(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159063
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20241031BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16H25/24 J
F16H25/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074807
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴史
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA27
3J062CD47
3J062CD75
(57)【要約】
【課題】潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能なボールねじを提供する。
【解決手段】ボールねじは、外周面に螺旋状の雄ねじ溝12とランド部が形成されたねじ軸と、内周面に螺旋状の雌ねじ溝が形成されたナットと、雄ねじ溝12と雌ねじ溝との間に形成される転走路に沿って転動自在に配置された複数の転動体と、潤滑剤を含有する潤滑剤含有材30と、を備える。雄ねじ溝12及びランド部の少なくとも一方に、複数の微小ディンプルを有する表面処理部12aが形成され、潤滑剤含有材30が、外周面のうち少なくとも表面処理部12aが形成された部位に接触するように配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の雄ねじ溝とランド部が形成されたねじ軸と、
内周面に螺旋状の雌ねじ溝が形成されたナットと、
前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝との間に形成される転走路に沿って転動自在に配置された複数の転動体と、
潤滑剤を含有する潤滑剤含有材と、を備え、
前記雄ねじ溝及び前記ランド部の少なくとも一方に、複数の微小ディンプルを有する表面処理部が形成され、
前記潤滑剤含有材が、前記外周面のうち少なくとも前記表面処理部が形成された部位に接触するように配置される、
ボールねじ。
【請求項2】
前記雄ねじ溝及び前記ランド部の両方に前記表面処理部が形成され、
前記潤滑剤含有材が前記雄ねじ溝及び前記ランド部の両方に接触するように配置される、
請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
さらに、前記ナットの前記内周面に前記表面処理部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のボールねじ。
【請求項4】
さらに、前記複数の転動体のうち少なくとも一部の表面に前記表面処理部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールねじでは、転動体と転走面の間の摩擦を低減させること等を目的として、潤滑剤を供給することが行われている。例えば、特許文献1では、ボールねじのねじ軸とボールねじナットとの間に、樹脂と潤滑剤を含む混合物の焼結体である多孔質体に更に潤滑剤を含浸させて得られる潤滑剤含有材を介在させ、該潤滑剤含有剤をシール部材として用いることで、ボールねじへの潤滑剤供給と、ナット内に供給した潤滑剤のシールを行っている。
【0003】
また、例えば、特許文献2では、ボールねじに潤滑剤含有材を備えさせるのではなく、ショットピーニング処理によってねじ軸の軌道面(雄ねじ溝)又はナットの軌道面(雌ねじ溝)のうちの少なくとも一方に多数の微小な凹凸を形成し、該凹凸を油溜りとして機能させることで、軌道面に供給した潤滑剤の保持能力を高めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-69329号公報
【特許文献2】特開2020-67153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のボールねじでは、潤滑剤含有材から吐出される潤滑剤の量が少ない場合が考えられ、ナット内への潤滑剤の追加供給が必要な場合があった。ここで、潤滑剤の吐出量が少なくなる原因として、特許文献1の段落0010に記載されているように、特許文献1では潤滑剤の吐出量を必要最小限に抑制するという思想があることに加え、ねじ軸の転走面の表面が、切削又は研削仕上げによって、加工方向に方向性を持った表面(異方性表面)となっていることが挙げられる。特許文献1では、ねじ軸の切削目又は研削目の方向が回転方向であるため、潤滑剤含有材とねじ軸の接触部の摩擦係数が小さくなって潤滑剤含有材から吐出される潤滑剤の量が少なくなり、結果として、ナット内への潤滑剤の追加供給が必要な場合が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能なボールねじを提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献2には、潤滑剤含有材を用いることが開示されておらず、また、ナット内への潤滑剤の供給頻度を低減するという目的も開示されていない。また、特許文献2では、軌道面に多数の微小な凹凸が形成され、軌道面が等方性粗さを有する表面(等方性表面)になっている。特許文献1の軌道面を特許文献2のような等方性表面を有するものに変更すると、軌道面と潤滑剤含有材との摩擦係数が大きくなって発熱量が増加することにより、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量を大きくすることができるが、このような変更は、特許文献1における潤滑剤の吐出量を必要最小限に抑制するという上述の思想に反してしまう。また、特許文献1に特許文献2を組み合わせるその他の動機づけも存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るボールねじは、
