(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159066
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20241031BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20241031BHJP
E02F 3/84 20060101ALI20241031BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F3/43
E02F3/84
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074814
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA04
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】アームの動作が停止しないようにすることを目的とする。
【解決手段】下部走行体と、前記下部走行体に対して、旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及びバケットを含むアタッチメントと、前記アームを駆動するアームシリンダと、前記アームシリンダのロッド側の圧力が所定値より大きく、且つ、前記アームの速度が閾値以下である場合に、前記ブームを上げるためのブーム指令値を生成する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して、旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及びバケットを含むアタッチメントと、
前記アームを駆動するアームシリンダと、
前記アームシリンダのロッド側の圧力が所定値より大きく、且つ、前記アームの速度が閾値以下である場合に、前記ブームを上げるためのブーム指令値を生成する制御装置と、を備える、ショベル。
【請求項2】
前記制御装置による前記ブームの制御は、リリーフ弁から油が排出される直前に行われる、請求項1記載のショベル。
【請求項3】
前記下部走行体、前記上部旋回体、前記アタッチメントの動作要素の少なくとも一部を自動で動作させるマシンコントロール機能を有し、
前記制御装置による前記ブームの制御は、前記マシンコントロール機能の実行中に行われる、請求項1又は2記載のショベル。
【請求項4】
前記バケットを駆動するバケットシリンダを有し、
前記制御装置は、
前記アームシリンダの動作に合わせて、前記バケットの所定の作業部位に設定される制御基準の設計面に対する鉛直方向の位置を調整するように、前記バケットシリンダの動作を制御する、請求項1記載のショベル。
【請求項5】
前記ブームを駆動するブームシリンダを有し、
前記制御装置は、
前記アームシリンダの動作に合わせて、前記バケットの所定の作業部位に設定される制御基準の設計面に対する鉛直方向の位置を調整するように、前記ブームシリンダの動作を制御する、請求項1記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のショベルでは、アームシリンダの動作に合わせて、バケットの所定の作業部位に設定された目標施工面に対する鉛直方向の位置を調整するように、バケットシリンダやブームシリンダの動作を制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、アームシリンダトップピンの位置、ブームシリンダトップピンの位置、バケットが地面に接する位置の位置関係と、各位置における力の向きによっては、アームを開く操作が行われているにも関わらず、アームが開かなくなる場合がある。
【0005】
そこで、上記事情に鑑み、アームの動作が停止しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に対して、旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及びバケットを含むアタッチメントと、前記アームを駆動するアームシリンダと、前記アームシリンダのロッド側の圧力が所定値より大きく、且つ、前記アームの速度が閾値以下の場合に、前記ブームを上げるためのブーム指令値を生成する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
アームの動作が停止しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図5】ショベルのマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す第一の機能ブロック図である。
【
図6】ショベルのマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す第二の機能ブロック図である。
【
図8】ショベルのコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
最初に、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
【0011】
図1、
図2は、それぞれ、本実施形態に係るショベル100の上面図及び側面図である。
【0012】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントATを構成するブーム4、アーム5、及び、エンドアタッチメントの一例としてのバケット6と、キャビン10とを備える。
【0013】
下部走行体1は、左右一対のクローラ1C、具体的には、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。下部走行体1は、左クローラ1CL及び右クローラ1CRが走行油圧モータ2M(走行油圧モータ2ML,2MR)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
【0014】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aで駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0015】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0016】
キャビン10は、操作者が搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0017】
ショベル100は、キャビン10に搭乗する操作者の操作に応じて、アクチュエータ(例えば、油圧アクチュエータ)を動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素(被駆動要素)を駆動する。
【0018】
