(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159033
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】音制御装置、音制御用コンピュータプログラム及び音制御方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20241031BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G10K11/178
B60R11/02 M
B60R11/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074759
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 渉
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC02
3D020BC13
3D020BE04
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】ドライバの車両の運転に関与する程度が低い時には、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時よりも、車室内に含まれる外音を低減する音制御装置を提供する。
【解決手段】音制御装置は、車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか又は第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定する第1判定部と、車両の運転モードが第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、第1判定部によって車両の運転モードが第2運転モードであると判定された場合、音制御部を用いて、減衰量が第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の所定の音を減衰させることを決定する決定部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、前記第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって車両の運転モードが前記第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の前記所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、前記第1判定部によって車両の運転モードが前記第2運転モードであると判定された場合、前記音制御部を用いて、減衰量が前記第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の前記所定の音を減衰させることを決定する決定部と、
を有する、ことを特徴とする音制御装置。
【請求項2】
車両の外の音が、ドライバが車両を運転している時に聞き取ることが求められる前記所定の外音を含むか否かを判定する第2判定部を有し、
前記第1判定部によって車両の運転モードが前記第2運転モードであると判定され、且つ、前記第2判定部によって車両の外の音が前記所定の外音を含むと判定された場合、前記決定部は、前記第2の減衰モードにおける減衰量を更に前記第1の減衰モードよりも小さくするように決定する、請求項1に記載の音制御装置。
【請求項3】
前記所定の外音は、緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音を含む、請求項2に記載の音制御装置。
【請求項4】
車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、前記第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定し、
車両の運転モードが前記第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の前記所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、車両の運転モードが前記第2運転モードであると判定された場合、減衰量が前記第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の前記所定の音を減衰させることを決定する、
ことを含む処理をプロセッサに実行させる、ことを特徴とする音制御用コンピュータプログラム。
【請求項5】
車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、前記第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定し、
車両の運転モードが前記第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の前記所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、車両の運転モードが前記第2運転モードであると判定された場合、前記音制御部を用いて、減衰量が前記第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の前記所定の音を減衰させることを決定する、
