(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159044
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ステータ用のコイル
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K3/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074777
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】菊池 駿介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康平
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB14
5H603CA01
5H603CA05
5H603CC14
5H603CC19
5H603CD24
(57)【要約】
【課題】渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することができるステータ用のコイルを提供する。
【解決手段】コイルは、回転軸と一体的に回転するとともに回転軸の周方向に並ぶ複数の永久磁石を有するロータと、ロータと回転軸の軸方向に積層されるステータとを備えるアキシャル型のモータのステータに用いられる。コイルは円環状である。コイルは、コイルの径方向に延在するとともにコイルの周方向に並ぶ複数の導電部20を備えている。複数の導電部20には、導電部20の延在方向に延びる複数本のスリット40がそれぞれ設けられている。各導電部20は、スリット40によって導電部20の幅方向に分割される分割領域Aを導電部20の延在方向において複数有している。複数の分割領域Aのうち、少なくとも2つの異なる分割領域Aにおいて、一方の分割領域Aにおける分割数と他方の分割領域Aにおける分割数とが異なっている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の周方向に並ぶ複数の永久磁石を有するロータと、前記ロータと前記回転軸の軸方向に積層されるステータとを備えるアキシャル型のモータの前記ステータに用いられる円環状のステータ用のコイルであって、
前記コイルの径方向に延在するとともに前記コイルの周方向に並ぶ複数の導電部を備え、
複数の前記導電部には、前記導電部の延在方向に延びる複数本のスリットがそれぞれ設けられ、
前記導電部は、前記スリットによって前記導電部の幅方向に分割される分割領域を前記導電部の延在方向において複数有し、
複数の前記分割領域のうち、少なくとも2つの異なる前記分割領域において、一方の前記分割領域における分割数と他方の前記分割領域における分割数とが異なることを特徴とするステータ用のコイル。
【請求項2】
前記導電部の幅は、前記コイルの径方向において変化している請求項1に記載のステータ用のコイル。
【請求項3】
前記導電部の延在方向の中央側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数は、前記導電部の延在方向の両端側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数よりも多い請求項1に記載のステータ用のコイル。
【請求項4】
前記導電部の延在方向に隣り合う2つの前記分割領域のうち、一方の前記分割領域から他方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部と、他方の前記分割領域から一方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部とは、前記導電部の幅方向に重なり合っている請求項1に記載のステータ用のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ用のコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の記載のプリントコイルは、環状に併設された複数のコイル片を備えている。各コイル片は、径方向内側に位置する内側インボリュート曲線部と、径方向外側に位置する外側インボリュート曲線部と、内側インボリュート曲線部と外側インボリュート曲線部との間に位置する直線部とを有している。
【0003】
渦電流損は、導体の幅に比例する。つまり、導体の幅が大きいほど、渦電流損は大きくなる。特許文献1では、直線部には、長手方向に沿って1本のスリットが形成されている。スリットにより、直線部における導体の幅が小さくなるため、渦電流損が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように渦電流損は、導体の幅に比例する一方、銅損は、導体の幅に反比例する。つまり、導体の幅が大きいほど、銅損は小さくなる。このように渦電流損と銅損はトレードオフの関係にある。したがって、特許文献1のように直縁部に1本のスリットが形成されることにより、渦電流損が低減されていたとしても、渦電流損及び銅損の合計の損失が低減されているとは限らない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためのステータ用のコイルは、回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の周方向に並ぶ複数の永久磁石を有するロータと、前記ロータと前記回転軸の軸方向に積層されるステータとを備えるアキシャル型のモータの前記ステータに用いられる円環状のステータ用のコイルであって、前記コイルの径方向に延在するとともに前記コイルの周方向に並ぶ複数の導電部を備え、複数の前記導電部には、前記導電部の延在方向に延びる複数本のスリットがそれぞれ設けられ、前記導電部は、前記スリットによって前記導電部の幅方向に分割される分割領域を前記導電部の延在方向において複数有し、複数の前記分割領域のうち、少なくとも2つの異なる前記分割領域において、一方の前記分割領域における分割数と他方の前記分割領域における分割数とが異なることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、複数の導電部には、導電部の延在方向に延びる複数本のスリットがそれぞれ設けられている。導電部は、スリットによって導電部の幅方向に分割される分割領域を導電部の延在方向において複数有している。複数の分割領域のうち、少なくとも2つの異なる分割領域において、一方の分割領域における分割数と他方の分割領域における分割数とが異なる。この場合、各分割領域における導体の幅が渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなる幅となるように、分割領域における導電部の分割数を個別に設定することができる。したがって、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することができる。
【0008】
上記ステータ用のコイルにおいて、前記導電部の幅は、前記コイルの径方向において変化していてもよい。
導電部の幅がコイルの径方向において変化している場合、導電部の分割数が1つの固定値に設定されていると、導電部には、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるような分割数になっていない領域が生じやすい。したがって、複数の分割領域のうち、少なくとも2つの異なる分割領域において、一方の分割領域における分割数と他方の分割領域における分割数とを異ならせることにより、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することが特に効果的である。
【0009】
上記ステータ用のコイルにおいて、前記導電部の延在方向の中央側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数は、前記導電部の延在方向の両端側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数よりも多くてもよい。
