(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159059
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241031BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074802
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久徳 淳志
(57)【要約】
【課題】袋ナットを用いて端子に電力ケーブルを固定する場合にも、配線抵抗やインダクタンスの低減が可能である半導体モジュールを提供する。
【解決手段】電子モジュール100は、回路120と、第1端子130と、第1端子130に外部接続部材250をボルト260で固定するための第1袋ナット230と、回路120及び第1端子130の一部を封止する封止樹脂170と、を備える。第1端子130が封止樹脂170から露出している面を上面100A、反対の面を底面100B、100Cとしたとき、第1袋ナットが配設されている領域の底面100Bは、回路が配設されている領域の底面100Cより突出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路と、第1端子と、前記第1端子に外部接続部材をボルトで固定するための第1袋ナットと、前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂と、を備える電子モジュールであって、
前記第1端子が前記封止樹脂から露出している面を上面、反対の面を底面としたとき、
前記第1袋ナットが配設されている領域の底面は、前記回路が配設されている領域の底面より突出していること、を特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子モジュールであって、
前記第1端子と電気的に接続し、前記封止樹脂内に配設されている第1配線をさらに有し、
前記第1配線は、前記電子モジュールの上面に沿って配設され、
前記回路は、前記電子モジュールの底面に沿って配設されていること、を特徴とする電子モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子モジュールであって、
前記回路が配設されている部材の一部は、前記電子モジュールの底面に露出していること、を特徴とする電子モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の電子モジュールであって、
前記第1袋ナットが配設されている領域の高さは、前記回路が配設されている領域の高さより高いこと、を特徴とする電子モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の電子モジュールであって、
第2端子と、前記第2端子に外部接続部材をボルトで固定するための第2袋ナットと、をさらに備え、
前記電子モジュールは、長手方向を有し、
前記第2袋ナットが配設されている領域の底面は、前記回路が配設されている領域の底面より突出しており、
前記第1袋ナットは、前記長手方向の一方の端部に配設され、前記第2袋ナットは、前記長手方向の他方の端部に配設されていること、を特徴とする電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体モジュールの端子に電力ケーブルを固定するための構造として、いくつかの構造が提案されている。
図6は、従来技術に係る電子モジュールを説明するために示す図である。特許文献1には、トランジスタ901のリード911をプリント基板902の上に設けられた配線パターン914に電気的に接続させるためのリード接続構造の考案が記載されている。具体的には、リード接続構造は、トランジスタ901のリード911を押さえつけるための絶縁物で作られた板915と、板915をプリント基板902に固定し、十分な圧力で押さえつけるためのネジ916と、から構成されている。
【0003】
また、袋ナットを用いて電力ケーブルを固定する構造も提案されている。特許文献2には、袋ナット(インサートナット)が埋め込まれた樹脂ブランケットを有するパワー半導体モジュールの端子接続構造の発明が記載されており、固定用のボルトを袋ナットに螺合させ導電性ブッシュとボルトの頭部との間に接続端子を挟みこんで、電力ケーブルをパワー半導体モジュールに接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-20461号公報