ことを音制御装置が実行する、ことを特徴とする音制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音制御装置、音制御用コンピュータプログラム及び音制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動制御システムは、例えば、自動制御システムが主体となって車両を運転する自動運転モードと、ドライバが主体となって車両を運転する手動運転モードとを有する。自動運転モードでは、車両の走行に必要な運転動作の一部又は全てが自動で実行されるので、ドライバの運転に関与する度合いが低い。一方、手動運転モードでは、自動で実行される運転動作の種類が自動運転モードよりも少ないか又はゼロであるので、ドライバの運転に関与する度合いが高い。
【0003】
また、車室内の静粛性を高めるために、車室内の騒音を低減する能動的な音制御装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、騒音が緊急車両のサイレン音又は他車の警報音の場合には、音を低減しないようにして、ドライバがこれらの音を聞き取れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライバの運転に関与する度合い高い場合、緊急車両のサイレン音又は他車両の警報音は、車両の周囲の環境を表すので、車両を運転しているドライバには聞き取ることが求められる。
【0006】
一方、ドライバの運転に関与する度合いが低い場合、車室内の静粛性を優先して、ドライバの快適性を向上させることが考えられる。
【0007】
そこで、本開示は、ドライバの車両の運転に関与する程度が低い時には、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時よりも、車室内に含まれる外音を低減する音制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一の実施形態によれば、音制御装置が提供される。この音制御装置は、車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定する第1判定部と、第1判定部によって車両の運転モードが第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、第1判定部によって車両の運転モードが第2運転モードであると判定された場合、音制御部を用いて、減衰量が第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の所定の音を減衰させることを決定する決定部と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
(2)(1)の音制御装置において、車両の外の音が、ドライバが車両を運転している時に聞き取ることが求められる所定の外音を含むか否かを判定する第2判定部を有し、
第1判定部によって車両の運転モードが第2運転モードであると判定され、且つ、第2判定部によって車両の外の音が所定の外音を含むと判定された場合、決定部は、第2の減衰モードにおける減衰量を更に第1の減衰モードよりも小さくするように決定することが好ましい。
【0010】
(3)(2)の音制御装置において、所定の外音は、緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音を含むことが好ましい。
【0011】
(4)他の一の実施形態によれば、音制御装用コンピュータプログラムが提供される。この音制御装用コンピュータプログラムは、車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定し、車両の運転モードが第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、車両の運転モードが第2運転モードであると判定された場合、音制御部を用いて、減衰量が第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の所定の音を減衰させることを決定する、ことを含む処理をプロセッサに実行させる、ことを特徴とする。
【0012】
(5)また他の実施形態によれば、音制御方法が提供される。この音制御方法は、車両の運転モードが、ドライバの運転に関与する程度の低い第1運転モードであるか、又は、第1運転モードよりもドライバの運転に関与する程度の高い第2運転モードであるかを判定し、車両の運転モードが第1運転モードであると判定された場合、車両の外から車室内に侵入した音を含む所定の音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成する音制御部を用いて、車室内の所定の音を第1の減衰モードで減衰させることを決定し、且つ、車両の運転モードが第2運転モードであると判定された場合、音制御部を用いて、減衰量が第1の減衰モードよりも小さい第2の減衰モードで、車室内の所定の音を減衰させることを決定する、ことを音制御装置が実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る音制御装置は、ドライバの車両の運転に関与する程度が低い時には、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時よりも車室内に含まれる外音を低減することにより、車室内の静粛性を高めると共に、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時には、車両の周囲の環境を認識しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の音制御装置の動作の概要を説明する図である。
