(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159061
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子モジュール及び電子モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L23/48 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074804
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久徳 淳志
(57)【要約】
【課題】ピン端子の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールを提供することを目的とする。また、このような電子モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電子素子と、板厚方向に貫通した貫通孔171aが形成された支持部材171と、貫通孔171aに挿通された状態で支持部材171に支持され、電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子172とを備える電子モジュール。ピン端子172は、ピン本体172aとピン本体172aの表面に配置された導電性剥がれ材172bとを有し、導電性剥がれ材172bが貫通孔171aとピン本体172aとの間の少なくとも一部に介在した状態で支持部材171に支持されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子と、
板厚方向に貫通した貫通孔が形成された支持部材と、
前記貫通孔に挿通された状態で前記支持部材に支持され、前記電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子とを備える電子モジュールであって、
前記ピン端子は、ピン本体と前記ピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有し、前記導電性剥がれ材が前記貫通孔と前記ピン本体との間の少なくとも一部に介在した状態で前記支持部材に支持されていることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
電子素子と、板厚方向に貫通した貫通孔が形成された支持部材と、前記貫通孔に挿通された状態で前記支持部材に支持され、前記電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子とを備える電子モジュールを製造するための電子モジュールの製造方法であって、
ピン本体と前記ピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有する前記ピン端子を前記支持部材の前記貫通孔に圧入するピン端子圧入工程を含み、
前記ピン端子圧入工程においては、前記貫通孔の縁で前記導電性剥がれ材の一部を剥離させながら前記ピン端子を前記支持部材の前記貫通孔に圧入することを特徴とする電子モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記導電性剥がれ材は、めっき材からなることを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記導電性剥がれ材は、Ni、Au、Pd、Sn、Ag又ははんだからなることを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記導電性剥がれ材は、前記ピン本体よりも硬度が低い材料からなることを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記ピン端子を前記貫通孔に圧入する前における前記導電性剥がれ材の厚さが、10μm以上かつ前記ピン本体の最大径の2倍以下の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記ピン本体の最大径は前記貫通孔の大きさよりも小さく、前記導電性剥がれ材を含む前記ピン端子の最大径は前記貫通孔の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記導電性剥がれ材を含む前記ピン端子の最大径は、前記貫通孔の大きさよりも1μm~50μmの範囲内で大きいことを特徴とする請求項7に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記ピン端子は、圧入後に前記支持部材と接触する鍔状部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記ピン端子圧入工程においては、前記支持部材として表面に導電性接合材が配置されているものを用い、
