(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159034
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電源装置、電源回路の制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074760
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF09
5H730FG12
5H730XX03
5H730XX23
(57)【要約】
【課題】ノイズによる誤検知を抑制しつつ、迅速に過電流を遮断することが困難である。
【解決手段】電源装置10は、電源回路20と、電源回路20の制御装置40と、を備えている。電源回路20は、各電源ラインを介して負荷50に電力を供給可能なバッテリ21と、高電位電源ラインLA上に位置するスイッチ及び電力変換回路24と、負荷50への出力電圧Vを検出する電圧検出部25と、を備えている。制御装置40は、出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部43と、微分値を単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部44と、スイッチのオン状態及びオフ状態を制御可能なスイッチ制御処理部45と、を備えている。微分処理部43は、出力電圧と積分値との差を微分した値を微分値として出力する。スイッチ制御処理部45は、微分値が閾値に達した場合に、スイッチをオフ状態に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、
前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、
前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、
を備え、
前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
電源装置。
【請求項2】
前記スイッチは、前記電源ライン上の前記電力変換回路と前記負荷に対する出力端子との間に位置する
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記スイッチを第1スイッチとしたとき、
前記電源ライン上において、前記バッテリと前記電力変換回路との間に位置する第2スイッチをさらに備え、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値に達した場合に、前記第2スイッチをオフ状態に切り替えた後に、前記第1スイッチをオフ状態に切り替える
請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
を備えた電源回路に適用され、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、
前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、
前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、
を備え、
前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
電源回路の制御装置。
【請求項7】
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
請求項6に記載の、電源回路の制御装置。
【請求項8】
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える
請求項6に記載の、電源回路の制御装置。
【請求項9】
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記スイッチを切り替え可能な制御装置と、
を備えた電源装置に適用され、
前記制御装置に、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理と、
前記微分処理において出力された前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理と、
前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替えるスイッチ制御処理と、
を実行させ、
前記微分処理は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力する処理である
プログラム。
【請求項10】
前記スイッチ制御処理は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える処理である
請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記スイッチ制御処理は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える処理である
