(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159037
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20241031BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074767
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】増田 慎子
(72)【発明者】
【氏名】森井 浩二郎
(57)【要約】
【課題】ライダが人力駆動車を快適に駆動させることができる人力駆動車用の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、人力駆動力が入力されるクランクと、前記人力駆動力によって駆動される駆動輪と、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するように構成される変速装置と、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記クランクの抗力を調整するように構成される抗力調整部と、を含み、前記制御装置は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力が減少すると前記抗力を増加するように前記抗力調整部を制御するように構成される制御部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、
人力駆動力が入力されるクランクと、
前記人力駆動力によって駆動される駆動輪と、
前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するように構成される変速装置と、
前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記クランクの抗力を調整するように構成される抗力調整部と、を含み、
前記制御装置は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力が減少すると前記抗力を増加するように前記抗力調整部を制御するように構成される制御部を備える、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力の変化量に応じて、前記抗力が増加するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力の変化量が第1閾値以上になると前記抗力の増加を開始するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1閾値は、2Nm以上、かつ、6Nm以下である、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記抗力調整部が前記抗力を調整する場合、前記比率の変更を開始する前からの前記抗力の変化量が所定変化量以下になるように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記変速装置は、変速信号に応じて前記比率の変更を開始する電動変速装置を含み、
前記比率が変更される場合は、前記制御部が前記変速信号を受信した時を含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度に応じて、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の変化量に応じて、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記比率が変更される場合は、前記比率が増加される場合を含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の減少量が第2閾値以上になると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記比率が変更される場合は、前記比率が減少される場合を含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の増加量が第3閾値以上になると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、所定期間が経過すると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記抗力調整部は、前記人力駆動力が入力されるように構成される電気モータを含み、
前記制御部は、前記抗力を調整するために前記電気モータの回転トルクを調整するように前記電気モータを制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項15】
前記電気モータは、回生制動によって前記回転トルクを発生させる、請求項14に記載の制御装置。
【請求項16】
前記電気モータは、前記人力駆動車の推進をアシストするように構成される、請求項14に記載の制御装置。
【請求項17】
前記電気モータは、クラッチを介して前記クランクに接続される、請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記人力駆動車の推進をアシストするように前記電気モータを制御する場合に前記比率が変更されると、前記電気モータによる前記人力駆動車の推進のアシストを停止するように構成される、請求項16に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、人力駆動車の一例を開示する。特許文献1の人力駆動車は、クランクの回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率を変更する変速装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、ライダが人力駆動車を快適に駆動させることができる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、人力駆動力が入力されるクランクと、前記人力駆動力によって駆動される駆動輪と、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するように構成される変速装置と、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記クランクの抗力を調整するように構成される抗力調整部と、を含み、前記制御装置は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力が減少すると前記抗力を増加するように前記抗力調整部を制御するように構成される制御部を備える。
第1側面の制御装置によれば、比率が変更される場合に抗力が増加するため、人力駆動車のライダが、比率が変更される場合に抗力の減少を感じにくい。したがって、比率が変更される場合であっても、ライダは人力駆動車を快適に駆動させることができる。また、第1側面の制御装置によれば、比率が変更される場合に抗力が増加するため、比率が変更される場合にクランクの回転速度の急激な増加を抑制できる。比率が変更される場合にクランクの回転速度の急激な増加が抑制されることによって、変速装置による比率を変更する動作が好適に行われる。したがって、変速性能の低下が抑制されるため、制御装置は好適に比率を変更できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力の変化量に応じて、前記抗力が増加するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第2側面の制御装置によれば、比率が変更される場合に、人力駆動力の変化量に応じて抗力が増加するため、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0007】
本開示の第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記比率が変更される場合、前記人力駆動力の変化量が第1閾値以上になると前記抗力の増加を開始するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第3側面の制御装置によれば、比率が変更される場合、かつ、人力駆動力の変化量が第1閾値以上の場合に、抗力を増加できる。したがって、比率が変更される場合、かつ、人力駆動力の変化量が第1閾値よりも小さい場合は、制御部における処理の負荷を軽減できる。
