(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159053
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】抗菌性の重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 220/36 20060101AFI20241031BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241031BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20241031BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241031BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20241031BHJP
A01N 33/04 20060101ALI20241031BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F220/36
C08L101/00
C08L33/14
A01P3/00
A01N33/12 101
A01N33/04
A01N25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074791
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】安原 主馬
(72)【発明者】
【氏名】石原 美香
(72)【発明者】
【氏名】江塚 博紀
(72)【発明者】
【氏名】高杉 水晶
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB19
4H011BC19
4H011DA03
4H011DC05
4H011DH02
4H011DH04
4J002BB001
4J002BB221
4J002BC031
4J002BD041
4J002BD121
4J002BE041
4J002BG031
4J002BG072
4J002BG101
4J002BH001
4J002BN151
4J002CB001
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
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4J002CF001
4J002CF211
4J002CG001
4J002CH081
4J002CH091
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP031
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA31Q
4J100BA32Q
4J100BA34P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA71
4J100JA01
4J100JA51
4J100JA60
(57)【要約】
【課題】優れた抗菌性を有する重合体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表されるモノマー(A)に由来する繰り返し単位、および下記式(2)で表されるモノマー(B)に由来する繰り返し単位を有し、前記繰り返し単位の合計に対して、モノマー(A)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、およびモノマー(B)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、並びに数平均分子量が1,000~100,000である、重合体(下記式中の記号の定義は、明細書に記載した通りである)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式(1)中、
R
1およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、
R
2は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示し、並びに
R
4は、炭素数が1以上30以下であるアルキル基を示す。)
で表されるモノマー(A)に由来する繰り返し単位、および
式(2):
【化2】
(式(2)中、
R
5は、水素原子またはメチル基を示し、
R
6は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示し、
R
7は、式(2a)または式(2b):
【化3】
(式(2a)および式(2b)中、
*は、結合位置を示し、
R
8~R
12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基を示し、および
X
-は、ハロゲン化物イオンを示す。)
で表される1価の基を示す。)
で表されるモノマー(B)に由来する繰り返し単位
を有し、
前記繰り返し単位の合計に対して、モノマー(A)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、およびモノマー(B)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、並びに
数平均分子量が1,000~100,000である、重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体からなる抗菌剤。
【請求項3】
請求項1に記載の重合体および樹脂を含む抗菌性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗菌性を有する重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症に対する予防意識の高まりから、身の回りの材料に対して、従来は医療・衛生分野に用いられてきた優れた抗菌性材料がより身近な材料として広く普及するようになっている。
【0003】
