラ21,21をそれぞれ駆動することで油圧ショベル1の前後進を可能としている。
【0016】
<1-2.上部旋回体3>
上部旋回体3は、下部走行体2に対して旋回ベアリング(図示省略)を介して旋回可能に構成される。上部旋回体3には、操作部31、エンジン32、旋回台33、旋回モータ34などが配置されている。油圧モータである旋回モータ34の駆動力で上部旋回体3が旋回ベアリングを介して旋回する。また、上部旋回体3には、エンジン32により駆動される複数の油圧ポンプが配置される。油圧ポンプが、走行用モータ22,22、旋回モータ34、後述するブームシリンダ41a、アームシリンダ42a、及びバケットシリンダ43aなどに作業油を供給する。走行用モータ22は、作業油の供給量に応じて、単位時間当たりの回転数を切換可能である。なお、以下では、走行用モータ22に限らず、単位時間当たりの回転数を単に、「回転数」と呼ぶ。
【0017】
操作部31には、操縦席311が配置されている。操縦席311の左右には、一対の作業操作レバー312,312が配置される。操縦席311の前方には、一対の走行レバー313,313が配置される。操縦者は、操縦席311に着座して作業操作レバー312,312、走行レバー313,313などを操作することによって、エンジン32、各油圧モータ、各油圧アクチュエータなどの制御を行い、走行、旋回、作業等を行うことができる。
【0018】
また、操縦席311の前方には、操作盤314が配置される。操作盤314は、表示部3141と、エンジンアクセルダイヤル3142を含む操作ボタンと、有する。但し、この例示に限定されず、エンジンアクセルダイヤル3142は、操縦席311の左方又は右方に配置されてもよい。表示部3141には、油圧ショベル1の状態などを操縦者に報知するための画像が表示される。エンジンアクセルダイヤル3142は、操縦者がエンジン32の単位時間当たりの目標回転数を設定するための回転数設定部である。なお、以下では、単位時間当たりの目標回転数を単に、「目標回転数」と呼ぶ。
【0019】
エンジン32は、機関室30に収容される。エンジン32には、ファン321(図2参照)が取り付けられる。つまり、油圧ショベル1はファン321を有する。ファン321の回転数は、エンジン32の駆動とともに回転し、エンジン32を収容する機関室30内に外気を取り込む。ファン321の回転数は、エンジン32の回転数とともに変化する。つまり、エンジン32の回転数が上昇すると、ファンの321の回転数が上昇する。一方、エンジン32の回転数が下降すると、ファンの321の回転数が下降する。
【0020】
<1-3.作業機4>
作業機4は、エンジン32からの動力を受けて駆動し、土砂等の掘削作業を行う。作業機4は、ブーム41、アーム42、及びバケット43を備え、これらを独立して駆動することによって掘削作業を可能としている。
【0021】
ブーム41は、基端部が上部旋回体3の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ41aによって上下方向に揺動される。
【0022】
アーム42は、基端部がブーム41の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ42aによって上下方向に揺動される。
【0023】
バケット43は、基端部がアーム42の先端部に支持され、伸縮自在に可動するバケットシリンダ43aによって前後方向に揺動される。
【0024】
ここで、ブームシリンダ41a、アームシリンダ42a及びバケットシリンダ43aは、作業機4を駆動する油圧アクチュエータに相当する。
【0025】
バケット43は、作業機4の先端に取り付けられ、掘削作業を行うためのツメを備えた容器状の部材である。バケット43は、アーム42先端に取り付けられたピン44を介して揺動可能に取り付けられる。さらに、バケット43は、リンク機構45を介してバケットシリンダ43aと連結される。
【0026】
<1-4.制御システム6>
次に、図2を参照して、油圧ショベル1が有する制御システム6を説明する。図2は、本実施形態に係る制御システム6の一例を示す概略図である。本実施形態において、制御システム6は、可変容量ポンプ61と、ポンプレギュレータ611と、ソレノイド62と、コントロールバルブ63と、油圧アクチュエータ64と、ラジエータ65と、記憶部66と、エンジンECU67と、DPF(diesel particulate filter)68と、統合ECU69と、を含む。
【0027】