【0008】
本開示の第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記第1閾値は、2Nm以上、かつ、6Nm以下である。
第4側面の制御装置によれば、比率が変更される場合、かつ、人力駆動力の変化量が2Nm以上、かつ、6Nm以下の場合に、抗力を増加できるので、ライダは抗力の減少をさらに感じにくい。
【0009】
本開示の第1側面から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部が前記抗力を調整する場合、前記比率の変更を開始する前からの前記抗力の変化量が所定変化量以下になるように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第5側面の制御装置によれば、比率が変更される場合に抗力の変化量が所定変化量以下に維持されるため、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0010】
本開示の第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記変速装置は、変速信号に応じて前記比率の変更を開始する電動変速装置を含み、前記比率が変更される場合は、前記制御部が前記変速信号を受信した時を含む。
第6側面の制御装置によれば、変速信号を受信した時に、抗力を調整するように抗力調整部を制御できるため、電動変速装置を含む人力駆動車において、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0011】
本開示の第1側面から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度に応じて、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第7側面の制御装置によれば、クランクの回転速度に応じて抗力の調整を停止できるので、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0012】
本開示の第7側面に従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の変化量に応じて、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第8側面の制御装置によれば、クランクの回転速度の変化量に応じて抗力の調整を停止できるので、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0013】
本開示の第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記比率が変更される場合は、前記比率が増加される場合を含む。
第9側面の制御装置によれば、比率が増加される場合に、クランクの回転速度の変化量に応じて抗力の調整を好適に停止できるので、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0014】
本開示の第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の減少量が第2閾値以上になると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
比率が増加され、かつ、人力駆動力が一定の場合、比率の増加が完了すると、クランクの回転速度は減少する。第10側面の制御装置によれば、クランクの回転速度の減少量が第2閾値以上になると、抗力の調整を停止するため、比率の増加の完了後に、抗力の調整を停止できる。
【0015】
本開示の第8側面から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記比率が変更される場合は、前記比率が減少される場合を含む。
第11側面の制御装置によれば、比率が減少される場合に、クランクの回転速度の変化量に応じて抗力の調整を停止できるので、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0016】
本開示の第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、前記クランクの回転速度の増加量が第3閾値以上になると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
比率が減少され、かつ、人力駆動力が一定の場合、比率の減少が完了すると、クランクの回転速度は増加する。第12側面の制御装置によれば、クランクの回転速度の増加量が第3閾値以上になると、抗力の調整を停止するため、比率の減少の完了後に、抗力の調整を停止できる。
【0017】
本開示の第1側面から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記抗力調整部によって前記抗力が調整された後、所定期間が経過すると、前記抗力の調整を停止するように前記抗力調整部を制御するように構成される。
第13側面の制御装置によれば、比率の変更を開始してから所定期間が経過すると抗力の調整を停止できるため、ライダは人力駆動車をさらに快適に駆動させることができる。
【0018】
本開示の第1側面から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記抗力調整部は、前記人力駆動力が入力されるように構成される電気モータを含み、前記制御部は、前記抗力を調整するために前記電気モータの回転トルクを調整するように前記電気モータを制御する。
第14側面の制御装置によれば、電気モータによって抗力を好適に調整できる。
【0019】
本開示の第14側面に従う第15側面の制御装置において、前記電気モータは、回生制動によって前記回転トルクを発生させる。
第15側面の制御装置によれば、回生制動によって抗力を好適に調整できる。
【0020】
本開示の第14側面または第15側面に従う第16側面の制御装置において、前記電気モータは、前記人力駆動車の推進をアシストするように構成される。
第16側面の制御装置によれば、電気モータによって人力駆動力の推進と抗力の調整との両方を行える。
【0021】
本開示の第16側面に従う第17側面の制御装置において、前記電気モータは、クラッチを介して前記クランクに接続される。
第17側面の制御装置によれば、クラッチによって抗力を電気モータからクランクに好適に伝達できる。
【0022】
本開示の第16側面または第17側面に従う第18側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の推進をアシストするように前記電気モータを制御する場合に前記比率が変更されると、前記電気モータによる前記人力駆動車の推進のアシストを停止するように構成される。
第18側面の制御装置によれば、比率が変更される場合に電気モータによる人力駆動車の推進のアシストが停止されるため、電気モータが好適に抗力を増加できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、ライダが人力駆動車を快適に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図である。
【
図2】
図1の人力駆動車の動力伝達経路を示す模式図である。
【
図3】
図1の人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の制御部による抗力調整部の制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の制御部による抗力調整部の制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の人力駆動車において、人力駆動力、抗力調整部による抗力、および、変速信号の経時的な変化の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】変更例の人力駆動車の動力伝達経路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