抗菌性材料としては、これまで様々な高分子材料が提案されている。例えば、特許文献1では、塗膜表面への抗菌性の持続的な付与が可能となる共重合体を提供することで、少量の添加により樹脂材料に容易に溶解でき、かつ、樹脂材料を塗布した際の表面平滑性および抗菌性および透明性の持続的な付与が可能となるとの知見に基づき、シロキシ基を含有する抗菌性オリゴマーが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、樹脂との加熱混練時による抗菌性の低下や着色を抑制し得る、樹脂用抗菌剤が提案されている。しかしながら、この樹脂用抗菌剤は、対象樹脂との相溶性が重要であり、成型後樹脂の透明性を重視する材料においては、この樹脂用抗菌剤の使用が限定される場合や、接触頻度が高い材料における表面においては、この樹脂用抗菌剤を使用しても、環境要因に対する表面の防汚性および透明性の維持が不十分である場合があった。
【0005】
また、特許文献3では、抗菌・抗ウイルス性と透明性に優れた硬化膜を形成しうる第4級アンモニウム塩と熱硬化性樹脂から成る抗菌・抗ウイルス剤組成物が提案され、特許文献4では、防汚性や耐指紋性と透明性に優れた光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0006】
しかし、これまで、抗菌性および防汚性を両立し、さらに手で触った際に引っ掛かりの少ない、滑らかな表面の塗膜を形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-9306号公報
【特許文献2】特開2011-173816号公報
【特許文献3】特開2023-2258号公報
【特許文献4】特開2018-123195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、溶液または樹脂に添加することによって、抗菌性に優れた溶液または樹脂組成物を製造することができる重合体を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、抗菌性および防汚性を両立し、且つ滑らかな表面の塗膜を形成できる重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
式(1):
【0010】
【0011】
(式(1)中、
R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、
R2は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示し、並びに
R4は、炭素数が1以上30以下であるアルキル基を示す。)
で表されるモノマー(A)に由来する繰り返し単位、および
式(2):
【0012】
【0013】
(式(2)中、
R5は、水素原子またはメチル基を示し、
R6は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示し、
R7は、式(2a)または式(2b):
【0014】
【0015】
(式(2a)および式(2b)中、
*は、結合位置を示し、
R8~R12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基を示し、および
X-は、ハロゲン化物イオンを示す。)
で表される1価の基を示す。)
で表されるモノマー(B)に由来する繰り返し単位
を有し、
前記繰り返し単位の合計に対して、モノマー(A)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、およびモノマー(B)に由来する繰り返し単位の量が1~99質量%であり、並びに
数平均分子量が1,000~100,000である、重合体。
[2] 前記[1]に記載の重合体からなる抗菌剤。
[3] 前記[1]に記載の重合体および樹脂を含む抗菌性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶液または樹脂に添加することによって、抗菌性に優れた溶液または樹脂組成物を製造することができる重合体が得られる。また、本発明によれば、抗菌性および防汚性を両立し、且つ滑らかな表面の塗膜を形成できる重合体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、下記式(1)で表されるモノマー(A)に由来する繰り返し単位(以下「繰り返し単位(A)」と略称することがある)、および下記式(2)で表されるモノマー(B)に由来する繰り返し単位(以下「繰り返し単位(B)」と略称することがある)を有し、
前記繰り返し単位の合計(即ち、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計)に対して、繰り返し単位(A)の量が1~99質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が1~99質量%であり、並びに
数平均分子量が1,000~100,000である、重合体を提供する。
【0018】
【0019】
本発明の重合体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の重合体を形成するために、モノマー(A)およびモノマー(B)は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以下、モノマー(A)、モノマー(B)および本発明の重合体について、順に説明する。
【0020】
式(1)中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。モノマー(A)の重合のしやすさの観点から、R1は、好ましくはメチル基である。本発明の重合体の抗菌性向上の観点から、R3は、好ましくは水素原子である。
【0021】
式(1)中、R2は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示す。アルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは直鎖状である。アルキレン基の炭素数は、本発明の重合体を含む塗膜表面の滑らかさ(以下「塗膜の滑らかさ」と略称することがある)の観点から、好ましくは1以上3以下である。R2は、塗膜の透明性の観点から、好ましくは炭素数が1以上6以下である直鎖状アルキレン基であり、より好ましくはメチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