可変容量ポンプ61は、エンジン32の駆動により作業油を吐出する油圧ポンプであり、油圧アクチュエータ64に作業油を供給する。なお、油圧アクチュエータ64は、ブームシリンダ41a、アームシリンダ42a及びバケットシリンダ43a、走行用モータ22、及び、旋回モータ34などを含む。
【0028】
可変容量ポンプ61の傾斜角度は、ソレノイド62により駆動されるポンプレギュレータ611により変更される。ポンプレギュレータ611は、可変容量ポンプ61での作業油の吐出量を変化させる。
【0029】
また、可変容量ポンプ61には、温度センサ612が配置される。温度センサ612は、可変容量ポンプ61が吐出する作業油の温度を検出し、統合ECU69に検出結果を送信する。
【0030】
コントロールバルブ63は、可変容量ポンプ61及び油圧アクチュエータ64との間に配置され、可変容量ポンプ61から油圧アクチュエータ64に供給される作業油の流れを制御する。なお、コントロールバルブ63は、複数の方向切換弁(図示省略)を含む。方向切換弁は、可変容量ポンプ61から圧送される作業油の方向と容量を切り換え可能なパイロット式の方向切換弁である。たとえば、方向切換弁は、複数のポジションに切り換え可能であり、受信する切替信号に基づいて中立位置から切替信号が示すポジションに切り換えられる。各々のポジションは、油圧アクチュエータ64に含まれる構成要素(つまり、ブームシリンダ41a、アームシリンダ42a及びバケットシリンダ43a、走行用モータ22、及び、旋回モータ34など)に繋がる。作業油は、切り替えられたポジションに繋がる油圧アクチュエータ64の構成要素に供給される。
【0031】
ラジエータ65は、エンジン32の冷却水を冷やす。ラジエータ65には、温度センサ651が配置される。温度センサ651は、エンジン32からラジエータ65に送られる冷却水の温度を検出し、統合ECU69に検出結果を送信する。
【0032】
記憶部66は、電力の供給が停止されても記憶を保持する非一過性の記憶媒体である。記憶部66は、エンジンECU67及び統合ECU69などで使用される情報及びプログラムなどを記憶する。
【0033】
エンジンECU67は、統合ECU69と通信可能であって、操作部31の操作入力、統合ECU69の指示信号、DPF68の差圧センサ681の検出結果などを受信し、エンジン32の駆動及びDPF68の再生などを指令する。なお、エンジンECU67は、本実施形態では統合ECU69とは別の制御部である。但し、この例示に限定されず、エンジンECU67は、統合ECU69と同じ制御部であってもよい。
【0034】
DPF68は、エンジン32の排気ガスに含まれる微粒子などを捕集する捕集フィルタ部である。たとえば、DPF68は、酸化触媒フィルタ部材と、捕集フィルタ部材と、を有し、これらを通じて排気ガスを排出する。酸化触媒フィルタ部材は、排気ガス中の有害成分を分解し、たとえばNOxからNOを生成する。また、排気ガス中のHC、COからHO、COなどを生成する。捕集フィルタ部材は、排気ガスに含まれるPM(particulate matter)などの微粒子などを捕集する。捕集された微粒子は、たとえば、所定のタイミングでDPF68の再生が実行されることにより除去される。この再生処理では、エンジン32のアフター噴射などによって排気ガスの温度を上昇させることで、酸化触媒フィルタ部材で生成されたNO、及び排気ガス中の酸素により微粒子を燃焼させる。これより、捕集フィルタ部材の目詰まりを防止する。
【0035】
DPF68には、差圧センサ681が配置される。差圧センサ681は、捕集フィルタ部材の出入口の圧力差ΔPを検出し、検出結果をエンジンECU67に送信する。たとえば、差圧センサ681が検出する圧力差ΔPが閾値ΔPs以上になると、エンジンECU67は、DPF68の再生を実行する。
【0036】
<1-4-1.統合ECU69>
統合ECU69は、制御システム6を構成する各部を制御する制御部である。統合ECU69は、操作部31の操作入力、及び温度センサ301,612,651の検出結果を直接又は間接的に受信し、単独で又はエンジンECU67とともに、制御システム6を構成する各部を制御する。たとえば、統合ECU69は、エンジンアクセルダイヤル3142の設定に基づいてエンジンECU67に指令を送信してエンジン32を制御し、エンジン32の回転数を目標回転数に近付ける。また、統合ECU69は、ソレノイド62の制御により、可変容量ポンプ61での作業油の吐出量を制御する。これにより、作業油の吐出圧を変化させ、つまり、可変容量ポンプ61の出力を変化させる。
【0037】