【
図2】本実施形態の音制御装置を含む音制御システムが実装される車両の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の音制御装置の音制御処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図4】本実施形態の音制御装置の音制御処理に関する他の動作フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態の音制御装置12の動作の概要を説明する図である。以下、
図1を参照しながら、本明細書に開示する音制御装置12の音制御処理に関する動作の概要を説明する。
【0016】
車両10は、マイク2、スピーカ3、自動制御装置11及び音制御装置12を有する。自動制御装置11は、ドライバ40の運転に関与する度合いの異なる2つの運転モードに応じて、車両10の動作を制御する。車両10は、自動運転車両であってもよい。
【0017】
例えば、自動制御装置11は、ドライバ40の運転に関与する度合いの低い自動運転モード(例えば、レベル3~5の運転モード)と、ドライバ40の運転に関与する度合いの高い手動運転モード(例えば、レベル0~2の運転モード)とを有する。自動運転モードは、第1運転モードの一例である。手動運転モードは、第2運転モードの一例である。
【0018】
ドライバ40は、車室30において運転席31に着座して、運転モードに応じて車両10を操作する。自動運転モードでは、自動制御装置11が主体となって車両10を運転する。また、手動運転モードでは、ドライバ40が主体となって車両10を運転する。
【0019】
車両10の外では、緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音等が聞こえる。車両10の外の音(以下、外音とも)は車室30内に侵入するので、車室30内の音には外音が含まれる。ドライバ40にとっては、この外音は騒音と感じられる場合がある。
【0020】
音制御装置12は、マイク2を用いて外音を入力する。音制御装置12は、車室30内の外音を減衰させる抑制音を出力するための抑制音信号を生成して、この抑制音信号をスピーカ3に出力する。スピーカ3は、車室30内の外音を減衰させる抑制音を出力する。これにより、車室30内の外音が減衰するので、車室30内の静粛性が向上する。
【0021】
音制御装置12は、車両の運転モードが自動運転モードの場合、車室30内に含まれる外音を第1の減衰モードで減衰させることを決定する。例えば、第1の減衰モードでは、車室30内の外音が、10%~50%の大きさに低減される。
【0022】
自動運転モードでは、自動制御装置11が主体となって車両10を運転するので、ドライバ40は静粛な車室30内で過ごすことができる。
【0023】
また、音制御装置12は、車両10の運転モードが手動運転モードの場合、車室30内に含まれる外音を第2の減衰モードで減衰させることを決定する。第2の減衰モードにおける外音の減衰量は、第1の減衰モードよりも小さい。例えば、第2の減衰モードでは、車室30内の外音の大きさが低減される低減量が、第1の減衰モードの半分以下となる。
【0024】
手動運転モードでは、ドライバ40が主体となって車両10を運転するので、外音を聞き取れるようにして、車両の周囲の環境を認識できる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の音制御装置12は、ドライバ40の車両10の運転に関与する程度が低い時には、ドライバ40の車両10の運転に関与する程度が高い時よりも車室30内に含まれる外音を低減することにより、車室30内の静粛性を高める。これにより、ドライバ40は車両10に快適に乗車できる。また、本実施形態の音制御装置12は、ドライバ40の車両の運転に関与する程度が高い時には、車両の周囲の環境を認識しやすくすることができる。
【0026】
図2は、本実施形態の音制御装置12を含む音制御システム1が実装される車両10の概略構成図である。車両10は、マイク2と、スピーカ3と、ユーザインターフェース(UI)4と、自動制御装置11と、音制御装置12等とを有する。音制御システム1は、少なくとも、マイク2と、スピーカ3と、音制御装置12を含む。
【0027】
マイク2と、スピーカ3と、ユーザインターフェース4と、自動制御装置11と、音制御装置12は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク13を介して通信可能に接続される。
【0028】
マイク2は、音入力装置の一例である。マイク2は、車両10の外の音を入力可能に、例えば、車両10の外面に配置される。また、マイク2は、車両10の駆動部(図示せず)が発生する音、及び、車両10の走行時に生じる走行音等も入力する。マイク2は、入力した音を音電気信号に変えて、この音電気信号を車内ネットワーク13を介して音制御装置12へ出力する。
図2に示す例では、マイク2は、1つしか示されていないが、複数のマイクが車両10に実装されていてもよい。
【0029】
スピーカ3は、音出力装置の一例である。スピーカ3は、音制御装置12から車内ネットワーク13を介して抑制音信号を入力し、この抑制音信号を増幅して抑制音を出力する。
図2に示す例では、スピーカ3は、1つしか示されていないが、複数のスピーカが車両10に実装されていてもよい。
【0030】
