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特開2024-159016光学装置及び光学装置の汚染防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159016
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】光学装置及び光学装置の汚染防止方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241031BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B5/10
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074735
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】権平 皓
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA08
2H042DD04
2H042DD05
2H042DD07
2H197BA11
2H197CA01
2H197CA10
2H197DA09
2H197FA02
2H197FA03
2H197FB05
2H197GA01
2H197GA16
2H197GA20
2H197GA24
2H197JA07
(57)【要約】
【課題】より効果的に汚染を防止することができる光学装置及びその汚染防止方法を提供する。
【解決手段】本実施形態にかかる光学装置は、EUV光を含む照射光L11を生成する光源210と、照射光L11が照射される対象物が配置された光学系チャンバ100と、照射光L11を導くために光学系チャンバ100内に設けられた落とし込みミラー13と、光学系チャンバ100内にアルゴンを導入する導入部500と、光学系チャンバ100内の落とし込みミラー13に負電圧を与える電源52と、落とし込みミラー13に流れるイオン電流を計測する電流計51と、電流計51の計測結果に応じて、アルゴンの導入量を制御する制御部53と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV光を含む光を生成する光源と、
前記光が照射される対象物が配置されたチャンバと、
前記光を導くために前記チャンバ内に設けられた光学素子と、
前記チャンバ内にアルゴンを導入する導入部と、
前記チャンバ内の前記光学素子に負電圧を与える電源と、
前記光学素子に流れるイオン電流を計測する電流計と、
前記電流計の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御する制御部と、
を備えた光学装置。
【請求項2】
前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、
前記導入部は、前記チャンバに接続された導入配管を備え、
前記制御部は、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンガスの流量を制御し、
前記チャンバ内に導かれた前記EUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化させる、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記導入部は、
アルゴンプラズマを発生させるリモートプラズマ発生装置と、
前記リモートプラズマ発生装置と前記チャンバとの間に設けられた導入配管と、
前記導入配管に設けられた可変コンダクタンスバルブと、
を備え、
前記制御部は、前記可変コンダクタンスバルブのコンダクタンスを制御することにより、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンプラズマの流量を制御する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記導入配管を冷却する冷却機構が設けられた、
請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記対象物がペリクルを有するEUVマスクである、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、
前記光源は、さらにVUV光を含む前記光を生成し、
前記チャンバ内には、前記VUV光を反射する斜入射ミラーが設けられ、
前記斜入射ミラーで反射した前記VUV光は、前記光学素子に入射し、
前記チャンバ内に導かれた前記VUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化させる、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
EUV光を含む光を生成する光源と、
前記光が照射される対象物が配置されたチャンバと、
前記光を導くために前記チャンバ内に設けられた光学素子と、
を備えた光学装置の汚染防止方法であって、
前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップと、
前記チャンバ内の前記光学素子に負電圧を与えるステップと、
前記光学素子に流れるイオン電流を計測するステップと、
前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップと、
を備えた光学装置の汚染防止方法。
【請求項8】
前記チャンバに導入配管が接続され、
前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、
前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、
前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、
前記計測結果に応じて、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンガスの流量を制御し、