図3は、統合ECU69の構成例を示す機能ブロック図である。統合ECU69は、判定部691と、定常制御部692と、第1制御部693と、第2制御部694と、第3制御部695と、第4制御部696と、第5制御部697と、を有する。各部691~697の機能は、統合ECU69が有するプロセッサなどのコンピュータがプログラムにしたがって演算処理を実行することにより実現される。
【0038】
判定部691は、温度センサ301,612、651の検出温度が各々の温度閾値以上であるか否かを判定する。
【0039】
定常制御部692は、定常状態の油圧ショベル1において、エンジン32の定格回転数Nrを実際の回転数の上限として、エンジンアクセルダイヤル3142で設定された回転数でエンジン32を駆動する。なお、定常状態は、本実施形態では、冷却水の温度センサ651の検出温度Tが温度閾値Tsを下回る状態である。但し、この例示に限定されず、定常状態は、機関室30内の温度センサ301、作業油の温度センサ612,エンジン32の冷却水の温度センサ651の少なくともいずれかの検出温度が各々の温度閾値を下回る状態であってもよい。
【0040】
第1制御部693は、第1制御を実行する。第1制御は、エンジン32の排気ガスの温度上昇によりDPF68を再生させる。たとえば、差圧センサ681により検出された圧力差ΔPが閾値ΔPsを超えると、第1制御部693は、上述の第1制御(すなわちDPF68の再生処理)を実行する。なお、第1制御は、油圧ショベル1が作業可能な状態で実行される。こうすれば、油圧ショベル1での作業を継続しつつ、DPF68の再生処理を実施できる。
【0041】
第2制御部694は、第2制御を実行する。第2制御は、油圧ショベル1が定常状態から特定状態に変化すると、エンジン32の駆動により可変容量ポンプ61から吐出される作業油の吐出量を低下させる。つまり、第2制御では、特定状態でのエンジン32の回転数Nに対する作業油の吐出量は、定常状態でのエンジン32の回転数Nに対する作業油の吐出量よりも低く設定される。
【0042】
なお、特定状態は、機関室30内の温度が定常状態での温度よりも高い温度閾値以上である状態を含む。たとえば、本実施形態では、特定状態とは、冷却水の温度センサ651の検出温度Tが温度閾値Ts以上である状態とされる。但し、この例示に限定されず、特定状態とは、機関室30内の温度センサ301の検出温度が温度閾値以上である状態とされてもよいし、可変容量ポンプ61の作業油の温度センサ612の検出温度が温度閾値以上である状態とされてもよい。すなわち、特定状態は、機関室30内の温度センサ301、作業油の温度センサ612,エンジン32の冷却水の温度センサ651の少なくともいずれかの検出温度が各々の温度閾値以上である状態とされてもよい。温度センサ301,612,651のいずれかの検出結温度により、機関室30内の温度上昇を検知できる。こうすれば、機関室30内の温度上昇時に、可変容量ポンプ61の出力Rを低下させて、エンジン32に掛かる負荷を軽減することで、機関室30内の更なる温度上昇を防止できる。
【0043】
図4は、第2制御における可変容量ポンプ61の出力上限Rmの変化を示すグラフである。なお、図4では、エンジン32の目標回転数が設定上限値(たとえば定格回転数Nr)に設定されている。つまり、図4では、検出温度Tの上昇時及び下降時において使用可能な可変容量ポンプ61の出力上限Rmの変化を示す。
【0044】
図4に示すように、冷却水の検出温度Tが上昇傾向にある場合、検出温度Tが温度閾値Ts未満であれば、可変容量ポンプ61の出力Rを最大(つまり100%)まで使用できる。検出温度Tが温度閾値Ts以上になると、エンジン32及び機関室30内のさらなる温度上昇を防止するため、使用可能な可変容量ポンプ61の出力上限Rmは急激に低下する。可変容量ポンプ61の出力上限Rmを低下させてエンジン32に掛かる負荷を緩和することで、冷却水の検出温度Tの上昇を防止又は下降を促す。さらに、エンジン32の回転数Nを維持することで、ファン321を高回転させて外気をより多く取り込み、エンジン32及び機関室30内を冷却して、検出温度Tを低下させることができる。
【0045】
一方、冷却水の検出温度Tが下降傾向にある場合、検出温度Tが温度閾値Ts未満になるまで、使用可能な可変容量ポンプ61の出力の上限は所定値とされる。検出温度Tが温度閾値Ts未満になると、使用可能な可変容量ポンプ61の出力の上限は最大(つまり100%)に至るまで徐々に上昇する。これにより、油圧ショベル1の作業速度が徐々に復帰(つまり上昇)するため、油圧ショベル1(特に作業機4)における衝突事故、挟まれ事故などを防止できる。
【0046】
