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特開2024-159060電子モジュールの固定構造、及び、電子モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159060
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子モジュールの固定構造、及び、電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241031BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01R4/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074803
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久徳 淳志
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012BA12
(57)【要約】
【課題】電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定した場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることが可能な電子モジュールの固定構造を提供する。
【解決手段】電子モジュールの固定構造10は、第1端子130を有する電子モジュール100と、第1外部接続部材250とを、第1ボルト260Aにより、放熱部材300に固定するための固定構造であって、第1端子130は、電子モジュール100における、放熱部材300と当接する面と反対の面に配設され、かつ、第1ボルト260Aが挿入される第1孔136を有し、第1ボルト250Aのネジ部が挿通可能な孔242Aを有する第1絶縁部材240Aが、第1ボルト250Aと第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aと第1端子130との間に配設されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路、第1端子、並びに、前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂を有する電子モジュールと、第1外部接続部材とを、第1ボルトにより、放熱部材に固定するための固定構造であって、
前記第1端子は、前記電子モジュールにおける前記放熱部材と当接する面と反対の面に配設され、かつ、前記第1ボルトが挿入される第1孔を有し、
前記第1ボルトのネジ部が挿通可能な孔を有する第1絶縁部材が、前記第1ボルトと前記第1外部接続部材との間、及び、前記第1ボルトと前記第1端子との間に配設されていること、を特徴とする電子モジュールの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記第1絶縁部材は、前記第1ボルトと前記封止樹脂との間、及び、前記第1ボルトの頭部の周囲に、さらに配設されていること、を特徴とする固定構造。
【請求項3】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記第1絶縁部材の外周部は、前記第1孔の内周部に当接すること、を特徴とする固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記第1絶縁部材は、樹脂、シリコン、セラミックの中から選択される一以上の材料で構成されていること、を特徴とする固定構造。
【請求項5】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記固定構造は、前記電子モジュールと、第2外部接続部材とを、第2ボルトにより、前記放熱部材に固定する固定構造であり、
前記電子モジュールは、第2端子を備え、
前記第2端子は、前記電子モジュールにおける、前記放熱部材と当接する面と反対の面に配設され、かつ、前記第2ボルトが挿入される第2孔を有し、
前記第2ボルトのネジ部が挿通可能な孔を有する第2絶縁部材が、前記第2ボルトと前記第2外部接続部材との間、及び、前記第2ボルトと前記第2端子との間に配設され、
前記第1孔は、前記電子モジュールを平面視したときに前記電子モジュールの一方の端部に配設され、前記第2孔は、前記一方の端部とは反対の他方の端部に配設されていること、を特徴とする固定構造。
【請求項6】
回路と第1端子と前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂とを備え、第1ボルトによって、第1外部接続部材とともに放熱部材に固定される電子モジュールであって、
前記第1端子は、前記電子モジュールにおける前記放熱部材と当接する面と反対の面に配設され、かつ、前記第1ボルトが挿入される第1孔を有し、
前記第1孔の内周部は、前記電子モジュール、及び、前記第1外部接続部材を前記放熱部材に固定するときに、前記第1ボルトと前記第1端子との間に配設される第1絶縁部材の外周部と当接すること、を特徴とする電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールの固定構造、及び、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械装置の内部に電子モジュールを固定する際は、ボルトを用いて電子モジュールを取り付けたり、トランジスタクリップ等の板バネを用いて電子モジュールを取り付けたりする、ということが行われてきた。一方、電子モジュールで取り扱う電流の大電流化に伴い、端子に外部接続部材をボルトで固定することにより、端子と外部接続部材との間の導通を確実なものとすることが行われている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