前記チャンバ内に導かれた前記EUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化する、
請求項7に記載の光学装置の汚染防止方法。
【請求項9】
前記光学装置は、
アルゴンプラズマを発生させるリモートプラズマ発生装置と、
前記リモートプラズマ発生装置と前記チャンバとの間に設けられた導入配管と、
前記導入配管に設けられた可変コンダクタンスバルブと、
を備え、
前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、
前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、前記アルゴンプラズマを含み、
前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、
前記計測結果に応じて、前記可変コンダクタンスバルブのコンダクタンスを制御することにより、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンプラズマの流量を制御する、
請求項7に記載の光学装置の汚染防止方法。
【請求項10】
前記導入配管を冷却する冷却機構が設けられた、
請求項9に記載の光学装置の汚染防止方法。
【請求項11】
前記対象物がペリクルを有するEUVマスクである、
請求項7に記載の光学装置の汚染防止方法。
【請求項12】
前記光源は、さらにVUV光を含む前記光を生成し、
前記チャンバに導入配管が接続され、
前記チャンバ内には、前記VUV光を反射する斜入射ミラーが設けられ、
前記斜入射ミラーで反射したVUV光は、前記光学素子に入射し、
前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、
前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、
前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、
前記計測結果に応じて、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンガスの流量を制御し、
前記チャンバ内に導かれた前記VUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化する、
請求項7に記載の光学装置の汚染防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置及び光学装置の汚染防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、EUV(Extreme UltraViolet)リソグラフィ装置内の汚染を低減するために、洗浄ガスによって反射光学素子を洗浄することが提案されている。特許文献1では、EUVリソグラフィ装置内に、原子状水素、水素分子、ヘリウムなどの洗浄ガスが添加されている。
【0003】
特許文献2には、光学面から汚染層を除去する方法が開示されている。特許文献2では、原子状水素を含む洗浄ガスを汚染層に接触させている。洗浄ヘッドの一つは、スパッタガスとして、ヘリウムを使用している。特許文献2の電圧発生器は、EUV反射光学要素と洗浄ヘッドとの間に電位差を発生させ、発生させた電位差によって、洗浄ガス噴流中のヘリウムイオンを加速させている。
【0004】
特許文献3には、アルゴンプラズマ(Arプラズマ)を用いて基板の酸化膜を除去する方法が開示されている。特許文献3では、フォトレジストを除去した基板に酸素フリー雰囲気でArプラズマを衝突させ、自然酸化膜を除去している。
【0005】
特許文献4には、水素プラズマ又はヘリウムプラズマ(Heプラズマ)で光学素子をクリーニングすることが開示されている。特許文献4では、リモートプラズマ発生装置によって、水素プラズマ又はHeプラズマを発生させ、チャンバ内に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013―506308号公報
【特許文献2】特開2012―256944号公報
【特許文献3】特開2010-192503号公報
【特許文献4】特許第6844798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EUV光は、空気や窒素に吸収される。このため、EUV光の光学系は、真空チャンバの中で運用される。その際に、光学部品表面に機構部品に用いている潤滑油や、電気配線材料等から発生した有機残留ガスが吸着する。吸着した有機残留ガスにEUV光が照射されると、有機分子が分解し、カーボンが部品表面に付着する。これによって、ミラーの反射率が低下するという問題がある。
【0008】
ミラー等の光学素子に付着したカーボン等の汚染物質を、水素プラズマ又はHeプラズマでクリーニングする技術はあるが、エッチングレートをより高くしてクリーニングする方法が所望されている。
【0009】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、光学素子の汚染をより効果的に防止することができる光学装置及びその汚染防止方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の一態様にかかる光学装置は、EUV光を含む光を生成する光源と、前記光が照射される対象物が配置されたチャンバと、前記光を導くために前記チャンバ内に設けられた光学素子と、前記チャンバ内にアルゴンを導入する導入部と、前記チャンバ内の前記光学素子に負電圧を与える電源と、前記光学素子に流れるイオン電流を計測する電流計と、前記電流計の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御する制御部と、を備える。
【0011】
上記の光学装置では、前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、前記導入部は、前記チャンバに接続された導入配管を備え、前記制御部は、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンガスの流量を制御し、前記チャンバ内に導かれた前記EUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化させてもよい。
