(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159042
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20241031BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074774
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】神野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】曽根 直樹
(72)【発明者】
【氏名】袴田 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】金岡 宏明
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA21
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA75
5F241CA93
5F241CA98
5F241CB24
5F241CB36
(57)【要約】
【課題】柱状半導体層の下部に対しても電流を容易に供給できる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】成長基板(11)と、成長基板(11)の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層(12a)、およびn型コア層(12a)の外周に配置された活性層(12b)を含む複数の柱状半導体層(12)と、複数の柱状半導体層(12)の側面および上面を覆う埋込半導体層(17)とを備え、成長基板(11)上には柱状半導体層(12)が配置されていない無柱領域(R
1)が設けられ、無柱領域(R
1)の少なくとも一部において、埋込半導体層(17)に溝が形成され、溝内に伸長電極(13)が形成されている半導体発光素子(10)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板と、
前記成長基板の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層、および前記n型コア層の外周に配置された活性層を含む複数の柱状半導体層と、
複数の前記柱状半導体層の側面および上面を覆う埋込半導体層とを備え、
前記成長基板上には前記柱状半導体層が配置されていない無柱領域が設けられ、
前記無柱領域の少なくとも一部において、前記埋込半導体層に溝が形成され、
前記溝内に伸長電極が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
少なくとも上記柱状半導体層の頂部よりも深い位置にまで前記伸長電極が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
前記伸長電極は、複数の前記柱状半導体層の周囲を囲んで形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
前記伸長電極は、複数の前記柱状半導体層の間に形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体発光素子であって、
前記成長基板上に占める前記無柱領域の面積は、15%以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の半導体発光素子であって、
前記埋込半導体層はp型不純物を含有することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体発光素子であって、
前記埋込半導体層および前記伸長電極を覆って透明電極が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体発光素子であって、
前記埋込半導体層および前記伸長電極を覆って反射電極が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関し、特に成長基板上に複数の柱状半導体層が形成された半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、活性層において正孔と電子とが再結合することにより発光する。従来、活性層として平坦なシート状の井戸層が用いられてきた。これに対し近年では、3次元ナノ構造を有する半導体発光素子の開発が活発化している。特許文献1には、このような構造を有する半導体発光素子の一例が開示されている。特許文献1の半導体発光素子は、成長基板上に開口部を有するマスクを形成し、開口部からナノワイヤ層と活性層を選択成長させ、複数の柱状半導体層を形成している。