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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159062
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/48 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074805
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】久徳 淳志
(57)【要約】
【課題】中点パワー端子のフレームに対する接触面積を小さくするとともにパッケージを小さくして配線長を短くしてインダクタンスや配線抵抗が低減された電子モジュールを提供することである。
【解決手段】電子モジュール100は、第1電極および第2電極の2つの電極を有する第1の半導体素子118と、第3電極および第4電極の2つの電極を有する第2の半導体素子120と、第1電極および第2電極のうち他方の電極と第3電極および第4電極のうち他方の電極に接続された平板状の中点パワー端子160とを備え、第1電極および第2電極のうち他方の電極と第3電極および第4電極のうち他方の電極とを接続する平板状の内部接続フレーム152であって、中点パワー端子160を圧入するための長穴156を有する内部接続フレーム152を備える。中点パワー端子160は、内部接続フレーム152の長穴156に圧入され垂直方向に立設している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極の2つの電極を有する第1の半導体素子と、
第3電極および第4電極の2つの電極を有する第2の半導体素子と、
前記第1電極および前記第2電極のうち一方の電極に接続された平板状の第1パワー端子と、
前記第3電極および前記第4電極のうち一方の電極に接続された平板状の第2パワー端子と、
前記第1電極および前記第2電極のうち他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち他方の電極に接続された平板状の中点パワー端子とを備える電子モジュールであって、
前記電子モジュールは、前記第1電極および前記第2電極のうち前記他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち前記他方の電極とを接続する平板状の内部接続フレームであって、前記中点パワー端子を圧入するための長穴を有する内部接続フレームをさらに備え、
前記中点パワー端子は、前記内部接続フレームの前記長穴に圧入され垂直方向に立設していることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記長穴は、平面的に見て前記第1電極および前記第2電極のうち前記他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち前記他方の電極とに挟まれた領域において、前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子とを結ぶ線に直交する方向に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記長穴は、平面的に見て前記第1電極および前記第2電極のうち前記他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち前記他方の電極に重ならない領域において、前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子とを結ぶ線に平行な方向に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記第1パワー端子、前記第2パワー端子及び前記内部接続フレームは、同じリードフレーム由来のものであることを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記第1の半導体素子は、第1制御電極をさらに有し、
前記第2の半導体素子は、第2制御電極をさらに有し、
前記電子モジュールは、
前記第1の半導体素子の前記第1制御電極に接続された第1制御端子と、