【0010】
永久磁石の磁束密度は、永久磁石の中央から端に向かうにつれて低くなることが知られている。このため、永久磁石の磁束密度は、永久磁石のうち、回転軸の径方向において中央側に位置する部分から内側又は外側に位置する部分に向かうにつれて低くなる。したがって、導電部の延在方向の中央側に位置する部分における磁束密度は、導電部の延在方向の両端側に位置する部分における磁束密度よりも高くなりやすい。渦電流損は、磁束密度に比例する。つまり、磁束密度が高いほど、渦電流損は大きくなる。このため、導電部の延在方向の中央側に位置する部分での渦電流損は、導電部の延在方向の両端側に位置する部分での渦電流損よりも大きくなりやすい。
【0011】
上記構成によれば、導電部の延在方向の中央側に位置する分割領域における導電部の分割数は、導電部の延在方向の両端側に位置する分割領域における導電部の分割数よりも多い。このため、導電部の延在方向の中央側に位置する分割領域における導体の幅は、導電部の延在方向の両端側に位置する分割領域における導体の幅よりも小さく設定される。したがって、渦電流損が大きくなりやすい導電部の延在方向の中央側に位置する部分での渦電流損を低減できる。
【0012】
上記ステータ用のコイルにおいて、前記導電部の延在方向に隣り合う2つの前記分割領域のうち、一方の前記分割領域から他方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部と、他方の前記分割領域から一方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部とは、前記導電部の幅方向に重なり合っていてもよい。
【0013】
この構成によれば、導電部の延在方向に隣り合う分割領域の境界において、渦電流は導電部を導電部の幅方向に横断するように流れにくくなる。したがって、スリットを取り囲むような渦電流のループが形成されにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態におけるモータを示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態におけるロータを示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態におけるステータを示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態におけるステータの一部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、各コイル構成部を示す平面図である。
【
図7】
図7は、コイルとロータとの位置関係を示す平面図である。
【
図8】
図8は、導電部に対するスリットの配置方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態における分割候補領域を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態における各分割候補領域の分割数毎の渦電流損を示す表である。
【
図12】
図12は、実施形態における各分割候補領域の分割数毎の銅損を示す表である。
【
図13】
図13は、実施形態における各分割候補領域の分割数毎の損失和を示す表である。
【
図14】
図14は、一般化された分割候補領域を示す図である。
【
図15】
図15は、各分割候補領域の分割数毎の渦電流損を示す表である。
【
図16】
図16は、各分割候補領域の分割数毎の銅損を示す表である。
【
図17】
図17は、各分割候補領域の分割数毎の損失和を示す表である。
【
図18】
図18は、変更例における導電部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ステータ用のコイルを具体化した一実施形態を
図1~
図17にしたがって説明する。以下の説明では、ステータ用のコイルを単に「コイル」という。
<モータ>
図1に示すように、モータ10は、ハウジング11と、回転軸12と、一対のヨーク13と、複数のロータ14と、複数のステータ15とを備えている。本実施形態のモータ10は、4つのロータ14と、6つのステータ15とを備えている。
【0017】
ハウジング11は、回転軸12、一対のヨーク13、複数のロータ14、及び複数のステータ15を収容している。ハウジング11は、円筒状の周壁11aと、周壁11aの軸方向の両端に連結された円板状の一対の端壁11bとを有している。各端壁11bの中央部には、軸挿通孔11cが形成されている。回転軸12は、軸挿通孔11cに挿通されている。回転軸12は、回転軸12の外周面と軸挿通孔11cを区画する内周面との間に配置された図示しない軸受を介して、ハウジング11に対して回転可能に支持されている。
【0018】
ヨーク13、ロータ14、及びステータ15はそれぞれ、円環平板状である。回転軸12は、ヨーク13、複数のロータ14、及び複数のステータ15を貫通している。一対のヨーク13、複数のロータ14、及び複数のステータ15は、回転軸12の軸方向D1において積層されている。したがって、モータ10は、アキシャル型のモータである。一対のヨーク13は、ヨーク13、ロータ14、及びステータ15の積層体において両端に位置している。ロータ14とステータ15は、一対のヨーク13の間において交互に積層されている。本実施形態では、1つのロータ14と2つのステータ15とが、一対のヨーク13の間において交互に積層されている。回転軸12の軸方向D1に隣り合うロータ14とステータ15との間には、隙間が設けられている。また、回転軸12の軸方向D1に隣り合うステータ15の間には、絶縁層16が設けられている。絶縁層16によって、回転軸12の軸方向D1に隣り合うステータ15の絶縁が確保されている。
【0019】
各ヨーク13は、図示しないヨーク支持部を介して回転軸12に固定されている。各ロータ14は、図示しないロータ支持部を介して回転軸12に固定されている。したがって、回転軸12は、一対のヨーク13及び複数のロータ14と一体的に回転する。ステータ15は、後述するプレート17の外周縁が周壁11aの内周面に固定されることによって、ハウジング11に固定されている。
【0020】
図2に示すように、ロータ14は、複数の永久磁石としての第1永久磁石14aと複数の永久磁石としての第2永久磁石14bとを有している。第1永久磁石14aの数と第2永久磁石14bの数は同数である。各第1永久磁石14aの磁化方向及び各第2永久磁石14bの磁化方向は、回転軸12の軸方向D1に沿う方向である。各第1永久磁石14aの磁化方向と各第2永久磁石14bの磁化方向とは、反対方向である。第1永久磁石14aと第2永久磁石14bは、回転軸12の周方向D2において1個ずつ交互に配置されている。すなわち、第1永久磁石14aと第2永久磁石14bは、回転軸12の周方向D2に並んでいる。
【0021】
<ステータ>
図3に示すように、ステータ15は、円環状のプレート17と、円環状のコイル18とを有している。プレート17の軸方向、周方向、及び径方向は、コイル18の軸方向、周方向、及び径方向とそれぞれ一致している。また、プレート17及びコイル18の軸方向、周方向、及び径方向は、回転軸12の軸方向D1、周方向D2、及び径方向D3とそれぞれ一致している。したがって、回転軸12の軸方向D1は、コイル18の軸方向D1でもある。回転軸12の周方向D2は、コイル18の周方向D2でもある。回転軸12の径方向D3は、コイル18の径方向D3でもある。本実施形態のステータ15は、プリント基板である。コイル18は、プレート17に設けられた導体パターンからなる。
【0022】
図4に示すように、プレート17は、第1面17a及び第2面17bを有している。第1面17a及び第2面17bは、プレート17の板厚方向と直交する面である。第2面17bは、第1面17aの反対側の面である。
【0023】
図3に示すように、コイル18は、U相コイル19u、V相コイル19v、及びW相コイル19wを有している。U相コイル19u、V相コイル19v、及びW相コイル19wは、同じ構成である。U相コイル19u、V相コイル19v、及びW相コイル19wは、回転軸12の周方向D2において1相ずつずらした状態で分布巻きされている。回転軸12の周方向D2に隣り合う各相コイル19u,19v,19wの間には隙間が設けられている。これにより、回転軸12の周方向D2に隣り合う各相コイル19u,19v,19wの絶縁が確保されている。