また、複数の柱状半導体層の側面および上面を覆って埋込半導体層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された半導体発光素子では、p型半導体で構成された埋込半導体層で柱状半導体層を覆い、活性層に電流注入を行っている。しかし一般的にp型半導体層は、n型半導体層よりも電流が拡散しにくいため、柱状半導体層の上部を介して活性層に注入される電流の比率が高くなる。よって、柱状半導体層のうち成長基板に近い下部に形成されている活性層に注入される電流の比率が小さくなり、柱状半導体層の側面に設けられた活性層に均一に電流を注入して発光効率を高めることが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、柱状半導体層の下部に対しても電流を容易に供給できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、成長基板と、前記成長基板の主面に対し垂直方向に立設されたn型コア層、および前記n型コア層の外周に配置された活性層を含む複数の柱状半導体層と、複数の前記柱状半導体層の側面および上面を覆う埋込半導体層とを備え、前記成長基板上には前記柱状半導体層が配置されていない無柱領域が設けられ、前記無柱領域の少なくとも一部において、前記埋込半導体層に溝が形成され、前記溝内に伸長電極が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【0007】
このような本発明の半導体発光素子では、柱状半導体層が配置されていない無柱領域において、埋込半導体層の溝内に伸長電極が形成されているため、埋込半導体層の深い位置にまで伸長電極から電流を供給し、柱状半導体層の下部に対しても電流を容易に供給できる。
【0008】
また本発明の一態様では、少なくとも上記柱状半導体層の頂部よりも深い位置にまで前記伸長電極が形成されている。
【0009】
また本発明の一態様では、前記伸長電極は、複数の前記柱状半導体層の周囲を囲んで形成されている。
【0010】
また本発明の一態様では、前記伸長電極は、複数の前記柱状半導体層の間に形成されている。
【0011】
また本発明の一態様では、前記成長基板上に占める前記無柱領域の面積は、15%以下である。
【0012】
また本発明の一態様では、前記埋込半導体層はp型不純物を含有する。
【0013】
また本発明の一態様では、前記埋込半導体層および前記伸長電極を覆って透明電極が形成されている。
【0014】
また本発明の一態様では、前記埋込半導体層および前記伸長電極を覆って反射電極が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、柱状半導体層の下部に対しても電流を容易に供給できる半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式断面図であり、
図2(a)は
図1中のA-A’位置での断面を示し、
図2(b)は
図1中のB-B’位置での断面を示している。
【
図3】第1実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法を示す工程図であり、
図3(a)は選択成長マスク形成工程を示し、
図3(b)は結晶成長工程を示し、
図3(c)はエッチングマスク形成工程を示し、
図3(d)は伸長電極形成工程を示している。
【
図4】伸長電極13と柱状半導体層12の関係を示す部分拡大断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式平面図であり、
図5(a)は発光領域R
2の内部に点状に伸長電極13を配置した例を示し、
図5(b)は発光領域R
2の内部に線状に伸長電極13を配置した例を示し、
図5(c)はアノード電極14とカソード電極15を結んだ対角線上に伸長電極13を配置した例を示している。
【
図6】第2実施形態に係る半導体発光素子10の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。また、以下の説明で挙げた材料、および数値はあくまで一例であって、これに限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式平面図である。
図2は、本実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式断面図であり、
図2(a)は
図1中のA-A’位置での断面を示し、
図2(b)は
図1中のB-B’位置での断面を示している。
【0019】
図1および
図2に示すように半導体発光素子10は、成長基板11上の発光領域R
2に複数の柱状半導体層12が形成され、柱状半導体層12が形成されていない無柱領域R
