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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159045
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】産業車両用のインバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241031BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074778
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA07
5H770AA21
5H770BA02
5H770DA03
5H770HA02Y
5H770PA22
5H770QA02
5H770QA08
5H770QA14
5H770QA31
5H770QA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の歪みを生じさせることなく、突片の共振を容易に抑制できる産業車両用のインバータ装置を提供すること。
【解決手段】産業車両用のインバータ装置10において、コア一体バスバー75は、ドライブ基板60に向けて延出する樹脂アーム80を備える。樹脂アーム80は、ドライブ基板60の一部となる突片62をドライブ基板60の板厚方向に弾性付勢することで、基板の歪みを生じさせることなく、さらに新たな部品を追加することなく、突片の共振を容易に抑制する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路の少なくとも一部が実装された基板と、
前記基板が締結される支持部材であって、前記基板に向けて突出して当該基板を支持し、かつ前記基板を貫通したネジが締結されるボスを備える前記支持部材と、
前記インバータ回路によって駆動される駆動部と当該インバータ回路との間に設けられるバスバーと、
前記バスバーにおける前記インバータ回路との電気接続部が締結される第1端子台と、
前記バスバーにおける前記駆動部との電気接続部が締結される第2端子台と、を備え、
前記バスバー及び前記第2端子台の少なくとも一方は、前記基板に向けて延出する樹脂アームを備えており、
前記樹脂アームは、前記基板の一部となる突片に接触して当該突片を前記基板の板厚方向に弾性付勢していることを特徴とする産業車両用のインバータ装置。
【請求項2】
前記バスバーに流れる電流を検出するホール素子式の電流センサを備え、
前記バスバーには、前記電流センサの周囲に配置されるコアを保持する樹脂部が一体成形されており、
前記樹脂アームは、前記樹脂部から延出している請求項1に記載の産業車両用のインバータ装置。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記コアを保持するコア保持部と、当該コア保持部から延出する腕部と、当該腕部から延出する前記樹脂アームと、を備え、前記コア保持部及び前記腕部は、前記突片よりも下方に位置しており、前記樹脂アームは、前記腕部から上方へ延出するとともに、前記突片より上方にて当該突片に向けて延出するように屈曲しており、当該樹脂アームの先端部の下面が前記突片に接触している請求項2に記載の産業車両用のインバータ装置。
【請求項4】
前記樹脂アームは、前記突片に接触する接触部の先端に球面部を備える請求項3に記載の産業車両用のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両用のインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、走行モータの駆動で走行する産業車両は、走行モータを駆動させるインバータ装置を備える。インバータ装置は、電源から入力された直流電力を交流電力に変換して走行モータに供給する。例えば、特許文献1に開示のインバータ装置は、ヒートシンクと、パワー基板と、制御基板と、を備える。また、インバータ装置は、制御基板をヒートシンクに固定するために設けられたブラケットを備える。ブラケットは、板状の本体と、本体の板厚方向に突出する複数の締結ボスと、を備える。締結ボスにより、パワー基板と、制御基板との間隔が維持されている。