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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159017
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20241031BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20241031BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241031BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20241031BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/003
F24F11/46
F24F11/77
F24F8/80 135
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074736
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 花菜子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤志
(72)【発明者】
【氏名】久下 洋介
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BF03
3L260AA01
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA13
3L260BA74
3L260BA75
3L260CA02
3L260CA06
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA14
3L260CA17
3L260CA18
3L260CA22
3L260CB51
3L260FA07
3L260FC01
3L260FC21
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】24時間換気を継続して必要な換気量を常時確保しつつ、簡潔な構成でもって、部屋内の人の有無等の状況に応じた建物内の換気経路の柔軟な変更が可能である換気システムを提供する。
【解決手段】複数の部屋が設けられた建物内を換気する換気システムであって、給気手段及び排気手段を有し建物内を常時換気する常時換気手段と、常時換気手段とは別に設けられ、建物内への給気及び建物内からの排気が可能な給排気装置と、給排気装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、建物内の気流が通過する経路を決定する経路決定部と、経路決定部が決定した経路に応じて給排気装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を給排気装置に送信する装置制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部屋が設けられた建物内を換気する換気システムであって、
前記建物内に給気する給気手段及び前記建物内から排気する排気手段を有し、前記建物内を常時換気する常時換気手段と、
前記常時換気手段とは別に設けられ、前記建物内への給気及び前記建物内からの排気が可能な給排気装置と、
前記給排気装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記建物内の気流が通過する経路を決定する経路決定部と、
前記経路決定部が決定した経路に応じて前記給排気装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を前記給排気装置に送信する装置制御部と、を備えた換気システム。
【請求項2】
前記経路決定部は、ユーザが入力した操作内容に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記部屋内の空気の汚染度を検出する汚染度検出手段をさらに備え、
前記経路決定部は、前記部屋内の空気の汚染度に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記経路決定部は、空気の汚染度が予め設定された基準値以上である前記部屋が気流の下流側になるように、前記建物内の気流が通過する経路を決定する請求項3に記載の換気システム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記部屋内の人を検出する人検出手段をさらに備え、
前記経路決定部は、前記部屋内の人の有無に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項6】
前記経路決定部は、人がいない前記部屋を気流が通過するように、前記建物内の気流が通過する経路を決定する請求項5に記載の換気システム。
【請求項7】
前記建物内の空気を清浄化する空気清浄装置をさらに備え、
前記装置制御部は、前記経路決定部が決定した経路に応じて前記空気清浄装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を前記空気清浄装置に送信する請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項8】
前記空気清浄装置は、自走可能であり、
前記装置制御部が決定する前記空気清浄装置の制御内容には、前記空気清浄装置の位置が含まれる請求項7に記載の換気システム。
【請求項9】
前記建物内における前記空気清浄装置の設置箇所をユーザに提示する出力手段をさらに備えた請求項7又は請求項8に記載の換気システム。
【請求項10】
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段のそれぞれの位置及び給排気量とを設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された内容に基づいて、シミュレーションで前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項11】
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の設置位置とを設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された内容に基づいて、シミュレーションで前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【請求項12】
前記建物内の環境情報を取得する環境情報取得手段と、