また、ショベル100は、キャビン10の操作者により操作されるのに代えて、或いは、加えて、所定の外部装置の操作者によって遠隔操作されてもよい。所定の外部装置には、例えば、ショベル100の稼働状況等を管理する管理装置や作業現場の監督者、作業者等が利用する携帯端末等を含まれてよい。
【0019】
管理装置は、例えば、ショベル100の作業現場の外部に設置されるクラウドサーバであってもよいし、ショベル100の作業現場に設置されるエッジサーバやコンピュータ端末であってもよい。この場合、ショベル100は、例えば、後述の空間認識装置70に含まれる撮像装置が出力する画像情報(撮像画像)を外部装置に送信する。
【0020】
また、後述するショベル100の表示装置D1に表示される各種の情報画像(例えば、各種設定画面等)は、同様に、外部装置に設けられる表示装置にも表示されてよい。これにより、操作者は、例えば、外部装置に設けられる表示装置に表示される内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。
【0021】
そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素を駆動してよい。
【0022】
ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、操作者の操作には、キャビン10の操作者の操作装置26に対する操作、及び外部装置の操作者の遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
【0023】
また、ショベル100は、操作者の操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(以下、「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
【0024】
自動運転機能には、操作者の操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の動作要素(アクチュエータ)以外の動作要素(アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運転機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、操作者の操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の動作要素(アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。
【0025】
また、マシンコントロール機能には、アームシリンダ8の動作に合わせて、バケット6の所定の作業部位に設定された設計面に対する鉛直方向の位置を調整するように、バケットシリンダやブームシリンダの動作を制御する機能が含まれてよい。
【0026】
また、本実施形態では、アームシリンダトップピン8aの位置と、ブームシリンダトップピン7aの位置と、バケット6が地面に接する位置との関係や、各位置における力の向きに関わらず、アーム5に対して操作に応じた動作をさせるように、ブーム4の動作を制御する。
【0027】
具体的には、本実施形態では、アーム5の状態が、所定の条件を満たす状態となった場合に、自動的にブーム4を上げるためのブーム指令値を生成する。本実施形態のブーム4の動作の制御の詳細は後述する。
【0028】
ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、自動運転機能には、ショベル100の周囲の作業者等の人のジェスチャをショベル100が認識し、認識されるジェスチャの内容に応じて、複数の動作要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(「ジェスチャ操作機能」)が含まれてよい。
【0029】
また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0030】
ショベル100の制御システムは、コントローラ30と、空間認識装置70と、向き検出装置71と、情報入力装置72と、測位装置73と、表示装置D1と、音声出力装置D2と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回角速度センサS5とを含む。
【0031】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識し、空間認識装置70或いはショベル100から認識された物体までの距離等の位置関係を測定(演算)するように構成される。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、距離画像センサ、赤外線センサ等を含みうる。
【0032】
本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方認識センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方認識センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方認識センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方認識センサ70Rを含む。また、上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方認識センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
【0033】
向き検出装置71は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(例えば、下部走行体1に対する上部旋回体3の旋回角度)を検出する。
【0034】
向き検出装置71は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせを含んでよい。また、向き検出装置71は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせを含んでもよい。
【0035】
また、向き検出装置71は、上部旋回体3の下部走行体1に対する相対的な旋回角度を検出可能なロータリエンコーダ、ロータリポジションセンサ等、つまり、上述の旋回角速度センサS5を含んでもよく、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。
【0036】
また、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられたカメラを含んでもよい。この場合、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施すことにより、入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。
【0037】