外周面に螺旋状の雄ねじ溝とランド部が形成されたねじ軸と、
内周面に螺旋状の雌ねじ溝が形成されたナットと、
前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝との間に形成される転走路に沿って転動自在に配置された複数の転動体と、
潤滑剤を含有する潤滑剤含有材と、を備え、
前記雄ねじ溝及び前記ランド部の少なくとも一方に、複数の微小ディンプルを有する表面処理部が形成され、
前記潤滑剤含有材が、前記外周面のうち少なくとも前記表面処理部が形成された部位に接触するように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能なボールねじを提供することができる。
具体的には、雄ねじ溝及びランド部の少なくとも一方に表面処理部を形成することによって、雄ねじ溝及びランド部の少なくとも一方が切削目又は研削目の方向以外の表面粗さ(等方性粗さ)を有するようにしている。また、ねじ軸の外周面のうち少なくとも表面処理部が形成された部位と接触するように潤滑剤含有材を配置している。これらの結果、ねじ軸と潤滑剤含有材の接触部の摩擦係数が大きくなって発熱量が増加することにより、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量を大きくすることができる。また、表面処理部に形成されたディンプルによって油だまり効果が生じるため、潤滑剤含有材から吐出された潤滑剤をディンプルに保持し、吐出された潤滑剤が流れ出ることを抑制できる。以上のように、本発明によれば、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量増加と、潤滑剤の保持という2つの効果が得られるため、結果として、潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るボールねじの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の軸Lを通る平面によってボールねじを切断した場合における、潤滑剤供給材とボールねじの外周面を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿ってボールねじを切断した場合における、潤滑剤供給材とボールねじの外周面を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係るボールねじの外周面を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係るボールねじの外周面を撮影した写真である。
【
図6】
図6は、従来例のボールねじを軸方向に垂直な断面で切断した場合における、潤滑剤供給材とボールねじの外周面を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、従来例のボールねじの外周面を示す模式図である。
【
図8】
図8は、従来例のボールねじの外周面を撮影した写真である。
【
図9】
図9は、第一実施形態の第一変形例に係る、潤滑剤供給材とボールねじの外周面を示す模式断面図である。
【
図10】
図10は、第一実施形態の第二変形例に係る、潤滑剤供給材とボールねじの外周面を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るボールねじについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、その説明を適宜省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
(第一実施形態)
まず、
図1から
図5を用いて、第一実施形態に係るボールねじについて説明する。
図1に示すように、第一実施形態に係るボールねじ1は、ねじ軸10と、ナット20と、潤滑剤含有材30と、転動体40と、を備える。
【0013】
ねじ軸10の外周面11には、螺旋状の雄ねじ溝12とランド部13が形成されている。また、雄ねじ溝12及びランド部13の少なくとも一方には、表面処理がなされる。本実施形態では、雄ねじ溝12及びランド部13の両方に表面処理がなされ、表面処理部12a,13aが形成されている。表面処理部12a,13aについては、後の段落で詳述する。軸Lは、ねじ軸10の回転軸である。また、ボールねじ1の軸方向は、軸Lに沿った方向である。
【0014】
ナット20は、ねじ軸10を包囲するように配置されている。ナット20の内周面21には、螺旋状の雌ねじ溝22が形成されている。複数の転動体40は、雄ねじ溝12と雌ねじ溝22との間に形成される転走路41に沿って転動自在に配置されている。転動体40は、例えば、循環部材(図示せず)によって転走路41内で循環転動する。循環部材としては、従来公知の構成を適宜採用でき、例えば、エンドキャップ方式、こま方式、リターンチューブ方式、又はガイドプレート方式等に係る構成を採用できる。
【0015】
潤滑剤含有材30は、潤滑剤を含有する。潤滑剤含有材30は、例えば、ゴムや合成樹脂等の多孔質体、繊維交絡体などで形成されており、潤滑剤が含浸されている。潤滑剤としては、例えば、鉱油、合成油、グリースなどを用いることができる。合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。繊維交絡体としては、例えば、羊毛フェルト、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。
【0016】