UI4は、通知部の一例である。UI4は、自動制御装置11及び音制御装置12等に制御されて、車両10に関する動作情報等をドライバ40へ通知する。車両10に関する動作情報は、車両10の走行情報等を含む。UI4は、動作情報等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置4aを有する。また、UI4は、動作情報等をドライバ40へ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI4は、ドライバ40から車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両の速度、及び、運転モードの移行要求等が挙げられる。UI4は、ドライバ40から車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。UI4は、入力された操作情報を、車内ネットワーク13を介して、自動制御装置11及び音制御装置12等へ出力する。
【0031】
自動制御装置11は、車両10の走行を含む動作を制御する。自動制御装置11は、ドライバ40の運転に関与する度合いの異なる2つの運転モードを有する。自動制御装置11は、運転モードに応じて、車両10の動作を制御する。
【0032】
例えば、自動制御装置11は、ドライバ40の運転に関与する度合いの低い自動運転モード(例えば、レベル3~5の運転モード)と、ドライバ40の運転に関与する度合いの高い手動運転モード(例えば、レベル0~2の運転モード)とを有する。自動運転モードでは、自動制御装置11が主体となって車両10を運転する。また、手動運転モードでは、ドライバ40が主体となって車両10を運転する。
【0033】
自動制御装置11は、現在の運転モードを表すモード情報を、車内ネットワーク13を介して、音制御装置12へ出力する。
【0034】
また、ドライバ40の運転に関与する度合いの低い運転モードは、車両10の走行に必要な運転動作の一部又は全てを自動で実行され、ドライバ40の運転に関与する度合いの高い運転モードは、自動で実行される運転動作の種類が、ドライバ40の運転に関与する度合いの低い運転モードよりも少ないか又はゼロであってもよい。
【0035】
自動運転モードでは、自動制御装置11は、地図情報と、車両10に搭載されたセンサ(図示せず)の検知情報等とに基づいて、操舵、駆動、制動等の動作を制御する運転計画を生成する。自動制御装置11は、この運転計画に基づいた自動制御信号を、車内ネットワーク13を介して、操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)、駆動装置(図示せず)又はブレーキ(図示せず)へ出力する。
【0036】
また、手動運転モードでは、自動制御装置11は、ドライバ40の操作に基づいて、操舵、駆動、制動等の車両10の動作を制御する手動制御信号を生成して、この手動制御信号を、車内ネットワーク13を介して、操舵輪を駆動するアクチュエータ、駆動装置又はブレーキへ出力する。
【0037】
自動制御装置11は、自動運転モードが許容される領域(例えば、車両10を制御するための高精度地図が用意された領域)では、自動運転モードで車両10を運転可能である。自動制御装置11は、自動運転モードが許容されない領域では、手動運転モードで車両10を制御する。また、自動制御装置11は、ドライバ40の要求に応じて、自動運転モードから手動運転モードへ、又は、手動運転モードから自動運転モードへ移行する。また、自動制御装置11は、自動運転モードにおいて車両10の安全な運転を行えないと判定した場合、自動運転モードから手動運転モードへ移行する。
【0038】
音制御装置12は、音制御処理と、判定処理と、決定処理とを実行する。そのために、音制御装置12は、通信インターフェース(IF)21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信IF21と、メモリ22と、プロセッサ23とは、信号線24を介して接続されている。通信IF21は、音制御装置12を車内ネットワーク13に接続するためのインターフェース回路を有する。
【0039】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0040】
音制御装置12が有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。プロセッサ23は、音制御部231と、判定部232と、決定部233とを有する。あるいは、プロセッサ23が有する機能モジュールは、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサ23は、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。
【0041】
音制御部231は、マイク2から入力された入力音を表す音電気信号に基づいて、車室30内の所定の音を減衰させるために抑制音信号を生成する。音制御部231は、この抑制音信号をスピーカ3へ出力する。車室30内の所定の音を減衰させる減衰量は、決定部233から通知される減衰量情報に基づいて決定される。マイク2は、車両10の外の音(外音)を入力する。また、マイク2は、車両10の駆動部が発生する駆動音及び車両10の走行時に生じる走行音を入力する。外音、駆動音及び走行音は、車室30内に侵入する。以下、外音、駆動音及び走行音を侵入音ともいう。
【0042】
音制御部231は、車室30内の侵入音を減衰させるために抑制音信号を生成する。抑制音信号は、侵入音とは逆位相の信号を含む。侵入音を減衰させる減衰量は、信号の振幅により制御される。侵入音は、車両10の外から車室30内に侵入した音を含む所定の音の一例である。音制御装置12の他の動作については後述する。
【0043】