【0012】
上記の光学装置では、前記導入部は、アルゴンプラズマを発生させるリモートプラズマ発生装置と、前記リモートプラズマ発生装置と前記チャンバとの間に設けられた導入配管と、前記導入配管に設けられた可変コンダクタンスバルブと、を備え、前記制御部は、前記可変コンダクタンスバルブのコンダクタンスを制御することにより、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンプラズマの流量を制御してもよい。
【0013】
上記の光学装置では、前記導入配管を冷却する冷却機構が設けられてもよい。
【0014】
上記の光学装置では、前記対象物がペリクルを有するEUVマスクでもよい。
【0015】
上記の光学装置では、前記光源は、さらにVUV光を含む前記光を生成し、前記チャンバ内には、前記VUV光を反射する斜入射ミラーが設けられ、前記斜入射ミラーで反射した前記VUV光は、前記光学素子に入射し、前記チャンバ内に導かれた前記VUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化させてもよい。
【0016】
本実施形態の一態様にかかる光学装置の汚染防止方法は、EUV光を含む光を生成する光源と、前記光が照射される対象物が配置されたチャンバと、前記光を導くために前記チャンバ内に設けられた光学素子と、を備えた光学装置の汚染防止方法であって、前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップと、前記チャンバ内の前記光学素子に負電圧を与えるステップと、前記光学素子に流れるイオン電流を計測するステップと、前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップと、を備える。
【0017】
上記の汚染防止方法では、前記チャンバに導入配管が接続され、前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、アルゴンガスを含み、前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、前記計測結果に応じて、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンガスの流量を制御し、前記チャンバ内に導かれた前記EUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化してもよい。
【0018】
上記の汚染防止方法では、前記光学装置は、アルゴプラズマを発生させるリモートプラズマ発生装置と、前記リモートプラズマ発生装置と前記チャンバとの間に設けられた導入配管と、前記導入配管に設けられた可変コンダクタンスバルブと、を備え、前記チャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、前記チャンバ内に導入される前記アルゴンは、前記アルゴンプラズマを含み、前記イオン電流の計測結果に応じて、前記アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、前記計測結果に応じて、前記可変コンダクタンスバルブのコンダクタンスを制御することにより、前記導入配管を介して前記チャンバ内に供給される前記アルゴンプラズマの流量を制御してもよい。
【0019】
上記の汚染防止方法では、前記導入配管を冷却する冷却機構が設けられてもよい。
【0020】
上記の汚染防止方法では、前記対象物がペリクルを有するEUVマスクでもよい。
【0021】
上記の汚染防止方法では、前記光源は、さらにVUV光を含む前記光を生成し、前記チャンバ内には、前記VUV光を反射する斜入射ミラーが設けられ、前記斜入射ミラーで反射したVUV光は、前記光学素子に入射し、前記チャンバ内に導かれた前記VUV光は、前記アルゴンガスをアルゴンプラズマにプラズマ化してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、光学素子の汚染をより効果的に防止することができる光学装置及びその汚染防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る光学装置を例示した模式図である。
図2】実施形態1に係る光学装置の汚染防止方法を例示したフローチャート図である。
図3】実施形態2に係る光学装置を例示した模式図である。
図4】実施形態3に係る光学装置を例示した模式図である。
図5】実施形態4に係る光学装置を例示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0025】
(実施形態の概要)
実施形態に係る光学装置は、装置内に配置された光学素子の汚染を防止する機能を備えている。具体的には、光学装置は、Arプラズマを用いて、光学素子の汚染を防止する。Arプラズマの生成方法としては、以下の2つの方法があげられる。
【0026】
1.EUV光路中へアルゴンガス(Arガス)を導入する。
2.リモートプラズマ発生装置を用いる。
【0027】
まず、以下の実施形態1において、EUV光路中へArガスを導入する光学装置及び汚染防止方法を説明する。実施形態2において、リモートプラズマ発生装置を用いる光学装置及び汚染防止方法を説明する。実施形態3において、VUV光路中にArガスを導入する光学装置及び汚染防止方法を説明し、実施形態4において、Arプラズマの導入配管を冷却する機構を説明する。
【0028】
(実施形態1)
実施形態1に係る光学装置を説明する。図1は、実施形態1に係る光学装置を例示した模式図である。図1に示すように、本実施形態において、光学装置は、例えば、EUV光を用いて、EUVマスクを検査する検査装置1である。その場合は、試料40は、EUVマスクである。試料40となるEUVマスクは、パターン付きのマスクでもよいし、パターンなしのマスクブランクスでもよい。なお、光学装置は、装置内の雰囲気を制御することができれば、検査装置1に限らず、露光装置等、他の光学装置でもよい。また、試料40は、光の照射対象となる物であれば、EUVマスクに限らない。