前記電子モジュールの製造方法は、前記導電性接合材を溶融させて前記支持部材と前記ピン端子とを接合する導電性接合材溶融工程を、前記ピン端子圧入工程の後にさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュール及び電子モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子素子(例えば、半導体チップ)と、板厚方向に貫通した貫通孔が形成された支持部材(例えば、リードフレーム)と、支持部材の貫通孔に挿通された状態で支持され、電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子とを備える電子モジュール(例えば、半導体装置)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子モジュールは、ピン端子を支持部材の貫通孔に圧入する工程を経て製造されるが、この際、ピン端子の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差を厳しく管理する必要がある。つまり、ピン端子の径が小さすぎる場合又は貫通孔が大きすぎる場合には、支持部材によりピン端子をうまく固定できなくなり、ピン端子が傾いてしまったりピン端子が抜けてしまったりすることがある。また、ピン端子の径が大きすぎる場合又は貫通孔が小さすぎる場合には、圧入に必要な圧力が大きくなり、圧入が途中で止まってしまったり支持部材が変形してしまったりする場合がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ピン端子の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールを提供することを目的とする。また、このような電子モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子モジュールは、電子素子と、板厚方向に貫通した貫通孔が形成された支持部材と、前記貫通孔に挿通された状態で前記支持部材に支持され、前記電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子とを備える電子モジュールであって、前記ピン端子は、ピン本体と前記ピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有し、前記導電性剥がれ材が前記貫通孔と前記ピン本体との間の少なくとも一部に介在した状態で前記支持部材に支持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の電子モジュールの製造方法は、電子素子と、板厚方向に貫通した貫通孔が形成された支持部材と、前記貫通孔に挿通された状態で前記支持部材に支持され、前記電子素子と電気的に接続された柱状のピン端子とを備える電子モジュールを製造するための電子モジュールの製造方法であって、ピン本体と前記ピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有する前記ピン端子を前記支持部材の前記貫通孔に圧入するピン端子圧入工程を含み、前記ピン端子圧入工程においては、前記貫通孔の縁で前記導電性剥がれ材の一部を剥離させながら前記ピン端子を前記支持部材の前記貫通孔に圧入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子モジュールにおいては、ピン端子は、ピン本体とピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有し、導電性剥がれ材が貫通孔とピン本体との間の少なくとも一部に介在した状態で支持部材に支持されている。本発明の電子モジュールは、電子モジュールを製造するときに(ピン端子を支持部材の貫通孔に圧入するときに)剥離する導電性剥がれ材が存在し、導電性剥がれ材の剥離により圧入後のピン端子の形状が支持部材の貫通孔に沿ったものになるため、導電性剥がれ材の厚さを含むピン端子の径を厳密に管理しなくてもよくなることから、ピン端子の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールとなる。
【0009】
本発明の電子モジュールの製造方法は、ピン本体とピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有するピン端子を支持部材の貫通孔に圧入するピン端子圧入工程を含み、ピン端子圧入工程においては、貫通孔の縁で導電性剥がれ材の一部を剥離させながらピン端子を支持部材の貫通孔に圧入する。本発明の電子モジュールの製造方法は、ピン端子を支持部材の貫通孔に圧入するときに剥離する導電性剥がれ材を有するピン端子を用い、導電性剥がれ材の剥離により圧入後のピン端子の形状が支持部材の貫通孔に沿ったものになるため、導電性剥がれ材の厚さを含むピン端子の径を厳密に管理しなくてもよくなることから、ピン端子の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電子モジュール100の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子モジュール100の外観図である。
【