そして、向き検出装置71は、既知の画像認識技術を用いて、下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定し、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導出してよい。このとき、上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導出されうる。特に、クローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置71は、クローラ1Cの画像を検出することにより、下部走行体1の長手方向を特定することができる。
【0038】
尚、上部旋回体3が旋回油圧モータ2Aに代えて、電動機で旋回駆動される構成の場合、向き検出装置71は、レゾルバであってよい。
【0039】
情報入力装置72は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。例えば、情報入力装置72は、各種情報画像を表示する表示装置のディスプレイに実装されるタッチパネルを含みうる。また、例えば、情報入力装置72は、表示装置D1の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル等を含みうる。また、情報入力装置72は、操作装置26に設けられるノブスイッチ(例えば、左操作レバー26Lに設けられるスイッチNS等)を含みうる。情報入力装置72に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0040】
スイッチNSは、例えば、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。オペレータは、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。また、スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0041】
測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置73は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置73の機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
【0042】
表示装置D1は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置D1は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0043】
音声出力装置D2は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音声を出力する。音声出力装置D2は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置D2は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
【0044】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよく、以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0045】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0046】
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0047】
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(例えば、上部旋回体3)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0048】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回角速度センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度や旋回角度を検出する。旋回角速度センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含む。
【0049】
なお、機体傾斜センサS4に3軸回りの角速度を検出可能なジャイロセンサ、6軸センサ、IMU等が含まれる場合、機体傾斜センサS4の検出信号に基づき上部旋回体3の旋回状態(例えば、旋回角速度)が検出されてもよい。この場合、旋回角速度センサS5は、省略されうる。
【0050】
次に
図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図3は、ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図3は、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0051】
油圧システムは、エンジン11によって駆動される左メインポンプ14Lから、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、且つ、エンジン11によって駆動される右メインポンプ14Rから右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させている。
【0052】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0053】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0054】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右側走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0055】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0056】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0057】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0058】
制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0059】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0060】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0061】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0062】