請求項9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、電源回路の制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている電源装置は、出力電流の過電流を検出する検出回路を備えている。検出回路は、過電流検出手段と、電圧微分演算手段と、微分値検出手段と、第3論理回路と、を備えている。過電流検出手段は、電源装置の出力電流が過電流であるか否かを検出する。電圧微分演算手段は、電源装置の出力電圧の微分値を算出する。微分値検出手段は、上記微分値が設定値以上であるか否かを検出する。第3論理回路は、過電流を検出し、且つ上記微分値が設定値以上である場合に、負荷異常信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような電源装置において、電圧微分演算手段は、ノイズを含めた出力電圧の微分値を算出する。そのため、出力電圧に大きなノイズが重畳した場合に、微分値検出手段がノイズの変動分を包含したかたちで微分値を算出してしまう。その結果、ノイズに起因して第3論理回路が負荷異常信号を誤出力してしまう。その一方で、負荷短絡など、異常が生じた際には、迅速に過電流を遮断する必要があり、ノイズによる誤検知の抑制と、迅速な過電流の遮断と、を両立することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、を備え、前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える電源装置である。
【0006】
また、本発明は、電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、を備えた電源回路に適用され、前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、を備え、前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える電源回路の制御装置である。
【0007】
さらに、本発明は、電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、前記スイッチを切り替え可能な制御装置と、を備えた電源装置に適用され、前記制御装置に、前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理と、前記微分処理において出力された前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理と、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替えるスイッチ制御処理と、を実行させ、前記微分処理は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力する処理であるプログラムである。
【0008】
上記構成によれば、微分処理部は、出力電圧から積分処理部が出力した積分値を減算した差を微分した微分値を出力する。微分処理及び積分処理を経ることにより、積分処理部から出力される積分値は、本来出力されるべき出力電圧、すなわちノイズが重畳していない出力電圧に対して、過去のノイズ成分がある程度反映された値となっている。そして、この積分値を微分処理部の入力にフィードバックすることにより、出力電圧のノイズを抑制できる一方で、連続的な出力電圧の変化は残る。そのため、負荷への出力電圧の異常を検知する際に、ノイズに起因した誤検知を抑制できる。また、一度の検知で異常を検知できるため、迅速に過電流を遮断できる。したがって、電源回路の各素子を保護しやすい。
【発明の効果】
【0009】
ノイズによる誤検知を抑制しつつ、迅速に過電流を遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、電圧異常検知制御のフロー図である。
【
図3】
図3は、比較例の電源回路を動作させた場合のタイムチャートである。
【
図4】
図4は、実施例の電源回路を動作させた場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<電源装置、電源回路の制御装置、及びプログラムの一実施形態>
以下、電源装置、電源回路の制御装置、及びプログラムの一実施形態を、図面を参照して説明する。以下の詳細な記載は、説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0012】
(電源回路について)
図1に示すように、電源装置10は、電源回路20を備えている。電源回路20は、バッテリ21と、高電位電源ラインLAと、低電位電源ラインLBと、高電位出力端子22Aと、低電位出力端子22Bと、を備えている。
【0013】
バッテリ21は、各電源ライン及び各出力端子を介して、負荷50に直流電力を供給可能である。バッテリ21は、例えばリチウムイオン電池である。バッテリ21は、正極端子21Aと、負極端子21Bと、を有している。高電位電源ラインLAの第1端は、バッテリ21の正極端子21Aに接続している。高電位電源ラインLAの第2端は、高電位出力端子22Aに接続している。高電位出力端子22Aは、負荷50に接続可能である。低電位電源ラインLBの第1端は、バッテリ21の負極端子21Bに接続している。低電位電源ラインLBの第2端は、低電位出力端子22Bに接続している。低電位出力端子22Bは、負荷50に接続可能である。また、低電位出力端子22Bの電位は、グランド電位になっている。負荷50は、電源装置10からの直流電圧により動作する。負荷50は、例えばデータセンタのサーバ、ストレージ等である。
【0014】