図3】実施形態に係る電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。
【
図4】実施形態における支持部材171及びピン端子172を説明するために示す図である。
【
図5】実施形態に係る電子モジュールの製造方法のフローチャートである。
【
図6】ピン端子圧入工程S20及び導電性接合材溶融工程S30を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子モジュール及び電子モジュールの製造方法について説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0012】
[実施形態]
1.電子モジュール
図1は、実施形態に係る電子モジュール100の斜視図である。
図2は、実施形態に係る電子モジュール100の外観図である。
図2(a)は電子モジュール100の平面図であり、
図2(b)は電子モジュール100の側面図であり、
図2(c)は電子モジュール100の底面図である。
図3は、実施形態に係る電子モジュール100の内部構造を説明するために示す図である。
図4は、実施形態における支持部材171及びピン端子172を説明するために示す図である。
図4(a)は支持部材171及びピン端子172の斜視図であり、
図4(b)は支持部材171及びピン端子172の平面図であり、
図4(c)は支持部材171の平面図であり、
図4(d)は
図4(b)のA-A断面図である。
【0013】
以下の説明において、
図1~
図2に示すように、電子モジュール100の長手方向を前後方向とし、短手方向を左右方向として説明する。また、電子モジュール100の高さ方向を上下方向として説明する。なお、以下の説明における、前、後、左、右、上、下は、説明のために便宜上使用するものであり、電子モジュール100を使用するときに、電子モジュール100が取り付けられる向きを特定するものではない。
【0014】
電子モジュール100は、
図1~
図3に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール100は、電子素子120と、第1端子130と、第2端子140と、第1配線132Bと、第2配線142Bと、第1袋ナット230と、第2袋ナット240と、支持部材171,173,181,183と、ピン端子172,174,182,184と、封止樹脂170とを備える。なお、以後の説明において、「第1袋ナット230及び第2袋ナット240」のことを、「袋ナット230,240」と称することがある。
【0015】
電子素子120としては、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いることができる。電子素子120は、回路基板112の一方の面上に配設されていてもよい。電子素子120は、例えば、半導体素子として構成され、半導体基板の一方の面又は両方の面に形成された図示しない電極を備える。電子モジュール100は、2つの電子素子120を備える。
【0016】
回路基板112は、例えば、上面に導電領域(回路)、下面(裏面)に放熱用の金属板が形成された、直接接合法(DCB:Direct Copper Bonding)により製造したセラミックス基板である。回路基板112は、プリント基板等であってもよい。回路基板112は、矩形の平面状に形成されており、電子モジュール100の長手方向である前後方向の中央部に配置されていることが好ましい。
【0017】
第1端子130は、
図1~
図3に示すように、電子モジュール100の前後方向の前方に配設されている。第1端子130は、導電性を有する平板材、例えば銅板によって板状に形成された板材132Aから構成される。第1端子130は、第1端子130を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
【0018】
貫通孔には、第1袋ナット230の上端が嵌合している。ここで、第1袋ナット230の上面の高さは、第1端子130の上面の高さと同じか、第1端子130の上面の高さより低いことが好ましい。
【0019】
第1端子130の下面及び第1袋ナット230は、封止樹脂170の内部に埋まっている。一方、第1端子130の上面は、封止樹脂170の外部に露出している。封止樹脂170から露出した第1端子130の上面に外部接続部材(図示せず。)を配置し、当該外部接続部材をボルト(図示せず。)で固定することにより、第1端子130と外部接続部材との間で、電気的接続をとることができる。
【0020】
第1配線132Bは、第1端子130と電気的に接続されている。第1配線132Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。電子モジュール100において、第1配線132Bは、第1端子130と同じ板材132により、一体に形成されている。すなわち、板材132のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が第1配線132Bに該当する。
【0021】