図1から
図6を参照して、実施形態の人力駆動車用の制御装置50を説明する。
【0026】
人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を電動アシスト自転車として説明する。
【0027】
人力駆動車10は、クランク12と、駆動輪14と、変速装置16と、抗力調整部18と、を含む。クランク12には、人力駆動力が入力される。駆動輪14は、人力駆動力によって駆動される。人力駆動車10は、例えば、フレーム10Aと、後輪20Aと、前輪20Bと、を含む。本実施形態では、駆動輪14は、人力駆動車10の後輪20Aであるが、駆動輪14が人力駆動車10の前輪20Bであってもよい。クランク12は、人力駆動力が入力されることによって回転する。人力駆動車10が前進する方向の人力駆動力が、クランク12に入力されることによって、クランク12が第1回転方向R1に回転する。
【0028】
人力駆動車10は、クランク軸22と、出力部24と、を含む。クランク12は、例えば、クランク軸22の両端部に接続される一対のクランクアーム12Aと、一対のクランクアーム12Aのそれぞれに設けられるペダル12Bと、を含む。出力部24は、クランク軸22と一体に回転するようにクランク軸22に取り付けられる。クランク12は、ペダル12Bから人力駆動力が入力される。クランク12に入力されたライダの人力駆動力は、クランク軸22を介して出力部24に伝達される。出力部24は、クランク軸22から伝達された人力駆動力を出力する。
【0029】
人力駆動車10は、例えば、第1回転体26と、連結部材28と、第2回転体30と、ワンウェイクラッチ32と、を含む。第1回転体26は、出力部24から人力駆動力が入力される。第1回転体26は、人力駆動力によって出力部24と一体に回転するように構成される。連結部材28は、第1回転体26と第2回転体30とを連結するように構成される。連結部材28は、第1回転体26から第2回転体30へ人力駆動力を伝達する。第2回転体30は、ワンウェイクラッチ32を介して駆動輪14に人力駆動力を出力するように構成される。ワンウェイクラッチ32は、第2回転体30が前転した場合に駆動輪14を前転させ、第2回転体30が後転した場合に駆動輪14を後転させないように構成される。ワンウェイクラッチ32は、例えば、人力駆動車10のリアハブに設けられる。
【0030】
例えば、第1回転体26は少なくとも1つのスプロケットを含み、連結部材28はチェーンを含み、第2回転体30は少なくとも1つのスプロケットを含む。第1回転体26がプーリを含み、連結部材28がベルトを含み、第2回転体30がプーリを含んでもよい。本実施形態では、第1回転体26はフロントスプロケット26Aを含み、連結部材28はチェーン28Aを含み、第2回転体30は、複数のリアスプロケット30Aを含む。本実施形態では、出力部24は、フロントスプロケット26Aが取り付けられるようにクランク軸22のまわりに設けられるスプロケット取付部を含む。
【0031】
変速装置16は、クランク12の回転速度に対する駆動輪14の回転速度の比率を変更するように構成される。クランク12の回転速度に対する駆動輪14の回転速度の比率は、例えば、人力駆動車10の変速比を含む。クランク12の回転速度に対する駆動輪14の回転速度の比率は、例えば、第1回転体26の回転速度に対する第2回転体30の回転速度の比率を含む。クランク12の回転速度に対する駆動輪14の回転速度の比率は、例えば、フロントスプロケット26Aの歯数の逆数と、チェーン28Aが掛けられるリアスプロケット30Aの歯数の逆数との比率に対応する。比率と、駆動輪14の回転速度と、クランク12の回転速度との関係は、式(1)によって表される。式(1)において、Rは、比率を示す。式(1)において、Wは、駆動輪14の回転速度を示す。式(1)において、Cは、クランク12の回転速度を示す。
式(1):R=W(rpm)/C(rpm)
【0032】
変速装置16は、例えば、電動変速装置34を含む。変速装置16は、変速機34Aと、変速機34Aを駆動するように構成される電動アクチュエータ34Bとを含む。変速機34Aは、例えば、フロントディレーラ、リアディレーラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機34Aは、例えば、フロントディレーラ、リアディレーラ、および、内装変速機の少なくとも2つの組合せによって構成されてもよい。本実施形態の変速装置16は、リアディレーラを含む。本実施形態の変速装置16は、チェーン28Aが掛けられるリアスプロケット30Aを、歯数が異なるリアスプロケット30Aに変更することによって比率を変更する。
【0033】
変速装置16による比率の変更は、例えば、アップシフト変速およびダウンシフト変速を含む。アップシフト変速では、変速装置16は、比率が増加するように比率を変更する。変速装置16は、例えば、チェーン28Aが掛けられるリアスプロケット30Aを、歯数が少ないリアスプロケット30Aに変更することによってアップシフト変速する。ダウンシフト変速では、変速装置16は、比率が減少するように比率を変更する。変速装置16は、例えば、チェーン28Aが掛けられるリアスプロケット30Aを、歯数が多いリアスプロケット30Aに変更することによってダウンシフト変速する。
【0034】
抗力調整部18は、クランク12に入力される人力駆動力に対するクランク12の抗力を調整するように構成される。抗力は、例えば、第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に向かってクランク12に働く力である。抗力は、例えば、クランク12に入力される人力駆動力に対して、人力駆動力の伝達経路上において発生する抵抗である。抗力は、例えば、連結部材28が第2回転体30を回転させる場合に発生する力を含む。抗力調整部18は、例えば、抗力が増加するようにクランク12の抗力を調整するように構成される。
【0035】
抗力調整部18は、例えば、人力駆動力が入力されるように構成される電気モータ36を含む。電気モータ36は、例えば、クランク12に接続される。電気モータ36は、例えば、回生制動によって回転トルクを発生させる。クランク12の回転トルクが電気モータ36に伝達されることによって、クランク12の抗力が増加するような回転トルクが、人力駆動力の伝達経路において電気モータ36からクランク12までの間に発生する。電気モータ36は、例えば、回生制動によって発電するように構成される。クランク12の回転トルクが電気モータ36に伝達されることによって、電気モータ36が回生制動によって発電する。回生制動によって発電した電力は、バッテリ46およびバッテリ46とは異なる追加バッテリの少なくとも1つに充電されてもよい。抗力調整部18は、電気モータ36に回生制動させることによって、抗力を増加させるように構成される。抗力調整部18は、制御部52のインバータ回路を介して、電気モータ36に電気的に接続される制動抵抗器を含んでいてもよい。
【0036】
電気モータ36は、例えば、人力駆動車10の推進をアシストするように構成される。電気モータ36は、クランク12に入力される人力駆動力に応じてアシスト力を発生するように構成される。本実施形態では、電気モータ36が、抗力の調整およびアシスト力の付加の両方を行う。本実施形態では、電気モータ36にアシスト力を発生させる場合、電気モータ36の回転軸がクランク12の第1回転方向R1と対応する方向に回転するように電気モータ36に電力が供給される。本実施形態では、電気モータ36に抗力を発生させる場合、電気モータ36への電力の供給が停止される。電気モータ36の回転軸がクランク12の第1回転方向R1と対応する方向に回転するように電気モータ36に電力が供給された状態において、電気モータ36への電力の供給が停止すると、アシスト力が減少し、かつ、抗力が増加する。電気モータ36に電力が供給された状態において、電気モータ36への電力の供給が停止すると、電気モータ36の慣性モーメントによって、アシスト力が徐々に減少し、かつ、抗力は徐々に増加する。
【0037】
人力駆動車10は、例えば、人力駆動車10の推進をアシストするように構成されるドライブユニット38を含む。電気モータ36は、例えば、ドライブユニット38に含まれる。ドライブユニット38は、例えば、ハウジング38Aを含む。電気モータ36は、例えば、ハウジング38Aに収容される。
【0038】
