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特開2024-159006負極材料、当該負極材料を用いた二次電池の負極およびその製造方法
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  • 特開-負極材料、当該負極材料を用いた二次電池の負極およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159006
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】負極材料、当該負極材料を用いた二次電池の負極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20241031BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241031BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/48
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074714
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 直利
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】Si含有粒子と黒鉛粒子とを含有する負極材料であって、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制可能な負極材料を提供する。
【解決手段】ここに開示される負極材料は、Si含有粒子と、黒鉛粒子と、を含有する。前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比は、1~8である。前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合は、10質量%~60質量%である。前記Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度は、0.9g/cm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si含有粒子と、黒鉛粒子と、を含有する負極材料であって、
前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比が1~8であり、
前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合が10質量%~60質量%であり、
前記Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度が、0.9g/cm以上である、負極材料。
【請求項2】
前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)が、2μm~10μmであり、かつ前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)が、5μm~25μmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比が1.2~3.0である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合が20質量%~50質量%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
前記Si含有粒子が、炭素マトリックス中にSi含有ドメインが分散した、Si-C複合材料の粒子である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記Si含有粒子中のSi含有量が、20質量%以上60質量%以下である、請求項5に記載の負極材料。
【請求項7】
負極集電体と、
前記負極集電体に支持された負極活物質層と、
を備える二次電池の負極であって、
前記負極活物質層が、請求項1に記載の負極材料を含有する、二次電池の負極。
【請求項8】
負極集電体に、請求項1に記載の負極材料を含有する負極ペーストを塗工する工程と、
前記塗工された負極ペーストを乾燥して、負極活物質層を形成する工程と、
前記負極活物質層をプレスする工程と、
を備える、二次電池の負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極材料に関する。本発明はまた、当該負極材料を用いた二次電池の負極に関する。本発明はさらに、当該二次電池の負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
車両駆動用電源用途、特にBEVの駆動用電源用途においては、車両の航続距離延長の観点から、二次電池は、さらなる高容量化が望まれている。容量が高い負極活物質として、Si含有粒子が知られており、Si含有粒子によれば二次電池を高容量化できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、負極活物質として、Si含有粒子と、天然黒鉛などの黒鉛粒子とを併用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-38862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Si含有粒子は、容量が高い一方で、二次電池を充放電した際の膨張/収縮による体積変化が大きい。このため、Si含有粒子と黒鉛粒子とを併用する場合、特にSi含有粒子の割合が大きいと、二次電池に充放電を繰り返した際にこれら粒子の充填性が低下して、導電パス切れ、内部ストレスの発生等が起こり得る。そのため、Si含有粒子と黒鉛粒子とを併用する場合には、二次電池のサイクル特性が低下するという問題、具体的には、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化が大きいという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、Si含有粒子と黒鉛粒子とを含有する負極材料であって、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制可能な負極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される負極材料は、Si含有粒子と、黒鉛粒子と、を含有する。前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比は、1~8である。前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合は、10質量%~60質量%である。前記Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度は、0.9g/cm以上である。