図5は、従来技術に係る電子モジュールの固定構造で使用する電子モジュール900を示す斜視図である。特許文献1には、図5に示すように、電子モジュール900を被取付部材にネジ止めするためのベース基板940と、ベース基板940に配設された取付穴942とを備える電子モジュール900が記載されている。電子モジュール900は、さらに、端子910、920、930を備え、端子910、920、930は、それぞれボルト貫通孔912、922、932が貫通形成されている。端子910、920、930の下にはナット配置穴が形成されており、ナット配置穴には、導電ナット914、924、934が収容されている。外部接続部材は、端子910、920、930の上に配設され、図示しないボルトと導電ナット914、924、934とを螺合することにより、外部接続部材が端子910、920、930に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-45772号公報
【特許文献2】国際公開第2016/204306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端子への外部接続部材の取付けをネジ止めによることにすると、電子モジュールにおいて、電子モジュールをネジ止めにより固定するための場所と、外部接続部材を端子にネジにより固定するための場所とが必要になる。このため、電子モジュールのサイズが大きくなってしまう、という課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定した場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることが可能な電子モジュールの固定構造を提供すること、を目的とする。
【0007】
あるいは、本発明は、電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定する場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることが可能な電子モジュールを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子モジュールの固定構造は、回路、第1端子、並びに、前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂を有する電子モジュールと、第1外部接続部材とを、第1ボルトにより、放熱部材に固定するための固定構造であって、前記第1端子は、前記電子モジュールにおける前記放熱部材と当接する面と反対の面に配設され、かつ、前記第1ボルトが挿入される第1孔を有し、前記第1ボルトのネジ部が挿通可能な孔を有する第1絶縁部材が、前記第1ボルトと前記第1外部接続部材との間、及び、前記第1ボルトと前記第1端子との間に配設されていること、を特徴とする。
【0009】
本発明の電子モジュールは、回路と第1端子と前記回路及び前記第1端子の一部を封止する封止樹脂とを備え、第1ボルトによって、第1外部接続部材とともに放熱部材に固定される電子モジュールであって、前記第1端子は、前記電子モジュールにおける前記放熱部材と当接する面と反対の面に配設され、かつ、前記第1ボルトが挿入される第1孔を有し、前記第1孔の内周部は、前記電子モジュール、及び、前記第1外部接続部材を前記放熱部材に固定するときに、前記第1ボルトと前記第1端子との間に配設される第1絶縁部材の外周部と当接すること、を特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子モジュールの固定構造は、第1ボルトにより、電子モジュール及び第1外部接続部材を第1端子に固定する。さらに、第1絶縁部材を、第1ボルトと第1外部接続部材との間、及び、第1ボルトと第1端子との間に第1絶縁部材を配設することにより、外部接続部材と放熱部材との間の絶縁を確保することができる。
【0011】
本発明の電子モジュールの固定構造によれば、第1ボルトにより、電子モジュールと第1外部接続部材とを放熱部材に固定することができるので、電子モジュールにおいて、電子モジュールをネジ止めするための場所と、外部接続部材を端子にネジにより固定するための場所とを、別々に確保する必要がない。これにより、電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定する場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることができる。一方、第1絶縁部材により、外部接続部材と放熱部材との間の絶縁を確保することができる。
【0012】
すなわち、電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定した場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることが可能な電子モジュールの固定構造を提供することができる。
【0013】