1に伸長電極13が形成され、アノード電極14およびカソード電極15が形成されている。また必要に応じて、半導体発光素子10の所定の表面を覆う絶縁保護膜(パッシベーション膜)を設けてもよい。絶縁保護膜は半導体発光素子10を湿気等の外部環境から保護する。
図1に示した例では、半導体発光素子10の外周に沿って、複数の柱状半導体層12が配置された発光領域R
2の周囲を囲んで、柱状半導体層12が配置されていない無柱領域R
1が設けられている。また伸長電極13は、無柱領域R
1に沿って直線状に設けられている。
【0020】
また、
図2(a)(b)に示すように、成長基板11上にはマスク16が形成されており、マスク16に設けられた開口部から柱状半導体層12が立設して形成されている。柱状半導体層12は、n型コア層12aと活性層12bを備えている。柱状半導体層12の側面および上面には、埋込半導体層17が形成されている。埋込半導体層17の上面には電極18が形成されており、電極18上の一部にアノード電極14が形成されている。また、埋込半導体層17および柱状半導体層12は、一部が成長基板11に到達するまで除去されて成長基板11が露出しており、露出した成長基板11にカソード電極15が形成されている。
【0021】
成長基板11は、半導体材料を結晶成長可能な材料で構成された略平板状の部材である。成長基板11としては特に限定されないが、単結晶のc面サファイア基板やc面GaN基板を用いることができる。成長基板11としてc面サファイア基板を用いる場合には、c面上にバッファ層とn型GaNからなる下地層を形成して、下地層を含めて成長基板11としてもよい。また、サファイア等の異種基板を用いて半導体発光素子10を形成した後に、サファイアを除去して下地層のみを残した場合には、下地層を成長基板11と見做すことができる。
【0022】
バッファ層は、成長基板11と下地層の間に形成されて両者の格子不整合を緩和するための層である。バッファ層の材料は、成長基板11としてc面サファイア基板を用いる場合にはノンドープのGaNを用いることが好ましい。しかしながらこれに限らず、AlNやAlGaNなどを用いてもよい。なお、成長基板11は、バッファ層を形成せず単一の材料で構成してもよい。
【0023】
下地層は、成長基板11あるいはバッファ層上に形成された単結晶の半導体層であり、ノンドープのGaNを数μmの厚さで形成し、その上にn型コンタクト層等のn型半導体層(図示省略)を備えた複数層で構成することが好ましい。n型コンタクト層は、n型不純物がドープされた半導体層であり、例えばSiドープしたn型Al0.05Ga0.95N等が挙げられる。
【0024】
柱状半導体層12は、マスク16に設けられた開口部から選択成長されて、成長基板11上に立設された半導体層である。柱状半導体層12には少なくともn型コア層12aと活性層12bが含まれている。ここでは柱状半導体層12をn型コア層12aと活性層12bだけで構成した例を示しているが、活性層12bの外側にさらにp型半導体層を形成するとしてもよい。また、p型半導体層の外側に高濃度に不純物がドープされたn+層とp+層を有するトンネル接合層を形成するとしてもよい。
【0025】
n型コア層12aは、マスク16の開口部から露出した下地層上に選択成長された六角柱形状の半導体層であり、例えばn型不純物がドープされたGaNから構成されている。n型コア層12aを窒化物半導体層で構成する場合には、成長温度や原材料のV-III比等の成長条件を適切に調整することで、成長基板11のc面に対して垂直なm面がファセットとして露出し、高さ方向に優先的に成長を継続させることができる。これにより、6つのm面を側面として有するn型コア層12aを形成することができる。
【0026】
活性層(発光層)12bは、n型コア層12aの外周に成長された半導体層であり、例えば厚さ5nmのGaInN量子井戸層と厚さ10nmのGaN障壁層を5周期重ねた多重量子井戸活性層が挙げられる。ここでは多重量子井戸活性層を挙げたが、単一量子井戸構造であってもよく、バルク活性層であってもよい。活性層12bがn型コア層12aの側面および上面に形成されているため、活性層12bの面積を確保することができる。
【0027】
伸長電極13は、埋込半導体層17に設けられた溝内に形成された電極である。
図1および
図2に示したように、成長基板11上には柱状半導体層12が配置されて発光に寄与する発光領域R
2と、柱状半導体層12が配置されていない無柱領域R
1が存在する。また、無柱領域R
1には埋込半導体層17の少なくとも一部に溝が形成されており、溝内の少なくとも側面を導電材料で覆って伸長電極13が形成される。ここでは伸長電極13として、埋込半導体層17に設けられた溝内を充填した例を示しているが、溝内の側面および底面に薄膜上に形成するとしてもよい。伸長電極13を構成する導電材料は限定されないが、埋込半導体層17とオーミック接触する金属材料を用いることが好ましい。また、埋込半導体層17とオーミック接触する金属材料と、AuやCu等の金属材料の積層構造を用いるとしてもよい。なお、