【0008】
このような構成によれば、Si含有粒子と黒鉛粒子とを含有する負極材料であって、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制可能な負極材料を提供することができる。
【0009】
別の側面から、ここに開示される二次電池の負極は、負極集電体と、前記負極集電体に支持された負極活物質層と、を備える。前記負極活物質層は、上記の負極材料を含有する。
【0010】
このような構成の負極によれば、二次電池に充放電を繰り返した際の優れた容量劣化耐性を付与することができる。
【0011】
別の側面から、ここに開示される二次電池の負極の製造方法は、負極集電体に、上記の負極材料を含有する負極ペーストを塗工する工程と、前記塗工された負極ペーストを乾燥して、負極活物質層を形成する工程と、前記負極活物質層をプレスする工程と、を備える。
【0012】
このような構成によって得られる負極によれば、二次電池に充放電を繰り返した際の優れた容量劣化耐性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る負極材料の一例の模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る二次電池の負極の構成を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る次電池の負極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。
図4図3のリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0015】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスを指す。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池を指す。
【0016】
本実施形態に係る負極材料は、Si含有粒子と、黒鉛粒子と、を含有する。当該Si含有粒子の平均粒子径D50に対する当該黒鉛粒子の平均粒子径D50の比は、1~8である。当該Si含有粒子と当該黒鉛粒子の合計に対する当該Si含有粒子の質量割合は、10質量%~60質量%である。当該Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度が、0.9g/cm以上である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る負極材料の一例が負極に用いられている場合を、模式的に示す図である。図1に示す例では、負極材料10は、黒鉛粒子12とSi含有粒子14とを含んでいる。図1に示す例では黒鉛粒子12とSi含有粒子14とは混合されている。負極材料10は、負極集電体62上に充填されて配置されている。
【0018】
黒鉛粒子12を構成する黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0019】
図1に示す例では、Si含有粒子14としては、Si-C複合材料の粒子が用いられている。Si含有粒子14は、炭素ドメイン14aと、Si含有ドメイン14bとを有している。複数のSi含有ドメイン14bが炭素ドメイン14a中に分散しており、よって、炭素ドメイン14aは、マトリックスを構成している。
【0020】
炭素ドメイン14aは、例えば、炭素前駆体(例、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂など)の炭素化物;黒鉛などである。
【0021】
Si含有ドメイン14bは、Siを含み、例えば、Si、Si酸化物(SiO)、Si窒化物(SiNx)、Si炭化物(SiCx)等から構成されている。Si含有ドメイン14bは、好ましくは、Si、およびSi酸化物(SiO)の少なくともいずれかから構成される。Si含有ドメイン14bは、微粒子であってよい。なお、Si含有粒子14中のSi含有ドメイン14bの数は、図示されたものに限られない。
【0022】
Si含有ドメイン14bの平均粒子径は、例えば、50nm以下であり、5nm~50nmであってよい。なお、「Si含有ドメイン14bの平均粒子径」は、以下のようにして求めることができる。まず、負極材料10の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察用の試料を作製する。例えば、負極材料10を含む負極活物質層を、FIB(集束イオンビーム)加工して、STEM観察用の試料を作製する。そして、当該試料をEDX元素マッピングにより元素分析した後、BF像(明視野像)およびHAADF像(高角散乱環状暗視野像)を取得する。BF像およびHAADF像により得られるコントラストおよび形状からSi含有ドメイン14bの直径を求めることができる。任意に選ばれる10個以上のSi含有ドメイン14bの直径を求め、その平均値をここでの「Si含有ドメイン14bの平均粒子径」とする。
【0023】
Si含有粒子14中のSi含有量は特に限定されない。二次電池のより高い容量の観点から、Si含有粒子14中のSi含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。Si含有粒子14の過度の体積変化の抑制の観点から、Si含有粒子14中のSi含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。また、Si含有粒子14中の酸素(O)含有量は特に限定されないが、好ましくは10質量%以下である。なお、Si含有粒子14中のSi含有量およびO含有量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法に基づく分析により、求めることができる。