本発明の電子モジュールにおいても、上記した電子モジュールの固定構造と同様に、第1ボルトにより、電子モジュールと第1外部接続部材とを放熱部材に固定することができる。一方、第1絶縁部材により、外部接続部材と放熱部材との間の絶縁を確保することができる。すなわち、電子モジュール、及び、外部接続部材をネジ止めによって固定する場合においても、電子モジュールのサイズが大きくなることを抑えることが可能な電子モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る電子モジュールの固定構造10を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る電子モジュールの固定構造10に含まれる電子モジュール100を示す斜視図である。
図3】電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。
図4】実施形態に係る電子モジュールの固定構造10を示す断面図である。
図5】従来技術に係る電子モジュールの固定構造で使用する電子モジュール900を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電子モジュールの固定構造、及び、電子モジュールの発明を実施するための形態について説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0016】
1.電子モジュールの固定構造
図1は、実施形態に係る電子モジュールの固定構造10を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る電子モジュールの固定構造10に含まれる電子モジュール100を示す斜視図である。図3は、電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。図4は、実施形態に係る電子モジュールの固定構造10を示す断面図である。
【0017】
以下の説明において、図1及び図2に示すように、電子モジュール100の長手方向を前後方向とし、短手方向を左右方向として説明する。また、電子モジュール100の高さ方向を上下方向として説明する。なお、以下の説明における、前、後、左、右、上、下は、説明のために便宜上使用するものであり、電子モジュール100を使用するときに、電子モジュール100が取り付けられる向きを特定するものではない。
【0018】
実施形態に係る電子モジュールの固定構造10は、電子モジュール100と、第1外部接続部材250Aと、第2外部接続部材250Bと、第1ボルト260Aと、第2ボルト260Bと、第1絶縁部材240Aと、第2絶縁部材240Bと、を備える。電子モジュールの固定構造10は、電子モジュール100を放熱部材300に固定する。電子モジュールの固定構造10は、第1外部接続部材250Aを、第1ボルト260Aにより、電子モジュール100の第1端子130に固定し、第2外部接続部材250Bを、第2ボルト260Bにより、電子モジュール100の第2端子140に固定する。
【0019】
なお、以後の説明において、「第1外部接続部材250A」及び「第2外部接続部材250B」の一方、又は、両方を指して「外部接続部材250」と記すことがあり、「第1ボルト260A」及び「第2ボルト260B」の一方、又は、両方を指して「ボルト260」と記すことがある。
以下、電子モジュールの固定構造10、及び、電子モジュールの固定構造10の構成要素の一つである電子モジュール100について、詳細に説明する。
【0020】
電子モジュール100は、図1図4に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール100は、回路120と、第1端子130と、第2端子140と、第1配線132Bと、第2配線142Bと、信号端子172、174、182、184と、封止樹脂170とを備える。
なお、以後の説明において、「第1端子130」「第2端子140」の一方、又は、両方を指して「端子130、140」と記すことがある。
【0021】
回路120は、配線と素子とを備える。素子は、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0022】
回路基板112は、例えば、セラミックス基板の一方の面に回路120が形成され、もう一方の面に放熱用の金属が形成された、DCB(Direct Copper Bonding)基板である。なお、回路基板112は、プリント基板等であってもよい。回路基板112は、矩形の平板状に形成されており、電子モジュール100の長手方向である前後方向の中央部に配設されていることが好ましい。
【0023】
第1端子130は、図2図4に示すように、電子モジュール100の前後方向の前方に配設されている。第1端子130は、導電性を有する板状部材、例えば銅板から形成された板材132Aから構成される。第1端子130は、第1端子130を上下方向に貫通する第1孔136を備える。第1孔136は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、第1孔136の形状は、円形形状に限られず、四角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0024】
第1配線132Bは、第1端子130と電気的に接続されている。第1配線132Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。
電子モジュール100において、第1配線132Bは、第1端子130と同じ板材132により、一体に形成されている。すなわち、板材132のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が第1配線132Bに該当する。
【0025】
第1配線132Bは、第1配線132Bを上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極134の上端部が嵌合している。内部接続電極134により、第1配線132Bと回路120の電極(符号省略)とが接続されている。内部接続電極134は、例えば圧入によって、第1配線132Bに固定されている。