図1では、伸長電極13の先端(底部)が先細り形状となっている例を示したが、先端の形状は限定されず平坦であってもよい。
【0028】
アノード電極14は、半導体発光素子10に電流を供給するための正極である。アノード電極14は、埋込半導体層17上の一部に形成されており、埋込半導体層17の最表面とオーミック接触する電極18を介して埋込半導体層17に電流を供給する。アノード電極14を構成する材料は限定されず、従来公知のAu等を用いることができる。カソード電極15は、半導体発光素子10に電流を供給するための負極である。カソード電極15は成長基板11の露出したn型の下地層上に形成されている。
【0029】
マスク16は、下地層の表面に形成された誘電体材料からなる層である。マスク16を構成する材料としては、マスク16からの半導体の結晶成長が困難なものを選択し、例えばSiO2やSiNxやAl2O3などが好適である。マスク16には開口部16aが複数形成されており、開口部16aから部分的に露出した下地層から半導体層が成長可能とされている。
【0030】
埋込半導体層17は、柱状半導体層12の上面および側面を覆って形成された半導体層である。埋込半導体層17の材料は、例えばp型不純物を含有するp型GaNである。また、柱状半導体層12にトンネル接合層を含む場合には、埋込半導体層17としてn型不純物を含有するn型GaNを用いることができる。
【0031】
電極18は、埋込半導体層17の上面に形成された導電材料からなる層である。電極18は、少なくともアノード電極14と伸長電極13の間を電気的に接続している。電極18を形成する領域は限定されないが、埋込半導体層17の上面略全体を覆うことが好ましい。電極18の材料は限定されないが、埋込半導体層17とオーミック接触する金属材料を用いることが好ましい。また電極18として、光を透過できる膜厚の透明電極を用いるとしてもよく、ITO(Indium Tin Oxide)等の酸化物系透明電極を用いるとしてもよい。また電極18として、光を反射する反射電極を用い、活性層12bで発光した光を成長基板11側に反射するとしてもよい。反射電極としては例えばAlやAgが挙げられる。
【0032】
図3は、本実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法を示す工程図であり、
図3(a)は選択成長マスク形成工程を示し、
図3(b)は結晶成長工程を示し、
図3(c)はエッチングマスク形成工程を示し、
図3(d)は伸長電極形成工程を示している。なお、半導体発光素子10は複数の素子形成領域が配置された半導体ウェハの状態で製造されるが、以下の説明ではその内の1つの素子形成領域に着目して説明する。
【0033】
図3(a)に示す選択成長マスク形成工程では、成長基板11上にスパッタ法等でSiO
2からなるマスク16を膜厚30nm程度で堆積させる。その後に、ナノインプリンティング技術等を用いて、マスク16に直径150nm程度の開口部16aを複数形成する。ここで成長基板11は、一例としてサファイア単結晶からなる成長基板11上に有機金属化合物気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、GaNからなるバッファ層、GaNおよびAlGaNからなる下地層を成長させたものを用いる。なお、上述したように、成長基板11としては単一材料、例えばn型GaNからなる基板を用いてもよい。
【0034】
次に
図3(b)に示す結晶成長工程では、まずMOCVD法による選択成長により、開口部16aから露出した下地層上にGaNからなるn型コア層12aを成長させる。n型コア層12aの成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMGおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が10、水素をキャリアガスとして圧力900hPaである。次にMOCVD法を用いてn型コア層12aの側面および上面に、厚さ5nm程度のGaInN量子井戸層と厚さ10nm程度のGaN障壁層を5周期重ねた活性層12bを形成する。活性層12bの成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力1000hPaで、原料ガスとしてTMG、TMI(TriMethyl Indium)およびアンモニアを用いる。次に、p型GaNからなる埋込半導体層17を成長させ、柱状半導体層12の側面および上面を埋込半導体層17で埋める。埋込半導体層17の成長では、原料ガスとしてTMG、シランおよびアンモニアを用いる。
【0035】
次に