従って、第2制御において図4のように制御することにより、長時間の高温環境下でもエンジン32及び機関室30内のヒートバランスを実現しつつ、油圧ショベル1は作業を継続することができる。
【0047】
また、図5は、第2制御における各検出温度Tでのエンジン32の回転数Nに対する可変容量ポンプ61の出力Rの変化を示すグラフである。なお、図5において、L1は、図4の点C1及び点C6の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。L2は、図4の点C5の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。L3は、図4の点C4の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。L4は、図4の点C2及び点C3の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。
【0048】
図5に示すように、第2制御では、可変容量ポンプ61の出力Rは、エンジン32の実際の回転数Nとともに変化する。これにより、油圧ショベル1は、エンジン32の回転数Nに応じた可変容量ポンプ61の出力Rを得ることができる。そのため、油圧ショベル1の操作性を良好に維持できる。
【0049】
但し、同じ回転数Nで得られる出力Rは、冷却水の検出温度T(つまり、エンジン32及び機関室30内の温度)に応じて異なる(図4のC1~C6参照)。
【0050】
たとえば、冷却水の検出温度Tが上昇傾向にある場合、検出温度Tが温度閾値Ts未満であれば、回転数Nに対する出力Rは、L1のように変化する。検出温度Tが温度閾値Ts以上になると、回転数Nに対する出力Rは、急激に低下し、L4のように変化する。つまり、可変容量ポンプ61の出力Rは低下する。これにより、高負荷動作時における油圧ショベル1のオーバーヒート、及びこれに起因するエンスト(意図しないエンジン32の停止)を防止できる。
【0051】
一方、冷却水の検出温度Tが下降傾向にある場合、検出温度Tが温度閾値Ts未満になると、検出温度Tの低下に応じて、回転数Nに対する出力Rはより高い範囲で変化する。つまり、同じ回転数Nに対してより高い出力Rを得ることができる。これにより、油圧ショベル1の作業性が徐々に回復するため、油圧ショベル1を安全に使用できる。
【0052】
従って、第2制御において図5のように制御することにより、長時間の高負荷作業を継続できるとともに、油圧ショベル1の操作性を良好に維持できる。
【0053】
次に、第3制御部695は、第3制御を実行する。第3制御では、第1制御部693による第1制御と第2制御部694による第2制御とが同時に実行されると、エンジン32の回転数Nを上昇させる。なお、第3制御部695は、第1制御が終了すると第3制御を停止する。
【0054】
図6は、第3制御におけるエンジン32の回転数N及び可変容量ポンプ61の出力Rの変化を示すグラフである。なお、図6において、L1は、図4の点C1及び点C6の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。L4は、図4の点C2及び点C3の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。
【0055】
上述の特定状態下でDPF68の再生処理が実施されると、第3制御部695は、可変容量ポンプ61の出力Rを低下させるとともに、定格回転数Nrを越えた回転数Nmまでエンジン32の回転数Nを上昇させる。たとえば、図6のように、エンジン32が最大回転数(つまり定格回転数Nr)である状態での作業時には、エンジン32には高負荷が掛かり、機関室30内は高温環境となる。この際、DPF68の再生処理(つまり第1制御)が開始されると、第3制御部695は、可変容量ポンプ61の出力RをRaまで下げる。つまり、第3制御部695は、出力Rの低下によりエンジン32に掛かる負荷を低減することで、エンジン32及び機関室30内の温度上昇を抑制又は防止する。
【0056】
そして、第3制御部695は、エンジンアクセルダイヤル3142で設定される目標回転数に依らず、回転数Nをエンジン32が駆動可能な最大回転数に近い値Nmまで上昇させる。なお、この時、出力Rの低下によりエンジン32の負荷は低減されているので、エンジン32はさほど発熱しない。また、定格回転数Nrを越えてエンジン32の回転数Nを上昇させることにより、ファン321の回転数を上昇させて機関室30内により多くの外気を取り込んで、エンジン32及び機関室30内を冷却することができる。つまり、ファン321によるエンジン32及び機関室30内の冷却能力を向上させる。