【0022】
式(1)中、R4は、炭素数が1以上30以下であるアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは直鎖状である。アルキル基の炭素数は、重合体の抗菌性、および本発明の重合体を含む塗膜の耐指紋性(以下「塗膜の耐指紋性」と略称することがある)の観点から、好ましくは1以上18以下、より好ましくは1以上12以下、さらに好ましくは1以上10以下である。R4は、重合体の抗菌性および塗膜の耐指紋性の観点から、好ましくは炭素数が1以上18以下である直鎖状アルキル基であり、より好ましくは炭素数が1以上12以下である直鎖状アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数が1以上10以下である直鎖状アルキル基である。
【0023】
式(2)中、R5は、水素原子またはメチル基を示す。モノマー(B)の重合のしやすさの観点から、R5は、好ましくはメチル基である。
【0024】
式(2)中、R6は、炭素数が1以上6以下であるアルキレン基を示す。アルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは直鎖状である。アルキレン基の炭素数は、塗膜の滑らかさの観点から、好ましくは1以上3以下である。R6は、塗膜の滑らかさの観点から、好ましくは炭素数が1以上6以下である直鎖状アルキレン基であり、より好ましくはメチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
【0025】
式(2)中、R7は、式(2a)または式(2b):
【0026】
【0027】
(式(2a)および式(2b)中、
*は、結合位置を示し、
R8~R12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基を示し、および
X-は、ハロゲン化物イオンを示す。)
で表される1価の基を示す。
【0028】
R7が式(2a)で表される1価の基であるモノマー(B)を使用する場合、水への重合体の溶解し易さおよび樹脂への重合体の分散し易さの観点から、この基は、本発明の重合体中では、ハロゲン化水素との塩(即ち、ハロゲン化水素酸塩)を形成していることが好ましい。即ち、モノマー(B)中の式(2a)で表される1価の基は、本発明の重合体中では、式(2c):
【0029】
【0030】
(式(2c)中の記号の定義は、上記の通りである。)
で表される塩の形態の1価の基であることが好ましい。ハロゲン化水素としては、例えばフッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられる。本発明の重合体と樹脂との相溶性(以下「樹脂との相溶性」と略称することがある)および塗膜の滑らかさの観点から、ハロゲン化水素は、好ましくは塩化水素である。
【0031】
モノマー(B)の重合のしやすさの観点から、R8~R12は、好ましくは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、より好ましくは共にメチル基である。
ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンが挙げられる。樹脂との相溶性および塗膜の滑らかさの観点から、X-は、好ましくは塩化物イオン(Cl-)である。
【0032】
モノマー(A)およびモノマー(B)の重合形式は、ランダム、ブロックまたはこれらの両方のいずれでもよいが、好ましくはランダムである。即ち、本発明の重合体は、好ましくはランダム共重合体である。
【0033】
本発明の重合体の抗菌性、および樹脂との相溶性の観点から、繰り返し単位(A)の量が1~99質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が1~99質量%であることが必要であり、繰り返し単位(A)の量が10~90質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が10~90質量%であることが好ましく、繰り返し単位(A)の量が20~80質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が20~80質量%であることがより好ましく、繰り返し単位(A)の量が30~70質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が30~70質量%であることがさらに好ましい。なお、前記繰り返し単位の量の基準は、いずれも、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計である。
【0034】
本発明の重合体は、モノマー(A)およびモノマー(B)とは異なるモノマー(C)に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。モノマー(C)としては、例えば、反応性官能基としてアクリロイル基およびメタクリロイル基などのラジカル重合性の官能基を有するもの(例えば、モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル)が好ましい。モノマー(C)として、一般に反応性希釈剤と呼ばれる低粘度のアクリレートまたはメタクリレートを用いてもよい。本発明の重合体中のモノマー(C)に由来する繰り返し単位の量は、本発明の重合体に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。本発明の重合体は、モノマー(C)に由来する繰り返し単位を含まないことがさらに好ましい。
なお、本明細書中、「繰り返し単位」とは、重合体中でモノマーに由来する繰り返しの構造部分を意味し、重合開始剤、または連鎖移動剤等に由来する構造部分は含まれない。
【0035】