第1配線132Bは、第1配線132Bを上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極134の上端部が嵌合している。内部接続電極134により、第1配線132Bと電子素子120の電極とが接続されている。内部接続電極134は、例えば圧入によって、第1配線132Bに固定されている。
【0022】
第2端子140は、
図1~
図3に示すように、電子モジュール100の前後方向の後方に配設されている。第2端子140は、導電性を有する平板材、例えば銅板から形成された板材142Aから構成される。第2端子140は、第2端子140を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
【0023】
貫通孔には、第2袋ナット240の上端が嵌合している。ここで、第2袋ナット240の上面の高さは、第2端子140の上面の高さと同じか、第2端子140の上面の高さより低いことが好ましい。
【0024】
第2端子140の下面及び第2袋ナット240は、封止樹脂170の内部に埋まっている。一方、第2端子140の上面は、封止樹脂170の外部に露出している。封止樹脂170から露出した第2端子140の上面に外部接続部材(図示せず。)を配置し、当該外部接続部材をボルト(図示せず。)で固定することにより、第2端子140と外部接続部材との間で、電気的接続をとることができる。
【0025】
第2配線142Bは、第2端子140と電気的に接続されている。第2配線142Bは、封止樹脂170の内部に埋まっている。電子モジュール100において、第2配線142Bは、第2端子140と同じ板材142により、一体に形成されている。すなわち、板材142のうち、封止樹脂170に埋まっている部分が、第2配線142Bに該当する。
【0026】
第2配線142Bは、第2配線142Bを上下方向に貫通する4つの貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。4つの貫通孔には、それぞれ、内部接続電極144の上端部が嵌合している。4つの内部接続電極144により、第2配線142Bと電子素子120の図示しない電極とが接続されている。内部接続電極144は、例えば圧入によって、第2配線142Bに固定されている。上記した貫通孔及び内部接続電極144の数は、必要な電力を流通することが可能であれば4個に限られず、1個以上の任意の数であることができる。
【0027】
電子モジュール100は、第3端子160を備えていてもよい。第3端子160は、任意の構成要素である。第3端子160は、
図1~
図3に示されるように、導電性を有する平板材、例えば、銅板により形成されている。第3端子160は、前後方向が板厚方向となるように配設されており、上下方向を長手方向とする長尺状をなしている。第3端子160は、封止樹脂170の上側に配設され、封止樹脂170から露出する部分(以下、「上側部分」と記す。)と、封止樹脂170に覆われた部分(以下、「下側部分」と記す。)とを有する。
【0028】
第3端子160の上側部分は、第3端子160を前後方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。これにより、第3端子160に、図示しない外部接続部材を、図示しないボルト、及び、図示しないナットで固定することができる。さらに、貫通孔には、図示しない袋ナットの一端が嵌合していてもよい。これにより、第3端子160に外部接続部材をボルトで固定したとき、第3端子160と外部接続部材との電気的接続を確実に取ることができる。第3端子160の下側部分は、電子素子120の図示しない電極と接続されている。
【0029】
電子モジュール100は、第3配線152を備えていてもよい。第3配線152は、任意の構成要素である。第3配線152は、第3端子160と電気的に接続されている。第3配線152は、第1配線132B及び第2配線142Bと同じ平面上に配設されていてもよい。
【0030】
第3配線152は、第3配線152を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続電極154の上端部が嵌合している。内部接続電極154により、第3配線152と電子素子120の図示しない電極とが接続されている。内部接続電極154は、例えば圧入によって、第3配線152に固定されている。
【0031】
支持部材171,173,181,183及びピン端子172,174,182,184は、それぞれほぼ同様の構成を有するため、支持部材171及びピン端子172の構造についてのみ詳細に説明する(
図4参照。)。
【0032】
支持部材171には、板厚方向に貫通した貫通孔171aが形成されている(
図4(c)参照。)。貫通孔171aは、平面視したときに正方形状の形状からなる。支持部材171は、導電性を有する平板状の部材、例えば、銅板をプレス成形して製造したものである。また、
図4(a)~
図4(c)においては図示を省略しているが、支持部材171の少なくとも片面には、はんだ等からなる導電性接合材171bが配置されていることが好ましい(