右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0063】
左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。
【0064】
右レギュレータ13Rは、右メインポンプ14Rの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、右レギュレータ13Rは、例えば、右メインポンプ14Rの吐出圧に応じて右メインポンプ14Rの斜板傾転角を調節することによって、右メインポンプ14Rの吐出量を制御する。
【0065】
左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるポンプ吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。なお、ポンプ吸収馬力は、左メインポンプ14Lの吸収馬力と右メインポンプ14Rの吸収馬力との合計である。
【0066】
左吐出圧センサ28Lは、吐出圧センサ28の一例であり、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0067】
圧力センサS10は、アームシリンダ8のロッド側の圧力を検出するための圧力センサである。圧力センサS10によって検出される圧力は、後述する処理に利用される。
【0068】
ここで、
図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御について説明する。
【0069】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0070】
右センターバイパス管路40Rには、最も下流にある制御弁176Rと作動油タンクとの間に右絞り18Rが配置されている。右メインポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右レギュレータ13Rを制御するための制御圧を発生させる。右制御圧センサ19Rは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0071】
コントローラ30は、制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0072】
具体的には、
図3で示されるように、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。
【0073】
そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0074】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。
【0075】
その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。右メインポンプ14Rが吐出する作動油についても同様である。
【0076】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機状態においては、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油が左センターバイパス管路40Lで発生させるポンピングロス、及び、右メインポンプ14Rが吐出する作動油が右センターバイパス管路40Rで発生させるポンピングロスを含む。
【0077】
また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに供給できる。
【0078】
次に、アクチュエータを自動的に動作させる構成について説明する。ブーム操作レバー26Aは、操作装置26としての電気式操作レバーの一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。
【0079】
ブーム操作レバー26Aは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。手動制御時において、ブーム上げ方向にブーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じて比例弁31ALの開度を制御する。
【0080】
これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。
【0081】
また、手動制御時において、ブーム下げ方向にブーム操作レバー26Aが操作された場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じて比例弁31ARの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、ブーム操作レバー26Aの操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0082】
比例弁31AL、31ARは、電磁弁としての比例弁31の一例であるブーム比例弁31Aを構成する。比例弁31ALは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。
【0083】
コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31ALを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。
【0084】
比例弁31ARは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31ARを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31AL、31ARは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0085】
この構成により、コントローラ30は、自動掘削制御の際には、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ALを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に上げることができる。
【0086】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31ARを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に下げることができる。
【0087】
アーム操作レバー26Bは、操作装置26としての電気式操作レバーの別の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Bは、操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量を操作データ(電気信号)としてコントローラ30に対して出力する。
【0088】