【0024】
Si含有粒子14は、例えば、炭素材料の内部にSiを含む微粒子が分散したもの;球状に造粒された多孔質黒鉛の空孔内に、Siを含む微粒子が入り込んだもの;などである。
【0025】
Si含有粒子14は、公知方法に従って得ることができる。例えば、Si、Si酸化物等の微粒子と、上記炭素前駆体を混合後、炭素化し、球状化処理して得ることができる。あるいは、球状に造粒された多孔質黒鉛と、Si、Si酸化物等の微粒子を分散媒中で混合し、乾燥して、多孔質黒鉛の空孔内に微粒子を配置して得ることができる。
【0026】
しかしながら、Si含有粒子14は、図示されたものに限られない。Si含有粒子は、炭素粒子の表面にSiを含む微粒子が付着したもの;Siを含む粒子の表面に炭素微粒子が付着したもの等であってもよい。図示例のように、Si-C複合材料において、炭素ドメイン14aがマトリックスとなり、複数のSi含有ドメイン14bが炭素ドメイン14a中に分散している場合には、炭素ドメイン14aが、Si含有ドメイン14bの膨張/収縮による体積変化を緩和できるため、有利である。また、Si含有粒子は、炭素以外の元素と複合化されたものであってもよいし、他の元素と複合化されていない、金属Si粒子、Si酸化物粒子等であってもよい。
【0027】
本実施形態においては、1gのSi含有粒子14を、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度が、0.9g/cm以上である。この成形体の密度の値が大きいほど、粒子の充填性が高いことを意味する。従来使用されているSi含有粒子1gを、同様に成形した場合には、通常、成形体の密度は、0.9/cm未満となる。したがって、本実施形態では、従来使用されているSi含有粒子よりも、充填性が高められたSi含有粒子14を用いる。このような充填性が高められたSi含有粒子14を、黒鉛粒子12と共に特定の含有割合で使用し、Si含有粒子14と黒鉛粒子12との平均粒子径(D50)の比を特定範囲に制御することにより、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制することができる。
【0028】
当該成形体の密度は、好ましくは0.95g/cm以上であり、より好ましくは1.0g/cm以上である。一方、成形体の密度の上限は、2.3g/cm以下、2.0g/cm以下、1.8g/cm以下、または1.5g/cm以下であってよい。
【0029】
なお、当該成形体の密度は、25℃の温度環境下で、直径20mmの型に、Si含有粒子14を1g測り取り、そこへ、一軸方向(すなわち、径方向とは垂直な方向)にプレス圧を60MPaになるまで印加してタブレット状の成形体を得、この成形体のかさ密度を測定することで、求めることができる。成形体の密度は、例えば、自動粉体抵抗測定システム(例、日東精工アナリテック社製「MCP-PD600」)と、直径20mmのプローブ(型に相当)を用いることにより、容易に測定することができる。
【0030】
なお、成形体の密度は、Si含有粒子14の円形度に影響を受ける。Si含有粒子14の円形度を高くすると、成形体の密度が大きくなる傾向がある。よって、Si含有粒子14の円形度を、0.85~1(特に0.90~1)にすると、成形体の密度が0.9g/cm以上になりやすい。なお、本明細書において「円形度」とは、粒子投影像の周長に対する、粒子の投影面積と同じ面積を有する真円の周長の比を指す(すなわち、円形度=粒子の投影面積と同じ面積を有する真円の周長/粒子投影像の周長)。よって、円形度が1に近いほど、粒子投影像が真円に近いことを意味し、粒子は真球に近くなる。円形度は、例えば、市販の静的自動画像分析装置を用いて、100個以上の粒子に対して円形度を求め、その平均値を算出することにより、求めることができる。
【0031】
さらに、Si含有粒子14の粒子径も、成形体の密度に影響を与える。Si含有粒子14の平均粒子径を、2μm~10μm(特に、5μm~10μm)にすると、成形体の密度が0.9g/cm以上になりやすい。Si含有粒子14の真密度も、成形体の密度に影響を与える。よって、Si含有粒子14の組成(構成元素の含有割合)を調整することで、成形体の密度を微調整することができる。
【0032】
黒鉛粒子12の円形度は、特に限定されない。黒鉛粒子12としては、球状化黒鉛粒子が好ましく、よって、黒鉛粒子12の円形度は、好ましくは0.85~1であり、より好ましくは0.88~1であり、さらに好ましくは0.90~1である。
【0033】
Si含有粒子14の平均粒子径(D50)に対する黒鉛粒子12の平均粒子径(D50)の比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)は、1~8である。当該比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)が1未満だと、二次電池の充放電時のSi含有粒子14の膨張/収縮によって充填性が低下して、二次電池のサイクル特性向上効果が得られなくなる。一方、当該比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)が8を超えると、黒鉛粒子12の分散性が低下して、Si含有粒子14の凝集が発生し、これにより充填性が低下する。その結果、二次電池のサイクル特性向上効果が得られなくなる。当該比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)は、好ましくは1.0~5.0であり、より好ましくは1.2~3.0であり、さらに好ましくは1.4~2.5である。
【0034】
なお、本明細書において「平均粒子径(D50)」とは、メジアン径(D50)を指し、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径のことをいう。平均粒子径(D50)は、市販のレーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置等を用いて求めることができる。