【0024】
本実施形態の各相コイル19u,19v,19wは、第1コイル構成部191及び第2コイル構成部192によって構成されている。第1コイル構成部191と第2コイル構成部192は、同じ構成である。第1コイル構成部191と第2コイル構成部192は、回転軸12の周方向D2にずらした状態で分布巻きされている。第1コイル構成部191と第2コイル構成部192との間には隙間が設けられている。これにより、第1コイル構成部191と第2コイル構成部192との絶縁が確保されている。
【0025】
図5に示すように、各コイル構成部191,192は、複数の導電部20を有している。導電部20は、コイル18の径方向D3に延在している。導電部20は、コイル18の周方向D2に並んでいる。したがって、コイル18は、コイル18の径方向D3に延在するとともにコイル18の周方向D2に並ぶ複数の導電部20を有している。
【0026】
本実施形態の各コイル構成部191,192は、ラジアル巻きされている。各導電部20は、ラジアル部31と、内側渡線部32と、外側渡線部33とを有している。ラジアル部31は、コイル18の径方向D3に沿って延在している。したがって、ラジアル部31の延在方向は、コイル18の径方向D3に沿う方向である。内側渡線部32は、コイル18の径方向D3においてラジアル部31よりも内側に位置している。内側渡線部32は、ラジアル部31に対して傾斜するように延在している。したがって、内側渡線部32の延在方向は、コイル18の径方向D3に対して傾斜する方向である。外側渡線部33は、コイル18の径方向D3においてラジアル部31よりも外側に位置している。外側渡線部33は、ラジアル部31に対して傾斜するように延在している。したがって、外側渡線部33の延在方向は、コイル18の径方向D3に対して傾斜する方向である。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、複数の導電部20のうち、一部の導電部20は、プレート17の第1面17aに設けられるとともに、他の導電部20は、プレート17の第2面17bに設けられている。プレート17の第1面17aに設けられた導電部20を第1導電部21という。プレート17の第2面17bに設けられた導電部20を第2導電部22という。第2導電部22は、プレート17を挟んで第1導電部21の反対側に位置している。第1導電部21と第2導電部22は、コイル18の軸方向D1において異なる位置に設けられている。
【0028】
図5に示すように、第1導電部21と第2導電部22は、コイル18の周方向D2において交互に配置されている。
第1導電部21の内側渡線部32は、ラジアル部31に対してコイル18の周方向D2の一方側に傾斜している。第1導電部21の外側渡線部33は、ラジアル部31に対してコイル18の周方向D2の他方側に傾斜している。つまり、第1導電部21において、内側渡線部32がラジアル部31に対して傾斜する方向と、外側渡線部33がラジアル部31に対して傾斜する方向とは、反対方向である。
【0029】
第2導電部22の内側渡線部32は、ラジアル部31に対してコイル18の周方向D2の他方側に傾斜している。第2導電部22の外側渡線部33は、ラジアル部31に対してコイル18の周方向D2の一方側に傾斜している。つまり、第2導電部22において、内側渡線部32がラジアル部31に対して傾斜する方向と、外側渡線部33がラジアル部31に対して傾斜する方向とは、反対方向である。
【0030】
第1導電部21の内側渡線部32がラジアル部31に対して傾斜する方向と、第2導電部22の内側渡線部32がラジアル部31に対して傾斜する方向とは、反対方向である。第1導電部21の外側渡線部33がラジアル部31に対して傾斜する方向と、第2導電部22の外側渡線部33がラジアル部31に対して傾斜する方向とは、反対方向である。
【0031】
各コイル構成部191,192は、複数の内側接続部23と、複数の外側接続部24とを有している。内側接続部23は、第1導電部21の内側渡線部32と、当該第1導電部21とコイル18の周方向D2に隣り合う2つの第2導電部22のうちの一方の第2導電部22の内側渡線部32とをコイル18の軸方向D1に接続している。外側接続部24は、第1導電部21の外側渡線部33と、当該第1導電部21とコイル18の周方向D2に隣り合う2つの第2導電部22のうちの他方の第2導電部22の外側渡線部33とをコイル18の軸方向D1に接続している。
【0032】
図4に示すように、本実施形態では、内側接続部23及び外側接続部24はそれぞれ、プレート17を板厚方向に貫通するスルーホール17c内に設けられている。
上述したように、U相コイル19u、V相コイル19v、及びW相コイル19wは、回転軸12の周方向D2において1相ずつずらした状態で分布巻きされている。また、各相コイル19u,19v,19wにおいて、第1コイル構成部191及び第2コイル構成部192は、回転軸12の周方向D2にずらした状態で分布巻きされている。したがって、第1導電部21、第2導電部22、内側接続部23、及び外側接続部24はそれぞれ、回転軸12の周方向D2においてU相、U相、V相、V相、W相、W相の順に繰り返し並んでいる。
【0033】
各相コイル19u,19v,19wには、三相交流電流が印加される。すなわち、各相コイル19u,19v,19wには、位相が120度ずつずれた交流電流が印加される。本実施形態では、各相コイル19u,19v,19wにおいて、第1コイル構成部191と第2コイル構成部192とは、直列接続されている。したがって、各相コイル19u,19v,19wにおいて、電流は、一方のコイル構成部191,192を流れた後、他方のコイル構成部191,192を流れる。
【0034】
電流は、各導電部20を導電部20の延在方向に沿って流れる。本実施形態では、電流は、ラジアル部31をラジアル部31の延在方向に沿って流れる。電流は、内側渡線部32を内側渡線部32の延在方向に沿って流れる。電流は、外側渡線部33を外側渡線部33の延在方向に沿って流れる。
【0035】
図6に示すように、各導電部20の幅Wは、コイル18の径方向D3において変化している。導電部20の幅Wとは、導電部20の延在方向及び厚さ方向の両方と直交する幅方向における寸法のことである。導電部20の幅Wは、ラジアル部31、内側渡線部32、及び外側渡線部33でそれぞれ異なっている。また、ラジアル部31の幅Wは、ラジアル部31の延在方向において変化している。内側渡線部32の幅Wは、内側渡線部32の延在方向において変化している。外側渡線部33の幅Wは、外側渡線部33の延在方向において変化している。
【0036】
ラジアル部31の延在方向の一端から他端までラジアル部31の幅Wの平均値をラジアル部31の平均幅とする。内側渡線部32の延在方向の一端から他端までの内側渡線部32の幅の平均値を内側渡線部32の平均幅とする。外側渡線部33の延在方向の一端から他端までの外側渡線部33の幅の平均値を外側渡線部33の平均幅とする。本実施形態では、ラジアル部31の平均幅、内側渡線部32の平均幅、及び外側渡線部33の平均幅の大小関係は、内側渡線部32の平均幅<外側渡線部33の平均幅<ラジアル部31の平均幅となっている。
【0037】
図7に示すように、各永久磁石14a,14bとコイル18とは、回転軸12の軸方向D1に積層されている。各永久磁石14a,14bの磁束は、各導電部20を回転軸12の軸方向D1に貫通している。本実施形態では、回転軸12の径方向D3におけるコイル18の寸法は、回転軸12の径方向D3における各永久磁石14a,14bの寸法よりも大きい。
【0038】
各導電部20のラジアル部31と、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の軸方向D1の中央側に位置する部分とは、回転軸12の軸方向D1に重なっている。このため、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の軸方向D1の中央側に位置する部分からの磁束は、各導電部20のラジアル部31を回転軸12の軸方向D1に貫通している。