【特許文献2】国際公開第2016/204306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、袋ナットを用いて、電子デバイスの端子に外部接続部材(電力ケーブル)を固定する場合、ボルトが緩まないようにするために、袋ナットは、ボルトの締め込み方向に一定の長さを有し、電子デバイスが厚くなる。袋ナットの長さに合わせて電子デバイスを厚くすると、回路で発生した熱を放熱しやすくするため、回路は電子デバイスの底部に配設されるが、回路と端子に固定する外部接続部材との間の距離が、電子デバイスの厚さが厚くなった分長くなるため、配線抵抗やインダクタンスが増大するという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、袋ナットを用いて端子に外部接続部材を固定する場合にも、配線抵抗やインダクタンスの低減が可能である電子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子モジュールは、回路と、第1端子と、前記第1端子に外部接続部材をボルトで固定するための第1袋ナットと、前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂と、を備える電子モジュールであって、前記第1端子が前記封止樹脂から露出している面を上面、反対の面を底面としたとき、前記第1袋ナットが配設されている領域の底面は、前記回路が配設されている領域の底面より突出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子モジュールは、電子モジュールの第1袋ナットが配設されている領域の底面が、回路が配設されている領域の底面より、突出している。これにより、第1袋ナットが配設されている領域においては、電子モジュールの上面と底面との間に十分な長さ(高さ)を確保することができる。この結果、第1袋ナットに形成されたネジとボルトに形成されたネジとが噛み合うために十分な長さのネジ代を確保することができ、第1端子に外部接続部材をボルトで固定したとき、ボルトが緩むことを抑制することができる。
【0009】
一方、回路が配設されている領域の底面は、第1袋ナットが配設されている領域の底面より、電子モジュールの上面に近い位置に配設されている。これにより、回路と第1端子とを近い位置に配設することができ、電子モジュールの配線抵抗やインダクタンスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電子モジュール100の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子モジュール100の外観図である。
【
図4】実施形態に係る電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。
【
図5】実施形態に係る電子モジュール100に外部接続部材250をボルト260で固定したときの状態を説明するために示す図である。
【
図6】従来技術に係る電子モジュールを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子モジュールについて説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、実施形態に係る電子モジュール100の斜視図である。
図2は、実施形態に係る電子モジュール100の外観図である。
図2(a)は電子モジュール100の平面図である。
図2(b)は電子モジュール100の側面図である。
図2(c)は電子モジュール100の底面図である。
図3は、
図1のA-A矢視断面図である。
図4は、実施形態に係る電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。
図5は、実施形態に係る電子モジュール100に外部接続部材250をボルト260で固定したときの状態を説明するために示す図である。
【0013】
以下の説明において、
図1~
図2に示すように、電子モジュール100の長手方向を前後方向とし、短手方向を左右方向として説明する。また、電子モジュール100の高さ方向を上下方向として説明する。なお、以下の説明における、前、後、左、右、上、下は、説明のために便宜上使用するものであり、電子モジュール100を使用するときに、電子モジュール100が取り付けられる向きを特定するものではない。
【0014】
電子モジュール100は、
図1~
図4に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール100は、回路120と、第1端子130と、第2端子140と、第1配線132Bと、第2配線142Bと、第1袋ナット230と、第2袋ナット240と、信号端子172、174、182、184と、封止樹脂170とを備える。
なお、以後の説明において、「第1端子130、第2端子140」のことを、「端子130、140」と称することがあり、「第1袋ナット230、第2袋ナット240」のことを、「袋ナット230、240」と称することがある。
【0015】
回路120は、配線と素子とを備える。素子は、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0016】
回路基板112は、例えば、セラミックス基板の一方の面に回路120が形成され、もう一方の面に放熱用の金属が形成された、DCB(Direct Copper Bonding)基板である。なお、回路基板112は、プリント基板等であってもよい。回路基板112は、矩形の平板状に形成されており、電子モジュール100の長手方向である前後方向の中央部に配設されていることが好ましい。
【0017】
第1端子130は、
図1~