図4(d)参照。)。導電性接合材171bは、支持部材171とピン端子172とを通電可能な状態で接合していることが好ましい。
【0033】
ピン端子172は、貫通孔171aに挿通された状態で支持部材171に支持され、電子素子120と電気的に接続されている。ピン端子172と電子素子120との電気的接続は、ピン端子172と電子素子120との直接の接触により実現されていてもよいし、回路基板112上に形成されている導電領域(回路)を介して実現されていてもよいし、支持部材171を介して実現されていてもよい。
【0034】
ピン端子172は、柱状の形状からなる。また、ピン端子172は、ピン本体172aとピン本体172aの表面に配置された導電性剥がれ材172bとを有する(
図4(d)参照。)。ピン端子172は、導電性剥がれ材172bが貫通孔171aとピン本体172aとの間の少なくとも一部に介在した状態で支持部材171に支持されている。なお、ピン端子172は、支持部材171と接触する鍔状部172cをさらに有する。
【0035】
ピン本体172aは、導電性を有する材料、例えば、銅からなる円柱状の部材である。鍔状部172cは、導電性を有する材料、例えば、銅からなる円盤状の部材である。ピン端子172におけるピン本体172aと鍔状部172cとは一体となっているが、ピン本体172aと鍔状部172cとは別体となっていてもよい。
【0036】
導電性剥がれ材172bは、ピン本体172a及び鍔状部172cの表面全体を覆うように配置されている。導電性剥がれ材172bは、めっき材からなることが好ましい。また、導電性剥がれ材172bは、Ni、Au、Pd、Sn、Ag又ははんだからなることが好ましい。さらに、導電性剥がれ材172bは、ピン本体172aよりも硬度が低い材料からなることが好ましい。
【0037】
本明細書における「はんだ」とは、電子部品の電気的接続に用いられる導電性接合材一般のことをいい、鉛を含む伝統的なはんだの他、いわゆる鉛フリーはんだも含む。
【0038】
なお、
図4(d)においては、支持部材171の導電性接合材171bとピン端子172の導電性剥がれ材172bとが別体であるように表示しているが、導電性接合材171bと導電性剥がれ材172bとは一体化していてもよい。
【0039】
ピン端子172,174,182,184は、封止樹脂170の上方に突出するよう配設され、封止樹脂170から露出する部分と、封止樹脂170に覆われた部分とを有する。ピン端子172,174,182,184の封止樹脂170に覆われた部分は、電子素子120の電極と電気的に接続される。また、ピン端子172,174,182,184の封止樹脂170から露出した部分は、図示しない外部接続部材と接続することができる。
【0040】
袋ナット230,240は、ナットの一方の面が閉じていることにより、ネジ穴が貫通していないナットである。袋ナット230,240の、第1端子130又は第2端子140と嵌合する部分の形状も、第1端子130又は第2端子140に形成した貫通孔の形状に嵌合する限り、制限されない。当該部分の形状は、
図1~
図3に示した円形形状のほか、六角形等の多角形であってもよい。
【0041】
封止樹脂170は、電子素子120、第1端子130の下面、第2端子140の下面、第1配線132B、第2配線142B、第1袋ナット230、及び、第2袋ナット240を封止する。一方、電子素子120が配設されている部材(回路基板112)の一部は、封止樹脂170から露出していてもよい。封止樹脂170は、エポキシ樹脂を主成分に、シリカ充填剤等を加えた熱硬化性の成形材料からなり、電子素子120を熱、光や湿度などの環境から保護する。
【0042】
2.電子モジュールの製造方法
次に、実施形態に係る電子モジュールの製造方法を説明する。
図5は、実施形態に係る電子モジュールの製造方法のフローチャートである。
図6は、ピン端子圧入工程S20及び導電性接合材溶融工程S30を説明するために示す図である。
図6(a)~
図6(c)はピン端子圧入工程S20の工程図であり、
図6(d)は導電性接合材溶融工程S30の後における支持部材171及びピン端子172を示す図である。なお、
図6(a)~
図6(d)は、
図4(d)と同様の断面で見た断面図として表示している。
【0043】
実施形態に係る電子モジュールの製造方法は電子モジュール100を製造するための方法であり、構成要素配置工程S10と、ピン端子圧入工程S20と、樹脂封止工程S40とを含み、必要に応じて導電性接合材溶融工程S30をさらに含む(
図5参照。)。以下、各工程について説明する。
【0044】
構成要素配置工程S10は、電子モジュール100の構成要素(ただし、ピン端子172,174,182,184及び封止樹脂170を除く)を所定の位置に配置する工程である。各構成要素の配置については公知の方法を用いることができるため、説明は省略する。
【0045】
ピン端子圧入工程S20は、支持部材171,173,181,183及びピン端子172,174,182,184に関連する工程であるが、これらを代表して支持部材171及びピン端子172を用いて当該工程を説明する。支持部材171及びピン端子172の材料や構成についてはすでに説明したため、再度の説明は省略する。