【0057】
従って、機関室30内がより過酷な高温環境下となるDPF68の再生処理時でも、エンジン32及び機関室30内の温度上昇とファン321の冷却による温度下降とのヒートバランスを実現でき、油圧ショベル1の作業を継続できる。また、第3制御では、油圧ショベル1の機関室30内の温度を過剰に上昇させることがないので、機関室30内の配置された機器を熱から十分に保護できる。
【0058】
次に、第4制御部696は、第4制御を実行する。第4制御では、第3制御においてエンジンアクセルダイヤル3142によりエンジン32の目標回転数が小さく設定されると、エンジン32の回転数を上昇させたまま、可変容量ポンプ61での作業油の吐出量をさらに低下させる。こうすれば、エンジン32の回転数を上昇させたままでも、可変容量ポンプ61での作業油の吐出量(つまり出力R)の低下により、油圧アクチュエータ64の動作速度をエンジンアクセルダイヤル3142の設定に応じて遅くできる。従って、油圧ショベル1の作業速度を操縦者の意図により任意に変更することができる。
【0059】
また、第3制御時においても、エンジンアクセルダイヤル3142の使用によって、エンジン32の回転数Nは高止まりしているものの、可変容量ポンプ61で作業油の吐出量を下げて油圧アクチュエータ64の動作速度を変えられる。このために、定常状態の場合と同様に、操縦者は、エンジンアクセルダイヤル3142の使用で油圧アクチュエータ64の動作制御をできる。従って、操縦者の操作性を損なわないようにできる。
【0060】
図7は、第4制御におけるエンジン32の回転数N及び可変容量ポンプ61の出力Rの変化を示すグラフである。なお、図7において、L1は、図4の点C1及び点C6の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。L4は、図4の点C2及び点C3の状態におけるエンジン32の回転数Nに対する出力Rの変化を示す。
【0061】
好ましくは、図7に示すように、第4制御において、可変容量ポンプ61の作業油の吐出量は、第2制御にてエンジンアクセルダイヤル3142で設定された目標回転数に対応する量まで低下する。たとえば、第3制御において、エンジンアクセルダイヤル3142での目標回転数が値Na(つまり定格回転数Nr)に設定されていると、可変容量ポンプ61の出力Rは、100[%]からRa[%]まで低下する。ここで、エンジンアクセルダイヤル3142での目標回転数が値Nbまで小さく設定されると、図7に示すように、エンジン32は回転数Nmを維持したまま、可変容量ポンプ61の出力RはRb[%]まで低下する。また、エンジンアクセルダイヤル3142での目標回転数が値Ncまで小さく設定されると、エンジン32は回転数Nmを維持したまま、可変容量ポンプ61の出力RはRc[%]まで低下する。こうすれば、可変容量ポンプ61の出力Rが過剰に低下することを防止できる。従って、油圧アクチュエータ64の動作速度が遅く成り過ぎないので、油圧ショベル1の作業性を維持できる。
【0062】
次に、第5制御部697は、第5制御を実行する。第5制御では、エンジンアクセルダイヤル3142により設定される目標回転数が閾値回転数よりも低く設定されると、第4制御を停止するとともに、該目標回転数に基づいてエンジン32を制御する。たとえば、目標回転数が閾値回転数よりも低く設定されると、エンジン32の回転数は、温度センサ651の検出温度に応じた回転数Nに対する出力Rの関係(図5のL2,L3,L4参照)で制御される。なお、閾値回転数は、機関室30内の温度低下を実現できる程度に十分に低い値であり、たとえば図7の回転数Nd以下である。こうすれば、エンジン32が過剰に加熱しない程度の適正な回転数でエンジン32を駆動できる。従って、機関室内部の過剰な温度上昇を抑制することができるとともに、エンジン32の燃費の悪化を防止できる。
【0063】
<2.油圧ショベル1の制御方法>
次に、エンジン32を収容する機関室30内に外気を取り込むファン321の回転数がエンジン32の回転数とともに変化する油圧ショベル1の制御方法の一例を説明する。図8は、油圧ショベル1の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図8に示す制御方法は、統合ECU69に搭載されたコンピュータがプログラムに従って演算処理を実行することにより実現される。また、このブログラムは、記憶部66に記憶されており、統合ECU69に搭載されたコンピュータを図8に示す制御方法を行う手段として機能させる。このプログラムは、たとえば、油圧ショベル1の起動とともに開始され、油圧ショベル1の起動停止とともに終了する。