前記第2の半導体素子の前記第2制御電極に接続された第2制御端子とをさらに備え、ハーフブリッジ構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハーフブリッジ構造を有する電子モジュール500が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記した電子モジュールには、例えば、以下に示すような構成を有するものがある。例えば、図14に記載の電子モジュール500は、ハイサイドの第1トランジスタ(半導体素子)730と、ローサイドの第2トランジスタ(半導体素子)740と、第1トランジスタ730の第1ドレイン電極(図示せず)に接続された第1パワー端子630と、第2トランジスタ740の第2ソース電極(図示せず)に接続された第2パワー端子640と、第1トランジスタ730の第1ソース電極(図示せず)と第2トランジスタ740の第2ドレイン電極(図示せず)に接続された中点パワー端子660とを備え、ハーフブリッジ構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/146212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インダクタンスや配線抵抗を低減するために、第1パワー端子630、第2パワー端子640及び中点パワー端子660を平面状の端子とするとともにこれら3つの端子にセルナット構造を適用して外部に電流を取り出すようにした場合、外部接続部材と中点パワー端子660との接続領域を確保する必要があるため、第1トランジスタ730と第2トランジスタ740の間に位置する中点パワー端子660の平面積を小さくすることは難しく、第1トランジスタ730と第2トランジスタ740との間隔を狭くすることが難しくなる。その結果、パッケージが大きくなるとともに配線長が長くなり、これに起因してインダクタンスや配線抵抗が増大してしまうという課題が生じる。なお、上記課題は、半導体チップとして、トランジスタの代わりに、トランジスタ以外の3電極半導体チップ(例えばサイリスタ)や2電極半導体チップ(例えばダイオード)を用いた場合にも上記同様の課題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、2つの半導体チップを備える電子モジュールにおいて、外部接続部材と中点パワー端子との接続領域を確保しながら、インダクタンスや配線抵抗を低減することが可能な電子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子モジュールは、第1電極および第2電極の2つの電極を有する第1の半導体素子と、第3電極および第4電極の2つの電極を有する第2の半導体素子と、前記第1電極および前記第2電極のうち一方の電極に接続された平板状の第1パワー端子と、前記第3電極および前記第4電極のうち一方の電極に接続された平板状の第2パワー端子と、前記第1電極および前記第2電極のうち他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち他方の電極に接続された平板状の中点パワー端子とを備える電子モジュールであって、前記電子モジュールは、前記第1電極および前記第2電極のうち前記他方の電極と前記第3電極および前記第4電極のうち前記他方の電極とを接続する平板状の内部接続フレームであって、前記中点パワー端子を圧入するための長穴を有する内部接続フレームをさらに備え、前記中点パワー端子は、前記内部接続フレームの前記長穴に圧入され垂直方向に立設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子モジュールによれば、中点パワー端子が、上記した内部接続フレームの長穴に圧入され垂直方向に立設しているものであることから、外部接続部材と中点パワー端子660との接続領域を確保することができる。
【0008】
また、第1の半導体素子と第2の半導体素子との設置間隔を狭くできる。このため、パッケージを小さくするとともに配線長も短くできるため、インダクタンスや配線抵抗が低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電子モジュール100の外観を示した斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る電子モジュール100の側面図である。
図3】長穴の形状を説明するための図である。
図4】第1の実施形態に係る電子モジュール100の内部構造を説明するために示す部分分解斜視図である。
図5】第1の実施形態に係る電子モジュール100を示す図である。図5(a)は第1の実施形態に係る電子モジュール100の平面図である。図5(b)は図5(a)の電子モジュール100を構成する2個の半導体素子近傍の断面構造を示す図である。
図6】2個の半導体素子の接続態様を示す図である。図6(a)~図6(c)は2個の半導体素子がダイオードである場合の接続態様の例を示す図であり、図6(d)は2個の半導体素子の一方のみがダイオードである場合の接続態様の例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る電子モジュール300の外観を示した斜視図である。
図8】第2の実施形態に係る電子モジュール300の内部構造を説明するために示す部分分解斜視図である。
図9】2個の半導体素子の接続態様を示す図である。図9(a)~図9(d)は2個の半導体素子がトランジスタである場合の接続態様の例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る電子モジュール300を示す図である。図10(a)~図10(c)は第2の実施形態に係る電子モジュール300を構成する2個の半導体素子近傍の断面構造の一例を示す図である。
