(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159068
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】非ヒト動物用の団子状薬剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 40/10 20160101AFI20241031BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20241031BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A23K40/10
A23K10/30
A23K50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074818
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】522425323
【氏名又は名称】法月 周
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】法月 周
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA05
2B150AA06
2B150AB04
2B150AE09
2B150AE27
2B150AE32
2B150BE04
2B150BE10
2B150DD32
(57)【要約】
【課題】材料に漢方生薬又は漢方薬を用いる薬剤であるにも拘わらず、非ヒト動物にとって経口摂取しやすい薬剤を提供する。
【解決手段】材料に漢方生薬又は漢方薬を用いて、非ヒト動物1に経口摂取させる団子状薬剤10を製造する、団子状薬剤の製造方法は、粉状又は粒状の漢方生薬又は漢方薬と、非ヒト動物が摂取可能な粘性物質又は液状物質との混練物から、団子11を作製する団子作製ステップと、団子11の表面を焼く加熱ステップと、加熱ステップにより高温状態になった団子11について、高温状態から冷凍を開始して、団子11の表面を凍結させる冷凍ステップとを行い、表面が凍結した状態の団子状薬剤10を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料に漢方生薬又は漢方薬を用いて、非ヒト動物に経口摂取させる団子状薬剤を製造する、団子状薬剤の製造方法であって、
粉状又は粒状の漢方生薬又は漢方薬と、非ヒト動物が摂取可能な粘性物質又は液状物質との混練物から、団子を作製する団子作製ステップと、
前記団子の表面を焼く加熱ステップと、
前記加熱ステップにより高温状態になった前記団子について、高温状態から冷凍を開始して、前記団子の表面を凍結させる冷凍ステップとを行い、
表面が凍結した状態の団子状薬剤を製造する、団子状薬剤の製造方法。
【請求項2】
前記粘性物質は、ハチミツである、請求項1に記載の団子状薬剤の製造方法。
【請求項3】
前記加熱ステップの途中に、設置面に対して前記団子を転がして、前記設置面に対する前記団子の接触箇所を変える、請求項1又は2に記載の団子状薬剤の製造方法。
【請求項4】
前記加熱ステップの終了時点から30秒以内に、前記加熱ステップに用いた加熱装置内から、前記冷凍ステップに用いる冷凍庫内に前記団子を移動させて、前記冷凍ステップを開始させる、請求項1又は2に記載の団子状薬剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットなど非ヒト動物に経口摂取させる団子状薬剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
漢方薬は、ヒトだけでなく、ペットなどの非ヒト動物にも有用であるため、一部の獣医師によってペットなどに処方されている。非特許文献1には、粉末状のペット用漢方薬が記載されている。このペット用漢方薬は、ペットフードに混ぜてペットに提供される。
【0003】
また、特許文献1には、不快な味覚をもつ医薬活性物質の経口投与用固形の迅速な崩壊性を有する凍結乾燥剤形の製造方法が記載されている。この方法は、凍結乾燥前に担体材料中の医薬活性物質の粗大粒子のコーティングしていない又はコーティングされた粒子の懸濁物を冷却して、粘度を低下させ、製造時ならびに口内での剤形の崩壊の時点を越えて、活性物質の放出を最小限にし、薬剤からの悪い味覚を最小限にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ペット漢方.com」のウェブサイト,<URL:https://pet-kampo.com/>,[2023年3月3日検索]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ペットなどの非ヒト動物に経口摂取させる薬剤に漢方生薬又は漢方薬を含ませる場合、漢方生薬又は漢方薬の多くは、非ヒト動物にとって苦手な味である。何らかの工夫をしなければ、非ヒト動物が、口の中で苦手な味を感じ、薬剤を吐き出す虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、材料に漢方生薬又は漢方薬を用いる薬剤であるにも拘わらず、非ヒト動物にとって経口摂取しやすい薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、材料に漢方生薬又は漢方薬を用いて、非ヒト動物に経口摂取させる団子状薬剤を製造する、団子状薬剤の製造方法であって、粉状又は粒状の漢方生薬又は漢方薬と、非ヒト動物が摂取可能な粘性物質又は液状物質との混練物から、団子を作製する団子作製ステップと、団子の表面を焼く加熱ステップと、加熱ステップにより高温状態になった団子について、高温状態から冷凍を開始して、団子の表面を凍結させる冷凍ステップとを行い、表面が凍結した状態の団子状薬剤を製造する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、粘性物質は、ハチミツである。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、加熱ステップの途中に、設置面に対して団子を転がして、設置面に対する団子の接触箇所を変える。