抗力調整部18は、例えば、人力駆動力の伝達経路において変速装置16よりも上流側に接続されるように構成される。電気モータ36は、例えば、人力駆動力の伝達経路において第2回転体30よりも上流側に接続されるように構成される。本実施形態では、電気モータ36は、出力部24に接続される。電気モータ36は、第2回転体30よりも上流側において伝達経路を構成する出力部24以外の部材に接続されてもよい。第2回転体30よりも上流側において伝達経路を構成する出力部24以外の部材は、例えば、クランク軸22、第1回転体26、および、連結部材28を含む。本実施形態では、電気モータ36は、人力駆動力の伝達経路においてクランク12に直結するように構成される。例えば、電気モータ36とクランク12との間には、ワンウェイクラッチは設けられない。電気モータ36とクランク12との間には、減速機または増速機が設けられてもよい。減速機または増速機が設けられない場合、電気モータ36の回転軸は、例えば、クランク12と一体に回転する。
【0039】
人力駆動車10は、例えば、変速操作装置40を含む。変速操作装置40は、例えば、変速装置16に比率を変更させるように構成される。変速操作装置40は、例えば、ライダによって操作可能な操作部40Aを含む。操作部40Aは、例えば、レバー、スイッチ、および、ボタンの少なくとも1つを含む。
【0040】
変速操作装置40は、例えば、操作部40Aの操作に応じて変速信号を生成する。変速操作装置40は、生成した変速信号を出力するように構成される。変速信号は、アップシフト変速に関するアップシフト変速信号、および、ダウンシフト変速に関するダウンシフト変速信号を含む。制御部52が電動変速装置34の外部に設けられる場合、制御部52は、変速信号を受信すると、電動変速装置34に変速信号を送信するように構成されてもよい。制御部52が電動変速装置34の外部に設けられる場合、変速操作装置40は、制御部52および電動変速装置34の両方に変速信号を送信するように構成されてもよい。
【0041】
人力駆動車10は、例えば、人力駆動力検出部42を含む。人力駆動力検出部42は、例えば、トルクセンサを含む。人力駆動力検出部42は、クランク12に入力される人力駆動力のトルクを検出するように構成される。人力駆動力検出部42は、例えば、クランク軸22に設けられる。人力駆動力検出部42は、歪センサまたは磁歪センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。人力駆動力検出部42が歪センサを含む場合、歪センサは、好ましくは、動力伝達経路に含まれる回転体の外周部に設けられる。人力駆動力検出部42は、例えば、クランクアーム12Aに取り付けられるパワーメータを含んでもよい。
【0042】
人力駆動車10は、例えば、回転速度検出部44を含む。回転速度検出部44は、クランク12の回転速度を検出する。回転速度検出部44は、例えば、クランク12と一体に回転する磁石と、フレーム10Aに取り付けられる磁気センサと、を含む。回転速度検出部44の磁石は、クランクアーム12Aから第1回転体26までの間の動力伝達経路に設けられる。回転速度検出部44の磁気センサは、クランク12の回転に応じてクランク12と一体に回転する磁石の磁界を検出するように配置される。回転速度検出部44の磁気センサは、検出した磁界の強度に応じた信号を出力するように構成される。
【0043】
人力駆動車10は、例えば、バッテリ46を含む。バッテリ46は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ46は、バッテリ46と電気的に接続される他の電気部品に電力を供給する。ドライブユニット38は、バッテリ46から電力を供給される。電気モータ36は、バッテリ46から供給される電力によって動作する。バッテリ46は、電気モータ36の回生制動によって充電されるように構成されてもよい。
【0044】
人力駆動車10は、例えば、制御装置50を含む。抗力調整部18と、制御装置50と、は、例えば、抗力調整部18を制御するための人力駆動車用の制御システムを構成する。
【0045】
制御装置50は、制御部52を備える。制御部52は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部52は、複数の場所に離れて配置される複数の演算処理装置を含んでいてもよい。制御部52は、例えば、インバータ回路を含む。インバータ回路は、電気モータ36に電気的に接続される。インバータ回路は、例えば、複数のトランジスタを含む。インバータ回路は、演算処理装置と電気的に接続される。制御部52は、例えば、演算処理装置がインバータ回路を制御することによって、電気モータ36を駆動させる。制御部52は、例えば、演算処理装置がインバータ回路を制御することによって、電気モータ36による人力駆動車10に推進力を付与するための回転トルクの大きさを調整可能に構成される。制御部52は、例えば、演算処理装置が、インバータ回路を制御することによって、電気モータ36を回生制御するように構成される。制御部52は、例えば、インバータ回路を制御することによって、電気モータ36の回生制動における回転抵抗の大きさを調整可能に構成される。インバータ回路は、インバータ回路に流れる電流を検出する電流センサを有してもよい。制御部52は、演算処理装置が、例えば、電流センサの出力に応じて複数のトランジスタを制御するように構成されてもよい。
【0046】
制御装置50は、記憶部54を含む。記憶部54には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部52および記憶部54は、例えばドライブユニット38のハウジング38Aに設けられる。
【0047】
制御部52は、変速装置16、抗力調整部18、変速操作装置40、バッテリ46、人力駆動力検出部42、および、回転速度検出部44と通信ケーブルまたは無線通信装置によって通信可能に接続される。制御装置50は、例えば、電力線通信(Power Line Communication:PLC)によって、人力駆動車10に搭載される他の電気部品と通信可能である。
【0048】
制御部52は、電動変速装置34に比率を変更させるように変速装置16を制御するように構成されてもよい。変速操作装置40から制御部52に変速信号が入力される場合、制御部52は、例えば、変速信号に応じて電動変速装置34を制御するように構成される。制御部52は、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに応じて比率を変更するように電動変速装置34を自動で制御するように構成されてもよい。制御部52が、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに応じて比率を変更するように電動変速装置34を自動で制御するように構成される場合、制御部52は、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに応じて変速信号を生成し、生成した変速信号に応じて電動変速装置34を制御するように構成されてもよい。人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つは、例えば、クランク12の回転速度、車速、人力駆動力、および、人力駆動車10の走行路の勾配の少なくとも1つを含む。制御部52は、例えば、クランク12の回転速度が所定範囲内に維持されるように、比率を変更するように電動変速装置34を制御するように構成される。
【0049】
電動変速装置34は、例えば、変速信号に応じて比率の変更を開始する。電動変速装置34は、例えば、変速信号を受信すると、ただちに電動アクチュエータ34Bを駆動する。電動変速装置34は、変速信号を受信すると、待機期間の経過後に、電動アクチュエータ34Bを駆動してもよい。待機期間は、例えば、予め設定される時間、人力駆動力、クランク12の回転速度、および、クランク12の回転角度の少なくとも1つに応じて決定される。
【0050】
制御部52は、比率が変更される場合、抗力を調整するように抗力調整部18を制御するように構成される。比率が変更される場合は、例えば、制御部52が変速信号を受信した時を含む。制御部52は、例えば、変速信号を受信すると、クランク12に入力される人力駆動力に応じて抗力を調整するように抗力調整部18を制御する。制御部52は、例えば、抗力を調整するために電気モータ36の回転トルクを調整するように電気モータ36を制御する。制御部52は、電気モータ36が回生制動するように電気モータ36を制御することによって、抗力を調整するように電気モータ36を制御する。電気モータ36の回転トルクは、制御部52のインバータ回路が制御されることによって制御される。制御部52は、演算処理装置によってインバータ回路を制御することによって、電気モータ36の回転トルクの大きさを調整するように構成される。制御部52は、電気モータ36に人力駆動車10の推進のアシスト時とは反対の方向へのトルクを発生させることによって、抗力を調整してもよい。