【0046】
ピン端子圧入工程S20は、ピン本体172aとピン本体172aの表面に配置された導電性剥がれ材172bとを有するピン端子172を支持部材171の貫通孔171aに圧入する工程である(
図6参照。)。なお、成形及び位置固定の都合上、構成要素配置工程S10から樹脂封止工程S40にかけては、支持部材171が金属製の枠であるフレーム(図示せず。)に接続された状態で工程を進めることが好ましいが、これは一般的な事項であるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0047】
まず、ピン端子172の底部が貫通孔171a付近に来るようにピン端子172を配置する(
図6(a)参照。)。次に、ピン端子172に圧力をかけ、ピン端子172を貫通孔171aに圧入する(
図6(b)参照。)。ピン端子172の底部が回路基板112(
図6において図示せず。)に接触するか、鍔状部172cが支持部材171に接触するまでピン端子172を圧入する(
図6(c)参照。)。
【0048】
ピン端子圧入工程S20においては、貫通孔171aの縁で導電性剥がれ材172bの一部を剥離させながらピン端子172を支持部材171の貫通孔171aに圧入する。なお、圧入時に剥離した導電性剥がれ材172bは剥離屑Sとなり、支持部材171上に落ちる(
図6(b)参照。)。ピン端子圧入工程S20においては、支持部材171として表面に導電性接合材171bが配置されているものを用いることが好ましい。導電性接合材171bは、圧入前にピン端子172が配置される側に配置されている。この場合には、剥離屑Sは導電性接合材171b上に落ちることになる。なお、電子モジュールの製造方法の説明における「導電性接合材」は、導電性接合材の前駆体(溶融及びその後の固化等により導電性接合材となるもの。例えば、はんだペースト。)を含む。
【0049】
ピン端子172を貫通孔171aに圧入する前における導電性剥がれ材172bの厚さは、10μm以上かつピン本体172aの最大径の2倍以下の範囲内にあることが好ましい。また、ピン本体172aの最大径は貫通孔171aの大きさよりも小さく、導電性剥がれ材172bを含むピン端子172の最大径は貫通孔171aの大きさよりも大きいことが好ましい。さらに言えば、導電性剥がれ材172bを含むピン端子172の最大径は、貫通孔171aの大きさよりも1μm~50μmの範囲内で大きいことが一層好ましい。
【0050】
なお、本明細書における「ピン本体の最大径」とは、ピン本体のうち圧入時に貫通孔を通過する部分の最大径のことをいう。また、本明細書における「貫通孔の大きさ」は、貫通孔を平面視したとき、貫通孔の縁のある点と他の点とを結び、かつ、貫通孔の中心を通過する直線のうち、最も短いものの長さに相当する。例えば、実施形態のように貫通孔171aが正方形状の形状である場合には、貫通穴の大きさは、対向する角の間の長さ(対角線の長さ)ではなく、対向する辺の間の長さに相当する。
【0051】
上記と同様の方法により、ピン端子174,182,184についても支持部材173,181,183の貫通孔にそれぞれ圧入することができる。
【0052】
以上のピン端子圧入工程S20によりピン端子172の貫通孔171aへの圧入は完了するが、この段階では導電性接合材171bを用いた支持部材171とピン端子172との接合がなされていない。また、剥離屑Sが導電性接合材171b上に落ちたままとなっており、全部又は一部は支持部材171と鍔状部172cとの間に挟まった状態となっている(
図6(c)参照。)。このため、実施形態に係る電子モジュールの製造方法は、導電性接合材171bを溶融させて支持部材171とピン端子172とを接合する導電性接合材溶融工程S30(リフロー工程と表現することもできる)を、ピン端子圧入工程S20の後(かつ樹脂封止工程S40の前)にさらに含むことが好ましい。導電性接合材溶融工程S30は、導電性接合材171bが溶融するまで加熱し、その後導電性接合材171bを固化させる工程である。導電性接合材溶融工程S30における加熱温度や加熱時間は、導電性接合材171bの種類や電子モジュール100となる構成要素の耐熱性等により適宜決定することができる。
【0053】
上記のようにすることにより、支持部材171とピン端子172とを確実に電気的に接合することが可能となる他に、ピン端子圧入工程S20で剥離した剥離屑Sを導電性接合材171b、導電性剥がれ材172b又はこれらの両方に吸収させることが可能となる(
図6(d)参照。)。なお、効率の観点から、導電性接合材溶融工程S30はピン端子172,174,182,184の圧入が全て完了した後に行うことが好ましい。また、導電性接合材溶融工程S30は、先に配置した電子モジュール100の構成要素(ピン端子172,174,182,184以外の構成要素)についても導電性接合材等により接合する工程であってもよい。
【0054】
樹脂封止工程S40は、必要な部分を封止樹脂170により封止する工程である。樹脂封止については公知の方法を用いることができるため、説明は省略する。
【0055】