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段のそれぞれの位置及び給排気量を設定する設定手段と、
前記環境情報と前記設定手段により設定された内容とに基づいて、前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた請求項1又は請求項2に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つのファン又は複数のファンの協働により屋内を24時間換気するようになされた24時間換気システムにおいて、24時間換気モードとして、換気量の異なる複数の24時間換気モードが備えられ、屋内の空気環境を検知するセンサと、該センサからの信号に基づいて、いずれかの24時間換気モードに切り換える制御を行う制御部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-101077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような換気システムにおいては、センサによる屋内空気環境を検知結果に応じて、24時間換気を行うファンの動作を変更する。このため、24時間換気を行うファンが複数ある場合、複数のファンの動作を連携させて変更しなければならず、システム構成の複雑化を招きやすい。また、状況に応じた建物内の換気経路の柔軟な変更が困難である。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、いわゆる24時間換気を継続して必要な換気量を常時確保しつつ、簡潔な構成でもって、状況に応じた建物内の換気経路の柔軟な変更が可能である換気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る換気システムは、複数の部屋が設けられた建物内を換気する換気システムであって、前記建物内に給気する給気手段及び前記建物内から排気する排気手段を有し、前記建物内を常時換気する常時換気手段と、前記常時換気手段とは別に設けられ、前記建物内への給気及び前記建物内からの排気が可能な給排気装置と、前記給排気装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記建物内の気流が通過する経路を決定する経路決定部と、前記経路決定部が決定した経路に応じて前記給排気装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を前記給排気装置に送信する装置制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る換気システムによれば、24時間換気を継続して必要な換気量を常時確保しつつ、簡潔な構成でもって、状況に応じた建物内の換気経路の柔軟な変更が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る換気システムが設けられた建物の構成例を模式的に示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る換気システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る換気システムの動作例を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る換気システムの動作例を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る換気システムの動作の別例を説明する図である。
図6】実施の形態1に係る換気システムの動作の別例を説明する図である。
図7】実施の形態1に係る換気システムの動作例を示すフロー図である。
図8】実施の形態1に係る換気システムが備えるシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態1に係る換気システムが備えるシミュレーション装置による表示画面例を示す図である。
図10】実施の形態1に係る換気システムの制御装置、シミュレーション装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る換気システムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1から図10を参照しながら、本開示の実施の形態1について説明する。図1は換気システムが設けられた建物の構成例を模式的に示す平面図である。図2は換気システムの制御系統の構成を示すブロック図である。図3及び図4は換気システムの動作例を説明する図である。図5及び図6は換気システムの動作の別例を説明する図である。図7は換気システムの動作例を示すフロー図である。図8は換気システムが備えるシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。図9は換気システムが備えるシミュレーション装置による表示画面例を示す図である。図10は換気システムの制御装置、シミュレーション装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【0011】
図1は、この実施の形態に係る換気システムが設置された建物10の例を模式的に示したものである。同図には、建物10の特に1階部分が示されている。同図に示すように、建物10には、換気の対象となる複数の部屋が設けられている。図示の例では、建物10内には、リビング11、和室12、キッチン13、トイレ14、脱衣所15及び浴室16の各部屋が設けられている。また、建物10内には、玄関17及び廊下18も設けられている。図示の例では、廊下18は、玄関17からキッチン13にまで通じている。また、廊下18の中途部分は、リビング11、和室12、トイレ14及び脱衣所15の各部屋に通じている。これらの部屋のうち、リビング11及び和室12は、居室の例である。また、キッチン13、トイレ14、脱衣所15及び浴室16は、共有部の例である。
【0012】
建物10には、外気導入口20が形成されている。外気導入口20は、建物10の屋内に、建物10の外の空気(以下、「屋外空気」という)を取り込むための開口である。図1に示す構成例では、外気導入口20として第1外気導入口21、第2外気導入口22及び第3外気導入口23の3つが設けられている。この図示の例では、第1外気導入口21が和室12の外壁に設けられている。そして、第2外気導入口22及び第3外気導入口23がリビング11の外壁に設けられている。本開示においては、第1外気導入口21、第2外気導入口22及び第3外気導入口23を区別せず総称する場合に外気導入口20という。外気導入口20は、建物10内に給気する給気手段の一例である。
【0013】