図11】第3の実施形態に係る電子モジュール400の外観を示した斜視図である。
図12】第3の実施形態に係る電子モジュール400を示す図である。図12(a)~図12(d)は第3の実施形態に係る電子モジュール400を構成する2個の半導体素子近傍の断面構造の一例を示す図である。
図13】電子モジュール100を構成する半導体素子が4個の場合の接続態様の例を示す図である。
図14】従来技術に係る電子モジュールを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る電子モジュールについて、電子モジュールとしてダイオードモジュールを例に挙げて説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。
【0011】
以下の説明において、図1図2に示すように、電子モジュール100の長手方向を前後方向とし、短手方向を左右方向として説明する。また、電子モジュール100の高さ方向を上下方向として説明する。なお、以下の説明における、前、後、左、右、上、下は、説明のために便宜上使用するものであり、電子モジュール100を使用するときに、電子モジュール100が取り付けられる向きを特定するものではない。
【0012】
電子モジュール100は、図1図4に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール100は、絶縁基板112と、第1導体部114及び第2導体部116と、第1の半導体素子118と、第2の半導体素子120と、第1パワー端子130と、第2パワー端子140と、内部接続フレーム152と、第3パワー端子160と、封止樹脂170とを備えている。
【0013】
絶縁基板112は、セラミック製の絶縁性基板の下面(裏面)に放熱用の金属板が形成され、上面に第1導体部114及び第2導体部116が形成されたDCB基板(Direct Copper Bonding基板)である。なお、絶縁基板112は、プリント基板等であってもよい。絶縁基板112は、矩形の平板状に形成されており、電子モジュール100の長手方向である前後方向の中央部に配設されていることが好ましい。
【0014】
第1導体部114及び第2導体部116は、絶縁基板112上に形成された導体部である。図4に示されるように、第1導体部114上には第1の半導体素子118が配置されており、第2導体部116上には第2の半導体素子120が配置されている。第1の半導体素子118および第2の半導体素子120のそれぞれはダイオードである。第1の半導体素子118は一方の面(絶縁基板112側の面(下面))に形成された図示しないカソード電極と、他方の面(絶縁基板112とは反対側の面(上面))に形成されたアノード電極118Aを有している。第2の半導体素子120は一方の面(絶縁基板112側の面(下面))に形成された図示しないカソード電極と、他方の面(絶縁基板112とは反対側の面(上面))に形成されたアノード電極120Aを有している。第1の半導体素子118および第2の半導体素子120のカソード電極は、それぞれ第1導体部114および第2導体部116に対して導電性接合材によって接合されている。
【0015】
第1パワー端子130および第2パワー端子140は、図1図2および図4に示すように、電子モジュール100の前後方向の前方に配設されている。第1パワー端子130および第2パワー端子140は、それぞれ導電性を有する平板材(例えば銅板)132Aおよび平板材(例えば銅板)142Aにより形成される。第1パワー端子130は、導電性を有する平板材(例えば銅板)132Aから構成され、第2パワー端子140は、導電性を有する平板材(例えば銅板)142Aから構成される。
【0016】
第3パワー端子160は、図1図2および図4に示されるように、導電性を有する平板材(例えば銅板)160Aにより形成される。第3パワー端子160は、前後方向が板厚方向となるように配設されており、上下方向を長手方向とする長尺状をなしている。第3パワー端子160は、封止樹脂170の上側に配設され、封止樹脂170から露出する部分と、封止樹脂170に覆われた部分とを有する。
【0017】
内部接続フレーム152には図3に示すように長穴156が形成されており、第3パワー端子160の左右方向の幅寸法は長穴156の長手方向寸法より若干小さく設定されている。内部接続フレーム152に形成される長穴156は、平面的に見て第1の半導体素子118のアノード電極と第2の半導体素子120のカソード電極に挟まれた領域において、第1の半導体素子118と第2の半導体素子120とを結ぶ線に直交する方向に沿って延在する。
【0018】
第3パワー端子160の下側部分は、内部接続フレーム152の長穴156に圧入されている。第3パワー端子160の下側部分は、長穴156内において内部接続フレーム152と部分的に接触しており、内部接続フレーム152と電気的に接続されている。第3パワー端子160の下端面は、導電性接合材によって第1の半導体素子118および第2の半導体素子120の所定の電極と接続されている。