【0029】
<装置構成>
本実施形態に係る検査装置1は、光学系チャンバ100、光源チャンバ200、導入部500、電流計51、電源52、及び、制御部53を備えている。
【0030】
光源チャンバ200は、真空チャンバであり、図示しない真空ポンプに接続されている。光源チャンバ200内には、光源201が配置されている。
【0031】
光源201は、EUV光を含む光を生成する。ここでは、光源201は、照射対象である試料40の露光波長と同じ13.5nmのEUV光を生成する。光源201が生成した光を照射光L11とする。光源201は、例えば、放電を利用するDPP(Discharge Produced Plasma)光源である。光源201は、EUV光に加えて、さらに、アウトオブバンズ光であるVUV(Vacuum UltraViolet)光を生成してもよい。光源201は、VUV光及びEUV光の少なくとも一方を含む光を生成してもよい。なお、VUV光は、波長100nm以上、200nm以下の光としてもよい。
【0032】
光学系チャンバ100は、真空チャンバであり、図示しない真空ポンプに接続されている。光学系チャンバ100は、光源チャンバ200に接続されている。光源チャンバ200と光学系チャンバ100の内部空間が真空状態となっているため、EUV光が真空中を伝播する。なお、光源チャンバ200及び光学系チャンバ100の排気は、共通の真空ポンプにより行われてもよく、別々の真空ポンプにより行われてもよい。
【0033】
光学系チャンバ100には、光学系10、光検出器20、ステージ30、及び、試料40が配置されている。光学系10は、光学素子を含み、EUV光である照射光L11を伝播する。光学系10は、光学素子として、凹面鏡11、凹面鏡12、落とし込みミラー13、及び、シュバルツシルト光学系16を備えている。各光学素子は、照射光L11を導くために光学系チャンバ100内に設けられてもよい。光学系10は、試料40を撮像するための暗視野光学系となっている。なお、光学系10は、試料40を撮像するための明視野光学系でもよい。光学系チャンバ100内には、試料40が配置されている。試料40は、照射光L11が照射される対象物である。
【0034】
以下、EUV光を導くための光学系10について説明する。光源201で発生した照射光L11は拡がりながら進む。光源201から発生した照射光L11は、凹面鏡11で反射する。凹面鏡11は、例えば、楕円面鏡である。凹面鏡11は、Mo膜とSi膜が交互に積層された多層膜ミラーとなっており、EUV光を反射する。凹面鏡11で反射した照射光L11は、絞られながら進む。照射光L11は焦点を結んだ後、拡がりながら進む。そして、照射光L11は凹面鏡12で反射する。
【0035】
凹面鏡12は、例えば、楕円面鏡である。凹面鏡12は、Mo膜とSi膜が交互に積層された多層膜ミラーとなっており、EUV光を反射する。凹面鏡12で反射された照射光L11は、絞られながら進んで、落とし込みミラー13に入射する。落とし込みミラー13は平面鏡であり、試料40の真上に配置されている。落とし込みミラー13で反射した照射光L11が試料40に入射する。落とし込みミラー13は、試料40に照射光L11を集光する。このように、試料40の検査領域がEUV光である照射光L11で照明される。したがって、照射光L11が試料40を照明する照明光となる。
【0036】
光学系チャンバ100には、ステージ30が設けられている。ステージ30上には、試料40が載置されている。ステージ30は、XYZステージなどの駆動ステージである。ステージ30が光軸と垂直なXY平面内及び光軸と平行なZ軸方向において移動することで、試料40が移動する。これにより、試料40の照明位置が変化するため、試料40の任意の位置を観察することができる。また、試料40が照明される検査領域を変えることができる。
【0037】
次に、試料40からの光を検出する検出光学系について説明する。上記のように照射光L11は試料40の検査領域を照明している。試料40で反射したEUV光を検出光L12とする。試料40で反射した検出光L12はシュバルツシルト光学系16に入射する。シュバルツシルト光学系16は試料40の上に配置された穴開き凹面鏡14及び凸面鏡15を備えている。
【0038】
試料40で反射した検出光L12は、穴開き凹面鏡14に入射する。穴開き凹面鏡14の中心には、穴14aが設けられている。穴開き凹面鏡14で反射された検出光L12は、凸面鏡15に入射する。凸面鏡15は、穴開き凹面鏡14からの検出光L12を穴開き凹面鏡14の穴14aに向けて反射する。穴開き凹面鏡14の穴14aを通過した検出光L12は、光検出器20に入射する。シュバルツシルト光学系16によって、試料40の検査領域が光検出器20に拡大投影される。
【0039】
凸面鏡15で反射された検出光L12は、光検出器20で検出される。光検出器20は、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、TDI(Time Delay Integration)センサ等の撮像装置であり、試料40を撮像する。すなわち、光検出器20は、試料40の検査領域の拡大像を撮像する。
【0040】
光検出器20で撮像された試料40の画像は、処理装置21に出力される。処理装置21は、プロセッサやメモリなどを有する演算処理装置であり、試料40の画像に基づいて、検査を行う。例えば、処理装置21は、試料40の画像の輝度をしきい値と比較することで欠陥検査を行う。また、処理装置21は、ステージ30の座標を制御している。これにより、試料40の欠陥座標を特定することができる。そして、処理装置21は、欠陥座標及び欠陥の画像をメモリなどに格納する。処理装置21は、モニタに欠陥の画像等を表示する。これにより、ユーザが欠陥を確認することができる。
【0041】