建物10には、換気扇30が設置されている。換気扇30は、建物10の屋内の空気を屋外に排出する装置である。図1に示す構成例では、換気扇30として第1換気扇31及び第2換気扇32の2つが設けられている。この図示の例では、換気扇30は建物10の共有部に設けられている。すなわち、第1換気扇31がトイレ14の外壁に設けられている。そして、第2換気扇32が浴室16の外壁に設けられている。本開示においては、第1換気扇31及び第2換気扇32を区別せず総称する場合に換気扇30という。換気扇30は、建物10内から排気する排気手段の一例である。
【0014】
換気扇30は基本的に常時稼働している。これにより、建物10内は常時換気がなされており、つまり、いわゆる24時間換気がなされている。給気手段である外気導入口20及び排気手段である換気扇30は、常時換気手段を構成している。すなわち、この実施の形態に係る換気システムは、複数の部屋が設けられた建物10内を換気するものである。この換気システムは、建物10内を常時換気する常時換気手段を備えている。そして、常時換気手段は、給気手段(外気導入口20)及び排気手段(換気扇30)を有している。
【0015】
なお、ここでは、常時換気手段は、自然給気及び強制排気による第三種換気を行うものであるが、これに限られない。常時換気手段は、給気及び排気の両方を強制的に行う第一種換気を行うものであってもよいし、強制給気及び自然排気による第二種換気を行うものであってもよい。
【0016】
この実施の形態に係る換気システムは、以上で説明した常時換気手段とは別に、給排気装置40をさらに備えている。給排気装置40は、建物10内への給気と、建物10内からの排気の両方が可能である。特に、ここで説明する構成例では、給排気装置40は、建物10内への給気を行うか、建物10内からの排気を行うかを切り換えることができる。図1に示す構成例では、給排気装置40として第1給排気装置41及び第2給排気装置42の2つが設けられている。この図示の例では、第1給排気装置41がリビング11の外壁に設けられている。そして、第2給排気装置42が和室12の外壁に設けられている。本開示においては、第1給排気装置41及び第2給排気装置42を区別せず総称する場合に給排気装置40という。
【0017】
この実施の形態に係る換気システムは、換気扇30及び給排気装置40とは他に、送風機器、空調機器等を含んでいてもよい。ここで説明する構成例では、リビング11に空気清浄機50が設置されている。空気清浄機50は、建物10内の空気を清浄化する空気清浄装置の一例である。空気清浄機50は、例えば、フィルター、電気デバイス等を備える。フィルターは、例えば、集塵、脱臭、ガス除去、抗菌処理等の機能を備えたものが用いられる。電気デバイスは、紫外線の照射し、又は放電することにより、菌及びアレルゲンを不活化し、及び/又は、ガス成分を分解する機能を備えたものが用いられる。
【0018】
次に、図2を参照しながら、この実施の形態に係る換気システムの制御系統の構成について説明する。この実施の形態に係る換気システムは、制御装置100を備えている。制御装置100は、給排気装置40と通信可能に設けられている。そして、制御装置100は、給排気装置40のそれぞれを制御する。また、制御装置100は、換気扇30のそれぞれとも通信可能に設けられている。制御装置100は、換気扇30についても制御してもよい。なお、制御装置100と給排気装置40との通信は、無線方式であっても有線方式であってもよい。
【0019】
ここで説明する構成例では、換気システムは、入力デバイス60及びセンサ70を備えている。ただし、換気システムは、入力デバイス60及びセンサ70の一方のみを備えるものであってもよい。制御装置100は、入力デバイス60及びセンサ70と通信可能である。制御装置100と入力デバイス60及びセンサ70との通信は、無線方式であっても有線方式であってもよい。
【0020】
入力デバイス60は、ユーザの操作を入力可能な装置である。具体的に例えば、入力デバイス60として、換気システムのリモコン、建物10の部屋の壁面に設けられた操作スイッチ、ユーザが所持するスマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等の携帯情報端末、PC、スマートスピーカ、スマートテレビ等の情報処理装置等が挙げられる。ユーザは、入力デバイス60に対し、指定操作を入力可能である。指定操作とは、建物10の部屋のいずれかを指定し、当該指定した部屋を換気経路の上流側又は下流側のいずれにするのかを指定する操作である。なお、本開示において、換気経路とは、建物10の換気を行う際の気流が通過する経路である。
【0021】
センサ70は、例えば、汚染センサ、表面温度センサ等である。汚染センサは、当該センサが設置された部屋内の空気の汚れの量や濃度を検知するものである。汚染センサの検知対象物質は、例えば、二酸化炭素、PM(Particulate Matter)、臭気物質、ほこり、花粉、アレルギー物質、VOC(Volatile Organic Compounds)等である。
【0022】
表面温度センサは、当該センサが設置された部屋内の表面温度を非接触で検出する。表面温度センサは、例えば、図示しない複数のサーモパイルを有する赤外線センサを備えた構成でもよい。表面温度センサは、この赤外線センサを回転駆動することで温度検出範囲を走査し、赤外線センサの出力を用いて温度検出範囲の熱画像データを生成してもよい。温度検出範囲内の被検出体には、例えば、人体、床面及び壁面が含まれ得る。表面温度センサを用いることにより、室内の人の有無を判定することができるとともに、室内に人が存在する場合には人の位置の特定及び人体の表面温度の検出が可能となる。表面温度センサは、室内にいる複数の人のそれぞれを検出可能である。
【0023】
表面温度センサは、サーモパイルに代えて、SOI(Silicon on Insulator)ダイオード方式の非冷却赤外線イメージセンサを備えていてもよい。SOIダイオード方式の場合、センサ部にシリコンダイオードを使用しているため、シリコン半導体ラインのみで製造可能であり、生産コストが安いというメリットがある。
【0024】
表面温度センサは、このような構成により、前述した対象範囲内を走査して当該範囲内の表面温度分布を非接触で取得する。表面温度センサの検出結果、すなわち、表面温度センサにより取得した表面温度分布データを、制御装置100等で処理することで、例えば背景との温度差から、室内における人を含む熱源の有無及びその位置、人体の表面皮膚温度、人の身体の部位(肌の露出部と非露出部、頭部等)等を検出することができる。
【0025】
センサ70(汚染センサ、表面温度センサ)は、単独で建物10の部屋内に設置されてもよいし、換気扇30、給排気装置40、空気清浄機50、その他の機器に設けられていてもよい。ここでは、センサ70が空気清浄機50に設けられている場合の例について説明する。