【0064】
まず、温度センサ651の検出温度Tが温度閾値Ts以上であるか否かが判定される(ステップS1)。T<Tsであれば(ステップS1でNO)、差圧センサ681が検出する圧力差ΔPが閾値ΔPs以上であるか否かが判定される(ステップS2)。圧力差ΔPが閾値ΔPs未満であれば(ステップS2でNO)、ステップS1に戻る。圧力差ΔPが閾値ΔPs以上であれば(ステップS2でYES)、第1制御によりDPF68の再生処理が実行され(ステップS3)、ステップS1に戻る。
【0065】
また、T≧Tsであれば(ステップS1でYES)、機関室30内が定常状態から特定状態に変化したと判定される。そして、差圧センサ681が検出する圧力差ΔPが閾値ΔPs以上であるか否かが判定される(ステップS4)。
【0066】
圧力差ΔPが閾値ΔPs未満であれば(ステップS4でNO)、第2制御により可変容量ポンプ61での作業油の吐出量(つまり出力R)が低下する(ステップS5)。そして、温度センサ651の検出温度Tが温度閾値Ts以上であるか否かが判定される(ステップS6)。T<Tsであれば(ステップS6でNO)、検出温度Tに応じて可変容量ポンプ61での作業油の吐出量(つまり出力R)を徐々に復帰(図4及び図5参照)させ(ステップS7)、温度センサ651の検出温度Tが定常温度To(図4参照)以下であるか否かが判定される(ステップS8)。T>Toであれば(ステップS8でNO)、ステップS6に戻る。T≦Toであれば(ステップS8でYES)、可変容量ポンプ61での作業油の吐出量(つまり出力R)が定常状態での量(図4参照)に戻されて第2制御が終了し、ステップS1に戻る。なお、ステップS6~ステップS8間において、差圧センサ681が検出する圧力差ΔPが閾値ΔPs以上になると、第1制御が実行されて、後述するステップS10に進む。
【0067】
次に、圧力差ΔPが閾値ΔPs以上であれば(ステップS4でYES)、第1制御によるDPF068の再生処理と第2制御による特定状態での可変容量ポンプ61の作業油の吐出量(つまり出力R)の低下とが同時に実行され(ステップS9)、第3制御によりエンジン32の回転数Nが定格回転数Nr以上(図6参照)に上昇する(ステップS10)。そして、エンジンアクセルダイヤル3142によりエンジン32の目標回転数が小さく設定されたか否かが判定される(ステップS11)。
【0068】
目標回転数が小さく設定されていれば(ステップS11でYES)、第4制御によりエンジン32の回転数Nを上昇させたまま、作業油の吐出量(つまり出力R)をさらに低下させる(ステップS12)。そして、設定された目標回転数が閾値回転数よりも低いか否かが判定される(ステップS13)。設定された目標回転数が閾値回転数よりも低くなければ(ステップS13でNO)、ステップS11に戻る。
【0069】
設定された目標回転数が閾値回転数よりも低ければ(ステップS13でYES)、第4制御を停止するとともに、第5制御により該目標回転数に基づいてエンジン32が制御される(ステップS14)。つまり、エンジン32は、その回転数Nが目標回転数になるように駆動制御される。そして、ステップS1に戻る。
【0070】
なお、ステップS11~S13において、第1制御の終了(つまりDPF68の再生処理の終了)と第2制御の終了(たとえば特定状態から定常状態への変化)とのどちらかが起こると、第3制御、第4制御、及び第5制御は直ちに停止され、ステップS1に戻る。
【0071】
<3.備考>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は例示であり、その各構成要素及び各処理の組み合わせに色々な変形が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0072】
<4.総括>
以下では、これまでに説明してきた実施形態について総括的に述べる。
【0073】
たとえば、本明細書中に開示されている作業機械1の制御方法は、
エンジン32を収容する機関室30内に外気を取り込むファン321の回転数が前記エンジン32の回転数Nとともに変化する作業機械1の制御方法であって、
前記エンジン32の排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部68を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、