電流計51、電源52及び制御部53は、光学系チャンバ100の外側に配置されている。電源52は、光学素子に接続されている。光学素子が落とし込みミラー13の場合には、電源52は、落とし込みミラー13に接続されている。電源52は、DC(Direct Current)電源であり、DC電圧を発生する。電源52は、落とし込みミラー13に負の直流電圧を供給する。例えば、光学系チャンバ100が接地電位となり、落とし込みミラー13が負電位となる。電流計51は、電源52と落とし込みミラー13との間に接続されている。電流計51は、光学素子に流れるイオン電流を計測する。光学素子が落とし込みミラー13の場合には、電流計51は、電源52から落とし込みミラー13に流れる電流を計測する。制御部53は、電流計51の計測結果に応じて、光学系チャンバ100に導入されるアルゴンの導入量を制御する。
【0042】
<汚染防止>
次に、光学装置の汚染防止方法を説明する。光学系チャンバ100及び光源チャンバ200内には機構部品や電気配線材料が設けられている。機構部品に用いている潤滑油や電気配線材料などから、有機残留ガスが発生して、光学素子表面に吸着する。EUV光が光学素子に照射されると、光学素子表面にカーボン等の汚染物質が堆積する。
【0043】
本実施形態の汚染防止方法は、Arプラズマを発生させ、発生させたArプラズマによって、光学素子に堆積した汚染物質をエッチングする。これにより、光学素子の汚染物質を除去する。
【0044】
光学素子のエッチングレートは、主に、以下の2つのパラメータで制御することができる。
【0045】
A.Arプラズマの密度
B.光学素子に印加するバイアス電圧
【0046】
まず、Arプラズマの密度を制御する方法を説明する。その後、光学素子に印加するバイアス電圧を制御する方法を説明する。
【0047】
<Arプラズマの密度>
本実施形態におけるArプラズマの密度は、光学系チャンバ100内に導入するアルゴンの流量によって制御される。本実施形態においては、光学系チャンバ100内に導入するアルゴンは、Arガスを含む。以下では、光学素子の汚染の除去として、落とし込みミラー13の汚染を防止する例について説明する。
【0048】
図1に示すように、凹面鏡12で反射された照射光L11は絞られながら進む。このため、落とし込みミラー13では、照射光L11のスポットが小さくなる。落とし込みミラー13において照射光L11の光密度が高くなり、落とし込みミラー13の汚染が促進する。したがって、本実施形態では、落とし込みミラー13が汚染防止の対象となる光学素子としている。
【0049】
本実施形態では、光学素子の汚染を除去するために導入部500が設けられている。導入部500は、光学系チャンバ100にArガスを導入する。導入部500は、ガス供給部501、MFC(Mass Flow Controller)502及び導入配管503を備えている。
【0050】
ガス供給部501は、ガスボンベなどを有しており、Arガスを供給する。ガス供給部501は、導入配管503に接続されている。ガス供給部501は、Arガスを導入配管503に供給する。
【0051】
導入配管503は、光学系チャンバ100に接続されている。よって、ガス供給部501からのArガスは、導入配管503を通って、光学系チャンバ100に供給される。また、導入配管503には、MFC502が設けられている。MFC502は、ガスの流量を制御する。制御部53は、電流計51の計測結果に応じて、MFC402に制御信号を出力する。MFC402は、制御信号に基づいて、ガス流量を制御する。
【0052】
このように、制御部53は、導入配管503を介して、光学系チャンバ100内に供給されるArガスの流量を制御する。光学系チャンバ100内に導かれたEUV光は、ArガスをArプラズマにプラズマ化させる。例えば、落とし込みミラー13に入射する照射光L11は、光路上に導入されたArガスを照射し、ArガスをArプラズマにプラズマ化させる。なお、Arガスは、EUV光を吸収する。よって、Arガスの流量は、EUV光による吸収を考慮して決定してもよい。
【0053】
<光学素子に印加するバイアス電圧>
次に、光学素子に印加するバイアス電圧を説明する。前述したように、EUV光は、ArガスをArプラズマにプラズマ化させる。生成されたArプラズマは、Arイオン(Ar)を含み、負電圧を与えられた光学素子に向かう。したがって、光学素子に印加するバイアス電圧を変化させることで、光学素子にArプラズマを衝突させるエネルギーを変えることができる。これにより、Arプラズマによるエッチングレートを変化させることができる。よって、光学素子の汚染状況に応じて、バイアス電圧を変化させることで、適切なクリーニング効果を発揮させることができる。以下詳細を説明する。
【0054】
光学系チャンバ100の内部には、落とし込みミラー13が配置されている。光学系チャンバ100と落とし込みミラー13との間には直流電圧が印加されている。このため、落とし込みミラー13の周辺には電界が発生して、生成されたArプラズマが加速する。そして、Arプラズマは、落とし込みミラー13に衝突する。これにより、Arプラズマは、落とし込みミラー13の汚染をエッチングすることができる。つまり、Arイオンが電界によって加速され、光学素子の表面に衝突することで、カーボンを除去することができる。よって、落とし込みミラー13の反射率の低下を抑制することができる。
【0055】
落とし込みミラー13に印加する負の直流電圧は、イオンの衝突によって、落とし込みミラー13にダメージを与えないレベルにすることが好ましい。例えば、-50V~-100Vの電圧を落とし込みミラー13に印加する。これにより、落とし込みミラー13の表面に付着したカーボンを効果的に除去することができる。
【0056】
電流計51は、電源52から落とし込みミラー13に流れる電流をモニタする。具体的には、落とし込みミラー13にはArイオンが衝突するため、落とし込みミラー13から電源52に電流が流れる。つまり、電流計51は、落とし込みミラー13に衝突したイオン電流を計測する。
【0057】
制御部53は、電流計51の計測結果に応じて、Arガスの導入量を制御する。例えば、制御部53は、電流計51での計測結果に応じて、MFC502の開度を制御する。制御部53は、光学素子の表面積に応じたイオン電流になるように、目標値を設定されてもよい。制御部53は、電流計51が計測したイオン電流が目標値となるように、MFC502をフィードバック制御する。なお、EUV光が落とし込みミラー13に照射されている場合に、測定電流にフォトエミッション電流が重畳されてしまう。したがって、EUV光が落とし込みミラー13に照射されていない状態で目標値を設定することが好ましい。