制御基板は、当該制御基板、締結ボス、及びパワー基板を貫通したネジによってヒートシンクに締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-198656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電子部品のレイアウトによっては、制御基板やパワー基板の一部分に突片が形成される場合があるが、突片は、産業車両における走行モータ等の振動源の振動と共振しやすい。このような突片の共振を抑制するため、例えば、特許文献1におけるブラケットに締結ボスを設けて、当該締結ボスに突片を締結することが考えられる。しかし、ブラケットにおいて、基板の突片の近くに他の部品が配置されていると、ブラケットに締結ボスを設けることが困難である。そこで、ブラケット以外の部品に締結ボスを設けることが考えられる。しかし、ブラケットに設けた締結ボスと、ブラケット以外の部品に設けた締結ボスとでは、高さにズレが生じやすいため、各締結ボスに、突片の形成された基板を締結すると、高さのズレに起因して基板に歪みが生じてしまって好ましくない。よって、基板の一部から突出した突片は、その振動、ひいては共振の抑制が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための産業車両用のインバータ装置は、インバータ回路の少なくとも一部が実装された基板と、前記基板が締結される支持部材であって、前記基板に向けて突出して当該基板を支持し、かつ前記基板を貫通したネジが締結されるボスを備える前記支持部材と、前記インバータ回路によって駆動される駆動部と当該インバータ回路との間に設けられるバスバーと、前記バスバーにおける前記インバータ回路との電気接続部が締結される第1端子台と、前記バスバーにおける前記駆動部との電気接続部が締結される第2端子台と、を備え、前記バスバー及び前記第2端子台の少なくとも一方は、前記基板に向けて延出する樹脂アームを備えており、前記樹脂アームは、前記基板の一部となる突片に接触して当該突片を前記基板の板厚方向に弾性付勢していることを要旨とする。
【0006】
これによれば、樹脂アームの弾性付勢により、突片の振動が抑制されるため、突片が振動源と共振することを抑制できる。したがって、突片の共振を抑制するために、支持部材と異なる部品に設けたボスに突片を締結する必要もない。したがって、突片の共振抑制のために、基板が、支持部材と異なる部品に締結されることもなくなる。その結果、異なる部品に設けられたボスと、支持部品のボスとの高さのズレに起因した、基板の歪みも抑制できる。したがって、基板の歪みを生じさせることなく、突片の共振を容易に抑制できる。
【0007】
産業車両用のインバータ装置について、前記バスバーに流れる電流を検出するホール素子式の電流センサを備え、前記バスバーには、前記電流センサの周囲に配置されるコアを保持する樹脂部が一体成形されており、前記樹脂アームは、前記樹脂部から延出していてもよい。
【0008】
これによれば、電流センサは、バスバーに流れる電流を検出するため、バスバーの近傍に設けられる。その電流センサの周囲にコアを配置するため、コアを保持する樹脂部はバスバーに一体成形される。そして、樹脂アームは、樹脂部から延出する。したがって、バスバー及び樹脂部は、インバータ装置に既存の部品である。この既存の樹脂部から樹脂アームを延出したため、新たな部品を追加することなく基板の突片の共振を抑制できる。
【0009】
産業車両用のインバータ装置について、前記樹脂部は、前記コアを保持するコア保持部と、当該コア保持部から延出する腕部と、当該腕部から延出する前記樹脂アームと、を備え、前記コア保持部及び前記腕部は、前記突片よりも下方に位置しており、前記樹脂アームは、前記腕部から上方へ延出するとともに、前記突片より上方にて当該突片に向けて延出するように屈曲しており、当該樹脂アームの先端部の下面が前記突片に接触していてもよい。
【0010】
これによれば、樹脂アームの形状を、突片を下方へ押し付けるのに適した形状にできる。
産業車両用のインバータ装置について、前記樹脂アームは、前記突片に接触する接触部の先端に球面部を備えていてもよい。
【0011】
これによれば、樹脂アームの経年変形や、基板の変位や、突片の変位によって接触部と突片とが接触する位置が変化しても、接触部の球面部により、接触部を突片に接触させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基板の歪みを生じさせることなく、突片の共振を容易に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のインバータ装置を示す分解斜視図である。
図2図2は、実施形態のインバータ装置を示す斜視図である。
図3図3は、コア一体バスバーを示す斜視図である。