【0039】
各導電部20の内側渡線部32の一部と、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において内側に位置する部分とは、回転軸12の軸方向D1に重なっている。このため、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において内側に位置する部分からの磁束は、各導電部20の内側渡線部32の一部を回転軸12の軸方向D1に貫通している。
【0040】
各導電部20の外側渡線部33の一部と、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において外側に位置する部分とは、回転軸12の軸方向D1に重なっている。このため、各永久磁石14a,14bの磁束のうち、回転軸12の径方向D3において外側に位置する部分からの磁束は、各導電部20の外側渡線部33の一部を回転軸12の軸方向D1に貫通している。
【0041】
各永久磁石14a,14bの磁束密度は、各永久磁石14a,14bの中央から端に向かうにつれて低くなることが知られている。このため、各永久磁石14a,14bの磁束密度は、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において中央側に位置する部分から内側に位置する部分に向かうにつれて低くなっている。このため、本実施形態では、各導電部20のラジアル部31における磁束密度は、内側渡線部32における磁束密度よりも高くなっている。また、各永久磁石14a,14bの磁束密度は、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において中央側に位置する部分から外側に位置する部分に向かうにつれて低くなっている。このため、本実施形態では、各導電部20のラジアル部31における磁束密度は、外側渡線部33における磁束密度よりも高くなっている。
【0042】
<分割領域>
図6に示すように、各導電部20には、複数本のスリット40が設けられている。各スリット40は、導電部20の延在方向に沿って延びている。各スリット40の幅は、全てのスリット40で略同じである。各導電部20は、スリット40によって導電部20の幅方向に分割されている。各導電部20においてスリット40によって導電部20の幅方向に分割される領域を分割領域Aとする。各導電部20は、分割領域Aを導電部20の延在方向において複数有している。複数の分割領域Aのうち、少なくとも2つの異なる分割領域Aにおいて、一方の分割領域Aにおける分割数と他方の分割領域Aにおける分割数とは異なっている。
【0043】
本実施形態では、導電部20の外側渡線部33には、1本の第1スリット41が設けられている。第1スリット41は、外側渡線部33の延在方向に沿って延びている。
外側渡線部33は、第1スリット41によって導電部20の幅方向に2分割されている。第1スリット41は、外側渡線部33の幅方向の中央に位置している。したがって、外側渡線部33は、第1スリット41によって導電部20の幅方向に均等に2分割されている。外側渡線部33において第1スリット41により導電部20の幅方向に分割される領域を第1分割領域A1とする。第1分割領域A1における導電部20の分割数は「2」である。
【0044】
また、導電部20の外側渡線部33には、2本の第2スリット42が設けられている。各第2スリット42は、外側渡線部33の延在方向に沿って延びている。2本の第2スリット42は、外側渡線部33の幅方向において並んでいる。2本の第2スリット42は、コイル18の径方向D3において第1スリット41よりも内側に位置している。各第2スリット42の長さは、第1スリット41の長さの半分である。
【0045】
外側渡線部33は、2本の第2スリット42によって導電部20の幅方向に3分割されている。外側渡線部33の幅方向の一端から一方の第2スリット42までの距離、一方の第2スリット42から他方の第2スリット42までの距離、及び他方の第2スリット42から外側渡線部33の幅方向の他端までの距離は、同じである。したがって、外側渡線部33は、2本の第2スリット42によって導電部20の幅方向に均等に3分割されている。外側渡線部33において2本の第2スリット42によって導電部20の幅方向に分割される領域を第2分割領域A2とする。第2分割領域A2における導電部20の分割数は「3」である。
【0046】
導電部20のラジアル部31には、2本の第3スリット43が設けられている。各第3スリット43は、ラジアル部31の延在方向に沿って延びている。2本の第3スリット43は、ラジアル部31の幅方向において並んでいる。各第3スリット43は、各第2スリット42と繋がっている。
【0047】
ラジアル部31は、2本の第3スリット43によって導電部20の幅方向に3分割されている。ラジアル部31の幅方向の一端から一方の第3スリット43までの距離、一方の第3スリット43から他方の第3スリット43までの距離、及び他方の第3スリット43からラジアル部31の幅方向の他端までの距離は、同じである。したがって、ラジアル部31は、2本の第3スリット43によって導電部20の幅方向に均等に3分割されている。ラジアル部31において2本の第3スリット43によって導電部20の幅方向に分割される領域を第3分割領域A3とする。第3分割領域A3における導電部20の分割数は「3」である。
【0048】
また、導電部20のラジアル部31には、3本の第4スリット44が設けられている。各第4スリット44は、ラジアル部31の延在方向に沿って延びている。3本の第4スリット44は、ラジアル部31の幅方向において並んでいる。3本の第4スリット44は、コイル18の径方向D3において2本の第3スリット43よりも内側に位置している。各第4スリット44の長さは、各第3スリット43の長さと同じである。
【0049】
ラジアル部31は、3本の第4スリット44によって導電部20の幅方向に4分割されている。ラジアル部31の幅方向の一端から当該一端に最も近い第4スリット44までの距離、ラジアル部31の幅方向に隣り合う第4スリット44間の距離、及びラジアル部31の幅方向の他端から当該他端に最も近い第4スリット44までの距離は、同じである。したがって、ラジアル部31は、3本の第4スリット44によって導電部20の幅方向に均等に4分割されている。ラジアル部31において3本の第4スリット44によって導電部20の幅方向に分割される領域を第4分割領域A4とする。第4分割領域A4における導電部20の分割数は「4」である。
【0050】
さらに、導電部20のラジアル部31には、2本の第5スリット45が設けられている。各第5スリット45は、ラジアル部31の延在方向に沿って延びている。2本の第5スリット45は、ラジアル部31の幅方向において並んでいる。2本の第5スリット45は、コイル18の径方向D3において3本の第4スリット44よりも内側に位置している。各第5スリット45の長さは、各第4スリット44の長さと同じである。
【0051】
ラジアル部31は、2本の第5スリット45によって導電部20の幅方向に3分割されている。ラジアル部31の幅方向の一端から一方の第5スリット45までの距離、一方の第5スリット45から他方の第5スリット45までの距離、及び他方の第5スリット45からラジアル部31の幅方向の他端までの距離は、同じである。したがって、ラジアル部31は、2本の第5スリット45によって導電部20の幅方向に均等に3分割されている。ラジアル部31において2本の第5スリット45によって導電部20の幅方向に分割される領域を第5分割領域A5とする。第5分割領域A5における導電部20の分割数は「3」である。
【0052】
導電部20の内側渡線部32には、2本の第6スリット46が設けられている。各第6スリット46は、内側渡線部32の延在方向に沿って延びている。2本の第6スリット46は、内側渡線部32の幅方向において並んでいる。各第6スリット46は、各第5スリット45と繋がっている。
【0053】