【0026】
第2端子140は、図2図4に示すように、電子モジュール100の前後方向の後方に配設されている。第2端子140は、導電性を有する板状部材、例えば銅板から形成された板材142Aから構成される。第2端子140は、第2端子140を上下方向に貫通する第2孔146を備える。第2孔146は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、第2孔146の形状は、円形形状に限られず、四角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0027】
第2配線142Bは、第2端子140と電気的に接続されている。第2配線142Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。
電子モジュール100において、第2配線142Bは、第2端子140と同じ板材142により、一体に形成されている。すなわち、板材142のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が、第2配線142Bに該当する。
【0028】
第2配線142Bは、第2配線142Bを上下方向に貫通する4つの貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。4つの貫通孔には、それぞれ、内部接続電極144の上端部が嵌合している。4つの内部接続電極144により、第2配線142Bと回路120の図示しない電極とが接続されている。内部接続電極144は、例えば圧入によって、第2配線142Bに固定されている。上記した貫通孔及び内部接続電極144の数は、必要な電力を流通することが可能であれば4個に限られず、1個以上の任意の数であることができる。
【0029】
電子モジュール100は、第3端子160を備えていてもよい。第3端子160は、任意の構成要素である。第3端子160は、図1図4に示すように、導電性を有する板状部材、例えば、銅板により形成されている。第3端子160は、前後方向が板厚方向となるように配設されており、上下方向を長手方向とする長尺状をなしている。第3端子160は、封止樹脂170から露出する部分(以下、「上側部分」と記す。)と、封止樹脂170に覆われた部分(以下、「下側部分」と記す。)とを有する。
【0030】
第3端子160の上側部分には、第3端子160を前後方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。これにより、図4に示すように、第3端子160に、第3外部接続部材250Cを、ボルト260C、及び、ナット265Cで固定することができる。これにより、第3端子160と第3外部接続部材250Cとの電気的接続を確実なものとすることができる。
第3端子160の下側部分は、回路120の電極(符号省略)と接続されている。
【0031】
電子モジュール100は、第3配線152を備えていてもよい。第3配線152は、任意の構成要素である。第3配線152は、第3端子160と電気的に接続されている。第3配線152は、第1配線132B及び第2配線142Bと同じ平面上に配設されていてもよい。
【0032】
第3配線152は、第3配線152を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極154の上端部が嵌合している。内部接続電極154により、第3配線152と回路120の電極(符号省略)とが接続されている。内部接続電極154は、例えば圧入によって、第3配線152に固定されている。
【0033】
電子モジュール100は、信号端子172、174、182、184を備える。なお、信号端子172、174、182、184は、任意の構成要素である。信号端子172、174、182、184は、図3に示すように、柱状、例えば円柱形状に形成されたピン端子(符号省略)と、平板状に形成され、ピン端子を支持する支持部材(符号省略)とを備える。支持部材は、導電性を有する平板上の部材、例えば、銅板をプレス成形して製造したものである。
【0034】
信号端子172、174、182、184は、封止樹脂170の上方に突出するよう配設され、封止樹脂170から露出する部分と、封止樹脂170に覆われた部分とを有する。信号端子172、174、182、184の封止樹脂170に覆われた部分は、回路120の電極と電気的に接続される。また、信号端子172、174、182、184の封止樹脂170から露出した部分は、図示しない外部接続部材と接続することができる。
【0035】
封止樹脂170は、図4に示すように、回路120、第1端子130の下面、第2端子140の下面、第1配線132B、第2配線142Bを封止する。また、封止樹脂170により、第1孔136の内周部及び第2孔146の内周部も封止され、第1端子130に形成された第1孔136は、直径が一回り小さい第1孔として、第2端子140に形成された第2孔146は、直径が一回り小さい第2孔として、形成されてもよい(図4参照)。封止樹脂170は、エポキシ樹脂を主成分に、シリカ充填剤等を加えた熱硬化性の成形材料からなり、回路120を熱、光や湿度などの環境から保護する。なお、回路基板112の一部は、封止樹脂170から露出していてもよい。回路基板112のうち、放熱部材300に対向する面を封止樹脂170から露出させることにより、回路120で発生した熱を、放熱部材300に有効に放熱することができる。
【0036】