【0019】
なお、上記した実施形態はダイオードモジュールの場合であるが、半導体素子がMOSトランジスタやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であるような場合には、MOSトランジスタやIGBTを構成するゲート電極から制御端子として機能する信号端子(図示せず)が、封止樹脂170の上方に突出するよう配設され、図示しない外部接続部材と接続される。
【0020】
第1の半導体素子118と第2の半導体素子120は、本第1の実施形態では、ダイオードである。素子はダイオード以外にも例えば、後述するパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ等の他の半導体素子や、電子素子であってもよい。また、半導体素子の材料としては、シリコン、SiC、GaN等の素材を用いることができる。なお、半導体素子がMOSトランジスタやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である場合の具体例は後述する。
【0021】
(ダイオードモジュールにおける半導体素子の等価回路および断面構造)
以下に、電子モジュールをダイオードモジュールとした場合における半導体素子の等価回路および断面構造について図5(b)、図6(a)~図6(c)を参照して説明する。図6(a)~図6(c)はそれぞれ電子モジュール100(ダイオードモジュール)の等価回路バリエーション1~3を示した図であり、図5(b)は図6(a)の等価回路に対応するダイオードモジュールの断面構造を示した図である。
【0022】
[接続バリエーション]
図5および図6(a)に示すように、第1の半導体素子118を図6(a)の上側ダイオードとし、第2の半導体素子120を図6(a)の下側ダイオードとして、第1の半導体素子118および第2の半導体素子120が内部接続フレームICF(図5(a)の150に相当)および中点パワー端子MPT(図4の160に相当)の接点(以下「ノード」と呼ぶ。)MPを介して直列接続されている。そして上側ダイオードのアノード電極A(図4の118Aに相当)が第2のパワー端子PT2(図4の130に相当)に接続され、上側ダイオードのカソード電極Kが下側ダイオードのアノード電極A(図4の120Aに相当)に接続され、下側ダイオードのカソード電極Kが第1のパワー端子PT1(図4の140に相当)に接続されている。
【0023】
なお、変形例として下側ダイオードの極性を逆にして上側ダイオードのカソード電極Kが下側ダイオードのカソード電極Kに接続するようにしてもよい(図6(b)参照)。また、他の変形例としてダイオードの代わりにサイリスタを用いてもよい(図6(c)参照)。さらに他の変形例として、純粋なダイオードモジュールではないが2つのダイオードの一方(例えば、上側ダイオード)をMOSトランジスタに代えてもよい(図6(d)参照)。なお、図6(c)および図6(d)の制御端子CT1,CT2は制御信号の入出力ノードである。
【0024】
[第1の実施形態における効果]
第1の実施形態に係る電子モジュール100は、第1電極および第2電極の2つの電極を有する第1の半導体素子118と、第3電極および第4電極の2つの電極を有する第2の半導体素子120と、第1電極および第2電極のうち一方の電極に接続された平板状の第1パワー端子130と、第3電極および第4電極のうち一方の電極に接続された平板状の第2パワー端子140と、第1電極および第2電極のうち他方の電極と第3電極および第4電極のうち他方の電極に接続された平板状の中点パワー端子(第3パワー端子160)とを備える。電子モジュール100は、第1電極および第2電極のうち他方の電極と第3電極および第4電極のうち他方の電極とを接続する平板状の内部接続フレーム152であって、中点パワー端子(第3パワー端子160)を圧入するための長穴156を有する内部接続フレーム152を備える。中点パワー端子(第3パワー端子160)は、内部接続フレーム152の長穴156に圧入され垂直方向に立設している。
【0025】
上記した第1の実施形態の構成によれば、2個の半導体素子を備える電子モジュールにおいて、2個の半導体素子の中点パワー端子の内部接続フレーム152に対する接触面積を小さくするとともにパッケージを小さくして配線長を短くすることできるので、インダクタンスや配線抵抗が低減された電子モジュールを提供することができる。
【0026】
さらに、長穴156は、平面的に見て第1の半導体素子118の第1電極および第2電極のうち他方の電極と第2の半導体素子120の第3電極および第4電極のうち他方の電極とに挟まれた領域において、第1の半導体素子118と第2の半導体素子120とを結ぶ線に直交する方向に沿って延在している。したがって、2個の半導体素子同士を結ぶ線に直交する方向に沿って延在させることによって電子モジュール100を構成する内部接続フレーム152の前後方向の領域にスペースができるためパッケージング(パッケージの設計)や配線設計の自由度が向上する。