図4に示すように、電子モジュール100の前後方向の前方に配設されている。第1端子130は、導電性を有する平板材、例えば銅板から形成された板材132Aから構成される。第1端子130は、第1端子130を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
【0018】
貫通孔には、第1袋ナット230の上端が嵌合している。ここで、第1袋ナット230の上面の高さは、第1端子130の上面の高さと同じか、第1端子130の上面の高さより低いことが好ましい。これにより、第1端子130の上面に外部接続部材250を配置し、ボルト260で固定したとき、第1端子130と外部接続部材250との電気的接続を確実にすることができる(
図5参照)。
【0019】
第1端子130の下面及び第1袋ナット230は、封止樹脂170の内部に埋まっている。一方、第1端子130の上面は、封止樹脂170の外部に露出している。封止樹脂170から露出した第1端子130の上面に外部接続部材250を配置し、ボルト260で固定することにより、第1端子130と外部接続部材250との間で、電気的接続をとることができる。
第1袋ナット230については、後で説明する。
【0020】
第1配線132Bは、第1端子130と電気的に接続されている。第1配線132Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。
電子モジュール100において、第1配線132Bは、第1端子130と同じ板材132により、一体に形成されている。すなわち、板材132のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が第1配線132Bに該当する。
【0021】
第1配線132Bは、第1配線132Bを上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極134の上端部が嵌合している。内部接続電極134により、第1配線132Bと回路120の電極(符号省略)とが接続されている。内部接続電極134は、例えば圧入によって、第1配線132Bに固定されている。
【0022】
第2端子140は、
図1~
図4に示すように、電子モジュール100の前後方向の後方に配設されている。第2端子140は、導電性を有する平板材、例えば銅板から形成された板材142Aから構成される。第2端子140は、第2端子140を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
【0023】
貫通孔には、第2袋ナット240の上端が嵌合している。ここで、第2袋ナット240の上面の高さは、第2端子140の上面の高さと同じか、第2端子140の上面の高さより低いことが好ましい。これにより、第2端子140の上面に外部接続部材250を配置し、ボルト260で固定したとき、第2端子140と外部接続部材250との電気的接続を確立することができる(
図5参照)。
【0024】
第2端子140の下面及び第2袋ナット240は、封止樹脂170の内部に埋まっている。一方、第2端子140の上面は、封止樹脂170の外部に露出している。封止樹脂170から露出した第2端子140の上面に外部接続部材250を配置し、ボルト260で固定することにより、第2端子140と外部接続部材250との間で、電気的接続をとることができる。
第2袋ナット240については、後で説明する。
【0025】
第2配線142Bは、第2端子140と電気的に接続されている。第2配線142Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。
電子モジュール100において、第2配線142Bは、第2端子140と同じ板材142により、一体に形成されている。すなわち、板材142のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が、第2配線142Bに該当する。
【0026】
第2配線142Bは、第2配線142Bを上下方向に貫通する4つの貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。4つの貫通孔には、それぞれ、内部接続電極144の上端部が嵌合している。4つの内部接続電極144により、第2配線142Bと回路120の図示しない電極とが接続されている。内部接続電極144は、例えば圧入によって、第2配線142Bに固定されている。上記した貫通孔及び内部接続電極144の数は、必要な電力を流通することが可能であれば4個に限られず、1個以上の任意の数であることができる。
【0027】
電子モジュール100は、第3端子160を備えていてもよい。第3端子160は、任意の構成要素である。第3端子160は、
図1~
図4に示されるように、導電性を有する平板材、例えば、銅板により形成されている。第3端子160は、前後方向が板厚方向となるように配設されており、上下方向を長手方向とする長尺状をなしている。第3端子160は、封止樹脂170から露出する部分(以下、「上側部分」と記す。)と、封止樹脂170に覆われた部分(以下、「下側部分」と記す。)とを有する。
【0028】