封止樹脂170は、第1ボルト260Aが挿通する貫通孔(符号省略)、及び、第2ボルト260Bが挿通する貫通孔(符号省略)を有する。貫通孔は、電子モジュール100の前後方向の前方又は後方であって、第1孔136が形成されている位置、又は、第2孔146が形成されている位置に形成される。貫通孔は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、四角形、六角形等の多角形であってもよい。貫通孔の形状及び大きさは、第1孔136及び第2孔146の形状及び大きさと略同じであることが好ましい。
【0037】
電子モジュール100は、図1及び図4に示すように、電子モジュール100の一面が放熱部材300に当接するように放熱部材300に載置される。電子モジュール100の固定構造10においては、電子モジュール100の図中下側の面が、放熱部材300に当接している。端子130、140は、電子モジュール100において、電子モジュール100が放熱部材300と当接する面と反対の面に配設されている。
【0038】
第1端子130の上面には第1外部接続部材250Aが配設されている。第2端子140の上面には、第2外部接続部材250Bが配設されている。第1外部接続部材250A及び第2外部接続部材250B(以後、「第1外部接続部材250A」及び「第2外部接続部材250B」の一方、又は、両方を指して「外部接続部材250」と記すことがある。)は、導電性を有する板状部材、例えば銅板から形成される板材である。外部接続部材250は、バスバー(ブスバー)等の名称で呼ばれることもある。
【0039】
第1外部接続部材250Aは、第1外部接続部材250Aを上下方向に貫通する第3孔252Aを備える。第3孔252Aは、第1外部接続部材250Aを第1端子130の上面に配設したときに、第1孔136に対応する位置に設けられる。第3孔252Aは、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、第3孔252Aの形状は、円形形状に限られず、四角形、六角形等の多角形であってもよい。第3孔252Aの形状及び大きさは、第1端子130に設けられた第1孔136の形状及び大きさと略同じであることが好ましい。
【0040】
第2外部接続部材250Bは、第2外部接続部材250Bを上下方向に貫通する第4孔252Bを備える。第4孔252Bは、第1外部接続部材250Aを第2端子140の上面に配設したときに、第2孔146に対応する位置に設けられる。第4孔252Bは、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、第4孔252Bの形状は、円形形状に限られず、四角形、六角形等の多角形であってもよい。第4孔252Bの形状及び大きさは、第2端子140に設けられた第2孔146の形状及び大きさと略同じであることが好ましい。
【0041】
第1ボルト260Aは、第1孔136、第3孔252A、及び、電子モジュール100の封止樹脂170に形成された貫通孔を挿通する。第2ボルト260Bは、第2孔146、第4孔252B、及び、電子モジュール100の封止樹脂170に形成された貫通孔を挿通する。
【0042】
第1ボルト260A及び第2ボルト260B(以後、「第1ボルト260A」及び「第2ボルト260B」の一方、又は、両方を指して「ボルト260」と記すことがある。)は、ネジ山が形成されたネジ部と、頭部、先端部(いずれも符号省略)とを有する。ボルト260は、電子モジュール100を放熱部材300に固定することが可能であり、外部接続部材250を端子130、140に固定することが可能であれば、制限なく使用することができる。
【0043】
ボルト260は、ネジ部の先端に近い部分が、放熱部材300に形成された孔(符号省略)のネジ山と螺合し、電子モジュール100及び外部接続部材250を放熱部材300に固定する。あるいは、ネジ部の先端が放熱部材300を貫通し、図示しないナットと螺合することにより、電子モジュール100及び外部接続部材250を放熱部材300に固定する。
【0044】
第1絶縁部材240Aは、第1ボルト260Aのネジ部が挿通可能な孔242Aを有する。孔242Aの直径は、第1ボルト260Aのネジ部の直径より大きく、第1ボルト260Aの頭部の直径より小さい。また、第1絶縁部材240Aは、第1ボルト260Aと第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aと第1端子130との間に配設される。
【0045】
第1絶縁部材240Aは、具体的には、図4に示すように、上下方向に延在し第1ボルト260Aが挿通可能な孔242Aが形成された筒状の部分と、中央に第1ボルト260Aが挿通可能な孔242Aを有する円盤状の部分、とを有する。第1絶縁部材240Aは、筒状の部分が、第1ボルト260Aのネジ部と第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aのネジ部と第1端子130との間に配設される。また、円盤状の部分が、第1ボルト260Aの頭部と第1外部接続部材250Aの上面との間に配設される。これにより、第1ボルト260Aと第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aと第1端子130との間を絶縁することができる。
【0046】
第1絶縁部材240Aは、第1ボルト260Aと封止樹脂170との間にも配設されるように構成されることが好ましい。具体的には、第1ボルト260Aと第1端子130との間に配置された第1絶縁部材240Aの筒状の部分が下方に延び、第1ボルト260Aと封止樹脂170との間にも第1絶縁部材240Aが配設されるように構成されている。これにより、第1ボルト260Aと電子モジュール100の内部配線との間の絶縁をより確実なものとすることができる。