電源回路20は、ヒューズ23を備えている。ヒューズ23は、高電位電源ラインLA上に位置する。すなわち、ヒューズ23の第1端は、バッテリ21の正極端子21Aに接続している。また、ヒューズ23の第2端は、高電位出力端子22Aに接続している。ヒューズ23は、一定値以上の電流が流れると溶断して、電流の流れを遮断する。
【0015】
電源回路20は、電力変換回路24を備えている。電力変換回路24は、高電位電源ラインLA及び低電位電源ラインLB上に位置する。すなわち、電力変換回路24の高電位側の入力端子は、ヒューズ23を介してバッテリ21の正極端子21Aに接続している。電力変換回路24の高電位側の出力端子は、高電位出力端子22Aに接続している。また、電力変換回路24の低電位側の入力端子は、バッテリ21の負極端子21Bに接続している。電力変換回路24の低電位側の出力端子は、低電位出力端子22Bに接続している。また、電力変換回路24は、図示しない制御回路により動作が制御される。
【0016】
電力変換回路24は、例えば、昇圧DC-DCコンバータである。すなわち、電力変換回路24は、バッテリ21から入力された電圧を、負荷50に対する所定の電圧に昇圧して出力する。
【0017】
電源回路20は、第1スイッチ30と、第2スイッチ31と、を備えている。第1スイッチ30及び第2スイッチ31は、いずれも高電位電源ラインLA上に位置し、オン状態及びオフ状態の何れかに切り替え可能である。
【0018】
第1スイッチ30は、高電位電源ラインLA上の電力変換回路24と負荷50に対する高電位出力端子22Aとの間に位置している。図示は省略するが、第1スイッチ30は、1つ又は複数のスイッチング素子で構成されている。スイッチング素子の例は、N型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。
【0019】
第2スイッチ31は、高電位電源ラインLA上のバッテリ21と電力変換回路24との間に位置している。図示は省略するが、第2スイッチ31は、1つ又は複数のスイッチング素子で構成されている。スイッチング素子の例は、N型のMOSFETである。
【0020】
電源回路20は、電圧検出部25を備えている。電圧検出部25は、電源回路20の高電位出力端子22Aと低電位出力端子22Bとの電位差を、負荷50への出力電圧Vとして検出する。
【0021】
(電源回路の制御装置及びプログラムについて)
図1に示すように、電源装置10は、電源回路20の制御装置40(以下、単に「制御装置40」という)を有している。制御装置40は、電圧検出部25が検出した出力電圧Vを取得する。また、制御装置40は、第1スイッチ30のオン状態及びオフ状態を切り替えるための第1制御信号S1を出力する。同様に、制御装置40は、第2スイッチ31のオン状態及びオフ状態を切り替えるための第2制御信号S2を出力する。
【0022】
制御装置40は、記憶装置41と、演算処理装置42を有する。すなわち、制御装置40は、MCU(Microcontroller Unit)である。記憶装置41は、演算処理装置42によって実行される各種のプログラムを記憶している。複数のプログラムのうちの1つは、出力電圧Vの異常を検知するための電圧異常検知プログラムPGである。また、演算処理装置42は、電圧異常検知プログラムPGを実行することにより、微分処理部43と、積分処理部44と、スイッチ制御処理部45と、として機能する。つまり、演算処理装置42は、機能ブロックとして、微分処理部43と、積分処理部44と、スイッチ制御処理部45と、を有している。演算処理装置42は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含む。
【0023】
(電圧異常検知制御について)
次に、制御装置40による電圧異常検知制御を説明する。なお、この電圧異常検知制御の各処理は、演算処理装置42が記憶装置41に記憶されている電圧異常検知プログラムPGを実行することにより行われる。また、電圧異常検知制御は、電源装置10が駆動を開始したときに実行される。
【0024】
図2に示すように、演算処理装置42が電圧異常検知制御を開始すると、演算処理装置42は、ステップS11の微分処理を行う。具体的には、ステップS11では、演算処理装置42は、電圧検出部25が検出した単位時間前から現在までの出力電圧Vを取得する。また、演算処理装置42は、現在に対して上記単位時間前に、後述する積分処理部44が出力した積分値を取得する。次いで、微分処理部43としての演算処理装置42は、電圧検出部25が取得した出力電圧Vの値と、上記積分値と、の差を算出する。その上で、演算処理装置42は、当該差を微分した値を微分値として出力する。なお、このとき、演算処理装置42は、上記の差を微分した値に、予め定められた係数を乗算した値を、微分値として出力してもよい。また、電圧異常検知制御を開始した後、一回目の微分処理を実行する際には、後述する積分処理は未だ実行されていない。この場合、例えば、微分処理部43は、上記積分値を0として微分値を算出する。
【0025】
次に、制御装置40の演算処理装置42は、ステップS12の積分処理を行う。具体的には、積分処理部44としての演算処理装置42は、微分処理部43が出力した微分値を、単位時間間隔で定積分する。次いで、演算処理装置42は、この結果である積分値を出力する。上記単位時間は、例えば100ミリ秒である。上述したように、ステップS12で出力する積分値は、次のサイクルのステップS11の微分処理で用いられる。
【0026】