図4図4は、実施形態のインバータ装置を示す部分側面図である。
図5図5は、実施形態のインバータ装置を示す平面図である。
図6図6は、別例のインバータ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、産業車両用のインバータ装置を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。以下の説明では、産業車両用のインバータ装置を、単に「インバータ装置」と記載する。インバータ装置は、産業車両を走行させる走行モータの駆動を制御するため、産業車両に搭載されている。インバータ装置は、電源から入力された直流電流を交流電流に変換して走行モータに供給する。
【0015】
<インバータ装置>
図1図2及び図4に示すように、インバータ装置10は、ヒートシンク11と、第1端子台30を備える支持部材31と、第2端子台40と、制御基板50と、ドライブ基板60と、バスバー70と、を備える。また、インバータ装置10は、制御基板50に実装された制御回路54、半導体素子55、及びドライブ基板60に実装された駆動回路59を備えるインバータ回路56を備える。
【0016】
<ヒートシンク>
ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。ヒートシンク11は、内部に冷媒を流通可能な中空状である。ヒートシンク11は、第1載置部12と、第2載置部13と、段差部14と、を備える。
【0017】
第1載置部12は、ヒートシンク11において、支持部材31が載置されるとともに当該支持部材31の締結される部位である。第2載置部13は、ヒートシンク11において、第2端子台40が載置されるとともに当該第2端子台40の締結される部位である。段差部14は、ヒートシンク11において第1載置部12と第2載置部13に挟まれた部位である。インバータ装置10において、第1載置部12と第2載置部13の対向する方向を第1方向Xとする。
【0018】
ヒートシンク11は、支持部材31の載置される第1載置面12aを第1載置部12に備えるとともに、第2端子台40の載置される第2載置面13aを第2載置部13に備える。ヒートシンク11は、第1載置面12a及び第2載置面13aよりも凹んだ位置に第3載置面14aを備える。第3載置面14aは、段差部14に設けられている。ヒートシンク11は、第1載置面12a、第2載置面13a、及び第3載置面14aの反対面に底面12cを備える。
【0019】
第1載置面12a、第2載置面13a及び第3載置面14aに沿う方向のうち、第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。なお、第1方向X及び第2方向Yに直交する方向を第3方向Zとする。第3方向Zは、ヒートシンク11の板厚方向及び上下方向でもある。
【0020】
段差部14の第2方向Yへの寸法は、第1載置部12及び第2載置部13の第2方向Yへの寸法より短い。
ヒートシンク11は、第1載置部12から第2載置部13に向けて第1方向Xに延出する第1延出部16を備えるとともに、第2載置部13から第1載置部12に向けて第1方向Xに延出する第2延出部17を備える。ヒートシンク11は、第1延出部16及び第2延出部17の各々から第3方向Zへ突出する位置決め突起18を備える。
【0021】
<支持部材>
支持部材31は、当該支持部材31の板厚方向に互いに反対となる第1面31aと第2面31bとを備える。第1面31a及び第2面31bの各々は、平坦面である。支持部材31は、当該支持部材31の複数の側面から延出する固定片31cを備える。
【0022】
支持部材31は、第1面31aから突出した複数のボス32を備える。複数のボス32の各々は、第1面31aから第3方向Zへ筒状に突出している。複数のボス32は、支持部材31の縁寄りに形成されている。複数のボス32の各々は、第3方向Zの先端に基板載置面32aを備える。第1面31aから基板載置面32aまでの寸法は、複数のボス32で同じである。このため、複数の基板載置面32aは、同一平面上に位置しているとともに、同じ高さに位置している。なお、支持部材31に設けるボス32の数及び位置は適宜変更可能である。ボス32の内周面には、図示しない雌ねじが形成されている。
【0023】
また、図1に示すように、支持部材31には、半導体素子55が内蔵されている。半導体素子55は、後に説明する駆動回路59によって駆動される。また、半導体素子55は、後に説明するバスバー70と導通される。
【0024】