内側渡線部32は、2本の第6スリット46によって導電部20の幅方向に3分割されている。内側渡線部32の幅方向の一端から一方の第6スリット46までの距離、一方の第6スリット46から他方の第6スリット46までの距離、及び他方の第6スリット46から内側渡線部32の幅方向の他端までの距離は、同じである。したがって、内側渡線部32は、2本の第6スリット46によって導電部20の幅方向に均等に3分割されている。内側渡線部32において2本の第6スリット46によって導電部20の幅方向に分割される領域を第6分割領域A6とする。第6分割領域A6における導電部20の分割数は「3」である。
【0054】
また、導電部20の内側渡線部32には、1本の第7スリット47が設けられている。第7スリット47は、内側渡線部32の延在方向に沿って延びている。第7スリット47は、コイル18の径方向D3において2本の第6スリット46よりも内側に位置している。第7スリット47の長さは、各第6スリット46の長さの2倍である。
【0055】
内側渡線部32は、第7スリット47によって導電部20の幅方向に2分割されている。第7スリット47は、内側渡線部32の幅方向の中央に位置している。したがって、内側渡線部32は、第7スリット47によって導電部20の幅方向に均等に2分割されている。内側渡線部32において第7スリット47によって導電部20の幅方向に分割される領域を第7分割領域A7とする。第7分割領域A7における導電部20の分割数は「2」である。
【0056】
このように本実施形態の各導電部20は、第1~第7分割領域A1~A7を有している。第1~第7分割領域A1~A7は、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かってこの順に並んでいる。本実施形態では、コイル18の径方向D3における導電部20の全体が分割領域Aである。分割領域A1,A7における導電部20の分割数は同じである。分割領域A2,A3,A5,A6における導電部20の分割数は同じである。分割領域A1,A7における導電部20の分割数と、分割領域A2,A3,A5,A6における導電部20の分割数と、分割領域A4における導電部20の分割数は、それぞれ異なっている。
【0057】
<導電部に対するスリットの配置方法>
導電部20に対するスリット40の配置方法について説明する。
図8に示すように、ステップS11において、導電部20に対し、複数の分割候補領域を設定する。分割候補領域とは、スリット40が配置されることで導電部20の幅方向に分割されることにより、分割領域Aとなり得る領域である。分割候補領域は、導電部20の延在方向において複数設定される。
【0058】
分割候補領域は、例えば、導電部20の幅や導電部20における磁束密度に基づいて設定される。上述したように、本実施形態では、導電部20の幅は、ラジアル部31、内側渡線部32、及び外側渡線部33でそれぞれ異なっている。また、導電部20における磁束密度は、内側渡線部32及び外側渡線部33よりもラジアル部31で高くなっている。
【0059】
図9に示すように、本実施形態では、導電部20には、第1部位P、第2部位Q、及び第3部位Rの3つの部位が設定される。第1部位Pは、導電部20のうち、外側渡線部33に対応する部位である。第2部位Qは、導電部20のうち、ラジアル部31に対応する部位である。第3部位Rは、導電部20のうち、内側渡線部32に対応する部位である。
【0060】
さらに、本実施形態では、第1部位Pに対し、3個の領域が設定される。第1部位Pに対して設定された3個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、第1分割候補領域P1、第2分割候補領域P2、第3分割候補領域P3とする。第1部位Pの延在方向における第1分割候補領域P1、第2分割候補領域P2、及び第3分割候補領域P3の寸法は、それぞれ同じである。
【0061】
第2部位Qに対し、3個の領域が設定される。第2部位Qに対して設定された3個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、第4分割候補領域Q1、第5分割候補領域Q2、第6分割候補領域Q3とする。第2部位Qの延在方向における第4分割候補領域Q1、第5分割候補領域Q2、及び第6分割候補領域Q3の寸法は、それぞれ同じである。
【0062】
第3部位Rに対し、3個の領域が設定される。第3部位Rに対して設定された3個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、第7分割候補領域R1、第8分割候補領域R2、第9分割候補領域R3とする。第3部位Rの延在方向における第7分割候補領域R1、第8分割候補領域R2、及び第9分割候補領域R3の寸法は、それぞれ同じである。
【0063】
このように本実施形態の導電部20には、第1~第9分割候補領域P1,P2,P3,Q1,Q2,Q3,R1,R2,R3が設定される。以下では、「分割候補領域P1,P2,P3,Q1,Q2,Q3,R1,R2,R3」を「分割領域P1~R3」と記載する。
【0064】
図8に示すように、ステップS12において、各分割候補領域P1~R3の形状を取得する。具体的には、各分割候補領域P1~R3の長さL[m]、幅W[m]、及び厚さt[m]を取得する。幅Wは、各分割候補領域P1~R3における導電部20の幅の平均値である。また、ステップS12において、各分割候補領域P1~R3における磁束密度Bm[T]を取得する。磁束密度Bm[T]は、ロータ14の回転により導電部20を貫通する磁束が最大となるときの各分割候補領域P1~R3における平均磁束密度である。磁束密度Bm[T]は、実測、理論式、FEM(Finite Element Method)等により取得可能である。
【0065】
ステップS13において、各分割候補領域P1~R3の分割数N毎の渦電流損Le[W]を算出する。
図10に示すように、各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数を変化させることによって、各分割候補領域P1~R3の導電部20の分割数Nを変化させる。
【0066】
例えば、各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数が1本の場合、各分割候補領域P1~R3は幅方向において2分割される。このため、各分割候補領域P1~R3の分割数Nは2になる。各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数が2本の場合、各分割候補領域P1~R3は幅方向において3分割される。このため、各分割候補領域P1~R3の分割数Nは3になる。各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数が3本の場合、各分割候補領域P1~R3は幅方向において4分割される。このため、各分割候補領域P1~R3の分割数Nは4になる。
【0067】
つまり、各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数がx-1本の場合、各分割候補領域P1~R3は幅方向においてx分割される。各分割候補領域P1~R3の分割数Nはxになる。xは、2以上の整数である。本実施形態では、x=5に設定されている。なお、各分割候補領域P1~R3の導電部20に設けるスリット40の本数が0本の場合、すなわち各分割候補領域P1~R3の導電部20にスリット40を設けない場合、各分割候補領域P1~R3は幅方向に分割されない。このときの各分割候補領域P1~R3の分割数Nは1とする。
【0068】
各分割候補領域P1~R3について、分割数N毎の渦電流損Le[W]を算出する。渦電流損Leは、下記の(式1)で表される。
Le=[(π・Bm・f・d)2/6ρ]・[d・N・L・t]…(式1)