潤滑剤含有材30の潤滑剤含浸量は、長期間の使用の観点から、例えば、70質量%以上であることが好ましい。また、潤滑剤含浸量の上限は潤滑剤含有材30の強度を考慮して、例えば、85質量%以下であることが好ましい。本実施形態の一例として、潤滑剤含有材30は、質量比率を15:85とする、ポリエチレンと鉱油とを混合して成形したものが挙げられる。
【0017】
潤滑剤含有材30は、外周面11のうち少なくとも上記の表面処理がなされた部位と接触するように配置されていれば、どのようには位置されていてもよい。
図2に示すように、本実施形態では、潤滑剤含有材30は、雄ねじ溝12の表面処理部12a及びランド部13の表面処理部13aの両方に接触するように配置される。また、本実施形態において、潤滑剤含有材30は、ナット20の軸方向における両端においてねじ軸10とナット20の間をシールするように配置され、ナット20の内部への異物混入を抑制するシール部材としても機能している。
【0018】
以下、表面処理部12aについて詳述する。なお、本実施形態ではランド部13にも表面処理部13aが形成されているが、表面処理部13aについては、表面処理部12aと同様の構成を採用でき、表面処理部12aの説明を援用できるため、説明を省略する。
【0019】
図3~
図5に示すように、表面処理部12aには、複数の微小なディンプル50が形成されている。ディンプル50の開口直径は10~30μmであり、例えば、15~25μmであることが好ましい。ディンプル50の深さは1~3μmであり、例えば、1.5~2.5μmであることが好ましい。ディンプル50の個数は1mm
2当たり200~500個であり、例えば、1mm
2当たり300~400個であることが好ましい。
【0020】
表面処理部12aを形成する方法は、特に制限されず、例えば、ショットピーニング、サンドブラスト、ショットブラスト、表面ロール加工、及びバレル加工等の従来公知の方法を採用できる。
【0021】
図3に示すように、雄ねじ溝12と潤滑剤含有材30の接触部において表面処理部12aのディンプル50が凹凸として機能する。その結果、接触部の摩擦係数が大きくなって発熱量が増加することにより、潤滑剤含有材30からの潤滑剤の吐出量が大きくなる。また、潤滑剤含有材30から吐出された潤滑剤がディンプル50に保持されることによって潤滑状態が維持される。このように、潤滑剤の吐出量増加と潤滑剤保持の効果を同時に得られるので、潤滑剤含有材30以外からの追加の潤滑剤を不要又は極少量としたボールねじを実現できる。また、追加の潤滑剤を必要としない場合、ナット20に給油孔を設ける必要がなくなり、設計の自由度を向上することができる。また、表面処理部12a,13aが潤滑剤を保持する役割を担っており、かつ、表面処理部12a,13aに保持された潤滑剤が減少した場合は直ちに潤滑剤含有材30から潤滑剤が供給されるため、潤滑剤保持のためのシールを取り付ける必要がなくなる。そのため、異物環境になければ、シールを取り付けずにボールねじを使用できる。また、従来よりも潤滑剤の吐出量と保持効果を大きくできるので、摩擦力が小さくなって発熱量が小さくなるような低速回転時でも潤滑状態を維持できる。
【0022】
図4及び
図5に示すように、雄ねじ溝12には、複数のディンプル50が形成されたことによって、全体として、等方性粗さを有する等方性表面となっている。なお、本明細書では、例えば、
図4及び
図5に示すように、ショットピーニング等によって様々な位置にランダムにディンプル50が分布している状態の表面を「等方性表面」という。また、例えば、後述の
図7及び
図8に示すように、切削目又は研削目のような加工方向に沿った凹凸を有する表面を「異方性表面」という。
【0023】
異方性表面と等方性表面を表す指標としては、ISO25178で規定される表面性状スペクトル比(Str)が知られている。このStrは0~1の範囲であり、1に近いほど「等方性」が高いことを示している。表面処理部12aのStrは、潤滑剤の吐出量と保持効果を大きくするという観点から、例えば、0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。
【0024】
(従来例)
ここで、上述の第一実施形態に係るボールねじ1の理解を深めるため、
図6~
図8を用いて、特許文献1に示すような従来の雄ねじ溝12について説明をする。
図6に示すように、従来例に係る雄ねじ溝12には、
図3に示すような複数のディンプル50を有する表面処理部12aが形成されていない。よって、従来例における雄ねじ溝12と潤滑剤含有材30の接触部における摩擦係数は第一実施形態よりも低くなる。結果として、従来例における潤滑剤の吐出量は第一実施形態よりも低くなる。また、ディンプル50による油だまり効果も得られないため、従来例における潤滑剤の保持効果は、第一実施形態よりも低くなる。
【0025】
また、
図7及び
図8に示すように、従来例の雄ねじ溝12には、複数のディンプル50が形成されていないため、雄ねじ溝12の表面(軌道面)は異方性表面となっている。具体的には、
図7及び
図8の紙面左右方向に沿って、切削目又は研削目が存在している。すなわち、雄ねじ溝12の表面は、紙面左右方向に沿って延びる凹凸を有している。しかし、紙面左右方向はボールねじ1における回転方向であるため、この凹凸は、接触部における摩擦係数の増加にほとんど寄与しない。それどころか、回転方向に沿って延びる凹凸にそって潤滑剤が流れ出してしまうおそれもある。以上の理由によって、従来例と第一実施形態を比較すると、従来例の方が潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量が多くなったり、供給頻度が高くなったりする傾向にある。
【0026】
(第一変形例、第二変形例)
次に、
図9及び