定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジン32の駆動により油圧ポンプ61から吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジン32の回転数Nを上昇させる第3制御を実行することと、
を備える構成(第1の構成)とされる。
【0074】
上記第1の構成の作業機械1の制御方法は、
前記特定状態は、前記機関室30内の温度が前記定常状態での温度よりも高い温度閾値以上である状態を含む構成(第2の構成)であってもよい。
【0075】
また、上記第1又は第2の構成の作業機械1の制御方法は、
前記第3制御は、前記第1制御の終了により停止する構成(第3の構成)であってもよい。
【0076】
また、上記第1から第3のいずれかの構成の作業機械1の制御方法は、
前記第3制御において回転数設定部3142により前記エンジン32の目標回転数が小さく設定されると、前記エンジン32の回転数Nを上昇させたまま、前記第2制御における設定よりも前記作業油の吐出量をさらに低下させる第4制御を実行することを備える構成(第4の構成)であってもよい。
【0077】
また、上記第4の構成の作業機械1の制御方法は、
前記第4制御において、前記回転数設定部3142の設定が低回転側に設定されるとともに、前記作業油の吐出量が減少する構成(第5の構成)であってもよい。
【0078】
また、上記第1から第5のいずれかの構成の作業機械1の制御方法は、
前記第3制御において、前記回転数設定部3142により設定される前記目標回転数が、閾値回転数よりも低く設定されると、前記第4制御を停止するとともに、前記目標回転数に基づいて前記エンジン32を制御する第5制御を実行することを備える構成(第6の構成)であってもよい。
【0079】
また、上記第1から第6のいずれかの構成の作業機械1の制御方法は、
前記第1制御は、前記作業機械1が作業可能な状態で実行される構成(第7の構成)であってもよい。
【0080】
また、本明細書中に開示されているプログラムは、
エンジン32を収容する機関室30内に外気を取り込むファン321の回転数が前記エンジン32の回転数Nとともに変化する作業機械1の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記エンジン32の排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部68を前記排気ガスの温度上昇により再生させる第1制御を実行することと、
定常状態から特定状態に変化すると、前記エンジン32の駆動により油圧ポンプ61から吐出される作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行することと、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジン32の回転数Nを上昇させる第3制御を実行することと、
を行う手段として機能させる構成(第8の構成)とされる。
【0081】
また、本明細書中に開示されている作業機械1の制御システム6は、
機関室30に収容されるエンジン32と、
回転数が前記エンジン32の回転数Nとともに変化し、前記機関室30内に外気を取り込むファン321と、
前記エンジン32の排気ガスに含まれる微粒子を捕集する捕集フィルタ部68と、
前記エンジン32の駆動により作業油を吐出する油圧ポンプ61と、
前記エンジン32及び前記レギュレータ611を制御する制御部69と、
を備え、
前記制御部69は、
前記排気ガスの温度上昇により前記捕集フィルタ部68を再生させる第1制御を実行し、
定常状態から特定状態に変化すると、前記作業油の吐出量を低下させる第2制御を実行し、
前記第1制御及び前記第2制御が同時に実行されると、前記エンジン32の回転数Nを上昇させる第3制御を実行する構成(第9の構成)とされる。
【0082】
また、本明細書中に開示されている作業機械1は、第9の構成の作業機械1の制御システムを備える構成(第10の構成)とされる。
【符号の説明】
【0083】
1 油圧ショベル
6 制御システム
30 機関室
32 エンジン
61 可変容量ポンプ
63 コントロールバルブ
64 油圧アクチュエータ
65 ラジエータ
67 エンジンECU
68 DPF
69 統合ECU
301 温度センサ
321 ファン
612 温度センサ
651 温度センサ
681 差圧センサ
3142 エンジンアクセルダイヤル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8