【0026】
空気清浄機50は、個別に制御部を備えている。空気清浄機50は、当該空気清浄機50の制御部による制御下で自律的に動作する。制御装置100は、空気清浄機50の制御部と通信可能に設けられている。制御装置100と、空気清浄機50の制御部との通信は、無線方式であっても有線方式であってもよい。
【0027】
空気清浄機50の制御部は、空気清浄機50の運転状況に関する情報を制御装置100に送信する。これらの運転状況に関する情報には、例えば、運転のON/OFF、風向、風速等が含まれている。さらに、空気清浄機50がセンサ70(汚染センサ、表面温度センサ)を備えている場合、空気清浄機50の制御部は、センサ70の検出データを制御装置100に送信する。
【0028】
制御装置100は、給排気装置40を制御する制御手段である。制御装置100は、入力取得部101、汚染度検出部102、人検出部103、換気経路決定部104及び装置制御部105を備えている。ユーザにより入力デバイス60に前述の指定操作が入力された場合、入力取得部101は、入力デバイス60に入力された指定操作の内容を取得する。入力取得部101が取得する指定操作の内容には、指定された部屋と当該指定された部屋を換気経路の上流側又は下流側のいずれにするのかが含まれている。
【0029】
汚染度検出部102は、建物10の少なくとも1つの部屋内の空気の汚染度を検出する。空気の汚染度とは、空気が汚染されている程度を示す指標である。センサ70が汚染センサを備えている場合、汚染度検出部102は、汚染センサの検知データを用いて部屋内の空気の汚染度を検出する。この場合、汚染度検出部102は、例えば、汚染センサにより検知された検知対象物質の量又は濃度を、そのまま用いて、あるいは、検知対象物質の量又は濃度を指標化したものを汚染度とする。この場合、センサ70(汚染センサ)及び汚染度検出部102により、少なくとも1つの部屋内の空気の汚染度を検出する汚染度検出手段が構成されている。
【0030】
人検出部103は、建物10の少なくとも1つの部屋内にいる人を検出する。センサ70が表面温度センサを備えている場合、人検出部103は、表面温度センサの検出データを用いて部屋にいる人を検出する。この場合、センサ70(表面温度センサ)及び人検出部103により、少なくとも1つの部屋内にいる人を検出する人検出手段が構成されている。
【0031】
また、入力デバイス60に、室内の人が所持するスマートフォン、スマートウォッチ等が含まれている場合、人検出部103は、入力デバイス60との通信状況に基づいて、部屋内に人がいるか否かを検出してもよい。この場合、例えば、図示しない無線ルータの設置位置と、当該無線ルータにおける入力デバイス60から送信された信号の電波強度とに基づいて、入力デバイス60のおおよその位置を特定できる。そして、入力デバイス60を所持、操作している人が入力デバイス60とほぼ同じ位置にいると想定することで、各部屋にいる人を検出できる。
【0032】
換気経路決定部104は、前述した換気経路を決定する。換気経路決定部104は、少なくとも主たる換気経路を決定する。主たる換気経路とは、換気経路のうちで気流の通過量が最大になる経路である。換気経路決定部104は、入力取得部101により取得された指定操作の内容、汚染度検出部102により検出された部屋内の空気の汚染度、及び、人検出部103により検出された部屋内の人の有無のうちの少なくともいずれかに基づいて、主たる換気経路を決定する。また、換気経路決定部104は、建物10の部屋に設けられた送風機器の運転状況にも応じて、換気経路を決定してもよい。建物10の部屋に設けられた送風機器とは、例えば、空気清浄機50、空気調和機、扇風機、サーキュレータ等である。
【0033】
入力取得部101により取得された指定操作の内容に応じた換気経路にする場合、指定操作の内容が指定された部屋を換気経路の上流側にするものであれば、換気経路決定部104は、当該指定された部屋が可能な限り上流側になる経路を、主たる換気経路に決定する。例えば、指定された部屋に外気導入口20及び給排気装置40の少なくともいずれかがあれば、当該部屋は、主たる換気経路の始点すなわち最上流にできる。一方、指定された部屋に外気導入口20及び給排気装置40のいずれもない場合、当該部屋は、主たる換気経路の始点すなわち最上流にはできない。この場合、換気経路決定部104は、当該部屋が可能な限り上流側になる経路を、主たる換気経路に決定する。
【0034】
また、指定操作の内容が指定された部屋を換気経路の下流側にするものであれば、換気経路決定部104は、当該指定された部屋が可能な限り下流側になる経路を、主たる換気経路に決定する。例えば、指定された部屋に換気扇30及び給排気装置40の少なくともいずれかがあれば、当該部屋は、主たる換気経路の終点すなわち最下流にできる。一方、指定された部屋に換気扇30及び給排気装置40のいずれもない場合、当該部屋は、主たる換気経路の終点すなわち最下流にはできない。この場合、換気経路決定部104は、当該部屋が可能な限り下流側になる経路を、主たる換気経路に決定する。
【0035】
汚染度検出部102により検出された部屋内の空気の汚染度に応じた換気経路にする場合、換気経路決定部104は、例えば、空気の汚染度が予め設定された基準値以上である部屋が気流の下流側になる経路を、主たる換気経路とする。この場合、前述した指定操作の内容に応じた換気経路の決定と同様、換気経路決定部104は、空気の汚染度が基準値以上である部屋が、可能な限り下流側になる経路を、主たる換気経路に決定する。
【0036】
人検出部103により検出された部屋内の人の有無に応じた換気経路にする場合、換気経路決定部104は、例えば、人がいない部屋を気流が通過する経路を、主たる換気経路とする。
【0037】
装置制御部105は、換気経路決定部104により決定された換気経路に基づいて、給排気装置40の動作を制御する。すなわち、装置制御部105は、換気経路決定部104により決定された換気経路に沿った気流が生成されるように、それぞれの給排気装置40について制御内容を決定する。決定される制御内容には、給排気装置40を動作させるか否か、動作させる場合には、給気、排気のいずれにするのかと、その風量とが含まれている。そして、装置制御部105は、決定した制御内容に対応する制御信号を給排気装置40に送信する。装置制御部105からの制御信号を受信した給排気装置40は、受信した制御信号に従って動作する。
【0038】