図10を用いて、第一実施形態の第一変形例及び第二変形例について説明する。第一変形例及び第二変形例に係るボールねじは、潤滑剤含有材30とねじ軸の外周面との接触態様が異なることを除いて、第一実施形態と同様の構成を採用できる。よって、以下では、上述の接触態様の違いについて説明する。
【0027】
図9は、第一変形例を示している。第一変形例に係るボールねじにおいて、潤滑剤含有材30は、ランド部13に接触し、かつ、雄ねじ溝12には接触しないように配置される。すなわち、第一変形例に係るボールねじでは、潤滑剤含有材30は、表面処理部13aに接触し、かつ、表面処理部12aには接触しない。よって、表面処理部12aは、摩擦係数の増加による潤滑剤の吐出量の増大には関与しないが、油だまり効果による潤滑剤の保持には関与する。
【0028】
図10は、第二変形例を示している。第二変形例に係るボールねじにおいて、潤滑剤含有材30は、雄ねじ溝12に接触し、かつ、ランド部13には接触しないように配置される。すなわち、第二変形例に係るボールねじでは、潤滑剤含有材30は、表面処理部12aに接触し、かつ、表面処理部13aには接触しない。よって、表面処理部13aは、摩擦係数の増加による潤滑剤の吐出量の増大には関与しないが、油だまり効果による潤滑剤の保持には関与する。
【0029】
以上、本発明に係る第一実施形態及びその変形例について詳述したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。本発明には、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0030】
例えば、第一実施形態又は各変形例において、ナット20の内周面21に表面処理部12a,13aのような表面処理部を形成してもよい。また、該表面処理部は、ナット20の内周面21のうち雌ねじ溝22にのみ形成してもよい。
【0031】
また、第一実施形態又は各変形例において、複数の転動体40のうち少なくとも一部の表面に表面処理部12a,13aのような表面処理部を形成してもよい。また、この場合、潤滑剤の保持効果を向上させるという観点から、複数の転動体40のすべてに表面処理部を形成することが好ましい。
【0032】
また、第一変形例において、潤滑剤含有材30が接触しない雄ねじ溝12には、表面処理部12aを形成しないでもよい。同様に、第二変形例において、潤滑剤含有材30が接触しないランド部13には、表面処理部13aを形成しないでもよい。
【0033】
(付記)
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 外周面に螺旋状の雄ねじ溝とランド部が形成されたねじ軸と、
内周面に螺旋状の雌ねじ溝が形成されたナットと、
前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝との間に形成される転走路に沿って転動自在に配置された複数の転動体と、
潤滑剤を含有する潤滑剤含有材と、を備え、
前記雄ねじ溝及び前記ランド部の少なくとも一方に、複数の微小ディンプルを有する表面処理部が形成され、
前記潤滑剤含有材が、前記外周面のうち少なくとも前記表面処理部が形成された部位に接触するように配置される、
ボールねじ。
このボールねじによれば、潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能なボールねじを提供することができる。
具体的には、雄ねじ溝及びランド部の少なくとも一方に表面処理部を形成することによって、雄ねじ溝及びランド部の少なくとも一方が切削目又は研削目の方向以外の表面粗さ(等方性粗さ)を有するようにしている。また、ねじ軸の外周面のうち少なくとも表面処理部が形成された部位と接触するように潤滑剤含有材を配置している。これらの結果、ねじ軸と潤滑剤含有材の接触部の摩擦係数が大きくなって発熱量が増加することにより、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量を大きくすることができる。また、表面処理部に形成されたディンプルによって油だまり効果が生じるため、潤滑剤含有材から吐出された潤滑剤をディンプルに保持し、吐出された潤滑剤が流れ出ることを抑制できる。以上のように、本発明によれば、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量増加と、潤滑剤の保持という2つの効果が得られるため、結果として、潤滑剤含有材由来ではない潤滑剤の供給量や供給頻度を低減可能となる。
【0034】
(2) 前記雄ねじ溝及び前記ランド部の両方に前記表面処理部が形成され、
前記潤滑剤含有材が前記雄ねじ溝及び前記ランド部の両方に接触するように配置される、
(1)に記載のボールねじ。
このボールねじによれば、潤滑剤含有材からの潤滑剤の吐出量をさらに大きくし、また、潤滑剤含有材から吐出された潤滑剤の保持効果をさらに高めることができる。
【0035】
(3) さらに、前記ナットの前記内周面に前記表面処理部が形成されている、
上記(1)又は(2)に記載のボールねじ。
このボールねじによれば、潤滑剤含有材から吐出された潤滑剤の保持効果をさらに高めることができる。
【0036】
(4) さらに、前記複数の転動体のうち少なくとも一部の表面に前記表面処理部が形成されている、
上記(1)から上記(3)のいずれかに記載のボールねじ。
このボールねじによれば、潤滑剤含有材から吐出された潤滑剤の保持効果をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:ボールねじ
10:ねじ軸
11:ねじ軸の外周面
12:雄ねじ溝
12a:表面処理部
13:ランド部
13a:表面処理部
20:ナット
21:ナットの内周面
22:雌ねじ溝
30:潤滑剤含有材
40:転動体
41:転走路
50:ディンプル
L:軸