次に、制御装置40の演算処理装置42は、ステップS13の処理を行う。具体的には、まず、スイッチ制御処理部45としての演算処理装置42は、微分処理部43が出力した微分値と、予め定められた閾値とを比較する。そして、演算処理装置42は、微分値が閾値に達したか否かを判定する。この実施形態では、一例として、演算処理装置42は、微分値の絶対値が閾値に達したか否かを判定する。なお、微分値が正の値の場合、微分値の絶対値が閾値に達したということは、当該微分値が正の閾値以上になったということである。また、微分値が負の値の場合、微分値の絶対値が閾値に達したということは、微分値が負の閾値以下になったということである。このステップS13の処理において、微分値の絶対値が閾値に達していないと判定された場合(S13:NO)には、演算処理装置42は、再びステップS11の処理を行う。
【0027】
一方、ステップS13の処理において、微分値が閾値に達したと判定されたときには(S13:YES)、制御装置40の演算処理装置42は、ステップS14のスイッチ制御処理を行う。ステップS14の処理では、スイッチ制御処理部45としての演算処理装置42は、第2スイッチ31をオフ状態に切り替えるための第2制御信号S2を出力する。その後、所定時間経過後に、制御装置40の演算処理装置42は、ステップS15の処理を行う。なお、上記所定時間は、演算処理装置42が第2制御信号S2を出力してから、第2スイッチ31がオフ状態に切り替わり終わるまでの時間として、予め定められている。
【0028】
続くステップS15のスイッチ制御処理では、スイッチ制御処理部45としての演算処理装置42は、第1スイッチ30をオフ状態に切り替えるための第2制御信号S2を出力する。その後、演算処理装置42は、一連の電圧異常検知制御を終了する。
【0029】
なお、電圧異常検知プログラムPGが機能しているか否かは、次の方法により確認できる。まず、積分処理部44の積分値を微分処理部43にフィードバックすることにより抑制できるノイズの程度を求める。当該ノイズの程度は、例えば所定のS/N比で表される。なお、上記「抑制できるノイズの程度」は、積分処理部44としての演算処理装置42が定積分を行う単位時間間隔等によって変化する。次に、以下の(a)及び(b)の試験を行う。
(a)上記「抑制できるノイズの程度」以下のノイズを出力電圧Vに加算した電圧を、積分処理部44に入力する。この状態において、負荷50を短絡させ、出力電圧Vを略ゼロにする。
(b)上記「抑制できるノイズの程度」よりも大きなノイズを出力電圧Vに加算した電圧を、積分処理部44に入力する。この状態において、負荷50を短絡させ、出力電圧Vを略ゼロにする。
【0030】
上記(a)の試験において、出力電圧Vを略ゼロにした直後に、各スイッチがオフ状態に切り替わり、且つ、(b)の試験において、出力電圧Vを略ゼロにするよりも前に、各スイッチがオフ状態に切り替わった場合、制御装置40のプログラムは正常に機能していることが確認できる。
【0031】
上記(a)の試験において、出力電圧Vを略ゼロにした直後に各スイッチがオフ状態に切り替わらなかった場合、若しくは(b)の試験において、出力電圧Vを略ゼロにした直後に各スイッチがオフ状態に切り替わった場合は、電圧異常検知プログラムPGが機能していないと言える。
【0032】
(従来技術との比較について)
以下、実施例の電源装置10と、比較例の電源装置と、の動作の比較を説明する。先ず、比較例の電源装置について説明する。比較例の電源装置の構成は、上記実施例の電源装置10の構成と同じである。ただし、比較例の電源装置は、実施例の電源装置10による電圧異常検知制御とは別の制御を実行する。
【0033】
比較例の電源装置において、制御装置の演算処理装置は、短絡検知制御を実行可能である。短絡検知制御を実行すると、演算処理装置は、出力電圧と所定値とを、所定の制御周期毎に比較する。そして、当該短絡検知制御では、演算処理装置は、出力電圧が所定値を2回連続で下回ったときに、負荷側で短絡が発生したと判定する。負荷側で短絡が発生したと判定した場合、演算処理装置は、バッテリのスイッチをオフ状態に切り替える。このように、比較例の電源装置において、演算処理装置は、ノイズに起因する誤検知を防止しつつ負荷側の短絡を検知するために、上記の制御周期以上の期間に亘って連続的に出力電圧が所定値を下回っている場合に、短絡が発生したことを判定する。しかし、
図3に示すように、比較例の電源装置においては、出力電圧が所定値を下回ったことが1回目に検出された後も、短絡に伴って出力電流は増加し続ける。そして、出力電圧が所定値を下回ったことが2回目に検出されてバッテリのスイッチがオフにされることで、ようやく出力電流が低下する。すなわち、比較例の電源回路では、ノイズに起因する誤検出を抑制できる一方で、短絡発生の判定までにある程度の時間を要するので、迅速に過電流を遮断できない。
【0034】
一方、上述したように、実施例の電源装置10においては、積分処理部44が微分処理部43に対して、過去のノイズ成分がある程度反映された値をフィードバックする。これにより、実施例の電源装置10では、出力電圧Vのノイズを抑制できる一方で、連続的な出力電圧Vの変化は残る。つまり、微分処理部43の入力値は、既にノイズ成分がある程度除去された値であるので、微分処理部43の出力に基づく判定であれば、ノイズに起因した誤判定は生じにくい。そのため、実施例の電源装置10であれば、比較例の電源装置のように、2回連続で出力電圧が所定値を下回った、という複数回連続の条件を設定する必要がない。その結果、
図4に示すように、最初に微分値が閾値に達したとき、すなわち1回目の検出で、負荷50への出力電圧Vの異常を判断できる。したがって、実施例の電源回路20は、ノイズによる誤検知を抑制しつつ迅速に過電流を遮断できる。