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の重合体の抗菌性および樹脂との相溶性の観点から、1,000~100,000、好ましくは3,000~50,000、より好ましくは5,000~20,000である。重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
【0036】
本発明の重合体の好適例としては、以下のものが挙げられる。
[本発明の重合体(I)]
R1が、メチル基であり、
R2が、炭素数が1以上6以下である直鎖状アルキレン基であり、
R3が、水素原子であり、
R4が、炭素数が1以上18以下である直鎖状アルキル基であり、
R5が、メチル基であり、
R6が、炭素数が1以上6以下である直鎖状アルキレン基であり、
R7が、式(2a)または式(2b)で表される1価の基であり、
R7が式(2a)で表される1価の基である場合、この基は、重合体中で塩酸塩の形態であり、
R8~R12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、
X-が、塩化物イオンであり、
繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計に対して、繰り返し単位(A)の量が20~80質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が20~80質量%であり、並びに
数平均分子量が、1,000~100,000である、重合体。
【0037】
[本発明の重合体(II)]
R1が、メチル基であり、
R2が、メチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基であり、
R3が、水素原子であり、
R4が、炭素数が1以上12以下である直鎖状アルキル基であり、
R5が、メチル基であり、
R6が、メチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基であり、
R7が、式(2a)または式(2b)で表される1価の基であり、
R7が式(2a)で表される1価の基である場合、この基は、重合体中で塩酸塩の形態であり、
R8~R12は、共にメチル基であり、および
X-が、塩化物イオンであり、
繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計に対して、繰り返し単位(A)の量が30~70質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が30~70質量%であり、並びに
数平均分子量が、3,000~50,000である、重合体。
【0038】
[本発明の重合体(III)]
R1が、メチル基であり、
R2が、エチレン基であり、
R3が、水素原子であり、
R4が、炭素数が1以上10以下である直鎖状アルキル基であり、
R5が、メチル基であり、
R6が、エチレン基であり、
R7が、式(2a)または式(2b)で表される1価の基であり、
R7が式(2a)で表される1価の基である場合、この基は、重合体中で塩酸塩の形態であり、
R8~R12は、共にメチル基であり、および
X-が、塩化物イオンであり、
繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計に対して、繰り返し単位(A)の量が30~70質量%であり、および繰り返し単位(B)の量が30~70質量%であり、並びに
数平均分子量が、5,000~20,000である、重合体。
【0039】
モノマー(A)およびモノマー(B)は、いずれも、市販品を使用してもよく、公知の方法を参考にして製造したものを使用してもよい。例えば、モノマー(A)は、特表2005-502698号公報に記載の方法を参考にして、ヒドロキシ基を有するアミドと、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとのエステル交換反応によって製造することができる(後述の合成例2参照)。また、ヒドロキシ基を有するアミドと、アクリル酸クロライドまたはメタクリル酸クロライドとのエステル形成反応によって製造することができる(後述の合成例3および4参照)。また、モノマー(B)として、東京化成工業社から、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびメタクロイルコリンクロリドを入手することができる。
【0040】
本発明の重合体は、例えば、重合開始剤を使用するモノマー(A)およびモノマー(B)(並びに必要に応じてモノマー(C))の溶液重合によって製造することができる。
【0041】
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。重合開始剤としては、例えばtert-ブチルプロポキシネオドデカネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、モノマー合計100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~15質量部である。
【0042】
重合開始剤は、例えば、その全量を一括して反応系に添加してもよく、その一部を一括で反応系に添加し、残りを滴下してもよく、またはその全量を、反応系に滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を反応系に滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましい。さらにモノマー滴下後も、重合開始剤を反応系に添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。
【0043】
溶液重合に使用する溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものであれば特に限定はない。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
溶液重合に使用する溶液中の全モノマーの濃度は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。全モノマーの濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られる重合体の分子量が低下するおそれがあり、全モノマーの濃度が高すぎると、発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0045】