【0058】
また、試料40の検査中に導入部500がArガスを導入することができる。つまり、試料40の検査と並行して、汚染防止方法を実施することができる。これにより、生産性を向上することができる。
【0059】
アルゴンは、ヘリウム及び水素に比べて質量が高い。よって、Arプラズマが光学素子に衝突するときのエネルギーは大きい。したがって、Arプラズマによるエッチングレートは、Heプラズマ及び水素プラズマよりも高くなる。これにより、Heプラズマ及び水素プラズマを用いる方法よりも、汚染防止効果を向上させることができる。
【0060】
また、アルゴンは、EUV光の吸収係数が高いので、試料40を照明するEUV光を低減させる恐れがある。しかしながら、Arプラズマによるエッチングレートは、上述したように高いので、Arガスの圧力を低下させることができる。加えて、バイアス電圧を高くすれば、さらにArガスの圧力を低下させることができる。これにより、試料40を照明するEUV光の低減を抑制させつつ、汚染予防効果を向上させることができる。
【0061】
また、Arガスは、水素及びヘリウムに比べて質量が大きいので、光源201から発生するデブリの飛散を抑制することができる。
【0062】
さらに、試料40がペリクル付きEUVマスクの場合には、ペリクルの破損を防ぐことができる。この理由について以下に説明する。
【0063】
EUVマスクに装着されているペリクルは非常に薄いので破れやすいが、その原因の一つにペリクルの帯電がある。ペリクルは絶縁されているため、EUV光の照射により、光電子が放出される、ペリクルから光電子が放出されると、ペリクルはプラス電位に帯電する。高電位に帯電し静電破壊して放電した場合に放電した箇所にペリクルにダメージが入ることがある。ペリクルには引っ張り応力がかかっているので放電箇所を起点として破損が拡がることがある。また、クーロン力によってペリクルに対して過大な力が加わることによって破れることがある。
【0064】
本実施形態では、EUV光によってArプラズマが光学系チャンバ100に生成される。光電子を放出してペリクルがプラス電位に帯電した場合に、プラズマ中の電子がペリクルに吸収されて中和することができる。この場合、ペリクルの電位は、プラズマ中の浮遊電位に抑えられるので放電を防ぐことができる。
【0065】
また、導入部500が導入するArガスは、残留ガスを光学系チャンバ100から追い出す効果がある。
【0066】
次に、本実施形態に係る光学装置の汚染防止方法を説明する。図2は、実施形態1に係る光学装置の汚染防止方法を例示したフローチャート図である。図2に示すように、光学装置の汚染防止方法は、光学系チャンバ100内にアルゴンを導入するステップS11と、光学系チャンバ100内の落とし込みミラー13等の光学素子に負電圧を与えるステップS12と、光学素子に流れるイオン電流を計測するステップS13と、イオン電流の計測結果に応じて、アルゴンの導入量を調整するステップS14と、を備えている。
【0067】
本実施形態では、ステップS11のチャンバ内にアルゴンを導入するステップにおいて、光学系チャンバ100内に導入されるアルゴンは、Arガスを含む。また、ステップS14のイオン電流の計測結果に応じて、アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、計測結果に応じて、導入配管503を介して光学系チャンバ100内に供給されるArガスの流量を制御する。光学系チャンバ100内に導かれたEUV光は、ArガスをArプラズマにプラズマ化している。
【0068】
本実施形態では、汚染防止する光学素子が落とし込みミラー13であったが、その他の光学素子及び光学部品の汚染を防止するようにしてもよい。例えば、凹面鏡11、凹面鏡12、穴開き凹面鏡14及び凸面鏡15等の汚染を防止するようにしてもよい。この場合、汚染を防止したい光学素子に負の直流電圧を印加すればよい。なお、2つ以上の光学素子に同時に負電圧を印加してもよい。これにより、2つ以上の光学素子に対する汚染を防止することができる。
【0069】
このように、本実施形態では、導入部500がアルゴンを光学系チャンバ100に導入している。このようにすることで、より効果的に光学素子の汚染を防止することができる。これに対して、酸素ラジカルでカーボンを酸化して除去する場合に、高エネルギーのEUV光を照射する必要がある。つまり、光学素子表面または酸素を活性化し酸素分子をラジカルに解離する必要があった。しかしながら、光学素子表面のカーボンの膜厚に応じた光量を照射することは困難であり、除去結果に不均一性が生じやすかった。シリコン等の表面は酸素ラジカルで酸化されやすいため、堆積したカーボンが除去された後はシリコンが露出し、酸化されることで結果的に反射率の低下につながってしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態では、アルゴンを用いているため、簡便に汚染を防止することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る光学装置を説明する。図3は、実施形態2に係る検査装置を例示した模式図である。図3に示すように、本実施形態の検査装置2は、導入部500の代わりに、導入部300が設けられている。本実施形態において、光学系チャンバ100内に導入されるアルゴンは、Arプラズマを含む。導入部300は、ガス供給源301、MFC302、ガス配管303、導入配管304、可変コンダクタンスバルブ305及びリモートプラズマ発生装置310を備えている。リモートプラズマ発生装置310は、アルゴンのリモートプラズマを発生させる。
【0071】
ガス供給源301は、Arガスを貯留するガスボンベなどを有している。ガス供給源301は、ガス配管303を介して、リモートプラズマ発生装置310に接続されている。ガス供給源301は、Arガスをリモートプラズマ発生装置310に供給する。ガス供給源301からのArガスは、ガス配管303を介して、リモートプラズマ発生装置310に導入される。導入されたArガスは、リモートプラズマ発生装置310のプラズマチャンバ313内に充満させる。ガス配管303には、MFC302が設けられている。MFC302は、Arガスの流量を制御する。