なお、装置制御部105は、換気経路決定部104が決定した経路に応じて換気扇30の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を換気扇30に送信してもよい。装置制御部105からの制御信号を受信した換気扇30は、受信した制御信号に従って動作する。また、装置制御部105は、換気経路決定部104が決定した経路に応じて空気清浄機50の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を空気清浄機50に送信してもよい。装置制御部105からの制御信号を受信した空気清浄機50は、受信した制御信号に従って動作する。空気清浄機50は、自走可能であってもよい。この場合、装置制御部105が決定する空気清浄機の制御内容には、空気清浄機の位置が含まれていてもよい。装置制御部105からの制御信号を受信した空気清浄機50は、制御信号が指定する位置まで自走する。
【0039】
次に、図3から図6を参照し、具体例を挙げながら、換気経路決定部104による換気経路の決定、及び、決定された換気経路に応じた給排気装置40の制御について説明する。図3及び図4に示す例は、和室12を換気経路の上流側にする指定操作が入力デバイス60になされた場合である。図3中には、この場合において、換気経路決定部104により決定された換気経路が矢印で示されている。また、図4は、この場合における給排気装置40の動作制御、及び、外気導入口20及び換気扇30での給排気を示している。この例では、図3に示すように、換気経路決定部104は、和室12の特に第2給排気装置42の位置を、換気経路の始点に決定する。また、換気経路決定部104は、リビング11の第1給排気装置41と、第1換気扇31及び第2換気扇32の一方又は両方とを換気経路の終点に決定する。そして、このようにして決定された換気経路に基づき、図4に示すように、装置制御部105は、リビング11の第1給排気装置41を排気運転させる。また、装置制御部105は、和室12の第2給排気装置42を給気運転させる。
【0040】
図5及び図6に示す例は、和室12を換気経路の下流側にする指定操作が入力デバイス60になされた場合である。図5中には、この場合において、換気経路決定部104により決定された換気経路が矢印で示されている。また、図6は、この場合における給排気装置40の動作制御、及び、外気導入口20及び換気扇30での給排気を示している。この例では、図5に示すように、換気経路決定部104は、和室12以外の部屋であるリビング11を換気経路の始点に決定している。また、換気経路決定部104は、和室12の第1給排気装置41と、第1換気扇31及び第2換気扇32の一方又は両方とを換気経路の終点に決定する。そして、このようにして決定された換気経路に基づき、図6に示すように、装置制御部105は、リビング11の第1給排気装置41を給気運転させる。また、装置制御部105は、和室12の第2給排気装置42を排気運転させる。
【0041】
なお、汚染度検出部102により検出された部屋内の空気の汚染度に応じた換気経路にする場合、及び、人検出部103により検出された部屋内の人の有無に応じた換気経路にする場合についても、同様にして換気経路の決定及び給排気装置40の制御が行われる。例えば、和室12内の空気の汚染度が前述した基準値以上である場合、図5及び図6に示すように、和室12を換気経路の下流側にする制御がなされる。
【0042】
次に、この実施の形態に係る換気システムの動作例について、図7のフロー図を参照しながら説明する。まず、換気システムの動作を開始すると、ステップS10において、制御装置100の汚染度検出部102は、センサ70(汚染センサ)により検知された検知対象物質の量又は濃度の値を取得する。
【0043】
ステップS11においては、制御装置100の入力取得部101は、ユーザにより和室12を換気経路上流にする指定操作が入力デバイス60に入力されたか否かを判定する。指定操作が入力デバイス60に入力された場合は、制御装置100はステップS12の処理を、指定操作が入力デバイス60に入力されない場合は、制御装置100はステップS21の処理をそれぞれ行う。
【0044】
ステップS12において、換気経路決定部104は、換気経路を、和室12を始点とし、建物10の屋外に通じる換気扇30等がある部屋を換気経路の終点とするように決定する。ステップS12の後、制御装置100はステップS13の処理を行う。
【0045】
ステップS13においては、装置制御部105は、換気経路の決定内容に従って給排気装置40を動作させる。具体的には、ここでは、第1給排気装置41を排気運転、第2給排気装置42を給気運転で動作させる。ステップS13の後、制御装置100はステップS14の処理を行う。
【0046】
ステップS14において、制御装置100は、汚染度検出部102が取得したセンサ70の検出結果に基づき、和室12に設置してあるセンサ70が、和室12以外に設置してあるセンサ70以上の量又は濃度の検知対象物質を検知しているか否かを判定する。和室のセンサ70が和室12以外のセンサ70以上の量又は濃度の検知対象物質を検知している場合、制御装置100は次にステップS15の処理を行う。
【0047】
ステップS15においては、制御装置100の装置制御部105は、第1給排気装置41、第2給排気装置42の風量を調整する。すなわち、装置制御部105は、和室12が換気経路の上流に位置していないと判断し、給排気装置40の風量を調節する。和室12のセンサ70が和室12以外に設置してあるセンサ70よりも少ない量又は濃度の検知対象物質を検知している場合、制御装置100は次にステップS16の処理を行う。
【0048】
ステップS16において、制御装置100は、入力取得部101がユーザによるシステムの停止操作を受け取ったか否かを判定する。停止操作を受けた場合、制御装置100はステップS18の処理を行う。停止操作を受け取っていない場合、制御装置100はステップS17の処理を行う。
【0049】
ステップS17において、制御装置100は、給排気装置40の運転開始から予め設定された一定時間が経過したかを判断する。給排気装置40の運転開始から一定時間が経過した場合、ステップS18において、制御装置100は、給排気装置40の運転を停止する。一方、給排気装置40の運転開始から一定時間が経過していない場合、制御装置は、ステップS14に戻って処理を継続する。すなわち、ユーザの停止操作又は給排気装置40の一定時間以上の運転がなされない限り、給排気装置40の運転は継続される。なお、図7の例では、前述の一定時間を30分としている。
【0050】
ステップS18において、制御装置100は、給排気装置40の運転を停止後、ステップS10に戻って処理を継続する。
【0051】
ステップS21においては、制御装置100の入力取得部101は、ユーザにより和室12を換気経路下流にする指定操作が入力デバイス60に入力されたか否かを判定する。指定操作が入力デバイス60に入力された場合は、制御装置100はステップS22の処理を、指定操作が入力デバイス60に入力されない場合は、制御装置100はステップS31の処理をそれぞれ行う。
【0052】