3つの第1端子台30は、支持部材31の一側面から第2端子台40に向けて第1方向Xに突出するとともに、第2方向Yに並んで突出している。3つの第1端子台30の各々は、第1締結面33を備える。3つの第1締結面33は、同一平面上に位置している。3つの第1締結面33の各々は、第3方向Zにおいて基板載置面32aよりも高い位置にある。第1締結面33には、金属端子33bが露出している。
【0025】
上記構成の支持部材31は、第2面31bをヒートシンク11の第1載置面12aに載置するとともに、固定片31cを貫通したネジ34を第1載置部12にねじ込むことにより、ヒートシンク11に締結されている。
【0026】
<第2端子台>
第2載置部13に締結された第2端子台40は、複数の固定片41と、3つの第2締結面42と、を備える。第2端子台40は樹脂製である。第2端子台40は、第2載置面13aに載置されているとともに、固定片41を貫通したネジ35は、第2載置部13にねじ込まれている。これにより、第2端子台40は、第2載置部13に締結されている。
【0027】
3つの第2締結面42の各々は、第2方向Yに並んでいる。第2締結面42は、第3方向Zにおいて第1締結面33と同じ高さにある。第2締結面42には、金属端子42aが露出している。詳細に図示しないが、金属端子42aには、接続端子48が電気接続されている。図2に示すように、接続端子48は、第2端子台40の外部に引き出されるとともに、走行モータ57と電気的に接続されている。
【0028】
<制御基板>
図1及び図4に示すように、制御基板50は、当該制御基板50の板厚方向に互いに反対となる第1実装面50aと第2実装面50bとを備える。制御基板50は、駆動回路59を制御する制御回路54を含む。詳細には、制御基板50の第1実装面50aには図示しない導体パターンが形成されるとともに、第2実装面50bには、制御回路54、電流センサ51及び図示しない電子部品が実装されている。電流センサ51及び制御回路54は、第2実装面50bに設けられた図示しない導体パターン上に設けられている。制御回路54は、駆動回路59の駆動を制御する。電流センサ51は、後述するバスバー70を流れる電流を検出する。電流センサ51は、ホール素子式の電流センサである。ホール素子は、バスバー70の周りに発生する磁界をホール効果によって電圧に変換する素子である。電流センサ51は、ホール素子によって変換された電圧に基づいて電流値を検出する。
【0029】
制御基板50には、一対のコア挿入孔52が形成されている。一対のコア挿入孔52の各々は、制御基板50を板厚方向に貫通している。コア挿入孔52は、電流センサ51を第2方向Yに挟むように形成されている。
【0030】
制御基板50は、第1実装面50aをヒートシンク11の底面12cに対面させてヒートシンク11に締結されている。第1実装面50aは、底面12cから離間している。
制御基板50は、第1載置部12、段差部14、及び第2載置部13の一部を底面12c側から覆っている。また、制御基板50の第1実装面50aにおいて、位置決め突起18の近傍には、電子部品53が設けられている。
【0031】
<ドライブ基板>
ドライブ基板60は、制御基板50と図示しない接続部材によって接続されている。ドライブ基板60は、当該ドライブ基板60の板厚方向に互いに反対となる第1実装面60aと第2実装面60bとを備える。ドライブ基板60の第1実装面60aには駆動回路59が実装されている。したがって、ドライブ基板60は、インバータ回路56の一部である駆動回路59が実装された基板である。
【0032】
なお、駆動回路59としては、半導体素子55を駆動するドライブICや、各々の回路を駆動させる電源に対して適切な電圧を印加するための変圧トランス等が実装されている。制御回路54によって駆動回路59が制御されると、その駆動回路59によって半導体素子55の駆動が制御される。
【0033】
ドライブ基板60は、長四角板状の基板本体61と、基板本体61の一つの縁から四角形状に突出した突片62と、を備える。基板本体61は、一対の短縁と、一対の長縁とを備える。突片62は、ドライブ基板60の駆動回路59やその他の図示しない電子部品のレイアウトの関係上、基板本体61の一部を突出させて形成されている。突片62は、基板本体61の長縁の全長の半分以下の幅であり、かつ基板本体61の短縁の全長の1/4以下の長さの小片である。つまり、突片62は、基板本体61よりも小さな小片である。また、後に説明するが、突片62は、基板本体61のようにボス32によって支持されていないとともに、突片62の突出端は自由端となっている。
【0034】