【0035】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、微分処理部43は、出力電圧Vから積分処理部44が出力した積分値を減算した差を微分した微分値を出力する。微分処理及び積分処理を経ることにより、積分処理部44から出力される積分値は、本来出力されるべき出力電圧、すなわちノイズが重畳していない出力電圧に対して、過去のノイズ成分がある程度反映された値となっている。そして、この積分値を微分処理部43の入力にフィードバックすることにより、出力電圧Vのノイズを抑制できる一方で、連続的な出力電圧Vの変化は残る。そのため、負荷50への出力電圧Vの異常を検知する際に、ノイズに起因した誤検知を抑制できる。また、一度の検知で異常を検知できるため、迅速に過電流を遮断できる。したがって、電源回路20の各素子を保護しやすい。
【0036】
(2)上記実施形態において、第1スイッチ30は、高電位電源ラインLA上の、電力変換回路24の高電位側の出力端子と高電位出力端子22Aとの間に位置している。この構成によれば、例えば、負荷50の短絡により微分値が閾値に達した際に、電力変換回路24から負荷50側への電流の流れを遮断できる。したがって、電力変換回路24に残留する電力が負荷50側へと放電されることを防げる。これにより、電源回路20の各素子を保護しやすい。
【0037】
(3)上記実施形態において、第2スイッチ31は、高電位電源ラインLA上において、バッテリ21と電力変換回路24との間に位置している。そして、微分値が閾値に達したときには、スイッチ制御処理部45は、まず第2スイッチ31をオフ状態に切り替えた後に、第1スイッチ30をオフ状態に切り替える。これにより、例えば、負荷50の短絡により微分値が閾値に達した際に、電力変換回路24に電力が残留しにくくなる。そのため、第1スイッチ30をオフ状態に切り替えたときに、第1スイッチ30に対してバッテリ21の電力が放電されることが軽減される。したがって、第1スイッチ30を保護できる。
【0038】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
(電源回路の変更例について)
・電源回路20は、複数のバッテリ21を備えていてもよい。この場合、複数のバッテリ21を1つの直流電源とみなして、制御装置40及び電圧異常検知プログラムPGを適用できる。また、複数のバッテリ21ごとに制御装置40及び電圧異常検知プログラムPGを適用することもできる。
【0040】
・負荷50は、上記実施形態で例示したサーバ等に限らない。例えば、負荷50は、インバータであってもよい。このように、電源装置10は、インバータを介して交流電力により作動する装置に電力を供給することもできる。
【0041】
・電源回路20は、ヒューズ23を備えている必要はない。また、複数のヒューズ23を備えていてもよい。
・電源回路20は、他の素子を備えていてもよい。例えば、電源回路20は、バッテリ21からの電圧の変動を抑制するためのコンデンサ及びインダクタ、電圧を調整するための抵抗等を備えていてもよい。
【0042】
・電力変換回路24は、上記実施形態の例に限らない。例えば、双方向コンバータ等であってもよい。
・電源回路20は、第1スイッチ30のみ有していてもよいし、第2スイッチ31のみ有していてもよい。制御装置40によりノイズと負荷50側の異常を区別して、負荷50側の異常を検知した際に、高電位電源ラインLA上の電流の流れを遮断できれば、電源回路20の各素子を保護しやすいという効果は得られる。
【0043】
・各スイッチの構成は、上記実施形態の例に限られない。制御装置40からの制御信号により、オン状態及びオフ状態が切り替え可能であればよい。例えば、各スイッチは、直列又は並列に接続された複数のスイッチング素子を備えていてもよい。また、スイッチング素子は、N型のMOSFETに限らず、P型のMOSFETであってもよいし、他のトランジスタであってもよい。
【0044】
(電源回路の制御装置及びプログラムの変更例について)
・電源装置10は、制御装置40を複数備えていてもよい。例えば、スイッチ毎に制御装置40を備えていてもよい。
【0045】
・制御装置40は、MCUで実装されるものでなくてもよい。例えば、積分処理部44及び微分処理部43は、アナログ回路であってもよい。なお、積分処理部44をアナログ回路で構成する場合、積分処理部44の一例は、高電位電源ラインLAとグランド電位との間に接続されたコンデンサである。
【0046】
・積分処理において、単位時間間隔は上記実施形態の例に限らない。抑制したいノイズの周波数等に合わせて、適宜変更可能である。
・スイッチ制御処理において、各スイッチをオフ状態に切り替える条件として、微分値の絶対値を算出しなくてもよく、実質的に、微分値の絶対値が、正の値としての閾値を超えていればよい。例えば、微分値が負の値であるとき、当該微分値が予め定められた負の値の閾値を下回ることを条件としてもよい。この場合、微分値の絶対値は、閾値の絶対値を超える。そのため、実質的に、微分値の絶対値が閾値を超えるといえる。
【0047】
・スイッチ制御処理において、閾値は、予め設定された固定値であってもよいし、電圧異常検知制御のいずれかのステップで都度算出される変動値であってもよい。
・スイッチ制御処理において、ステップS14及びステップS15のうち少なくとも一方を行えばよい。すなわち、第1スイッチ30のみをオフに切り替えてもよいし、第2スイッチ31のみをオフに切り替えてもよい。