第3端子160の上側部分には、第3端子160を前後方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。これにより、第3端子160に、図示しない外部接続部材を、図示しないボルト、及び、図示しないナットで固定することができる。さらに、貫通孔には、図示しない袋ナットの一端が嵌合していてもよい。これにより、第3端子160に外部接続部材をボルトで固定したとき、第3端子160と外部接続部材との電気的接続を確実に取ることができる。
第3端子160の下側部分は、回路120の図示しない電極と接続されている。
【0029】
電子モジュール100は、第3配線152を備えていてもよい。第3配線152は、任意の構成要素である。第3配線152は、第3端子160と電気的に接続されている。第3配線152は、第1配線132B及び第2配線142Bと同じ平面上に配設されていてもよい。
【0030】
第3配線152は、第3配線152を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極154の上端部が嵌合している。内部接続電極154により、第3配線152と回路120の図示しない電極とが接続されている。内部接続電極154は、例えば圧入によって、第3配線152に固定されている。
【0031】
電子モジュール100は、信号端子172、174、182、184を備える。なお、信号端子172、174、182、184は、任意の構成要素である。信号端子172、174、182、184は、
図4に示すように、柱状、例えば円柱形状に形成されたピン端子(符号省略)と、平板状に形成された支持部材(符号省略)とを備える。支持部材は、導電性を有する平板上の部材、例えば、銅板をプレス成形して製造したものである。
【0032】
信号端子172、174、182、184は、封止樹脂170の上方に突出するよう配設され、封止樹脂170から露出する部分と、封止樹脂170に覆われた部分とを有する。信号端子172、174、182、184の封止樹脂170に覆われた部分は、回路120の電極と電気的に接続される。また、信号端子172、174、182、184の封止樹脂170から露出した部分は、図示しない外部接続部材と接続することができる。
【0033】
袋ナット230、240は、
図3に示すように、ナットの一方の面が閉じていることにより、ネジ穴が貫通していないナットである。袋ナット230、240は、上記したナットの一方の面が閉じているという構造を有することにより、封止樹脂170によって電子モジュール100の、回路120、第1配線132B、第2配線142Bを封止したとき、ナットの閉じた側の面からネジ穴の中に、封止樹脂170が流入しなければ、制限なく使用することができる。また、袋ナット230、240の名称も問わない。袋ナット230、240には、例えば、セルナット、キャプナット、化粧ナット等の名称で市販されているナットを広く含む。
【0034】
袋ナット230、240の、第1端子130又は第2端子140と嵌合する部分の形状も、第1端子130又は第2端子140に形成した貫通孔の形状に嵌合する限り、制限されない。当該部分の形状は、
図1に示した円形形状のほか、六角形等の多角形であってもよい。
【0035】
封止樹脂170は、回路120、第1端子130の下面、第2端子140の下面、第1配線132B、第2配線142B、第1袋ナット230、及び、第2袋ナット240を封止する。一方、回路120が配設されている部材(回路基板112)の一部は、封止樹脂170から露出していてもよい。封止樹脂170は、エポキシ樹脂を主成分に、シリカ充填剤等を加えた熱硬化性の成形材料からなり、回路120を熱、光や湿度などの環境から保護する。
【0036】
図5は、実施形態に係る電子モジュール100に外部接続部材250をボルト260で固定したときの状態を説明するために示す図である。
【0037】
電子モジュール100は、
図5に示すように、凸部を有するヒートシンク300の上に載置されている。第1端子130の上面には、外部接続部材250が配置され、ボルト260によって固定されている。また、第2端子140の上面には、外部接続部材250が配置され、ボルト260によって固定されている。2つの外部接続部材250には下向きの力が加えられており、電子モジュール100はヒートシンク300に所定の力で付勢されていることが好ましい。
【0038】
電子モジュール100は、
図1、
図2及び
図5に示すように、第1端子130及び第2端子140が封止樹脂170から露出している面を上面100Aとし、上面100Aとは反対の面を底面100B、100Cとしたとき、第1袋ナット230又は第2袋ナット240が配設されている領域の底面100Cは、回路120が配設されている領域の底面100Bより突出している。すなわち、電子モジュール100は、袋ナット230、240が配設されている領域の底面100Cが、回路120が形成されている領域の底面100Bより、下方に突出するように構成されている。
【0039】
具体的には、電子モジュール100の袋ナット230、240が配設されている領域の高さは、回路120が配設されている領域の高さより高い。すなわち、回路120が配設されている領域の電子モジュール100の上面100Aと底面100Cとの間の長さは、回路が配設されている領域の電子モジュール100の上面100Aと底面100Bとの間の長さより大きい。
【0040】