(式1)において、s[m]はスリット40の幅、ρ[Ωm]は導電部20の電気抵抗率、f[Hz]はモータ10の駆動周波数、d[m]は導体幅である。スリット40の幅s[m]は、導電部20のうち、スリット40を介して導電部20の幅方向に隣り合う部分同士の絶縁が確保される範囲で小さく設定される。スリット40がエッチングやプレス等で形成される場合、スリット40の幅s[m]の最小値は、導電部20の厚さt[m]程度である。ただし、スリット40がレーザなどの他の加工法によって形成される場合、スリット40の幅s[m]を導電部20の厚さt[m]よりも小さくすることができる。導体幅d[m]は、各分割候補領域P1~R3の導電部20のうち、スリット40が設けられていない部分の幅の合計である。すなわち、導体幅d[m]は、導電部20のうち、実際に導体が存在する部分の幅の合計である。d[m]は、W=d・N+(N-1)sを満たす。
【0069】
(式1)の(π・Bm・f・d)2/6ρは、渦電流損密度[W/m3]に対応する。d・N・L・tは、導体体積[m3]に対応する。導体体積は、各分割候補領域P1~R3の導電部20のうち、スリット40が設けられていない部分の体積の合計である。すなわち、導体体積は、各分割候補領域P1~R3の導電部20のうち、実際に導体が存在する部分の体積の合計である。渦電流損Leは、導体幅d[m]の3乗に比例するとともに、磁束密度Bm[T]の2乗に比例する。
【0070】
図11に示すように、第1分割候補領域P1の場合、N=1のときの渦電流損LeP11、N=2のときの渦電流損LeP12、N=3のときの渦電流損LeP13、N=4のときの渦電流損LeP14、及びN=5のときの渦電流損LeP15が算出される。同様に、第2分割候補領域P2の場合、N=1~5のときの渦電流損LeP21~LeP25が算出される。第3分割候補領域P3の場合、N=1~5のときの渦電流損LeP31~LeP35が算出される。第4分割候補領域Q1の場合、N=1~5のときの渦電流損LeQ11~LeQ15が算出される。第5分割候補領域Q2の場合、N=1~5のときの渦電流損LeQ21~LeQ25が算出される。第6分割候補領域Q3の場合、N=1~5のときの渦電流損LeQ31~LeQ35が算出される。第7分割候補領域R1の場合、N=1~5のときの渦電流損LeR11~LeR15が算出される。第8分割候補領域R2の場合、N=1~5のときの渦電流損LeR21~LeR25が算出される。第9分割候補領域R3の場合、N=1~5のときの渦電流損LeR31~LeR35が算出される。
【0071】
図8に示すように、ステップS14において、各分割候補領域P1~R3の分割数N毎の銅損Lc[W]を算出する。銅損Lcは、(式2)で表される。
Lc=ρ・[L/(d・N・t)]・I
2…(式2)
(式2)において、I[Arms]は導電部20に流れる電流実効値である。このように銅損Lcは、導体幅dに反比例する。上述したように渦電流損Leは導体幅dが大きいほど大きくなるのに対し、銅損Lcは導体幅dが大きいほど小さくなる。つまり、渦電流損Leと銅損Lcとはトレードオフの関係である。
【0072】
図12に示すように、第1分割候補領域P1の場合、N=1のときの銅損LcP11、N=2のときの銅損LcP12、N=3のときの銅損LcP13、N=4のときの銅損LcP14、及びN=5のときの銅損LcP15が算出される。同様に、第2分割候補領域P2の場合、N=1~5のときの銅損LcP21~LcP25が算出される。第3分割候補領域P3の場合、N=1~5のときの銅損LcP31~LcP35が算出される。第4分割候補領域Q1の場合、N=1~5のときの銅損LcQ11~LcQ15が算出される。第5分割候補領域Q2の場合、N=1~5のときの銅損LcQ21~LcQ25が算出される。第6分割候補領域Q3の場合、N=1~5のときの銅損LcQ31~LcQ35が算出される。第7分割候補領域R1の場合、N=1~5のときの銅損LcR11~LcR15が算出される。第8分割候補領域R2の場合、N=1~5のときの銅損LcR21~LcR25が算出される。第9分割候補領域R3の場合、N=1~5のときの銅損LcR31~LcR35が算出される。
【0073】
図8に示すように、ステップS15において、各分割候補領域P1~R3の分割数N毎の渦電流損Le[W]及び銅損Lc[W]の損失和Le+Lc[W]を算出する。
図13に示すように、例えば、第1分割候補領域P1の場合、N=1のときの損失和LeP11+LcP11、N=2のときの損失和LeP12+LcP12、N=3のときの損失和LeP13+LcP13、N=4のときの損失和LeP14+LcP14、N=5のときの損失和LeP15+LcP15が算出される。具体的な説明は省略するが、
図8の表に示す通り、第2~第9分割候補P2~R3についても同様に損失和Le+Lcが算出される。
【0074】
図8に示すように、ステップS16において、各分割候補領域P1~R3について、ステップS15で算出した損失和Le+Lc[W]が最小となるときの分割数Nを最適分割数Ndとして抽出する。
【0075】
図13に示すように、第1分割候補領域P1では、算出された損失和LeP11+LcP11、LeP12+LcP12、LeP13+LcP13、LeP14+LcP14、LeP1+LcP15のうち、LeP12+LcP12が最小であるとする。このときの分割数Nは2である。したがって、第1分割候補領域P1の最適分割数Ndとして「2」を抽出する。
【0076】
同様に、第2分割候補領域P2の最適分割数Ndとして「2」を抽出する。第3分割候補領域P3の最適分割数Ndとして「3」を抽出する。第4分割候補領域Q1の最適分割数Ndとして「3」を抽出する。第5分割候補領域Q2の最適分割数Ndとして「4」を抽出する。第6分割候補領域Q3の最適分割数Ndとして「3」を抽出する。第7分割候補領域R1の最適分割数Ndとして「3」を抽出する。第8分割候補領域R2の最適分割数Ndとして「2」を抽出する。第9分割候補領域R3の最適分割数Ndとして「2」を抽出する。
【0077】
図8に示すように、ステップS17において、各分割候補領域P1~R3の分割数NがステップS16で抽出した最適分割数Ndとなるように、各分割候補領域P1~R3に対してスリット40を配置する。
【0078】
具体的には、第1分割候補領域P1の最適分割数Ndは2である。このため、第1分割候補領域P1の分割数Nが2となるように、第1分割候補領域P1には1本のスリット40が配置される。第2分割候補領域P2の最適分割数Ndは2である。このため、第2分割候補領域P2の分割数Nが2となるように、第2分割候補領域P2には1本のスリット40が配置される。第3分割候補領域P3の最適分割数Ndは3である。このため、第3分割候補領域P3の分割数Nが3となるように、第3分割候補領域P3には2本のスリット40が配置される。
【0079】
第4分割候補領域Q1の最適分割数Ndは3である。このため、第4分割候補領域Q1の分割数Nが3となるように、第4分割候補領域Q1には2本のスリット40が配置される。第5分割候補領域Q2の最適分割数Ndは4である。このため、第5分割候補領域Q2の分割数Nが4となるように、第5分割候補領域Q2には3本のスリット40が配置される。第6分割候補領域Q3の最適分割数Ndは3である。このため、第6分割候補領域Q3の分割数Nが3となるように、第6分割候補領域Q3には2本のスリット40が配置される。
【0080】
第7分割候補領域R1の最適分割数Ndは3である。このため、第7分割候補領域R1の分割数Nが3となるように、第7分割候補領域R1には2本のスリット40が配置される。第8分割候補領域R2の最適分割数Ndは2である。このため、第8分割候補領域R2の分割数Nが2となるように、第8分割候補領域R2には1本のスリット40が配置される。第9分割候補領域R3の最適分割数Ndは2である。このため、第9分割候補領域R3の分割数Nが2となるように、第9分割候補領域R3には1本のスリット40が配置される。
【0081】
その結果、第1分割候補領域P1及び第2分割候補領域P2は、第1分割領域A1になる。第3分割候補領域P3は、第2分割領域A2になる。第4分割候補領域Q1は、第3分割領域A3になる。第5分割候補領域Q2は、第4分割領域A4になる。第6分割候補領域Q3は、第5分割領域A5になる。第7分割候補領域R1は、第6分割領域A6になる。第8分割候補領域R2及び第9分割候補領域R3は、第7分割領域A7になる。
【0082】
上述した導電部20に対するスリット40の配置方法は、次のように一般化することができる。