【0047】
第1絶縁部材240Aは、第1ボルト260Aの頭部の周囲にも配設されるように構成されることが好ましい。具体的には、第1絶縁部材240Aは、図1及び図3に示すように、第1ボルト260Aの頭部の周囲に配設される、上下方向に延在する筒状の部分を有する。これにより、第1ボルト260Aの絶縁をより確実なものにすることができる。
【0048】
第2絶縁部材240Bは、第2ボルト260Bのネジ部が挿通可能な孔242Bを有する。孔242Bの直径は、第2ボルト260Bのネジ部の直径より大きく、第2ボルト260Bの頭部の直径より小さい。また、第2絶縁部材240Bは、第2ボルト260Bと第2外部接続部材250Bとの間、及び、第2ボルト260Bと第2端子140との間に配設される。
【0049】
第2絶縁部材240Bは、具体的には、図4に示すように、上下方向に延在し第2ボルト260Bが挿通可能な孔242Bが形成された筒状の部分と、中央に第2ボルト260Bが挿通可能な孔242Bを有する円盤状の部分、とを有する。第2絶縁部材240Bは、筒状の部分が、第2ボルト260Bのネジ部と第2外部接続部材250Bとの間、及び、第2ボルト260Bのネジ部と第2端子140との間に配設される。また、円盤状の部分が、第2ボルト260Bの頭部と第2外部接続部材250Bの上面との間に配設される。これにより、第2ボルト260Bと第2外部接続部材250Bとの間、及び、第2ボルト260Bと第2端子140との間を絶縁することができる。
【0050】
第2絶縁部材240Bは、第2ボルト260Bと封止樹脂170との間にも配設されるように構成されることが好ましい。具体的には、第2ボルト260Bと第2端子140との間に配置された第2絶縁部材240Bの筒状の部分が下方に延び、第2ボルト260Bと封止樹脂170との間にも第2絶縁部材240Bが配設されるように構成されている。これにより、第2ボルト260Bと電子モジュール100の内部配線との間の絶縁をより確実なものとすることができる。
【0051】
第2絶縁部材240Bは、第2ボルト260Bの頭部の周囲にも配設されるように構成されることが好ましい。具体的には、第2絶縁部材240Bは、図1及び図3に示すように、第2ボルト260Bの頭部の周囲に配設される、上下方向に延在する筒状の部分を有する。これにより、第2ボルト260Bの絶縁をより確実なものにすることができる。
【0052】
第1絶縁部材240A及び第2絶縁部材240B(以後、「第1絶縁部材240A」及び「第2絶縁部材240B」の一方、又は、両方を指して、「絶縁部材240」と記すことがある。)の外周部は、第1孔136の内周部又は第2孔146の内周部と当接するように構成されていることが好ましい。また、絶縁部材240の外周部は、第2孔146の内周部又は第4孔252Bの内周部と当接するように構成されていることが好ましい。さらに、絶縁部材240の外周部は、封止樹脂170に形成した貫通孔の内周部と当接するように構成されていることが好ましい。絶縁部材240の外周部が、第1孔136の内周部、第2孔146の内周部、第3孔252Aの内周部、第4孔252Bの内周部、又は、封止樹脂170に形成した貫通孔と当接するように構成することにより、絶縁部材240を安定に支持することができる。
【0053】
絶縁部材240を構成する材料は、絶縁性を有する材料である限り制限されないが、樹脂、シリコン、セラミックの中から構成される一以上の材料から構成されていることが好ましい。なお、樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアセタール(POM)等の熱可塑性樹脂を例示することができる。絶縁部材240を構成する材料を上記した材料の中から選択することにより、外部接続部材250及びボルト260と放熱部材300との間の絶縁を確実なものとすることができる。なお、絶縁部材240として、絶縁カラー等の名称で市販されているものを使用することも可能である。
【0054】
なお、上記実施形態においては、回路120に含まれる素子がパワーMOSFETである場合について説明したが、これに限るものではない。回路は、IGBT、サイリスタ、ダイオード等の他の半導体素子であってもよい。また、素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。さらに、素子は、コンデンサ、リアクトル等の半導体素子以外のものであってもよい。
【0055】
以上説明した電子モジュールの固定構造10において、電子モジュール100の第1端子130は、電子モジュール100及び第1外部接続部材250Aを放熱部材300に固定するための第1ボルト260Aが挿通する第1孔136を備える。また、第1ボルト160Aのネジ部が挿通可能な孔242Aを有する第1絶縁部材240Aを備え、第1絶縁部材240Aであって、第1絶縁部材240Aは、第1ボルト260Aと第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aと第1端子130との間に配設されている。
【0056】
第1ボルト260Aにより、電子モジュール100及び第1外部接続部材250Aを放熱部材300に固定することができる。さらに、第1絶縁部材240Aを第1ボルト260Aと第1外部接続部材250Aとの間、及び、第1ボルト260Aと第1端子130との間に配設することにより、第1外部接続部材250Aと放熱部材300との間の絶縁を確保することができる。
【0057】