自動制御装置11及び音制御装置12は、例えば、電子制御装置(Electronic Contorol Unit:ECU)である。
図2では、自動制御装置11及び音制御装置12とは、別々の装置として説明されているが、これらの装置は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0044】
図3は、本実施形態の音制御装置12の音制御処理に関する動作フローチャートの一例である。次に、
図3を参照しながら、音制御装置12の音制御処理について、以下に説明する。音制御装置12は、所定の周期を有する音制御時刻に、
図3に示される動作フローチャートに従って音制御処理を実行する。
【0045】
まず、判定部232は、車両10の運転モードが、ドライバ40の運転に関与する程度の低い自動運転モードであるか、又は、自動運転モードよりもドライバ40の運転に関与する程度の高い手動運転モードであるかを判定する(ステップS101)。判定部232は、モード情報が自動運転モードを表す場合、車両10の運転モードは自動運転モードであると判定する。また、判定部232は、モード情報が手動運転モードを表す場合、車両10の運転モードは手動運転モードであると判定する。判定部232は、第1判定部の一例である。
【0046】
車両10の運転モードが自動運転モードである場合(ステップS101-自動運転モード)、決定部233は、音制御部231を用いて、車室30内の侵入音を第1の減衰モードで減衰させることを決定する(ステップS102)。決定部233は、第1の減衰モードで車室30内の侵入音の大きさを減衰させる減衰量を表す減衰量情報を生成して、この減衰量情報を音制御部231に通知する。例えば、決定部233は、第1の減衰モードでは、車室30内の侵入音が10%~50%の大きさに減衰されるように、減衰量情報を生成する。
【0047】
次に、決定部233は、減衰量情報を音制御部231に通知し、(ステップS103)、一連の処理を終了する。
【0048】
音制御部231は、マイク2から入力された音電気信号と、減衰量情報とに基づいて、車室30内の侵入音を減衰させるために抑制音信号を生成する。抑制音信号の大きさと、車室30内の侵入音を減衰する減衰量との関係は、メモリ22に記憶される。音制御部231は、この関係を参照して、減衰量情報で表される減衰量となるように、抑制音信号を生成する。音制御部231は、決定部233から新たな減衰量情報が通知されるまでは、現在の減衰量情報に基づいて抑制音信号を生成する。
【0049】
スピーカ3は、抑制音信号に基づいて、車室30内の外音を減衰させる抑制音を出力する。第1の減衰モードでは、車室30内の外音が10%~50%の大きさに減衰されるので、車室30内の静粛性が向上する。ドライバ40は、車室30内で快適に過ごすことができる。
【0050】
一方、車両10の運転モードが手動運転モードである場合(ステップS101-手動運転モード)、決定部233は、音制御部231を用いて、車室30内の侵入音を第2の減衰モードで減衰させることを決定する(ステップS104)。決定部233は、第2の減衰モードで車室30内の侵入音の大きさを減衰させる減衰量を表す減衰量情報を生成して、この減衰量情報を音制御部231に通知する。
【0051】
第2の減衰モードにおける侵入音の減衰量は、第1の減衰モードよりも小さい。例えば、第2の減衰モードでは、車室30内の侵入音の大きさの減衰量が、第1の減衰モードの半分以下となる。具体的には、決定部233は、第2の減衰モードでは、車室30内の侵入音が50%~90%の大きさに減衰されるように、減衰量情報を生成する。なお、決定部233は、第2の減衰モードでは、車室30内の侵入音を減衰しないようにしてもよい。
【0052】
次に、決定部233は、減衰量情報を音制御部231に通知し、(ステップS103)、一連の処理を終了する。
【0053】
音制御部231は、マイク2から入力された音電気信号と、減衰量情報とに基づいて、車室30内の侵入音を減衰させるために抑制音信号を生成する。
【0054】
スピーカ3は、抑制音信号に基づいて、車室30内の侵入音を減衰させる抑制音を出力する。第2の減衰モードでは、車室30内の侵入音は、50%~90%の大きさに減衰されるので、ドライバ40は、外音を聞き取ることにより、車両10の周囲の環境を認識できる。ドライバ40は、手動運転モードにおいて、車両10の外の音等を聞き取りながら、車両10を運転する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の音制御装置は、ドライバの車両の運転に関与する程度が低い時には、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時よりも車室内の侵入音を低減することにより、車室内の静粛性を高める。これにより、ドライバは車両に快適に乗車できる。また、本実施形態の音制御装置は、ドライバの車両の運転に関与する程度が高い時には、車室内の侵入音を大きくすることにより、車両の周囲の環境を認識しやすくする。
【0056】
次に、本実施形態の音制御装置12の他の動作例を、
図4を参照しながら、以下に説明する。
図4は、本実施形態の音制御装置12の音制御処理に関する他の動作フローチャートの一例である。音制御装置12は、所定の周期を有する音制御時刻に、
図4に示される動作フローチャートに従って音制御処理を実行する。
【0057】
図4に示す動作フローチャートにおいて、ステップS204及びS206は、新たに追加されたステップである。ステップS201~S203及びS205は、上述したステップS101~S104と同じである。
【0058】