図14に示すように、ステップS11において、導電部20に対し、複数の分割候補領域を設定する。導電部20には、第1部位P、第2部位Q、及び第3部位Rの3つの部位が設定される。
【0083】
さらに、第1部位Pに対し、n個の領域が設定される。nは、1以上の整数である。第1部位Pに対して設定されたn個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、分割候補領域P1、分割候補領域P2、・・・、分割候補領域Pn-1、分割候補領域Pnとする。
【0084】
第2部位Qに対し、m個の領域が設定される。mは、1以上の整数である。第2部位Qに対して設定されたm個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、分割候補領域Q1、分割候補領域Q2、・・・、分割候補領域Qm-1、分割候補領域Qmとする。
【0085】
第3部位Rに対し、k個の領域が設定される。kは、1以上の整数である。第3部位Rに対して設定されたk個の領域について、コイル18の径方向D3の外側から内側に向かって、分割候補領域R1、分割候補領域R2、・・・、分割候補領域Rk-1、分割候補領域Rkとする。
【0086】
導電部20には、n+m+k個の分割候補領域P1,・・・,Pn、Q1,・・・,Qm、R1,・・・,Rkが設定される。以下では、「分割候補領域P1,・・・,Pn、Q1,・・・,Qm、R1,・・・,Rk」を「分割候補領域P1~Rk」と記載する。
【0087】
ステップS12において、各分割候補領域P1~Rkの形状を取得する。ステップS12において、各分割候補領域P1~Rkにおける磁束密度Bm[T]を取得する。
図15に示すように、ステップS13において、各分割候補領域P1~Rkの分割数N毎の渦電流損Le[W]を算出する。例えば、分割候補領域P1の場合、N=1~xのときの渦電流損LeP11~LeP1xが算出される。具体的な説明は省略するが、
図15の表に示す通り、他の分割候補P2~Rkについても同様に渦電流損Leが算出される。したがって、ステップS13では、(n+m+k)×x個の渦電流損Le[W]が算出される。
【0088】
図16に示すように、ステップS14において、各分割候補領域P1~Rkの分割数N毎の銅損Lc[W]を算出する。例えば、分割候補領域P1の場合、N=1~xのときの銅損LcP11~LcP1xが算出される。具体的な説明は省略するが、
図16の表に示す通り、他の分割候補P2~Rkについても同様に銅損Lc[W]が算出される。したがって、ステップS14では、(n+m+k)×x個の銅損Lc[W]が算出される。
【0089】
図17に示すように、ステップS15において、各分割候補領域P1~Rkの分割数N毎の渦電流損Le[W]及び銅損Lc[W]の損失和Le+Lc[W]を算出する。例えば、分割候補領域P1の場合、N=1~xのときの損失和LeP11+LcP11~LeP1x+LcP1xが算出される。具体的な説明は省略するが、
図17の表に示す通り、他の分割候補P2~Rkについても同様に損失和Le+Lc[W]が算出される。したがって、ステップS15では、(n+m+k)×x個の損失和Le+Lc[W]が算出される。
【0090】
ステップS16において、各分割候補領域P1~Rkについて、ステップS15で算出された損失和Le+Lc[W]が最小となるときの分割数Nを最適分割数Ndとして抽出する。
【0091】
ステップS17において、各分割候補領域P1~Rkにおける導電部20の分割数NがステップS16で抽出された最適分割数Ndとなるように、各分割候補領域P1~Rkに対してスリット40を配置する。すなわち、各分割候補領域P1~Rkに対して、Nd-1[本]のスリット40を配置する。
【0092】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)円環状のコイル18は、コイル18の径方向D3に延在するとともにコイル18の周方向D2に並ぶ複数の導電部20を備えている。複数の導電部20には、導電部20の延在方向に延びるスリット40がそれぞれ設けられている。各導電部20は、スリット40によって導電部20の幅方向に分割される分割領域Aを導電部20の延在方向において複数有している。複数の分割領域Aのうち、少なくとも2つの異なる分割領域Aにおいて、一方の分割領域Aにおける分割数と他方の分割領域Aにおける分割数とは異なっている。この場合、各分割領域Aにおける導体の幅が渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなる幅となるように、分割領域Aにおける導電部20の分割数を個別に設定することができる。したがって、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することができる。
【0093】
(2)導電部20の幅Wは、コイル18の径方向D3において変化している。具体的には、導電部20の幅Wは、ラジアル部31、内側渡線部32、及び外側渡線部33のそれぞれで異なっている。このように導電部20の幅Wがコイル18の径方向D3において変化している場合、導電部20の分割数が1つの固定値に設定されていると、導電部20には、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるような分割数になっていない領域が生じやすい。したがって、本実施形態のように複数の分割領域Aのうち、少なくとも2つの異なる分割領域Aにおいて、一方の分割領域Aにおける分割数と他方の分割領域Aにおける分割数とを異ならせることにより、渦電流損及び銅損の合計の損失が小さくなるように損失を調整することが特に効果的である。
【0094】
(3)各永久磁石14a,14bの磁束密度は、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において中央側に位置する部分から内側又は外側に位置する部分に向かうにつれて低くなる。このため、導電部20の延在方向の中央側に位置する部分における磁束密度は、導電部20の延在方向の両端側に位置する部分における磁束密度よりも高くなりやすい。渦電流損は、磁束密度の2乗に比例する。このため、導電部20の延在方向の中央側に位置する部分での渦電流損は、導電部20の延在方向の両端側に位置する部分での渦電流損よりも大きくなりやすい。
【0095】
本実施形態では、導電部20の延在方向の中央側に位置する第4分割領域A4における導電部20の分割数は、導電部20の延在方向の両端側に位置する第1分割領域A1及び第7分割領域A7における導電部20の分割数よりも多い。このため、導電部20の延在方向の中央側に位置する第4分割領域A4における導体の幅は、導電部20の延在方向の両端側に位置する第1分割領域A1及び第7分割領域A7における導体の幅よりも小さく設定される。したがって、導電部20の延在方向の中央側に位置する部分での渦電流損を低減できる。
【0096】
(4)従来技術の場合、スリット40は、ラジアル部31のみに設けられていた。これに対し、本実施形態では、スリット40は、ラジアル部31だけでなく、内側渡線部32及び外側渡線部33にも設けられている。したがって、ラジアル部31での損失だけでなく、内側渡線部32及び外側渡線部33での損失も低減することができる。
【0097】
(5)渦電流損及び銅損の合計の損失が低減されることにより、損失によるコイル18の発熱が抑えられる。したがって、コイル18の劣化を抑制できる。また、コイル18に入力する電流の上限値を上げることができる。
【0098】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0099】
○ 上記実施形態のステップS11では、導電部20に対して3つの部位P,Q,Rが設定されていたが、これに限定されない。導電部20に対して複数の分割候補領域が設定されるのであれば、導電部20には、2つの部位が設定されてもよいし、4つ以上の部位が設定されてもよい。
【0100】
○ 上記実施形態のステップS11では、導電部20のうち、外側渡線部33に対応する部位を第1部位P、ラジアル部31に対応する部位を第2部位Q、内側渡線部32に対する部位を第3部位Rとしていたが、これに限定されない。導電部20の幅や導電部20における磁束密度に関係なく、導電部20に対して複数の分割候補領域が設定されてもよい。