以上の工程を実施することにより、実施形態に係る電子モジュール100を製造することが可能となる。
【0056】
3.実施形態に係る電子モジュール100及び電子モジュールの製造方法の効果
実施形態に係る電子モジュール100においては、ピン端子172,174,182,184は、ピン本体とピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有し、導電性剥がれ材が貫通孔とピン本体との間の少なくとも一部に介在した状態で支持部材171,173,181,183に支持されている。実施形態に係る電子モジュール100は、電子モジュール100を製造するときに(ピン端子172,174,182,184を支持部材171,173,181,183の貫通孔に圧入するときに)剥離する導電性剥がれ材が存在し、導電性剥がれ材の剥離により圧入後のピン端子172,174,182,184の形状が支持部材171,173,181,183の貫通孔に沿ったものになるため、導電性剥がれ材の厚さを含むピン端子172,174,182,184の径を厳密に管理しなくてもよくなることから、ピン端子172,174,182,184の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールとなる。
【0057】
実施形態に係る電子モジュールの製造方法は、ピン本体とピン本体の表面に配置された導電性剥がれ材とを有するピン端子172,174,182,184を支持部材171,173,181,183の貫通孔に圧入するピン端子圧入工程S20を含み、ピン端子圧入工程S20においては、貫通孔の縁で導電性剥がれ材の一部を剥離させながらピン端子172,174,182,184を支持部材171,173,181,183の貫通孔に圧入する。実施形態に係る電子モジュールの製造方法は、ピン端子172,174,182,184を支持部材171,173,181,183の貫通孔に圧入するときに剥離する導電性剥がれ材を有するピン端子172,174,182,184を用い、導電性剥がれ材の剥離により圧入後のピン端子172,174,182,184の形状が支持部材171,173,181,183の貫通孔に沿ったものになるため、導電性剥がれ材の厚さを含むピン端子172,174,182,184の径を厳密に管理しなくてもよくなることから、ピン端子172,174,182,184の径及び貫通孔の大きさに関する寸法公差の管理精度を緩和することが可能な電子モジュールの製造方法となる。
【0058】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、導電性剥がれ材がめっき材からなる場合には、ピン端子172,174,182,184は導電性剥がれ材がピン本体の表面に比較的均一に配置されたものとなるため、ピン端子172,174,182,184を安定して圧入することが可能となる。
【0059】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、導電性剥がれ材がNi、Au、Pd、Sn、Ag又ははんだからなる場合には、導電性剥がれ材として十分な導電性を有する材料からなるものを用いることで、導電性剥がれ材を配置することによる導電性の低下を抑制又は防止することが可能となる。
【0060】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、導電性剥がれ材がピン本体よりも硬度が低い材料からなる場合には、ピン端子172,174,182,184の圧入時における導電性剥がれ材の剥離(削れ)が容易になり、ピン端子172,174,182,184に過度の圧力がかかることを防ぐことが可能となる。
【0061】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、ピン端子172,174,182,184を貫通孔に圧入する前における導電性剥がれ材の厚さが、10μm以上かつピン本体の最大径の2倍以下の範囲内にある場合には、導電性剥がれ材の厚さを10μm以上とすることで十分な導電性剥がれ材の厚さを確保することが可能となり、導電性剥がれ材の厚さをピン本体の最大径の2倍以下とすることで圧入後における支持部材171,173,181,183によるピン端子172,174,182,184の支持の不安定化を防ぐことが可能となる。
【0062】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、ピン本体の最大径は貫通孔の大きさよりも小さく、導電性剥がれ材を含むピン端子172,174,182,184の最大径は貫通孔の大きさよりも大きい場合には、ピン本体の貫通孔の通過を容易なものとしつつ、支持部材171,173,181,183とピン端子172,174,182,184との接触を確保することが可能となる。
【0063】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、導電性剥がれ材を含むピン端子172,174,182,184の最大径は、貫通孔の大きさよりも1μm~50μmの範囲内で大きい場合には、十分に寸法公差の管理精度を緩和することが可能となり、かつ、圧入時に剥離屑Sとなる導電性剥がれ材の量を低減することが可能となる。