【0011】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、加熱ステップの終了時点から30秒以内に、加熱ステップに用いた加熱装置内から、冷凍ステップに用いる冷凍庫内に団子を移動させて、冷凍ステップを開始させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、団子状薬剤の製造方法において、漢方生薬又は漢方薬と、粘性物質又は液状物質との混練物から作製された団子を焼いた後に、高温状態になった団子について、高温状態から冷凍を開始して、団子の表面を凍結させる。団子は熱く熱せられた高温状態から急速に冷やされるため、凍結状態の団子状薬剤の表面は、冷めてから冷凍が開始される場合に比べて硬くなる。
【0013】
ここで、加熱ステップ及び冷凍ステップによって表面を硬化させない団子状薬剤を非ヒト動物に経口摂取させる場合、口の体温と唾液によって団子状薬剤の表面が溶けるまでの時間が短く、非ヒト動物の口の中で漢方生薬又は漢方薬の味が広がり、非ヒト動物が団子状薬剤を吐き出す虞がある。
【0014】
それに対し、本発明では、団子状薬剤を非ヒト動物が経口摂取しても、団子状薬剤は、表面が硬いため非ヒト動物の口の中で表面が溶けにくい。団子状薬剤は、非ヒト動物の口の中で溶けて漢方生薬又は漢方薬の味が広がる前に、非ヒト動物が飲み込み体内にデリバリーされるものとなる。本発明によれば、材料に漢方生薬又は漢方薬を用いる薬剤であるにも拘わらず、非ヒト動物にとって経口摂取しやすい薬剤を提供することができる。なお、非ヒト動物は、例えばペットなどの非ヒト哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る団子状薬剤の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
本実施形態に係る団子状薬剤10(
図1(f)参照)は、犬や猫などのペット1に経口摂取させる薬剤である。団子状薬剤10は、一定の形状を有する固形の薬剤であり、団子状に形成されている。団子状薬剤10は、ペット1の大きさに応じて、ペット1にとって摂取しやすいサイズに形成されている。例えば大型のペット1の場合、団子状薬剤10は3cm以下のサイズに形成され、小型のペット1の場合、団子状薬剤10は1cm以下のサイズに形成される。なお、「団子状」とは、団子のようにひとかたまりになっていればよく、団子状薬剤10は丸いものに限定されない。
【0018】
団子状薬剤10の材料には、粉状又は粒状の漢方生薬又は漢方薬と、ペット1が摂取可能な粘性物質又は液状物質(ペット1が摂取しても害がない粘性物質又は液状物質)とを少なくとも用いる。本実施形態に係る団子状薬剤10は、粉状の漢方生薬を主成分とし、固形化するための粘性物質としてハチミツが添加されている。
【0019】
団子状薬剤10の材料の漢方生薬としては、例えば葛根、枸杞子、クコの実、棗(ナツメ)など様々なものを用いることができる。団子状薬剤10の材料には、1種類の漢方生薬を用いてもよいし、複数種類の漢方生薬を用いてもよく、また複数の漢方生薬から構成された漢方薬を用いてもよい。
【0020】
団子状薬剤10の材料の粘性物質は、乾燥と冷凍の何れによっても固化する流動性物質であり、例えば糖分を含む。粘性物質としては、シロップ状の液体で早晩結晶を伴うハチミツを好適に用いることができ、ハチミツ以外にも水飴、ナツメを材料とした粘性物質などを用いることができる。ハチミツやナツメを用いる場合、団子状薬剤10の長期保存が可能となる。また、団子状薬剤10の材料の液状物質としては、水、酢又は酒などを用いることができる。
【0021】
団子状薬剤10は、少なくとも表面が凍結状態でペット1に経口摂取させる薬剤である。凍結状態の団子状薬剤10の表面は、後述する冷凍ステップにおいて熱く熱せられた高温状態から急速に冷やされることで、非ヒト動物の口の中で体温によって短時間で溶けないほどに硬化している。
【0022】
[団子状薬剤の製造方法]
続いて、
図1を参照しながら、団子状薬剤10の製造方法について説明を行う。
【0023】
団子状薬剤10の製造方法は、漢方生薬の粉末とハチミツの混合物を混練する混練ステップと、混練ステップで得られた混練物を成形して団子11を作製する成形ステップと、団子11の表面を焼く加熱ステップと、加熱ステップ後の高温状態から団子11の冷凍を行う冷凍ステップとを、この順番に行うものである。この製造方法によって、表面が凍結した状態の団子状薬剤10が製造される。なお、混練ステップと成形ステップとは、上述の団子作製ステップを構成する。
【0024】