【0035】
黒鉛粒子12の平均粒子径(D50)は、上記比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)が、1~8である限り、特に限定されない。黒鉛粒子12の平均粒子径(D50)は、好ましくは5μm~25μmであり、より好ましくは10μm~23μmであり、さらに好ましくは12μm~20μmである。
【0036】
Si含有粒子14の平均粒子径(D50)は、上記比(黒鉛含有粒子のD50/Si含有粒子のD50)が、1~8である限り、特に限定されない。Si含有粒子14の平均粒子径(D50)は、好ましくは2μm~10μmであり、より好ましくは4μm~10μmであり、さらに好ましくは6μm~9μmである。
【0037】
Si含有粒子14と黒鉛粒子12の合計に対するSi含有粒子14の質量割合は、10質量%~60質量%である。Si含有粒子14の質量割合が10質量%未満だと、二次電池の高容量化が不十分となる。Si含有粒子14の質量割合が60質量%を超えると、Si含有粒子14の体積変化の影響が大きくなって、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化抑制効果が不十分となる。Si含有粒子14の質量割合は、好ましくは15質量%~55質量%であり、より好ましくは20質量%~50質量%である。
【0038】
負極材料10は、公知方法に従い、Si含有粒子14と黒鉛粒子12とを混合することによって得ることができる。
【0039】
負極材料10は、バインダ、導電材等の二次電池の負極に用いられる材料をさらに含有していてもよい。
【0040】
本実施形態に係る負極材料10によれば、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制可能である。すなわち、本実施形態に係る負極材料10を用いて負極を作製し、この負極を用いて二次電池を作製した場合には、二次電池は、充放電を繰り返した際の容量劣化耐性に優れ、よってサイクル特性に優れる。また、本実施形態に係る負極材料10は、Siを含有しているため、二次電池を高容量化することができる。さらに、本実施形態に係る負極材料10は、充填性の高いSi含有粒子14を含むため、負極活物質層の充填性を高めることができ、二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0041】
そこで、別の側面から、本実施形態に係る負極は、負極集電体と、当該負極集電体に支持された負極活物質層と、を備える。当該負極活物質層は、上述の実施形態に係る負極材料を含有する。このような負極によれば、二次電池に、充放電を繰り返した際の優れた容量劣化耐性を付与することができる。また、このような負極によれば、二次電池を高容量化することができる。さらに、このような負極によれば、二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0042】
本実施形態に係る負極を、図2を参照しながら具体的に説明する。図2は、本実施形態に係る負極60の一例を模式的に示す断面図であり、厚み方向および幅方向に沿った断面図である。図2に示されている本実施形態に係る負極60は、リチウムイオン二次電池の負極である。
【0043】
図示されるように、負極60は、負極集電体62と、負極集電体62に支持された負極活物質層64と、を備える。言い換えると、負極60は、負極集電体62と、負極集電体62上に設けられた負極活物質層64とを備える。負極活物質層64は、負極集電体62の片面上のみに設けられていてもよいし、図示例のように負極集電体62の両面上に設けられていてもよい。負極活物質層64は、負極集電体62の両面上に設けられていることが好ましい。
【0044】
図示例のように、負極60の幅方向の一方の端部に、負極活物質層64が設けられていない負極活物質層非形成部分62aが設けられていてもよい。負極活物質層非形成部分62aでは、負極集電体62が露出しており、負極活物質層非形成部分62aは集電部として機能することができる。しかしながら、負極60から集電するための構成はこれに限られない。
【0045】
負極集電体62の形状は、図示例では、箔状(またはシート状)であるが、これに限定されない。負極集電体62は、棒状、板状、メッシュ状等の種々の形態であってよい。負極集電体62の材質としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様に、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)を用いることができ、なかでも、銅が好ましい。負極集電体62としては、銅箔が特に好ましい。
【0046】
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは6μm以上20μm以下である。
【0047】
負極活物質層64は、負極活物質を含有し、この負極活物質として、上述の実施形態に係る負極材料10が用いられている。よって、負極活物質層64は、上述の実施形態に係る負極材料10を含む。
【0048】
負極活物質層64は、負極活物質以外の成分を含有していてもよく、例としては、バインダ、導電材等が挙げられる。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。CMCは、増粘剤としても機能する。導電材の例としては、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。導電材としてCNTを用いる場合には、負極活物質層64は、CNTの分散剤を含有していてもよい。
【0049】
負極活物質層64中の(すなわち、負極活物質層64の全質量に対する)負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。負極活物質層中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中の導電材の含有量は、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0050】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0051】