図3(c)に示すエッチングマスク形成工程では、埋込半導体層17の上面にエッチングマスク層21を形成した後に、パターニングマスク22を用いてエッチングマスク層21に開口部21aを形成する。ここで、エッチングマスク層21としては例えばNi膜を用いることができる。パターニングマスク22の開口部21aを形成する位置には開口部22aが形成されており、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってエッチングマスク層21に開口部21aを形成することができる。ここではフォトリソグラフィーとエッチングでエッチングマスク層21に開口部21aを形成する例を示したが、ナノインプリント技術を用いるとしてもよい。
【0036】
次に
図3(d)に示す伸長電極形成工程では、エッチングマスク層21の上方から埋込半導体層17をエッチングして、開口部21aの位置に溝23を形成する。ここで、埋込半導体層17のエッチング方法としては、塩素系のエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングが挙げられる。次に、電極18の材料であるターゲット材30を用いて、電子ビーム蒸着法やスパッタ法で溝23内に伸長電極13を形成する。
【0037】
図示を省略するが、伸長電極形成工程の後に、エッチングマスク層21をリフトオフして埋込半導体層17の上面を露出させ、電極18、アノード電極14、カソード電極15を形成する。ここでカソード電極15は、ドライエッチング等を用いて埋込半導体層17および柱状半導体層12を除去して成長基板11の下地層を露出させた後に、蒸着等を用いて金属膜を製膜することで形成することができる。各電極を形成した後に、素子分割して半導体発光素子10が得られる。また、必要に応じてパッシベーション膜の形成工程や、p型不純物を活性化するためのアニール工程を用いることができる。
【0038】
図1、
図2に示した半導体発光素子10では、アノード電極14から電極18を介して埋込半導体層17、活性層12b、n型コア層12a、成長基板11の下地層、カソード電極15と電流が流れる。また、電極18からは伸長電極13を介して埋込半導体層17、活性層12b、n型コア層12a、成長基板11の下地層、カソード電極15と電流が流れる。埋込半導体層17、活性層12b、n型コア層12aはダブルヘテロ構造を有しており、注入された電流は活性層12bで発光再結合して、所定波長の光が外部に照射される。
【0039】
本実施形態の半導体発光素子10では、柱状半導体層12が配置されていない無柱領域R1において、埋込半導体層17に形成された溝23内に伸長電極13が形成されているため、埋込半導体層17の上面からだけではなく、成長基板11に近い位置から埋込半導体層17に電流を供給することができる。したがって、埋込半導体層17の深い位置から、柱状半導体層12の下部に位置する側面に対しても電流を容易に供給できる。
【0040】
図4は、伸長電極13と柱状半導体層12の関係を示す部分拡大断面図である。
図4に示すように、成長基板11の上面から埋込半導体層17の上面までの高さをH
LEDとする。また、成長基板11の上面から柱状半導体層12の頂部までの高さをH
NWとする。また、埋込半導体層17の上面から伸長電極13の先端までの深さをLとする。また、伸長電極13の幅または直径をDとする。
【0041】
伸長電極13の先端は、少なくとも柱状半導体層12の頂部より深い位置にまで形成することが好ましい。したがって、伸長電極13の深さLと柱状半導体層12の頂部までの高さH
NWおよび埋込半導体層17の高さH
LEDとは、H
LED-H
NW<Lの関係を満たすことが好ましい。H
LED,H
NW,Lがこの関係を満たすことで、
図4に矢印で示すように伸長電極13から埋込半導体層17を介して柱状半導体層12の側面に電流が流れやすくなる。また、柱状半導体層12の底面に近い位置の側面に対しても良好に電流を供給するためには、H
LED-H
NW/2<Lの関係を満たして、柱状半導体層12の高さの半分以下の深さまで伸長電極13を形成することがより好ましい。
【0042】
伸長電極13の幅または直径Dは、300nm以上3000nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは300nm以上1000nm以下の範囲である。幅または直径Dを300nm未満とすると、埋込半導体層17に溝23を良好に形成することが困難になる。また、幅または直径Dがこの範囲を超えると、柱状半導体層12を配置せず発光しない無柱領域R1の面積が大きくなり好ましくない。
【0043】
また、柱状半導体層12が配置されていない無柱領域R1は、成長基板11上において15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。無柱領域R1がこの比率の範囲を超えると、発光領域R2の面積が小さくなり、柱状半導体層12の本数と活性層12bの面積が減少して発光量が低下するため好ましくない。