溶液重合の際は、分子量調整のため、連鎖移動剤を使用してもよく、公知のものを使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリセロール、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル、ノルマルへキシルメルカプタン、ノルマルオクチルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、α―メチルスチレンダイマー等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー合計100質量部に対して、好ましくは1~25質量部、より好ましくは5~20質量部である。
【0046】
溶液重合の温度は、好ましくは50~130℃、より好ましくは60~90℃であり、溶液重合の時間は、好ましくは3~15時間、より好ましくは6~10時間である。
【0047】
本発明は、本発明の重合体からなる抗菌剤も提供する。本発明の抗菌剤は、他の抗菌剤および/または他の成分と併用してもよい。他の抗菌剤および他の成分は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。他の成分としては、樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等が挙げられる。
【0048】
本発明は、本発明の重合体および樹脂を含む抗菌性樹脂組成物も提供する。
本発明の抗菌性樹脂組成物において、本発明の重合体の量は、抗菌効果、耐指紋性、および塗膜の滑らかさの観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.10~10質量部である。
【0049】
本発明の抗菌性樹脂組成物に使用可能な樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および光硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中で、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアナートエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらの中で、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0052】
光硬化性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中で、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂が好ましい。
【0053】
樹脂中における本発明の重合体の分散、および本発明の重合体と樹脂との相溶化の観点から、樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂であり、さらに好ましくはポリエステル樹脂である。
【0054】
本発明の抗菌性樹脂組成物は、本発明の重合体および樹脂とは異なる他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、酸化防止剤、分散剤、可塑剤、充填剤等が挙げられる。他の成分は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の抗菌性樹脂組成物は、本発明の重合体を樹脂中に分散または相溶させることによって製造することができる。例えば、本発明の重合体および樹脂をそれぞれ製造および粉砕した後に、これらの粉体をヘンシェルミキサー等で均一に混合し、加圧成形することによって、本発明の抗菌性樹脂組成物を製造することができる。また、例えば、本発明の重合体および樹脂を二軸混練機などによって溶融混練することによって、本発明の抗菌性樹脂組成物を製造することができる。また、例えば、本発明の重合体の溶液および樹脂の溶液を混合し、得られた混合溶液から溶剤を留去することによって、本発明の抗菌性樹脂組成物を製造することができる。本発明の抗菌性樹脂組成物の製造方法としては、本発明の重合体を樹脂中に均一に分散または相溶させるために、上述の溶融混錬する製造方法、および上述の溶液を使用する製造方法が好ましい。
【実施例0056】
本発明を以下の実施例等によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等によって限定されない。
【0057】
合成例1:下記式で示される化合物(a)の合成
【0058】
【0059】
冷却管を備えた四つ口フラスコ(500mL)内にカプリル酸(日油社製「NAA-82」)330g(2.55mol)と、モノエタノールアミン310g(5.10mol)を入れた。得られた反応溶液中に窒素ガスを導入して反応容器内を窒素置換した。その後、反応溶液を撹拌しながら150℃まで昇温し、反応を開始した。その後、反応を8時間継続し、反応の終了を1H NMRで確認した。その後、残存するモノエタノールアミンを留去し、目的の化合物(a)を定量的に得た。
【0060】
合成例2:下記式で示されるモノマー(A-1)の合成
【0061】
【0062】
特表2005-502698号公報に記載の方法を参考にしてモノマー(A-1)を合成した。詳しくは、冷却管を備えた四つ口フラスコ(500mL)内に合成例1で得られた化合物(a)80g、メチルメタクリレート302g(3.02mol)、触媒(ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート)2.20g(反応混合物に対して2質量%)、および安定剤(Irganox 1076 0.62gおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル0.012g)を容器内に仕込み、100~120℃にてエステル交換反応を実施し、モノマー(A-1)を合成した。
【0063】
合成例3:下記式で示されるモノマー(A-2)の合成
【0064】