手動制御時において、アーム開き方向にアーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて比例弁31BRの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0089】
また、手動制御時において、アーム閉じ方向にアーム操作レバー26Bが操作された場合、コントローラ30は、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて比例弁31BLの開度を制御する。これにより、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、アーム操作レバー26Bの操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートとに作用させる。
【0090】
比例弁31BL、31BRは、比例弁31の一例であるアーム比例弁31Bを構成する。比例弁31BLは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。
【0091】
比例弁31BRは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31BL、31BRは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0092】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に閉じることができる。
【0093】
また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に開くことができる。
【0094】
これにより、自動掘削制御においては、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて、アームシリンダ8及びブームシリンダ7が自動で動作することにより、作業部位の速度制御、若しくは、位置制御が実行される。
【0095】
ショベル100は、上部旋回体3を自動的に左旋回・右旋回させるための構成、バケット6を自動的に開閉させるための構成、及び、下部走行体1を自動的に前進・後進させるための構成を備えていてもよい。
【0096】
この場合、旋回油圧モータ2Aに関する油圧システム部分、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分、左側走行油圧モータ1Lの操作に関する油圧システム部分、及び、右側走行油圧モータ1Rの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0097】
次に、
図4を参照し、コントローラ30の構成例について説明する。
図4は、コントローラの構成例を示す図である。
【0098】
図4では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、空間認識装置70、向き検出装置71、情報入力装置72、測位装置73及びスイッチNS等の少なくとも1つが出力する信号を受け、様々な演算を実行し、比例弁31、表示装置D1、及び音声出力装置D2等の少なくとも1つに制御指令を出力できるように構成されている。
【0099】
姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5を含む。
【0100】
コントローラ30は、位置算出部30A、軌道取得部30B、及び自動制御部30Cを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。位置算出部30A、軌道取得部30B、及び自動制御部30Cは、説明の便宜のために区別されて示されているが、物理的に区別されている必要はなく、全体的に或いは部分的に共通のソフトウェアコンポーネント若しくはハードウェアコンポーネントで構成されていてもよい。
【0101】
位置算出部30Aは、測位対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部30Aは、アタッチメントの所定部位の基準座標系における座標点を算出する。所定部位は、例えば、バケット6の爪先である。
【0102】
具体的には、バケット6の爪先は、バケット6の先端に取り付けられた複数の爪のうちの中央にある爪の先端である。但し、バケット6の爪先は、バケット6の先端に取り付けられた複数の爪のうちの左端にある爪の先端であってもよく、バケット6の先端に取り付けられた複数の爪のうちの右端にある爪の先端であってもよい。
【0103】
基準座標系の原点は、例えば、旋回軸とショベル100の接地面との交点である。基準座標系は、例えば、XYZ直交座標系であり、ショベル100の前後軸に平行なX軸と、ショベル100の左右軸に平行なY軸と、ショベル100の旋回軸に平行なZ軸とを有する。位置算出部30Aは、例えば、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。
【0104】
位置算出部30Aは、中央にある爪の先端の座標点だけでなく、左端にある爪の先端の座標点、及び、右端にある爪の先端の座標点を算出してもよい。この場合、位置算出部30Aは、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0105】
軌道取得部30Bは、ショベル100を自律的に動作させるときにアタッチメントの所定部位が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。本実施形態では、軌道取得部30Bは、自動制御部30Cがショベル100を自律的に動作させるときに利用する目標軌道を取得する。
【0106】
具体的には、軌道取得部30Bは、不揮発性記憶装置に記憶されている設計面に関するデータに基づいて目標軌道を導き出す。軌道取得部30Bは、空間認識装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、揮発性記憶装置に記憶されている姿勢検出装置の過去の出力からバケット6の爪先の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。或いは、軌道取得部30Bは、アタッチメントの所定部位の現在位置と設計面に関するデータとに基づいて目標軌道を導き出してもよい。
【0107】
自動制御部30Cは、ショベル100を自律的に動作させることができるように構成されている。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合に、軌道取得部30Bが取得した目標軌道に沿ってアタッチメントの所定部位を移動させるように構成されている。具体的には、スイッチNSが押されている状態で操作装置26が操作されたときに、所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100を自律的に動作させる。
【0108】