【0051】
抗力の調整の開始は、例えば、回生制動のオンである。抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動していた場合、制御部52は、例えば、電気モータ36への電力の供給を停止することによって、抗力の調整を開始する。抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動していない場合、制御部52は、抗力の調整を開始しても、電気モータ36への電力の供給の停止を維持するように構成されてもよい。
【0052】
制御部52は、比率が変更される場合、人力駆動力が減少すると抗力を増加するように抗力調整部18を制御するように構成される。人力駆動力は、例えば、クランク12に入力される人力駆動力のトルクである。比率が変更される場合は、例えば、比率が増加される場合を含む。比率が増加される場合、変速装置16はアップシフト変速する。比率が変更される場合は、例えば、比率が減少される場合を含む。比率が減少される場合、変速装置16はダウンシフト変速する。制御部52は、例えば、電気モータ36が回生制動するように電気モータ36を制御することによって、抗力を増加するように抗力調整部18を制御する。制御部52は、例えば、演算処理装置が、インバータ回路を制御することによって電気モータ36の回生制動による回転抵抗を増加させる。
【0053】
制御部52は、例えば、人力駆動車10の推進をアシストするように電気モータ36を制御する場合に比率が変更されると、電気モータ36による人力駆動車10の推進のアシストを停止するように構成される。制御部52は、例えば、電気モータ36への電力の供給を停止するとともに、電気モータ36が回生制動するように電気モータ36を制御する。制御部52は、例えば、インバータ回路への電気モータ36を駆動させるための電力の供給を停止した後、電気モータ36が回生制動するように電気モータ36を制御する。
【0054】
比率が変更される場合、人力駆動力の伝達経路において瞬間的な抵抗の減少が生じることがある。例えば、チェーン28Aの移動時にチェーン28Aがリアスプロケット30Aから外れた場合において、瞬間的な抵抗の減少が生じることがある。人力駆動力の伝達経路において抵抗が減少すると、クランク12に入力される人力駆動力のトルクに対してクランク12の抗力が小さくなることによって、クランク12が空転する場合がある。制御部52は、比率が変更される場合、クランク12の空転が抑制されるように抗力を調整するように抗力調整部18を制御するように構成される。抗力調整部18によって抗力が増加されると、クランク12の回転速度の上昇が抑制されるため、クランク12の空転が抑制される。
【0055】
抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動していない場合、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動している場合よりも、変速装置16に伝達されるトルクは小さい。したがって、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動していない場合では、比率が変更される場合にクランク12の空転が生じにくい。このため、抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生するように駆動していない場合、電気モータ36への電力の供給の停止が維持されるが、変速装置16に伝達されるトルクが小さいため、好適に比率が変更されやすい。
【0056】
制御部52は、例えば、比率が変更される場合、人力駆動力の変化量に応じて、抗力が増加するように抗力調整部18を制御するように構成される。制御部52は、例えば、比率が変更される場合、人力駆動力の変化量が第1閾値以上になると抗力の増加を開始するように抗力調整部18を制御するように構成される。制御部52は、例えば、比率が変更される場合、人力駆動力の減少量が第1閾値以上になると抗力の増加を開始するように抗力調整部18を制御する。制御部52は、例えば、変速信号が入力されると、人力駆動力に関する情報を取得する。制御部52は、例えば、変速信号が入力されると、人力駆動力検出部42によって検出された最新の人力駆動力に関する情報を取得する。制御部52は、例えば、比率が変更される場合に、変速信号が入力されてからの人力駆動力の減少量が第1閾値以上になると抗力の増加を開始するように抗力調整部18を制御する。
【0057】
第1閾値は、例えば、人力駆動車10のライダが、比率が変更される場合にクランク12の抗力に違和感を覚えにくい値が設定される。第1閾値は、比率が変更される場合のクランク12の空転発生を推定可能な値が設定されてもよい。第1閾値は、例えば、2Nm以上、かつ、6Nm以下である。第1閾値は、例えば、3Nm以上、かつ、5Nm以下である。アップシフト変速時における第1閾値は、ダウンシフト変速時における第1閾値と、同じである。アップシフト変速時における第1閾値は、ダウンシフト変速時における第1閾値とは、異なっていてもよい。
【0058】
制御部52は、例えば、比率が変更される場合、人力駆動力の変化量が第1閾値よりも小さいと、抗力の調整を開始しないように構成される。制御部52は、例えば、人力駆動力の変化量が第1閾値よりも小さいまま、変速信号を入力されてからの経過期間が調整判定期間以上となると、再び比率の変更が行われるまで抗力の調整を行わないように構成される。調整判定期間は、例えば、比率の変更の開始から完了までに必要な時間に応じて設定される。調整判定期間は、比率が変更される場合に発生し得るクランク12が空転する最大時間に応じて設定されてもよい。調整判定期間は、例えば、0.01秒以上、かつ、4秒以下である。調整判定期間は、例えば、0.1秒以上、かつ、3秒以下である。
【0059】
制御部52は、例えば、抗力調整部18が抗力を調整する場合、比率の変更を開始する前からの抗力の変化量が所定変化量以下になるように抗力調整部18を制御するように構成される。比率が変更される場合における人力駆動力の変化量は、比率が変更される場合における人力駆動力の伝達経路における抵抗の変化量に対応する。比率が変更される場合に、人力駆動力の伝達経路における抵抗が減少すると、人力駆動力のトルクが減少する。制御部52は、例えば、抗力調整部18が抗力を調整する場合、比率の変更を開始する前からの抗力の減少が抑制されるように抗力調整部18によって抗力を増加させる。所定変化量は、例えば、第1閾値に対応する。制御部52は、例えば、人力駆動力の減少量が第1閾値以上になると、抗力を増加させるように抗力調整部18を制御することによって、抗力の所定変化量よりも大きな減少を抑制する。
【0060】
制御部52は、例えば、比率が変更される場合、人力駆動力の変化量が予め定める値になるように、抗力を調整するように抗力調整部18を制御する。予め定める値は、予め定める範囲であってもよい。予め定める範囲の下限値は、第1閾値であってもよい。比率が変更される場合、制御部52は、例えば、演算処理装置が、電気モータ36の回転抵抗を変更するようにインバータ回路を制御することによって抗力を調整する。制御部52は、例えば、演算処理装置が、インバータ回路に含まれる電流センサの出力に応じて、回転抵抗を調整することによって、抗力を調整する。制御部52は、例えば、人力駆動力の減少量が第1閾値よりも大きくなると電気モータ36の回転抵抗が増加するように演算処理装置が、インバータ回路を制御することによって、抗力を増加させる。制御部52は、例えば、人力駆動力の減少量が第1閾値よりも小さくなると電気モータ36の回転抵抗が減少するように演算処理装置が、インバータ回路を制御することによって、抗力を減少させる。制御部52は、例えば、人力駆動力が比率の変更を開始する前の人力駆動力と同じになるように抗力調整部18を制御するように構成されてもよい。
【0061】