【0027】
さらに、第1パワー端子130、第2パワー端子140及び内部接続フレーム152は、同じリードフレーム由来のものであることが好ましい。すなわち複数のリードフレームにまたがって第1パワー端子130と第2パワー端子140が接続されて場合に比較して、第1パワー端子130、第2パワー端子140及び内部接続フレーム152に関係する接続線の配線長を短くすることできるので、インダクタンスや配線抵抗が低減された電子モジュールを提供することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電子モジュール300は、基本的には第1の実施形態に係る電子モジュール100と同様の構成を有するが、半導体素子としてダイオードの代わりにトランジスタを用いる点で第1の実施形態に係る電子モジュール100と異なる。
【0029】
第2の実施形態に係る電子モジュール300は、図7および図8に示すように、前後方向に長尺で、かつ上下方向に扁平な略直方体形状をなしている。電子モジュール300は、半導体素子320と、第1パワー端子330と、第2パワー端子340と、第3パワー端子360と、第1接続フレーム(内部接続フレーム)332Bと、第2接続フレーム342Bと、封止樹脂370とを含んで構成される。
【0030】
電子モジュール300は、2つの半導体素子320A,320Bを備える。半導体素子320A,320Bとしては、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いることができる。半導体素子320A,320Bは、絶縁基板312の一方の面上に配設されていてもよい。半導体素子320A,320Bは、半導体基板の一方の面又は両方の面に形成された図示しない電極を備える。
【0031】
絶縁基板312は、下面(裏面)に放熱用の金属板が形成されたDCB基板(Direct Copper Bonding基板)のセラミックス基板である。2つの半導体素子320は、例えば、絶縁基板312の一方の面に形成され、もう一方の面に放熱用の金属が形成されている。なお、絶縁基板312は、プリント基板等であってもよい。絶縁基板312は、矩形の平板状に形成されており、電子モジュール300の長手方向である前後方向の中央部に配設されていることが好ましい。
【0032】
第1パワー端子330は、図7に示すように、電子モジュール300の前後方向の前方に配設されている。第1パワー端子330は、導電性を有する平板材、例えば銅板によって板状に形成された板材332Aから構成される。第1パワー端子330は、第1パワー端子330を上下方向に貫通する貫通孔331を備える。貫通孔331は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。
【0033】
第1接続フレーム332Bは、第1パワー端子330と電気的に接続されている。第1接続フレーム332Bは、封止樹脂370の内部に埋まっている。電子モジュール300において、第1接続フレーム332Bは、第1パワー端子330と同じ板材332により、一体に形成されている。すなわち、板材332のうち、封止樹脂370に埋まっている部分が第1接続フレーム332Bに該当する。
【0034】
第1接続フレーム332Bは、第1接続フレーム332Bを上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続端子334の上端部が嵌合している。内部接続端子334により、第1接続フレーム332Bと半導体素子320Aの電極とが接続されている。内部接続端子334は、例えば圧入によって、第1接続フレーム332Bに固定されている。なお、貫通孔の形状は、円形形状に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
【0035】
第2パワー端子340は、図8に示すように、電子モジュール300の前後方向の後方に配設されている。第2パワー端子340は、導電性を有する平板材、例えば銅板から形成された板材342Aから構成される。第2パワー端子340は、第2パワー端子340を上下方向に貫通する貫通孔341を備える。貫通孔341は、上下方向に見たとき、例えば、円形形状をなしている。
【0036】
第2接続フレーム342Bは、第2パワー端子340と電気的に接続されている。第2接続フレーム342Bは、封止樹脂370の内部に埋まっている。電子モジュール300において、第2接続フレーム342Bは、第2パワー端子340と同じ板材342により、一体に形成されている。すなわち、板材342のうち、封止樹脂370に埋まっている部分が、第2接続フレーム342Bに該当する。
【0037】