これにより、袋ナット230、240が配設されている領域においては、電子モジュール100の上面100Aと底面100Cとの間に十分な長さを確保することができる。すなわち、袋ナット230、240に形成されたネジとボルト260に形成されたネジとが噛み合うために十分な長さのネジ代を確保することができる。この結果、端子130、140に外部接続部材250をボルト260で固定したとき、ボルト260が緩むことを抑制することができる。
【0041】
一方、回路120が配設されている領域の底面100Bは、袋ナット230、240が配設されている領域の底面100Cより、電子モジュールの上面100Aに近い位置に配設されている。これにより、回路120を端子130、140に近い位置に配設することができる。この結果、電子モジュールの配線抵抗やインダクタンスを低減することができる。
【0042】
また、電子モジュール100においては、回路120を、底面100Bに近い位置に配設することができる。これにより、回路120で発生した熱を、電子モジュール100の底面100Cから適切に放熱することができる。特に、
図5に示すように、ヒートシンク300を、電子モジュール100の底面100B、100Cの形状に適合するような形状にすることにより、回路120で発生した熱を、底面100Bから効率よく放熱することができる。
【0043】
第1配線132Bは、
図3に示すように、電子モジュール100の上面100Aに沿って配設されている。また、回路120は、電子モジュール100の底面100Bに沿って配設されている。
【0044】
第1配線132Bと回路120との間の長さは、第1配線132Bと回路120との間で、絶縁を維持することができる長さ(絶縁距離)以上の、任意の長さとすることができる。第1配線132Bと回路120との間の長さを、絶縁距離以上の長さとすることにより、第1配線132Bと回路120との間で、封止樹脂170を通って短絡電流が流れることを抑制することができる。
【0045】
さらに、電子モジュール100は、回路120が電子モジュール100の底面100Bに沿って配設されていることから、回路120で発生した熱を、底面100Bから効率よく放熱することができる。
【0046】
回路120が配設されている部材(回路基板112)の一部は、電子モジュール100の底面に露出してもよい。実施形態に係る電子モジュール100においては、
図5に示すように、回路基板112が備える2つの主面のうち、回路120が配設されていない主面が、電子モジュール100の底面に露出している。
【0047】
これにより電子モジュール100をヒートシンク300の上に載置したとき、回路基板112とヒートシンク300とを直接接触させることができる。この結果、回路120において発生した熱を、回路基板112を通じてヒートシンク300に迅速かつ効率よく放熱することができる。
【0048】
なお、上記実施形態においては、回路120に含まれる素子がパワーMOSFETである場合について説明したが、これに限るものではない。回路は、IGBT、サイリスタ、ダイオード等の他の半導体素子であってもよい。また、素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。さらに、素子は、コンデンサ、リアクトル等の半導体素子以外のものであってもよい。
【0049】
本発明の電子モジュール100は、第1端子130と、第1端子130に外部接続部材250をボルト260で固定するための第1袋ナット230と、回路120及び第1端子130の一部を封止する封止樹脂170と、を備える。第1端子130が封止樹脂から露出している面を上面100A、反対の面を底面100B,100Cとしたとき、第1袋ナット230が配設されている領域の底面100Cは、回路120が配設されている領域の底面100Bより突出している。
【0050】
本発明の電子モジュール100は、第1袋ナット230が配設されている領域の底面100Cが、回路120が配設されている領域の底面100Bより突出するように構成されていることにより、第1袋ナット230が配設されている領域においては、電子モジュール100の上面100Aと底面100Cとの間に十分な長さ(高さ)を確保することができる。これにより、第1袋ナット230に形成されたネジとボルト260に形成されたネジとが噛み合うために十分な長さのネジ代を確保することができ、第1端子130に外部接続部材250をボルト260で固定したとき、ボルト260が緩むことを抑制することができる。
【0051】
一方、回路120が配設されている領域の底面100Bは、第1袋ナット230が配設されている領域の底面100Cより、電子モジュールの上面100Aに近い位置に配設されている。これにより、回路120を第1端子130に近い位置に配設することができる。この結果、電子モジュールの配線抵抗やインダクタンスを低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…電子デバイス、112…回路基板、120…回路、130…第1端子、132…板材、132B…第1配線、134…内部接続電極、140…第2端子、142…板材、144…内部接続電極、142B…第2配線、160…第3端子、170…封止樹脂、172,174,182,184…信号端子、230…第1袋ナット、240…第2袋ナット、250…外部接続部材、260…ボルト