制御部52は、抗力調整部18による抗力の調整を行った後、抗力調整部18による抗力の調整を停止するように構成される。制御部52は、例えば、回生制動をオフすることによって抗力調整部18による抗力の調整を停止する。制御部52は、抗力の調整を停止する場合、抗力が小さくなるように電気モータ36を制御した後に、回生制動をオフしてもよく、抗力の大きさに関わらずに回生制動をオフしてもよい。抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生させるように駆動していた場合、制御部52は、アシスト力を発生させるように電気モータ36を駆動させることによって抗力の調整を停止してもよい。抗力の調整を開始する前に、電気モータ36がアシスト力を発生させるように駆動していた場合、制御部52は、回生制動をオフしてから、アシスト力を発生させるように電気モータ36を駆動させてもよい。
【0062】
制御部52は、例えば、予め定める条件が満たされると、抗力調整部18による抗力を減少させることによって、抗力調整部18による抗力の調整を停止するように構成される。制御部52は、例えば、予め定める条件が満たされると、抗力調整部18による抗力を徐々に減少させる。抗力調整部18は、予め定める条件が満たされると、制御部52による抗力調整部18の抗力を調整する処理が停止されることによって、抗力調整部18による抗力が減少するように構成されてもよい。予め定める条件は、以下のAからCのいずれかである。
(A)抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度の減少量が第2閾値以上になる。
(B)抗力調整部18によって前記抗力が調整された後、クランク12の回転速度の増加量が第3閾値以上になる。
(C)抗力調整部18によって前記抗力が調整された後、所定期間T1が経過する。
予め定める条件は、(A)、(B)、および、(C)の1つであってもよく、2つ以上を含んでいてもよい。本実施形態では、予め定める条件は、(A)、(B)、および、(C)の全てを含む。制御部52は、人力駆動力の変化量が予め定める値になるように、抗力を調整するように抗力調整部18を制御する場合、予め定める条件が満たされると、人力駆動力の変化量に関わらずに、抗力を減少するように抗力を減少させるように構成されてもよい。
【0063】
制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度に応じて、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度の変化量に応じて、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。
【0064】
制御部52は、例えば、変速信号が入力されると、クランク12の回転速度を取得する。制御部52は、例えば、変速信号が入力されると、回転速度検出部44によって検出された最新のクランク12の回転速度に関する情報を取得する。制御部52は、抗力調整部18によって抗力が調整された後に、変速信号が入力されてからクランク12の回転速度が所定閾値以上変化すると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御する。所定閾値は、例えば、比率の変更が完了した場合のクランク12の回転速度の予測値に応じて設定される。
【0065】
比率が増加される場合、制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度の減少量が第2閾値以上になると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。第2閾値は、例えば、4rpm以上、かつ、11rpm以下である。第2閾値は、例えば、5rpm以上、かつ、10rpm以下である。第2閾値は、例えば、変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つに応じて設定される。変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つと、第2閾値と、の関係は、例えば、記憶部54に記憶される。
【0066】
比率が減少される場合、制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度の増加量が第3閾値以上になると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。第3閾値は、例えば、4rpm以上、かつ、11rpm以下である。第3閾値は、例えば、5rpm以上、かつ、10rpm以下である。第3閾値は、第2閾値と同じでもよく、異なっていてもよい。第3閾値は、例えば、変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つに応じて設定される。変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つと、第3閾値と、の関係は、例えば、記憶部54に記憶される。
【0067】
制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、所定期間T1が経過すると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。制御部52は、例えば、抗力調整部18によって抗力が調整された後、クランク12の回転速度に応じて抗力の調整を停止しない場合に、所定期間T1が経過すると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御する。
【0068】
制御部52は、抗力調整部18によって抗力が調整された後、変速信号を入力されてからの経過期間が所定期間T1以上になると、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御するように構成される。所定期間T1は、例えば、0.01秒以上、かつ、4秒以下である。所定期間T1は、例えば、0.1秒以上、かつ、3秒以下である。所定期間T1は、例えば、比率の変更が開始してから完了するまでの期間に応じて設定される。所定期間T1は、例えば、変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つに応じて設定されてもよい。変更前の比率、および、変更後の比率の少なくとも1つと、所定期間T1と、の関係は、例えば、記憶部54に記憶される。所定期間T1は、調整判定期間と同じでもよく、調整判定期間と異なっていてもよい。
【0069】
図4および
図5を参照して、制御部52が抗力を調整するように抗力調整部18を制御する処理を説明する。制御部52は、例えば、制御部52に電力が供給されると、ステップS11の処理を開始する。制御部52は、例えば、
図4および
図5の処理が終了すると、ステップS11の処理を再び開始する。
【0070】
ステップS11において、制御部52は、アップシフト変速信号を検出したか否かを判定する。制御部52は、例えば、変速操作装置40からアップシフト変速信号を受信した場合、または、制御部52がアップシフト変速を行うための変速信号を生成した場合に、アップシフト変速信号を検出したと判定する。制御部52は、アップシフト変速信号を検出した場合、ステップS12に移行する。
【0071】
ステップS12において、制御部52は、経過期間の計測を開始して、ステップS13に移行する。制御部52は、例えば、タイマを含む。制御部52は、ステップS12において、タイマによる計測を開始する。ステップS13において、制御部52は、人力駆動力およびクランク12の回転速度を取得して、ステップS14に移行する。制御部52は、例えば、ステップS13において取得した人力駆動力およびクランク12の回転速度を記憶部54に記憶する。ステップS14において、制御部52は、現在の人力駆動力を取得して、ステップS15に移行する。
【0072】
ステップS15において、制御部52は、人力駆動力の変化量が第1閾値以上か否かを判定する。制御部52は、ステップS13において取得した人力駆動力と、ステップS14において取得した現在の人力駆動力と、を比較して人力駆動力の変化量を算出する。制御部52は、人力駆動力の変化量が第1閾値以上である場合、ステップS16に移行する。ステップS16において、制御部52は、抗力が増加するように抗力調整部18を制御して、ステップS17に移行する。ステップS16において、制御部52は、抗力の調整を開始する。例えば、ステップS16以降において、演算処理装置がインバータ回路を制御することによって、制御部52が人力駆動力の変化量が予め定める値になるように抗力を調整する。ステップS17において、制御部52は、現在のクランク12の回転速度を取得して、ステップS18に移行する。