ステップS22において、換気経路決定部104は、換気経路を、和室12以外の部屋を始点とし、和室12の第2給排気装置42、トイレ14の第1換気扇31、浴室16の第2換気扇32のどれか1つ以上を換気経路の終点とするように決定する。ステップS22の後、ステップS23で、装置制御部105は、換気経路の決定内容に従って給排気装置40を動作させる。具体的には、第1給排気装置41を給気運転、第2給排気装置42を排気運転で動作させる。ステップS23の後、制御装置100はステップS24の処理を行う。
【0053】
ステップS24において、制御装置100は、センサ70の検出結果に基づき和室12、トイレ14、浴室16、廊下18以外の部屋に設置してあるセンサ70が基準値以上の検知対象物質を検知しているか否かを判定する。和室12、トイレ14、浴室16、廊下18以外の部屋のセンサ70が基準値を超える量、濃度の検知対象物質を検知していなければ、制御装置100はステップS26の処理を行う。
【0054】
一方、ステップS24で和室12、トイレ14、浴室16、廊下18以外の部屋で基準値以上の検知対象物質の量、濃度を検知した場合、制御装置100は次にステップS25の処理を行う。ステップS25においては、装置制御部105は、第1給排気装置41、第2給排気装置42の風量を調整する。すなわち、装置制御部105は、和室12が換気経路の下流に位置していないと判定し、給排気装置40の風量を調節する。
【0055】
ステップS26において、制御装置100は、入力取得部101がユーザによるシステムの停止操作を受け取ったか否かを判断する。停止操作を受けた場合、制御装置100は、ステップS18の処理を行う。停止操作を受け取っていない場合、制御装置100は、ステップS10に戻って処理を継続する。
【0056】
ステップS31、つまり、ユーザによる入力が得られなかった場合において、制御装置100は、和室12にあるセンサ70により検知された検知対象物質の量又は濃度の値が、基準値を超えたか否かを判断する。検知対象物質の量又は濃度の値が基準値以下の場合、制御装置100はステップS18の処理を行う。検知対象物質の量又は濃度の値が基準値を超えた場合、制御装置100は次にステップS22の処理を行う。
【0057】
図7のフロー図は、和室12を換気経路の上流又は下流に設定するという指定操作がユーザによりなされた場合と、和室12のセンサ70が基準値以上の検知対象物質を検知した場合についての例である。ただし、他の部屋を換気経路上流又は下流に設定するという指定操作がユーザによりなされた場合、あるいは、他の部屋のセンサ70が基準値超の検知対象物質を検知した場合等も、同様である。
【0058】
以上のように、この実施の形態に係る換気システムにおいては、常時換気手段により、いわゆる24時間換気を継続し、必要な換気量を常時確保しつつ、簡潔な構成でもって、状況に応じた建物10内の換気経路の柔軟な変更が可能である。このため、ユーザの指示又は空気の汚染度に応じて、柔軟かつ適切な換気経路を確保することができる。また、24時間換気システムを備えた建物10に追加して給排気装置40を設置することで、建物10全体での24時間換気は維持したまま、局所的な換気、空気清浄が行える。さらに、既存の24時間換気システムには新たな制御を必要としないため、給排気装置40の設置以外の特別な操作、工事等は不要である。
【0059】
例えば、ユーザの指示により、換気経路の上流に位置するように設定された部屋は、他の部屋からの空気が入ることはないため、常時、外気と同じような清潔な空気が保てる。そのため、乳幼児又は受験生向けの部屋等、特に汚染空気に敏感な人のための部屋として活用できる。
【0060】
また、例えば、ユーザの指示により、換気経路の下流に位置するように設定された部屋は、その部屋の空気が他の部屋へ流出することはない。そのため、感染症羅漢者の部屋として活用できる。また、センサ70に検知されない少ない量、あるいは、低濃度の空気汚染物質にもユーザ操作によって対処できる。特にセンサ類よりも人のほうが感知しやすいと言われているにおい等の汚染物質が発生する部屋にも対処可能である。また、ユーザが事前に汚染部室が発生すると予想できる部屋にも有効である。センサ70が感知する前に換気経路を変更することで、他の部屋への汚染物質の流出をより効率的に抑制し、消費エネルギー量の低減も可能である。さらに、例えば、センサ70のデータから、換気経路の下流に位置するように設定された部屋も同様に、その部屋の空気が他の共用部屋へ流出することを抑制できる。
【0061】
次に、この実施の形態に係る換気システムの変形例について説明する。ユーザが入力デバイスで行う指定操作は、ユーザが所望する換気経路の始点、終点、及び、経由したくない部屋の少なくともいずれかを直接に指定するものであってもよい。この場合、換気経路決定部104は、指定操作による指定内容を優先して換気経路を決定する。すなわち、換気経路決定部104は、ユーザの指示に沿った換気経路の設定を、他の換気経路の設定よりも優先する。
【0062】
また、制御装置100は、入力取得部101により取得された過去のユーザ操作、及び、センサ70による過去の検出結果の一方又は両方を記憶してもよい。そして、換気経路決定部104は、記憶されている過去のユーザ操作、及び、センサ70による過去の検出結果の一方又は両方を用いて換気経路を決定してもよい。
【0063】
換気システムは、ユーザに、操作の指示などを提示するための図示しない出力デバイスを備えていてもよい。出力デバイスとしては、例えば、リモコン画面、タッチパネル、スピーカー、スマートフォン等が挙げられる。
【0064】
換気システムは、出力デバイス等を介して、ユーザに、給排気装置40及び空気清浄機50の一方又は両方の設置の必要性の有無、設置箇所をユーザに提示してもよい。また、建物10内に制御可能な空気清浄機50がある場合も同様に、出力デバイス等を介して空気清浄機50の設置位置をユーザに提示してもよい。この際、空気清浄機50に自走機能があれば、装置制御部105は空気清浄機50をその位置まで移動するように制御してもよい。
【0065】
換気システムは各部屋の人の有無だけでなく、各部屋にいる人の皮膚温度を検出してもよい。人の皮膚温度は、例えば表面温度センサの検出データを用いて検出できる。そして、換気経路決定部104は、皮膚温度が基準値より高い人が検出された場合、当該人がいる部屋の換気を優先して行うように主たる換気経路を決定する。すなわち、換気経路決定部104は、皮膚温度が基準値より高い人がいる部屋を起点とした、他の人がいる部屋を通過しないような換気経路の設定を、他の部屋を起点とした換気経路の設定よりも優先する。
【0066】