【0048】
・スイッチ制御処理において、ステップS14及びステップS15の順序は問わない。すなわち、第1スイッチ30をオフ状態にしてから、第2スイッチ31をオフ状態にしてもよい。電源回路20が、3つ以上のスイッチを有している場合も同様である。すなわち、複数のスイッチをオフ状態に切り替える順序は問わない。
【0049】
ただし、電源回路20がスイッチを複数有している場合、高電位電源ラインLA上において、バッテリ21に近い側からスイッチをオフ状態に切り替えることが好ましい。これにより、バッテリ21と高電位出力端子22Aとの間に残留する電力を放電しながら、高電位電源ラインLA上の電流の流れを遮断できる。したがって、電源回路20の各素子を保護しやすい。
【0050】
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、
前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、
前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、
を備え、
前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える電源装置。
【0051】
[2]
前記スイッチは、前記電源ライン上の前記電力変換回路と前記負荷に対する出力端子との間に位置する[1]に記載の電源装置。
【0052】
[3]
前記スイッチを第1スイッチとしたとき、
前記電源ライン上において、前記バッテリと前記電力変換回路との間に位置する第2スイッチをさらに備え、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値に達した場合に、前記第2スイッチをオフ状態に切り替えた後に、前記第1スイッチをオフ状態に切り替える[2]に記載の電源装置。
【0053】
[4]
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える[1]~[3]のいずれか1つに記載の電源装置。
【0054】
[5]
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える[1]~[4]のいずれか1つに記載の電源装置。
【0055】
[6]
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
を備えた電源回路に適用され、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理部と、
前記微分処理部が出力した前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理部と、
前記スイッチをオフ状態に切り替え可能なスイッチ制御処理部と、
を備え、
前記微分処理部は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力し、
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える電源回路の制御装置。
【0056】
[7]
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える[6]に記載の、電源回路の制御装置。
【0057】
[8]
前記スイッチ制御処理部は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える[6]又は[7]に記載の、電源回路の制御装置。
【0058】
[9]
電源ラインを介して負荷に電力を供給可能なバッテリと、
前記電源ライン上に位置し、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能なスイッチと、
前記電源ライン上に位置する電力変換回路と、
前記負荷への出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記スイッチを切り替え可能な制御装置と、
を備えた電源装置に適用され、
前記制御装置に、
前記出力電圧に応じた微分値を出力する微分処理と、
前記微分処理において出力された前記微分値を、単位時間間隔で定積分した結果である積分値を出力する積分処理と、
前記微分値が閾値に達した場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替えるスイッチ制御処理と、
を実行させ、
前記微分処理は、前記出力電圧と前記積分値との差を微分した値を前記微分値として出力する処理であるプログラム。
【0059】
[10]
前記スイッチ制御処理は、前記微分値が前記閾値以上となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える処理である[9]に記載のプログラム。
【0060】
[11]
前記スイッチ制御処理は、前記微分値が前記閾値以下となった場合に、前記スイッチをオフ状態に切り替える処理である[9]又は[10]に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0061】
10…電源装置
20…電源回路
21…バッテリ
LA…高電位電源ライン
22A…高電位出力端子
22B…低電位出力端子
24…電力変換回路
25…電圧検出部
30…第1スイッチ
31…第2スイッチ
40…制御装置
43…微分処理部
44…積分処理部
45…スイッチ制御処理部
50…負荷
PG…電圧異常検知プログラム