【0064】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、ピン端子172,174,182,184が圧入後に支持部材171,173,181,183と接触する鍔状部をさらに有する場合には、支持部材171,173,181,183と鍔状部とが接触することにより、ピン端子172,174,182,184が傾くことを抑制することが可能となる。
【0065】
また、実施形態に係る電子モジュールの製造方法によれば、ピン端子圧入工程S20においては、支持部材171,173,181,183として表面に導電性接合材が配置されているものを用い、電子モジュールの製造方法は、導電性接合材を溶融させて支持部材171,173,181,183とピン端子172,174,182,184とを接合する導電性接合材溶融工程S30を、ピン端子圧入工程S20の後にさらに含む場合には、支持部材171,173,181,183とピン端子172,174,182,184とを確実に電気的に接合し、接触抵抗を低減することが可能となる。また、ピン端子圧入工程S20で剥離した剥離屑Sを導電性接合材、導電性剥がれ材又はこれらの両方に吸収させ、剥離屑Sの移動に起因するショート不良の発生を抑制することも可能となる。
【0066】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0067】
(1)本発明に係る構成要素の形状、数、大きさ、位置等は、上記説明や各図面に示したものに限定されず、本発明の特徴を損ねない限りにおいて適宜変更することができる。
【0068】
(2)上記実施形態においては、電子素子120がパワーMOSFETである場合について説明したが、これに限るものではない。電子素子は、パワーMOSFET以外のMOSFET、IGBT、サイリスタ、ダイオード等の他の半導体素子であってもよい。半導体素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。また、電子素子は、コンデンサ、リアクトル等の半導体素子以外のものであってもよい。
【0069】
(3)上記実施形態においては、貫通孔171aが正方形状の形状からなるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、貫通孔は円形状の形状からなるものであってもよい。
【0070】
(4)上記実施形態においては、電子モジュールの製造方法は構成要素配置工程S10と、ピン端子圧入工程S20と、樹脂封止工程S40とを含む(必要に応じて導電性接合材溶融工程S30も含む)ものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ピン端子圧入工程の後に再度の構成要素配置工程を含むものであってもよい。また、上記以外の工程(例えば、フレームから支持部材等を切り離す工程)を含むものであってもよい。
【0071】
(5)上記実施形態においては、導電性剥がれ材172bは、ピン本体172a及び鍔状部172cの表面全体を覆うように配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。導電性剥がれ材は、ピン本体の一部、特にピン本体の貫通孔に圧入される部分を覆うように配置されていればよい。
【0072】
(6)上記実施形態においては、ピン端子172,174,182,184は鍔状部を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。ピン端子は鍔状部を有していなくてもよい。
【0073】
(7)上記実施形態においては、導電性剥がれ材172bを含むピン端子172の最大径が貫通孔171aの大きさよりも大きいことが好ましいことについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。導電性剥がれ材を含むピン端子の最大径は、貫通孔と同じ大きさであってもよい。つまり、導電性剥がれ材を含むピン端子の最大径と貫通孔の大きさとの差が0μmであってもよい。なお、ピン端子の最大径が貫通孔と同じ大きさであっても、工程を実際に実施する際にはピン端子の圧入方向の偏り等が発生するため、ピン端子圧入工程における導電性剥がれ材の剥離が発生する。
【符号の説明】
【0074】
100…電子モジュール、112…回路基板、120…電子素子、130…第1端子、132…(第1端子及び第1配線を構成する)板材、132A…(第1端子を構成する)板材、132B…第1配線、134,144,154…内部接続電極、140…第2端子、142…(第2端子及び第2配線を構成する)板材、142A…(第2端子を構成する)板材、142B…第2配線、152…第3配線、160…第3端子、170…封止樹脂、171,173,181,183…支持部材、171a…貫通孔、171b…導電性接合材、172,174,182,184…ピン端子、172a…ピン本体、172b…導電性剥がれ材、172c…鍔状部、230…第1袋ナット、240…第2袋ナット、S…剥離屑