負極活物質層64の密度は、特に限定されないが、例えば、0.9g/cm以上であり、好ましくは1.1g/cm以上であり、より好ましくは1.2g/cm以上である。一方、負極活物質層64の密度は、例えば、2.3g/cm以下であり、2.0g/cm以下であってよい。
【0052】
負極60は、負極集電体62および負極活物質層64以外の部材を備えていてもよい。例えば、負極活物質層非形成部分62a上に、負極活物質層64と隣接する絶縁層(図示せず)が設けられていてもよい。当該絶縁層は、例えば、絶縁性の無機フィラー等を含有する。
【0053】
負極60は、負極集電体62に、上述の実施形態に係る負極材料を含有する負極ペーストを塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、当該塗工された負極ペーストを乾燥して、負極活物質層64を形成する工程(以下、「乾燥工程」ともいう)と、当該負極活物質層64をプレスする工程(以下、プレス工程ともいう)と、を備える製造方法によって、好適に製造することができる。
【0054】
塗工工程は、上述の実施形態に係る負極材料を用いる以外は、公知方法に従い行うことができる。具体的に、例えば、上述の実施形態に係る負極材料、および任意成分(例、バインダ、導電材等)を、公知の混合装置、撹拌装置等を用いて、分散媒(例、水)と混合することにより負極ペーストを調製する。
【0055】
なお、本明細書において「ペースト」とは、固形分の一部またはすべてが分散媒に分散した混合物のことをいい、いわゆる「スラリー」、「インク」等を包含する。
【0056】
当該負極ペーストを、グラビアコーター、コンマコーター、スリットコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いて、負極集電体62上に塗工することで、塗工工程を行うことができる。
【0057】
乾燥工程は、公知方法に従い行うことができる。具体的に例えば、負極ペーストが塗工された負極集電体62から、乾燥炉等の乾燥装置を用いて上記分散媒を除去することによって、負極活物質層64を形成する。これにより、乾燥工程を行うことができる。乾燥温度および乾燥時間は、負極ペーストの固形分濃度に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。乾燥温度は、例えば60℃以上200℃以下であり、好ましくは70℃以上150℃以下である。乾燥時間は、例えば10秒以上30分以下であり、好ましくは30秒以上10分以下である。
【0058】
プレス工程は、公知方法に従い行うことができる。具体的に、上記形成した負極活物質層64に対して、ローラープレス等を用いて圧力を印加することにより、プレス工程を行うことができる。プレス工程によって、負極材料10に含まる黒鉛粒子12およびSi含有粒子14を密に充填することができる。これにより、負極60が得られる。
【0059】
負極60は、公知方法に従い、二次電池に使用することができる。二次電池は、典型的には、正極と、負極と、電解質とを備え、負極は、上記の負極60である。以下、負極60を用いた二次電池の構成例について、図3および図4を用いて詳細に説明する。構成例は、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池である。
【0060】
図3に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解液(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型のリチウムイオン二次電池100である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0061】
捲回電極体20は、図3および図4に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0062】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
【0063】
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0064】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の組成の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0065】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。
【0066】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0067】
リチウム遷移金属リン酸化合物としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸マンガン鉄リチウム等が挙げられる。
【0068】
これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質としては、初期抵抗特性等の諸特性に優れることから、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が特に好ましい。
【0069】
正極活物質の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上25μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下である。
【0070】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、リン酸三リチウム、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック;気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素繊維;その他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0071】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上99質量%以下である。正極活物質層54中のリン酸三リチウムの含有量は、特に制限はないが、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、0.4質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0072】