第2接続フレーム342Bは、第2接続フレーム342Bを上下方向に貫通する4つの貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。4つの貫通孔には、それぞれ、内部接続電極344の上端部が嵌合している。4つの内部接続電極344により、第2接続フレーム342Bと半導体素子320Bの図示しない電極とが接続されている。内部接続電極344は、例えば圧入によって、第2接続フレーム342Bに固定されている。上記した貫通孔及び内部接続電極344の数は、必要な電力を流通することが可能であれば4個に限られず、1個以上の任意の数であることができる。
【0038】
電子モジュール300は第3パワー端子360を備えている。第3パワー端子360は、図8に示されるように、導電性を有する平板材、例えば、銅板により形成されている。第3パワー端子360は、前後方向が板厚方向となるように配設されており、上下方向を長手方向とする長尺状をなしている。第3パワー端子360は、封止樹脂370の上側に配設され、封止樹脂370から露出する部分と、封止樹脂370に覆われた部分とを有する。
【0039】
電子モジュール300は、内部接続フレーム352を備えている。内部接続フレーム352は、第3パワー端子360と電気的に接続されている。内部接続フレーム352は、第1接続フレーム332B及び第2接続フレーム342Bと同じ平面上に配設されていてもよい。
【0040】
内部接続フレーム352は、内部接続フレーム352を上下方向に貫通する貫通孔(符号省略)を備える。貫通孔は、上下方向に見たとき円形形状をなしている。貫通孔には、内部接続端子354の上端部が嵌合している。内部接続端子354により、内部接続フレーム352と半導体素子320Bの図示しない電極とが接続されている。内部接続端子354は、例えば圧入によって、内部接続フレーム352に固定されている。
【0041】
(接続バリエーション)
以下に、半導体素子がMOSトランジスタである場合における等価回路および断面構造について図9(a)~(d)および図10(a)~(c)を参照して説明する。図9(a)は電子モジュール300を構成する半導体素子320A、320Bの等価回路を示した図であり、図10(a)は図9(a)の等価回路に対応する電子モジュールの断面構造を示した図である。
【0042】
図9(a)および図10(a)に示すように、半導体素子320Bを第1のMOSトランジスタ(図9(a)の上側トランジスタ)とし、半導体素子320Aを第2のMOSトランジスタ(図9(a)の下側トランジスタ)として、第1のMOSトランジスタおよび第2のMOSトランジスタが内部接続フレームICFおよび中点パワー端子MPT(図8では360に相当)の接点(以下「ノード」と呼ぶ。)MPを介して直列接続されている。そして第1のMOSトランジスタのドレイン電極が第1のパワー端子PT1(図8の340に相当)に接続され、第1のMOSトランジスタのソース電極Sが第2のMOSトランジスタのドレイン電極Dに接続され、第2のMOSトランジスタのソース電極Sが第2のパワー端子PT2(図4の330に相当)に接続されている。
【0043】
また、第1のMOSトランジスタのソース電極Sが内部接続フレームICFを介して中点パワー端子MPT(図4では360に相当)に接続され、第1のMOSトランジスタのゲート電極Gが制御端子(図8の382)CT1に接続されている。そして第2のMOSトランジスタのゲート電極Gが制御端子(図8の372)CT2に接続されている。
【0044】
なお、変形例として上記した構成が上側の半導体素子320B(上側トランジスタ)と下側の半導体素子320A(下側トランジスタ)が順方向(上側トランジスタのソース電極Sが下側トランジスタのドレイン電極Dに接続)に接続されたものであるのに対し、図9(c)および図10(b)に示すように下側の半導体素子320Aの極性を逆にして上側の半導体素子320Bのソース電極Sが下側の半導体素子320Aのソース電極Sに接続するようにしてもよい。また、他の変形例として図9(d)に示すように、上側の半導体素子320Bの極性を逆にして上側の半導体素子320Bのドレイン電極Dが下側の半導体素子320Aのドレイン電極Dに接続するようにしてもよい。なお、図9(a)~図9(d)の制御端子CT1やCT2は制御信号の入出力ノードである。
【0045】
次に図9(c)および図10(b)の構成においてMOSトランジスタをIGBTに置き換えた場合における等価回路および断面構造について図9(b)、図10(c)に示されているが、上記トランジスタをIGBTに変えた以外は同じであるので説明を省略する。なお、図示した態様以外の他の接続態様(等価回路及び断面)についても上記同様である。
【0046】
次に、半導体素子がIGBTとショットキーバリアダイオード(以下、「SBD」と呼ぶ。)である場合における等価回路について図13を参照して説明する。図13は電子モジュール300を構成する半導体素子が4個の場合の等価回路を示した図である。
【0047】