基板本体61の四隅には、ビス孔63が形成されている。ドライブ基板60は、一対の短縁を第1方向Xに延ばすとともに、一対の長縁を第2方向Yに延ばすように、支持部材31のボス32に支持されている。また、ドライブ基板60は、突片62を2つの第1端子台30の間に位置させるようにしてボス32に支持されている。そして、ドライブ基板60のビス孔63に挿通されたネジ64は、支持部材31のボス32に螺入されている。これにより、ドライブ基板60は支持部材31に締結されている。したがって、支持部材31は、ドライブ基板60を支持して締結されるとともに、ドライブ基板60に向けて突出して当該ドライブ基板60を支持し、かつドライブ基板60を貫通したネジ64が締結されるボス32を備える。
【0035】
ドライブ基板60の第2実装面60bは、ボス32の基板載置面32aに載置されているとともに、支持部材31の第1面31aに対面している。第2実装面60bは、ボス32の高さによって、支持部材31の第1面31aから離間している。また、図示しないが、第2実装面60bに設けられた導体パターンは、第1端子台30の金属端子33bと導通されている。駆動回路59と第1端子台30の金属端子33bとは、半導体素子55及び図示しない接続素子を介して導通されている。
【0036】
図5に示すように、突片62は、支持部材31における第1端子台30の突出した側面よりも第1方向Xに突出している。また、突片62は、3つの第1端子台30のうち、第2方向Yの片側2つの第1端子台30の間に配置されている。突片62は、制御基板50から突出した電子部品53の上方に配置されている。つまり、突片62の下方には、制御基板50から突出した電子部品53がある。突片62における第2実装面60bは、電子部品53の上面から離間している。
【0037】
図4に示すように、突片62における第1実装面60aは、第1締結面33よりも第3方向Zにおけるヒートシンク11寄りに位置している。つまり、突片62における第1実装面60aは、第1締結面33よりも低い位置にある。したがって、突片62は、ボス32、第1端子台30、その他の部品によって下方から支持されることなく、基板本体61の長縁から突出した小片となっている。
【0038】
<バスバー>
図1図3に示すように、3つのバスバー70の各々は、細長の銅板を折り曲げることによって形成されている。3つのバスバー70の各々は、第1締結片71と、第2締結片72と、連結片73と、を備える。第1締結片71は、銅板の第1端部に形成されているとともに、第2締結片72は、銅板の第2端部に形成されている。連結片73は、第1締結片71と第2締結片72とを連結する部位である。また、連結片73は、第1締結片71及び第2締結片72に対し屈曲している。
【0039】
バスバー70を第3方向Zから見た場合、第1締結片71と第2締結片72は第1方向Xに向き合うことなく第2方向Yへ位置ずれしている。
各バスバー70の第1締結片71は、第1端子台30の第1締結面33に載置されるとともに、締結ネジ90によって第1端子台30に締結されている。第1締結片71は、金属端子33bに接触して導通されている。駆動回路59とバスバー70とは、半導体素子55及び接続素子を介して導通されている。
【0040】
各バスバー70の第2締結片72は、第2端子台40の第2締結面42に載置されるとともに、締結ネジ90によって締結されている。第2締結片72は、金属端子42aに接触して導通されている。これにより、バスバー70と走行モータ57とが接続端子48を介して導通されている。バスバー70の第2締結片72は、走行モータ57との電気接続部である。そして、バスバー70は、第1端子台30における第1締結面33の金属端子33bと、第2端子台40における第2締結面42の金属端子42aとを導通する。したがって、バスバー70は、インバータ回路56と走行モータ57との間に設けられるとともに、インバータ回路56によって駆動される走行モータ57と、当該インバータ回路56とを電気的に接続する。また、走行モータ57は、インバータ回路56によって駆動される駆動部である。また、バスバー70の第1締結片71は、インバータ回路56との電気接続部であるとともに、第1端子台30には、その第1締結片71が締結される。3つのバスバー70のうち、後述するコア一体バスバー75以外のバスバー70の連結片73は、段差部14の第3載置面14aに載置されている。なお、バスバー70とヒートシンク11は絶縁されている。
【0041】
<コア一体バスバー>
3つのバスバー70のうち、第2方向Yにおいて、一対の位置決め突起18に最も近いバスバー70をコア一体バスバー75とする。なお、図3は、後に説明する樹脂アーム80を図示するため、コア一体バスバー75を図1とは異なる向きで図示している。