【0065】
反応物として2-アセトアミドエタノールおよびメタクリル酸クロライドを使用したこと以外は合成例2と同様にして、モノマー(A-2)を合成した。
【0066】
合成例4:下記式で示されるモノマー(A-3)の合成
【0067】
【0068】
反応物としてN-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミドおよびメタクリル酸クロライドを使用したこと以外は合成例2と同様にして、モノマー(A-3)を合成した。
【0069】
後述の比較例では、モノマー(A)の代わりのモノマー(A’)として、ラウリルメタクリレート(日油社製「ブレンマーLMA」)を使用した。
【0070】
後述の実施例および比較例では、モノマー(B)として、以下の市販品を用いた。
モノマー(B-1):メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(東京化成工業社製「2-(Dimethylamino)ethyl Methacrylate (stabilized with MEHQ)」)
モノマー(B-2):メタクロイルコリンクロリド(東京化成工業社製「Methacroylcholine Chloride (ca. 80% in Water) (stabilized with MEHQ)」)
【0071】
実施例1
冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL)内にモノマー(A-1)5.52g(2.16mmol)、モノマー(B-2)13.1g(6.31mmol)、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)1.83g(0.79mmol)、および2-プロパノール60.0gを入れた。得られた反応溶液中に窒素ガスを導入して、反応容器内を窒素置換した。その後、反応溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、反応を開始した。その後、反応を6時間継続し、反応の終了を1H NMRで確認した。その後、多量の酢酸ブチルを用いる再沈殿精製を行い、回収した沈殿物を120℃で減圧乾燥して、実施例1の重合体を得た。
【0072】
実施例2および3
原料の使用量を下記表に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2および3の重合体を得た。
【0073】
実施例4
冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL)内にモノマー(A-1)6.56g(2.57mmol)、モノマー(B-1)9.44g(6.00mmol)、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)2.45g(0.79mmol)、および2-プロパノール60.0gを入れた。得られた反応溶液中に窒素ガスを導入して、反応容器内を窒素置換した。その後、反応溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、反応を開始した。反応を6時間継続し、反応の終了を1H NMRで確認した。その後、反応容器に12Mの塩酸3.01g(モノマー(B-1)に対して1.1当量)を加えた後、多量のアセトンを用いる再沈殿精製を行い、回収した沈殿物を120℃で減圧乾燥して、実施例4の重合体を得た。
【0074】
実施例5および6
原料の使用量を下記表に示すように変更したこと以外は実施例4と同様にして、実施例5および6の重合体を得た。
【0075】
実施例7~10
下記表に示す量で、モノマー(A-2)またはモノマー(A-3)およびモノマー(B-2)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7~10の重合体を得た。
【0076】
実施例11
冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL)内にモノマー(A-1)8.86g(3.47mmol)、モノマー(B-2)8.96g(3.45mmol)、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)1.60g(0.79mmol)、連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸(3MPA)3.56g(モノマー合計100質量部に対して20質量部)および2-プロパノール60.0gを入れた。得られた反応溶液中に窒素ガスを導入して、反応容器内を窒素置換した。その後、反応溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、反応を開始した。その後、反応を6時間継続し、反応の終了を1H NMRで確認した。その後、多量の酢酸ブチルを用いる再沈殿精製を行い、回収した沈殿物を120℃で減圧乾燥して、実施例11の重合体を得た。
【0077】
実施例12
原料の使用量を下記表に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、実施例12の重合体を得た。
【0078】
比較例1
モノマー(A-1)の代わりにモノマー(A’)を使用したこと以外は実施例6と同様にして、比較例1の重合体を得た。
【0079】
比較例2
モノマー(A-1)の代わりにモノマー(A’)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の重合体を得た。
【0080】
実施例1~12並びに比較例1および2で使用した原料およびその配合量、並びに得られた重合体の数平均分子量(Mn)を下記表に示す。
【0081】
(1)抗菌性(溶液系)
(寒天培地の作製)
pH調整したMH-broth(0.88g/40mL)に寒天(0.6g)を添加した。その後、121℃にてオートクレーブ処理を20分行い、MH-寒天溶液を準備した。MH-寒天溶液(10mL)をシャーレに流し込み、静置することで寒天培地を作成した。
【0082】
(細菌の培養)