図13に示すように、第1のIGBT(図13の上側IGBT)と第1のSBD(図13の上側SBD)が並列接続され、第1のIGBTのゲート電極Gが制御端子CT1に接続されている。第1のIGBTおよび第2のIGBT(図13の下側IGBT)は内部接続フレームICFおよび中点パワー端子MPT(図8では360に相当)のノードMPを介して直列接続されている。そして第2のIGBTと第2のSBD(図13の下側SBD)が並列接続され、第2のIGBTのエミッタ電極Eが第2のパワー端子PT2(図8の340に相当)に接続されている。また、第1のIGBTのエミッタ電極EがノードMPを介して中点パワー端子MPT(図8では360に相当)に接続され、第1のIGBTのゲート電極Gが制御端子(図8に図示しないピン端子)CT1に接続されている。そして第2のIGBTのゲート電極Gが制御端子CT2に接続されている。
【0048】
[第2の実施形態における効果]
このように、第2の実施形態に係る電子モジュール300は、半導体素子としてダイオードの代わりにトランジスタを用いる点で第1の実施形態に係る電子モジュール100とは異なるが、第1の実施形態に係る電子モジュール100と同様に、2個の半導体素子を備える電子モジュールにおいて、2個の半導体素子の中点パワー端子の内部接続フレーム352に対する接触面積を小さくするとともにパッケージを小さくして配線長を短くすることできるので、インダクタンスや配線抵抗が低減された電子モジュールを提供することができる。
【0049】
さらに、長穴は、平面的に見て第1の半導体素子320Aの他方の電極と第2の半導体素子320Bの他方の電極に挟まれた領域において、第1の半導体素子320Aと第2の半導体素子320Bとを結ぶ線に直交する方向に沿って延在している。したがって、2個の半導体素子同士を結ぶ線に直行する方向に沿って延在させることによって電子モジュール300を構成する内部接続フレーム352の前後方向の領域にスペースができるためパッケージング(パッケージの設計)や配線設計の自由度が向上する。
【0050】
さらに、第1パワー端子330、第2パワー端子340及び内部接続フレーム352は、同じリードフレーム由来のものであることが好ましい。したがって、第1パワー端子330、第2パワー端子340及び内部接続フレーム352に接続される接続線の配線長を短くすることできるので、インダクタンスや配線抵抗が低減された電子モジュールを提供することができる。
【0051】
さらに、第1の半導体素子320Aは、第1制御電極(ゲート電極)をさらに有し、第2の半導体素子320Bは、第2制御電極(ゲート電極)をさらに有し、電子モジュール300は、第1の半導体素子320Aの第1制御電極に接続された制御端子CT2と、第2の半導体素子320Bの第2制御電極に接続された制御端子CT1とをさらに備える。したがって、第1パワー端子330、第2パワー端子340及び内部接続フレーム352に接続される接続線の配線長を短くすることできるので、インダクタンスや配線抵抗が低減されたハーフブリッジ構造を有する電子モジュールを提供することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る電子モジュールについて、図11図12(a)~(d)を参照して説明する。なお、この第3の実施形態は、上記した第1の実施形態と以下の点を除いて同様であるので異なる点についてのみ説明し同様の部分の説明は省略する。また、異なる点以外の符号は区別する必要がないため第1の実施形態で用いた符号と同様の符号を用いる。
【0053】
長穴256は、平面的に見て第1の半導体素子118の他方の電極と第2の半導体素子120の前記他方の電極に重ならない領域において、第1の半導体素子118と第2の半導体素子120とを結ぶ線に平行な方向に沿って延在している。ここで、第2の実施形態に係る電子モジュール400がダイオードモジュールである場合にはその断面構造は図12(d)に示すとおりである。電子モジュール400における2個の半導体素子が共にMOSトランジスタである場合の断面構造は例えば、図12(a)、図12(b)に示すとおりである。電子モジュール400における2個の半導体素子が共にIGBTである場合の断面構造は図12(c)に示すとおりである。
【0054】
[第3の実施形態における効果]
長穴256は、第1の半導体素子118の第1電極および第2電極のうち他方の電極と第2の半導体素子120の第3電極および第4電極のうち他方の電極に重ならない領域において、第1の半導体素子118と第2の半導体素子120とを結ぶ線に平行な方向に沿って延在しているので、電子モジュール(特に内部接続フレーム)の左右方向の領域にスペースができるためパッケージング(パッケージの設計)や配線設計の自由度が向上する。
【符号の説明】
【0055】
100,300,400…電子モジュール、112,312…絶縁基板、118,120,320A,320B、…半導体素子、130,330…第1パワー端子、132A,142A,160A,332A,342,360…平板材、140,340…第2パワー端子、152,352…内部接続フレーム、156,256,356…長穴、160,360…第3パワー端子、170,370…封止樹脂
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