【0042】
図1及び図3に示すように、コア一体バスバー75の連結片73は、第1締結片71に連続する第1板部73aと、第2締結片72に連続する第2板部73bと、第1板部73aと第2板部73bの両方に連続する底板部73cとを備える。連結片73は、第1板部73aと、第2板部73bと、底板部73cとが形成されるように銅板を屈曲させて形成されている。
【0043】
第1板部73aは、第1締結片71に対して屈曲するとともに、第1締結片71と底板部73cを繋いでいる。第1締結片71と、第1板部73aと、底板部73cとは、一方向に並ぶように折り曲げられている。第2板部73bと底板部73cは、第1締結片71と、第1板部73aと、底板部73cとが並ぶ一方向に直交する他方向に位置ずれしている。このため、第2締結片72と底板部73cとを繋ぐ第2板部73bの長手は上記他方向に延びている。底板部73cは、第1板部73aと第2板部73bを繋ぐ長板状である。
【0044】
<樹脂部>
コア一体バスバー75は、底板部73cに一体成形された樹脂部76を備える。樹脂部76は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)によって形成されているが、樹脂部76は、後述する樹脂アーム80に可撓性を付与することができれば、PPSに限らず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)など他の樹脂製であってもよい。
【0045】
樹脂部76は、電流センサ51用のコア49をバスバー70と一体に保持するコア保持部77と、コア保持部77から延出する第1腕部78及び第2腕部79と、第1腕部78から延出する樹脂アーム80と、を備える。
【0046】
コア保持部77には、底板部73cが第1方向Xに貫通している。U状のコア49は、コア保持部77に一部埋設されているとともに、底板部73cを第2方向Yの両側から挟むようにコア保持部77に一体化されている。そして、U状のコア49の一部は、コア保持部77から突出している。
【0047】
第1腕部78は、コア保持部77における第2方向Yの両端面のうちの一方から第2方向Yへ延びる薄板状であるとともに、第2腕部79は、コア保持部77における第2方向Yの両端面のうちの他方から第1方向Xへ延びる薄板状である。第1腕部78の先端、及び第2腕部79の先端の各々には、位置決め孔82が形成されている。
【0048】
<樹脂アーム>
樹脂アーム80は、第1腕部78から延出している。樹脂アーム80は、第1腕部78から第3方向Zへ延出する第1アーム部80aと、第1アーム部80aから第1方向Xへ延出する第2アーム部80bと、を備える。第2方向Yから樹脂アーム80を見て、樹脂アーム80はL状である。第1腕部78からの第3方向Zへの第1アーム部80aの寸法は、第1アーム部80aからの第1方向Xへの第2アーム部80bの寸法より大きい。樹脂アーム80の先端部の下面、つまり第2アーム部80bの下面には接触部81が設けられている。接触部81の先端は、球面状の球面部81aである。
【0049】
樹脂アーム80は、樹脂製であることから、可撓性を有するとともに、弾性変形可能である。また、樹脂アーム80は、先端部側を屈曲させるL状であるため、樹脂アーム80の先端に向かうほど、下方へ向かうように撓みやすい。
【0050】
図4及び図5に示すように、上記構成を備えるコア一体バスバー75は、樹脂部76のコア保持部77を電流センサ51の上方に位置させて配置されている。コア保持部77から突出しているコア49の一部は、それぞれコア挿入孔52に挿入されている。これにより、コア49は、電流センサ51の周囲に配置されている。また、コア保持部77から延出した第1腕部78及び第2腕部79のそれぞれの位置決め孔82には、位置決め突起18が挿通されている。これにより、コア一体バスバー75は、第1方向X及び第2方向Yへの移動が抑制されている。したがって、コア一体バスバー75により、コア49は、電流センサ51の上方及び側方にて一定距離を保持して位置決めされている。
【0051】
電流センサ51は、コア一体バスバー75に流れる電流を検出するため、コア一体バスバー75の近傍に設けられている。また、その電流センサ51の周囲にコア49を配置するため、コア49を保持する樹脂部76は、バスバー70に一体成形されている。そして、樹脂アーム80は、樹脂部76から延出する。したがって、バスバー70及び樹脂部76は、インバータ装置10に既存の部品である。
【0052】