【0073】
ステップS18において、制御部52は、クランク12の回転速度の減少量が第2閾値以上か否かを判定する。制御部52は、ステップS13において取得したクランク12の回転速度と、ステップS17において取得した現在のクランク12の回転速度と、を比較してクランク12の回転速度の減少量を算出する。制御部52は、クランク12の回転速度の減少量が第2閾値以上である場合、ステップS19に移行する。ステップS19において、制御部52は、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御して、
図4および
図5の処理を終了する。
【0074】
制御部52は、ステップS18においてクランク12の回転速度の減少量が第2閾値よりも小さい場合、ステップS20に移行する。ステップS20において、制御部52は、経過期間が所定期間T1以上か否かを判定する。制御部52は、例えば、ステップS12において計測開始してからの経過期間が所定期間T1以上か否かを判定する。制御部52は、経過期間が所定期間T1以上である場合、ステップS19に移行する。制御部52は、経過期間が所定期間T1よりも小さい場合、ステップS17に移行する。
【0075】
制御部52は、ステップS15において人力駆動力の変化量が第1閾値よりも小さい場合、ステップS21に移行する。ステップS21において、制御部52は、経過期間が調整判定期間以上か否かを判定する。制御部52は、例えば、ステップS12において計測開始してからの経過期間が調整判定期間以上か否かを判定する。制御部52は、経過期間が調整判定期間以上である場合、
図4および
図5の処理を終了する。制御部52は、経過期間が調整判定期間よりも小さい場合、ステップS14に移行する。
【0076】
制御部52は、ステップS11においてアップシフト変速信号を検出しない場合、ステップS22に移行する。ステップS22において、制御部52は、ダウンシフト変速信号を検出したか否かを判定する。制御部52は、例えば、変速操作装置40からダウンシフト変速信号を受信した場合、または、制御部52がダウンシフト変速を行うための変速信号を生成した場合に、ダウンシフト変速信号を検出したと判定する。制御部52は、ダウンシフト変速信号を検出した場合、ステップS23に移行する。制御部52は、ダウンシフト変速信号を検出しない場合、
図4および
図5の処理を終了する。
【0077】
ステップS23において、制御部52は、経過期間の計測を開始して、ステップS24に移行する。制御部52は、ステップS23において、タイマによる計測を開始する。ステップS24において、制御部52は、人力駆動力およびクランク12の回転速度を取得して、ステップS25に移行する。制御部52は、例えば、ステップS24において取得した人力駆動力およびクランク12の回転速度を記憶部54に記憶する。ステップS25において、制御部52は、現在の人力駆動力を取得して、ステップS26に移行する。
【0078】
ステップS26において、制御部52は、人力駆動力の変化量が第1閾値以上か否かを判定する。制御部52は、ステップS24において取得した人力駆動力と、ステップS25において取得した現在の人力駆動力と、を比較して人力駆動力の変化量を算出する。制御部52は、人力駆動力の変化量が第1閾値以上である場合、ステップS27に移行する。ステップS27において、制御部52は、抗力が増加するように抗力調整部18を制御して、ステップS28に移行する。ステップS27において、制御部52は、抗力の調整を開始する。例えば、ステップS27以降において、演算処理装置がインバータ回路を制御することによって、制御部52が人力駆動力の変化量が予め定める値になるように抗力を調整する。ステップS28において、制御部52は、現在のクランク12の回転速度を取得して、ステップS29に移行する。
【0079】
ステップS29において、制御部52は、クランク12の回転速度の増加量が第3閾値以上か否かを判定する。制御部52は、ステップS24において取得したクランク12の回転速度と、ステップS28において取得した現在のクランク12の回転速度と、を比較してクランク12の回転速度の増加量を算出する。制御部52は、クランク12の回転速度の増加量が第3閾値以上である場合、ステップS30に移行する。ステップS30において、制御部52は、抗力の調整を停止するように抗力調整部18を制御して、
図4および
図5の処理を終了する。
【0080】
制御部52は、ステップS29においてクランク12の回転速度の増加量が第3閾値よりも小さい場合、ステップS31に移行する。ステップS31において、制御部52は、経過期間が所定期間T1以上か否かを判定する。制御部52は、例えば、ステップS23において計測開始してからの経過期間が所定期間T1以上か否かを判定する。制御部52は、経過期間が所定期間T1以上である場合、ステップS30に移行する。制御部52は、経過期間が所定期間T1よりも小さい場合、ステップS28に移行する。
【0081】
制御部52は、ステップS26において人力駆動力の変化量が第1閾値よりも小さい場合、ステップS32に移行する。ステップS32において、制御部52は、経過期間が調整判定期間以上か否かを判定する。制御部52は、例えば、ステップS23において計測開始してからの経過期間が調整判定期間以上か否かを判定する。制御部52は、経過期間が調整判定期間以上である場合、
図4および
図5の処理を終了する。制御部52は、経過期間が調整判定期間よりも小さい場合、ステップS25に移行する。
【0082】
図6を参照して、人力駆動力、抗力調整部18による抗力、および、変速信号の経時的な変化の一例を説明する。
図6の人力駆動力における実線は、抗力調整部18によって抗力が調整される場合の人力駆動力の経時的な変化の例を示す。
図6の人力駆動力における一点鎖線は、抗力調整部18によって抗力が調整されない場合の人力駆動力の経時的な変化の例を示す。
【0083】
図6の変速信号における受信は、制御部52が変速信号を受信した状態である。変速信号が受信した状態は、例えば、変速装置16によって変速動作が実行されている状態と対応する。変速装置16によって変速動作が実行されている状態は、例えば、電動変速装置34の電動アクチュエータ34Bが駆動されている状態を含む。変速信号が受信した状態は、変速信号を受信してから電動アクチュエータ34Bの駆動を開始するまでの待機期間を含んでもよい。変速信号の非受信は、制御部52が変速信号を受信していない状態である。制御部52が変速信号を受信していない状態は、例えば、変速装置16によって変速動作が実行されていない状態と対応する。変速装置16によって変速動作が実行されていない状態は、例えば、電動変速装置34の電動アクチュエータ34Bが停止している状態を含む。
【0084】
時刻t11は、制御部52が変速信号を受信した時刻である。制御部52は、時刻t11において変速信号に応じて比率を変更するように電動変速装置34を制御する。制御部52は、時刻t11において人力駆動力を人力駆動力検出部42から取得する。
【0085】
時刻t12は、人力駆動力が減少を開始する時刻を示す。電動変速装置34の変速動作によって、チェーン28Aが異なるリアスプロケット30Aに掛け替えられ始めた後、チェーン28Aが掛け替えられる前のリアスプロケット30Aから外れた状態になると、チェーン28Aがリアスプロケット30Aに掛けられていないため、人力駆動力の伝達経路において抵抗が減少する。
【0086】
時刻t13は、時刻t11からの人力駆動力の減少量が第1閾値となった時刻である。時刻t13は、抗力の変化量が所定変化量となった時刻でもある。制御部52は、時刻t13において抗力が増加するように抗力調整部18を制御する。時刻t13から、回転トルクが増加することによって抗力が増加するため、
図6において実線で示すように人力駆動力の減少が抑制される。
【0087】
時刻t14は、予め定める条件が満たされた時刻である。制御部52は、時刻t14から、抗力調整部18による抗力を減少させるように電気モータ36を制御する。
【0088】