具体的に、混練ステップでは、まず軽量カップなどの容器12内に団子状薬剤10の材料(漢方生薬の粉末、及び、ハチミツ)を入れることで、漢方生薬の粉末とハチミツとの混合物13が得られる(
図1(a)参照)。そして、混合物13が、棒状の部材14などで攪拌されることにより、塊状の混練物が得られる粘度になるまで混練される(
図1(b)参照)。
【0025】
なお、容器12内に入れる団子状薬剤10の材料の配合について、漢方生薬の総重量(複数種類の漢方生薬を用いる場合は、全ての漢方生薬の合計重量)に対し、重量比で0.3以上0.7以下の重量のハチミツが添加される。漢方生薬に対するハチミツの重量比は、好ましくは0.4以上0.6以下である。これらの重量比の数値範囲は、団子状薬剤10の材料として、漢方生薬の代わりに漢方薬を用いたり、ハチミツ以外の粘性物質又は液状物質を用いたりする場合も同様である。
【0026】
次に、成形ステップでは、例えば手作業によって、混練ステップで得られた塊状の混練物を丸めて、所定サイズ(直径1cm以下のサイズ)の団子11が成形される(
図1(c)参照)。
【0027】
次に、加熱ステップでは、加熱装置20としてトースター20が用いられ、トースター20内の金属プレート(パッド)21上に、成形ステップで得られた複数の団子11が間隔を空けて並べられる。そして、トースター20の蓋を閉めた状態でスイッチをONに切り替えて、所定時間に亘って団子11が焼かれる(
図1(d)参照)。トースター20内で団子11を焼く時間は1分程度である。
【0028】
ここで、本明細書において「焼く」とは、加熱を継続した場合には団子11が焦げるほどの高温(例えば100度以上の高温)で、団子11を加熱することを言う。このような高温で団子11を加熱し、後述する冷凍を行うことで、団子11の表面を硬くすることができる。
【0029】
なお、団子11が焦げてしまうとペット1にとって苦味となる。トースター20内で団子11を焼く場合、団子11のうち金属プレート21との接触箇所が焦げやすい。そのため、団子11が焦げることを避けるために、加熱ステップでは、金属プレート21の上面(設置面)に対して団子11を転がして、設置面に対する団子11の接触箇所を変えてもよい。例えば、トースター20の蓋を一時的に開けて、金属プレート21を揺らす等により金属プレート21上で団子11を転がすことができる。
【0030】
次に、冷凍ステップでは、加熱ステップにより高温状態になった団子11について、高温状態から冷凍を開始して、団子11の表面を凍結させる。例えば、加熱ステップの終了時点から30秒以内(好ましくは、10秒以内又は5秒以内)に、加熱ステップに用いた加熱装置20内から、冷凍ステップに用いる冷凍庫30内に団子11を移動させて、冷凍ステップ(団子11の冷凍)を開始させる。
【0031】
冷凍ステップでは、団子11を冷凍する冷凍装置30として、例えば庫内温度が-5℃~-25℃程度の冷凍庫30が用いられる(
図1(e)参照)。加熱ステップ後により高温状態になった団子11は、高温状態のまま冷凍庫30の庫内に入れられ、その表面が少なくとも凍結状態になるまで冷凍される。冷凍庫30の庫内で団子11を冷凍する時間は、例えば30分程度である。
【0032】
以上のステップを行うことにより、団子状薬剤10は完成する。団子状薬剤10は、ペット1に経口摂取させる時(
図1(f)参照)まで、冷蔵庫又は冷凍庫30にて保管される。
【0033】
[本実施形態の効果等について]
本実施形態では、団子状薬剤10の製造方法において、漢方生薬とハチミツなどの粘性物質との混練物から作製された団子11を焼いた後に、高温状態になった団子11について、高温状態から冷凍を開始して、団子11の表面を凍結させる。団子11は熱く熱せられた高温状態から急速に冷やされるため、団子11の表面は、冷めてから冷凍が開始される場合に比べて硬くなる。そのため、凍結状態の団子状薬剤10は、ペット1の口の中で溶けにくく、ペット1の口の中で表面が溶けて漢方生薬の味が広がる前に、ペット1が飲み込み体内にデリバリーされるものとなる。本実施形態によれば、材料に漢方生薬又は漢方薬を用いる薬剤であるにも拘わらず、ペット1にとって経口摂取しやすい団子状薬剤10を提供することができる。
【0034】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、加熱装置20としてトースター20を用いたが、加熱装置20は、加熱を継続した場合には団子11が焦げるほどの高温で団子11を加熱することができるものであればよく、バーナーなどを用いてもよい。
【0035】
上述の実施形態では、冷凍装置30として冷凍庫30を用いたが、冷凍装置30は、団子11の表面が凍結するほどの低温で団子11を冷却することができるものであればよく、冷凍ガスを噴射する装置を用いてもよい。
【0036】
上述の実施形態では、団子状薬剤10は、ペット1に経口摂取させる薬剤であるが、ペット以外の非ヒト哺乳動物(例えば、家畜として飼育される動物、動物園で飼育される動物)に経口摂取させる薬剤としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、非ヒト動物に経口摂取させる団子状薬剤などに適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 団子状薬剤
11 製造過程の団子
12 容器
13 混合物
14 棒状の部材
20 トースター(加熱装置)
21 金属プレート
30 冷凍庫(冷凍装置)