図4に示すように、樹脂アーム80の接触部81は、球面部81aにおいて突片62における第1実装面60aに接触している。図4の2点鎖線に、突片62が無い場合の樹脂アーム80を示す。上記したように、突片62が無い場合の樹脂アーム80は、先端に向かうほど下方へ向かうように撓みやすい。このため、樹脂アーム80は、接触部81の球面部81aを、突片62の第1実装面60aよりも下方に位置させている。
【0053】
よって、接触部81が突片62に接触した状態では、樹脂アーム80は、接触部81に接触した突片62によって押し上げられるように弾性変形している。このため、樹脂アーム80は、弾性変形から原形状への復帰力により、突片62をドライブ基板60の板厚方向に弾性付勢している。この弾性付勢により、突片62は下方に押し付けられている。
【0054】
<実施形態の作用>
走行モータ57で走行する産業車両において、ドライブ基板60の突片62は、走行モータ57の振動に共振しようとするが、突片62は、樹脂アーム80の弾性付勢により下方に押し付けられている。この押し付けにより、突片62の共振が抑制される。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コア一体バスバー75の樹脂アーム80は、突片62に接触して当該突片62を下方に押し付けるとともに弾性付勢する。この弾性付勢により、突片62の振動が抑制されるため、突片62が走行モータ57と共振することを抑制できる。したがって、突片62の共振を抑制するために、支持部材31と異なる部品に設けたボスに突片62を締結する必要もない。したがって、突片62の共振抑制のために、ドライブ基板60が、支持部材31と異なる部品に締結されることもなくなる。その結果、異なる部品に設けられたボスと、支持部材31のボス32との高さのズレに起因した、ドライブ基板60の歪みも抑制できる。したがって、インバータ装置10によれば、ドライブ基板60の歪みを生じさせることなく、突片62の共振の抑制を容易に抑制できる。
【0056】
(2)樹脂アーム80は、L状の樹脂製であるため、可撓性を発揮しやすい。この樹脂アーム80の可撓性を利用して、突片62を適切な力で押し付けることができる。
(3)突片62の下方には、制御基板50から突出した電子部品53がある。このため、突片62の下方にボスを設けることはできない。その一方で、突片62の近傍には、コア一体バスバー75が配置されるとともに、コア一体バスバー75は、コア49を保持するための樹脂部76を備える。この樹脂部76に樹脂アーム80を形成するとともに、樹脂アーム80によって突片62の共振を抑制した。したがって、突片62の近傍に配置された既存のコア一体バスバー75を利用して突片62の共振を抑制できる。よって、突片62の共振抑制のための部品追加もない。
【0057】
(4)インバータ装置10を備える産業車両は、走行モータ57や、荷役装置といった振動源が多い。このため、突片62は共振しやすい状況下にあるが、樹脂アーム80によって突片62の共振を抑制できる。よって、樹脂アーム80を備えるインバータ装置10は、産業車両に搭載されるのに適している。
【0058】
(5)樹脂アーム80は、樹脂部76のうちの第1腕部78から延出している。第1腕部78は、コア保持部77から薄板状に延出しているため、コア保持部77に比べて剛性が低い。このため、例えば、コア保持部77から樹脂アーム80が延出する場合と比べて、樹脂アーム80は撓みやすい。その結果、樹脂アーム80によって、突片62の共振は、より好適に抑制される。
【0059】
(6)樹脂アーム80は、第1腕部78から第3方向Zに延出する第1アーム部80aと、第1アーム部80aから第1方向Xに延出する第2アーム部80bとを備える。このようなL状の樹脂アーム80では、当該樹脂アーム80の先端側を形成する第2アーム部80bは、自重等により下方に向けて撓みやすい。このため、樹脂アーム80は、突片62を下方へ押し付けやすい形状である。その結果、樹脂アーム80によって、突片62の共振は、より好適に抑制される。
【0060】
(7)樹脂アーム80は、接触部81に球面部81aを備える。このため、樹脂アーム80の経年変形や、突片62の変位によって接触部81と突片62とが接触する位置が変化しても、球面部81aによって接触部81を突片62に接触させることができる。
【0061】
(8)樹脂アーム80は、第1腕部78から第3方向Zに延出する第1アーム部80aと、第1アーム部80aから第1方向Xに延出する第2アーム部80bとを備える。そして、接触部81は、第2アーム部80bの下面から下方へ突出しているため、樹脂アーム80の形状は、突片62を下方へ押し付けるのに適した形状である。