また、換気システムは、各部屋にいる人の咳を検出してもよい。人の咳は、例えば、入力デバイス60に備えられているマイクにより検出した室内の音を用いることで検出することができる。また、各部屋に別途マイクを設置して使用してもよい。そして、換気経路決定部104は、咳をしている人が検出された場合、当該人がいる部屋の換気を優先して行うように主たる換気経路を決定する。この場合の換気経路の決定も、前述した皮膚温度が基準値より高い人が検出された場合と同様に行うことができる。
【0067】
以上のような変形例によれば、発熱、咳等の風邪症状が見られる人がいる場合に、当該人がいる部屋の換気を優先的に行うとともに、当該人の呼気により汚染された可能性がある空気を、他の人がいる部屋を通過しない換気経路で屋外に排出できる。
【0068】
以上においては、建物10の1階部分について主に説明したが、2階部分についても同様に給排気装置40、換気扇30、その他の空調機器を設けてもよい。そして、換気経路決定部104は、同一階内だけでなく異なる複数の階にまたがる換気経路を設定してもよい。例えば、換気経路決定部104は、建物10の2階のある部屋を始点に、階段、廊下18を経由してトイレ14の第1換気扇31を終点とする換気経路等を設定可能である。このようにすることで、2階の各部屋に汚染物質が流出することを防ぐ換気経路を容易に設定できる。
【0069】
この実施の形態に係る換気システムは、図8に示すシミュレーション装置200をさらに備えてもよい。同図に示すように、シミュレーション装置200は、設定部201、計算部202及び提示部203を備えている。設定部201は、例えばユーザの操作により、仮想立体座標上に建物10の間取りと、常時換気手段の給気手段である外気導入口20及び排気手段である換気扇30のそれぞれの位置及び給排気量とを設定する。計算部202は、設定部201より設定された内容に基づいて、既知の手法を用いてシミュレーションで建物10全体での換気回路を計算して、建物10内の気流を計算する。
【0070】
提示部203は、計算部202による計算結果に基づいて、建物10における給排気装置40及び空気清浄機50の一方又は両方の推奨設置位置を提示する。提示部203は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置を含んでいる。提示部203は、常時換気手段の運転時における建物10全体での換気回路のシミュレーション結果から、複数の換気経路の形成が可能である給排気装置40及び空気清浄機50の一方又は両方の設置位置を推奨設置位置とする。このようにすることで、提示部203は、状況に応じて複数の換気経路のうちのいずれかを選択することができ、様々な汚染物質発生にも対応可能で、かつ、汚染物質を迅速に減少させるのに適した給排気装置40及び空気清浄機50の一方又は両方の設置位置を提示できる。
【0071】
設定部201は、仮想立体座標上に建物10の間取りと給排気装置40及び空気清浄機50の一方又は両方の設置位置とを設定可能であってもよい。この場合も、計算部202は、設定部201より設定された内容に基づいて、既知の手法を用いてシミュレーションで建物10全体での換気回路を計算して、建物10内の気流を計算する。そして、提示部203は、計算部202による計算結果に基づいて、建物10における常時換気手段の給気手段及び排気手段の推奨設置位置を提示する。提示部203は、建物10全体での換気回路のシミュレーション結果から、常時換気手段の運転を継続しつつ、給排気装置40を動作させることで、複数の換気経路の形成が可能である常時換気手段の給気手段及び排気手段の設置位置を推奨設置位置とする。このようにすることで、提示部203は、状況に応じて複数の換気経路のうちのいずれかを選択することができ、様々な汚染物質発生にも対応可能で、かつ、汚染物質を迅速に減少させるのに適した常時換気手段の設置位置を提示できる。これにより、建物10の設計を支援可能である。
【0072】
シミュレーション装置200は、環境情報取得部210を備えていてもよい。環境情報取得部210は、建物10内の環境情報を取得する。環境情報取得部210が取得する環境情報は、例えば、建物10内の、温度、湿度、圧力、PM濃度、二酸化炭素濃度、音声、表面温度等の少なくともいずれかの検知データを含む。環境情報取得部210が取得する環境情報は、センサ70による検知データを含んでもよい。計算部202は、環境情報と設定部により設定された内容とに基づいて、換気回路網計算、熱移動、人の呼気内の二酸化炭素の部屋間の濃度差等の観点を考慮して、建物内の気流を計算する。
【0073】
提示部203は、計算部202により計算された常時換気手段運転時における建物10内の気流、すなわち、建物10内の換気回路を表示装置に表示してもよい。図9に示すのは、建物10内の換気回路の表示例である。また、提示部203は、計算部202による計算結果に基づいて、外気導入口20のそれぞれの開閉状態の変更をユーザに提示してもよい。さらに、提示部203は、計算部202による計算結果に基づいて、部屋間のドア、各部屋の窓等の開閉状態の変更をユーザに提示してもよい。
【0074】
図10は、この実施の形態における制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの機能を実現する構成の一例を示す図である。制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ111及びメモリ112を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア113であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア113として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ111及びメモリ112を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア113として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ111及びメモリ112をさらに備えている。
【0075】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア113である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ111及び少なくとも1つのメモリ112を備える場合、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0076】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ112に格納される。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ111は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ112には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0077】