本実施形態では、自動制御部30Cは、アクチュエータを自律的に動作させることで操作者によるショベルの手動操作を支援するように構成されている。
【0109】
例えば、自動制御部30Cは、操作者がスイッチNSを押しながら手動でアーム閉じ操作やアーム開き操作を行っている場合に、目標軌道とバケット6の爪先の位置とが一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、左操作レバー26Lをアーム閉じ方向又はアーム開き方向に操作するだけで、バケット6の爪先を目標軌道に一致させながら、アーム5を閉じたり、アームを開いたりすることができる。
【0110】
本実施形態では、自動制御部30Cは、比例弁31に制御指令(電流指令)を与えて各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に調整することで各アクチュエータを自律的に動作させることができる。例えば、右操作レバー26Rが傾倒されたか否かにかかわらず、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを動作させることができる。
【0111】
次に、
図5、
図6を参照して、ショベル100のマシンコントロール機能について説明する。
図5は、ショベルのマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す第一の機能ブロック図である。
図6は、ショベルのマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す第二の機能ブロック図である。
【0112】
コントローラ30は、マシンコントロール機能に関する機能部として、操作内容取得部3001と、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、動作指令生成部3006と、パイロット指令生成部3007と、姿勢角算出部3008と、アーム状態判定部3009と、を含む。これらの機能部は、例えば、スイッチNSが押し操作されている場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
【0113】
操作内容取得部3001は、アーム操作レバー26Bから取り込まれる電気信号に基づき、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作(つまり、前後方向の傾倒操作)に関する操作内容を取得する。例えば、操作内容取得部3001は、操作内容として、操作方向(アーム開き操作であるか、アーム閉じ操作であるかの別)と、操作量を取得(算出)する。
【0114】
目標施工面取得部3002は、例えば、内部メモリや所定の外部記憶装置等から設計面(目標施工面)に関するデータを取得する。
【0115】
目標軌道設定部3003は、設計面に関するデータに基づき、アタッチメントATの先端部、つまり、バケット6の制御基準を設計面に沿って移動させるためのバケット6の制御基準の目標軌道に関する情報を設定する。例えば、目標軌道設定部3003は、目標軌道に関する情報として、ショベル100の機体(上部旋回体3)を基準とする、設計面の前後方向への傾斜角度を設定してよい。
【0116】
現在位置算出部3004は、バケット6の制御基準の位置(現在位置)を算出する。具体的には、後述する姿勢角算出部3008により算出されるブーム角度β1、アーム角度β2、及びバケット角度β3に基づき、バケット6の制御基準の位置を算出してよい。
【0117】
目標位置算出部3005は、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作に関する操作内容(操作方向及び操作量)と、設定された目標軌道に関する情報と、バケット6の制御基準の現在位置とに基づき、バケット6の制御基準の目標位置を算出する。当該目標位置は、アーム5が左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作方向及び操作量に応じて動作すると仮定したときに、今回の制御周期中で到達目標とすべき設計面(換言すれば、目標軌道)上の位置である。目標位置算出部3005は、例えば、不揮発性の内部メモリ等に予め格納されるマップや演算式等を用いて、バケット6の制御基準の目標位置を算出してよい。
【0118】
動作指令生成部3006は、バケット6の制御基準の目標位置に基づき、ブーム4の動作に関する指令値(以下、「ブーム指令値」)β1r、アーム5の動作に関する指令値(以下、「アーム指令値」)β2r、及びバケット6の動作に関する指令値(「バケット指令値」)β3rを生成する。
【0119】
例えば、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rは、それぞれ、バケット6の制御基準が目標位置を実現できたときのブーム角度、アーム角度、及びバケット角度である。動作指令生成部3006は、マスタ指令値生成部3006Aと、スレーブ指令値生成部3006Bを含む。
【0120】
なお、ブーム指令値、アーム指令値、バケット指令値は、バケット6の制御基準が目標位置を実現するために必要なブーム4、アーム5、及びバケット6の角速度や角加速度であってもよい。
【0121】
マスタ指令値生成部3006Aは、アタッチメントATを構成する動作要素(ブーム4、アーム5、及びバケット6)のうち、左操作レバー26Lの前後方向の操作入力に対応して動作する動作要素(以下、「マスタ要素」)の動作に関する指令値(以下、「マスタ指令値」)を生成する。
【0122】
本実施形態では、マスタ要素は、アーム5であり、マスタ指令値生成部3006Aは、アーム指令値β2rを生成し、後述するアームパイロット指令生成部3007Bに向けて出力する。
【0123】
具体的には、マスタ指令値生成部3006Aは、左操作レバー26Lの操作内容(操作方向及び操作量)に対応するアーム指令値β2rを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3006Aは、左操作レバー26Lの操作内容と、アーム指令値β2rとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、アーム指令値β2rを生成し、出力してよい。
【0124】
なお、マスタ指令値生成部3006Aにより出力されるアーム指令値β2rが"0"である場合、アーム5は、コントローラ30の制御に依らず、操作装置26に対する操作者のアーム5に関する操作に従い動作する。
【0125】
また、マスタ指令値生成部3006Aは、省略されてもよい。上述の如く、左操作レバー26Lの前後操作の内容に対応するパイロット圧は、シャトル弁32AL,32ARを介して、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rのパイロットポートに作用するからである。
【0126】