正極活物質層54の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、通常10μm以上であり、好ましくは20μm以上である。一方、当該厚みは、通常400μm以下であり、好ましくは300μm以下である。
【0073】
負極シート60としては、負極活物質として上述の負極材料10を用いた負極60が用いられている。
【0074】
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0075】
セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。セパレータ70のガーレー試験法によって得られる透気度は特に限定されないが、好ましくは350秒/100cc以下である。
【0076】
非水電解液は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類が好ましく、その具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、非水溶媒は、カーボネート類のみからなる。別の例として、非水溶媒は、カーボネート類、および酢酸メチル等のエステル類を含有する。
【0077】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0078】
なお、上記非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
リチウムイオン二次電池100は、充放電を繰り返した際の容量劣化が抑制されており、また、高容量である。リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0080】
以上、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池等として構成することもできる。
【0081】
また、公知方法に従い、リチウムイオン二次電池100は、非水電解質の代わりに固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池として構成することもできる。
【0082】
また本実施形態に係る負極60は、リチウムイオン二次電池の負極に適しているが、その他の二次電池の負極として使用することができ、その他の二次電池は、公知方法に従って構成することができる。
【0083】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0084】
<負極材料の準備>
〔実施例1〕
平均粒子径(D50)が8μm、Si含有量が40質量%、および円形度が0.98のSi-C複合材料の粒子を、Si含有粒子として用意した。
【0085】
このSi含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合の、成形体の密度を後述の方法で測定した。その成形体の密度の値は、1.3g/cmであった。
【0086】
平均粒子径(D50)が18μmの黒鉛粒子を用意した。黒鉛粒子とSi含有粒子とを、60:40の質量比で混合することで、実施例1の負極材料を得た。
【0087】
〔実施例2~3および比較例1~3〕
表1に示す平均粒子径(D50)、Si含有量、および円形度を有するSi-C複合材料の粒子を、Si含有粒子として用意した。Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合の、成形体の密度を後述の方法で測定した。その成形体の密度を表1に示す。
【0088】
また、表1に示す平均粒子径(D50)の黒鉛粒子を用意した。黒鉛粒子とSi含有粒子とを、60:40の質量比で混合することで、実施例2~3および比較例1~3の負極材料を得た。なお、各実施例および各比較例において、Si含有粒子と黒鉛粒子の平均粒子径(D50)、Si含有粒子中のSi含有量、Si含有粒子の円形度は、下記の方法により求めた。
【0089】
<Si含有粒子と黒鉛粒子の平均粒子径(D50)測定>
市販のレーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて、Si含有粒子および黒鉛粒子の体積基準における粒度分布測定をそれぞれ行い、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径を、Si含有粒子および黒鉛粒子の平均粒子径(D50)として求めた。
【0090】
<Si含有粒子のSi含有量測定>
市販のICP分析装置を用いて、Si含有粒子中のSi含有量を、質量%として求めた。
【0091】
<Si含有粒子の円形度測定>
市販の画像式粒度分布測定装置を用いて、Si含有粒子の円形度を、粒子の投影面積と同じ面積を有する真円の周長/粒子投影像の周長として求めた。
【0092】
<Si含有粒子の成形体の密度測定>
Si含有粒子1gを、粉体測定試料として測り取り、自動粉体抵抗測定システム「MCP-PD600」(日東精工アナリテック社製)のプローブ(直径20mm)にセットした。25℃において、この自動粉体抵抗測定システムを用いて、一軸方向に加圧した時の荷重と変位を測定した。これに基づいて、圧力60MPaにおける、成形体のかさ密度を求めた。
【0093】
<負極および評価用リチウムイオン二次電池の作製>
バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、ポリアクリル酸(PAA)と、スチレンブタジエンラバー(SBR)とを用意した。また、導電材としての単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分散液を用意した。各実施例および各比較例の負極材料と、CMCと、PAAとを、プラネタリーミキサーを用いてドライブレンドした。得られた混合物と、SWCNT分散液と、分散媒とを、プラネタリーミキサーを用いて混錬した。これに、SBRとさらに分散媒とを加えて均一に混合して、負極ペーストを作製した。なお、負極ペーストにおいて、負極材料:CMC:PAA:SBR:SWCNTの質量比は、100:1:1:1.5:0.1とした。