【0072】
リモートプラズマ発生装置310は、コイル311、RF(Radio Frequency)電源312、及び、プラズマチャンバ313を備えている。プラズマチャンバ313は、真空チャンバであり、図示しない真空ポンプに接続されている。プラズマチャンバ313には、ガス供給源301からのArガスが満たされている。RF電源312は、コイル311にRF電圧を供給する。これにより、コイル311に電流が流れるため、プラズマチャンバ313内に磁場が発生する。Ar分子がArイオン(Ar)と電子に電離して、プラズマ315が発生する。誘導結合に限らず、容量結合によりプラズマ315を発生させてもよい。プラズマ315は、RFグロー放電を利用して発生させてもよい。あるいは、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマを用いてもよい。
【0073】
プラズマチャンバ313には、導入配管304が接続されている。さらに、導入配管304は、光学系チャンバ100に接続されている。つまり、導入配管304は、リモートプラズマ発生装置310と、光学系チャンバ100との間に設けられている。プラズマチャンバ313は、導入配管304を介して、光学系チャンバ100に接続されている。プラズマチャンバ313で発生したプラズマ315が導入配管304を通って、光学系チャンバ100に導入される。導入配管304には可変コンダクタンスバルブ305が設けられている。可変コンダクタンスバルブ305のコンダクタンス(開度)は可変となっている。
【0074】
制御部53が、可変コンダクタンスバルブ305の開度を変える。制御部53は、可変コンダクタンスバルブ305のコンダクタンスを制御することにより、導入配管304を介して光学系チャンバ100内に供給されるArプラズマの流量を制御する。例えば、可変コンダクタンスバルブ305のコンダクタンスを大きくすることで、プラズマの導入量が増加する。反対に、可変コンダクタンスバルブ305のコンダクタンスを小さくすることで、プラズマ315の導入が減少する。また、制御部53は、RF電源312を制御してもよい。これにより、プラズマ315の密度を制御することができるため、プラズマ315の導入量を調整することができる。
【0075】
このように、導入部300は、光学系チャンバ100にプラズマ315を導入する。つまり、リモートプラズマ発生装置310がプラズマ315を発生する。電子、Arイオン、Arガス、ラジカルなどを含むプラズマ315が、光学系チャンバ100に導入される。
【0076】
本実施形態では、リモートプラズマ発生装置310を有している。光学系チャンバ100とは離れた別のプラズマチャンバ313において、Arプラズマを発生させることができる。プラズマチャンバ313と光学系チャンバ100とが導入配管304で接続されているため、熱的に疎な結合とすることができる。リモートプラズマ発生装置310の熱が光学系チャンバ100に伝わりにくく、光学系10の精度を高く保つことができる。
【0077】
本実施形態では、プラズマ315が光学系チャンバ100に導入される。光電子を放出してペリクルがプラス電位に帯電した場合に、プラズマ中の電子がペリクルに吸収されて中和させることができる。この場合、ペリクルの電位は、プラズマ中の浮遊電位に抑えられるので放電を防ぐことができる。
【0078】
また、導入部300が導入するArは、Arプラズマだけでなく、中性のAr分子(Arガス)であってもよい。この場合も残留ガスをチャンバから追い出す効果がある。
【0079】
なお、上記の説明では、リモートプラズマ発生装置310によって生成されたArプラズマを用いたが、リモートプラズマ発生装置310によって生成されたHeプラズマ及び水素プラズマを用いてもよい。例えば、光学素子表面がルテニウムなどの水素ラジカル耐性の高い物質でコーティングされている場合に、水素プラズマを用いることができる。水素プラズマを用いる場合、水素は、He及びArよりも質量が小さい。したがって、イオン衝撃効果が小さくなるため、電源52の電圧を高くする。これにより、イオンの速度エネルギーが大きくなるため、効果的に汚染を防止することができる。
【0080】
さらに、光学系チャンバ100に導入する水素は、水素プラズマに限らず、水素ガス、水素ラジカルなどであってもよい。もちろん、導入部300が、ガス、プラズマ、ラジカルなどを混合して導入してもよい。つまり、導入部300は、アルゴン、水素又はヘリウムをチャンバに導入すればよい。
【0081】
本実施形態にかかる光学装置の汚染防止方法は、前述のステップS11の光学系チャンバ100内にアルゴンを導入するステップにおいて、光学系チャンバ100内に導入されるアルゴンは、Arプラズマを含む。また、ステップS14のイオン電流の計測結果に応じて、アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、制御部53は、計測結果に応じて、可変コンダクタンスバルブ305のコンダクタンスを制御することにより、導入配管304を介して光学系チャンバ100内に供給されるArプラズマの流量を制御する。これにより、光学素子の汚染を効果的に防止することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0082】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る光学装置を説明する。図4は、実施形態3に係る光学装置を例示した模式図である。図4に示すように、本実施形態の検査装置3は、図1の凹面鏡11及び凹面鏡12の代わりに、凹面鏡18及び凹面鏡19が設けられている。凹面鏡18及び凹面鏡19は、斜入射ミラーとなっている。光源201は、EUV光の他、VUV光を含む光を生成する。凹面鏡18及び凹面鏡19以外の構成については、図1と同様であるため、適宜説明を省略する。例えば、シュバルツシルト光学系16については実施形態1と同じ構成となっている。
【0083】