スレーブ指令値生成部3006Bは、アタッチメントATを構成する動作要素のうち、マスタ要素(アーム5)の動作に合わせて(同期して)、バケット6の制御基準が設計面に沿って移動するように動作する、スレーブ要素の動作に関する指令値(以下、「スレーブ指令値」)を生成する。
【0127】
本実施形態では、スレーブ要素は、ブーム4及びバケット6であり、スレーブ指令値生成部3006Bは、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成し、それぞれ、後述するブームパイロット指令生成部3007A及びバケットパイロット指令生成部3007Cに向けて出力する。
【0128】
具体的には、スレーブ指令値生成部3006Bは、アーム指令値β2rに対応するアーム5の動作に合わせて(同期して)、ブーム4及びバケット6の少なくとも一方が動作し、バケット6の制御基準が目標位置を実現できるように(つまり、設計面に沿って移動するように)、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成する。
【0129】
これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lにおけるアーム5に関する操作に対応するアーム5の動作に合わせて(つまり、同期させて)、アタッチメントATのブーム4及びバケット6を動作させることで、バケット6の制御基準を設計面に沿って移動させることができる。
【0130】
つまり、アーム5(アームシリンダ8)は、左操作レバー26Lに対する操作入力に対応して動作し、ブーム4(ブームシリンダ7)、バケット6(バケットシリンダ9)は、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部が設計面に沿って移動するように、アーム5(アームシリンダ8)の動作に合わせて、その動作が制御される。
【0131】
パイロット指令生成部3007は、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rに対応するブーム角度、アーム角度、及びバケット角度を実現するための制御弁174~176に作用させるパイロット圧の指令値(以下、「パイロット圧指令値」)を生成する。パイロット指令生成部3007は、ブームパイロット指令生成部3007Aと、アームパイロット指令生成部3007Bと、バケットパイロット指令生成部3007Cを含む。
【0132】
ブームパイロット指令生成部3007Aは、ブーム指令値β1rと、後述するブーム角度算出部3008Aによる現在のブーム角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、ブーム4を駆動するブームシリンダ7に対応する制御弁175L,175Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、ブームパイロット指令生成部3007Aは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31BL,31BRに出力する。
【0133】
これにより、上述の如く、比例弁31BL,31BRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを介して、制御弁175L,175Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁175L,175Rの作用により、ブームシリンダ7が動作し、ブーム指令値β1rに対応するブーム角度を実現するように、ブーム4が動作する。
【0134】
アームパイロット指令生成部3007Bは、アーム指令値β2rと、後述するアーム角度算出部3008Bによる現在のアーム角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。
【0135】
そして、アームパイロット指令生成部3007Bは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31AL,31ARに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31AL,31ARから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁176L,176Rの作用により、アームシリンダ8が動作し、アーム指令値β2rに対応するアーム角度を実現するように、アーム5が動作する。
【0136】
バケットパイロット指令生成部3007Cは、バケット指令値β3rと、後述するバケット角度算出部3008Cによる現在のバケット角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、バケット6を駆動するバケットシリンダ9に対応する制御弁174に作用させるパイロット圧指令値を生成する。
【0137】
そして、バケットパイロット指令生成部3007Cは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁に出力する。これにより、上述の如く、比例弁から出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁を介して、制御弁174の対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁174の作用により、バケットシリンダ9が動作し、バケット指令値β3rに対応するバケット角度を実現するように、バケット6が動作する。
【0138】
姿勢角算出部3008は、ブーム角度センサS1,アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の検出信号に基づき、(現在の)ブーム角度β1、アーム角度β2、バケット角度β3を算出(測定)する。姿勢角算出部3008は、ブーム角度算出部3008Aと、アーム角度算出部3008Bと、バケット角度算出部3008Cを含む。
【0139】
ブーム角度算出部3008Aは、ブーム角度センサS1から取り込まれる検出信号に基づき、ブーム角度β1を算出(測定)する。
【0140】
アーム角度算出部3008Bは、アーム角度センサS2から取り込まれる検出信号に基づき、アーム角度β2を算出(測定)する。
【0141】
バケット角度算出部3008Cは、バケット角度センサS3から取り込まれる検出信号に基づき、バケット角度β3を算出(測定)する。
【0142】
アーム状態判定部3009は、圧力センサS10により検出されたアームシリンダ8のロッド側の圧力β4を示す検出信号が入力される。本実施形態のアーム状態判定部3009は、アーム5の状態が所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0143】
そして、アーム状態判定部3009は、アーム5の状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、スレーブ指令値生成部3006Bに対して、ブーム4を上げるためのブーム指令値を生成させる。