すなわち、電子モジュールの固定構造10によれば、第1ボルト260Aにより、電子モジュール100と第1外部接続部材250Aとを放熱部材300に固定することができるので、電子モジュール100をネジ止めするための場所と、第1外部接続部材250Aを第1端子130にネジにより固定するための場所とを、別々に確保する必要がない。一方、第1絶縁部材240Aにより、第1外部接続部材250Aと放熱部材300との間の絶縁を確保することができる。すなわち、電子モジュール100及び第1外部接続部材250Aをネジにより固定した場合においても、第1外部接続部材250Aと放熱部材300との間の絶縁性を確保しつつ、小型化が可能な電子モジュールの固定構造10を提供することができる。
【0058】
2.電子モジュール
次に、実施形態に係る電子モジュール100について説明する。なお、実施形態に係る電子モジュール100は、電子モジュールの固定構造10における電子モジュール100と同じ構成を有する。そこで、電子モジュールの固定構造の説明において使用した図1図4を使用して説明するとともに、説明が重複する部分は説明を省略する。
【0059】
電子モジュール100は、図1図4に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール100は、回路120と、第1端子130と、回路120及び第1端子130の下面を封止する封止樹脂170とを備える。電子モジュール100は、第2端子140を備えてもよい。
【0060】
第1端子130及び第2端子140は、電子モジュール100において、電子モジュール100が放熱部材300に当接する面とは反対の面、すなわち、上下方向の上側の面に配設されている。第1端子130は、第1ボルト260Aが挿通する第1孔136を備える。また、第2端子140は、第2ボルト260Bが挿通する第2孔146を備える。
【0061】
封止樹脂170は、図4に示すように、第1ボルト260A又は第2ボルト260Bが挿通する貫通孔(符号省略)を有する。貫通孔は、電子モジュール100の前後方向の前方又は後方であって、第1孔136が形成された位置又は第2孔146が形成されている位置に形成される。
【0062】
電子モジュール100は、下面が放熱部材300に当接するように、放熱部材300に載置される。電子モジュール100は、第1ボルト260Aによって、第1外部接続部材250Aとともに放熱部材300に固定される。また、第2ボルト260Bによって、第2外部接続部材250Bとともに放熱部材300に固定されてもよい。
【0063】
電子モジュール100を固定するとき、第1孔136と第1ボルト260Aとの間には、第1絶縁部材240Aが配設される。第1絶縁部材240Aは、例えば、筒状の絶縁部材から形成され、第1ボルト260Aが挿通可能な断面を有し、図中上下方向に延在する孔242Aを有する。
【0064】
第1孔136は、第1絶縁部材240Aの外周部と当接する。第1絶縁部材240Aの外周部が、第1孔136の内周部と当接するように構成することにより、第1絶縁部材240Aを安定に支持することができる。
【0065】
第2孔146と第2ボルト260Bとの間には、第2絶縁部材240Bが配設されていてもよい。第2絶縁部材240Bは、例えば、筒状の絶縁部材から形成され、第2ボルト260Bが挿通可能な断面を有し、図中上下方向に延在する孔242Bを有する。
【0066】
第2孔146は、第2絶縁部材240Bの外周部と当接する。第2絶縁部材240Bの外周部が、第2孔146の内周部と当接するように構成することにより、第2絶縁部材240Bを安定に支持することができる。
【0067】
電子モジュール100は、第1端子130が、電子モジュール100及び第1外部接続部材250Aを放熱部材300に固定するための第1ボルト260Aが挿通する第1孔136を備える。これにより、第1ボルト260Aを用いて、電子モジュール100及び第1外部接続部材250Aを放熱部材300に固定することができる。
【0068】
また、第1ボルト260Aと第1孔136との間に第1絶縁部材240Aが配置されている。これにより、第1端子130と放熱部材300との間の絶縁を確保することができる。さらに、第1孔136の内周部は、第1ボルト260Aと第1孔136との間に配設された第1絶縁部材240Aの外周部と当接する。これにより、第1絶縁部材240Aを安定に支持することができる。
【0069】
すなわち、電子モジュール100によれば、第1外部接続部材250Aと放熱部材300との絶縁性を確保しつつ、電子モジュール100を放熱部材300に固定し、第1外部接続部材250Aを電子モジュール100の第1端子130に固定することができる。このため、電子モジュール100をネジ止めによって固定し、電子モジュール100の第1端子130に第1外部接続部材250Aをネジにより固定した場合においても、第1外部接続部材250Aと放熱部材300との間の絶縁性を確保しつつ、小型化が可能な電子モジュール100を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…電子モジュールの固定構造、100…電子モジュール、112…回路基板、120…回路、130…第1端子、132…板材、132B…第1配線、134…内部接続電極、136…第1孔、140…第2端子、142…板材、142B…第2配線、144…内部接続電極、146…第2孔、160…第3端子、170…封止樹脂、172,174,182,184…信号端子、240…絶縁部材、240A…第1絶縁部材、240B…第2絶縁部材、242A,242B…孔、250…外部接続部材、250A…第1外部接続部材、250B…第2外部接続部材、250C…第3外部接続部材、252A…第3孔、252B…第4孔、260…ボルト、260A…第1ボルト、260B…第2ボルト、300…放熱部材
図1
図2
図3
図4
図5