凹面鏡18及び凹面鏡19は、斜入射ミラーとなっているので、凹面鏡18の反射前と反射後の照射光L11の光軸が直交していない。一方、実施形態1の凹面鏡11は、照射光L11の光軸に対して凹面鏡11が45度傾いているため、凹面鏡11の反射前と反射後の照射光L11の光軸が直交する。
【0084】
同様に凹面鏡19の反射前と反射後の照射光L11の光軸が直交していない。一方、実施形態1の凹面鏡12は、照射光L11の光軸に対して凹面鏡12が45度傾いているため、凹面鏡12の反射前と反射後の照射光L11の光軸が直交する。
【0085】
凹面鏡18及び凹面鏡19で反射した照射光L11は、実施形態1と同様に、落とし込みミラー13に入射する。落とし込みミラー13が照射光L11を反射することで、試料40が照明される。よって、実施形態1と同様に、光検出器20が試料40を撮像することができる。
【0086】
斜入射ミラーである凹面鏡18及び19は、メタルミラー(金属鏡)となっている。例えば、凹面鏡18及び19は、Ru(ルテニウム)膜が形成されたメタルミラーである。凹面鏡18及び19は、メタルミラーであるため、光源201からのVUV光及びEUV光を反射する。つまり、EUV光だけでなく、VUV光も落とし込みミラー13まで導かれる。これに対して、実施形態1では、凹面鏡11及び凹面鏡12は、多層膜ミラーとなっているので、VUV光のほとんどは、落とし込みミラー13まで導かれない。
【0087】
凹面鏡18及び19として斜入射ミラーを用いることで、VUV光を落とし込みミラー13まで導くことができる。凹面鏡19で反射された照射光L11は、EUV光及びVUV光を含む。凹面鏡19は、試料40に照射光L11を集光する。凹面鏡19で反射した照射光L11は絞られながら進むため、落とし込みミラー13の近傍において、照射光L11の光密度が高くなる。さらに、光学系チャンバ100には、Arガスが供給されている。
【0088】
照射光L11に含まれるEUV光及びVUV光は、Arガスに吸収される。そして、光密度の高い落とし込みミラー13の近傍において、Arガスが電離し、Arプラズマが生成される。落とし込みミラー13には、実施形態1と同様に負の直流電圧が印加されている。よって、Arプラズマが、落とし込みミラー13に衝突する。すなわち、光学系チャンバ100内に導かれたVUV光は、ArガスをArプラズマにプラズマ化させる。これにより、実施形態1と同様に、汚染を防止することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、電流計51の計測結果に応じて、制御部53がMFC502を制御する。つまり、電流計51の計測値が目標値となるように、MFC502がガス流量を制御する。これにより、光学系チャンバ100へのアルゴンの導入量を適切に調整することができる。よって、効果的に汚染を防止することができる。
【0090】
本実施形態では、光源201で発生したアウトオブバンズ光であるVUV光を用いて、プラズマを発生させている。つまり、検査用の光源201によりArプラズマを発生させることができる。よって、リモートプラズマ発生装置310が不要になるため、装置構成を簡素化することができる。Arガスを導入する導入部500を追加するのみでよいため、装置コストの増加を抑制することができる。
【0091】
本実施形態にかかる光学装置の汚染防止方法は、前述のステップS11の光学系チャンバ100内にアルゴンを導入するステップにおいて、光学系チャンバ100内に導入されるアルゴンは、Arプラズマを含む。また、ステップS14のイオン電流の計測結果に応じて、アルゴンの導入量を制御するステップにおいて、制御部53は、計測結果に応じて、導入配管503を介して光学系チャンバ100内に供給されるArガスの流量を制御する。光学系チャンバ100内に導かれたVUV光は、ArガスをArプラズマにプラズマ化する。これにより、光学素子の汚染を効果的に防止することができる。
【0092】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る光学装置を説明する。図5は、実施形態4に係る光学装置を例示した模式図である。図5に示すように、本実施形態の検査装置4では、図3の構成に加えて、導入部300に冷却機構330が追加されている。冷却機構330以外の構成は、実施形態2と同様であるため説明を省略する。
【0093】
冷却機構330は、たとえば、冷却水が流れる水冷ジャケットを有している。冷却機構330は、導入配管304に取り付けられている。なお、冷却機構330の取り付け位置は導入配管304に限らず、プラズマチャンバ313などであってもよい。
【0094】
冷却機構330は、導入配管304を冷却している。よって、リモートプラズマ発生装置310で発生する熱が光学系チャンバ100に伝導するのを防ぐことができる。これにより、光学系チャンバ100の温度を安定させることができる。熱膨張などにより光学系10のずれを抑制することができ、精度の高い検査が可能となる。
【0095】
実施形態1~4の各構成は適宜組み合わせてもよい。例えば、実施形態1、2及び4において斜入射ミラーである凹面鏡18及び19を用いてもよい。さらに、ガスとプラズマの両方を導入するようにしてもよい。つまり、光学系チャンバ100に導入部300と導入部500とを接続してもよい。
【0096】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0097】
1、2、3、4 検査装置
10 光学系
11 凹面鏡
12 凹面鏡
13 落とし込みミラー
14 穴開き凹面鏡
14a 穴
15 凸面鏡
16 シュバルツシルト光学系
18 凹面鏡
19 凹面鏡
20 光検出器
21 処理装置
30 ステージ
40 試料
51 電流計
52 電源
53 制御部
100 光学系チャンバ
200 光源チャンバ
201 光源
300 導入部
301 ガス供給源
302 MFC
303 ガス配管
304 導入配管
305 可変コンダクタンスバルブ
310 リモートプラズマ発生装置
311 コイル
312 RF電源
313 プラズマチャンバ
315 プラズマ
330 冷却機構
500 導入部
501 ガス供給部
502 MFC
503 導入配管
L11 照射光
L12 検出光
図1
図2
図3
図4
図5