【0144】
本実施形態の所定の条件とは、アームシリンダ8のロッド側の圧力β4が所定値より大きく、且つ、アーム5の動作が停止していること(アーム5の速度が閾値以下であること)である。
【0145】
本実施形態では、このように、アーム5の状態が所定の条件を満たした場合に、ブーム4を上げるブーム指令値を生成し、コントローラ30により、ブーム4を自動的に上げることで、アーム5の動作が停止しないようにすることができる。
【0146】
以下に、
図7を参照して、マシンコントロール機能の実行中において、アーム5の動作が停止する場合について説明する。
図7は、ショベルの状況を説明する図である。
【0147】
図7(A)~
図7(C)は、設計面G1が、地面G2よりも下方に設定された場合を示している。
【0148】
図7(A)の例は、操作者によりアーム5を開く操作が行われたときに、バケット6の背面が地面に当接しない場合を示している。この場合、アーム5を開く操作が行われると、コントローラ30は、アーム5の動作に応じて、スレーブ要素であるブーム4の動作に関するブーム指令値を生成する。
【0149】
具体的には、コントローラ30は、バケット6の爪先が設計面G1に到達するまでは、アーム5を開く操作に応じて、バケット6の爪先を設計面G1に近づけるために、ブーム4を下げるブーム指令値(ブーム下げ指令)を生成する。そして、コントローラ30は、バケット6の爪先が設計面G1に到達すると、バケット6の爪先を設計面G1に沿って移動させるために、ブーム4を上げるブーム指令値(ブーム上げ指令)を生成する。
【0150】
この制御により、ショベル100は、アーム5を開き、バケット6の爪先を設計面G1に沿って移動させることができる。
【0151】
図7(B)の例は、操作者によりアーム5を開く操作が行われたときに、バケット6の背面が地面G2に当接する場合を示している。
【0152】
この場合も、コントローラ30は、アーム5を開く操作に応じて、ブーム4を下げるブーム指令値(ブーム下げ指令)を生成する。
【0153】
ここで、アーム5が地面G2に当接すると、
図7(B)に示すように、バケット6の背面が設計面G1に到達しない状態で地面G2に押し付けられ、アームシリンダ8のロッド側の圧力が上昇する。
【0154】
そして、アームシリンダ8のロッド側の圧力が、許容される所定の圧力(リリーフ圧)を超えると、ショベル100は、リリーフ弁から油が排出されて、アーム5を開くことができなくなる。なお、リリーフ弁は、不図示であるが、例えば、右メインポンプ14Rの下流に設けられていてよい。
【0155】
そこで、本実施形態では、アーム5が、
図7(B)に示す状態となる前に、自動的にブーム4を上げるブーム指令値を生成し、ブーム4を上げることで、アーム5を開くことができるようにする。
【0156】
具体的には、コントローラ30は、アーム5の状態が、所定の条件を満たすが否かを判定する。所定の条件とは、アームシリンダ8のロッド側の圧力が所定値より大きく、且つ、アーム5が動作していないことである。また、所定値は、リリーフ圧よりも低い圧力を示す値である。そして、コントローラ30は、アーム5の状態が、所定の条件を満たすと判定された場合に、自動的にブーム4を上げるためのブーム指令値を生成し、ブーム4を制御する。
【0157】
本実施形態では、このようにブーム4の動作を制御することで、設計面G1が地面G2の下に設定されていた場合であっても、アームシリンダ8のロッド側の圧力がリリーフ圧に達する前に、自動的にブーム4を上げることができ、アーム5を開くことができるようになる。言い換えれば、本実施形態のコントローラ30は、リリーフ弁から油が排出される直前に、自動的にブーム4を上げることができ、アーム5を開くことができるようになる。
【0158】
図7(C)は、バケット6の背面が地面G2に接地した状態から、ブーム4が上がり、アーム5を開くことができるようになった状態を示す。
【0159】
図7(C)の例では、バケット6の背面が地面G2に当接している状態において、ブーム上げ指令が生成されるため、ブーム4が上昇する。また、このとき、アームシリンダ8のロッド側の圧力は、リリーフ圧に達していないため、アーム5を開くことができる。
【0160】
図8は、ショベルのコントローラの動作を説明するフローチャートである。本実施形態のショベル100は、コントローラ30により、アーム5の速度が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS801)。言い換えれば、コントローラ30は、アーム5の動作が停止しているか否かを判定している。なお、アーム5の動作が停止しているか否かは、アーム角度センサS2から取り込まれる検出信号等に基づき判定される。
【0161】
ステップS801において、アーム5の動作が停止していない場合、ショベル100は、待機する。
【0162】
ステップS801において、アーム5の動作が停止している場合、ショベル100は、コントローラ30により、アームシリンダ8のロッド側の圧力が、所定値を超えたか否かを判定する(ステップS802)。
【0163】
アームシリンダ8のロッド側の圧力は、圧力センサS10によって検出される。また、所定値は、リリーフ圧よりも低い値である。
【0164】
ステップS802において、アームシリンダ8のロッド側の圧力が、所定値以下である場合、コントローラ30は、ステップS801へ戻る。
【0165】
ステップS802において、アームシリンダ8のロッド側の圧力が、所定値を超えた場合、コントローラ30は、ブーム4を上げるためのブーム指令値を生成し、ブーム4を上昇させる(ステップS803)。
【0166】
なお、
図8では、アーム5の動作が停止しているか否かを判定した後に、アームシリンダ8のロッド側の圧力が所定値を超えたか否か判定するものとしたが、判定の順序はこれに限定されない。コントローラ30は、アームシリンダ8のロッド側の圧力が所定値を超えたか否かを判定し、所定値を超えていた場合にアーム5の動作が停止しているか否かを判定してもよいし、コントローラ30は、この2つの判定を並列に行ってもよい。
【0167】
また、本実施形態では、設計面が地面よりも下方に設定された場合について説明したが、設計面の位置は、地面の下方に限定されない。本実施形態では、アーム5を開く動作において、バケット6の爪先が設計面に到達する前にバケット6の背面が当接する面が存在する場合に適用されてよい。
【0168】
なお、本実施形態では、アームシリンダ8のボトム側の圧力に、別の所定値を設定し、アームシリンダ8のボトム側の圧力が別の所定値より大きく、且つ、アーム5が動作していない状態である場合に、アーム5を閉じることができない状態として、
図8に示す制御と同様の制御を行ってもよい。
【0169】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0170】
26 操作装置
30 コントローラ
70 空間認識装置
100 ショベル
3001 操作内容取得部
3006 動作指令生成部
3009 アーム状態判定部