【0044】
上述したように本実施形態の半導体発光素子10では、柱状半導体層12が配置されていない無柱領域R1において、埋込半導体層17の溝23内に伸長電極13が形成されているため、埋込半導体層17の深い位置にまで伸長電極13から電流を供給し、柱状半導体層12の下部に対しても電流を容易に供給できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5、
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る半導体発光素子10の構造例を示す模式平面図であり、
図5(a)は発光領域R
2の内部に点状に伸長電極13を配置した例を示し、
図5(b)は発光領域R
2の内部に線状に伸長電極13を配置した例を示し、
図5(c)はアノード電極14とカソード電極15を結んだ対角線上に伸長電極13を配置した例を示している。
【0046】
図5(a)に示した例では、半導体発光素子10の外周に沿って、複数の柱状半導体層12が配置された発光領域R
2の周囲を囲んで複数の無柱領域R
1が設けられるとともに、発光領域R
2の内部にも柱状半導体層12の間に点状に複数の無柱領域R
1が設けられている。また、外周の無柱領域R
1に沿って直線状に伸長電極13が設けられるとともに、点状の無柱領域R
1にも点状の伸長電極13が設けられている。
図5(a)では半導体発光素子10を平面視において4分割し、4つの無柱領域R
1と伸長電極13を設けた例を示したが、無柱領域R
1と伸長電極13の個数や配置は限定されない。また、伸長電極13を点状に形成する場合の形状は限定されず、上面視において円形状、楕円形状、多角形状等の形状を用いることができる。
【0047】
図5(b)に示した例では、半導体発光素子10の外周に沿って、複数の柱状半導体層12が配置された発光領域R
2の周囲を囲んで複数の無柱領域R
1が設けられるとともに、発光領域R
2の内部にも柱状半導体層12の間に枠形状に無柱領域R
1が設けられている。また、外周の無柱領域R
1に沿って直線状に伸長電極13が設けられるとともに、枠形状の無柱領域R
1を1つ設けた例を示しているが、枠形状の無柱領域R
1を複数設けるとしてもよく、枠形状を多重に設けるとしてもよい。
【0048】
図5(c)に示した例では、半導体発光素子10の外周に沿って、複数の柱状半導体層12が配置された発光領域R
2の周囲を囲んで複数の無柱領域R
1が設けられるとともに、発光領域R
2の内部にも対角線上に点状に複数の無柱領域R
1が設けられている。また、外周の無柱領域R
1に沿って直線状に伸長電極13が設けられるとともに、点状の無柱領域R
1にも点状の伸長電極13が設けられている。
図5(c)では、半導体発光素子10の対角に設けられたアノード電極14とカソード電極15の間において、対角線上に6つの無柱領域R
1を設けた例を示したが、個数や配置は限定されない。また、アノード電極14とカソード電極15が設けられていない対角線上に点状に複数の無柱領域R
1を設けるとしてもよい。
【0049】
図6は、第2実施形態に係る半導体発光素子10の模式断面図である。
図5(a)~
図5(c)では発光領域R
2の内部に複数の無柱領域R
1を設けた例を示したが、
図6では簡便のために1つの無柱領域R
1を設けた場合を示している。また、半導体発光素子10の外周に沿って設けた無柱領域R
1については、
図2で示したものと同様であるため説明を省略している。また、図中に示した矢印は、電流の経路例を模式的に示したものである。
【0050】
図6に示したように、アノード電極14から注入された電流は、電極18と伸長電極13を介して埋込半導体層17に供給される。伸長電極13が形成された無柱領域R
1は、柱状半導体層12の間に設けられているため、伸長電極13の外周から全方向に電流が供給される。これにより、柱状半導体層12の側面に対して均一に電流を供給することがさらに容易になる。
【0051】
図5および
図6に示した例では、発光領域R
2の内部において柱状半導体層12の間にも無柱領域R
1が設けられているため、発光領域R
2の広い範囲に対して、柱状半導体層12の底部に近い側面にも良好に電流を供給することができる。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10…半導体発光素子
11…成長基板
12…柱状半導体層
12a…n型コア層
12b…活性層
13…伸長電極
14…アノード電極
15…カソード電極
16…マスク
16a…開口部
17…埋込半導体層
18…電極
21…エッチングマスク層
21a…開口部
22…パターニングマスク
22a…開口部
23…溝
30…ターゲット材
R1…無柱領域
R2…発光領域