【0101】
○ 上記実施形態のステップS11では、各部位P,Q,Rに対して複数の領域が設定されていたが、設定されていなくてもよい。この場合、第1~第3部位P,Q,Rがそれぞれ、分割候補領域となる。
【0102】
○ 上記実施形態のステップS11では、各部位P,Q,Rに対して3つの領域が設定されていたが、2つの領域が設定されてもよいし、4つ以上の領域が設定されてもよい。
○ 上記実施形態のステップS11では、各部位P,Q,Rに対して同じ数の領域が設定されていたが、設定される領域の数は、第1部位P、第2部位Q、及び第3部位Rで異なっていてもよい。
【0103】
○ 上記実施形態では、第1部位Pの延在方向における第1分割候補領域P1、第2分割候補領域P2、及び第3分割候補領域P3の寸法は、同じであったが、異なっていてもよい。同様に、第2部位Qの延在方向における第4分割候補領域Q1、第5分割候補領域Q2、及び第6分割候補領域Q3の寸法は、異なっていてもよい。第3部位Rの延在方向における第7分割候補領域R1、第8分割候補領域R2、及び第9分割候補領域R3の寸法は、異なっていてもよい。
【0104】
○ 上記実施形態では、スリット40は、導電部20を導電部20の幅方向に均等に分割するように配置されていたが、これに限定されない。スリット40は、導電部20を導電部20の幅方向に不均等に分割するように配置されていてもよい。
【0105】
○ 上記実施形態では、導電部20の延在方向の全体が分割領域Aであったが、導電部20の延在方向の一部が分割領域Aであってもよい。ステップS16において抽出された最適分割数Ndが1である分割候補領域を含む場合、導電部20は、スリット40によって分割されない領域、すなわち分割領域Aにならない領域を含む。
【0106】
○ 回転軸12の径方向D3におけるコイル18の寸法は、回転軸12の径方向D3における各永久磁石14a,14bの寸法以下でもよい。例えば、各導電部20の延在方向の全体と、各永久磁石14a,14bのうち、回転軸12の径方向D3において中央側に位置する部分とが、回転軸12の軸方向D1に重なっていてもよい。この場合、導電部20の延在方向における磁束密度の変化量は小さい。
【0107】
○ 上記実施形態では、各相コイル19u,19v,19wは、ラジアル巻きされていたが、これに限定されない。
例えば、各相コイル19u,19v,19wは、パラレル巻きされていてもよい。この場合、各導電部20は、回転軸12の径方向に対して傾斜するように直線状に延びている。つまり、各導電部20の延在方向は、回転軸12の径方向D3に対して傾斜する方向である。各導電部20の幅は、コイル18の径方向D3において一定でもよいし、コイル18の径方向D3において変化していてもよい。
【0108】
例えば、各相コイル19u,19v,19wは、アーク巻きされていてもよい。この場合、各導電部20は、弓状をなしている。
○ 上記実施形態では、各相コイル19u,19v,19wは、分布巻きされていたが、集中巻きされていてもよい。この場合、集中巻きされた各相コイル19u,19v,19wは、コイル18の周方向D2において並べて配置される。この場合もコイル18は、コイル18の径方向D3に沿って延びるとともにコイル18の周方向D2に並ぶ複数の導電部を有する。
【0109】
○ 上記実施形態では、各相コイル19u,19v,19wは、2つのコイル構成部191,192によって構成されていたが、1つのコイル構成部によって構成されていてもよいし、3つ以上のコイル構成部によって構成されていてもよい。
【0110】
○
図18に示すように、導電部20の延在方向に隣り合う2つの分割領域Aのうち、一方の分割領域Aから他方の分割領域Aに延在するスリット40の端部と、他方の分割領域Aから一方の分割領域Aに延在するスリット40の端部とは、導電部20の幅方向に重なり合っていてもよい。
【0111】
具体的には、第1分割領域A1と第2分割領域A2は、導電部20の延在方向に隣り合っている。第1分割領域A1から第2分割領域A2に延在する第1スリット41の端部と、各第2スリット42の端部とは、第2分割領域A2から第1分割領域A1に延在する導電部20の幅方向に重なり合っている。
【0112】
第3分割領域A3と第4分割領域A4は、導電部20の延在方向に隣り合っている。第3分割領域A3から第4分割領域A4に延在する各第3スリット43の端部と、第4分割領域A4から第3分割領域A3に延在する各第4スリット44の端部とは、導電部20の幅方向に重なり合っている。
【0113】
第4分割領域A4と第5分割領域A5は、導電部20の延在方向に隣り合っている。第4分割領域A4から第5分割領域A5に延在する各第4スリット44の端部と、第5分割領域A5から第4分割領域A4に延在する各第5スリット45の端部とは、導電部20の幅方向に重なり合っている。
【0114】
第6分割領域A6と第7分割領域A7は、導電部20の延在方向に隣り合っている。第6分割領域A6から第7分割領域A7に延在する各第6スリット46の端部と、第7分割領域A7から第6分割領域A6に延在する第7スリット47の端部とは、導電部20の幅方向に重なり合っている。
【0115】
この構成によれば、
図18において矢印で示すように、導電部20の延在方向に隣り合う分割領域Aの境界において、渦電流は導電部20を導電部20の幅方向に横断するように流れにくくなる。したがって、スリット40を取り囲むような渦電流のループが形成されにくくなる。
【0116】
○ モータ10が備えるロータ14及びステータ15の数は適宜変更してもよい。
○ 上記実施形態では、ロータ14と2つのステータ15とが交互に積層されていたが、ロータ14と1つのステータ15とが交互に積層されていてもよいし、ロータ14と3つ以上のステータ15とが交互に積層されていてもよい。
【0117】
○ ステータ15のプレート17は省略されてもよい。つまり、ステータ15は、プリント基板ではなく、コイル18単体であってもよい。
[付記]
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【0118】
[1]回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の周方向に並ぶ複数の永久磁石を有するロータと、前記ロータと前記回転軸の軸方向に積層されるステータとを備えるアキシャル型のモータの前記ステータに用いられる円環状のステータ用のコイルであって、前記コイルの径方向に延在するとともに前記コイルの周方向に並ぶ複数の導電部を備え、複数の前記導電部には、前記導電部の延在方向に延びる複数本のスリットがそれぞれ設けられ、前記導電部は、前記スリットによって前記導電部の幅方向に分割される分割領域を前記導電部の延在方向において複数有し、複数の前記分割領域のうち、少なくとも2つの異なる前記分割領域において、一方の前記分割領域における分割数と他方の前記分割領域における分割数とが異なることを特徴とするステータ用のコイル。
【0119】
[2]前記導電部の幅は、前記コイルの径方向において変化している[1]に記載のステータ用のコイル。
[3]前記導電部の延在方向の中央側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数は、前記導電部の延在方向の両端側に位置する前記分割領域における前記導電部の分割数よりも多い[1]又は[2]に記載のステータ用のコイル。
【0120】
[4]前記導電部の延在方向に隣り合う2つの前記分割領域のうち、一方の前記分割領域から他方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部と、他方の前記分割領域から一方の前記分割領域に延在する前記スリットの端部とは、前記導電部の幅方向に重なり合っている[1]~[3]の何れか1つに記載のステータ用のコイル。
【符号の説明】
【0121】
10…モータ、12…回転軸、14…ロータ、14a…永久磁石としての第1永久磁石、14b…永久磁石としての第2永久磁石、15…ステータ、18…ステータ用のコイル、20…導電部、40…スリット、A…分割領域、D1…軸方向、D2…周方向、D3…径方向。