【0094】
作製した負極ペーストを、厚み10μmの銅箔の表面に塗布し、乾燥することにより、負極活物質層を形成した。負極活物質層をロールプレス後、得られたシートを所定の寸法に加工して、負極シートを得た。
【0095】
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、NCM:AB:PVdF=100:1:1の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極ペーストを調製した。このペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を形成した。正極活物質層をロールプレス後、得られたシートを所定の寸法に加工して、正極シートを得た。
【0096】
多孔質ポリオレフィン製のセパレータを用意した。上記作製した負極シートと正極シートのそれぞれにリードを取り付け、セパレータを介して積層して、電極体を作製した。これを非水電解液と共に、アルミラミネートフィルム製のケースに収容した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを15:5:40:40の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。その後、ケースを封止して、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0097】
<サイクル特性評価>
上記作製した各評価リチウムイオン二次電池を25℃の環境下に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池を0.4Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が0.1Cになるまで定電圧充電を行った。次いで、各評価用リチウムイオン二次電池を0.4Cの電流値で2.5Vまで定電流放電した。そして、このときの放電容量を測定して初期容量を求めた。
【0098】
上記の充放電を1サイクルとする充放電を200サイクル繰り返した。200サイクル後の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。サイクル特性の指標として、(充放電200サイクル後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1の結果より、Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比が1~8であり、Si含有粒子と黒鉛粒子の合計に対するSi含有粒子の質量割合が10質量%~60質量%であり、Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度が、0.9g/cm以上である場合に、充放電200サイクル後の容量維持率が顕著に高いことがわかる。よって、ここに開示される負極材料によれば、二次電池に充放電を繰り返した際の容量劣化を抑制できることがわかる。
【0101】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0102】
すなわち、ここに開示される負極材料、二次電池の負極およびその製造方法は、以下の項[1]~[8]である。
[1]Si含有粒子と、黒鉛粒子と、を含有する負極材料であって、
前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比が1~8であり、
前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合が10質量%~60質量%であり、
前記Si含有粒子1gを、25℃、60MPaで一軸方向に加圧して直径20mmのタブレット状に成形した場合に、得られる成形体の密度が、0.9g/cm以上である、負極材料。
[2]前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)が、2μm~10μmであり、かつ前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)が、5μm~25μmである、項[1]に記載の負極材料。
[3]前記Si含有粒子の平均粒子径(D50)に対する前記黒鉛粒子の平均粒子径(D50)の比が1.2~3.0である、項[1]または[2]に記載の負極材料。
[4]前記Si含有粒子と前記黒鉛粒子の合計に対する前記Si含有粒子の質量割合が20質量%~50質量%である、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の負極材料。
[5]前記Si含有粒子が、炭素マトリックス中にSi含有ドメインが分散した、Si-C複合材料の粒子である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の負極材料。
[6]前記Si含有粒子中のSi含有量が、20質量%以上60質量%以下である、項[5]に記載の負極材料。
[7]負極集電体と、
前記負極集電体に支持された負極活物質層と、
を備える二次電池の負極であって、
前記負極活物質層が、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の負極材料を含有する、二次電池の負極。
[8]負極集電体に、項[1]~[6]のいずれか1項の負極材料を含有する負極ペーストを塗工する工程と、
前記塗工された負極ペーストを乾燥して、負極活物質層を形成する工程と、
前記負極活物質層をプレスする工程と、
を備える、二次電池の負極の製造方法。
【符号の説明】
【0103】
10 負極材料
12 黒鉛粒子
14 Si含有粒子
14a 炭素ドメイン
14b Si含有ドメイン
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4