【0062】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○第1端子台30は、支持部材31と別体であってもよい。
【0063】
図6に示すように、3つのバスバー70のいずれも樹脂部76と一体でなくてもよい。この場合、インバータ装置10において、樹脂部76の配置のために確保されていたスペースは不要になる。このため、第1端子台30と第2端子台40との第1方向Xへの間隔を狭めることが可能になる。そして、バスバー70に樹脂部76が設けられていないため、突片62を弾性付勢するための樹脂アーム80を、第2端子台40の樹脂部分から延出する。この場合、樹脂アーム80は、第2端子台40から突片62に向けて第1方向Xへ真っ直ぐに延出していてもよい。そして、樹脂アーム80の先端部の下面に接触部81を設けて、接触部81を突片62に接触させる。このように構成しても、実施形態に記載の(1)、(4)、及び(7)に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、図示しないが、例えば第2方向Yへの突片62の寸法が、実施形態よりも大きい場合、実施形態のように、樹脂部76から延出する樹脂アーム80に加え、第2端子台40から延出する樹脂アーム80を設けて、2本の樹脂アーム80によって突片62を弾性付勢してもよい。
【0065】
○樹脂アーム80は、樹脂部76の第1腕部78から上方へ延出するとともに、突片62より下方にて突片62に向けて延出するように屈曲しており、当該樹脂アーム80の先端部の上面に接触部81が設けられていてもよい。そして、樹脂アーム80の接触部81を、突片62における第2実装面60bに押し当てて、突片62を下から上へ押し上げるようにして弾性付勢してもよい。
【0066】
○樹脂アーム80において、第3方向Zへの第1アーム部80aの寸法を実施形態よりも大きくするとともに、第2アーム部80bから突片62に向けて延出する第3アーム部を設けてもよい。要は、樹脂アーム80によって突片62を下方へ押し付けることができれば、樹脂アーム80の形状は実施形態の形状に限定されず。適宜変更してもよい。
【0067】
○接触部81の先端面は平坦面であって、球面状でなくてもよい。
○樹脂アーム80は、樹脂部76のコア保持部77や第2腕部79から延出していてもよい。
【0068】
○樹脂アーム80の延出するバスバー70は、コア保持部77を一体に備えていなくてもよい。例えば、バスバー70にコア49を保持しない樹脂部だけを一体成形して、その樹脂部から樹脂アーム80を延出してもよい。
【0069】
○樹脂アーム80の延出するバスバー70において、樹脂部に保持する部品は、コア49以外の部品であってもよい。
○インバータ回路56によって駆動される駆動部を、産業車両の走行モータ57に具体化したが、駆動部は、荷役装置を駆動させる荷役モータであったり、補機を駆動させる補機用モータであってもよい。
【0070】
○支持部材31のボス32に締結される基板に、駆動回路59、半導体素子55、及び制御回路54の全てを実装して、当該基板にインバータ回路56の全部を実装してもよいし、インバータ回路56の一部である駆動回路59及び半導体素子55を実装してもよい。そして、このような基板に突片62が形成されている場合、樹脂アーム80によって突片62を弾性付勢してもよい。なお、本明細書において使用される「インバータ回路の少なくとも一部」という表現は、駆動回路59、半導体素子55、及び制御回路54の3つの選択肢のうちの「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0071】
○支持部材31、ヒートシンク11、及びバスバー70は一体化されていてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記支持部材は、ヒートシンクに締結されており、前記ヒートシンクは、前記樹脂部を位置決めするために、前記腕部に挿通される位置決め突起を備える。
【符号の説明】
【0072】
10…インバータ装置、30…第1端子台、31…支持部材、32…ボス、40…第2端子台、49…コア、51…電流センサ、57…駆動部としての走行モータ、56…インバータ回路、60…基板としてのドライブ基板、62…突片、64…ネジ、70…バスバー、71…第1締結片、72…電気接続部としての第2締結片、76…樹脂部、77…コア保持部、78…第1腕部、79…第2腕部、80…樹脂アーム、81…接触部、81a…球面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6