凍結しているE.coliまたはS.aureusをピペットチップで少量採取し、ピペットチップごとMH-broth溶液(5~7mL)に加えた後、37℃、撹拌速度:180rpmで18時間培養した。18時間培養後、10μLの細菌の培養液を寒天培地に滴下して、白金耳を用いてシャーレ全体に引き伸ばした後、寒天培地を37℃のインキュベーターの中で18時間静置培養した。
【0083】
(溶液系での抗菌活性の測定)
寒天培地で培養した細菌のコロニーをピペットチップを用いて取り、MH-broth溶液(7mL)中にチップごと入れ、37℃、撹拌速度:180rpmで18時間培養した。得られた細菌の懸濁液をMH-broth溶液で5倍希釈し、OD600を測定しながら、OD600=0.1になるようにMH-broth溶液で希釈して濃度調整し、その後37℃、撹拌速度:180rpmで90分再培養した。
【0084】
再培養した細菌の懸濁液をOD600=0.1になるように調製した。その後にOD600=0.001になるようにMH-broth溶液で3段階にわたり希釈した。
96穴プレートに所定の濃度で調製した重合体のサンプル10μLと細菌の培養液(90μL)をプレートに加え、37℃のインキュベーターで18時間静置培養した。
【0085】
18時間の培養後、各ウェルにおけるコロニーの形成を目視にて判定し、コロニーが形成されていない、重合体の最低濃度(μg/mL)を最小発育濃度(MIC)とした。
抗菌活性の測定は、1度に3サンプルを使用して同時に行い、別日程にて抗菌活性の測定は2回実施して、MICの平均値(以下、単に「MIC」と記載する)を算出した。その結果を下記表に示す。
【0086】
(2)抗菌性(固体表面)
(樹脂ペレット)
ポリエステル樹脂ペレット100質量部に対して、実施例1~12または比較例1若しくは2で得られた重合体を、それぞれの量が1質量部になるように添加し、卓上ミキサーにて均一な粉体となるまで粉砕および混合した。得られた樹脂組成物の粉末をマーセン社製の錠剤成型機「卓上油圧成形機MP250」を用いて、直径2cm、厚さ約3mmのペレットを作製した。
【0087】
(細菌の培養)
凍結しているE.coliまたはS.aureusをピペットチップで少量採取し、ピペットチップごとMH-broth溶液(5~7mL)に加えた後、37℃、撹拌速度:180rpmで18時間培養した。18時間培養後、10μLの細菌の培養液を寒天培地に滴下して、白金耳を用いてシャーレ全体に引き伸ばした後、寒天培地を37℃のインキュベーターの中で18時間静置培養した。
【0088】
(固体表面での抗菌活性の測定)
滅菌シャーレの中に上記で調製したペレットを入れ、そこにOD600=0.001に調整したバクテリアの培地分散液(以下「試験菌液」と記載する)40μLを滴下した。その上にストマッカー袋から切り出したフィルム(1.3cm×1.3cm)を被せて試験菌液がフィルム全体にいきわたるようにピンセットで軽く押さえた。シャーレを35℃で24時間静置した。この際、ペレットが乾燥しないように湿らせたペーパータオルを入れたチャック袋にシャーレを入れた。
【0089】
各シャーレに培地を10mL加えて、ピンセットでフィルムを動かしシャーレ内をよく攪拌することでペレット表面に残存する細菌を洗い出した、洗い出し液133μLを吸い取り、ミリQ水1.2mLが入ったマイクロチューブに入れて希釈した。希釈後の洗い出し液をさらに100倍および1000倍希釈し、再培養試験用の試料とした。
【0090】
培地10mL当たり0.15gの寒天を入れてオートクレーブにかけることで寒天培地を作製した。得られた寒天培地を15mLずつ各シャーレに入れて、揺らして混合し、蓋を少しずつずらして表面を10分間乾燥させた。乾燥後、寒天培地を下向きにして35℃で48時間培養し、各寒天培地におけるコロニー数を計測し、残存菌数とした。
【0091】
試験菌液中の菌数および残存菌数から、下記式:
抗菌率(%)
=100×(1-(試験菌液中の菌数-残存菌数)/試験菌液中の菌数)
を用いて、抗菌率を算出した。なお、上記測定は、E.coliまたはS.aureusにて各2回ずつ実施し、抗菌率の平均値(以下、単に「抗菌率」と記載する)を算出し、下記基準で評価した。結果を下記表に示す。
(評価基準)
◎:抗菌率が99%以上
○:抗菌率が95%以上99%未満
×:抗菌率が95%未満
【0092】
(3)耐指紋性評価
3cm×3cmのガラス基板上に、実施例1~12または比較例1若しくは2で得られた重合体の1質量%エタノール溶液を万遍なく噴霧した後、乾燥させて塗膜を形成した。
その後、指紋汚れを付着させるため、塗膜上に約50回程度指を接触させ、塗膜の光透過率が90%以下となるようにした。さらに、塗膜の指紋付着面を100gの重り(直径35mmの円柱状)を乗せた不織布を用いて、10回なぞり、指紋を拭取った後の塗膜の光透過率(以下「指紋付着後の光透過率」と記載する)を測定した。
なお、光透過率は、塗膜の測定位置を変えて5回測定し、その平均値を下記式の「光透過率」として使用した。
【0093】
指紋付着前後の光透過率から下記式:
指紋除去率(%)=100×指紋付着後の光透過率/指紋付着前の光透過率
を用いて指紋除去率を算出した。本試験を2回実施し、その平均値を各実施例または各比較例の指紋除去率の測定結果とした。この指紋除去率を用いて、以下の基準で評価した。結果を下記表に示す。
(評価基準)
◎:指紋除去率が99%以上
○:指紋除去率が90%以上99%未満
×:指紋除去率が90%未満
【0094】
(4)滑らかさの評価
3cm×3cmのガラス基板上に、実施例1~12または比較例1若しくは2で得られた重合体の1質量%エタノール溶液を万遍なく噴霧した後、乾燥させて塗膜を形成した。その後、トリニティーラボ社製の「TL201Tt」を用いて塗膜の動摩擦係数を測定した。詳しくは、20gの垂直荷重を印加して10mm/秒の速度で摺動した際の塗膜の動摩擦係数を測定した。本試験を2回実施し、その平均値を各実施例または各比較例の塗膜の動摩擦係数の測定結果とした。同様にして、ガラスの動摩擦係数を測定した。
【0095】
下記式:
動摩擦係数の差=ガラス基板の動摩擦係数-塗膜の動摩擦係数
を用いて動摩擦係数の差を算出し、以下の基準で評価した。結果を下記表に示す。
(評価基準)
◎:動摩擦係数の差が2.5以上
〇:動摩擦係数の差が2.0以上2.5未満
×:動摩擦係数の差が2.0未満
【0096】
【0097】
【0098】