時刻t15は、抗力調整部18による抗力の調整が停止される時刻である。制御部52は、時刻t15において電気モータ36の回生制動をオフする。時刻t14において抗力を減少させた後に、時刻t15において回生制動がオフされることによって、抗力が徐々に減少するため、抗力の急激な低下が抑制される。
【0089】
時刻t13から時刻t15の間において、チェーン28Aが掛け替えられる前のリアスプロケット30Aから外れてから、チェーン28Aが掛け替えられる後のリアスプロケット30Aにチェーン28Aが係合するまで、人力駆動力の伝達経路における抵抗は減少する。したがって、抗力調整部18によって抗力を調整しない場合、抵抗の減少によって
図6の一点鎖線に示すように人力駆動力が減少する。一方、抗力調整部18によって抗力を調整する場合、抗力調整部18の抗力が増加を開始するため、
図6の実線に示すように人力駆動力の減少が抑制される。
【0090】
時刻t13から時刻t15の間において、チェーン28Aが掛け替えられる後のリアスプロケット30Aにチェーン28Aが係合すると、人力駆動力の伝達経路における抵抗は再び増加する。したがって、抗力調整部18によって抗力を調整しない場合、抵抗の増加によって、
図6の一点鎖線に示すように人力駆動力が増加する。抗力調整部18によって抗力を調整する場合、抵抗の増加によって、
図6の実線に示すように人力駆動力の減少は抑制される。
【0091】
<変更例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
・制御部は、電気モータ36にクランク12の第2回転方向R2と対応する方向の回転トルクを発生させることによって、抗力を発生させてもよい。この場合、クランク12に付与する制動力を変更できる。
【0093】
・制御部52は、比率が変更される場合、人力駆動力の増加量が第4閾値以上になると抗力の増加を開始するように抗力調整部18を制御するように構成されてもよい。第4閾値は、第1閾値と同じでもよく、異なっていてもよい。本変更例のように制御することによって、比率が変更される場合におけるペダリング時に人力駆動力が大きくなっていることを、ライダに知らせることができる。
【0094】
・制御部52は、抗力が増加するように抗力調整部18を制御するように構成される場合に、電気モータ36の回転抵抗を人力駆動力に応じて調整しないように構成されてもよい。本変更例では、制御部52は、例えば、抗力調整部18を制御する場合、回生制動のオンとオフとの切り替えのみを行う。本変更例では、比率が変更される場合に抗力を増加するように抗力調整部18を制御する場合、制御部52は、回生制動をオンにする。本変更例では、抗力調整部18による抗力の調整を停止する場合、制御部52は、回生制動をオフにする。
【0095】
・
図7に示されるように、電気モータ36は、クラッチ60を介してクランク12に接続されてもよい。クラッチ60は、例えば、ツーウェイクラッチおよび直結クラッチの一方を含む。例えば、クラッチ60は、第1状態と、第2状態と、を設定可能に構成される。第1状態は、クランク12の第1回転方向R1の回転トルクが電気モータ36に伝達される状態である。第2状態は、クランク12の第1回転方向R1の回転トルクが電気モータ36に伝達されず、かつ、電気モータ36の第1回転方向R1と対応する回転トルクがクランク12に伝達される状態である。クラッチ60は、例えば、電動アクチュエータによって第1状態と第2状態とのいずれかに設定される。制御部52は、例えば、抗力が増加するように抗力調整部18を制御する場合に、クラッチ60が第1状態に設定されるようにクラッチ60を制御するように構成される。制御部52は、例えば、抗力が増加するように抗力調整部18を制御しない場合に、クラッチ60が第2状態に設定されるようにクラッチ60を制御するように構成される。制御部52は、例えば、アシスト力を発生させるように電気モータ36を制御する場合、第2状態になるようにクラッチ60を切り替えるように構成されてもよい。
【0096】
・制御部52は、人力駆動車10の推進をアシストするように電気モータ36を制御しなくてもよい。本変更例では、電気モータ36が人力駆動車10の推進をアシストするように構成されなくてもよい。本変更例では、抗力調整部18は、電気モータ36に代えて、発電装置を含んでもよい。発電装置は、例えば、ダイナモを含む。抗力調整部18は、例えば、クランク12と発電装置との間に設けられる切替部をさらに含む。切替部は、例えば、電磁クラッチを含む。制御部52は、抗力を増加するように抗力調整部18を制御する場合、切替部を制御することによって、クランク12と発電装置とを接続する。制御部52は、抗力の調整を中止するように抗力調整部18を制御する場合、切替部を制御することによって、クランク12と発電装置とを切断する。電気モータ36が人力駆動車10の推進をアシストするように構成されない場合であっても、比率が変更される場合に抗力を増加するように抗力調整部18を制御することによって、より好適に比率を変更できる。本変更例において、人力駆動車10は、電気モータ36とは別のアシストモータを備えてもよい。アシストモータは、人力駆動車10の後輪20Aまたは前輪20Bに設けられるハブモータであってもよい。
【0097】
・抗力調整部18は、電気モータ36に代えてまたは加えて、人力駆動力の伝達経路の動力伝達部材に制動力を発生させる制動装置を含んでもよい。制動装置は、例えば、摩擦制動によって抗力を発生できるように構成される。制動装置は、例えば、クランク軸22、出力部24、第1回転体26、連結部材28、後輪20A、前輪20B、および、駆動輪14のいずれか1つに接触可能な摩擦部材を含む。例えば、制動装置は、人力駆動力の伝達経路において、第2回転体30よりも上流に設けられる。制動装置は、例えば、クランク軸22、出力部24、第1回転体26、連結部材28、後輪20A、前輪20B、および、駆動輪14のいずれか1つに摩擦部材を押し付けることによって回転トルクを発生させるように構成される。
【0098】
・制御部52は、ステップS11において、アップシフト変速信号およびダウンシフト変速信号に関わらず、変速信号を検出したか否かを判定してもよい。本変更例の制御部52は、ステップS11において、変速信号を検出するとステップS12に移行する。本変更例の制御部52は、ステップS11において変速信号を検出しないと
図4および
図5の処理を終了する。本変更例では、例えば、ステップS18に代えて、制御部52は、比率の変更が完了したか否かの判定を行う。制御部52は、例えば、クランク12の回転速度の変化量の絶対値が所定閾値以上の場合、比率の変更が完了したと判定する。制御部52は、比率の変更が完了した場合、ステップS19に移行する。制御部52は、比率の変更が完了していない場合、ステップS20に移行する。
【0099】
・制御部52は、
図4のステップS17およびステップS18の処理を省略してもよい。本変更例では、ステップS16の処理が実行されると、ステップS20に移行する。本変更例では、ステップS13において、クランク12の回転速度を取得しなくてもよい。
【0100】
・制御部52は、
図5のステップS28およびステップS29の処理を省略してもよい。本変更例では、ステップS27の処理が実行されると、ステップS31に移行する。本変更例では、ステップS24において、クランク12の回転速度を取得しなくてもよい。
【0101】
・制御部52は、連結部材28が第1回転体26および第2回転体30の少なくとも1つから外れた場合に、人力駆動力が減少すると抗力を増加するように抗力調整部18を制御するように構成されてもよい。本変更例では、人力駆動車10は、例えば、連結部材28と、第1回転体26および第2回転体30の少なくとも1つとの係合状態を検出する検出部を含む。
【0102】
・変速装置16は、変速操作装置40と機械的に接続されるマニュアル変速機を含んでいてもよい。本変更例では、人力駆動車10は、例えば、変速操作装置40または変速装置16の状態を検出する検出部を含む。制御部52は、検出部によって、変速操作装置40の操作、または、変速装置16の動作が検出された場合、抗力を調整するように抗力調整部16制御するように構成されてもよい。
【0103】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0104】
10…人力駆動車、12…クランク、14…駆動輪、16…変速装置、18…抗力調整部、34…電動変速装置、36…電気モータ、50…制御装置、52…制御部、60…クラッチ。