車両10の運転モードが手動運転モードである場合(ステップS201-手動運転モード)、判定部232は、車両10の外の音が、ドライバ40が車両10を運転している時に聞き取ることが求められる注意音を含むか否かを判定する(ステップS204)。注意音として、例えば、緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音が挙げられる。緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音が聞こえる時には、ドライバ40は、車両10の周囲に特に注意を払って、車両10を運転することが好ましい。判定部232は、第2判定部の一例である。また、注意音は、所定の外音の一例である。
【0059】
判定部232は、注意音を識別するように学習した識別器を有する。識別器として、例えば、所定のサンプリング周波数でサンプリングして量子化された音から、注意音を検出するように予め学習されたコンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)又は再帰ニューラルネットワーク(RNN)を用いることができる。判定部232は、マイク2から入力された音を所定のサンプリング周波数でサンプリングして量子化して、注意音を識別するように学習した識別器に入力することにより、車両10の外の音が注意音を含むか否かを判定する。なお、注意音を検知する方法は、上述した識別器に限定されない。注意音を検知する方法として、他の公知の技術を用いてもよい。
【0060】
注意音が含まれる場合(ステップS204-Yes)、決定部233は、第2の減衰モードにおいて、第2の減衰モードにおける減衰量を更に第1の減衰モードよりも小さくするように決定する(ステップS206)。決定部233は、車両10の外の音に注意音が含まれる場合、車両10の外の音に注意音が含まれないと判定された場合よりも侵入音を小さく減衰させることを決定する。決定部233は、車室30内の侵入音の大きさを減衰させる減衰量を表す減衰量情報を生成して、この減衰量情報を音制御部231に通知する。例えば、車両10の外の音に注意音が含まれる場合、決定部233は、車室30内の侵入音が70%~95%の大きさに減衰されるように、減衰量情報を生成する。なお、決定部233は、車両10の外の音に注意音が含まれる場合、車室30内の侵入音を減衰しないようにしてもよい。
【0061】
次に、決定部233は、減衰量情報を音制御部231に通知し、(ステップS203)、一連の処理を終了する。
【0062】
音制御部231は、マイク2から入力された音電気信号と、減衰量情報とに基づいて、注意音を車室30内の侵入音を減衰させるために抑制音信号を生成する。
【0063】
スピーカ3は、抑制音信号に基づいて、注意音を含む車室30内の侵入音を減衰させる抑制音を出力する。車両10の外の音に注意音が含まれる場合、車室30内の侵入音は、70%~95%の大きさに減衰されるか、又は、減衰されないので、ドライバ40は、外音をよく聞き取ることができるので、車両10の周囲の環境を更に認識できる。
【0064】
これにより、ドライバ40は、緊急車両のサイレン音、他車両の警笛音又は踏切の警報音等の注意音をよく聞き取ることにより、車両10の周囲の環境を確実に認識できる。ドライバ40は、手動運転モードにおいて、車両の周囲の環境を正しく認識して、車両10を適切に運転することができる。
【0065】
一方、所定の注意音が含まれない場合(ステップS204-No)、決定部233は、第2の減衰モードにおいて、車両10の外の音に注意音を含まれると判定された場合よりも大きく減衰させることを決定する(ステップS205)。決定部233は、第2の減衰モードで車室30内の侵入音の大きさを減衰させる減衰量を表す減衰量情報を生成して、この減衰量情報を音制御部231に通知する。具体的には、決定部233は、車室30内の侵入音が50%~90%の大きさに減衰されるように、減衰量情報を生成する。
【0066】
次に、決定部233は、減衰量情報を音制御部231に通知し、(ステップS203)、一連の処理を終了する。
【0067】
本開示では、上述した実施形態の音制御装置、音制御用コンピュータプログラム及び音制御方法は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本開示の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0068】
例えば、自動運転モードでは、音制御装置は、緊急車両のサイレン音を識別した場合、車両の速度を低減することを求める要求を、自動制御装置へ通知してもよい。自動制御装置11は、この通知を入力して、車両10の速度を低減する。更に、自動制御装置11は、緊急車両を検知した場合、車両を路肩へ寄せて停止するように車両を運転してもよい。
【0069】
また、音制御装置は、他車両の警報音を検知した場合、自動運転モードから手動運転モードへ移行することを求める移行要求を、自動制御装置へ通知してもよい。他車両の警報音だけでは、車両がどのような状況にあるのかを判定できないので、手動運転モードにおいて、ドライバに運転の判断をまかせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 音制御システム
2 マイク
3 スピーカ
4 ユーザインターフェース
4a 表示装置
10 車両
11 自動制御装置
12 音制御装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
231 音制御部
232 判定部
233 決定部
24 信号線
13 車内ネットワーク