このようにして、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの各機能を実現することができる。制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれの処理回路が少なくともプロセッサ111及びメモリ112を備える場合、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれにおいてメモリ112に記憶されたプログラムをプロセッサ111が実行し、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれのハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、制御装置100及びシミュレーション装置200のそれぞれが備える各部の機能が実現される。なお、換気システムが備える給排気装置40は、単一の制御装置100により動作が制御される構成に限定されるものではない。換気システムが備える給排気装置40は、複数の装置が連携することで動作を制御されてもよい。
【0078】
なお、本開示においては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態を任意に組み合わせてもよい。以下に、本開示の諸態様の例を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
複数の部屋が設けられた建物内を換気する換気システムであって、
前記建物内に給気する給気手段及び前記建物内から排気する排気手段を有し、前記建物内を常時換気する常時換気手段と、
前記常時換気手段とは別に設けられ、前記建物内への給気及び前記建物内からの排気が可能な給排気装置と、
前記給排気装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記建物内の気流が通過する経路を決定する経路決定部と、
前記経路決定部が決定した経路に応じて前記給排気装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を前記給排気装置に送信する装置制御部と、を備えた換気システム。
(付記2)
前記経路決定部は、ユーザが入力した操作内容に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する付記1に記載の換気システム。
(付記3)
少なくとも1つの前記部屋内の空気の汚染度を検出する汚染度検出手段をさらに備え、
前記経路決定部は、前記部屋内の空気の汚染度に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する付記1又は付記2に記載の換気システム。
(付記4)
前記経路決定部は、空気の汚染度が予め設定された基準値以上である前記部屋が気流の下流側になるように、前記建物内の気流が通過する経路を決定する付記3に記載の換気システム。
(付記5)
少なくとも1つの前記部屋内の人を検出する人検出手段をさらに備え、
前記経路決定部は、前記部屋内の人の有無に応じて、前記建物内の気流が通過する経路を決定する付記1から付記4のいずれか一項に記載の換気システム。
(付記6)
前記経路決定部は、人がいない前記部屋を気流が通過するように、前記建物内の気流が通過する経路を決定する付記5に記載の換気システム。
(付記7)
前記建物内の空気を清浄化する空気清浄装置をさらに備え、
前記装置制御部は、前記経路決定部が決定した経路に応じて前記空気清浄装置の制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御信号を前記空気清浄装置に送信する付記1から付記6のいずれか一項に記載の換気システム。
(付記8)
前記空気清浄装置は、自走可能であり、
前記装置制御部が決定する前記空気清浄装置の制御内容には、前記空気清浄装置の位置が含まれる付記7に記載の換気システム。
(付記9)
前記建物内における前記空気清浄装置の設置箇所をユーザに提示する出力手段をさらに備えた付記7又は付記8に記載の換気システム。
(付記10)
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段のそれぞれの位置及び給排気量とを設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された内容に基づいて、シミュレーションで前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた付記1又は付記2に記載の換気システム。
(付記11)
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の設置位置とを設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された内容に基づいて、シミュレーションで前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた付記1又は付記2に記載の換気システム。
(付記12)
前記建物内の環境情報を取得する環境情報取得手段と、
仮想立体座標上に前記建物の間取りと前記常時換気手段の前記給気手段及び前記排気手段のそれぞれの位置及び給排気量を設定する設定手段と、
前記環境情報と前記設定手段により設定された内容とに基づいて、前記建物内の気流を計算する計算手段と、
前記計算手段による計算結果に基づいて、前記建物における前記給排気装置及び空気清浄装置の一方又は両方の推奨設置位置を提示する提示手段と、を備えた付記1又は付記2に記載の換気システム。
【符号の説明】
【0079】
10 建物
11 リビング
12 和室
13 キッチン
14 トイレ
15 脱衣所
16 浴室
17 玄関
18 廊下
20 外気導入口
21 第1外気導入口
22 第2外気導入口
23 第3外気導入口
30 換気扇
31 第1換気扇
32 第2換気扇
40 給排気装置
41 第1給排気装置
42 第2給排気装置
50 空気清浄機
60 入力デバイス
70 センサ
100 制御装置
101 入力取得部
102 汚染度検出部
103 人検出部
104 換気経路決定部
105 装置制御部
111 プロセッサ
112 メモリ
113 専用ハードウェア
200 シミュレーション装置
201 設定部
202 計算部
203 提示部
210 環境情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10